運動神経の刺激に応じた筋肉の電気的活動を評価するシステム、デバイスおよび方法が提供される。たとえば、本システムおよび本方法は、筋弛緩薬が投与されている患者の筋肉の神経筋遮断をモニタリングする際に使用することができる。筋弛緩薬は、必要に応じて、神経筋遮断薬とすることができる。また、筋弛緩薬は、必要に応じて脱分極性薬とすることができる。筋弛緩薬は、必要に応じて非脱分極性薬とすることもできる。
本発明の1つの実施による筋弛緩薬を投与されている対象における神経筋遮断状態を評価する方法は、運動神経を刺激して誘発筋反応を生じさせ、誘発筋反応を記録することを含む。誘発筋反応は、フローティング差動信号(floating differential signal)とすることができる。たとえば、フローティング差動信号は非接地基準(non-ground-referenced)の差動信号であり得る。本方法は、記録された筋反応を定量化し、定量化された筋反応を基準となる筋反応(control muscle response)と比較することをさらに含み得る。比較結果は、対象における神経筋遮断のレベルを示すものである。
一部の実施では、誘発筋反応を記録することは、2つの記録電極を用いて、その運動神経に神経支配される筋肉の電気的活動を記録し、2つの記録電極の各々により記録された筋肉の電気的活動の差を決定することを含み得る。2つの記録電極それぞれにより記録された筋肉の電気的活動の差は、共通の基準電極を用いて筋肉の電気的活動を記録せずに得ることができる。あるいは、またはそれに加えて、その運動神経に神経支配される筋肉の電気的活動を記録することは、2つ以下の記録電極により行うことができる。
所望により、運動神経を刺激することは、時間間隔をおいた反復的な一連の刺激(トレイン刺激)により運動神経を刺激することを含み得る。たとえば、運動神経は四連プロトコルまたはテタニックプロトコルにより刺激することができる。
さらに、基準となる筋反応(control muscle response)は、時間間隔をおいた反復的なトレイン刺激のうちの前または後の刺激により生じた筋反応を定量化したものとすることができる。
本発明の1つの実施による筋弛緩薬を投与されている対象における神経筋遮断を評価するためのシステムは、運動神経を刺激して誘発筋反応を引き起こす1以上の刺激を生成する刺激装置と、刺激装置により生成された各刺激を患者に与える患者・刺激インターフェースと、その運動神経に神経支配される筋肉の誘発筋反応を記録する患者・記録インターフェースとを含み得る。誘発筋反応は、フローティング差動信号であり得る。たとえば、フローティング差動信号は非接地基準の差動信号であり得る。システムは、記録された筋反応を定量化し、定量化した筋反応を基準となる筋反応と比較するように構成された少なくとも1つの処理デバイスをさらに含み得る。比較結果は、対象における神経筋遮断のレベルを示す。
さらに、患者・記録インターフェースは、その運動神経に神経支配される筋肉の電気的活動を記録する少なくとも2つの記録電極を含み得る。非接地基準の差動信号は、少なくとも2つの記録電極のそれぞれにより記録される筋肉の電気的活動の差であり得る。
所望により、刺激装置は、時間間隔をおいた反復的なトレイン刺激で運動神経を刺激するように構成され得る。たとえば、運動神経は四連プロトコルまたはテタニックプロトコルにより刺激され得る。
さらに、基準となる筋反応は、時間間隔をおいた反復的なトレイン刺激のうちの前または後の刺激により引き起こされた筋反応を定量化したものであり得る。
本発明の別の実施による、筋弛緩薬を投与されている対象における神経筋遮断を評価するためのシステムは、運動神経を刺激して誘発筋反応を引き起こす1以上の刺激を生成するように構成された刺激装置と、刺激装置により生成された各刺激を患者に与える患者・刺激インターフェースと、少なくとも2つの記録電極を含む患者・記録インターフェースとを含み得る。患者・記録インターフェースは、その運動神経に神経支配される筋肉の電気的活動を記録するように構成され得る。さらに、患者・記録インターフェースは、共通基準電極を有していない。システムは、記録された筋反応を定量化し、定量化した筋反応を基準となる筋反応と比較するように構成された少なくとも1つの処理デバイスをさらに含み得る。比較結果は、対象における神経筋遮断のレベルを示す。
さらに、記録された筋肉の電気的活動は、フローティング差動信号であり得る。たとえば、記録された筋肉の電気的活動は、非接地基準差動信号であり得る。
所望により、刺激装置は、時間間隔をおいた反復的なトレイン刺激で運動神経を刺激するように構成され得る。たとえば、運動神経は四連プロトコルまたはテタニックプロトコルにより刺激され得る。
さらに、基準となる筋反応は、時間間隔をおいた反復的なトレイン刺激のうちの前または次の刺激により引き起こされた筋反応を定量化したものであり得る。
本発明の1つの実施による対象における神経筋遮断を評価するためのシステムとともに使用される電極システムは、刺激を対象の運動神経に伝達するように構成された1以上の刺激電極と、その運動神経に神経支配される筋肉の電気的活動を記録するように構成された少なくとも2つの記録電極を含み得る。電極システムは共通基準電極を有していない。
さらに、記録された筋肉の電気的活動は、少なくとも2つの記録電極のそれぞれで記録された筋肉の電気的活動の差である。たとえば、記録された筋肉の電気的活動は、フローティング差動信号である。あるいは、または加えて、記録された筋肉の電気的活動は、非接地基準差動信号である。
本発明のさらに別の実施による、ある対象における筋肉の電気的活動を評価するためのシステムは、該対象のターゲットとなる運動神経を刺激するように構成された運動神経刺激装置と、その運動神経に神経支配される筋肉の電気的活動を記録する記録装置と、ターゲットとなっている運動神経の電気的活動を記録する記録装置とを含み得る。
所望により、本システムは、刺激に対する電気的反応が筋肉に関して記録されたかどうかを確認するように構成された少なくとも1つの処理装置を含み得る。
あるいは、または加えて、本システムは、刺激に対する電気的反応が運動神経に関して記録されたかどうかを確認するように構成された少なくとも1つの処理装置を含み得る。
本発明の別の実施では、システムは、刺激に対する電気的反応が筋肉に関して記録されたかどうかと、刺激に対する電気的反応が運動神経に関して記録されたかどうかとを確認するように構成された1つの処理システムを含み得る。
たとえば、この処理システムは、神経において刺激に対する電気的反応が記録されない場合に、神経が刺激されなかったことを示すように構成され得る。
一部の実施では、対象には筋弛緩薬が投与されている。
他の実施によると、処理システムは、刺激に対する電気的反応が神経に関して記録され、筋肉における刺激に対する電気的反応が不存在または減少したときに、対象において神経筋が遮断されていることを示すように構成され得る。
本発明の別の実施による、ある対象の運動神経が刺激されているかどうかを確認する方法は、運動神経を刺激するための刺激を対象に与えることと、ターゲットとなっている運動神経における与えられた刺激に対する電気的反応を記録することと、ターゲットとなっている運動神経に神経支配される筋肉における与えられた刺激に対する電気的反応を記録することとを含み得る。筋肉における与えられた刺激に対する電気的反応の有無と、ターゲットとなっている運動神経における与えられた刺激に対する電気的反応の有無とは、運動神経が刺激されたかどうかを評価するのに使用され得る。
たとえば、与えられた刺激に対する電気的反応が筋肉に関して記録され、与えられた刺激に対する電気的反応がターゲットとなっている運動神経に関して記録された場合、運動神経は刺激された可能性がある。しかし、与えられた刺激に対する電気的反応が筋肉において記録され、与えられた刺激に対する電気的反応がターゲットとなっている運動神経において記録されていない場合か、または、与えられた刺激に対する電気的反応が筋肉において記録されず、与えられた刺激に対する電気的反応がターゲットとなっている運動神経において記録されていない場合は、運動神経は刺激されていない可能性がある。
一部の実施では、対象には、刺激が与えられる前に筋弛緩薬が投与されている場合がある。この場合、与えられた刺激に対する電気的反応が筋肉において記録されず、与えられた刺激に対する電気的反応が運動神経において記録されている場合か、または、与えられた刺激に対する電気的反応の減少が筋肉において記録され、与えられた刺激に対する電気的反応が運動神経において記録されている場合、その対象における神経筋遮断が示唆され得る。
本発明のさらに別の実施による、筋弛緩薬を投与されている対象における神経筋遮断を評価する方法は、運動神経を刺激するための刺激を対象に与えることと、ターゲットとなる運動神経における与えられた刺激に対する電気的反応を記録することと、ターゲットとなる運動神経に神経支配される筋肉における与えられた刺激に対する電気的反応を記録することとを含み得る。記録された神経の電気的反応と、記録された筋肉の電気的反応とは、対象における神経筋遮断を評価するのに使用され得る。
この実施では、上記記載と同様に、与えられた刺激に対する電気的反応が筋肉において記録され、与えられた刺激に対する電気的反応がターゲットの運動神経において記録される場合、運動神経は刺激されている可能性がある。しかし、与えられた刺激に対する電気的反応が筋肉において記録され、与えられた刺激に対する電気的反応がターゲットの運動神経において記録されていない場合、または、与えられた刺激に対する電気的反応が筋肉において記録されず、与えられた刺激に対する電気的反応がターゲットの運動神経において記録されていない場合は、運動神経は刺激されていない可能性がある。
さらに、与えられた刺激に対する電気的反応が筋肉において記録されず、与えられた刺激に対する電気的反応が運動神経において記録される場合、または、与えられた刺激に対する電気的反応の減少が筋肉において記録され、与えられた刺激に対する電気的反応が運動神経において記録される場合、対象における神経筋遮断が示唆され得る。
所望により、方法は、記録された筋肉の電気的活動の振幅を決定することも含み得る。基準となる振幅と比較される決定された振幅は、対象における神経筋遮断レベルを示し得る。一部の実施では、基準となる振幅は、前回または後続の刺激の記録された電気的活動の振幅であり得る。あるいは、または加えて、刺激は四連刺激プロトコルの間に与えられ得る。
別の実施による、筋弛緩薬を投与されている対象における神経筋遮断を評価する方法は、運動神経をターゲットとする刺激を対象に与えることと、ターゲットの運動神経に神経支配される筋肉における刺激に対する電気的反応を記録することと、ターゲットの運動神経における刺激に対する電気的反応を記録することとを含み得る。筋肉における刺激に対する電気的反応の不存在または減少、および運動神経における刺激に対する電気的反応の存在は、対象における神経筋遮断を示し得る。さらに、刺激は、対象に対する四連刺激プロトコルの適用の間に与えられ得る。
別の実施による対象における筋肉の電気的活動を評価するためのシステムは、前記対象のターゲットとなる運動神経を刺激するように構成された運動神経刺激装置と、その運動神経に神経支配される筋肉の電気的活動とターゲットの運動神経の電気的活動を記録する記録装置とを所望により含み得る。運動神経刺激装置は、それ自体の電源と少なくとも1つの刺激電極を含み得る。さらに、記録装置は、それ自体の電源と少なくとも1つの記録電極を含み得る。さらに、運動神経刺激装置と記録装置は、ガルバーニ絶縁(galvanic isolation)され得る。
所望により、運動神経刺激装置の電源と記録装置の電源はそれぞれ専用のものとすることができ、それぞれ運動神経刺激装置のみ、記録装置のみに電力を供給する。
あるいは、または加えて、運動神経刺激装置は刺激電極を2つ以下、記録装置は記録電極を2つ以下有することができる。
図面中の構成要素は必ずしも互いに同じ縮尺ではない。複数の図面において、類似の要素には類似の参照符号を付す。
麻酔をモニタリングするためのシステム、デバイスおよび方法が提供される。たとえば、本方法、本デバイスおよび本システムは、必要に応じて、筋弛緩薬を受けている対象における神経筋遮断を評価するために用いられる。筋弛緩薬は、必要に応じて神経筋遮断薬とすることができる。また、筋弛緩薬は、必要に応じて脱分極性薬とすることができる。筋弛緩薬は、必要に応じて非脱分極性薬とすることもできる。
本開示のシステム、デバイスおよび方法によれば、筋弛緩薬が体に及ぼす作用に直接的に対応する神経と筋肉の機能を客観的に測定することができる。したがって、筋弛緩薬のより効果的な投与と拮抗が可能となり、麻酔の誘導と弛緩がより正確に制御でき、手術処置が安全に開始できるときを特定することができる。定期的に筋機能をモニタリングすることで、術中の筋弛緩薬の力価(titration)を案内することも可能なため、過小および過剰の投与を回避でき、患者が適切に反応したときを知らせることができるので、気管内(呼吸)チューブを導入(手術処置開始時)または抜去(手術処置終了時)することができる。
本システム、本デバイスおよび本方法は、必要に応じて、手術処置の間中、神経筋遮断の深度を正確かつ連続的に客観的に測定するのに使用される。神経筋機能は、対応する運動神経の電気的刺激に応じた誘発筋反応(筋肉の「単収縮(twitch)」の裏で誘発される電気的活動)を比較することで直接的に評価される。反復刺激に対する筋反応が消失すると、適切な筋弛緩が得られていることになるが、神経伝導は損なわれていない。本デバイスは、(ユーザーが選択した間隔で)手動または自動でトリガされると評価を繰り返し、任意の末梢運動神経により、任意の処置の間じゅう神経筋機能の現在の状態をモニタリング可能とする。電池式で使いやすく、はっきり見え、操作環境に無理なく納まる形の本デバイスは、確実に薬物供給を制御し、神経筋機能を適切に回復させることができ、適切な手術条件を確保して患者の安全性を高める、信頼性の高い客観的なモニターである。
上述したように、筋弛緩薬は、あるタイプの手術の間、投与される。筋弛緩薬は、神経筋接合部において化学的伝導を阻害するが、神経線維と筋線維のいずれの電気的伝導にも影響しない。具体的には、筋弛緩薬は受容体部位をブロックし、化学的伝達物質が筋線維内で電気的反応を開始するのを防止する。多くの受容体部位がブロックされれば、刺激を受け取る筋線維は少なくなり、筋肉の視覚的で機械的な単収縮(twitch)と根底にある電気的反応との両方が低下する。筋弛緩薬の単回投与は筋反応を速やかに低下させるが、薬物が代謝され体外に排出されると経時的に正常に戻る(自然回復)。筋反応低下の大きさは、薬物投与からの時間と関与する筋肉による。たとえば、同量の筋弛緩薬は横隔膜よりも親指の筋肉により大きく影響する。したがって、モニタリングの成功は、適切な筋肉を特定することと、筋弛緩薬の投与と離脱(拮抗)の変化していく効果を連続的にモニタリングすることとにかかっている。
筋弛緩薬が患者に投与される前は、刺激により誘発される神経インパルスが筋肉に伝わり、電気的反応と筋肉の単収縮との両方を引き出す。筋弛緩薬が投与されると、受容体部位がブロックされ、一部の筋線維だけが反応する。つまり、神経反応の強度は変化しないが、筋反応の振幅が減少し、これは電気的記録よりも単収縮において顕著な効果である。完全にブロックされている場合、全ての筋反応が消失するが、神経反応は維持されている。したがって、刺激が移動して神経から離れた場合は、神経または筋肉の反応が検出されないため、手続的に誤りが検出される可能性がある。
図1には、手術手順中に、筋弛緩薬を受けている患者における筋麻痺の深度と筋肉回復の程度を評価するのに使用されるシステムが示されている。本システムは、刺激・記録ユニット130と制御・視覚化ユニット132からなるものとすることができる。刺激・記録ユニット130と制御・視覚化ユニット132は、ケーブル接続されていてもよいし、無線接続されていてもよい。加えてまたは代替的に、刺激・記録ユニット130と制御・視覚化ユニット132は、一体化されていてもよい。しかし、刺激・記録ユニット130と制御・視覚化ユニット132とが物理的に別々であれば、電気ノイズ(つまり電気メス)効果および患者の周りに追加のワイヤがある物理的不便さを最小限にできる。物理的に別々であれば、刺激・記録ユニット130と制御・視覚化ユニット132とは、別々で単一の携帯型であり得る。加えて、制御・視覚化ユニット132は、軽量でエッジに沿ってテクスチャード加工されているが、鋭い角や突出面はないものとすることができる。制御・視覚化ユニット132は、平面に載置することも静注点滴ポールにとりつけることも可能であり、手術室の基準に合う色(すなわち青色と銀色)の材料で構成することができる。さらに、制御・視覚化ユニット132は湿らせた布やアルコールで拭いて掃除および滅菌しやすいものとすることができる。制御・視覚化ユニット132は、約4フィートの高さから堅い床に繰り返し落としても耐久性があるものとすることができる。一部の形態では、制御・視覚化ユニット132は、ラップトップ、タブレット型コンピューターであり、電池式であり、医療グレードタイプであるものとすることができる。
刺激・記録ユニット130は、神経刺激装置108とセンサ110および112とを有するものとすることができ、所望によりこれらを単体の携帯型パッケージに一体化することができる。神経刺激装置108は、運動神経、たとえば手首の正中神経や尺骨神経、足首の脛骨神経、または耳の下の顔面神経に電気パルスを伝達できる。1つの実施では、神経刺激装置108は、200μsまたは300μsの方形波、単相の一定の電気パルスを伝達することができる。神経刺激装置108が伝達する電気パルスは、患者がブロックされていない状態にあるときに神経反応を誘発する程度に十分強くなければならない。さらに、神経刺激装置108は、パルスのシーケンス、たとえば四連(train-of-four, TOF)およびテタニー性バースト(強縮性バースト、tetanic burst)を伝達することができる。
センサ110および112は、神経刺激により誘発される神経および筋肉の内因性電気的活動を検知できる。筋肉の電気的活動を検知することで、たとえば、筋反応の強さに直接対応している電気的活動の振幅を測定できる。したがって、筋肉の電気的活動の振幅の変化は、筋弛緩薬の添加および拮抗による変化と直接的に相関し得るため、手術中どの時点でも、筋弛緩薬が患者に及ぼす影響を決定することができる。
刺激電極102と検知電極104および106とは、たとえば専用コネクタを用いて刺激・記録ユニット130に取り付けることができる。図1に示すシステムは、刺激・記録ユニット130と制御・視覚化ユニット132の両方に電源を供給する電源レギュレータ114も備えたものとすることができる。しかし、一部の実施では、刺激・記録ユニット130と制御・視覚化ユニット132の電源は別々(すなわち、2つの別個の電池パック)であってもよい。刺激・記録ユニット130と制御・視覚化ユニット132とは、たとえばガルバーニ・セパレータ(galvanic separator)116を用いて互いに分離し、刺激・記録ユニット130と制御・視覚化ユニット132との間に直流が流れるのを防止してもよい。さらに、神経刺激装置108は、所望により、筋肉と神経の電気的活動を記録するために使用されるセンサ110および112などの他のユニットに使用されることのない、専用の電源(すなわち電池)から電力を受けてもよい。同様に、筋肉と神経の電気的活動を記録するのに使用されるセンサ110および112は、所望により、神経刺激装置108などの他のユニットに使用されることのない、専用の電源(すなわち電池)から電力を受けてもよい。この実施では、神経刺激装置108とセンサ110および112はガルバーニ接続されておらず、神経刺激装置と各センサは、プログラムモジュールが実行されるコントローラ(すなわち制御・視覚化ユニット132)により、ガルバーニ絶縁モジュールを通じて通信し得る。したがって、センサ110および112は、フローティング状態(floating setting)で動作し得るので、電気的活動を検知する双極電極以外に基準電極を必要としない。たとえば、センサ110は、2つの記録電極(たとえば検知電極104)を有するものとすることができ、刺激された運動神経に神経支配される筋肉の電気的活動を記録するように構成することができる。センサ110は共通の基準電極を有する必要がない。記録される電気的活動は、フローティング差動信号(floating differential signal)であり得る。たとえば、記録される電気的活動は、非接地基準(non-ground-referenced)の差動信号であり得る。言い換えると、各検知電極104で記録された電気的活動の差は、共通基準電極で電気的活動を記録しなくても得ることができる。所望により、センサ112は2つの記録電極(たとえば検知電極106)を有するものとすることができ、刺激された運動神経の電気的活動を記録するように構成することができる。センサ110と同様に、センサ112は共通基準電極を有する必要がない。したがって、運動神経を刺激することができ、筋肉または神経の電気的活動は、ワイヤ4本(すなわち刺激用と記録用に2本ずつ)を用いて測定でき、接地用など関連デバイスで用いられる5本目のワイヤは必要ない。これにより、システムの構成が簡素になり、電極アレイのコストが最小限となる。たとえば、刺激・記録ユニット130の電極システムは、2つの刺激電極(すなわち刺激電極102)と、刺激された運動神経に神経支配される筋肉の電気的活動を記録する2つの記録電極(たとえば検知電極104)、つまり4電極構成を有するものとすることができる。共通基準電極を排除することで、患者に装着しなければならない電極数は5つではなく4つだけになるため、システムの構成は簡素になる。さらに、電極数が少ないため、患者の皮膚から電極が外れる事故の可能性が低下する。さらに、記録電極数が少ないので電極システムを小型化でき、小児科や新生児への適用が有利であり、価格も安くなる。所望により、刺激・記録ユニット130の電極システムは、刺激された運動神経の電気的活動を記録するための2つの記録電極(たとえば検知電極106)を有するものとすることができる。上述したように、電極システムは共通基準電極を有する必要がない。
関連のシステムでは、刺激および記録の回路が共通グラウンド(たとえば接地システム)に接続される。刺激および記録回路が共通グラウンドに接続されるので、電流ループが形成され、刺激および記録の回路間でクロストークが生じる。したがって、記録チャネルは刺激アーチファクトを含む場合があり、筋肉または神経反応の電気的活動が不明瞭になり得る。以下で詳述するように、本明細書に記載の神経筋モニタリングシステムおよび方法は、絶対値ではなく、記録された電気的活動の2つの特徴間の相対的な差に依存する(たとえばピークピーク値、ピーク・ベースライン間値(peak-to-baseline)など)。したがって、たとえばアースなどの共通基準点は必要ない。上述したように、刺激・記録ユニット130は電池式であり得るので、アースへの接続は排除できる。このことは、刺激・記録ユニット130からアースに患者体内の迷走電流を伝え得る電気経路を排除するため、患者の安全性が高まる。また、ショックの危険性も低下し、不整脈の原因となり得る漏電の可能性も排除される。
制御・視覚化ユニット132は、ユーザー入力制御部および視覚ディスプレイを備えており、操作プロトコルを格納し、患者データを収集し、システムクロックを生成してもよい。たとえば、制御・視覚化ユニット132は、入出力デバイス118と、処理デバイス120と、静注点滴(IV)ポールホルダ122と、外部との通信リンク124を含むことができる。入出力デバイス118は、たとえば、電源オンオフ制御部、試験用プロトコル選択制御部(単発単収縮(single twitch)、四連(Train of Four, TOF)、テタニック、ポストテタニックカウント(PTC))、刺激強度制御部(0〜100mAの定電流)、刺激モード制御部(手動または連続)、刺激トリガ制御部などのユーザー入力制御部を有するものとすることができる。ユーザー入力制御部は、動作モードと選択成功を示すバックライトボタンと、所望により警告として使用され得る可聴トーンを備えていてもよい。さらに、ユーザー入力制御部は、ユーザーが手術用手袋をはめていても制御操作ができるように設計できる。
入出力デバイス118は、ディスプレイを含み得る。たとえば、ディスプレイは、制御・視覚化ユニット132がオンであることの視覚的インジケータ、不具合インジケータ(すなわち、電池容量低下、電気的導通喪失、刺激伝達失敗、通信接続喪失)、刺激強度、刺激に対する反応を表す棒グラフを表示することができる。ディスプレイは先に挙げたような視覚的インジケータに限られず、代わりに、ユーザーがシステムをさらに容易に操作できるように視覚的インジケータの複数の組合せからなっていてもよい。図1に示すシステムは、本明細書に記載の態様を実施するため処理デバイス120も含み得る。例示的な処理デバイスについては図16を参照して以下に詳述する。
さらに、図1に示すシステムは、静注点滴(IV)ポールホルダ122と外部との通信リンク124とを含み得る。静注点滴ポールホルダ122は、手術中、制御・視覚化ユニット132を静注点滴ポールに固定するのに使用できる。外部との通信リンク124はシステムと他のデバイスの通信を可能にする。手術が終わると、制御・視覚化ユニット132から外部との通信リンク124により収集データをダウンロードすることができる。
図2は、図1のシステム内で行われる例示的操作のフロー図である。図2の例示的操作は、たとえば手術中に行われ得る。図2の例示的操作は、4つの段階、すなわち、準備と刺激と解析とクリーンアップとに分けられる。準備段階では、患者を手術室に入室させる。次に202で電極が患者に装着される。電極は、たとえば、図1に示したように、刺激電極102とセンサ電極104および106とであり得る。電極を患者に装着する処理については、図3を参照して詳述する。
電極を患者に装着した後、全身麻酔が患者に投与され得る。次に、204で、麻酔医は神経筋遮断のモニタリング中に使用する刺激電流(つまり刺激強度)と刺激プロトコルとを選択し得る。本明細書を通じて麻酔医という用語を用いてはいるが、当業者であれば、本システムは他の医療関係者またはシステムオペレーターも使用でき、麻酔医という用語が開示対象のデバイスと方法の範囲を限定するものではないことを理解するであろう。麻酔医は、刺激電流を手動か自動で選択することができるが、これについては図4を参照して詳述する。さらに、麻酔医は、限定ではないが、単発単収縮(single twitch)と、TOFと、テタニックと、PTCとを含む複数の刺激プロトコルからも選択をすることができる。刺激プロトコルを選択する過程については図4を参照して、また、特定の刺激プロトコルについては図8〜図10を参照して詳述する。
刺激強度およびプロトコルを選択した後、麻酔医は、神経筋遮断を誘導する筋弛緩薬を投与し始めることができる。手術中の麻酔レベルをモニタリングするために、206で、麻酔医は神経筋遮断をモニタリングし得る。神経筋遮断をモニタリングする過程については、図5〜図11を参照して詳述する。次に、手術後、患者が神経筋機能を適切に回復すると、麻酔医は、208で、刺激を中止し、データおよび/またはパラメータを保存し、デバイスをオフにし、電極を患者から取り外すことができる。この過程は図14と図15を参照して詳述する。
図3は、電極を装着するときの例示的操作のフロー図である。302で、麻酔医は、刺激および/または記録する神経と筋肉を決定する。まず、麻酔医は、刺激する神経を決定し得る。たとえば、麻酔医は、たとえば手首の正中神経や尺骨神経、足首の脛骨神経、または耳の下の顔面神経など、筋肉の表面に延び神経接合部で接触する運動神経を刺激することを選択し得る。誘発筋反応は、刺激された神経に神経支配される運動の単位において記録され得る。さらに、誘発神経反応が、刺激部位両側への神経経路に沿って記録され得る。
304で、麻酔医は、刺激電極102とセンサ電極104および106とを、刺激・記録ユニット130に取り付けられたワイヤに接続できる。上述したように、刺激およびセンサ電極102、104および106は、専用コネクタにより刺激・記録ユニット130に取り付けることができる。
306で、麻酔医は、刺激し記録する神経および筋肉を特定し得る。上述したように、麻酔医は、たとえば手首の正中神経や尺骨神経、足首の脛骨神経、または耳の下の顔面神経などの運動神経を刺激することを選択し得る。誘発筋反応を記録するために、麻酔医は、刺激された神経に神経支配される運動の単位、たとえば尺骨神経は手、脛骨神経は脚、顔面神経は眉や顎などを特定し得る。次に、麻酔医は、誘発神経反応を記録するための神経を特定し得る。誘発神経反応は、刺激部位の両側への神経経路に沿って記録できるが、干渉を避けるために刺激部位から少なくとも5cm離して記録するのが好ましい。1つの実施では、複数の差動記録リード線を複数の活動部位上に配置することができ、すなわち、1本のリード線を筋肉上に、他方のリード線を神経上に配置して単一の記録チャネルで両方の反応を収集する。
308で、麻酔医は、刺激を与える神経上に刺激電極102を装着し、検知電極104および106をそれぞれ、刺激される神経に神経支配される運動単位上に、そして、神経経路に沿って装着し得る。
図4は、刺激電流を決定し刺激プロトコルを選択するときの例示的操作のフロー図である。402で、麻酔医は、たとえば制御・視覚化ユニット132のユーザー入力制御機能により刺激電流(つまり刺激強度)を決定し得る。麻酔医は、刺激強度を手動または自動で選択し得る。手動で刺激強度を選択する場合、麻酔医は、たとえば0〜100mAの実際の刺激電流を選択し得る。さらに、麻酔医は、最大EMG+10%の反応(最大上)または閾値EMG+10%の反応(最大下)がそれぞれ得られるまで、たとえば5mAの増分で電流が一定量ずつ変化する所定シーケンスで電流を増量または減量して、最大上または最大下電流を手動で選択し得る。さらに、麻酔医は、自動で刺激強度を選択し得、最大EMG+10%の反応または閾値EMG+10%の反応が得られるまで、自動的に電流が一定量ずつ変化する所定シーケンスを印加して最大上または最大下電流を設定する。システムは、麻酔医が刺激強度を選択しない場合に備えてデフォルトすなわち最大上の刺激強度も有するものとすることができる。
404で、麻酔医は、刺激プロトコルを選択することができる。たとえば、麻酔医は、たとえば制御・視覚化ユニット132のユーザー入力制御部により、単発単収縮(single twitch)プロトコルと、TOFプロトコルと、テタニックプロトコルと、PTCプロトコルとのなかから選択できる。単発単収縮プロトコルでは、電気パルスが単発で加えられ、それに対応する筋反応が記録される。たとえば、単発の電気パルスは最大上の強度で200μs間与えることができ、誘発筋反応を記録することができる。持続時間が200μsまたは300μsの単発電気パルスは、1/秒(1Hz)プロトコルまたは1/10秒(0.1Hz)プロトコルで1秒ごとまたは10秒ごとに反復することができる。
TOFプロトコルでは、所定の刺激パターンを所定の時間間隔で与えることができる。たとえば、それぞれ最大上の強度で200μsまたは300μsの4回の電気刺激パターンを、500msごとに与えることができる。与えられた各刺激により、対応する筋反応が誘発され、該反応が記録される。次に、後続の筋反応の振幅の、前回の筋反応の振幅に対する比が計算される。たとえば、第4筋反応の第1筋反応に対する比(TOF比)を計算することができる。中程度の神経筋遮断の場合、誘発筋反応の振幅は、1回目の刺激から4回目の刺激にかけて次第に減少する。このように、TOF比は神経筋遮断レベルに対応するため、TOF比を計算することで神経筋遮断レベルを決定することが可能になり得る。
テタニック(TET)プロトコルでは、TOFプロトコルと同様に、所定の刺激パターンが所定の時間間隔で与えられ得る。しかし、TETでは、多数の、より高周波(すなわち50Hz、70Hzまたは100Hz)の刺激がより長い全持続時間(すなわち5秒)与えられる。TETプロトコルで使用される周波数は、好ましくは、刺激に対する筋反応の融合(fusion)が得られるような、たとえばヒトの場合は30Hz超などの閾値を超える周波数であり得る。たとえば、それぞれが最大上(または最大上よりも小さい)強度の250または500の電気パルス(それぞれ持続時間は200μs)のパターンを50Hzまたは100Hz、5秒間のレートで与えてもよい。通常の神経筋伝達であれば、テタニー性刺激(強縮性刺激、tetanic stimulation)に対する誘発筋反応は、1つの持続的な筋収縮へと融合される。すなわち、テタニー性刺激に対する通常の(遮断されていない)筋反応は、刺激の間持続する。しかし、非脱分極型の神経筋遮断中は、テタニー性刺激に対する反応は持続しない(つまり消失する)。したがって、刺激終了時の筋反応の振幅の、刺激開始時の筋反応の振幅に対する比を計算することで、神経筋遮断のレベルを決定することが可能であり得る。
PTCプロトコルでは、上述したようにテタニー性刺激が与えられる。テタニー性刺激が終了した後、単発単収縮性刺激(single twitch stimuli)を所定の時間間隔で与えることができる。たとえば、単発単収縮性刺激は、テタニー性刺激が終了して30秒後から1Hzの割合で与えることができ、単発単収縮性刺激に対する反応の数を数えることができる。テタニー性刺激により、神経終末からすべての利用可能な神経伝達物質が放出され、それによりテタニー性刺激後の僅かな時間の間に単収縮反応が回復し得る。深い神経筋遮断であれば、TOF刺激に対する1回目の反応が戻るまでの時間は、所与の時点で存在するPTC単収縮反応の数と関係がある。
刺激プロトコルの選択に加えて、麻酔医は、刺激が連続的か手動かも選択できる。手動刺激では、麻酔医は、制御・視覚化ユニット132のユーザー入力制御機能により刺激をトリガすることができる。連続刺激では、連続的な刺激プロトコルが所定の時間間隔で与えられ得る。単発単収縮、TOF、テタニックおよびPTCプロトコルは、たとえばそれぞれ1秒ごと、12秒ごと、120秒ごと、120秒ごとに反復することができる。
図5は、神経筋遮断をモニタリングするときの例示的操作のフロー図である。502で、麻酔医は、選択したプロトコルにより刺激を与えることができる。504で検知電極104により筋反応が検知されて記録され、506で検知電極106により神経反応が検知されて記録される。508で収集データが妥当かどうかが決定される。これについては図7を参照して詳述する。510で、前回の刺激から所定の時間が経過した後に、後続の刺激を与えることができ、これは512で決定される。
図6A〜図6Fは、神経刺激反応データを収集したものを示している。神経および筋肉の反応を測定するために、本明細書に開示するシステムおよび方法は、まずは刺激に対して収集されたデータの特徴を解析する。たとえば、図6Aは、与えられた刺激に応じて、センサ104および106により収集されたデータ(すなわち検出された電圧信号)を示している。収集されたデータは、ノイズ(刺激アーチファクト)と、神経の電気的活動(すなわち神経反応)と、筋肉の電気的活動(すなわち筋反応)とを含む。1つの実施では、ノイズと神経反応と筋反応とは、それぞれ測定する前に互いに別々に分けることができる。
まず、検出された電圧信号が基準値[すなわち、バックグラウンド(刺激前または反応直後)レベルの電気的活動(たとえば二乗平均平方根(Root Mean Square, RMS)振幅により特徴づけられる)]から有意に逸脱する時点を、たとえば検出された電圧信号を構成する一連の値の最高端と最低端から内向きに見て特定することにより、神経筋活動の限界を検出することができる。次に、傾きと振幅の両方が、それぞれの基準値から所定量だけ異なるとき、限界値とすることができ、その位置を指す参照マーク602を置くことができる。傾きと振幅の両方がそれぞれの基準値から所定量だけ異なるポイントは、検出された電圧信号中の「突出部分(knee)」により視覚的に特定できる。「突出部分」と参照マーク602を、図6Aの一部分を示す図6Bに示している。図6Cに示す、検出された電圧信号の参照マーク602の前と後の部分は、アーチファクトと非許容レベルの干渉の評価をされ得るノイズのみの部分である。検出された電圧信号の参照マーク602間の部分は神経筋反応であり、神経および筋肉の反応とノイズとの両方を含む。
図6Cに示した、検出された電圧信号の領域およびマークされた「信号」は、いくつかの手段により、検出された電圧信号に含まれる各神経反応および各筋反応にさらに分けることができる。まず、筋肉は神経よりも遅れて活性化されるため、筋反応606は一般に神経反応604よりも後に(かつ、より高い振幅を伴って)生じる。したがって、筋反応606を特定し、検出された電圧信号からそれを差し引いて神経反応604を得ることできる。二番目に、検出された電圧信号の一定の部分は神経反応604のものであると推測できるが、これは神経反応604は存在する間は一定であるが、筋反応606はより変わりやすいためである。したがって、神経反応604を特定し、検出された電圧信号からそれを差し引いて筋反応606を得ることができる。三番目に、筋反応606は、検出された電圧信号に適合し得る特徴的な形状をもつので、検出された電圧信号から差し引いて神経反応604を得ることができる。ノイズ608と神経反応604と筋反応606とを、別々に、それぞれ図6D、図6E、図6Fに示している。
検出された電圧信号を3つの部分(すなわちノイズ608、神経反応604、筋反応606)に分けた後、各部分を測定することができる。ノイズ608を分析し、アーチファクトが存在するかどうかを決定してもよい。加えて、または代わりに、ノイズ608を統計学的に分析し、領域の傾きおよび/またはRMS値を計算し、またはゼロクロッシングを計測して周波数成分を推定してもよい。たとえば、神経反応604の形状や振幅が変化するかどうかを決定することで、神経反応604の一定性を評価してもよい。神経反応604は、一定、つまり形状や振幅が変化しないと推測される。神経反応604は、振幅および主要な特徴間の間隔を分析することで、または整合した検出電圧信号と以前の記録から作成されたテンプレートとの相関関係を調べることにより、評価してもよい。しかし、場合によっては神経反応をバックグラウンドの電気ノイズと区別するのが困難な場合があるが、これは神経反応の振幅は同じ刺激に対する筋反応の振幅よりも比較的小さいからである。所望により、複数の刺激に対する複数の神経反応を平均して神経反応を記録してもよい。これに関し、たとえば、刺激を与えたかまたは与えているという記載において使用される刺激という用語は、必要に応じて、1または複数の個々の刺激を含むものである。筋反応606は、ピークピーク振幅、ベースライン・ピーク間振幅(baseline-to-peak amplitude)、またはピーク値間の差分を測定して評価してもよい。
図7は、収集されたデータの妥当性を決定するときの例示的処理のフロー図である。収集データを分析する前に、収集データが妥当かどうかが決定される。妥当性の決定は702から開始する。たとえば、電極接続の完全性、温度、ノイズレベルなどを分析することができる。704で、電極接続が適切かどうかが決定される。たとえば、電極接続は、インピーダンスが500〜5,000オームであれば適切とされ得る。706で、温度が適切かどうかが決定される。温度が適切でない(すなわち低すぎる)場合、神経機能が低温により損なわれることがある。このように、低温が検出され、その部位を誤差が生じないようにするために正常な体温になるまで温めることができる。一部の実施形態では、神経温度を推定するために皮膚温度を検出することができるが、これはどの時点でもこれらはだいたい同じ温度だからである。たとえば、34℃以上であれば、温度は適切であるとすることができる。708で、信号対雑音比(signal-to-noise ratio, SNR)が適切かどうかが決定される。1つの実施では、電極接続、温度および信号対雑音比のすべてが適切でなければ次に進めない。他の実施では、上記の条件は必要ではないかもしれない。条件が不適切な場合、不適切な条件を修正できるように710でユーザーに通知することができ、再度妥当性チェックを行うことができる。上述したように、不適切な条件は制御・視覚化ユニット132に表示することができる。
712で、刺激が伝達されたかどうかが決定される。刺激が運動神経からずれる(すなわち離れる)と、刺激が神経反応をトリガできなくなり、センサ電極104および106が検知する筋反応と神経反応の両方が存在しなくなる。たとえば、刺激は、正中、尺骨、脛骨または顔面神経などの運動神経をターゲットとして与えることができる。上述したように、刺激電極は、対象とする運動神経に隣接して患者に装着される。特定の運動神経を対象とすることで、対象の神経に神経支配される筋肉における筋反応が見込まれる。しかし、刺激が実際に対象の運動神経に伝達されるように刺激電極が配置されているかどうかを視覚的に判定することは困難である。場合によっては、配置場所が大きくずれた電極が神経ではなく筋肉を直接刺激し、目的である神経筋接合部における伝達(conduction)が評価できないことになり得る。さらに、筋弛緩薬の投与後、対象の神経に神経支配される筋肉での筋反応は、投与された筋弛緩薬の量との関連で、ゼロにまで低下または減少する(すなわち筋弛緩薬なしで予想される反応よりも小さい)。したがって、刺激電極が対象の運動神経から離れて配置されると、刺激は対象の運動神経に実際には伝達されない。この場合、筋弛緩薬が投与されて筋反応がゼロにまで減少しているため、筋肉の電気的活動を記録することだけで刺激が伝達されたかどうかを判定することは困難な可能性がある。本発明の一部の実施によると、対象の運動神経に刺激が伝わると、刺激された運動神経の電気的活動は常に存在するため、刺激された運動神経の電気的活動を記録することにより、対象の運動神経に刺激が伝達されたかどうかを判定することが可能となり得る。
神経反応は、完全な神経筋遮断中でも存在するはずである。したがって、神経反応がなければ、刺激は伝達されなかった(または刺激が神経反応をトリガするのに十分ではなかった)ということになる。さらに、インピーダンスチャネルに現れる動きのアーチファクトからいくつかの単収縮を検出することにより、刺激が伝達されたかどうかを検出することが可能となり得る。刺激が伝達されなかった場合はユーザーに通知され、716で再度妥当性チェックが行われ得る。上述したように、不適切な条件は制御・視覚化ユニット132に表示され得る。
714で、反応が妥当かどうかが決定される。たとえば、神経反応および筋反応を分析し、各反応が存在するかどうか、振幅が減少しているかどうか、反応潜時(response latency)が一定かどうかなどが決定され得る。反応が妥当でない場合はユーザーに通知され、716で再度妥当性チェックが行われ得る。上述したように、不適切な条件は制御・視覚化ユニット132に表示され得る。収集データが妥当であると決定された後、718で刺激を続行し、筋反応の振幅を測定することができる。
図8は、TOFプロトコルを適用するときの例示的処理のフロー図である。TOFプロトコルは、所定の刺激パターンを所定の時間間隔で運動神経に与えることからなる。802においてTOFプロトコルを開始し、804で1回目の刺激を与える。たとえば刺激は200μsまたは300μs、方形波、単相、定電流の電気パルスとすることができる。上述したように、制御・視覚化ユニット132は、たとえば表示ランプにより刺激が与えられたことを示すことができる。806においてセンサ電極104および106により神経反応と筋反応が記録される。その後、808で、所定の回数の刺激が与えられたかどうかが決定される。1つの実施では、所定の回数は好ましくは4回の刺激だが、5回、6回、7回などでもよい。「はい」の場合は、812で、図7を参照して詳述したとおり集められたデータが妥当かどうかが決定される。「いいえ」の場合は、所定の時間間隔をおいて、たとえば500msが経過した後に、後続の刺激が与えられる。しかし、所定の時間間隔は500msより長くても短くてもよい。
814で筋反応の振幅が測定される。上述したように、この振幅は、ピークピーク振幅でもベースライン・ピーク間振幅(baseline-to-peak amplitude)でもよい。測定した振幅を基準となる振幅(control amplitude)と比較して、神経筋遮断レベルが決定され得る。たとえば、基準となる振幅はゼロとすることができる。筋弛緩薬を投与する前に患者に所定の刺激パターンを与えると、筋反応の振幅は、だいたい均等でありゼロではないと推定される。ところが、患者に筋弛緩薬が投与されると、後続の各筋反応の振幅は消失する。1つの実施では、好ましくは4回目に記録される筋反応までに振幅がゼロにまで減少し、ある程度の神経筋遮断を示し得る。
816で、順次与えられた一連の刺激(トレイン刺激)に対する任意の2つの個別の筋反応の振幅の比を計算することで、TOFが決定され得る。一部の実施では、この比は、後続の筋反応(すなわち時間的に後で記録された反応)の振幅の、前回の筋反応(すなわち時間的に先に記録された反応)の振幅に対する比とすることができる。たとえば、四連反応比(train-of-four ratio)は、順次与えられるトレイン刺激のなかで、4回目に与えられた刺激の、1回目に与えられた刺激に対する振幅の比である。TOF比は、次に、基準となる比(control ratio)(好ましくは1.0であるべき)と比較され得る。好ましくは、TOF比は、4回目の筋反応の振幅の、1回目の筋反応の振幅に対する比になるが、あるいは、1、2、3、4、5、6回目などのいずれの振幅の比でもよい。遮断されていない状態では、TOF比はほぼ1.0である。神経筋遮断が深まると、TOF比は0.0へと徐々に下がる。つまりTOF比が小さい、すなわち0.0に近ければ、それだけ神経筋遮断が大きいということになり、4回目の、1回目に対する筋反応のTOF比が0.0ということは、約80%以上の神経筋遮断を示す。
次に、TOF比がゼロかどうかが決定される。「いいえ」の場合は、制御・視覚化ユニット132はTOF比の値と対応する色とを表示することができる。この表示は、異なる色を用いて神経筋遮断の異なるレベルを示し得る。たとえば、緑色はTOF比1.0〜0.90、黄色はTOF比0.89〜0.40、赤色はTOF比0.39〜0.01をそれぞれ表すのに用いることができる。「はい」の場合、818でTOFカウント(TOF count)が計算される。たとえば、TOF比が0.0(すなわち4回目の筋反応が不存在)であれば、何回の刺激(すなわち1、2および3回目の刺激)が非ゼロの反応を示したかを判断する。神経筋遮断が深まると、TOFカウントが3カウントからゼロへと減少する。たとえば、TOF比が0.0でTOFカウントがゼロのとき、神経筋遮断はほぼ95%以上である。これに対し、神経筋遮断が低下すると、TOFカウントは増加する。TOF比が0.9(つまり、当然に、TOFカウントが4)のとき、神経筋遮断はだいたい70%以下である。この神経筋機能レベル(遮断が70%未満)は、適切な回復の閾値とされている。次いでTOFカウント値が、対応する色とともに制御・視覚化ユニット132に表示され得る。他の実施では、4回よりも多く与えられた刺激に対しTOFカウントが計算され得る。
820で、刺激モードが手動か連続かが決定される。刺激モードが手動の場合、後続の刺激プロトコルは、ユーザーがたとえば制御・視覚化ユニット132のユーザー入力制御部を用いて刺激をトリガして初めて適用される。刺激モードが連続の場合、822で、複数の刺激プロトコル間で所定の時間が経過したかどうかを決定する。好ましくは、所定のTOFプロトコルの連続する時間は12秒である。さらに、制御・視覚化ユニット132は、次の刺激プロトコルの適用までの残り時間を表示し得る。
図9は、テタニック試験プロトコルを適用するときの例示的処理のフロー図である。TOFプロトコルと同様に、テタニックプロトコルは、所定の時間間隔で与えられる所定の刺激パターンからなる。しかし、TOFプロトコルとは異なり、テタニックプロトコルは、より高周波のより多くの刺激を与えることからなる。902で刺激を開始し、904で1回目の刺激を与える。たとえば250または500の電気パルスが5秒間、50Hzまたは100Hzのレートで与えられ得る。さらに、各刺激(電気パルス)の持続時間は200μsであり得る。刺激を与えると、たとえば表示ランプおよび/または音により制御・視覚化ユニット132に表示され得る。906でセンサ電極104および106により神経反応と筋反応が記録される。その後、908で、所定の回数(すなわち250回または500回)が与えられたどうかが決定される。「はい」の場合は、912で、図7を参照して詳述したとおり集められたデータが妥当かどうかが決定される。「いいえ」の場合は、パルスが50Hzまたは100Hzのレートで与えられる場合、910で所定の時間間隔たとえば4msか2ms経過した後に後続の刺激が与えられる。
914で筋反応の振幅が測定され、916でテタニック比が計算される。TOF比と同様、テタニック比は、次に与えられた刺激の振幅の、前に与えられた刺激の振幅に対する比、すなわちトレイン刺激のうちの最後の刺激の、最初の刺激に対する比であり得る。しかし、上述したように、比は、順次与えられたトレイン刺激に対する任意の2つの個別の筋反応の振幅の比であり得る。神経筋遮断が深まると、テタニック比は正常なベースライン1.0から徐々に0.0へと低下する。したがって、テタニック比がより小さければ、すなわち0.0に近ければ、より高いレベルの神経筋遮断に相当する。テタニック比がゼロの場合、918でテタニー性持続時間(tetanic duration)が計算され得る。テタニー性持続時間は、非ゼロの開始時と反応終了時との間隔の持続時間、すなわち0〜4.9秒を見積もることで計算され得る。上述したように、正常な神経筋伝達中は、テタニー性刺激に対する誘発筋反応がまとまって単一の持続する筋収縮になる。しかし、神経筋遮断中は、テタニー性刺激に対する反応の振幅は持続しない(つまり消失する)。したがって、神経筋遮断のレベルは反応の時間間隔に対応し得る。さらに、テタニー性持続時間の値は、対応する色とともに制御・視覚化ユニット132に表示され得る。
920では、刺激モードが手動か連続かが決定される。刺激モードが手動の場合、後続の刺激プロトコルは、ユーザーがたとえば制御・視覚化ユニット132のユーザー入力制御機能を用いて刺激をトリガして初めて印加される。刺激モードが連続の場合は、922で、複数の刺激プロトコル間で所定の時間が経過したかどうかを決定する。好ましくは、テタニックプロトコルの所定の時間は120秒である(すなわち、神経筋反応を無効にしてしまう「ポストテタニック増強(post-tetanic potentiation)」現象を避けるために、次のテタニー性刺激までに少なくとも120秒経過させる)。さらに、制御・視覚化ユニット132は、次の刺激プロトコルの適用までの時間間隔を表示し得る。
図10は、ポストテタニックカウント(post-tetanic count, PTC)試験プロトコルを適用するときの例示的処理のフロー図である。深い神経筋遮断が得られ、TOFプロトコルとテタニックプロトコルによる推定が得られないときには、特別な刺激プロトコル、すなわちPTCプロトコルを用いて反応を誘発することが可能な場合がある。1002で刺激プロトコルを開始し、1004で1回目の刺激を与える。好ましくは、1回目の刺激はテタニー性刺激、すなわち250回または500回の刺激(それぞれ持続時間は200μs)パターンを5秒間、50Hzまたは100Hzのレートで与える。1006でセンサ電極104および106により、神経反応と筋反応が記録される。1008で、所定の回数すなわち250回または500回の刺激が与えられたかどうかが決定される。「いいえ」の場合は、パルスが50Hzまたは100Hzのレートで与えられる場合、1010で所定の時間間隔たとえば4msか2ms経過した後に後続の刺激が与えられる。「はい」の場合、1回目の刺激が終了した後、1012で、所定の時間間隔が経過したかどうかを決定する。たとえば、1つの実施では、所定の時間間隔は30秒である。所定の時間間隔が経過した後、1014で、2回目の刺激が与えられる。たとえば、2回目の刺激は単発単収縮(single twitch)であり得る。1016でセンサ電極104および106により神経反応と筋反応が記録される。1018で、2回目の刺激が所定の回数、つまり周波数1Hz(1回/秒)で20回与えられたかどうかが決定される。
1022で、2回目の刺激が終了した後、図7を参照して詳述したとおり集められたデータが妥当かどうかが決定される。1024で筋反応の振幅が測定される。1026で、非ゼロの反応を引き出した2回目の刺激の数(周波数1Hzで伝達)が数えられる。神経筋遮断が深まると、反応を引き出す2回目の刺激の数が減る。言い換えると、PTC値は神経筋遮断が深まると減少する。
1028で、刺激モードが手動か連続かが決定される。刺激モードが手動の場合、後続の刺激プロトコルは、ユーザーがたとえば制御・視覚化ユニット132のユーザー入力制御機能を用いて刺激をトリガして初めて適用される。刺激モードが連続の場合、1030で、複数の刺激プロトコル間で所定の時間が経過したかどうかを決定する。好ましくは、PTCプロトコルの所定の時間は120秒である。さらに、制御・視覚化ユニット132は、次の刺激プロトコルの適用までの時間間隔を表示し得る。
図11は、手術中に神経筋遮断をモニタリングするときの例示的処理のフロー図である。1102で、麻酔医は、手術開始時に使用する単発単収縮(single twitch)、TOF、テタニックまたはPTC試験プロトコルなどの刺激プロトコルを選択し得る。次に1104で、麻酔医は神経筋遮断を誘導するために筋弛緩薬を投与し得る。筋弛緩薬を投与した後、麻酔医は1106で神経筋遮断をモニタリングすることができる。たとえば、1つの実施では、麻酔医は挿管の前にTOFプロトコルにより神経筋遮断をモニタリングすることができ、TOF比がゼロへと低下し、少なくとも3回の連続した測定値においてゼロが続くと、神経筋遮断は最大となっている可能性がある。この時点で、1108で患者の気管に挿管がなされ得る。
1110で、麻酔医は再度刺激プロトコルを選択することができ、その一方で、1112で施術前に筋弛緩薬の量を減らす。たとえば、麻酔医は、最小限の非ゼロのTOF比が得られるまでTOFプロトコルにより神経筋遮断をモニタリングし得る。手術中、麻酔医は1114で神経筋遮断のモニタリングを続行し得る。手術終了時、麻酔医は1116で再度刺激プロトコルを選択することができ、その後、1118で拮抗薬すなわち拮抗剤を投与する。拮抗剤を投与した後、麻酔医は1120で神経筋遮断をモニタリングし得る。たとえば、麻酔医は、単収縮(twitch)が戻り、TOF比が少なくとも0.90、好ましくは1.0にまで正常化するまでTOFプロトコルで神経筋遮断をモニタリングし得る。最後に、1122で呼吸管を患者の気管から取り出すことができる。
図12は、挿管前にTOF試験プロトコルを実施する例示的操作を示している。1202で、麻酔医は、連続モードのTOF試験プロトコルを選択し得る。次に1204で、麻酔医は神経筋遮断を誘導するために筋弛緩薬を投与し得る。1206で、麻酔医は、神経筋遮断のモニタリングを開始する。モニタリング中、制御・視覚化ユニット132は、筋反応の振幅、比、カウント、遮断率などを示す棒グラフを表示することができる。さらに、連続する各刺激に対する反応が、たとえば制御・視覚化ユニット132上にスクロールされ得る。1208で患者は気管挿管がされ得る。
図13は、手術中にテタニック試験プロトコル(tetanic test protocol, TET)を実施し、拮抗薬の投与後にTOF試験プロトコルを実施するときの例示的操作を示している。1310で、麻酔医は、1314で手術中に神経筋遮断をモニタリングするための刺激プロトコルを選択し得る。たとえば、1324で深い弛緩が必要とされる場合、麻酔医は連続モードのテタニックプロトコルにより神経筋遮断をモニタリングし得る。深い弛緩が必要ではないが1326で手術が終了していない場合、麻酔医は手動モードのTOFプロトコルにより神経筋遮断をモニタリングすることを選択し得る。手術終了時、麻酔医は1316で再度刺激プロトコルを選択でき、その後1318で拮抗剤を投与する。拮抗剤を投与した後、麻酔医は、1320で、連続モードのTOFプロトコルにより神経筋遮断をモニタリングすることを選択し得る。モニタリング中、制御・視覚化ユニット132は、筋反応の振幅、比(適切な色により)、カウント、遮断率などを示す棒グラフを表示し得る。さらに、連続する各刺激に対する反応が、たとえば制御・視覚化ユニット132上にスクロールされ得る。単収縮(twitch)が戻り、TOF比が少なくとも0.90まで、好ましくは1.0にまで正常化すると、1322で管を患者の気管から除去できる。
図14は、モニタリングデバイスをオフにするときの例示的操作を示している。1402で、麻酔医は、刺激プロトコルをオフにし得る。次に、1404で、データを保存するかどうかが決定される。「はい」の場合は、1406で収集されたデータがデバイス内に保存され得る。上述したように、制御・視覚化ユニット132から外部との通信リンク124により収集データをダウンロードすることが可能であり得る。収集データを保存した後、または収集データを保存する必要はないと決定した後に、麻酔医は1408でデバイスをオフにし得る。一部の実施では、データは、患者の電子医療記録を保存する電子医療記録記憶装置と接続することができる。
図15は、患者から電極を取り外すときの例示的操作を示している。1502で、麻酔医は、刺激電極102とセンサ電極104および106とを刺激・記録ユニット130から取り外すことができる。上述したように、電極102と104および106とは、専用の手段によりワイヤに接続されている場合がある。1504で、さらなるモニタリングが必要かどうかが決定される。「いいえ」の場合、麻酔医は、1520で、電極102と、104および106とを患者から取り外し得る。「はい」の場合は、患者は電極102と、104および106とを装着したまま回復室に移され得る。
患者を回復室に移した後に、1506で、さらなるモニタリングが必要かどうかが決定される。「いいえ」の場合、麻酔医は、1520で、電極102と、104および106とを患者から取り外し得る。「はい」の場合、麻酔医は、1508で、電極102と、104および106とを刺激・記録ユニット130に接続することができる。次に、1510で、麻酔医はデバイスをオンにし、1512で神経筋遮断のモニタリングを開始し得る。1514で結果を解析した後、1516で、さらなるモニタリングが必要かどうかが決定される。「はい」の場合は、麻酔医は1512で神経筋遮断のモニタリングを続行し得る。「いいえ」の場合は、1518で、麻酔医は電極102と、104および106とを刺激・記録ユニット130から取り外すことができ、次いで1520で電極102と、104および106とを患者から取り外すことができる。
図16を参照すると、本明細書に記載の態様を実施する例示的なシステムは、処理装置1620を備えている。もっとも基本的な構成では、処理装置1620は典型的には少なくとも1つの処理部1602とメモリー1604とを備えている。実際の処理装置の構成とタイプによって、メモリー1604は、揮発性(たとえばランダムアクセスメモリー(RAM))か、不揮発性(たとえばリードオンリーメモリー(ROM)、フラッシュメモリーなど)か、これら2種の何らかの組合せかとすることができる。
処理装置1620は、典型的には様々なコンピューター可読媒体を有する。コンピューター可読媒体は、処理デバイス1620からのアクセスが可能で、揮発性および不揮発性媒体を含む任意の入手可能な媒体とすることができる。コンピューター可読媒体は、揮発性または不揮発性メモリーに保存することができ、メモリーはコンピューター可読指令、データ構造、プログラムモジュールまたは他のデータなど情報保存のあらゆる方法または技術で実装することができる。メモリーは、限定はされないが、RAM、ROM、電気的な消去・書込み可能な読み出し専用メモリー(EEPROM)、フラッシュメモリーまたは他のメモリー技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)または他の光学記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置または他の磁気記憶装置デバイス、または、所望の情報を保存するために使用でき処理デバイス1620からアクセス可能な他の任意の媒体を含む。
なお、本明細書に記載の様々な技術は、ハードウェア、ソフトウェア、適宜それらの組合せと一緒に実装され得るものである。したがって、本開示の主題の方法とシステム、またはそれらの特定の態様または部分は、フロッピーディスク、CD−ROM、ハードドライブまたは任意他のマシン可読記憶装置媒体などの有形媒体として実現されるプログラムコード(すなわち指令)の形態をとり得、該プログラムコードが処理装置などのマシンに格納され実行される場合、該処理装置は本開示の主題を実施するための装置となる。プログラム可能なコンピューター上でプログラムコードを実行する場合、コンピューター装置は一般に処理装置、処理装置が読出し可能な記憶媒体(揮発性および不揮発性メモリーおよび/または記憶素子を含む)、少なくとも1つの入力デバイスおよび少なくとも1つの出力デバイスを含む。1または複数のプログラムが、たとえばアプリケーションプログラミングインターフェース(API)、再使用可能制御などの使用により、本開示の主題に関連して記載された過程(処理)を実装または利用し得る。そのようなプログラムは、コンピューターシステムと通信するために、高レベルの手続型プログラミング言語またはオブジェクト指向プログラミング言語で実装され得る。しかし、プログラム(複数可)は、所望であればアッセンブリまたはマシン言語で実装してもよい。いずれの場合も、言語はコンパイルまたは翻訳言語であり得、ハードウェアの実装と組合せられ得る。
本発明の数々の実施形態を説明してきた。しかし、本発明の思想と範囲を逸脱することなく様々な変形が可能であることが理解される。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲内にある。
本開示の方法、システムおよびデバイスに使用できる、それらと共に使用できる、それらのために使用され得る、またはそれらの製品である材料、システム、デバイス、構成要素およびコンポーネントを開示している。本明細書ではこれらおよび他のコンポーネントを開示し、これらのコンポーネントの組合せ、サブセット、相互作用、グループなどが開示される場合、これらのコンポーネントの個別の、組合せとしての、および変形の具体的な参照は明白には開示されないかもしれないが、それらはすべて具体的に企図され本明細書に記載されているものとする。たとえば、方法が開示され、該方法のあらゆるすべての組合せと変形について述べられる場合、特に断らない限り可能な変更は具体的に企図される。同様に、これらのあらゆるサブセットまたは組合せも具体的に企図され開示される。この概念は、限定ではないが、開示のシステムまたはデバイスを用いる方法のステップを含む、本開示のすべての態様に適用される。したがって、実施可能な様々な追加のステップがある場合、これらの追加のステップはすべて、本開示の方法の任意の特定の方法ステップまたは方法ステップの組合せと共に実施可能であり、そのような組合せまたは組合せのサブセットはすべて具体的に企図され、開示されたとみなされるべきである。
本明細書で引用した刊行物およびそれらが引用されている資料は、その全てを引用することにより本明細書の一部をなすものとする。