JP2015227258A - 水素供給システム - Google Patents
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Abstract
【課題】新たな原料を補給することなく、水素を供給し続けることが可能な水素供給システムを提供する。
【解決手段】本実施形態に係る水素供給システム100では、気液分離器4にて水素含有ガスから分離されてトルエンタンクに貯蔵されたトルエン(脱水素生成物)が、水素化装置20にて水素化される。これによって、トルエンは、再び脱水素反応器3での脱水素反応によって水素含有ガスを得ることが可能なMCH(原料)として用いることが可能となる。また、水素化装置20は、水素ガスを発生させることなく脱水素生成物を水素化することにより、水素ガスを発生させるための装置を不要とし、効率よく水素化を行うことができる。このようにトルエンを水素化してMCHとしてMCHタンク1へ供給することによって、オンサイトで原料を得ることが可能となる。
【選択図】図1
【解決手段】本実施形態に係る水素供給システム100では、気液分離器4にて水素含有ガスから分離されてトルエンタンクに貯蔵されたトルエン(脱水素生成物)が、水素化装置20にて水素化される。これによって、トルエンは、再び脱水素反応器3での脱水素反応によって水素含有ガスを得ることが可能なMCH(原料)として用いることが可能となる。また、水素化装置20は、水素ガスを発生させることなく脱水素生成物を水素化することにより、水素ガスを発生させるための装置を不要とし、効率よく水素化を行うことができる。このようにトルエンを水素化してMCHとしてMCHタンク1へ供給することによって、オンサイトで原料を得ることが可能となる。
【選択図】図1
Description
本発明は、水素の供給を行う水素供給システムに関する。
従来の水素供給システムとして、例えば特許文献1に挙げるものが知られている。特許文献1の水素供給システムは、原料の芳香族炭化水素の水素化物を貯蔵するタンクと、当該タンクから供給された原料を脱水素反応させることによって水素を得る脱水素反応器と、反応器で得られた水素を気液分離する気液分離器と、気液分離された水素を精製する水素精製器と、を備える。
ここで、例えば、都市ガス網エリアでは、都市ガスを用いたオンサイト型の水素供給システムとして水素を各拠点で製造し、供給するシステムが採用される。一方、製油所等の副生水素が大量に発生する拠点の近傍では、オフサイト型の水素供給システムとして当該製油所等から高圧輸送された副生水素を各拠点で供給する形態が採用される。しかし、例えば、都市ガス網エリア外であって、副生水素発生拠点からも遠方の地域では、燃料電池車等へ供給するための水素の配給を受けにくいという問題がある。また、震災等の非常時において、交通網等が寸断され、供給ラインの復旧に事案を要する場合などは、長期間水素を供給できない場合もある。
そこで、本発明は、新たな原料を補給することなく、又は新たな原料の補給量を抑制して、水素を供給し続けることが可能な水素供給システムを提供することを目的とする。
本発明に係る水素供給システムは、水素の供給を行う水素供給システムであって、原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る脱水素反応部と、水素含有ガスから脱水素生成物を分離する気液分離部と、気液分離部で分離された水素含有ガスから脱水素生成物を除去し、精製ガスを得る水素精製部と、気液分離部で分離された脱水素生成物を、水素ガスを発生させることなく水素化し、原料として脱水素反応部の上流側へ供給する水素化部と、を備える。
本発明に係る水素供給システムでは、気液分離部にて水素含有ガスから分離された脱水素生成物が、水素化部にて水素化される。これによって、脱水素生成物は、再び脱水素反応部での脱水素反応によって水素含有ガスを得ることが可能な原料となる。また、水素化部は、水素ガスを発生させることなく脱水素生成物を水素化することにより、水素ガスを発生させるための装置を不要とし、効率よく水素化を行うことができる。このように脱水素生成物を水素化して原料として脱水素反応部の上流側へ供給することによって、オンサイトで原料を得ることが可能となる。以上により、新たな原料を補給することなく、又は新たな原料の補給量を抑制して、水素を供給し続けることが可能となる。
本発明に係る水素供給システムは、原料を貯蔵する第1の貯蔵部と、気液分離部で分離された脱水素生成物を貯蔵する第2の貯蔵部と、を更に備え、水素化部は、第2の貯蔵部に貯蔵された脱水素生成物を、水素ガスを発生させることなく水素化し、原料として第1の貯蔵部へ供給してよい。このように、第2の貯蔵部に一旦貯蔵された脱水素生成物を水素化部へ供給することで、安定した流量の脱水素生成物を水素化部へ供給することが可能となる。また、水素化部の原料を第1の貯蔵部へ一旦貯蔵することで、脱水素反応部に対する原料の流量が制御し易くなる。
本発明に係る水素供給システムにおいて、水素化部は、電気を用いて脱水素生成物を水素化してよい。これによって、例えば太陽エネルギーなどの再生可能エネルギーを用いて発電を行うことで、水素化のためのエネルギーを得るための原料を補給する必要がなくなる。
本発明に係る水素供給システムにおいて、水素化部は、水を含む電解質を保持する酸化槽と、脱水素生成物を保持する還元槽と、酸化槽に保持される電解質と還元槽に保持される脱水素生成物とを隔て、イオン透過能を有する電解質膜と、酸化槽に保持される水からプロトンを生成する酸化極と、還元槽に保持される脱水素生成物を水素化する還元極と、を備えてよい。これによって、水素ガスを発生させることなく、効率よく脱水素生成物の水素化を行うことができる。
本発明に係る水素供給システムにおいて、水素化部は、表面に光触媒を備える第一電極と、第一電極と電気的に接続された第二電極を、水を含んだ電解質と接触させた状態において、光触媒に光を照射することにより、脱水素生成物を水素化してよい。これによって、水素ガスを発生させることなく、効率よく脱水素生成物の水素化を行うことができる。
本発明によれば、新たな原料を補給することなく、又は新たな原料の補給量を抑制して、水素を供給し続けることができる。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態に係る水素供給システムの構成を示すブロック図である。本実施形態に係る水素供給システム100は、有機化合物(常温で液体)を原料とするものである。なお、水素精製の過程では、原料である有機化合物(常温で液体)を脱水素した、脱水素生成物(有機化合物(常温で液体))が除去される。原料の有機化合物として、例えば、有機ハイドライドが挙げられる。有機ハイドライドは、製油所で大量に生産されている水素を芳香族炭化水素と反応させた水素化物が好適な例である。また、有機ハイドライドは、芳香族の水素化化合物に限らず、2−プロパノール(水素とアセトンが生成される)の系もある。有機ハイドライドは、ガソリンなどと同様に液体燃料としてタンクローリーなどによって水素供給システム100へ輸送することができる。本実施形態では有機ハイドライドとして、メチルシクロヘキサン(以下、MCHと称する)を用いる。その他、有機ハイドライドとしてシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、メチルデカリン、ジメチルデカリン、エチルデカリンなど芳香物炭化水素の水素化物を適用することができる(なお、芳香族化合物は特に水素含有量の多い好適な例である)。水素供給システム100は、燃料電池自動車(FCV)や水素エンジン車に水素を供給することができる。なお、メタンを主成分とした天然ガスやプロパンを主成分としたLPG、あるいはガソリン、ナフサ、灯油、軽油といった液体炭化水素原料から水素を製造する場合にも適用可能である。
本実施形態では、水素供給システム100として、FCV10に高純度水素を供給する水素ステーションを例として説明を行う。図1に示すように、本実施形態に係る水素供給システム100は、MCHタンク(第1の貯蔵部)1、気化器2、脱水素反応器(脱水素反応部)3、気液分離器(気液分離部)4、トルエンタンク(第2の貯蔵部)5、水素精製器(水素精製部)6、圧縮機7、蓄圧器8、ディスペンサ9、熱源11、冷熱源12,13、及び水素化装置20を備えている。また、水素供給システム100は、ラインL1〜L9を備えている。なお、本実施形態では、原料としてMCHを採用し、水素精製の過程で除去される脱水素生成物がトルエンである場合を例として説明する。なお、実際には、トルエンのみならず、未反応のMCHと少量の副生成物及び不純物も存在するが、本実施形態中では、トルエンに混じって当該トルエンと同じ挙動を示す。従って、以下の説明において、「トルエン」と称して説明するものには、未反応のMCHや副生成物も含むものとする。
ラインL1〜L9は、MCH、トルエン、水素含有ガス、オフガス、または高純度水素が通過する流路である。ラインL1は、MCHタンク1と気化器2とを接続する。ラインL2は、気化器2と脱水素反応器3とを接続する。ラインL3は、脱水素反応器3と気液分離器4とを接続する。ラインL4は、気液分離器4と水素精製器6とを接続する。ラインL5は、気液分離器4とトルエンタンク5とを接続する。ラインL6は、水素精製器6と圧縮機7とを接続する。ラインL7は、水素精製器6と気化器2とを接続する。ラインL7は、水素精製器6から排出されるオフガスを脱水素反応器3よりも上流側へ還流させるリサイクルラインとして機能する。以下の説明においては、ラインL7を「リサイクルラインL7」と称して説明する。ラインL8は、圧縮機7と蓄圧器8とを接続する。ラインL9は、蓄圧器8とディスペンサ9とを接続する。
MCHタンク1は、原料となるMCHを貯留するタンクである。外部からタンクローリーなどで輸送されたMCHは、MCHタンク1にて貯留される。MCHタンク1に貯留されているMCHは、圧縮機(不図示)によってラインL1を介して気化器2へ供給される。
気化器2は、インジェクタなどを介してMCHタンク1から供給されたMCHを気化する機器である。気化されたMCHは、リサイクルラインL7を介して水素精製器6から供給されたオフガスと併せて、ラインL2を介して脱水素反応器3へ供給される。
脱水素反応器3は、MCHを脱水素反応させることによって水素を得る機器である。すなわち、脱水素反応器3は、脱水素触媒を用いた脱水素反応によってMCHから水素を取り出す機器である。有機ハイドライドの反応は可逆反応であり、反応条件(温度、圧力)によって反応の方向が変わる(化学平衡の制約を受ける)。一方、脱水素反応は、常に吸熱反応で分子数が増える反応である。従って、高温、低圧の条件が有利である。脱水素反応は吸熱反応であるため、脱水素反応器3は熱源11から熱媒体を介して熱を供給される。脱水素反応器3は、脱水素触媒中を流れるMCHと熱源11からの熱媒体との間で熱交換可能な機構を有している。熱源11は、脱水素反応器3を加熱することができるものであればどのようなものを採用してもよい。例えば、熱源11は、脱水素反応器3を直接加熱するものであってもよく、例えば気化器2やラインL1,L2を加熱することによって脱水素反応器3に供給されるMCHを加熱してもよい。また、熱源11は、脱水素反応器3と、脱水素反応器3へ供給されるMCHの両方を加熱してもよい。例えば、熱源11としてバーナーやエンジンを採用することができる。脱水素反応器3で取り出された水素含有ガスは、ラインL3を介して気液分離器4へ供給される。ラインL3の水素含有ガスは、液体であるトルエンを混合物として含んだ状態で、気液分離器4へ供給される。
気液分離器4は、水素含有ガスからトルエンを分離するタンクである。気液分離器4は、混合物としてトルエンを含む水素含有ガスを貯留することによって、気体である水素と液体であるトルエンとを気液分離する。気液分離器4は、冷熱源12からの冷却媒体によって冷却される。気液分離器4は、気液分離器4中の水素含有ガスと冷熱源12からの冷却媒体との間で熱交換可能な機構を有している。冷熱源12は気液分離器4を冷却することができるものであればどのようなものを採用してもよい。例えば、冷熱源12としてチラー等の冷却器を採用することができる。気液分離器4で分離されたトルエンは、ラインL5を介してトルエンタンク5へ供給される。気液分離器4で分離された水素含有ガスは、ラインL4を介して水素精製器6へ供給される。なお、水素含有ガスを冷やすと当該ガスの一部(トルエン)は液化し、気液分離器4によって、液化しないガス(水素)と分離することができる。ガスを低温とした方が、分離の効率は良くなり、圧力を上げると更に、トルエンの液化が進む。
トルエンタンク5は、気液分離器4で分離された液体のトルエンを貯留するタンクである。トルエンタンク5に貯留されたトルエンは、水素化装置20での水素化によってMCHとなり、MCHタンク1へ供給される。水素化装置20の構成については後述する。
水素精製器6は、脱水素反応器3で得られると共に気液分離器4で気液分離された水素含有ガスから、脱水素生成物(本実施形態ではトルエン)を除去する。これによって、水素精製器6は、当該水素含有ガスを精製して高純度水素(精製ガス)を得る。得られた高純度水素は、ラインL6へ供給され、水素及び脱水素生成物を含むオフガスは、リサイクルラインL7へ排出される。リサイクルラインL7へ供給されたオフガスは、図示されない圧縮機を介して気化器2へ供給され、ラインL2を介して脱水素反応器3へ供給される。
水素精製器6は、採用する水素精製方法によって異なるが、具体的には、水素精製方法として膜分離を用いる場合には、水素分離膜を備える水素分離装置であり、PSA(Pressure swing adsorption)法又はTSA(Temperature swing adsorption)法を用いる場合には、不純物を吸着する吸着材を格納する吸着塔を複数備えた吸着除去装置である。
水素精製器6が膜分離を用いる場合について説明する。この方法では、所定温度に加熱された膜に、圧縮機(不図示)によって所定圧力に加圧された水素含有ガスを透過させることによって、脱水素生成物を除去し、高純度の水素ガス(精製ガス)を得ることができる。膜を透過した透過ガスの圧力は、膜を透過する前の圧力と比べて低下する。一方、膜を透過しなかった非透過ガスの圧力は、膜を透過する前の所定圧力と略同一である。このとき、膜を透過しなかった非透過ガスが、水素精製器6のオフガスに該当する。
水素精製器6に適用される膜の種類は特に限定されず、多孔質膜(分子流によって分離するもの、表面拡散流によって分離するもの、毛管凝縮作用によって分離するもの、分子ふるい作用によって分離するものなど)や、非多孔質膜を適用することができる。水素精製器6に適用される膜として、例えば、金属膜(PbAg系、PdCu系、Nb系など)、ゼオライト膜、無機膜(シリカ膜、カーボン膜など)、高分子膜(ポリイミド膜など)を採用することができる。
膜分離による水素精製器6の水素回収率は、70〜90%である。水素精製器6で用いられる膜の「水素/トルエン」の分離係数は、1000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましい。
水素精製器6の除去方法として、PSA法を採用する場合について説明する。PSA法で用いられる吸着材は、高圧下では水素含有ガスに含まれるトルエンを吸着し、低圧下では吸着したトルエンを脱着する性質を持つ。PSA法は、吸着材のこのような性質を利用するものである。すなわち、吸着塔内を高圧にすることにより、水素含有ガスに含まれるトルエンを吸着材に吸着させて除去し、高純度の水素ガス(精製ガス)を得る。吸着により吸着塔内の吸着材の吸着機能が低下した場合には、吸着塔内を低圧にすることにより、吸着材に吸着したトルエンを脱着し、併せて除去した精製ガスの一部を逆流させることにより当該脱着されたトルエンを吸着塔内から除去することで、吸着材の吸着機能を再生する(このとき、トルエンを吸着塔内から除去することで排出される少なくとも水素とトルエンを含む水素含有ガスが、水素精製器6からのオフガスに該当する)。
吸着塔内の圧力の調整方法は特に限定されないが、例えば、吸着塔毎に備えられたバルブを閉めるなどの操作により、吸着塔毎に調節することができる。従って、吸着材の吸着機能が低下した吸着塔については、減圧により吸着材を再生させるとともにオフガスを排出する。一方、残りの吸着塔については、加圧により水素含有ガスに含まれるトルエンを吸着材に吸着させて除去するとともに高純度水素を得る。再生中の吸着塔についての吸着材再生が完了したら、当該吸着塔については、加圧によりトルエンの除去を開始するとともに高純度水素を得る。一方、トルエンの除去を行っていた吸着塔の全部または一部については、減圧により吸着材の再生を開始するとともにオフガスを排出する。このように、再生を行う吸着塔とトルエンの除去を行う吸着塔の切り替えを繰り返し行うことで、水素供給システム100全体として、連続的に高純度水素とオフガスとを得ることができる。水素精製器6がPSA法を採用する場合の水素回収率は、吸着塔の数によるが、約60〜90%である。
水素精製器6の除去方法として、TSA法を採用する場合について説明する。TSA法で用いられる吸着材は、常温下では水素含有ガスに含まれるトルエンを吸着し、高温下では吸着したトルエンを脱着する性質を持つ。TSA法は、吸着材のこのような性質を利用するものである。すなわち、吸着塔内を常温にすることにより、水素含有ガスに含まれるトルエンを吸着材に吸着させて除去し、高純度の水素ガス(高純度水素)を得る。吸着により吸着塔内の吸着材の吸着機能が低下した場合には、吸着塔内を高温にすることにより、吸着材に吸着したトルエンを脱着し、併せて除去した高純度水素の一部を逆流させることにより当該脱着されたトルエンを吸着塔内から除去することで、吸着材の吸着機能を再生する(このとき、トルエンを吸着塔内から除去することで排出される少なくとも水素とトルエンを含む水素含有ガスが、水素精製器6からのオフガスに該当する)。
吸着塔内の温度の調整方法は特に限定されないが、例えば、吸着塔毎に備えられたヒータのON/OFFを切り替えるなどの操作により、吸着塔毎に調節することができる。従って、吸着材の吸着機能が低下した吸着塔については、高温にすることにより吸着材を再生させるとともにオフガスを排出する。一方、残りの吸着塔については、常温に保つことにより水素含有ガスに含まれるトルエンを吸着材に吸着させて除去するとともに高純度水素を得る。再生中の吸着塔についての吸着材再生が完了したら、当該吸着塔については、吸着塔内を常温に保つことによりトルエンの除去を開始するとともに高純度水素を得る。一方、トルエンの除去を行っていた吸着塔の全部または一部については、吸着塔内を高温にすることにより吸着材の再生を開始するとともにオフガスを排出する。このように、再生を行う吸着塔とトルエンの除去を行う吸着塔の切り替えを繰り返し行うことで、水素供給システム100全体として、連続的に高純度水素とオフガスとを得ることができる。水素精製器6がTSA法を採用する場合の水素回収率は、吸着塔の数によるが、約60〜90%である。
圧縮機7は、水素精製器6で得られた高純度水素を高圧状態とする。圧縮機7は、例えば、20〜90MPaの圧力で高純度水素を高圧状態とする。圧縮機7は、高純度水素をFCV10へ供給可能とするために高圧状態にした上で、ラインL8を介して蓄圧器8へ供給する。なお、目的とする圧力に応じて、圧縮を行う圧縮ユニットを複数備え、段階的に圧縮を行う構成としてもよい。
蓄圧器8は、高純度水素を高圧状態のまま蓄える。蓄圧器8で蓄えられた高純度水素は、ラインL9を介して、ディスペンサ9によってFCV10に供給される。蓄圧器8により、水素供給システム100内にある程度の量の高純度水素を蓄えておくことができるため、FCV10へ水素を安定供給することが可能となる。ただし、蓄圧器8は、水素供給を行うために必須ではないため、省略してもよい。ラインL9を通過する高純度水素は、冷熱源13からの冷却媒体によって冷却される。ラインL9は、当該ラインL9を流れる高純度水素と冷熱源13からの冷却媒体との間で熱交換可能な機構を有している。冷熱源13はラインL9を流れる高純度水素を冷却することができるものであればどのようなものを採用してもよい。例えば、冷熱源13としてチラー等の冷却器を採用することができる。
次に、本実施形態に係る水素供給システム100の要部について説明する。水素化装置(水素化部)20は、トルエンタンク5に貯蔵されているトルエン(脱水素生成物)を、水素ガスを発生させることなく水素化し、MCH(原料)としてMCHタンクへ供給する装置である。水素化装置20は、ラインL10を介してトルエンタンク5と接続されている。また、水素化装置20は、ラインL11を介してMCHタンク1と接続されている。水素化装置20は、電気を用いてトルエンを水素化する。このような構成により、トルエンタンク5に貯蔵されたトルエンは、ラインL10を介して水素化装置20へ供給される。また、水素化装置20でトルエンを水素化することによって得られたMCHは、ラインL11を介してMCHタンク1へ供給される。なお、水素化のために用いられる電気は、例えば太陽光発電機、風力発電機、水力発電機、地熱発電機、潮力発電機等の再生可能エネルギーを用いて発電されてよい。また、水素化装置20がトルエンの水素化を行うタイミングは特に限定されない。例えば、トルエンタンク5内に所定量のトルエンが貯蔵されたタイミングで水素化装置20を運転してもよく、トルエンタンク5に新たなトルエンが供給され続けている間は常時水素化装置20を運転させてもよい。
なお、水素化装置20へ流れるトルエンは、トルエンタンク5から取り出されなくともよく、例えば、ラインL5から取り出されてもよく、気液分離器4から直接取り出されてもよい。また、水素化装置20で得られた原料は、脱水素反応器3の上流側である限りMCHタンク1へ供給されなくともよく、ラインL1や気化器2へ供給されてもよい。
次に、図2及び図3を参照して、水素化装置20の具体的な構成の一例について説明する。なお、以下の説明では、不飽和結合を有する有機化合物であるトルエンを、不飽和化合物24と称して説明する。図2に示す水素化装置20は、不飽和化合物24を水素化する。不飽和化合物24の水素化は、例えば常温常圧環境下で行えばよい。水素化装置20は、還元槽22と、酸化槽23と、還元槽22と酸化槽23とを区切る膜電極接合体26aとを具備する。還元槽22と酸化槽23とは、膜電極接合体26aを介して連結されている。
酸化槽23には、水又は水を含む支持電解質25が入っている。支持電解質25としては、酸化還元電位に対して安定性を有し、必要なプロトン伝導性を有するものを用いればよい。例えば、支持電解質25としては、硫酸ナトリウム水溶液、希硫酸、水で膨潤させた固体高分子電解質膜等を用いることができる。必要に応じて、窒素等の不活性ガスを、ガス管31を通じて外部から支持電解質25中へ供給してもよい。
酸化槽23の支持電解質25の中には酸化極27が配置されている。酸化極27は、酸化活性成分から構成され、水からプロトンおよび酸素を生成する機能を有している。この酸化活性成分としては、貴金属、遷移元素、酸化物、窒化物、硫化物、セレナイド、オキシナイトライド、チオナイトライドなどが挙げられる。中でも強酸性雰囲気下での安定性の観点から貴金属が好ましい。貴金属としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)等が挙げられる。中でも活性・選択性の観点から、Pt、Rh、Irが活性成分として好ましい。遷移元素としては、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、ランタン(La)などが挙げられる。また、以上に記載した酸化活性成分を適当な担体に担持した触媒も酸化極27の構成材料として好ましい。この担体としては、電子伝導性を有し、表面積の大きい材料により構成されるものが挙げられる。中でも電子伝導性の付与および三相界面の確保の観点から活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどが好ましい。なお、酸化極27全体を支持電解質25中に浸漬する必要は無く、電解質25と酸化極27との接触が確保されていれば良い。
還元槽22には不飽和化合物24(好ましくは液状の不飽和化合物24)が入っている。還元槽22中への酸素の混入を防ぐ場合等、必要に応じて、窒素等の不活性ガスを、ガス管30を通じて外部から不飽和化合物24中へ供給してもよい。
膜電極接合体26aは集電層42、還元極44、電解質膜40がこの順番に積層されてなる。集電層42は還元槽22中に存在する不飽和化合物24と接触している。電解質膜40は酸化槽23中に存在する水を含む支持電解質25と接触している。還元極44は、電解質膜40及び集電層42に挟まれ、電解質膜40及び集電層42と接触している。好ましくは、還元極44は電解質膜40及び集電層42と密着している。
電解質膜40は、イオン透過能(好ましくはプロトン伝導性)を有する。また電解質膜40は、酸化槽23内の支持電解質25と還元槽22内の不飽和化合物24との混合を抑制する機能を有している。電解質膜40としては、固体高分子膜、フッ素樹脂系イオン交換膜、多孔質セラミック膜の細孔にイオン伝導性を有する液体(イオン液体、硫酸、リン酸等)を含浸させてなる膜などが挙げられる。この固体高分子膜としては、パーフルオロスルホン酸系プロトン交換膜が挙げられ、中でもイオン透過速度の観点からナフィオン(Nafion)膜(登録商標;デュポン株式会社)が好ましい。この固体高分子膜の厚さは、条件によっても異なるが、水素イオン透過性および機械的強度の観点から10〜500μmとするのが好ましい。フッ素樹脂系イオン交換膜としては、アシプレックス(Aciplex)膜(登録商標;旭化成工業株式会社)およびフレミオン(Flemion)膜(登録商標;旭硝子株式会社)などが挙げられる。
固体高分子膜のイオン交換基の量、すなわちイオン交換容量(IEC:ion exchange capacity)は、イオン交換速度と安定性の観点から0.1〜3.0meq/gとするのが好ましく、更に耐久性の観点から0.3〜2.0meq/gとするのがより好ましい。なお、固体高分子膜のイオン交換基の量とは、例えば固体高分子膜としてナフィオン膜を採用する場合、乾燥状態のナフィオン1g当たりのスルホン酸基のモル数である。「meq」とは、milli−equivalentを意味する。一般的にナフィオン膜のイオン交換容量は、1.0meq/gである。
集電層42は、導電性および隙間を有する素材から構成される。集電層42としては、例えばカーボンペーパーおよびカーボンクロスなどが挙げられる。集電層42の隙間は、不飽和化合物24が還元極44にアクセスすると共に、不飽和化合物24の水素化物が還元槽22に拡散するための経路を確保するように構成されている。
還元極44は、還元活性成分を含み、不飽和化合物24を水素化(還元)する機能を有している。この還元活性成分としては、Pt、Pd、Ru等の貴金属、Ni等の卑金属等が挙げられる。また、以上に記載した還元活性成分を適当な担体に担持した触媒も還元極44の構成材料として好ましい。この担体としては、電子伝導性を有し、表面積の大きい材料(例えば100m2/g程度)により構成されるものが挙げられ、中でも還元活性成分の分散性などの観点から活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンペーパーなどが好ましい。
本実施形態において、酸化極27は導線Wを介して直流電源28に接続される。還元極44は集電層42および導線Wを介して直流電源28に接続されている。直流電源28としては、例えば太陽光発電機、風力発電機、水力発電機、地熱発電機、潮力発電機等の再生可能エネルギーの発生機が挙げられる。また、直流電源28は、整流器と組み合わせても良い。なお、本実施形態における還元極44は集電層42および導線Wを介して直流電源28に接続されているが、このような構成には限られず、例えば集電層42を介さずに導線Wを還元極44に直接接続するようにしても良い。
水素化装置20では、直流電源28によって、酸化極27と還元極44との間に電圧を印加すると、酸化極27の電位が還元極44よりも高くなり、酸化極27の表面で水に由来する酸素イオン(O2−)が酸化されて酸素が発生すると共に、水からプロトンが生成する。酸化槽23内で生成したプロトンは、酸化極27と還元極44との間の電位差によって膜電極接合体26aへ移動し、電解質膜40を透過して還元極44へ到達する。一方、還元槽22内の不飽和化合物24は、集電層42を透過し、還元極44へ到達する。そして、不飽和化合物24は、還元極44に到達したプロトンと、還元極44から供給される電子とによって、水素化(還元)され、有機ハイドライドになる。
以上のように、水素化装置20では、酸化極27で酸素を生成させると共に、酸化極27から還元極44へ供給される電子と、酸化槽23内に生成したプロトンと、不飽和化合物24とを反応させて、不飽和化合物24を水素化する。すなわち、水素化装置20では、水の電気分解による水素ガスの発生を実質的に経由することなく、再生可能エネルギーをエネルギー源として、水に由来する水素を不飽和化合物24に付加して、有機ハイドライドを形成することが可能となる。
上述した有機化合物の水素化は、下記化学反応式(1)のように表すことができる。
U(n)+xH2O → U(n−x)+(x/2)O2 (1)
式(1)中、U(n)は不飽和化合物を表し、nはU(n)が有する不飽和結合の数を表す1以上の整数であり、xは1以上n以下の整数であり、U(n−x)は2x個の水素原子が付加されたU(n)を表し、n−xはU(n−x)が有する不飽和結合の数を表す整数である。U(n)が完全に水素化される場合、xはnに等しく、U(n−x)はU(0)、すなわち不飽和結合の無い化合物である。
U(n)+xH2O → U(n−x)+(x/2)O2 (1)
式(1)中、U(n)は不飽和化合物を表し、nはU(n)が有する不飽和結合の数を表す1以上の整数であり、xは1以上n以下の整数であり、U(n−x)は2x個の水素原子が付加されたU(n)を表し、n−xはU(n−x)が有する不飽和結合の数を表す整数である。U(n)が完全に水素化される場合、xはnに等しく、U(n−x)はU(0)、すなわち不飽和結合の無い化合物である。
水素化装置20では、水の電気分解による水素ガスの発生を実質的に必要としない点において、従来よりも効率よく再生可能エネルギーを化学物質として固定化することが可能となる。したがって、水素化装置20では、水素化のための反応装置とは別に、水の電気分解による水素ガスの発生のための反応装置を設ける必要がない。また、水素化装置20では、エネルギーキャリア(水素キャリア)として、運転条件下で液体である不飽和化合物(有機ハイドライド)を利用することができるため、圧縮水素又は液化水素の場合に比べて、有機ハイドライドの容器間の移し替えに際してエネルギーロスが殆どなく、圧縮又は液化のための装置を用いる必要もない。つまり、水素化装置20によれば、従来に比べて、電力の貯蔵及び輸送に伴うエネルギーロスが小さく、装置の小型化も図ることが可能となる。
次に、本実施形態に係る水素供給システム100の作用・効果について説明する。
まず、従来の水素供給システムについて説明する。従来は、例えば、都市ガス網エリアでは、都市ガスを用いたオンサイト型の水素供給システムとして水素を各拠点で製造し、供給する水素供給システムが採用される。一方、製油所等の副生水素が大量に発生する拠点の近傍では、オフサイト型の水素供給システムとして当該製油所等から高圧輸送された副生水素を各拠点で供給する形態が採用される。しかし、例えば、都市ガス網エリア外であって、副生水素発生拠点からも遠方の地域では、燃料電池車等へ供給するための水素の配給を受けにくいという問題がある。また、震災等の非常時において、交通網等が寸断され、供給ラインの復旧に事案を要する場合などは、長期間水素を供給できない場合もある。従って、そのような地域に水素供給システムを設置する場合、新たな原料を補給することなく、又は新たな原料の補給量を抑制して、水素を供給し続けることが求められていた。
そこで、本実施形態に係る水素供給システム100では、気液分離器4にて水素含有ガスから分離されたトルエン(脱水素生成物)が、水素化装置20にて水素化される。これによって、トルエンは、再び脱水素反応器3での脱水素反応によって水素含有ガスを得ることが可能なMCH(原料)となる。また、水素化装置20は、水素ガスを発生させることなくトルエンを水素化することにより、水素ガスを発生させるための装置を不要とし、効率よく水素化を行うことができる。このようにトルエンを水素化して脱水素反応器3の上流側へ供給することによって、オンサイトで原料を得ることが可能となる。以上により、新たな原料を補給することなく、又は新たな原料の補給量を抑制して、水素を供給し続けることができる。
本実施形態に係る水素供給システム100は、MCH(原料)を貯蔵するMCHタンクと、気液分離器4で分離されたトルエン(脱水素生成物)を貯蔵するトルエンタンク5と、を更に備えている。また、水素化装置20は、トルエンタンク5に貯蔵されたトルエンを、水素ガスを発生させることなく水素化し、MCHとしてMCHタンク1へ供給する。このように、トルエンタンク5に一旦貯蔵されたトルエンを水素化装置20へ供給することで、安定した流量のトルエンを水素化装置20へ供給することが可能となる。また、水素化装置20の原料をMCHタンク1へ一旦貯蔵することで、脱水素反応器3に対するMCHの流量が制御し易くなる。
本実施形態に係る水素供給システム100において、水素化装置20は、電気を用いてトルエンを水素化する。これによって、例えば太陽エネルギーなどの再生可能エネルギーを用いて発電を行うことで、水素化のためのエネルギーを得るための原料を補給する必要がなくなる。すなわち、トルエンの水素化のためのエネルギーをオンサイトで得ることができる。
本実施形態に係る水素供給システム100において、水素化装置20は、水を含む電解質を保持する酸化槽23と、脱水素生成物を保持する還元槽22と、酸化槽23に保持される電解質と還元槽22に保持される脱水素生成物とを隔て、イオン透過能を有する電解質膜40と、酸化槽23に保持される水からプロトンを生成する酸化極27と、還元槽22に保持される脱水素生成物を水素化する還元極44と、を備える。これによって、水素ガスを発生させることなく、効率よく脱水素生成物の水素化を行うことができる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
変形例に係る水素化装置の一例について、図4を参照して説明する。水素化装置51は、第一槽52(酸化極槽)と、第二槽53(還元極槽)とを備える。酸化極槽52と還元極槽53とは、膜状の塩橋58を介して連結されている。塩橋58はその両側をグラスフィルター59によって支持されている。
酸化極槽52には、水を含む支持電解質54が入っている。酸化極槽52の支持電解質54の中には酸化極56(第一電極)が配置されている。酸化極56の表面には光触媒が担持されている。場合によってはガス管60により、N2等の不活性ガスを支持電解質54中に供給することもできる。なお、支持電解質54には、不飽和化合物が含まれていない。
還元極槽53には、水を含む支持電解質55が入っている。また、支持電解質55には、不飽和化合物が溶解している。還元極槽53の支持電解質55の中には還元極57(第二電極)が配置されている。ガス管61により、N2等の不活性ガスが支持電解質55中に供給されている。
支持電解質54、55としては、光触媒の作用により発生する酸化還元電位に対して安定であり、十分なプロトン伝導性を有するものを用いればよい。例えば、支持電解質54、55としては、Na2SO4水溶液や希硫酸等を用いることができる。
塩橋58としては、イオン透過能、好ましくはプロトン伝導性を有すると共に、酸化極槽52の支持電解質54と還元極槽53の支持電解質55との混合を防止できる機能を有するものを用いればよく、例えば、ナフィオン膜等を用いることができる。なお、ナフィオンとは、パーフルオロスルホン酸系プロトン交換膜の一種であり、デュポン社の登録商標である。
本実施形態では,光触媒としてn型半導体の性質を持つものを第一電極56に装着し、酸化極となす。第一電極56では、照射された光を吸収したn型半導体光触媒に正孔(h+)および電子(e−)が発生する。
一般に半導体のバンド構造は他物質との界面で変形するため該界面を越えるためのエネルギー障壁が変化する。n型半導体光触媒を用いる本実施形態では、第一電極56のn型半導体光触媒と支持電解質54との界面において正孔に対する障壁は減少し、電子に対する障壁は増加するようにバンド構造が変形する。このため、正孔が支持電解質54との界面に移動しOH−を酸化し酸素を発生させる。一方,電子は逆方向に流れ外部回路を通って第一電極56から第二電極57に移動し不飽和化合物U(n)を還元(水素化)する。
(光触媒)
光触媒としては、例えばn型半導体あるいはp型半導体を用いればよいが、下記の条件(1)〜(4)、(3’)、(4’)を満たしていればいかなる化合物を用いても良い。
光触媒としては、例えばn型半導体あるいはp型半導体を用いればよいが、下記の条件(1)〜(4)、(3’)、(4’)を満たしていればいかなる化合物を用いても良い。
条件(1):光触媒が光を吸収することで、光触媒の価電子帯(valence band)から伝導帯(conduction band)への電子移動が進行する。
条件(2):光触媒が反応条件下において安定である。
条件(3):光触媒がn型半導体である場合、光照射により光触媒中に生成した励起電子の電位が、不飽和化合物を還元できる電位より負である。
条件(4):光触媒がn型半導体である場合、光照射により光触媒中に生成した正孔の電位が、触媒表面でヒドロキシイオンを酸化し酸素を発生させる電位よりも正である。
条件(3’):光触媒がp型半導体である場合、光照射により光触媒中に生成した励起電子の電位が、不飽和化合物を還元できる電位より負であり、触媒表面で不飽和化合物を還元できる。
条件(4’):光触媒がp型半導体である場合、光照射により光触媒中に生成した正孔の電位が、ヒドロキシイオンを酸化し酸素を発生させる電位よりも正である。
本発明では、光触媒が、短波長の紫外光のみならず、可視光にも応答して触媒作用を示す可視光応答性光触媒であることが好ましい。換言すれば、光触媒は、好ましくは400nm、より好ましくは420nm、更に好ましくは450nm以上の波長を有する光を少なくとも吸収する。
具体的な光触媒としては、Sc、Y、La系列、Ac系列、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb等の元素の酸化物、窒化物、オキシナイトライド、硫化物又はオキシサルファイド等が例示される。これらの元素は最外殻d軌道の電子配置がd0あるいはd10であるイオン種であることが好ましく、その具体例としては、Sc(3+)、Y(3+)、La(3+)、Ce(3+)、Pr(3+)、Nd(3+)、Sm(3+)、Eu(3+)、Gd(3+)、Tb(3+)、Dy(3+)、Ho(3+)、Er(3+)、Tm(3+)、Yb(3+)、Lu(3+)、Ti(4+)、Zr(4+)、Hf(4+)、V(5+)、Nb(5+)、Ta(5+)、Cr(6+)、Mo(6+)、W(6+)、Mn(7+)、Re(7+)、Cu(1+)、Ag(1+)、Au(1+)、Zn(2+)、Cd(2+)、Hg(2+)、Ga(3+)、In(3+)、Tl(3+)、Ge(4+)、Sn(4+)、Pb(4+)等を挙げることができる。
更に具体的に光電極触媒を例示するならば、WO3、MoO3、V2O5、Nb2O5、Ta2O5、CdS、Ga2O3、In2O3、NbON、TaON等を挙げることができる。
光触媒は、第一電極の表面に担持される。第一電極への光触媒の担持方法としては、公知の任意の手法を採用できる。例えば、はけ塗り、吹きつけ、スピンコート、バーコート、ゾルゲル法、有機金属気相成長法、エレクトロンビーム蒸着法、スパッタ法又は電気泳動法等の適当な方法で触媒粉あるいはその前駆体を第一電極に塗布した後、触媒粉あるいはその前駆体に対して焼成等の必要な処理を施すことにより、第一電極の表面に光触媒を担持させることができる。
第一電極としては、金属、SnO2、ITO(Indium Tin Oxide)、FTO(Fluorine−doped Tin Oxide)等の導電体からかる基板を用いればよい。また、第二電極としては、白金からかる基板等のように、不飽和化合物に対して水素化活性を有する導電体を用いればよい。
以上のように、水素化装置51は、表面に光触媒を備える酸化極56と、酸化極56と電気的に接続された還元極(第二電極)57を、水を含んだ電解質と接触させた状態において、光触媒に光を照射することにより、脱水素生成物を水素化する。これによって、水素ガスを発生させることなく、効率よく脱水素生成物の水素化を行うことができる。具体的には、第一電極56の光触媒に太陽光を照射することにより、光触媒に形成された正孔でOH−を酸化して酸素ガスを生成させると共に、第一電極56から第二電極57へ供給される電子と、支持電解質55に存在するH+と、不飽和化合物とを反応させて、不飽和化合物U(n)を水素化する。すなわち、本実施形態では、水の電気分解又は光分解による水素ガスの発生を実質的に経由することなく、太陽エネルギーをエネルギー源として、水に由来する水素を不飽和化合物に直接付加して、有機ハイドライドを形成することが可能となる。換言すれば、実施形態では、水の電気分解又は光分解による水素ガスの発生を必要としない点において、従来よりも効率よく太陽エネルギーを化学物質として固定化することが可能となる。また、本実施形態では、水素化のための反応装置とは別に、水の電気分解又は光分解による水素ガスの発生のための反応装置を設ける必要がないため、従来よりも小規模でコストの低い反応装置で水素の貯蔵を行うことが可能となる。
1…MCHタンク(第1の貯蔵部)、2…気化器、3…脱水素反応器(脱水素反応部)、4…気液分離器(気液分離部)、5…トルエンタンク(第2の貯蔵部)、6…水素精製器(水素精製部)、7…圧縮機、8…蓄圧器、9…ディスペンサ、11…熱源、12,13…冷熱源、20,51…水素化装置、22…還元槽、23…酸化槽、27…酸化極、40…電解質膜、44…還元極、56…第一電極(酸化極)、57…第二電極(還元極)、100…水素供給システム。
Claims (5)
- 水素の供給を行う水素供給システムであって、
原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る脱水素反応部と、
前記水素含有ガスから脱水素生成物を分離する気液分離部と、
前記気液分離部で分離された前記水素含有ガスから前記脱水素生成物を除去し、精製ガスを得る水素精製部と、
前記気液分離部で分離された前記脱水素生成物を、水素ガスを発生させることなく水素化し、前記原料として前記脱水素反応部の上流側へ供給する水素化部と、を備える水素供給システム。 - 前記原料を貯蔵する第1の貯蔵部と、
前記気液分離部で分離された前記脱水素生成物を貯蔵する第2の貯蔵部と、を更に備え、
前記水素化部は、前記第2の貯蔵部に貯蔵された前記脱水素生成物を、水素ガスを発生させることなく水素化し、前記原料として第1の貯蔵部へ供給する、請求項1に記載の水素供給システム。 - 前記水素化部は、電気を用いて前記脱水素生成物を水素化する、請求項1又は2に記載の水素供給システム。
- 前記水素化部は、
水を含む電解質を保持する酸化槽と、
前記脱水素生成物を保持する還元槽と、
前記酸化槽に保持される前記電解質と前記還元槽に保持される前記脱水素生成物とを隔て、イオン透過能を有する電解質膜と、
前記酸化槽に保持される前記水からプロトンを生成する酸化極と、
前記還元槽に保持される前記脱水素生成物を水素化する還元極と、を備える、請求項1〜3の何れか一項に記載の水素供給システム。 - 前記水素化部は、
表面に光触媒を備える第一電極と、前記第一電極と電気的に接続された第二電極を、水を含んだ電解質と接触させた状態において、前記光触媒に光を照射することにより、前記脱水素生成物を水素化する、請求項1又は2に記載の水素供給システム。
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