以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る作業機械1(油圧ショベル)の概略図である。この図に示す作業機械1は、地面に接して走行するための下部走行体2と、作業装置3が取り付けられた上部作業体4を主に備えている。
上部作業体4は、下部走行体2の上部に取り付けられている。本実施の形態の作業機械1は油圧ショベルであり、上部作業体4は下部旋回体2と旋回装置(図示せず)を介して旋回可能に連結されているが、旋回装置を介することなく下部走行体2に取り付けても良い。なお、図1に示した下部走行体2は、無限軌道履体を備えたいわゆるクローラ式のものであるが、複数の車輪を備えたいわゆるホイール式で構成しても勿論良い。
作業装置(フロント作業装置)3は、ブーム5、アーム6およびアタッチメント7を有する多関節型のものであり、上部作業体4の前方に回動自在に取り付けられている。ブーム5は、ブーム5の一端(基端)に位置する回動軸8を介して、上部作業体4に対して回動可能に支持されている。
ブーム5は、ブーム5の両側面と上部作業体4に架け渡された1対の油圧シリンダ(ブームシリンダ)9を伸縮させることにより、回動軸8を中心に駆動される。なお、1対のブームシリンダ9は、ブーム5に対して対称に取り付けられており且つそれぞれ同じように駆動されるため、本発明との関係ではいずれか一方の挙動に着目すれば足りるため、以下ではブームシリンダ9を1本だけ取りあげて説明する。
アーム6は、ブーム5の他端に位置する回動軸10を介して、ブーム5に対して回動可能に支持されている。アーム6は、ブーム5とアーム6に架け渡された油圧シリンダ(アームシリンダ)11を伸縮させることにより、回動軸10を中心に駆動される。
アタッチメント7は、アーム6の先端に位置する回動軸12を介して、アーム6に対して回動可能に支持されている。アタッチメント7は、リンク機構13を介してアーム6とアタッチメント7に架け渡された油圧シリンダ(アタッチメントシリンダ)14を伸縮することにより、回動軸12を中心に駆動される。
なお、図1に示した作業機械1には、アタッチメント7として、バケットが取り付けられているが、この他にも、グラップル、カッタ、ブレーカ、マグネット等の他のアタッチメントを作業に応じて取付けても良い。また、以下においては、図1に基づいて、アタッチメント7をバケット7、アタッチメントシリンダ14をバケットシリンダ14と表記することがある。
上記のように油圧ショベル1は、作業装置3を構成するブーム5、アーム6及びバケット7といった複数の関節をそれぞれ異なる油圧シリンダ9,11,14で駆動している。なお、図示した油圧ショベルは作業装置を構成する各関節を1本の油圧シリンダで駆動しているが、1つの関節を2本以上の油圧シリンダで駆動する作業機械にも本発明は適用可能である。
各油圧シリンダ9、11、14の駆動は、上部作業体4の運転室(キャブ)内に設置され油圧信号を出力する操作装置(図示せず)によって制御される。
本実施の形態に係る油圧ショベルは、外部から荷重が作用したときに、作業装置3に生じる荷重変化を示す荷重関連パラメータを検出するための検出器(荷重関連パラメータ検出器)として、圧力検出器15〜20(図2参照)及び加速度検出器21を備えている。
圧力検出器15は油圧シリンダ(ブームシリンダ)9のロッド側チャンバ内の圧力を検出し、圧力検出器16は油圧シリンダ9のボトム側チャンバ内の圧力を検出する。圧力検出器17は油圧シリンダ(アームシリンダ)11のロッド側チャンバ内の圧力を検出し、圧力検出器18は油圧シリンダ11のボトム側チャンバ内の圧力を検出する。圧力検出器19は油圧シリンダ(バケットシリンダ)14のロッド側チャンバ内の圧力を検出し、圧力検出器20は油圧シリンダ14のボトム側チャンバ内の圧力を検出する。
加速度検出器21はアーム6に取り付けられており、加速度検出器21により検出されたアーム6の加速度はバケット7に負荷された動的荷重を計測するために利用される。なお、加速度検出器21の取り付け位置はアーム6上であれば特に限定は無いが、図の例では加速度検出器21はアーム6の上面に取り付けられている。図1中の座標1はアーム6に設定された加速度検出器21のx軸、y軸、z軸を示しており、y座標は紙面の裏から表への方向に向かって増加する。
また、本実施の形態に係る油圧ショベルは、外部から荷重が作用したときを含めて、実動時の作業装置3の姿勢を示す姿勢関連パラメータを検出するための検出器(姿勢関連パラメータ検出器)として、変位検出器22、23、24と車体傾斜検出器25を備えている。
変位検出器22、23、24は、作業装置3の姿勢関連パラメータとして各油圧シリンダ9、11、14のストローク変位を検出するための検出器である。変位検出器22、23、24の検出値に基づいて各油圧シリンダ9,11,14のストローク変位が判明すれば、ブーム5、アーム6及びバケット7の姿勢が判明する。
変位検出器22、23は、回動軸8、10の中心軸回りのブーム5又はアーム6の回転角度を検出するロータリーポテンショメータであり、変位検出器22はブーム5に、変位検出器23はアーム6に取り付けられている。変位検出器22,23で検出された各回転角度をシリンダ変位に換算することで各シリンダ9,11の変位が取得される。
変位検出器24は、アタッチメントシリンダ14に取り付けられたリニアポテンショメータであり、変位検出器22、23と異なりアタッチメントシリンダ14の変位を直接的に検出する。
なお、ここでは、変位検出器22,23をロータリーポテンショメータとし、変位検出器24をリニアポテンショメータとしたが、両者は交換可能であり、さらに、各シリンダ9,11,14の変位を直接的または間接的に取得可能なセンサであれば他のセンサでも構わない。
車体傾斜検出器25は、水平面(基準面)に対する上部作業体4の傾斜角度を検出するためのセンサであり、上部作業体4に取り付けられている。図1中の座標2は上部作業体4に設定された車体傾斜検出器25のx軸、y軸、z軸を示しており、y座標は紙面の裏から表への方向に向かって増加する。なお、ここでは車体傾斜検出器25は、水平面に対する傾斜角度を検出するものとして説明するが、水平面以外の任意の面を基準面にして傾斜角を求めても良い。
なお、以下では、上記の圧力検出器15〜20、加速度検出器21、変位検出器22、23、24および車体傾斜検出器25をまとめて「センサ群」と称することがある。
図2は本発明の実施の形態に係る外力検出機能を有する作業機械で用いるシリンダ力演算システムの概略構成図である。この図のシリンダ力演算システムは、電子計算機により構成されており、各種プログラムを実行するための演算手段としての演算処理装置(例えば、CPU)41と、当該プログラムをはじめ各種データを記憶するための記憶手段としての記憶装置(例えば、ROM、RAMおよびフラッシュメモリ等の半導体メモリや、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置)42と、演算処理装置41の処理結果等を表示するための表示装置(例えば、液晶モニタ等)43と、各装置41、42、43へのデータ及び指示等の入出力制御を行うための入出力演算処理装置44を備えている。
入出力演算処理装置44には、センサ群15〜25と、オペレータ等による指示及びデータ等の入力に用いられる入力装置(例えば、キーパッドやタッチパネル等)45が接続されており、センサ群15〜25の出力値(pBmR 、pBmB 、pAmR 、pAmB 、pBkR 、pBkB 、ax 、ay 、az 、uBm 、uAm 、uBk 、φx 、φy 、φz )が演算処理装置41や記憶装置42等に入力される。
ここでは、ブームシリンダ9のロッド側圧力検出器15の出力値をpBmRとし、ボトム側圧力検出器16の出力値をpBmBとする。アームシリンダ11のロッド側圧力検出器17の出力値をpAmRとし、ボトム側圧力検出器18の出力値をpAmBとする。バケットシリンダ14のロッド側圧力検出器19の出力値をpBkRとし、ボトム側圧力検出器20の出力値をpBkBとする。アーム6に係る加速度検出器21の出力値をax、ay 、azとする。ブームシリンダ9に係る変位検出器22の出力値をuBmとし、アームシリンダ11に係る変位検出器23の出力値をuAmとし、バケットシリンダ14に係る変位検出器24の出力値をuBkとする。上部作業体4にかかる車体傾斜検出器25の出力値をφx 、φy 、φzとする。
また、ここでは、演算処理装置41と、記憶装置42と、表示装置43と、入出力演算処理装置44は、図1に示した油圧ショベルに搭載されているものとして説明するが、これら装置41、42、43、44は、複数の油圧ショベルの動作管理を行うための管理センタ内の電子計算機に搭載し、各油圧ショベルに設置されたセンサ群からの出力を無線ネットワークを介して受信して演算処理装置41によって各種処理を実行するように構成しても良いし、構成の一部を油圧ショベルに搭載しつつ、残りを管理センタ内の電子計算機に搭載しても良い。すなわち、油圧ショベル上のセンサ群との通信が可能であれば各装置41、42、43、44の設置場所は特に限定されない。
演算処理装置41は、シリンダロッド速度演算部41a、ストロークエンド判定部41b、シリンダ力演算部41c(シリンダ力算出部41dおよびシリンダ力推定部41e)および損傷度演算部41fとして機能する。
シリンダロッド速度演算部41aには、変位検出器22、23、24の出力値(uBm 、uAm 、uBk )のデータが入力され、該シリンダロッド速度演算部41aは、当該入力データに基づいて、ブームシリンダ9に係る変位検出器22の出力値uBmの時間変化率(ブームシリンダ速度)vBm、アームシリンダ11に係る変位検出器23の出力値uAmの時間変化率(アームシリンダ速度)vAm、及びバケットシリンダ14に係る変位検出器24の出力値uBkの時間変化率(バケットシリンダ速度)vBkを算出する。
ストロークエンド判定部41bには、センサ群22、23、24の出力値(uBm 、uAm 、uBk )のデータが入力され、ストロークエンド判定部41bは当該入力データに基づいて各油圧シリンダがロッド側ストロークエンド(伸び側ストロークエンド)又はボトム側ストロークエンド(縮み側ストロークエンド)にあるか否かを判定する。具体的には、センサ群22、23、24の出力値(uBm 、uAm 、uBk )がそれぞれの最大値のときにはロッド側ストロークエンドと判定され、それぞれの最小値のときにはボトム側ストロークエンドと判定される。
ストロークエンド判定部41bの判定結果は、作業機械1に外部から作用する荷重に起因して各油圧シリンダ9,11,14のシリンダロッドに作用する外力(以下において「シリンダ力」と称することがある)をシリンダ力演算部41cが演算する際に利用する式の選択に利用される。
シリンダ力演算部41cには、荷重関連パラメータ検出器及び姿勢関連パラメータ検出器であるセンサ群15〜25の出力値(pBmR 、pBmB 、pAmR 、pAmB 、pBkR 、pBkB 、ax 、ay 、az 、uBm 、uAm 、uBk 、φx 、φy 、φz )のデータと、シリンダロッド速度演算部41aで算出した各シリンダ速度(ブームシリンダ速度vBm、アームシリンダ速度
vAm及びバケットシリンダ速度vBk)のデータと、ストロークエンド判定部41bによる判定結果のデータが入力される。シリンダ力演算部41cは、これらの入力したデータに基づいて、作業機械1に外部から作用する荷重に起因して各油圧シリンダ9,11,14のシリンダロッドに作用する外力(以下において「シリンダ力」と称することがある)の大きさを算出する処理を行う。詳細は後述するが、シリンダ力演算部41cは、ストロークエンドにない油圧シリンダのシリンダ力の実測値の算出についてはシリンダ力算出部41dを利用し、ストロークエンドにある油圧シリンダのシリンダ力の推定値の算出についてはシリンダ力推定部41eを利用する。
損傷度演算部41fには、シリンダ力演算部41cにより算出されたシリンダ力が入力される。損傷度演算部41fは、入力されるシリンダ力に基づいて各油圧シリンダ9,
11,14の損傷度(ダメージ量)を算出し、当該損傷度を時間積分して各油圧シリンダ9,11,14の累積損傷度(累積ダメージ量)を算出する。詳細は後述するが、損傷度演算部41fは、ストロークエンドにない油圧シリンダの損傷度の算出についてはシリンダ力算出部41dの算出結果を利用し、ストロークエンドにある油圧シリンダの損傷度についてはシリンダ力算出部41d及びシリンダ力推定部41eの算出結果を利用する。
ストロークエンドにある油圧シリンダの損傷度の算出に関して、損傷度演算部41fは、シリンダ力算出部41dで算出されるシリンダロッドの推進力と、シリンダ力推定部41eで算出されるシリンダ力との差を算出し、当該差をピストンとシリンダの接触力とみなして損傷度を算出する。また、損傷度の算出の際にシリンダロッドの推進力をシリンダ力算出部41dから入力する代わりに、各シリンダのロッド側チャンバとボトム側チャンバ内の圧力データを損傷度演算部41fに入力し、損傷度演算部41fが当該圧力データに基づいて推進力を算出するように構成しても良い。
記憶装置42には、センサ群15〜25の出力値(pBmR 、pBmB 、pAmR 、pAmB 、pBkR 、pBkB 、ax 、ay 、az 、uBm 、uAm 、uBk 、φx 、φy 、φz )のデータと、シリンダロッド速度演算部41aで算出された各シリンダロッド速度vBm、vAm、vBkのデータと、シリンダ力演算部41cにより算出されたブームシリンダ9、アームシリンダ11およびバケットシリンダ14のシリンダ力のデータが時系列で記憶され、さらに損傷度演算部41fにより算出されたブームシリンダ9、アームシリンダ11およびバケットシリンダ14の損傷度及び累積損傷度のデータと、シリンダ力演算部41cがシリンダ力の演算に利用するプログラム(シリンダ力演算に利用される後述のシリンダ力演算式(1)〜(55))等が記憶される。
図3は本発明の実施の形態に係る油圧シリンダ(9,11,14)の概略を説明する図であり、図中の油圧シリンダはストロークエンドにない。本実施の形態に係る3種の油圧シリンダ9,11,14の基本構造を有するため、ここでは同じ図を用いて説明する。
図3に示した油圧シリンダ9,11,14は、シリンダチューブ53と、ヘッドカバー54と、シリンダロッド50を備えている。シリンダチューブ53の一端側(ボトム側)は閉塞され、他端側(ロッド側)は開口されている。シリンダチューブ53の当該他端側にはヘッドカバー54が装着されており当該開口が閉塞されている。シリンダロッド50には、シリンダチューブ53内をボトム側チャンバ55とロッド側チャンバ56とに区画形成し、ピストンチューブ53の内壁面と摺動するピストン52が連結されている。シリンダロッド50の先端部はヘッドカバー54から外部へ突出しており、ピストン52の摺動とともにヘッドカバー54に対して進退する。またシリンダチューブ53内におけるボトム側チャンバ55およびロッド側チャンバ56には、それぞれ作動油の給排を行うための油道57、58が設けられている。ボトム側の油道57はシリンダチューブ53に形成され、またロッド側の油道58はヘッドカバー54に形成されている。
上記の構成を有する油圧シリンダが例えばアームシリンダ11であるとすれば、シリンダロッド50の先端に設けられたリング状の取付部51にはアーム6が連結され、またシリンダチューブ53のボトム側の端部に設けられたリング状の取付部59にはブーム5が連結されることになる。
図3の油圧シリンダのシリンダロッド50はストロークエンドにないため、この場合のシリンダ力の算出にはシリンダ力算出部41dが利用される。ここで、シリンダ力算出部41dで使用されるシリンダ力算出式について図3を用いて説明する。本実施の形態では、図3のようにストロークエンドにない状態の油圧シリンダのシリンダ力FEXは、シリンダロッド50(ピストン52)の推進力FTHと釣り合っているとみなし、推進力FTHの大きさを算出してこれをシリンダ力FEXの大きさとする。すなわち、シリンダ力FEXは、推進力FTHと大きさが同値であり、ボトム側チャンバ55内の作動油圧力pBとロッド側チャンバ56内の作動油圧力pR、ロッド直径d、及びシリンダ径Dを用いた下記の式(1)で算出される。なお、図3に示したシリンダ力FEXと推進力FTHの方向は一例に過ぎず、それぞれ逆方向に作用する場合もある。
図4は図3に示した油圧シリンダが伸びてロッド側のストローク端に達した場合の概略図である。この場合、図示したように、ピストン52におけるロッド側の面52aとヘッドカバー54の面54aが接触し、該接触によりピストン52とヘッドがバー54の間に接触力FCOが生じる。このとき、接触力FCOはボトム側チャンバ55内の圧力pAmBが上がると上昇するが、シリンダロッド50に作用するシリンダ力FEXは該圧力上昇の影響を受けない。つまり、図4の場合には、シリンダ力FEXが推進力FTHと釣り合うとみなすことができないので、式(1)の算出式を用いてシリンダ力を算出できないことを意味する。
図5は図3に示した油圧シリンダが縮んでボトム側のストローク端に達した場合の概略図である。この場合、図示したように、ピストン52におけるボトム側の面52bとシリンダチューブ53の面53bが接触し、該接触によりピストン52とシリンダチューブ53の間に接触力FCOが生じる。このとき、接触力FCOはロッド側チャンバ56内の圧力pAmRが上がると上昇するが、シリンダロッド50に作用するシリンダ力FEXは該圧力上昇の影響を受けない。つまり、図5の場合にも、シリンダ力FEXが推進力FTHと釣り合うとみなすことができないので、式(1)の算出式を用いてシリンダ力を算出できないことを意味する。なお、図4及び図5に示したシリンダ力FEXと推進力FTHの方向は一例に過ぎず、それぞれ逆方向に作用する場合もある。
本実施の形態では、図4および図5で示したストロークエンドにある油圧シリンダのシリンダ力FEXはシリンダ力推定部41eを利用して算出する。シリンダ力推定部41eは、センサ群15−25の出力値および速度演算部41aの算出値を変数とする近似式(以下において「シリンダ力推定式」と称することがある)を利用してストロークエンドにある油圧シリンダのシリンダ力FEXを推定する。シリンダ力推定式は後述する式(2)〜(55)のことであり、当該推定式に或る時刻におけるセンサ群15−25の出力値および速度演算部41aの算出値を代入すると、当該時刻においてストロークエンドにある油圧シリンダのシリンダ力FEXの推定値が算出される。
ここで、シリンダ力推定部41eで使用されるシリンダ力推定式の構築方法の一例について説明する。シリンダ力推定式の構築には応答曲面を用いる。応答曲面とは、n個の予測変数xi (i=1…n)から予測される応答yの関係式を近似したものである。近似式の一般形を次に示す。下記式におけるεは誤差と呼ばれる。応答曲面において関数f の形に特に制限はない。
本実施の形態に係るシリンダ力推定式構築では、応答(y)として各油圧シリンダ9,11,14のシリンダ力をとり(すなわち、シリンダ力推定式は油圧シリンダごとに作成される)、予測変数(xi)として荷重関連パラメータ、姿勢関連パラメータおよび動作関連パラメータをとる。ここにおける荷重関連パラメータとしては、油圧シリンダ9,11,14のボトム側チャンバ55とロッド側チャンバ56の作動油圧力と、作業装置3の加速度をとり、この場合の荷重関連パラメータ検出器としては、圧力検出器15−20と加速度検出器21が該当する。姿勢関連パラメータとしては、各油圧シリンダ9,11,14のシリンダ変位と、上部作業体4の傾斜角度をとり、この場合の姿勢関連パラメータ検出器としては、変位検出器22−24と車体傾斜検出器25が該当する。動作関連パラメータとしては、各油圧シリンダ9,11,14のシリンダ速度をとり、この場合の動作関連パラメータ検出器としては変位検出器22−24が該当する。
なお、本実施の形態では、応答の油圧シリンダを除いた油圧シリンダの推進力(当該油圧シリンダがストロークエンドにない場合はシリンダ力としてみなすことも可能)を間接的に予測変数に含めるために、荷重関連パラメータとしてボトム側チャンバ55とロッド側チャンバ56の作動油圧力を利用している。ストロークエンドにある油圧シリンダの推進力は、ボトム側チャンバ55とロッド側チャンバ56の作動油圧力の一方とピストンの受圧面積から算出可能であり、ストロークエンドにない場合の推進力は、ボトム側チャンバ55とロッド側チャンバ56の作動油圧力と式(1)から算出可能である。ストロークエンドにない場合の推進力は、既述のようにシリンダ力とみなすことができるため、ボトム側チャンバ55とロッド側チャンバ56の作動油圧力に代えて、シリンダ力算出部41dで算出される当該油圧シリンダのシリンダ力を予測変数としても良い。
上記を踏まえて、本実施の形態におけるシリンダ力推定式の一般形を次に示す。下記式におけるnは、ストロークエンド判定部41bによる判定結果の組み合わせパターンのどれに該当するか、該当するパターンのうちどの油圧シリンダのシリンダ力が算出対象となっているか、に応じて異なる整数である。本実施の形態では、後述する図6に示すように判定部41bの組み合わせパターンの総数は27であり、各パターンの算出対象となるシリンダを考慮すると、シリンダ推定式の合計は54となる。ここでは、既述の式(1)を含めてシリンダ力の演算式の総数を数えることとし、便宜上、nは2から55の整数とする。また、nは図6中の「エンド」の横に示した式番号に対応している。
上記推定式(n)において、応答F(n)は式(n)における対象の油圧シリンダ(油圧シリンダ9,11,14のいずれか1つ)のシリンダ力であり、β(n)は式(n)における定数項である。β(n_uBm)は式(n)においてブームシリンダ変位uBmに乗じる係数であり、β(n_uAm)はアームシリンダ変位uAmに乗じる係数であり、β(n_uBk)はバケットシリンダ変位uBkに乗じる係数である。β(n_vBm)はブームシリンダ速度vBmに乗じる係数である。β(n_vAm)はブームシリンダ速度vAmに乗じる係数である。β(n_vBk)はバケットシリンダ速度vBkに乗じる係数である。β(n_pBmR)はブームシリンダ9のロッド側圧力pBmRに乗じる係数である。β(n_pBmB)はブームシリンダ9のボトム側圧力pBmBに乗じる係数である。β(n_pAmR)はアームシリンダ11のロッド側圧力pAmRに乗じる係数である。β(n_pAmB)はアームシリンダ11のボトム側圧力pBmBに乗じる係数である。β(n_pBkR)はバケットシリンダ14のロッド側圧力pBkRに乗じる係数である。β(n_pBkB)はバケットシリンダ14のボトム側圧力pBkBに乗じる係数である。β(n_φx)は車体傾斜角φxに乗じる係数である。β(n_φy)は車体傾斜角φyに乗じる係数である。β(n_φz)は車体傾斜角φzに乗じる係数である。β(n_ax)はアーム加速度axに乗じる係数である。β(n_ay)はアーム加速度ayに乗じる係数である。β(n_az)はアーム加速度azに乗じる係数である。
シリンダ力推定式(2)〜(55)のそれぞれについて、油圧ショベルの実動試験または実動を模擬したシミュレーション解析により予測変数と応答値の組み合わせデータを求め、当該データに応答曲面を適用してシリンダ力推定式(2)〜(55)で予測変数に乗じられる各係数βを求める。図7は本実施の形態における予測変数の一部と応答値の各データの一例を示している。図中のfBm,fAm,fBkはそれぞれブームシリンダ9、アームシリンダ11およびバケットシリンダ14のシリンダ力の時間変化を示している。図7のデータは実動試験または実動を模擬したシミュレーション解析により求めることができる。
図6は図2のストロークエンド判定部41bによる判定結果の組み合わせパターンの種類と、各パターンで利用されるシリンダ推定式の番号(nの値)を示すテーブルである。当該テーブル中の行は組み合わせパターンの種類を示しており、組み合わせパターンの種類は全部で27パターンある。当該テーブル中の列はブームシリンダ9、アームシリンダ11およびバケットシリンダ14がそれぞれロッド側またはボトム側ストロークエンドにあるか否かを示している。図中の「エンド」という表示は、該当する油圧シリンダがロッド側またはボトム側でストロークエンド状態であることを示し、図中の「ダッシュ(―)」という表示は、当該油圧シリンダはストロークエンド状態でないことを示している。
図中の「エンド」という表示の横にカッコ書きで示した数字は、「エンド」と付されたシリンダのシリンダ力をいる求める際にシリンダ力推定部41eが使用するシリンダ力推定式の番号(2〜55)を示している。一方、図中の「ダッシュ」という表示がある油圧シリンダのシリンダ力については、シリンダ力算出部41dが式(1)を利用して算出する。
図6において、例えば、パターン1は全ての油圧シリンダ9,11,14がストロークエンドにない状態を示している。このパターン1の状態にある時、各油圧シリンダ9,11,14のシリンダ力の算出は、シリンダ力算出部41dが式(1)を用いて行う。
また、パターン2は、バケットシリンダ14がロッド側ストロークエンドにあり、ブームシリンダ9とアームシリンダ11はストロークエンドにない状態を示している。この状態にある時、ロッド側ストロークエンドの状態にあるバケットシリンダ14のシリンダ力の算出は、シリンダ力推定部41eが式(2)を用いて行う。そして、この時のブームシリンダ9およびアームシリンダ11のシリンダ力の算出はシリンダ力算出部41dが式(1)を用いて行う。
以下同様に、3本の油圧シリンダ9,11,14のうちストロークエンドにあるもののシリンダ力は図6に示した式(2)〜(55)のいずれかが用いられる一方で、シリンダエンドにない油圧シリンダ(ダッシュの表示がある油圧シリンダ)のシリンダ力は式(1)を用いられる。
例えば、式(2)の場合は、上記式でn=2とした次の式となる。
式(2)の応答F(2)はパターン2のときのバケットシリンダ14(シリンダロッドはロッド側ストロークエンドにある)のシリンダ力であり、当該推定式に或る時刻におけるセンサ群15−25の出力値および速度演算部41aの算出値を代入すると、当該時刻におけるバケットシリンダ14のシリンダ力FEXが算出できる。
したがって、上記のように構成した作業機械によれば、まず、ストロークエンド判定部41bが各油圧シリンダ9,11,14の状態の組み合わせが27パターンのいずれに該当するかを判定することで、各油圧シリンダのシリンダ力の算出に利用するものを式(1)〜(55)の中から選択し、当該選択式に含まれるパラメータとして或る時刻のセンサ群15〜25の出力値および速度演算部41aの算出値を必要に応じて入力することで、ストロークエンドにあるか否かに関わらず当該時刻における全ての油圧シリンダのシリンダ力を算出することができる。これにより、実動する作業機械に発生する応力、重量物の荷重および各シリンダの損傷度等を精度よく求めることが可能になる。
ところで、本実施の形態のシリンダ力推定部41eで算出されるシリンダ力は、その際に利用するシリンダ力推定式が含まれる組み合わせパターンに存在するストロークエンドにある油圧シリンダの本数が少ないほど精度が向上する。つまり、図6の27種類のパターンでは、「エンド」の数が少ないほどシリンダ力の精度が向上する。これはストロークエンドにある油圧シリンダが増加すると、シリンダ推定式を構築するパラメータの数が減少し、シリンダ推定式の精度が出にくくなるからである。
例えば、図6の「パターン2」の場合はバケットシリンダ14のシリンダロッドはロッド側ストロークエンドにある状態(すなわち、ストロークエンドにある油圧シリンダが1本)なので、上記式(2)におけるバケットシリンダ変位uBk、バケットシリンダ速度vBkおよびバケットシリンダ14のロッド側圧力pBkRは一定値となる。そして、シリンダロッドはロッド側ストロークエンドにある場合、バケットシリンダ14のボトム側圧力pBkBは、ボトム側チャンバ55がリリーフ圧に達するまでは増加する変数であるが、リリーフ圧に達すると一定値(リリーフ圧)となる(なお、シリンダ力の算出精度向上の観点からは、ボトム側圧力pBkBがリリーフ圧か否かで推定式を分けることが好ましいが、ここでは簡略して分けずに説明する。)。
つまり、ストロークエンドにある油圧シリンダが1つ増加するごとに、シリンダ変位、シリンダ速度および一方のチャンバ圧力の少なくとも3つのパラメータが定数になり、シリンダ推定式の精度が出にくくなる。ただし、油圧ショベルの実際の利用形態では、全ての油圧シリンダがストロークエンドで利用される場合は少なく、本実施の形態に係る構成でも実用上の支障は発生し難いと推測される。
ところで、上記で説明した例では、シリンダ力推定式(2)〜(55)を構成するパラメータ(予測変数)として、圧力検出器15〜20の出力値を採用したが、ストロークエンドにない油圧シリンダが少なくとも1つ含まれるパターンの場合(具体的には図6のパターン1〜13、16、19〜22、25の場合)には、当該ストロークエンドにない油圧シリンダに係る圧力検出器の出力値に代えて、当該ストロークエンドにない油圧シリンダのシリンダ力をシリンダ力推定式のパラメータ(予測変数)として採用してシリンダ力推定式を構築しても良い。この場合の具体的構成としては、ストロークエンドにない少なくとも1つの油圧シリンダのシリンダ力については圧力検出器15〜20の出力値と式(1)を利用してシリンダ力算出部41dで算出し、当該少なくとも1つの油圧シリンダを除いた残りの油圧シリンダ(全てストロークエンドにある油圧シリンダ)のシリンダ力については、シリンダ力算出部41dで算出されるシリンダ力、センサ群21〜25および速度演算部41aの算出値に基づいてシリンダ力推定部41eで算出することになる。
このように構成した場合には、ストロークエンドにない油圧シリンダが少なくとも1つは含まれることで、シリンダ力推定式を構成するパラメータが増加するので、全ての油圧シリンダ9,11,14がストロークエンドにある場合(具体的には図6のパターン14,15,17,18,23,24,26,27)と比較して、シリンダ力推定式により得られるシリンダ力の精度が向上する。
次に、上記のように算出した各油圧シリンダ9,11,14のシリンダ力に基づいて
各油圧シリンダ9,11,14の損傷度および累積損傷度を算出する手順について説明する。
図8は本発明の実施の形態における演算処理装置41で実行されるシリンダ力演算処理および損傷度演算処理のフローチャートである。この図に示す処理が開始されたら、記憶装置42に記憶されたセンサ群の出力値(pBmR 、pBmB 、pAmR 、pAmB 、pBkR 、pBkB 、ax 、ay 、az 、uBm 、uAm 、uBk 、φx 、φy 、φz )のデータと、シリンダロッド速度演算部41aの算出値の時系列データから任意の時刻に係るものを抽出する処理を実行する(S71)。
S71が終了したら、抽出データのシリンダ変位uBm、uAm、uBkの値がストロークエンド判定部41bに入力され各油圧シリンダがストロークエンドにあるか否かを判断し、図6に示したパターンの中から該当するパターンを決定する(S72)。これにより各油圧シリンダ9,11,14のシリンダ力の演算に利用する演算式が式(1)〜(55)のいずれかが決定される。
S72が終了したら、S71の抽出データはシリンダ力演算部41cに入力され、各油圧シリンダのシリンダ力がS72で決定した式を利用して算出される(S73)。ここで求められたシリンダ力は、S71で選択した任意の時刻と関連付けて記憶装置42に記憶される(S74)。S74が終了したら、損傷度演算部41gにS74で記憶されたシリンダ力が入力される。
S75では、記憶装置42に記憶された圧力検出器15〜20の出力値とシリンダ力に基づいて損傷度演算部41fが各油圧シリンダ9,11,14の損傷度を算出する。本実施の形態では、各油圧シリンダ9,11,14の損傷度として、ヘッドカバー54の下面54a(図3参照)、シリンダチューブ53の内部底面53b(図3参照)、ピストン52のロッド側端面52a(図3参照)およびピストン52のボトム側端面52b(図3参照)の損傷度を算出する。以下、各油圧シリンダ9,11,14に係る4つの面54a,53b,52a,52bの損傷度の算出について具体的に説明する。なお、以下では当該4つの面54a,53b,52a,52bを対象面と称することがある。
ここでは基本的に各対象面54a,53b,52a,52bの損傷度は、各対象面54a,53b,52a,52bに作用した力に基づいて評価する。したがって、まずストロークエンドにない油圧シリンダについては、2つのチャンバ55,56内の圧力と、各対象面54a,53b,52a,52bの受圧面積から各対象面に作用する力を算出して損傷度とする。したがって、例えば、ブームシリンダ9がストロークエンドにない場合には、面54aの受圧面積に圧力検出器15の検出値(チャンバ56の圧力)を乗ずれば当該面54aに作用する力が算出でき、面52aの受圧面積に圧力検出器15の検出値を乗ずれば当該面52aに作用する力が算出でき、面53bの受圧面積に圧力検出器16の検出値(チャンバ55の圧力)を乗ずれば当該面53bに作用する力が算出でき、面52bの受圧面積に圧力検出器16の検出値を乗ずれば当該面52bに作用する力が算出できる。
一方、ストロークエンドにある油圧シリンダについては、4つの対象面のうち互いに接触している2面については先述の「接触力FCO」(図4,5参照)が作用していると解釈し、当該接触力FCOに基づいて損傷度を評価する。そして、残りの2面については、ストロークエンドにない油圧シリンダの場合と同様に、当該残りの2面の受圧面積とチャンバ内圧力に基づいて損傷度を評価する。
接触力FCOは、S74で算出したシリンダ力FEXと、シリンダロッドの推進力FTH(該当するチャンバ内の圧力と対象面の受圧面積の積)との差から算出可能である。したがって、例えば、ブームシリンダ9がロッド側でストロークエンドにある場合には、推進力FTHは、面52aの受圧面積に圧力検出器15の検出値を乗じることで取得できるので、面54aおよび面52aに作用する力(すなわち、接触力FCO)は、式(2)を利用して得たシリンダ力FEXと当該推進力FTHとの差から算出できる。なお、残りの2面52b,53bの損傷度については、各面52b,53bの受圧面積に圧力検出器16の検出値(チャンバ55の圧力)を乗ずれば良い。
上記の4つの対象面54a,53b,52a,52bの損傷度を全ての油圧シリンダ9,11,14について算出し、その算出結果をS71で選択した時刻に関連付けて記憶装置42に記憶する(S76)。このように記憶した各油圧シリンダ9,11,14の損傷度を対象面54a,53b,52a,52bごとに時間積分すると、各油圧シリンダの対象面54a,53b,52a,52bごとの累積損傷度を算出できる。そして、算出した累積損傷度を参照すれば、ヘッドカバー54、ピストン52およびピストンチューブ53の寿命予測が可能となり、更にはその交換時期またはメンテナンス時期の予測ができる。
各対象面54a,53b,52a,52bの損傷度及び累積損傷度、これらに基づく各部品の寿命及び交換時期の報知は、表示装置(報知装置)43を介して行う形態がある。なお、寿命や交換時期等は、表示装置43で報知することに代えて、警告灯や音声等、他の報知手段を用いて報知しても良い。また、表示装置43には、S74で算出した各油圧シリンダ9,11,14のシリンダ力を表示しても良い。
S76が終了したら、S71の抽出データをリセットし(S77)、シリンダ力の算出を継続するか否か判定する(S78)。
S78でシリンダ力算出を継続する場合には、S71で選択した時刻からΔt秒後(Δtは、例えば、センサ群15〜25の検出周期や速度演算部41aの演算周期)の実測データを抽出データとし(S79)、S71以降の処理を繰り返す。一方、S78で処理を終了すると判定された場合には一連の処理を終了する。
なお、上記では、動作関連パラメータである各油圧シリンダ9,11,14のシリンダ速度は、姿勢関連パラメータ検出器である変位検出器22〜24の出力値から速度演算部41aで算出しており、各油圧シリンダ9,11,14のシリンダ速度を直接的に検出可能な動作関連パラメータ検出器を備えない構成について説明したが、動作関連パラメータ検出器を備えて速度演算部41aを省略した構成を採用しても良い。
また、実施の形態では作業機械に油圧ショベルを用いて説明したが、1つの関節を2本以上の油圧シリンダで駆動する作業機械であれば本発明は適用可能である。したがって、例えば、ダンプトラック、ホイールローダ、ローディングショベル(大型ショベル)、ドーザおよびスキッドステアローダなどの建設機械や、農業機械等を含む種々の作業機械にも適用できる。ここでは、その中からダンプトラックおよびホイールローダについて説明する。
図9は本発明の実施の形態に係るダンプトラックの全体構成図である。この図に示すダンプトラック60は、前輪及び後輪が取り付けられた車体フレーム61と、車体フレーム61の後方に回動可能に取り付けられた荷台62と、伸縮することで荷台62を回動させるホイストシリンダ(油圧シリンダ)63と、前輪の車軸に取り付けられたフロントサスペンション64と、後輪の車軸に取り付けられたリヤサスペンション65を備えている。
車体フレーム61には、駆動系や運転席等の主要構成要素が搭載されており、前輪及び後輪によって車両が路面上を自由に走行可能な構成となっている。ホイストシリンダ63を伸長させると、荷台62は回動しながら前端を上昇させて傾斜角度を増していくように動作し、荷台62の上に積載した積荷(運搬物)を荷台62の後端から排出することが可能となっている。
図10は本発明の実施の形態に係るホイールローダの全体構成図である。この図に示すホイールローダ70は、油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動される多関節型の作業装置72を車両前方に備えている。作業装置72は、車両本体にピン(ヒンジピン)を介して揺動可能に取り付けられた1組のリフトアーム75と、リフトアーム75を揺動させるためにリフトアーム75と車両本体に架け渡されたアームシリンダ(油圧シリンダ)73と、1組のリフトアーム75の先端にピンを介して回動可能に取り付けられたバケット76と、1組のリフトアーム75を連結するアームに回動可能に取り付けられたベルクランク77と、バケット76を回動させるためにベルクランク77と車両本体に架け渡されたバケットシリンダ(油圧シリンダ)74と、ベルクランク77とバケット76に架け渡されたバケットリンク78を備えている。バケットシリンダ74を伸縮させるとバケット76が回動される。
オペレータは、図示していないステアリングホイールを操作することで、ステアリングシリンダ(油圧シリンダ)79を伸縮させて車両の屈折角を調節し、車両を旋回させることができる。また、操縦席内のリフトレバー、バケットレバーなどを操作することで、アームシリンダ73、バケットシリンダ74を伸縮させて、バケット76の高さと傾きを制御し、掘削および荷役作業を行うことができる。
ダンプトラックおよびホイールローダの場合も油圧ショベルと同じで、応力推定式の予測変数として、姿勢関連パラメータ、動作関連パラメータおよび荷重関連パラメータをとり、応力推定式の応答としてシリンダ力をとる。
図9のダンプトラック60の場合には、姿勢関連パラメータとして、ホイストシリンダ63の変位と、サスペンション64,65の変位と、車体フレーム61と荷台62の挟角度と、車体フレーム61についての3軸回りの角度(車体角度)をとる。なお、ホイストシリンダ変位およびサスペンション変位は、油圧ショベルの場合と同様に変位検出器によって検出可能である。車体61と荷台62の挟角度は、角度センサまたはホイストシリンダ63の変位検出器によって検出可能である。車体角度は、油圧ショベルの場合と同様に回転検出器によって検出可能である。
また、動作関連パラメータとしては、ホイストシリンダ63の速度をとる。ホイストシリンダ速度は、変位検出器によって検出されるホイストシリンダ変位を時間微分することで算出できる。
荷重関連パラメータとしては、サスペンション64,65の圧力(反力)と、ホイストシリンダ63におけるロッド側チャンバ内およびボトム側チャンバ内の圧力(以下、これらをまとめてホイストシリンダ63の圧力と称することがある)と、荷台63の加速度をとる。サスペンション圧力およびホイストシリンダ圧力は圧力検出器によって検出可能であり、荷台加速度は加速度検出器によって検出可能である。
応答としては、ホイストシリンダ63のシリンダ力をとり、上記で説明した油圧ショベルの場合と同様に応答曲面によってシリンダ力推定式を構築するものとする。これにより、上記で説明した油圧ショベルの場合と同様に、ダンプトラックについてもホイストシリンダ63の寿命予測などが可能となる。
一方、図10に示したホイールローダの場合70には、姿勢関連パラメータとして、アームシリンダ73の変位と、バケットシリンダ74の変位と、ステアリングシリンダ79の変位(または、車両の屈折角度)をとる。各シリンダ73,74,79の変位は、変位検出器によって検出可能である。屈折角度は、角度検出器によって検出可能である。
また、動作関連パラメータとしては、アームシリンダ73の速度と、バケットシリンダ74の速度と、ステアリングシリンダ79の速度(または、車両の屈折角度の角速度)をとる。各種シリンダ73,74,79の速度は、変位検出器によって検出される変位を時間微分することで算出できる。
荷重関連パラメータとしては、アームシリンダ73におけるロッド側チャンバ内およびボトム側チャンバ内の圧力(以下、これらをまとめてアームシリンダ73の圧力と称することがある)と、バケットシリンダ74におけるロッド側チャンバ内およびボトム側チャンバ内の圧力(以下、これらをまとめてバケットシリンダ74の圧力と称することがある)と、ステアリングシリンダ79におけるロッド側チャンバ内およびボトム側チャンバ内の圧力(以下、これらをまとめてステアリングシリンダ79の圧力と称することがある)と、作業装置62の加速度をとる。各シリンダ73,74,79の圧力は、油圧ショベルの場合と同様に圧力検出器によって検出可能である。作業装置72の加速度は、油圧ショベルの場合と同様に加速度検出器によって検出可能である。
応答としては、アームシリンダ73、バケットシリンダ74およびステアリングシリンダ79のシリンダ力をとり、上記で説明した油圧ショベルの場合と同様に応答曲面によってシリンダ力推定式を構築するものとする。これにより、上記で説明した油圧ショベルの場合と同様に、ホイールローダについても各油圧シリンダ73,73,79の寿命予測などが可能となる。
ところで、上記では油圧シリンダを有する油圧ショベルを例に挙げて説明したが、本発明は油圧シリンダだけに該当するものではなく、空気圧シリンダや水圧シリンダ等の流体を利用したシリンダにより多関節型の作業装置を駆動する他の作業機械にも該当するものである。
なお、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の各実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、ある実施の形態に係る構成の一部を、他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。
また、上記のシリンダ力演算システムに係る各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、ICカード、フラッシュメモリ、DVD等の記録媒体に記憶することができる。また、上記では、実施の形態の説明に必要であると解される制御線や情報線を簡略して示したが、必ずしも製品に係る全ての制御線や情報線を正確に示しているとは限らない。すなわち、殆ど全ての構成が相互に接続されていることもある。