JP2015232034A - 炎症性腸疾患用薬剤 - Google Patents
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Abstract
Description
UCは大腸に限局された、びまん性の腸粘膜の炎症が主体の疾患であり、炎症の繰り返しにより大腸癌の発症をもたらし、手術が必要となる場合も多い。また手術後も便回数の増加、漏便、嚢炎(pouchitis)の発症の問題がある。UCには、初回発作型、再燃緩解型、慢性持続型、急性激症型の症状が知られている。UCの重症例に対してはステロイド投与が行われているが、ステロイド投与による副作用発現(骨粗しょう症や易感染性)などへの、より強い配慮が必要で、いたずらに長期のステロイド投与にならないように留意すべきとされている。
CDは小腸から大腸にまたがる病変で、非連続性の粘膜下を中心に全層性の炎症が強い疾患であり、炎症を繰り返すことで腸管合併症(狭窄、ろう孔、膿瘍)を生じ手術を要するとされている(非特許文献1)。
抗CD81抗体に関して、アレルギー疾患である受身皮膚アナフィラキシーモデルに生じる45時間の血管透過性反応を、抗CD81抗体の単回投与で抑えることが報告されている(特許文献1)。また、炎症性腸疾患の動物モデルであるマウス大腸炎モデルにおいて発症する5日間の単発性の腸炎症状が抗CD81抗体を投与することで抑えられることも報告されている(特許文献2)。
また、多発性硬化症のモデル動物である実験的自己免疫性脳脊髄炎マウスにおいて発症する単発性の神経麻痺症状が、抗CD81抗体の一つのクローンEat2を2日毎に、合計10回投与することで抑えられ、他の抗CD81抗体クローン2F7では抑えられなかったことも報告されている(非特許文献4)。
以上のように、2日毎に抗CD81抗体を投与することで改善する病態モデルは報告されており、抗CD81抗体の継続投与が薬効の発現に重要であることを示している。
従って、本発明の課題は、緩解導入だけでなく長期間緩解維持効果を有する炎症性腸疾患の緩解維持用薬剤、並びに炎症性腸疾患の緩解維持方法を提供することにある。更に、本発明の課題は、難治性の炎症性腸疾患の予防、改善または治療用薬剤、並びに難治性の炎症性腸疾患の予防、改善または治療方法を提供することにある。
本発明はかかる知見を基礎にして完成するに至ったものである。
[1].抗CD81抗体を有効成分として含む、炎症性腸疾患の緩解維持用薬剤;
[2].抗CD81抗体を有効成分として含む、難治性の炎症性腸疾患の予防、改善または治療用薬剤:
[3].難治性の炎症性腸疾患が、再燃若しくは再発を繰り返す炎症性腸疾患または慢性に病勢が持続する炎症性腸疾患を意味する、上記[2]に記載の予防、改善または治療用薬剤。
[4].難治性の炎症性腸疾患が、ステロイド依存性またはステロイド抵抗性の炎症性疾患である、上記[2]または[3]に記載の予防、改善または治療用薬剤;
[5].難治性の炎症性腸疾患が、通常の治療に抵抗性または耐性の炎症性腸疾患を意味する、上記[2]〜[4]のいずれかに記載の予防、改善または治療用薬剤;
[6].通常の治療が、既存治療薬を投与することを意味する、上記[5]に記載の予防、改善または治療用薬剤;
[7].既存治療薬が、5−アミノサリチル酸製剤、ステロイド、免疫抑制剤、TNF阻害剤またはインテグリン阻害剤である、上記[6]に記載の予防、改善または治療用薬剤;
[8].既存治療薬が、スルファサラジン、抗TNF抗体、サラゾスルファピリジン、メサラジン、ベタメタゾン、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、リン酸ベタメタゾン、プレドニゾロン、アザチオプリン、タクロリムス、6−メルカプトプリン、サイクロスポリン、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、ペゴールまたはナタリズマブである、上記[7]に記載の予防、改善または治療用薬剤;
[9].単回投与で長期間緩解維持効果を有する、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の薬剤;
[10].緩解維持効果が、腸炎の再燃もしくは再発の繰り返しを抑制し、緩解状態を維持する効果である、上記[9]に記載の薬剤;
[11].既存治療薬を単回もしくは複数回投与しても緩解維持しない炎症性腸疾患患者に対して処置される、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の薬剤;
[12].既存治療薬が上記[7]または[8]に記載の既存治療薬である、上記[11]に記載の薬剤;
[13].治療期間中は2〜30週間に1回投与される、上記[1]〜[12]のいずれかに記載の薬剤;
[14].1回の投与量が0.01〜15mg/kgである、上記[13]に記載の薬剤;
[15].炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎である、上記[1]〜[14]のいずれかに記載の薬剤;
[16].炎症性腸疾患が、クローン病である、上記[1]〜[14]のいずれかに記載の薬剤;
[17].抗CD81抗体を必要とする対象に投与することを含む、炎症性腸疾患の緩解を維持する方法;
[18].抗CD81抗体を必要とする対象に投与することを含む、難治性の炎症性腸疾患を予防、改善または治療する方法;
[19].難治性の炎症性腸疾患が、再燃若しくは再発を繰り返す炎症性腸疾患または慢性に病勢が持続する炎症性腸疾患を意味する、上記[18]に記載の方法;
[20].難治性の炎症性腸疾患が、ステロイド依存性またはステロイド抵抗性の炎症性腸疾患である、上記[18]または[19]に記載の方法;
[21].難治性の炎症性腸疾患が、通常の治療に抵抗性または耐性の炎症性腸疾患を意味する、上記[18]〜[20]のいずれかに記載の方法;
[22].通常の治療が、既存治療薬を投与することを意味する、上記[21]に記載の方法;
[23].既存治療薬が、5−アミノサリチル酸製剤、ステロイド、免疫抑制剤、TNF阻害剤またはインテグリン阻害剤である、上記[22]に記載の方法;
[24].既存治療薬が、スルファサラジン、抗TNF抗体、サラゾスルファピリジン、メサラジン、ベタメタゾン、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、リン酸ベタメタゾン、プレドニゾロン、アザチオプリン、タクロリムス、6−メルカプトプリン、サイクロスポリン、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、ぺゴールまたはナタリズマブである、上記[23]に記載の方法;
[25].単回投与で長期間緩解維持効果を発揮する上記[17]〜[24]のいずれかに記載の方法;
[26].緩解維持効果が、腸炎の再燃もしくは再発の繰り返しを抑制し、緩解状態を維持する効果である上記[25]に記載の方法;
[27].既存治療薬を単回もしくは複数回投与しても緩解維持しない炎症性腸疾患患者に対して抗CD81抗体を投与する、上記[17]〜[20]のいずれかに記載の方法;
[28].既存治療薬が上記[23]または[24]に記載の既存治療薬である、上記[27]に記載の方法;
[29].治療期間中は2〜30週間に1回投与される、上記[17]〜[28]のいずれかに記載の方法;
[30].1回の投与量が0.01〜15mg/kgである、上記[29]に記載の方法;
[31].炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎である、上記[17]〜[30]のいずれかに記載の方法;および
[32].炎症性腸疾患が、クローン病である、上記[17]〜[30]のいずれかに記載の方法。
従って、抗CD81抗体を有効成分とする薬剤は、単回投与により、炎症性腸疾患の緩解導入効果を示すのみならず、長期間緩解維持効果を示すことで緩解維持用薬剤として、また、難治性の炎症性腸疾患の予防、改善、治療用薬剤として利用することができる。更に、抗CD81抗体の単回投与により、炎症性腸疾患の緩解導入効果を発揮するのみならず、長期間緩解維持効果を示すことで緩解維持方法として、また、難治性の炎症性腸疾患の予防、改善、治療方法として利用することができる。
(1)抗CD81抗体
本発明における抗CD81抗体は、CD81を特異的に認識する抗体であればよく、具体的には、CD81遺伝子の発現産物(タンパク質)(これを本明細書においては「CD81」ともいう)を特異的に認識することのできる抗体であればよい。
ここにおいて、CD81とは、ヒトCD81を示す特定のアミノ酸配列(配列番号2(NP_004347))で示される「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」だけでなく、これらと生物学的機能が同等であることを限度として、その同族体(ホモログやスプライスバリアント)、変異体、誘導体、成熟体及びアミノ酸修飾体などが包含される。ここでホモログとしては、ヒトのタンパク質に対応するマウスやラットなど他生物種のタンパク質が例示でき、これらはhttp://www.ncbi.nlm.nih.govに掲載された遺伝子の塩基配列(配列番号1(NM_004356))から演繹的に同定することができる。また変異体には、天然に存在するアレル変異体、天然に存在しない変異体、及び人為的に欠失、置換、付加または挿入されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が包含される。なお、上記変異体としては、変異のないタンパク質または(ポリ)ペプチドと、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは95%、さらにより好ましくは97%相同なものを挙げることができる。またアミノ酸修飾体には、天然に存在するアミノ酸修飾体、天然に存在しないアミノ酸修飾体が包含され、具体的にはアミノ酸のリン酸化体が挙げられる。
好ましくは、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。これらにはヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、またはFabフラグメントやFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメント、低分子化抗体(抗体断片も含む)、多特異性抗体等、さらに抗体修飾物が含まれる。また抗原結合性を有する上記抗体の一部が包含される。
本発明で使用される抗CD81抗体は、例えば市販の抗CD81抗体(ファーミンジェン社製、サンタクルーズ社製、バイオレジェンド社製、サザンバイオテクノロジー社製、アンセル社製、モルフォシス社製、ケミコン社製、アブカム社製、イムノテック社製、R&D社製など)を使用することもできるし、公知の手段を用いて製造されるポリクローナル又はモノクローナル抗体であってもよい。
本発明で使用される抗CD81抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体が好ましい。モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体は当業者に公知の方法によって作製することができる。
哺乳動物由来のモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体としては、動物の血中に産生されるもの、ハイブリドーマによって産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主によって産生されるもの、ファージディスプレイにより1兆個の分子からなる莫大なクローンライブラリーから最適抗体がスクリーニングされ、その遺伝子をCHO細胞工場で大量生産されるもの、もしくは、ヒトの抗体を生産するトランスジェニックマウスを使い、直接ヒト抗体が得られるものなどが挙げられる。
例えば、ポリクローナル抗体は、次のようにして得ることができる。すなわち、天然のCD81タンパク質、あるいはGSTとの融合タンパク質として大腸菌等の微生物において発現させたリコンビナントCD81タンパク質、またはその部分ペプチドをウサギ等の小動物に免疫し血清を得る。これを、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、CD81タンパク質や合成ペプチドをカップリングしたアフィニティーカラム等により精製することにより調製する。
抗原の調製は、例えば、バキュロウイルスを用いた方法(例えば、国際公開第WO98/46777号など)などに準じて行うことができる。抗原の免疫原性が低い場合には、アルブミン等の免疫原性を有する巨大分子と結合させ、免疫を行えばよい。
このように哺乳動物を免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付すが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3U1(P3−X63Ag8U1)、P3(P3x63Ag8.653)(J.Immunol.(1979)123,1548-1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology(1978)81,1-7)、NS−1(Kohler.G.and Milstein,C.,Eur.J.Immunol.(1976)6,511-519)、MPC−11(Margulies.D.H.et al.,Cell(1976)8,405-415)、SP2/0(Shulman,M.et al.,Nature(1978)276,269-270)、FO(de St.Groth,S.F.et al.,J.Immunol.Methods(1980)35,1-21)、S194(Trowbridge,I.S.,J.Exp.Med.(1978)148,313-323)、R210(Galfre,G.et al.,Nature(1979)277,131-133)等が好適に使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、たとえば、ケーラーとミルステインらの方法(Kohler.G.and Milstein,C.、Methods Enzymol.(1981)73,3-46)等に準じて行うことができる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1−10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000−6000程度)を通常30−60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とするハイブリドーマを形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球、例えばEBウィルスに感染したヒトリンパ球をin vitroでタンパク質、タンパク質発現細胞又はその溶解物で感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、所望の活性(例えば、細胞遊走抑制活性)を有するヒト抗体を産生するハイブリドーマを得ることもできる。
本発明におけるモノクローナル抗体には、抗体を構成する重鎖および/または軽鎖の各々のアミノ酸配列において一若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する重鎖および/または軽鎖からなるモノクローナル抗体も包含される。本発明による抗体のアミノ酸配列中への、このようなアミノ酸の部分的改変(欠失、置換、挿入、付加)は、そのアミノ酸配列をコードする塩基配列を部分的に改変することにより導入することができる。この塩基配列の部分的改変は、既知の部位特異的変異導入法(Site specific mutagenesis)を用いて常法により導入することができる(Proc.Natl.Acsd.Sci.USA.,1984 Vol81,5662; Sambrook et al.,Molecular Cloning A Laboratory Manual (1989) Second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press)。
本発明では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体も使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ型抗体及びそれらの製造方法は、当該技術分野で既に記述されている(Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851〜6855(1984);Boulianne et al.,Nature 312:643〜646(1984);Liu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84 :3439〜3443(1987);Sun et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:214〜218(1987);Better et al.,Science 240:1041〜1043(1988);及びHarlowとLane,ANTIBODIES: ALABORATORY MANUAL Cold Spring Harbor Laboratory(1988))。
キメラ抗体、ヒト化抗体には、ヒト抗体C領域が使用される。ヒト抗体C領域としては、Cγが挙げられ、例えば、Cγ1、Cγ2、Cγ3又はCγ4を使用することができる。また、抗体又はその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。キメラ抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来のC領域からなり、ヒト化抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域とヒト抗体由来のフレームワーク領域およびC領域からなり、ヒト体内における抗原性が低下しているため、本発明に使用される抗体として有用である。
低分子化抗体は、全長抗体(whole antibody、例えばwhole IgG等)の一部分が欠損している抗体断片を含み、抗原(CD81タンパク質)への結合能を有していれば特に限定されない。抗体断片は、全長抗体の一部分であれば特に限定されないが、重鎖可変領域(VH)又は/及び軽鎖可変領域(VL)を含んでいることが好ましい。
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域を連結することにより得られる。これらの領域は単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、FvポリペプチドはさらにVHおよびVLの間にポリペプチドリンカーを含んでおり、これによりscFvは、抗原結合のために必要な構造を形成することができる(scFvの総説については、Pluckthun“The Pharmacology of Monoclonal Antibodies”Vol.113(Rosenberg and Moore eds. (Springer Verlag,New York) pp.269-315,1994)を参照)。リンカーは、その両端に連結された抗体可変領域の発現を阻害するものでなければ特に限定されない。
このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域はリンカー、好ましくは、ペプチドリンカーを介して連結される(Huston,J.S.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1988) 85,5879-5883)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、上記抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12−19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖又は、H鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖又は、L鎖V領域をコードするDNAを鋳型とし、それらの配列のうちの所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNAおよびその両端を各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。また、一旦scFvをコードするDNAが作製されれば、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いて常法に従って、scFvを得ることができる。
sc(Fv)2は、2つのVH及び2つのVLをリンカー等で結合して一本鎖にした低分子化抗体である(Hudson et al.,J Immunol.Methods 1999;231:177-189)。sc(Fv)2は、例えば、scFvをリンカーで結ぶことによって作製できる。
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野においてすでに確立されている。
例えば、上記アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィー、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせれば、本発明で使用される抗体を分離、精製することができる。クロマトグラフィーとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲルろ過等が挙げられる。これらのクロマトグラフィーはHPLC(High performance liquid chromatography)に適用し得る。また、逆相HPLCを用いてもよい。
炎症性腸疾患とは、腸が炎症を起こし、腹部の激しい痛みと下痢を繰り返し起こす状態の疾患であり、その病態から潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis;UCと略される)とクローン病(Crohn's disease;CDと略される)とに分類されるが、共に長期にわたり、多くが緩解、再燃を繰り返す疾患である。
現在、炎症性腸疾患の治療用医薬品の効能効果としては、例えば、免疫抑制剤であるアザチオプリン(azathioprine)は、日本においては、「ステロイド依存性のクローン病の緩解導入及び緩解維持並びにステロイド依存性の潰瘍性大腸炎の緩解維持」として承認され、免疫抑制剤であるタクロリムス(tacrolimus)は、日本においては、「難治性(ステロイド抵抗性、ステロイド依存性)の活動期潰瘍性大腸炎(中等症〜重症に限る)」として承認されている。また、抗TNF抗体であるインフリキシマブ(infliximab)は、日本においては、クローン病に対して「栄養療法、他の薬物療法(5−アミノサリチル酸製剤等)等の適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に本剤の投与を行うこと。」とされている。また、該医薬品は、米国においては、クローン病については、「通常の治療に抵抗性の中等度〜重症の成人あるいは若年性活動性クローン病患者における徴候と症状の抑制と緩解導入および維持。ろう孔を伴う成人クローン病患者の外腸瘻数および直腸膣瘻の減少とろう孔の閉塞の維持」として、潰瘍性大腸炎については、「通常の治療に抵抗性の中等度〜重症の活動性潰瘍性大腸炎患者における徴候と症状の抑制、臨床的緩解と粘膜治癒の導入および維持」として承認を受けている。
難治性とは、栄養療法や他の薬物療法等の通常の治療を適切に行っていても、再燃を繰り返したり、慢性に病勢が持続する等の疾患に起因する臨床症状が残る状態を意味する。「慢性に病勢が持続する」とは、治療開始後6ヶ月以上症状が持続している状態を意味し、ステロイド依存性またはステロイド抵抗性等の通常の治療に抵抗性又は耐性の状態(疾患)が含まれる。
通常の治療に使用される既存治療薬としては、5−アミノサリチル酸製剤(例えば、サラゾスルファピリジン、スルファサラジン、メサラジン)、ステロイド(例えば、ベタメタゾン、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、リン酸ベタメタゾン、プレドニゾロン)、免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、タクロリムス、6−メルカプトプリン、サイクロスポリン)、TNF阻害剤(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、ぺゴール)、インテグリン阻害剤(例えば、ナタリズマブ)が例示できる。
特許文献2(国際公開番号WO/2005/021792号)には、CD81がIBD惹起性細胞に高発現しており、抗CD81抗体が、初回発作型のマウス大腸炎モデルに対して治療効果を示すという新たな知見が示されている。しかしながら、国際公開番号WO/2005/021792号には、抗CD81抗体が、再燃(再発)と緩解を繰り返す再燃緩解型および慢性持続型の難治性炎症性腸疾患の予防、改善または治療にも有効であるということについてまでは、明らかにされていない。本発明者は、再燃緩解型症状の炎症性腸疾患を示す新たな動物モデルを作製し、この動物モデルに対して、抗CD81抗体を単回投与するだけで、長期間に亘って腸炎の持続と再燃(再発)を抑制できることを新たに見出した。本発明は、抗CD81抗体が再燃緩解型(再燃(再発)と緩解を繰り返す症状)および慢性持続型の難治性の炎症性腸疾患の予防、改善または治療にも有効であるという新たな知見に基づくものである。
したがって、本発明が提供するIBDの緩解維持用薬剤乃至難治性のIBDの予防、改善および治療用薬剤は、既存の治療剤が有さない緩解維持効果を有する抗CD81抗体を有効成分とするものである。言い換えれば既存の治療剤では単回もしくは複数回投与しても再燃(再発)と緩解を繰り返す症状が予防、改善または治療されない患者に対して、単回の投与でも上記症状が予防、改善または治療できるものである。
注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80TM、HCO−50と併用してもよい。
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
抗CD81抗体単回投与によるDSS(デキストラン硫酸水溶液)誘発マウス大腸炎モデルに対する再燃抑制効果
マウスにDDS(デキストラン硫酸水溶液)を投与して再燃緩解型の潰瘍性大腸炎を誘発し、この再燃緩解型潰瘍性マウス大腸炎モデルに、抗CD81抗体を単回投与し、既存治療剤である抗TNF−α抗体の単回投与及びサルファサラジンの複数回投与と比較し、抗CD81抗体を単回投与した場合の潰瘍性大腸炎の再燃(再発)抑制効果について調べた。
(1)DSSの調製
デキストラン硫酸(TdB consultancy AB社製、平均分子量47,000)を飲料水に溶解し、1%水溶液に調製した。
対象検体薬として、ハムスター抗CD81抗体、ラット抗TNF−α抗体およびスルファサラジンを用い、病態コントロール検体薬として、ラットIgG及びハムスターIgGを用いた。
ハムスター抗CD81抗体(Clone:2F7、Southernbiotech社製、マウスCD81に対するモノクローナル抗体)とラットIgGは原液を濃縮した液に、ラット抗TNF−α抗体とハムスターIgGは原液にリン酸バッファーを添加して、0.25mg/ml投与液とした。スルファサラジン(シグマ社製)は、メチルセルロース(ナカライテスク社製)を注射用蒸留水(大塚製薬社製)で、0.5%に溶解した水溶液に、20mg/mlでスルファサラジンを懸濁し投与液とした。
4週齢のマウス(BALB/cAnNCrj、♂、日本チャールズリバー社製)を購入し、6日間の検疫飼育後に異常の観察されなかったマウスの体重を測定し、1群10匹で6群に群分けした。群分け日から5日間、1%DSSを5群のマウスに自由摂取させ(1回目DSS摂取)、1群は正常マウス群として、通常飲料水を摂取させた。5日間、DSSを摂取させた後に、6群全てのマウスに通常飲料水を5日間、摂取させた。通常飲料水摂取後に、5日間、1%DSSを5群のマウスに自由摂取させ(2回目DSS摂取)、1群は正常マウス群として通常飲料水を摂取させた後に試験を終了とした。群分け日に、0.5mg/マウスで、ハムスターIgG、ラットIgG、抗CD81抗体、抗TNF抗体を腹腔内に1回投与した。群分け日から試験終了日の前日までに、1日1回、スルファサラジン投与液を200mg/kgで経口投与した。
群分け日から試験終了日までの大腸炎症状観察を行った。大腸炎症状は便の状態(正常便(スコア:0)、軟便(スコア:1)、下痢(スコア:2))でスコア判定した。
実験終了日に、全群のマウス尾静脈に0.1mlの2.5%ブリリアントブルー6B液を静注した。静注10分後に炭酸ガスで安楽死処分し、心臓採血にて脱血した。肛門の2cm上から4cmまでの大腸を摘出し、生理食塩水でよく洗い、ろ紙に挟み75%エタノールで30分間固定化し、5%過酸化水素含有生理食塩水で10分間浸した。その後、エタノール液でよく洗い、潰瘍の大きさを測定した。1平方ミリ以上の潰瘍があるマウスを潰瘍スコア「1」、1平方ミリ以上の潰瘍がないマウスを潰瘍スコア「0」とした。
(1)大腸炎症状スコア判定による大腸炎症状の経日変化
図1(a)に、ハムスターIgG及びハムスター抗CD81抗体のそれぞれを単回投与した場合、並びに通常飲料水を摂取させた場合(正常群)の大腸炎症状スコア判定による大腸炎症状の経日変化を、図1(b)に、ラットIgG及びラット抗TNF−α抗体をそれぞれ単回投与した場合、並びにスルファサラジンを毎日投与した場合の大腸炎症状スコア判定による大腸炎症状の経日変化を示した。図1(a)及び図1(b)において、Day0が群分け日、Day0から4までが1回目DSS摂取期間、Day5から9までが通常飲料水摂取期間、Day10から14までが2回目DSS摂取期間に相当する。
図1(a)のハムスターIgG投与群及び図1(b)のラットIgG投与群から明らかなように、DSS1回目摂取時の大腸炎症状は、図1(a)及び図1(b)のDay5からDay9に1回目の症状ピーク(初回大腸炎)として認められ、2回目再燃時の腸炎症状(再燃大腸炎)は、図1(a)及び図1(b)のDay10からDay14に認められた。そして、スルファサラジンを毎日投与した場合及びラット抗TNF−α抗体を単回投与した場合の初回大腸炎及び再燃大腸炎の抑制効果に比べて、ハムスター抗CD81抗体を単回投与した場合には、初回大腸炎及び再燃大腸炎の強い抑制効果が認められた。
図1(a)及び図1(b)の大腸炎症状の経日変化の結果に基づき、Day5からDay9の各マウスの平均した大腸炎スコアを初回大腸炎スコアとし、Day10からDay14の各マウスの平均した大腸炎スコアを再燃大腸炎スコアとした。そして、各群の大腸炎スコア(初回大腸炎スコア及び再燃大腸炎スコア)と潰瘍スコアを、Wilcoxonの検定で病態コントロール群(ハムスターIgG投与群)との2群比較を行った。それらの結果を表1と表2に示した。
抗CD81抗体のTNBS(2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸)誘発マウス大腸炎モデルに対する長期間緩解効果
マウスにTNBSを投与して得られる再燃緩解型炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)モデルに、抗CD81抗体を単回投与し、既存治療剤であるサルファサラジンの複数回投与と比較し、抗CD81抗体を単回投与した場合の炎症性腸疾患の再燃(再発)抑制効果について調べた。
(1)TNP−OVAの調製
卵白アルブミン(OVA:Sigma)0.5gとK2CO3(ナカライテスク)0.5gを25ml注射用蒸留水に溶解した(OVA溶液)。25mlの0.1MK2CO3に2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS:ナカライテスク)0.5gを溶解した(TNBS溶液)。OVA溶液とTNBS溶液を混合し、室温で一晩攪拌した。攪拌した溶液を透析膜(Spectra/Por Membrane MWCO:10,000、Spectrum Medical Industries Inc.)で0.01MNaHCO3(ナカライテスク)に透析した。透析した溶液をBCAタンパクアッセイ試薬(Peirce)でタンパク定量した。
5週齢のマウス(SJL/JorlIcoCrj、♂、日本チャールス.リバー)背部に完全フロイントアジュバント(CFA:Difco Laboratories)と2mg/mlTNP−OVAの1:1乳化液を0.1ml/headで皮下注射(感作)した。感作7日後に10mg/mlTNBS50%エタノール溶液をエーテル麻酔下で注腸(0.2ml/headを肛門より3cmまでゾンデを挿入して注入:チャレンジ)した。チャレンジ6日後の体重と症状スコアで1群7匹、4群で群分けした。群分け21日後に1日絶食させ、23日後に10mg/mlTNBS50%エタノール溶液をエーテル麻酔下で再度、注腸(0.2ml/headを肛門より3cmまでゾンデを挿入して注入:チャレンジ)した。群分け28日後に試験を終了した。
4群は、それぞれ、1mg(0.2ml)/head抗CD81抗体溶液(Clone:2F7、Southernbiotech社製)投与群、0.1mg(0.2ml)/head抗CD81抗体溶液(Clone:2F7、Southernbiotech社製)投与群、0.2ml/headコントロール抗体投与病態コントロール群、200mg/kgスルファサラジン(SSZ:Sigma)投与群を設定した。コントロール抗体として、ハムスターIgGを用いた。
投薬は抗体投与群と病態コントロール群には群分け日に単回、腹腔内投与し、SSZは群分け日から1日1回連日経口投与した。群分け28日後に実験を終了した。SSZ溶液は0.5%メチルセルロース(ナカライテスク)溶液に懸濁した。
群分け(抗CD81抗体の単回投与後)15日目から28日目までの大腸炎症状観察を行い効果の持続を調べた。腸炎症状は便の状態(正常便(スコア:0)、軟便(スコア:1)、下痢(スコア:2))でスコア判定した。死亡個体は結果より除いた。統計処理はWilcoxon順位和検定で病態コントロール群と抗CD81抗体投与群あるいはSSZ投与群での2群比較を行った。
群分け(抗CD81抗体の単回投与後)15日目から28日目までの大腸炎症状スコアの各群の平均値と標準誤差(SEM)を表3に示した。また、図2に、ハムスターIgG単回投与群、1mg(0.2ml)/head抗CD81抗体単回投与群、並びにスルファサラジン毎日投与群の大腸炎症状の経日変化を示した。
抗CD81抗体単回投与によるDSS(デキストラン硫酸水溶液)誘発マウス大腸炎モデルに対する再燃抑制効果
マウスにDSS(デキストラン硫酸水溶液)を投与して得られる再燃緩解型潰瘍性大腸炎モデルに、抗CD81抗体を単回投与し、より長期間に亘って再燃緩解型潰瘍性大腸炎を誘発した場合の抗CD81抗体の再燃抑制効果について調べた。
(1)DSSの調製
デキストラン硫酸(和光純薬社製、平均分子量5,000)を飲料水に溶解し、2%水溶液に調製した。
対象検体薬としてハムスター抗CD81抗体を、病態コントロール検体薬としてハムスターIgGを用いた。ハムスター抗CD81抗体(Clone:2F7、Southernbiotech社製)は原液を濃縮した液を投与液とし、ハムスターIgGは原液にリン酸バッファーを添加して0.25mg/ml投与液とした。
4週齢のマウス(BALB/cAnNCrlCrlj、♂、日本チャールズリバー社製)を購入し、7日間の検疫飼育後、7日間の通常飼育後にマウスの体重を測定し、1群6匹で2群に群分けした。群分け日に、0.5mg/マウスで、ハムスターIgGまたは抗CD81抗体を腹腔内に1回投与した。群分け日から5日間、2%DSSを全てのマウスに自由摂取させた後に(1回目DSS摂取)、通常飲料水を10日間摂取させた。次に5日間、2%DSSを全てのマウスに自由摂取させた後に(2回目DSS摂取)、通常飲料水を9日間摂取させた。次に5日間、2%DSSを全てのマウスに自由摂取させた後に(3回目DSS摂取)、通常飲料水を16日間摂取させた。次に7日間、2%DSSを全てのマウスに自由摂取させて(4回目DSS摂取)、試験を終了した。
群分け日から試験終了日までの大腸炎症状観察を行った。大腸炎症状は便の状態(正常便(スコア:0)、軟便(スコア:1)、下痢(スコア:2))でスコア判定した。
図3に、ハムスターIgG及びハムスター抗CD81抗体のそれぞれを単回投与した場合の大腸炎症状スコア判定による大腸炎症状の経日変化を示した。図3において、Day0が群分け日、Day0からDay5までが1回目DSS摂取期間、Day15からDay20までが2回目DSS摂取期間、Day29からDay34までが3回目DSS摂取期間、Day50からDay56までが4回目DSS摂取期間に相当する。図3から明らかなように、抗CD81抗体はDay0に1回投与したのみで、初回DSS誘発大腸炎の抑制に加え、その後の3回のDSS誘発大腸炎の再発を抑制し改善する長期緩解維持効果が認められた。
抗CD81抗体単回投与によるDSS(デキストラン硫酸水溶液)誘発マウス大腸炎モデルに対する再燃抑制効果
マウスにDSS(デキストラン硫酸水溶液)を投与して得られる再燃緩解型潰瘍性大腸炎モデルに、抗CD81抗体クローン2F7またはクローンEat2を単回投与し、再燃緩解型潰瘍性大腸炎を複数回誘発した場合の抗CD81抗体の各クローンの再燃抑制効果について調べた。
(1)DSSの調製
デキストラン硫酸(和光純薬社製、平均分子量5,000)を飲料水に溶解し、2%水溶液に調製した。
対象検体薬として、2種類のハムスター抗CD81抗体を、病態コントロール検体薬として、ハムスターIgGを用いた。
ハムスター抗CD81抗体(共に抗マウスCD81モノクローナル抗体であるClone:2F7、Southernbiotech社製またはClone:Eat2、Biolegend社製)は原液を濃縮した液を投与液とし、ハムスターIgGは原液にリン酸バッファーを添加して、0.1mg/ml投与液とした。
4週齢のマウス(BALB/cAnNCrlCrlj、♂、日本チャールズリバー社製)を購入し、7日間の検疫飼育後にマウスの体重を測定し、1群15匹で4群に群分けした。群分け日に、0.2mg/マウスで、ハムスターIgG、抗CD81抗体クローン2F7または抗CD81抗体クローンEat2を腹腔内に1回投与した。群分け日から5日間、2%DSSをマウスに自由摂取させた後に(1回目DSS摂取)、通常飲料水を10日間摂取させた。次に5日間、2%DSSをマウスに自由摂取させた後に(2回目DSS摂取)、通常飲料水を10日間摂取させた。次に5日間、2%DSSをマウスに自由摂取させた後に(3回目DSS摂取)、通常飲料水を6日間摂取させた。正常群は、すべての実験期間中、通常飲料水を摂取させた。
群分け日から40日間の大腸炎症状観察を行った。大腸炎症状は便の状態(正常便(スコア:0)、軟便(スコア:1)、下痢(スコア:2))でスコア判定した。
図4に、ハムスターIgG、ハムスター抗CD81抗体クローン2F7または抗CD81抗体クローンEat2のそれぞれを単回投与した場合の大腸炎症状スコア判定による大腸炎症状の経日変化を示した。図4から、抗CD81抗体クローン2F7または抗CD81抗体クローンEat2はDay0に1回投与したのみで、初回DSS誘発大腸炎を抑制し、その後の2回のDSS誘発大腸炎の再発を抑制し長期に亘って緩解維持効果が認められた。
図4の大腸炎症状の経日変化の結果に基づき、Day0からDay11の各マウスの平均した大腸炎スコアを初回大腸炎スコアとし、Day15からDay23の各マウスの平均した大腸炎スコアを再燃大腸炎スコアとし、Day30からDay38の各マウスの平均した大腸炎スコアを2回目再燃大腸炎スコアとした。そして、各群の大腸炎スコア(初回大腸炎スコア及び再燃大腸炎スコア及び2回目再燃大腸炎スコア)をWilcoxonの検定で病態コントロール群(ハムスターIgG投与群)との2群比較を行った。それらの結果を表4に示した。
従って、抗CD81抗体を有効成分とする薬剤は、単回の投与によっても、炎症性腸疾患の緩解導入効果を示すのみならず、長期間に亘って緩解維持効果を示すことで、炎症性腸疾患の緩解維持用薬剤として、また、炎症性腸疾患の予防、改善、治療用薬剤として利用することができる。
Claims (15)
- 抗CD81抗体を有効成分として含む、難治性の炎症性腸疾患の予防、改善または治療用薬剤。
- 難治性の炎症性腸疾患が、再燃若しくは再発を繰り返す炎症性腸疾患または慢性に病勢が持続する炎症性腸疾患を意味する、請求項1に記載の予防、改善または治療用薬剤。
- 難治性の炎症性腸疾患が、ステロイド依存性またはステロイド抵抗性の炎症性腸疾患である、請求項1または2に記載の予防、改善または治療用薬剤。
- 難治性の炎症性腸疾患が、薬物療法に抵抗性または耐性の炎症性腸疾患を意味する、請求項1〜3のいずれかに記載の予防、改善または治療用薬剤。
- 薬物療法に使用される治療薬が、5−アミノサリチル酸製剤、ステロイド、免疫抑制剤、TNF阻害剤またはインテグリン阻害剤である、請求項4に記載の予防、改善または治療用薬剤。
- 薬物療法に使用される治療薬が、スルファサラジン、抗TNF抗体、サラゾスルファピリジン、メサラジン、ベタメタゾン、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、リン酸ベタメタゾン、プレドニゾロン、アザチオプリン、タクロリムス、6−メルカプトプリン、サイクロスポリン、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、ぺゴールまたはナタリズマブである、請求項4に記載の予防、改善または治療用薬剤。
- 単回投与で長期間緩解維持効果を有する請求項1〜6のいずれかに記載の薬剤。
- 緩解維持効果が、腸炎の再燃もしくは再発の繰り返しを抑制し、緩解状態を維持する効果である請求項7に記載の薬剤。
- 5−アミノサリチル酸製剤、ステロイド、免疫抑制剤、TNF阻害剤またはインテグリン阻害剤を単回もしくは複数回投与しても緩解維持しない炎症性腸疾患患者に対して処置される、請求項1〜3のいずれかに記載の薬剤。
- スルファサラジン、抗TNF抗体、サラゾスルファピリジン、メサラジン、ベタメタゾン、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、リン酸ベタメタゾン、プレドニゾロン、アザチオプリン、タクロリムス、6−メルカプトプリン、サイクロスポリン、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、ぺゴールまたはナタリズマブを単回もしくは複数回投与しても緩解維持しない炎症性腸疾患患者に対して処置される、請求項1〜3のいずれかに記載の薬剤。
- 治療期間中は2〜30週間に1回投与される、請求項1〜10のいずれかに記載の薬剤。
- 1回の投与量が0.01〜15mg/kgである、請求項11に記載の薬剤。
- 炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎である、請求項1〜12のいずれかに記載の薬剤。
- 炎症性腸疾患が、クローン病である、請求項1〜12のいずれかに記載の薬剤。
- 単回投与で長期間緩解維持効果を有する量の抗CD81抗体を含み、治療期間中は2〜30週間に1回の頻度で複数回投与される、請求項11〜14のいずれかに記載の薬剤。
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