次に、本開示の原理を理解しやすくするために、図面に示された実施形態を参照し、その記述には特別な用語を使用する。しかし、本開示の範囲を何ら制限する意図はないことを理解すべきである。本開示が関する分野の当業者が通常想到するであろう、記述されるデバイス、機器、方法および本開示の原理のあらゆる追加の応用に対するあらゆる変更およびさらなる変形がすべて企図される。特に、1つの実施形態に関連して記述される特徴、構成要素および/またはステップが、本開示の他の実施形態との関連で記述される特徴、構成要素および/またはステップと組み合せされ得ることが、すべて企図される。わかりやすくするため、同じかまたは類似の部品(部分)に言及するのに同一参照番号が図面を通じて使用される場合がある。
本開示は、眼内埋没物に電力を供給するシステムと方法に関する。少なくとも1つの態様では、外部システムがワイヤレスの電磁界を埋没物に送信する。システムは、より多くの電磁界を埋没物に向け、より少ない電磁界を埋没物から離れる方向に向けるよう動作する。本明細書における例示的実施形態では、電磁界を埋没物に向ける界輪郭密度を成形する分流技法を用いる。特定の埋没物は、非充電状態での動作用に電力を受け貯蔵するように設計されている。
図2は、埋没物202と外部ユニット204を含む例示的眼治療システム200を示す。埋没物202は、たとえば緑内障などの眼の病状をモニタリングまたは治療するのに使用され得る電動治療用素子を含む。外部ユニット204は、埋没物202との通信のみならず、それに電力を供給するように構成されている。以下に説明するように、このことは、埋没物202が占める部分内に外部ユニット204が電磁界を送信するワイヤレス接続を介して達成される。埋没物202は、電磁界からのエネルギーをエネルギー源として、また半二重通信用に変調される搬送波として捕捉し使用する。最初に埋没物202について説明してから外部ユニット204ついて説明する。
図3は、埋没物202が眼内に埋め込まれたところを示す、1つの可能な用途の図である。この例では、埋没物202は、眼の結膜下ポケット206に埋め込まれるように寸法決めされ配置されている。1つの例では、埋没物は、前眼房208から排液部位210への流体を分流するように配置され得るが、これは、所望のIOPを維持するかまたはそれを獲得することで緑内障を治療するために、多数の眼内の場所のいずれであってもよい。たとえば、一部の埋没物は、房水を前眼房208から結膜下スペース、あるいは強膜下スペースに分流するように配置されている。他の埋没物は、眼房水を前眼房から脈絡上板スペース、眉上のスペース、ブドウ膜近傍スペースまたは脈絡膜に分流する。さらに別の用途では、埋没物202は、眼房水を前眼房208からシュレム管、シュレム管内のコレクタチャネルまたは強膜上静脈のような多数の様々な血管のいずれかに分流する。一部の例では、埋没物は、眼房水を前眼房208から結膜外へも分流する。
図4は、埋没物202のより詳細な例を示す。埋没物202は、電動治療用素子216と電力および制御部分218を含む。電力および制御部分218は、埋没電子機器220、埋没アンテナ管理回路222、アンテナ224およびエネルギー貯蔵素子226を含む。治療用素子216は、たとえば、電気的に駆動されるバルブ、ポンプ、注入器、トランスデューサーまたはセンサー、薬物送達素子、または眼の病状を治療するかまたは眼の状態をモニタリングするように構成された他のモニタリングまたは治療用デバイス、またはそれらのあらゆる組合せであり得る。たとえば遠隔計器、データ送信モジュールまたは外部ユニット204と通信する他の素子も含み得る。
埋没電子機器220は、電力、ロジック、制御または他の電気制御的役割を提供することで、治療用素子216の働きを制御する。1つの例では、埋没電子機器220は、ロジック機能を実行できるパワー、入力および出力ピンを有する集積回路などのプロセッサーを含む。様々な実施形態では、プロセッサーは、対象のデバイスのコントローラーである。そのような場合、プロセッサーは、治療用素子216と通信し、それを対象とする特定の制御機能を実行する。他の実施形態では、プロセッサーはプログラム可能マイクロプロセッサーであって、電動治療用素子216を制御するように機能できる。他の場合では、プロセッサーは、埋没物202の異なる態様または機能を制御するようにされた、特殊目的のコントローラーである。埋没電子機器は、管理回路と電気的に通信して電力を受ける。一部の実施形態では、これはプロセッサーまたはメモリを含み得るか、またはハードコードされたメモリであり得る。
埋没アンテナ管理回路222は、フィルターと、埋没電子機器220と半二重データに電力を供給する電気回路部品を含む。埋没アンテナ管理回路222は、埋没電子機器220と電気的に通信し、エネルギー貯蔵素子226から電力を引き出して埋没電子機器220に送る。
この例では、アンテナ224は、電力および制御部分218の周辺部分の周りかまたはそこに隣接して伸長している多重ループアンテナである。アンテナ224は、以下に記述するように、外部ユニット204から励起エネルギーを受けるよう動作する。その電気インピーダンスは誘導性であり、外部ユニット204の電磁束界内に置かれると、コイルインダクターとしてふるまい、電気エネルギーを生成する。それはトランスデューサーまたはA/Cコンバーターへの場であってもよい。アンテナ224は、圧電結晶、光起電体または電力を捕捉して埋没物202を動作させ得る他のエネルギー捕捉システムであってもよい。
示した例では、エネルギー貯蔵素子226は、平行配列のコンデンサーなどの、エネルギー貯蔵用の平行配列の受動的電気部品である。しかし、エネルギー貯蔵素子226は、コンデンサーまたは配列またはコンデンサー、1または複数の電池、または埋没物アンテナ224を用いた電磁波ハーベスターの組合せの1または複数であり得る。
上述したように、埋没物202は、眼の中に永久的または一時的に埋め込まれるように寸法決めされ配置されている。したがって、埋没物202の一部の実施形態では、たとえば約16mm×16mmよりも小さい範囲で、好ましくは約12mm×12mmよりも小さく、約3mm未満、好ましくは約2mm未満の厚みを有する寸法にされている。1つの例では、埋没物は、1.5〜2mmの範囲の厚みを有する。埋没物202は、眼球の半径(約0.5インチ)に形成され得る。埋没物202は、剛性で、眼球に実質的に適合する曲線を有して機能され得るか、可撓性で、眼球に適合するように撓み得る。一部の埋没物の実施形態は十分に小型なので、眼球への適合による快適性や埋込み技術における利点はほとんどない。
埋没物202は、結膜と強膜の間の結膜下ポケット内に、IOP制御システム200の前縁部が角膜輪部(角膜と強膜の境界)のわずか後方に配置された状態で、眼内配置され得る。埋没物202は、固定構造、埋没隅角および周辺の解剖学的構造を介して、または埋没物202を安定させるばね力または他の機構により、眼内の所定位置に保持され得る。
図2に戻ると、この例示的実施形態では、外部ユニット204は、ここでは眼鏡として示される支持構造240、送信機242および取り付けられた電源244を含む。送信機242は、電磁界を発するように配置され、具体的には埋没物202を捕捉するか包含する部分内に電磁界を送信する位置で支持構造240に配置される。したがって、送信機242は、電磁界を患者の眼内に向けるのに適した場所に配置され得る。この例では、送信機242は、患者が支持構造240を着用しているとき送信機242を患者のこめかみに隣接して配置する場所で支持構造240に担持される。別の例では、送信機242は、眼鏡支持構造の接眼レンズのところに配置される。1つの例では、送信機は、眼鏡の接眼レンズを囲むコイルを有するソレノイドであり、コイルはフレームに埋め込まれているか、フレームを形成している。
ここでは眼鏡として示されているが、支持構造240は、送信機242を埋没物202に対し特定の方向に固定するように配置されるあらゆる構造であり得る。1つの例では、支持構造は、つばに送信機242が取り付けられた野球帽である。他の例は、他の種類の帽子、ボンネット、フード、ヘッドギア、イヤホンその他を含む。支持構造の一部の例は、着用されるのではなく、埋め込まれた埋没物の充電範囲内にあるように配置されている。たとえば、支持構造は、患者が眠っている間に埋没物を充電するように配置された枕または枕カバーに関連し得る。あるいは、ヘッドボード、ナイトテーブルまたは他の家具に取り付けるようにされてもよい。他の例では、埋没物を充電するのに外部ユニットの近くに埋没物を配置するような場所に患者が位置しやすくする単なる筐体である。
電源244は、リチウムイオンまたはリチウムポリマー電池などの充電池であるが、他の種類の電池を使用してもよい。さらに、他のあらゆる種類の動力電池が電源244として適している。電源244が送信機242に電力を供給すると、今度は埋没物202に電力が供給される。この例では、電源は、送信機242から離れて配置され得、患者のポケット内に収まる寸法であるか、ポケットに担持される。他の例では、患者の帽子または他の場所に縫いこまれ得る。1つの例では、電源244は、標準的な電気コンセントを介してアクセスされ得るような、送電網からの一般的な電力である。これは、外部ユニット204が据え置き型システムである場合、特に効果的である。この例における電源244は、ワイヤまたは他の導電体を介して送信機と連通し得る。
図5は、送信機242が生成した例示的電磁束または電磁界と、送信機242および埋没物202の1つの例を示す。この例では、送信機242は、この実施形態ではソレノイドであり得る送信アンテナ250を含む。図示のとおり、送信機242を埋め込まれた埋没物202に対し適切な位置に配置することで、埋没物202は電磁束の部分内に捕捉され、送信機242からのエネルギーを受けることができる。支持構造240上の送信機242の位置は、埋没物と支持構造240の予定の方向に基づき、所望の方向で、高レベルの電磁束が得られるように選択してよい。たとえば、送信機は、予定の位置で、患者が前方を見ているとき、電磁束発信方向が埋没物アンテナ224に対し水平になるような位置と方向で、支持構造上に配置され得る。このことは、埋没物に電力を供給するためアンテナが捕捉する電磁束の量を最大限化し得る。送信機の長さ、ワイヤが巻きつけられる材料の導磁性および送信機242の端部に対する埋没物202上の埋没物アンテナ224の相対的な位置および角度はすべて埋没物202へのエネルギー伝達効率に影響する。
図5は、長手方向伸長体としての送信アンテナ250を示す。1つの例では、送信アンテナ250は、第1端部と第2端部の間に伸長する筒形の物体である。送信された磁界束密度は、送信アンテナ250を軸上に置いて円環形の場として機能する。図示のとおり、磁束界の形状を考慮すると埋没物202は送信機242から放射された磁束の大部分を利用できない。
送信機242の代替実施形態を図6に示す。図6の送信機242は、送信アンテナ250と、送信アンテナ250からの電磁束をより大量に埋没物202に向ける電磁束分路252の両方を有する。この例では、電磁束分路252は、埋没物202に占められていない部分に送信される電磁束を減ずる補助をする。このことは、システムの電気効率を高め得、意図しない放射を減じ得、複数の共配置されたシステムが患者内で最小限のRF干渉で動作することを可能にし得る。さらに、埋没物202に大量に向けられる送信アンテナ250から送信されたエネルギーは、他の埋没物上に存在し得る近隣の応答ユニットによる捕捉効果を減ずるか回避し得る。これによって良好な送信と、ヒト通道組織に埋め込まれている埋没物から生じる劣化の低減がもたらされ得る。
図6を参照すると、電磁束分路252は、送信アンテナ250が生成する電磁束部分に隣接するかその中に配置されて、所望しない領域への電磁束部分を制限するかまたは減ずる。ここで、電磁束分路252は、送信アンテナ250の埋没物202とは反対側に配置された低磁気抵抗材料である。この例では、電磁束分路252は、長手方向に伸長する素子であり、送信アンテナと実質的に同じ長さであり、送信アンテナ250と実質的に平行に配置されている。図6の磁束界の形状と密度からわかるように、低磁気抵抗性の電磁束分路252は、局所電磁束のほとんどを回収して送信アンテナ250へと送り返すことで、送信アンテナ250の周囲の所望でない部分への送信を減ずる。磁束は最も抵抗の少ない経路の周りに集中するので、低磁気抵抗性の分路252の配置により方向性磁束送信が可能になる。
しかし、他の実施形態では、電磁束分路252の長手方向の長さは、送信アンテナ250の長手方向の長さよりも長い。さらに、一部の実施形態では、その形状は送信アンテナ250と異なる。送信アンテナ250に対し電磁束分路252の形状、寸法及び配向を変えることで、送信アンテナ250から放射された電磁束界の方向性制御を提供できる。このように、電磁束界は、埋没物は最も効率のよい方法で充電するように 制御され得る。
図6では、電磁束分路252と送信アンテナ250は、埋没物202の回路に対し、より効率よく電磁束界を供給する。電磁束分路252と送信アンテナ250は、用途に合わせた電磁束界で、眼鏡デザイン内などで着用式支持構造240に取り付けられるほど小さい。つまり、支持構造240の使用中に治療用埋没物202が配置される予定の方向に電磁束界を向ける。磁気回路の原理を当てはめると、送信量の電磁束の一部を、分流して送信アンテナ250に戻すことで、再循環させることが可能である。非分流電磁束と異なり、再循環された電磁束は意図しない方向に伝搬されない。この磁気分流が低損失ならば、送信アンテナ250のエネルギー貯蔵素子の特性が強化され、ワイヤの巻回数の減少および/または最低限必要な埋没物の動作電磁束を生じる励弧電流の減少が可能になろう。電磁束分流技法は、3次元の界臨界密度の形成に使用され得る。電磁束分路252を用いて電磁束を方向付けることで、システムの電気効率が向上し、望まない放射が減少し、動作性が向上する。
1つの実施形態では、埋没物202は、埋没物または検討すべき眼の状態に関する情報の発信を可能にする送信デバイスを含む。たとえば、流量、圧力、充電状態および他の条件が埋没物202から発信され得、医師または所望の治療を提供するかもしくは受けるシステムがそれを検討する。
使用において、医師は、電動治療用素子とともに眼内埋没物202を患者の眼内に埋め込んで眼の病状に対処する場合がある。埋没物202は、動作に使うエネルギーをそのエネルギー貯蔵素子226から引き出し得る。患者は、エネルギー貯蔵素子226をワイヤレス充電するか、または外部ユニット204を用いて埋没物202を包含する電磁界を生成することで埋没物202に電力を供給し得る。電磁界の生成は、電源244からのエネルギーをソレノイドであり得る送信アンテナ250に向けることで達成され得る。
1つの例では、送信機242などの外部ユニット204の少なくとも一部分が、顔の周りの着用式支持構造240、たとえば眼鏡、キャップまたは他の着用式要素上に着用される。したがって、送信機242は、ユーザーの頭と顔の周りで快適に担持されるよう十分に小さい寸法であり得る。送信機242の位置は、所望の電磁束量を所望の向きで埋没物アンテナ224に供給できるように選択され設計される。次に送信機242に電力が供給され、電磁束界が発せられる。
一部の実施形態では、電磁界の方向は、電磁界内で所望の送信方向と反対の位置に分路252を配置することで制御される。たとえば、分路252を配置することは、送信アンテナ250が分路252と埋没物202の間の領域内に配置されるように分路を配置することを含み得る。したがって、電磁界は、電磁束分路252の方向よりも埋没物202の方向に強くなる。
眼内埋没物と送信機を参照して説明したが、電磁束分流技法は、眼内埋没物以外の用途もあり得る。眼鏡のこめかみのアンテナ載置コンセプトとは異なる外部ユニットとともに使用してもよい。フェライトはカスタムメイドでの成形と機械加工が可能なので、電磁束分路は、本明細書での記載に加えて、多くの方法で、多くの方向に電磁束を向けるのに使用され得る。
当業者であれば、本開示が包含する実施形態は上述の特定の例示的実施形態に制限されないことを理解されよう。この観点から、例示的実施形態を示し説明してきたが、上記の実施形態においては広範な変形、変更および代用が企図される。そのような変化は、本開示の精神から逸脱することなく上記に加えられ得ることが理解される。したがって、添付の請求項は、本開示に沿って広義に解釈されるのが適切である。