JP2015230168A - 光学的測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】吸収散乱性物質の分布を精度よく求めることができる光学的測定方法を提供する。【解決手段】光学的測定方法は、吸収散乱性物質を含むサンプルに光を照射または伝搬させたときに生じる反射光と参照光とを干渉させて当該干渉光データを波長の関数として検出し、干渉光データを取得するデータ取得ステップと、複数の波長帯における干渉光データから複数の波長帯における光断層画像の構成要素であるラインデータを作成するラインデータ作成ステップと、複数の波長帯におけるそれぞれのラインデータに対して、光の進行方向において空間分解能よりも狭い範囲の領域で反射光量が小さい向きに凸の溝をノイズとして検出し、当該領域において溝の深さを浅くすることによりノイズを低減するノイズ補正ステップと、ノイズを補正されたラインデータに基づいて吸収散乱性物質の分布を求めるデータ処理ステップと、を備える。【選択図】図6
Description
本発明は、光学的測定方法に関するものである。
OCT(Optical Coherence Tomography),OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)およびDOT(Diffuse Optical Tomography)等の光学的測定方法では、サンプルに光を照射または伝搬させたときに該サンプルにおいて生じる反射光を検出して、その検出結果に基づいてサンプルの情報を得ることができる。OCTでは、サンプルにおいて生じる反射光と参照光とを干渉させた光を検出することでサンプルの深さ方向の一次元の光断層画像を取得することができ、また、サンプルへの光照射の位置を走査することで二次元または三次元の光断層画像を取得することができる。
このような光学的測定方法において、サンプルに入射した光量に対してサンプルで生じた反射光の光量は吸収または散乱による減衰が含まれる場合がある。非特許文献1に記載された光学的測定方法は、複数の吸収散乱性物質を含むサンプルに光を照射または伝搬させたときに、入射光量に対する反射光量の減衰率に含まれる吸収散乱成分を複数の吸収散乱性物質それぞれについて互いに分離して求め、サンプル内部の複数の吸収散乱性物質それぞれの分布を求めることができる。
この光学的測定方法は、具体的には、複数の吸収散乱性物質を含むサンプルに光を照射または伝搬させたときに該サンプルにおいて生じる反射光と参照光とを干渉させて当該干渉光データを波長の関数として検出し、分割された複数の波長帯における干渉光データを取得する。そして、この取得した複数の波長帯における干渉光データそれぞれをフーリエ変換し、複数の波長帯における光断層画像を作成する。続いて、この光断層画像に基づいて、複数の吸収散乱性物質それぞれについて、入射光量に対する反射光量の減衰率に含まれる吸収散乱成分を求め、この吸収散乱成分に基づいて該吸収散乱性物質の分布を求める。
ところで、この光学的測定方法では、複数の波長帯における光断層画像それぞれについて、異常値の位置に対応する値がノイズとしてノイズ低減処理される。ここで、異常値とは、入射光量に対する反射光量の減衰率とそのモデル関数との残差平方和の値が閾値を超えるものである。
Chenyang Xu,et al.,"Separation of absorption and scattering profiles in spectroscopic optical coherence tomography using a least-squares algorithm",Optics Express,Vol.12,No.20,pp.4790-4803(2004).
本発明者は、上記のような光学的測定方法におけるノイズ処理によっては、求められる吸収散乱性物質の分布の精度が向上しない場合があることを見出した。本発明は、上記問題を解消する為になされたものであり、吸収散乱性物質の分布を精度よく求めることができる光学的測定方法を提供することを目的とする。
本発明の光学的測定方法は、複数の吸収散乱性物質を含むサンプルに光を照射または伝搬させたときに該サンプルにおいて生じる反射光と参照光とを干渉させて当該干渉光データを波長の関数として検出し、分割された複数の波長帯における干渉光データを取得するデータ取得ステップと、このデータ取得ステップにおいて取得された複数の波長帯における干渉光データそれぞれをフーリエ変換し、複数の波長帯における光断層画像の構成要素であるラインデータを作成するラインデータ作成ステップと、このラインデータ作成ステップにおいて作成された複数の波長帯におけるそれぞれのラインデータに対して、光の進行方向において空間分解能よりも狭い範囲の領域で反射光量が小さい向きに凸の溝をノイズとして検出し、当該領域において溝の深さを浅くすることによりノイズを低減するノイズ補正ステップと、このノイズ補正ステップにおいてノイズを補正されたラインデータに基づいて、複数の吸収散乱性物質それぞれについて、入射光量に対する反射光量の減衰率に含まれる吸収散乱成分を求め、この吸収散乱成分に基づいて該吸収散乱性物質の分布を求めるデータ処理ステップと、を備える。
本発明の光学的測定方法では、ノイズ補正ステップが、広い範囲から狭い範囲の順に領域の範囲を変えて行われてもよい。また、ノイズ補正ステップが、領域に隣接する領域外のデータそれぞれを頂点に含む反射光量が小さい向きに凸の多角形の辺または頂点上に、領域内のデータを補正してもよい。
本発明によれば、吸収散乱性物質の分布を精度よく求めることができる。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
図1は、本実施形態の光学的測定方法が適用される光学的測定システム1の概略構成を示す図である。光学的測定システム1は、OCT装置2およびプローブ3を備え、サンプル9の光断層画像を取得する。OCT装置2は、光源から出力された光を2分岐して観察光および参照光として出力する。プローブ3は、OCT装置2の光分岐部から出力された観察光を導光して先端からサンプル9へ照射するとともに、その光照射によって該サンプル9で生じる反射光を先端に入力してOCT装置2へ導光する。OCT装置2は、プローブ3により導光されて到達した反射光と参照光とを干渉させて当該干渉光を検出する。そして、OCT装置2は、この干渉光に基づいて、サンプル9の深さ方向の光断層画像を取得することができる。また、プローブ3によるサンプル9への光照射の位置を走査(スキャン)することで、OCT装置2は二次元または三次元の光断層画像を取得することができる。
本実施形態の光学的測定方法は、データ取得ステップ、ラインデータ作成ステップ、ノイズ補正ステップおよびデータ処理ステップを備える。データ取得ステップでは、複数の吸収散乱性物質を含むサンプル9に光を照射または伝搬させたときに該サンプル9において生じる反射光と参照光とを干渉させて当該干渉光データを波長の関数として検出し、分割された複数の波長帯における干渉光データを取得する。ラインデータ作成ステップでは、データ取得ステップにおいて取得された複数の帯域における干渉光データそれぞれをフーリエ変換し、複数の波長帯におけるラインデータを作成する。ノイズ補正ステップでは、ラインデータ作成ステップにおいて作成された複数の波長帯におけるそれぞれのラインデータに対して、光の進行方向において空間分解能よりも狭い範囲の領域で反射光量が小さい向きに凸の溝をノイズとして検出し、当該領域において溝の深さを浅くすることによりノイズを低減する。データ処理ステップでは、ノイズ補正ステップにおいてノイズを補正されたラインデータに基づいて、複数の吸収散乱性物質それぞれについて、入射光量に対する反射光量の減衰率に含まれる吸収散乱成分を求め、この吸収散乱成分に基づいて該吸収散乱性物質の分布を求める。
光学的測定システム1は、図2および図3を用いて説明するように、本実施形態の光学的測定方法による測定を行うこともできる。図2および図3は、本実施形態の光学的測定方法におけるデータ取得ステップおよびラインデータ作成ステップを説明する図である。干渉光のスペクトル(図2(a))に対して、帯域を分割する為の複数の窓関数(図2(b))を乗じ、各帯域のスペクトル(図3(a))をフーリエ変換する。窓関数は例えばハン関数である。このフーリエ変換の結果、複数の波長帯域におけるラインデータ(図3(b))を作成することができる。ラインデータは、横軸が光の進行方向、即ちサンプル9における深さ方向の位置zであり、サンプル9表面でz=0である。また、縦軸が波数kにおけるサンプル9内部の位置zでのログスケールでの入射光量に対する反射光量の減衰率(反射率(または輝度))Y(k,z)であり(詳しくは後述)、奥行き軸が波数kである。奥行き軸の波数kは各波数帯域の代表値であり、例えば中心値である。そして、この光断層画像に基づいて、サンプル9内部の吸収性または散乱性を有する吸収散乱性物質(例えば脂質)の分布を求めることができる。
図4は、光学的測定システム1により取得される干渉光データ等の例を示す図である。データ取得ステップにおいて、干渉光を検出することで、波長λに対する干渉光強度(信号強度)を得ることができる。この例では、波長帯域を6分割して波長帯域毎にフーリエ変換することで、波長帯域毎の光断層画像を取得することができる。
図5は、ある波長帯域における光断層画像のラインデータの一例を示すグラフである。すなわち、図5に示されるラインデータは、図3(b)に示される複数の波長帯域における光断層画像の構成要素であるラインデータの一つに相当する。ここで、光の進行方向、即ち、サンプル9の深さ方向の位置zにおける光断層画像の空間分解能は、データ取得ステップにおける干渉光データの取得条件(例えば、使用する光源の波長帯域および波長帯域の分割数等)から一義的に決まる。したがって、光の進行方向において当該空間分解能よりも狭い範囲の領域で値が振動するデータについては、高周波ノイズの影響を受けているとみなすことができる。特にOCTでは、光の干渉を利用しているので、取得される光断層画像にスペックルが生じ易いという特性があり、ラインデータにおいて当該スペックルは通常のシグナルよりも急峻な反射光量が小さい向きに凸の溝として現れる。そこで、ノイズ補正ステップでは、以下のようにして光の進行方向において空間分解能よりも狭い範囲の領域で反射光量が小さい向きに凸の溝をノイズとして検出し、当該領域において溝の深さを浅くすることによりノイズを低減する。
図6は、本実施形態の光学的測定方法におけるノイズ補正ステップを説明するグラフである。図6に示される補正前のラインデータは、図5のグラフを一部拡大したものである。ノイズ補正ステップは、領域aに隣接する領域a外のデータそれぞれを頂点に含む反射光量が小さい向きに凸の多角形の辺または頂点上に、領域a内のデータを補正する。
一例として、ここでは空間分解能を20ピクセルとし、これより狭い範囲の領域aとして19ピクセルの領域で反射光量が小さい向きに凸の溝を検出する。領域aは奇数ピクセルの範囲とされる。このとき溝の中央の最下部(極小点)に位置するデータが領域aの中央のピクセルに対応し、その両側に等しく9ピクセルずつが配置されるようにする。図6中の各データについて、領域aの中央のデータをデータD0とし、データD0から深さ方向の位置zが大きくなる方へと順番にデータD1、データD2、データD3・・・データDN(Nは自然数)とし、データD0から深さ方向の位置zが小さくなる方へと順番にデータD−1、データD−2、データD−3・・・データD−Nとする。領域aには、このうちデータD−9からデータD9までが含まれる。
溝の検出は、データD0の反射率<データD5の反射率<データD9の反射率、かつデータD0の反射率<データD−5の反射率<データD−9の反射率という条件で5つのデータを用いて行われる。領域a内の一部のデータのみを用いることにより、検出速度が向上するとともに、検出精度が高くなる。なお、領域a内の全てのデータを用いて、データD0の反射率<データD1の反射率<データD2の反射率<・・・<データD9の反射率、かつデータD0の反射率<データD−1の反射率<データD−2の反射率<・・・<データD−9の反射率という条件で行ってもよい。
溝の検出に続いて、第1ステップとして、データD−9の反射率とデータD9の反射率との平均値を求め、当該平均値をデータD0の補正後のデータD0'の反射率に設定する。次に、第2ステップとして、データD−9の反射率を第1ステップで補正されたデータD0'の反射率とデータD−10の反射率との間の値に補正するとともに、データD9の反射率を上記データD0'の反射率とデータD10の反射率との間の値に補正する。
続いて、第3ステップとして、領域aに隣接する領域a外のデータD−10およびデータD10と、第1ステップで補正されたデータD0'と、第2ステップで補正されたデータD−9'およびデータD9'とを頂点とする五角形を作成する。当該五角形は、データD−10とデータD−9'との間の辺b1、データD−9'とデータD0'との間の辺b2、データD0'とデータD9'との間の辺b3、およびデータD9'とデータD10との間の辺b4の四辺を含む。そして、辺b2上にデータD−8〜データD−1の補正後のデータD−8'〜データD−1'を補正するとともに、辺b3上にデータD1〜データD8の補正後のデータD1'〜データD8'を補正する。同様にして、検出される全ての溝に対し当該ノイズ補正処理を行う。
図7は、図5のラインデータに対してノイズ補正ステップを行った後のラインデータの例を示すグラフである。図7に示されるように、ノイズ補正ステップによって図5のラインデータに存在する高周波ノイズが低減される。続いて、図7に示されるラインデータについて、領域aの範囲を例えば11ピクセルに変えて同様に反射光量が小さい向きに凸の溝をノイズとして検出し、上記第1ステップ〜上記第3ステップを行うノイズ補正ステップを繰り返す。このとき、反射光量が小さい向きに凸の溝の検出は、データD0の反射率<データD3の反射率<データD5の反射率、かつデータD0の反射率<データD−3の反射率<データD−5の反射率という条件で5つのデータを用いて行われる。もちろん全てのデータを用いて行うこともできる。
図8は、図7のラインデータに対してノイズ補正ステップを行った後のラインデータの例を示すグラフである。図8に示されるように、2回のノイズ補正ステップを行うことにより、図5のラインデータに存在した高周波ノイズのうち、1回のノイズ補正ステップで低減されなかったより高周波のノイズについても低減されることとなり、全体として高周波ノイズが一層低減される。図8に示されるラインデータについて、さらに領域aの範囲を例えば7ピクセルや5ピクセルに変えて同様にノイズ補正ステップを繰り返してもよい。なお、このノイズ補正の手法によれば、領域aの範囲の最小値は5ピクセルである。
このようなノイズ補正ステップが、広い範囲から狭い範囲の順に領域aの範囲を変えて、すべての波長帯域における光断層画像のすべてのラインデータについて行われる。続くデータ処理ステップでは、このノイズを補正された光断層画像に基づいて以下のような処理を行う。
干渉光強度I(k,z)は下記(1)式で表される。上述のようにkは波数である。また、zは、サンプル9における深さ方向の位置であり、サンプル9表面でz=0である。mは、サンプル9に含まれる吸収散乱性物質の種類の数である。S(k)は、光源のスペクトルである。Hs(k)Hs(z)は、光学的測定システム1の応答関数である。Hr(k)Hr(z)は、サンプル9における後方散乱の応答関数である。εi(k)は、サンプル9に含まれるm種類の吸収散乱性物質のうちの第iの吸収散乱性物質の吸収散乱係数である。fi(z)は、サンプル9に含まれる第iの吸収散乱性物質の空間的濃度分布である。
このように、干渉光強度I(k,z)は、光源スペクトルS(k)、光学的測定システム1の応答関数Hs(k)Hs(z)、サンプル9内部における吸収または散乱による減衰を表す因子(数式中の指数関数の部分)、および、サンプル9における後方散乱の応答関数Hr(k)Hr(z)、の積で表される。
波数kにおけるサンプル9内部の位置zでのログスケールでの入射光量に対する反射光量の減衰率Y(k,z)は下記(2)式で表される。(2)式中のFi(z)は、下記(3)式で表され、サンプル9に含まれる第iの吸収散乱性物質による吸収散乱成分であり、第iの吸収散乱性物質の濃度のz=0からの積分値である。(2)式中のC(z)は、下記(4)式で表され、吸収・散乱が波長に依存しない波長無依存物質による吸収散乱成分であり、この波長無依存物質の濃度のz=0からの積分値である。この波長無依存物質は第(m+1)の吸収散乱性物質として扱うことができる。
データ取得ステップにおける波長帯の分割数をnとする。任意の深さzにおいて、最少二乗法を用いて、下記(5)式で表される目的関数Sが最小(目的関数の偏微分がゼロ)となるような解Xを求めると、下記(6)式〜(9)式になる。kjは、n個の波長帯のうちの第j波長帯の波数である。(m+1)行(m+1)列の行列Aは、既知の行列要素からなる。(m+1)行1列の行列Xは、データ処理ステップにおいて求められるべき未知の行列要素からなる。(m+1)行1列の行列Yは、データ取得ステップにおいて得られた減衰率と既知の要素からなる。
しかし、実際に計算して解Xを求めてみると、光断層像の空間的なノイズが重畳された解Xが得られる。
このノイズ問題に対処する為、各Fi(z)がノイズに比べて空間的に滑らかに変化する(空間的な変化が小さい)ことを仮定して、目的関数を修正する。すなわち、各Fi(z)の二次微分値が小さいと仮定する。修正後の目的関数S'は下記(10)式で表される。αは、Sに対する二次微分値の重みを決めるパラメータである。α2は、各Fi(z)の二次微分値を小さくするためのパラメータであるので、平滑化パラメータと呼ぶことにする。目的関数S'は、減衰率Y,吸収散乱成分Fiおよび吸収散乱成分Fiの空間二次微分を含む関数である。
解Xは、行列を用いて表現すると下記(11)式のように表される。Lは二次微分演算子(ラプラシアン演算子)である。
Fi(z)は離散的なデータであるので、或る位置での二次微分値は、該位置のデータに加えて前後のデータも用いた計算により求める。計算により求められる二次微分値は、計算手法によって異なり、また、計算に用いるデータの点数によっても異なる。計算手法としては、差分法、Savitzky-Golay filterを用いた数値微分、前進差分近似、後退差分近似、中心差分近似、Stirlingの公式、などが知られている。
図9は、行列Xの一例を模式的に示す図である。図10は、行列Lの一例を模式的に示す図である。図11は、行列Yの一例を模式的に示す図である。図12は、行列Aの一例を模式的に示す図である。ここで、深さ方向のデータ数は512である。波長帯の分割数はnである。波長無依存物質を除く吸収散乱性物質の種類の数mは1である。Savitzky-Golay filterを用いた数値微分により3点のデータを用いて二次微分を計算する場合の行列Lを示している。二次微分演算子である行列Lは、Fi(z)に作用するが、C(z)には作用しない。
解Xが求められると、すなわち、各吸収散乱性物質についてFi(z),C(z)が求められると、これをzで微分することで各吸収散乱性物質の空間的分布fi(z),c(z)が得られる。第iの吸収散乱性物質の分布fi(z)は下記(12)式で表される。第(m+1)の吸収散乱性物質(波長無依存物質)の分布c(z)は下記(13)式で表される。なお、ノイズ低減の為に、各吸収散乱性物質の分布fi(z),c(z)について空間上または時間上の平均化処理を行うのが好適である。
以上説明したように、本実施形態の光学的測定方法は、ラインデータ作成ステップにおいて作成された複数の波長帯における光断層画像それぞれのラインデータに対して、光の進行方向、即ちサンプル9における深さ方向において空間分解能よりも狭い範囲の領域aで反射光量が小さい向きに凸の溝をノイズとして検出し、当該領域aにおいて溝の深さを浅くすることによりノイズを低減するノイズ補正ステップを備える。
これによれば、ラインデータにおいて、空間分解能よりも狭い範囲で値が振動するデータについては、高周波ノイズの影響を受けているとみなし、複数の波長帯におけるラインデータすべてに対して各々でノイズ低減処理を直接行うので、分光情報としてのラインデータの精度を向上させることができる。したがって、補正されたラインデータに基づいて求められる吸収散乱成分Fi(z)の精度を向上させることができるとともに、吸収散乱成分Fi(z)に基づいて求められる吸収散乱性物質の分布fi(z)の精度を向上させることができる。
これに対して、比較例としての非特許文献1の光学的測定方法では、分光OCT信号としてのY(k,z)と、これを吸収散乱成分Fi(z),C(z)および吸収散乱係数εi(k)を用いて近似したモデル関数との残差平方和を求め、この残差平方和が閾値を超えて異常値となる位置zについてのY(k,z)を補正する。つまり、当該光学的測定方法では、複数の波長帯におけるラインデータの全てに対して共通の位置zについてのY(k,z)を補正するにとどまり、波長帯ごとのノイズを直接検出し補正することができない。また、残差平方和はノイズ部分で局所的に大きくなるものの、全空間領域における変動幅もこのピークと同程度の大きさがあるため、閾値でピークを検出することが困難である。さらに、ピークを検出できた場合も、ノイズで残差平方和が大きくなっているのか、モデル関数が合わないのかが区別できない。加えて、当該光学的測定方法では、このようにして検出したノイズに対して、具体的にどのように補正を行うかの詳細が開示されていない。
図13は、本実施形態の光学的測定方法により求められる吸収散乱性物質の濃度積分値の例を示すグラフであり、図14は、比較例の光学的測定方法により求められる吸収散乱性物質の濃度積分値の例を示すグラフである。横軸はサンプル9における深さ方向の位置zであり、サンプル9表面でz=0である。また、縦軸は、サンプル9に含まれる第iの吸収散乱性物質の分布fi(z)のz=0からの積分値(濃度積分値)であり、第iの吸収散乱性物質による吸収散乱成分Fi(z)である。図13によれば、深さ方向の位置zが約250(ピクセル)付近においてグラフの傾きが変化しており、この付近にFi(z)の微分で示される第iの吸収散乱性物質の分布fi(z)に変化があることがわかり易い。一方、図14によれば、グラフの全体に高周波ノイズが残り、深さ方向の位置zが約250(ピクセル)付近においてグラフの傾きが変化していることがわかり難くなっている。なお、深さ方向の位置zが約70(ピクセル)付近においてグラフの傾きが変化しているのは、サンプル9とプローブ3との境界の反射による影響である。
このように、本実施形態の光学的測定方法によれば、非特許文献1の光学的測定方法に比べて高周波ノイズが少ない吸収散乱成分Fi(z)のグラフが得られる。この結果、本実施形態の光学的測定方法によれば、非特許文献1の光学的測定方法に比べてFi(z)の微分で示される吸収散乱性物質の分布fi(z)を精度よく求めることができる。
また、本実施形態の光学的測定方法では、ノイズ補正ステップが、広い範囲から狭い範囲の順に領域aの範囲を変えて繰り返し行われる。このように領域aの範囲を変えてノイズ補正ステップを行うことで、異なる周波数成分のノイズを除去することができる。また、広い範囲から狭い範囲の順に領域aの範囲を変えてノイズ補正ステップを行うので、広い範囲のノイズを確実に低減することができる。狭い範囲から広い範囲の順に領域aの範囲を変えてノイズ補正ステップを行った場合は、例えば、狭い範囲の領域aで反射光量が小さい向きに凸の溝として検出されノイズ低減が行われたために、仮にその溝を含む部分が広い範囲の領域aでも反射光量が小さい向きに凸の溝として検出されるべき部分であったとしても、検出されなくなる恐れがある。その結果、補正される領域aの範囲が狭くなり、高周波ノイズの除去が不完全となる恐れがある。
さらに、この光学的測定方法では、ノイズ補正ステップが、領域aにおいて光の進行方向の中央のデータD0の反射率を両端のデータD−9の反射率およびデータD9の反射率の平均値に補正する第1ステップと、データD−9の反射率を第1ステップで補正されたデータD0'の反射率とデータD−10の反射率との間の値に補正するとともに、データD9の反射率をデータD0'の反射率とデータD10の反射率との間の値に補正する第2ステップと、領域aに隣接する領域a外のデータD−10およびデータD10と、第1ステップで補正されたデータD0'と、第2ステップで補正されたデータD−9'およびデータD9'とを頂点とする反射光量が小さい向きに凸の五角形における辺b2上にデータD−8〜データD−1の補正後のデータD−8'〜データD−1'を補正するとともに、辺b3上にデータD1〜データD8の補正後のデータD1'〜データD8'を補正する第3ステップと、を含む。
これによれば、領域aにおいて溝の深さを浅くするとともに、補正対象となる領域a内のデータと、補正対象外となる領域a外のデータとが滑らかにつながるような補正を行うことができる。なお、本実施形態では、領域aに隣接する領域a外のデータD−10およびデータD10に加え、第1ステップで補正されたデータD0'と、第2ステップで補正されたデータD−9'およびデータD9'とを補正に用いる反射光量が小さい向きに凸の多角形の頂点としたが、これに限られない。データD−10とデータD10とを当該頂点として含む反射光量が小さい向きに凸の多角形を補正に用いるのであれば何でもよく、例えば、データD−10とデータD10とデータD0'とを頂点とする三角形を補正に用いてもよいし、データD−10とデータD10とデータD−5'とデータD5'とを頂点とする四角形を補正に用いてもよいし、六角形以上の多角形を補正に用いてもよい。
1…光学的測定システム、2…OCT装置、3…プローブ、9…サンプル、a…領域、b1〜b4…辺、DN…データ。
Claims (3)
- 複数の吸収散乱性物質を含むサンプルに光を照射または伝搬させたときに該サンプルにおいて生じる反射光と参照光とを干渉させて当該干渉光データを波長の関数として検出し、分割された複数の波長帯における干渉光データを取得するデータ取得ステップと、
このデータ取得ステップにおいて取得された前記複数の波長帯における干渉光データそれぞれをフーリエ変換し、前記複数の波長帯における光断層画像の構成要素であるラインデータを作成するラインデータ作成ステップと、
このラインデータ作成ステップにおいて作成された前記複数の波長帯におけるそれぞれのラインデータに対して、前記光の進行方向において空間分解能よりも狭い範囲の領域で反射光量が小さい向きに凸の溝をノイズとして検出し、当該領域において前記溝の深さを浅くすることによりノイズを低減するノイズ補正ステップと、
このノイズ補正ステップにおいてノイズを補正されたラインデータに基づいて、前記複数の吸収散乱性物質それぞれについて、入射光量に対する反射光量の減衰率に含まれる吸収散乱成分を求め、この吸収散乱成分に基づいて該吸収散乱性物質の分布を求めるデータ処理ステップと、
を備える、
光学的測定方法。 - 前記ノイズ補正ステップが、広い範囲から狭い範囲の順に前記領域の範囲を変えて行われる、
請求項1記載の光学的測定方法。 - 前記ノイズ補正ステップが、
前記領域に隣接する前記領域外のデータそれぞれを頂点に含む反射光量が小さい向きに凸の多角形の辺または頂点上に、前記領域内のデータを補正する、請求項1または2記載の光学的測定方法。
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2014
- 2014-06-03 JP JP2014114694A patent/JP2015230168A/ja active Pending
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