JP2015226468A - p53ファミリーキメラ分子およびその使用 - Google Patents

p53ファミリーキメラ分子およびその使用 Download PDF

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雅史 井戸川
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Abstract

【課題】p53ファミリーのキメラ分子による遺伝子治療などを提供する。
【解決手段】p63由来の転写活性化ドメインをコードする核酸配列、p63由来のDNA結合ドメインをコードする核酸配列およびp53由来のオリゴマー化ドメインをコードする核酸配列を含むキメラ遺伝子および/またはキメラタンパク質を含む、p53AIP1、CASP10、KCNK3およびPYCARDからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現誘導剤、アポトーシス誘導剤、医薬組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、p53ファミリーのキメラ遺伝子および/またはキメラタンパク質を含む、遺伝子発現誘導剤などに関する。
がん抑制遺伝子p53は、DNA損傷などに関連する転写因子をコードする。p53におけるがんに関連する変異は、主としてDNA結合ドメインにおけるミスセンス変異である。典型的には、これら変異は全長の変異タンパク質(変異p53)を発現し、p53の標的遺伝子のトランス活性化を不能にする。野生型の活性が失われることに加え、多くのp53変異体は、残りの野生型対立遺伝子から発現する野生型p53を不活性化し、ドミナントネガティブなタンパク質として機能する。議論の余地はあるものの、がん細胞における変異型p53の存在は侵襲性腫瘍に関連するため、予後の悪化にも関連する。
外来性のp53の発現は、細胞周期の進行を妨げ、アポトーシスを誘導することによって、がん細胞の増殖を阻害する。多くのがんにおいて、p53の消失は腫瘍の発達だけではなく、化学療法抵抗性をも引き起こす。したがって、腫瘍細胞への野生型p53の再導入は、増殖阻害経路を活性化し、腫瘍細胞の化学療法への感受性を増加させる。実際に、p53遺伝子治療がいくつかのがんに対して効果的であることが証明されている。しかしながら、MDM2の増幅、p14ARF変異による不活性化、またはHPV陽性子宮頸癌におけるHPV E6がん遺伝子は、p53の増殖抑制経路を障害するため、p53遺伝子治療の効果を妨げる。
p53遺伝子ファミリーは、p53、p63(別名p51)およびp73の3つのメンバーからなる。N末端の転写活性化ドメイン(TAD)、中央コアの配列特異的DNA結合ドメイン(DBD)およびC末端のオリゴマー化ドメイン(OLD)の3つのドメインにおいて、これらファミリーは相同性を共有する。しかしながら、p53ファミリーメンバーは、転写制御および転写後制御の特徴的なパターンを示す。p53は比較的高レベルで広範に転写され、正常な細胞におけるp53タンパク質の量は、主にそのタンパク分解によって制御される。p53タンパク質の分解は、p53をユビキチン化するMDM2を介して行われる。p53のN末端におけるアミノ酸残基のリン酸化は、そのDNA結合活性に影響を与えないが、MDM2に対する親和性に影響するため、続くタンパク分解に影響を与える。
p63の構造は、p53の構造より複雑である。p63遺伝子は、2つの異なるプロモーターの使用および選択的スプライシングの結果、N末端およびC末端が異なる複数のアイソフォームとして発現する。p63アイソフォームは、2つのN末端の1つを有すると考えられる。1つは転写活性があり(TA)、もう1つはN末端が欠失している(ΔN)。加えて、C末端はアイソフォーム間で異なり、特に、p63αアイソフォームは、急激に活性を減少させるC末端領域を含む。p63アイソフォーム間の機能的差異は、選択的プロモーターおよび選択的スプライシングの異なる制御が原因である。
これまでに、p53の変異体として、p53のSer−46をフェニルアラニンで置換した変異p53が、がん細胞において野生型p53よりも効率的にアポトーシスを誘導することが報告されている(非特許文献1)。また、p53ファミリーのキメラ遺伝子も知られており、p51、p53およびp73のTAD、DBDおよびOLDをそれぞれ組み換えることにより、野生型p53よりも優れた転写活性能を獲得し得ることが知られている(特許文献1)。
特開2000−354488号
Nakayama et al., Cancer Sci. 2006 Jul;97(7):633-41.
しかしながら、特許文献1では、p63(p51)由来のTADを有するキメラでは転写活性能が低い傾向にあるなど、p53ファミリーのキメラ遺伝子およびキメラタンパク質の有用性は、特定の組み合わせのキメラに限定されていた。また、腫瘍抑制におけるTAp63およびTAp73の機能は不明であり、p53ファミリーのキメラ遺伝子およびキメラタンパク質によるアポトーシス誘導の効果に関するデータも記載されていない。したがって、p53遺伝子治療に用いられ得るp53ファミリーのキメラは、実用化に向けての改善の余地があり、臨床使用にも優れた抗腫瘍剤の開発が求められる。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねる中で、TAD、DBDおよびOLDがそれぞれp63、p63およびp53由来のp53ファミリーのキメラ(p63−53O)が、予想外にも優れたアポトーシス効果を奏することや、その変異体であるキメラタンパク質(SHp53)が、特定のアポトーシス関連遺伝子を特異的に活性化することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1]p63由来の転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含むN末端側領域と、p53由来のオリゴマー化ドメインを含むC末端側領域とを含むキメラタンパク質および/もしくはその機能的変異体、および/または、前記キメラタンパク質もしくはその機能的変異体をコードする核酸分子を含む、p53AIP1、CASP10、KCNK3およびPYCARDからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現誘導剤。
[2]キメラタンパク質が、配列番号162のアミノ酸配列を含む転写活性化ドメイン、配列番号166のアミノ酸配列を含むDNA結合ドメイン、および配列番号180のアミノ酸配列を含むオリゴマー化ドメインを含む、[1]に記載の遺伝子発現誘導剤。
[3]キメラタンパク質が核移行シグナルまたはその部分配列を含む、[1]または[2]に記載の遺伝子発現誘導剤。
[4]キメラタンパク質が、配列番号140、142、144、146、148、150、152、154、156、158および160のいずれかのアミノ酸配列を含む、[1]または[2]に記載の遺伝子発現誘導剤。
[5][1]〜[4]のいずれか一項に記載の遺伝子発現誘導剤を含む、アポトーシス誘導剤。
[6][1]〜[4]のいずれか一項に記載の遺伝子発現誘導剤を含む、医薬組成物。
[7]細胞増殖性疾患の処置のための、[6]に記載の医薬組成物。
[8]p63由来の転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含むN末端側領域と、p53由来のオリゴマー化ドメインを含むC末端側領域とを含むキメラタンパク質もしくはその機能的変異体、および/または、前記キメラタンパク質もしくはその機能的変異体をコードする核酸分子を、in vitroまたはex vivoで細胞に投与すること含む、アポトーシス関連遺伝子の発現誘導方法。
[9]p63由来の転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含むN末端側領域と、p53由来のオリゴマー化ドメインを含むC末端側領域とを含むキメラタンパク質もしくはその機能的変異体、および/または、前記キメラタンパク質もしくはその機能的変異体をコードする核酸分子を、in vitroまたはex vivoで細胞に投与すること含む、アポトーシス誘導方法。
[10]KCNK3タンパク質および/もしくはその機能的変異体、および/または、前記タンパク質もしくはその機能的変異体をコードする核酸分子を含む、アポトーシス誘導剤。
[11]KCNK3タンパク質および/もしくはその機能的変異体、および/または、前記タンパク質もしくはその機能的変異体をコードする核酸分子を含む、細胞増殖性疾患の処置のための医薬組成物。
[12]KCNK3タンパク質および/もしくはその機能的変異体、および/または、前記タンパク質もしくはその機能的変異体をコードする核酸分子を、in vitroまたはex vivoで細胞に投与すること含む、アポトーシス誘導方法。
[13]配列番号140、142、144、146、148、150、154、156、158および160のいずれかのアミノ酸配列を含む、キメラタンパク質もしくはその機能的変異体。
[14][13]に記載のキメラタンパク質もしくはその機能的変異体をコードする核酸分子。
[15][14]に記載の核酸分子を含む核酸構築物またはベクター。
[16][15]に記載の核酸分子、および/または、[15]に記載の核酸構築物および/またはベクターを含む組成物。
本発明の遺伝子発現誘導剤は、TAD、DBDおよびOLDが、それぞれp63、p63およびp53由来のp53ファミリーキメラ遺伝子またはキメラタンパク質を含み、アポトーシス関連遺伝子の発現を誘導する。したがって、がん細胞などにおいて、優れたアポトーシス誘導効果を示す。本発明のキメラ遺伝子およびキメラタンパク質は、転写活性能を高めると考えられるp63由来のOLDを有さず、野生型p53よりも効率的にアポトーシス関連遺伝子を誘導する。
本発明のキメラ遺伝子およびキメラタンパク質は、カスパーゼ−3を活性化させてアポトーシスを促進し、in vivoにおいても優れた抗腫瘍効果を奏する。また、野生型p53よりも効率的にアポトーシスを誘導することから、従来のp53治療よりも副作用を抑えることができ、臨床での有用性が期待される。さらに、本発明の遺伝子発現誘導剤は、遺伝子治療に用いることができ、かかる場合には化学療法や放射線治療などの他の処置法との併用も可能となる。
本発明のキメラ遺伝子およびキメラタンパク質は、アポトーシス関連遺伝子を誘導することができ、例えば、p53AIP1(TP53AIP1)の発現を誘導することにより、アポトーシスを促進することができる。また、本発明のキメラ遺伝子およびキメラタンパク質は、CASP10およびPYCARDなどのアポトーシス関連遺伝子の発現を誘導することもできる。さらに、新規なアポトーシス関連遺伝子として今回同定されたKCNK3の発現を誘導することができ、特徴的な遺伝子発現パターンおよび新規なアポトーシス経路によって、細胞増殖を抑制することができる。また、本発明のキメラタンパク質は、核移行シグナルを含むことによって、効率的に核へ移行し、転写を活性化することができる。
本発明のキメラ遺伝子およびキメラタンパク質は、p53ヌルがん細胞または野生型がん細胞だけではなく、ドミナントネガティブ効果を有するp53変異体を保持するがん細胞においても、効果的にアポトーシスを促進することができる。これにより、p53治療に耐性を示すがんの治療が可能となり、従来のp53遺伝子治療を大幅に改善することができる。
図1は、Ad−p53遺伝子ファミリーのアポトーシス効果の比較を示した図である。 図2ABは、Ad−p53およびAd−p63γの併用によって増加したアポトーシスの誘導を示した図である。 図2CDは、MKN45細胞において、Ad−p53およびAd−p63γの併用によって増加したアポトーシスの誘導を示した図である。 図3は、p53−p63ハイブリッド分子の模式図を示した図である。
図4は、p53−p63ハイブリッドの細胞内局在を示した図である。 図5ABは、PARPタンパク質の切断およびカスパーゼ−3の活性を示した図である。 図5CDは、MKN45細胞におけるPARPタンパク質の切断およびカスパーゼ−3の活性を示した図である。 図6は、p53−p63ハイブリッドのアデノウイルス媒介性発現後のアポトーシス細胞のフローサイトメトリー解析を示した図である。
図7は、皮下に移植されたヒトがんの異種移植片におけるp53ファミリーメンバーのアデノウイルス媒介性発現の治療効果を示した図である。 図8は、MKN45異種移植片におけるp53ファミリーメンバーのアデノウイルス媒介性発現の治療効果を示した図である。 図9は、p53−p63ハイブリッドのアデノウイルス媒介性トランスフェクション後のヒトがん細胞株におけるp53標的およびアポトーシス関連タンパク質の発現を示した図である。 図10は、p63−53Oハイブリッドによるp53AIP1の効率的なトランス活性化を示した図である。
図11は、p53AIP1 siRNAのp63−53Oによるアポトーシスの誘導との拮抗を示した図である。 図12A−Dは、スーパーハイブリッドp53のがん細胞におけるアポトーシスの強い誘導を示した図である。 図12E−Gは、スーパーハイブリッドp53のがん細胞におけるアポトーシスの強い誘導を示した図である。 図13は、p53(ダークグレー)、p63γ(ライトグレー)、63−53Oおよびp53ファミリーハイブリッドのコンストラクトの模式図である。
図14は、p53ファミリーハイブリッドのコンストラクトの構造をPCR法およびウェスタンブロット法で確認したことを示した図である。 図15は、p53、p63γ、p63−53Oおよびp53ファミリーハイブリッドによる各種がん細胞におけるアポトーシス誘導の比較を示した図である。 図16は、p53、p63γ、p63−53Oおよびp53ファミリーハイブリッドタンパク質の細胞内局在を示した図である。 図17は、p53、p63γ、p63−53OおよびSHp53による特異的p53AIP1発現誘導を示した図である。
図18Aは、SHp53により誘導される遺伝子発現プロファイリングを示した図である。 図18B−Dは、SHp53により誘導される遺伝子発現プロファイリングを示した図である。 図19は、リアルタイムRT−PCR法によって確認されたSHp53により特異的に発現誘導される遺伝子群を示した図である。 図20は、リアルタイムRT−PCR法によって確認されたSHp53により特異的に発現誘導される遺伝子群を示した図である。
図21は、リアルタイムRT−PCR法によって確認されたSHp53により特異的に発現誘導される遺伝子群を示した図である。 図22は、スーパーハイブリッドp53特異的な標的遺伝子のトランス活性化の制御を示した図である。 図23は、SHp53が特異的に結合する部位を持つ標的遺伝子を示した図である。 図24は、特定の標的遺伝子の発現制御によるスーパーハイブリッドp53のアポトーシスの誘導を示した図である。
本明細書中に別記しないかぎり、本発明に関して用いられる科学的および技術的用語は、当業者に通常理解されている意味を有するものとする。一般的に、本明細書中に記載された細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝子、タンパク質および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションに関して用いられる用語およびその技術は、当該技術分野においてよく知られ、通常用いられているものとする。一般的に、別記のないかぎり、本発明の方法および技術は、当該技術分野においてよく知られた慣用の方法に従って、本明細書中で引用され、議論されている種々の一般的な、および専門的な参考文献に記載されたとおりに行われる。かかる文献としては、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989) および Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Press (2001); Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates (1992, および2000の補遺); Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology - 4th Ed., Wiley & Sons (1999); Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1990); および Harlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1999)などが挙げらる。
本明細書に引用した刊行物、特許出願、特許などの資料の全ては、その全体を本明細書に援用する。
酵素反応および精製技術は、製造者の仕様書に従い、当該技術分野において通常なされているとおりに、または本明細書に記載のとおりに行うものとする。本明細書中に記載された分析化学、合成有機化学ならびに医薬品化学および薬化学に関して用いられる用語、ならびにその実験手順および技術は、当該技術分野においてよく知られ、通常用いられているものである。標準的な技術を、化学合成、化学分析、薬剤の製造、製剤および送達、ならびに対象の処置に用いるものとする。
ここで、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に別様に指示しないかぎり、複数の指示対象を含むよう用いることとする。例または別様に示されている場合を除き、本出願で用いる成分、反応条件などを表す全ての数は、全ての場合において用語「約」で修飾されるものと解される。したがって、反対のことが示されないかぎり、この出願に記載の数的パラメーターは近似値であり、本発明により得ようとする所望の特性に応じて変動し得る。さらに、特に別記しないかぎり、用語「タンパク質」、「ペプチド」および「ポリペプチド」は互換的に用いるものとする。
本発明の一側面は、(i)p63由来の転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含むN末端側領域と、p53由来のオリゴマー化ドメインを含むC末端側領域とを含むキメラタンパク質および/またはその機能的変異体、および/または、前記キメラタンパク質もしくはその機能的変異体をコードする核酸分子(以下で、「キメラ分子」と総称することもある)を含む、p53AIP1、CASP10、KCNK3およびPYCARDからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現誘導剤または発現誘導用組成物、(ii)上記キメラ分子の、前記発現誘導剤または発現誘導用組成物の製造のための使用、(iii)p53AIP1、CASP10、KCNK3およびPYCARDからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を誘導するための上記キメラ分子、および(iv)p53AIP1、CASP10、KCNK3およびPYCARDからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を誘導するための有効量の上記キメラ分子を含む組成物に関する。
本発明のキメラタンパク質(「ハイブリッドタンパク質」と称することもある)は、p53とp63とのキメラタンパク質である。したがって、典型的にはp53およびp63の部分からなり、キメラタンパク質のN末端側領域がp63由来の部分で構成され、C末端領域がp53由来の部分で構成される。ヒトp53およびp63の核酸配列は、それぞれ、アクセッション番号(受入番号)NM_000546およびAB016072として、アミノ酸配列は、それぞれアクセッション番号NP_000537およびBAA32592として、GenBankデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から入手できる。p53およびp63の配列はまた、配列番号193および195(核酸配列)、配列番号194および196(アミノ酸配列)として本明細書に示してある。他の動物の配列もまた、公的に利用可能なデータベース、例えばGenBankなどで見出すことができる:NM_001003210(イヌのp53)、NM_001009294(ネコのp53)、XM_545249(イヌのp63)。本発明におけるp53およびp63は、それぞれ独立して、いずれの生物種に由来するものでもよいが、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ブタなどを含む哺乳動物、特にヒトに由来するものであってもよい。本明細書においては、特に別記しない限り、アミノ酸や塩基の位置は、ヒトp53およびp63、より具体的には、配列番号193〜196に記載のアミノ酸または塩基配列に依拠するものとする。
p53およびp63において、転写活性化ドメイン、DNA結合ドメインおよびオリゴマー化ドメインの3つの機能的ドメインを含む構造は種々の生物種間で保存されている。ヒトp53およびp63の各ドメイン構造は既知である(例えば、特開2000-354488、Scoumanne A. et al., Cancer Biol Ther. 2005 Nov;4(11):1178-85、Tafvizi A et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Jan 11;108(2):563-8、Natan E et al., J Mol Biol. 2011 Jun 10;409(3):358-68、Khoury MP & Bourdon JC, Cold Spring Harb Perspect Biol. 2010 Mar;2(3):a000927など)。ヒトp63の転写活性化ドメインは、典型的には配列番号196の1〜59位、特に1〜58位、ヒトp63のDNA結合ドメインは、典型的には配列番号196の124〜323位、特に124〜319位、さらには142〜323位、142〜321位もしくは142〜319位、ヒトp53のオリゴマー化ドメインは、典型的には配列番号194の318〜363位、特に318〜359位、319〜359位もしくは322〜359位、さらには319〜363位、325〜363位、325〜355位、326〜356位もしくは326〜355位である。他の生物種における各ドメインの位置は知られているか、ドメイン構造が知られている生物種の配列とのアラインメントや、欠失変異体や置換変異体等を用いた実験等により決定することができる。本発明の一態様において、転写活性化ドメインは配列番号196の1〜58位(配列番号162)、DNA結合ドメインは配列番号196の124〜319位(配列番号166)、およびオリゴマー化ドメインは配列番号194の322〜359位(配列番号198)である。本発明の別の態様において、転写活性化ドメインは配列番号196の1〜58位(配列番号162)、DNA結合ドメインは配列番号196の124〜319位(配列番号166)、およびオリゴマー化ドメインは配列番号194の319〜359位(配列番号178)である。
本発明のキメラタンパク質は、野生型p53およびp63における、転写活性化ドメイン、DNA結合ドメインおよびオリゴマー化ドメインの3つの機能的ドメインの間、およびオリゴマー化ドメインのC末端側に存在する配列を全て含んでも、部分的に含んでも、または、全く含まなくてもよい。本発明の一態様においては、DNA結合ドメインとオリゴマー化ドメインとの間に少なくとも1個、例えば、1〜61個のアミノ酸を含む。このアミノ酸はp53由来またはp63由来のものであってよく、2個以上のアミノ酸を含む場合は、さらにp53由来のアミノ酸とp63由来のアミノ酸の両方を含んでいてもよい。より具体的には、本発明のキメラタンパク質は、DNA結合ドメインとオリゴマー化ドメインとの間にp63の320位からC末端側の33個までのアミノ酸および/またはp53の319位からN末端側の28個までのアミノ酸を含んでもよい。例えば、本発明のキメラタンパク質は、DNA結合ドメインとオリゴマー化ドメインとの間に、(1)p53の305〜317位のアミノ酸、(2)p53の290〜317位のアミノ酸、(3)p63の320〜335位のアミノ酸、(4)p63の320〜352位のアミノ酸、(5)(1)〜(4)のアミノ酸の任意の組合わせ(すなわち、(1)と(3)、(1)と(4)、(2)と(3)、および、(2)と(4)の組合わせ)を含んでもよい。この場合、(1)または(2)のアミノ酸は、典型的にはオリゴマー化ドメインのN末端に連結し、(3)または(4)のアミノ酸は、典型的にはDNA結合ドメインのC末端に連結している。
本発明の一態様において、キメラタンパク質は、オリゴマー化ドメインのC末端にp53の360位からC末端側の34個までのアミノ酸、例えば、限定されずに、360位の1個のアミノ酸、360〜362位の3個のアミノ酸、360〜393位の34個アミノ酸が連結している。本発明の一態様において、キメラタンパク質は、DNA結合ドメインとオリゴマー化ドメインとの間、および、オリゴマー化ドメインのC末端に、上記のいずれかの少なくとも1個のアミノ酸を含む。本発明の一態様において、キメラタンパク質は、p53由来の核移行シグナル(NLS)配列またはその一部の配列を含む。p53由来の核移行シグナルは、305〜321位のアミノ酸(配列番号190)であり、その一部としては、例えば、319〜321位のアミノ酸が挙げられる。
本発明の特定の態様において、キメラタンパク質は、配列番号140、142、144、146、148、150、152、154、156、158および160からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。本発明の特定の態様において、キメラタンパク質は、配列番号140、142、144、146、148、150、152、154、156、158および160からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる。
上記のキメラタンパク質の機能的変異体には、(i)本発明のキメラタンパク質のアミノ酸配列に対し1個または2個以上、例えば、1個または数個(例えば、2、3、4または5個)のアミノ酸の変異を有し、前記キメラタンパク質の機能を有する変異体、(ii)本発明のキメラタンパク質の全長アミノ酸配列と50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上、または99%以上の配列相同性を有し、前記キメラタンパク質の機能を有する変異体、(iii)本発明のキメラタンパク質の全長をコードする核酸分子にストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸分子によってコードされ、前記キメラタンパク質の機能を有する変異体などが含まれる。
本明細書で用いる用語「ストリンジェントな条件」は、当該技術分野で周知のパラメータを指す。核酸のハイブリダイゼーションのためのパラメータは、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Press (2001)やAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates (1992)などの標準的なプロトコルに記載されている。
具体的には、本明細書で用いるストリンジェントな条件は、3.5×SSC、フィコール0.02%、ポリビニルピロリドン0.02%、ウシ血清アルブミン0.02%、NaHPO 25mM(pH7)、SDS0.05%およびEDTA2mMを含むハイブリダイゼーションバッファによる、65℃でのハイブリダイゼーションを意味する。上記成分のうち、SSCはpH7の0.15M塩化ナトリウム/0.15Mクエン酸ナトリウムであり、SDSはドデシル硫酸ナトリウムであり、EDTAはエチレンジアミン四酢酸である。ハイブリダイゼーション後、DNAをトランスファーしたメンブレンを、室温にて2×SSCで、次いで68℃までの温度にて0.1〜0.5×SSC/0.1×SDSで洗浄する。あるいは、ストリンジェントなハイブリダイゼーションは、市販のハイブリダイゼーションバッファ、例えば、ExpressHyb(R)緩衝溶液(Clontech Corp.製)等を用いて、メーカーによって記載されたハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を利用してもよい。
同程度のストリンジェンシーをもたらす、利用可能な他の条件、試薬等があるが、当業者はかかる条件を熟知していると考えられるため、本明細書にはこれらに関する具体的な記載はない。しかしながら、対象となる核酸分子もしくはタンパク質の変異体をコードする核酸が明確に同定されるよう、条件を操作することは可能である。
前記キメラタンパク質の機能としては、例えば、p53AIP1、CASP10、KCNK3およびPYCARDからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現誘導、アポトーシスの誘導、細胞の増殖抑制などが挙げられる。キメラタンパク質がこれらの機能を有するか否かは、任意の既知の技法、例えば、下記の実施例に記載された技法などによって確認することができる。
本発明の一態様において、キメラタンパク質の機能的変異体は、1個または2個以上、例えば1個または数個の保存的なアミノ酸置換を有してもよい。保存的なアミノ酸置換は、類似する側鎖を有するアミノ酸残基の互換性に依拠して決定することができる。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループはグリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり、水酸基含有側鎖を有する中性アミノ酸のグループはセリンおよびスレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループはアスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループはフェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループはリジン、アルギニンおよびヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸のグループはシステインおよびメチオニンである。好適な保存的アミノ酸置換グループは、限定されずに、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、およびアスパラギン−グルタミンなどである。
保存的なアミノ酸置換は、キメラタンパク質の転写活性化ドメイン、DNA結合ドメインおよびオリゴマー化ドメインの3つの機能的ドメインの少なくとも1つに存在しても、上記の機能的ドメイン以外の部分、例えば、転写活性化ドメインとDNA結合ドメインとの間、DNA結合ドメインとオリゴマー化ドメインとの間、オリゴマー化ドメインのC末端側に存在してもよい。本発明の一態様において、1個または2個以上の変異、例えば、アミノ酸の欠失、置換、付加は、転写活性化ドメインとDNA結合ドメインとの間、DNA結合ドメインとオリゴマー化ドメインとの間、オリゴマー化ドメインのC末端側から選択される個所に存在する。
上記のキメラタンパク質またはその機能的変異体をコードする核酸分子は、上述のキメラタンパク質またはその機能的変異体のアミノ酸配列に依拠して決定することができる。例えばヒトのp53およびp63のキメラタンパク質をコードする核酸分子については、ヒトのp53およびp63の核酸配列(配列番号193および195)に依拠して、キメラタンパク質に含まれるp53およびp63タンパク質の各部分に対応する核酸配列を決定することができる。上記核酸分子の具体的配列としては、例えば、配列番号139、141、143、145、147、149、151、153、155、157および159からなる群から選択される核酸配列を含むか、これからなるものが挙げられる。本発明の遺伝子発現誘導剤に用いることのできる核酸分子は、上記核酸分子の縮重物、すなわち、遺伝子コドンの縮重により上記核酸分子と核酸配列は異なるが、それと同じアミノ酸配列のタンパク質をコードするものを含む。
上記のキメラ分子は、p53AIP1、CASP10、KCNK3およびPYCARDからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を誘導する。本発明における遺伝子発現の誘導とは、典型的には、野生型p53またはp63を導入した場合と比較して、当該遺伝子の転写産物またはタンパク質の発現上昇をもたらすことをいう。本発明における発現上昇は、1.5倍以上、2倍以上、2.5倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4.5倍以上、5倍以上、5.5倍以上、6倍以上、6.5倍以上、7倍以上、7.5倍以上、8倍以上、8.5倍以上、9倍以上、9.5倍以上、または10倍以上であってもよい。
上記のキメラ分子は、p53AIP1、CASP10、KCNK3およびPYCARDのほか、例えば、表7〜8に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現をさらに誘導してもよい。本発明の一態様において、誘導される遺伝子は、AGRN、APOBEC2、AQP3、ARHGAP23、ASB17、BAI1、C15orf52、C3orf45、CACNA1A、CASP10、CDH3、CITED1、CLDN19、COL16A1、DDR1、DLGAP1、DLX3、DMBX1、DYSFIP1、EGR2、FBP2、FGF1、GAST、GPR89A、GRHL3、GRRP1、HVCN1、IL2RB、IL8RB、ITGA3、KATNAL2、KCNA2、KCNK3、KRT17、KRT34、LHX1、MALL、MYH3、MYH7、MYH7B、MYL7、NCRNA00173、NEFH、NEFL、NPPC、NTF4、p53AIP1、PLCD4、PYCARD、SEC14L5、SEZ6、SLC47A2、SLCO2B1、SLCO2B1、SRL、STAR、SYTL3、TLX1、TMEM121、TP73、TP73、TTYH2、WNT7BおよびZNF365からなる群から選択される。
本発明のキメラ分子は、当該技術分野において既知の任意の手法により製造することができる。本発明のキメラタンパク質をコードする核酸分子(キメラ遺伝子)は、限定されずに、例えば、オーバーラップ伸長法(例えば、Heckman KL & Pease LR., Nat Protoc 2007; 2: 924-932、Ogasawara Y et al., J Biol Chem 1994; 269: 29785-29792など参照)などのPCRを用いた手法で製造することができる。この手法においては、第1の遺伝子の配列に相補的な部分と、第2の遺伝子の配列に相補的な部分とを含むハイブリッドプライマー、例えば、限定されずに、p63のDNA結合ドメインとそのC末端側に続く部分とを含む部分の配列またはそのC末端部分の配列に相補的な部分と、p53のオリゴマー化ドメインとそのN末端側に続く部分とを含む部分の配列またはそのN末端部分の配列に相補的な部分とを含むハイブリッドプライマーなどを利用することができる。本発明のキメラタンパク質は、限定されずに、例えば、既知の手法で得たキメラ遺伝子を、適切な宿主細胞に導入して発現させ、得られたタンパク質を既知の手法、例えば、1次元または2次元ゲル電気泳動法や、液体クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー法、アフィニティカラム法などで精製することなどにより得ることができる。
本発明のキメラ分子の細胞への導入は、任意の既知の導入手法、例えば、限定されずに、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、超音波導入法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターなど)を利用する方法、またはマイクロインジェクション法などを用いることができる。
ウイルスベクターを使用する場合、ウイルスの力価としては1×10〜1×1015p.f.u.(プラーク形成単位)であってもよく、好ましくは1×10〜1×1013、より好ましくは1×10〜1×1011、さらに好ましくは1×10〜1×1010で用いることができる。
上記核酸分子は、裸の核酸として使用しても、種々の核酸構築物またはベクターに組み込んで使用してもよい。ベクターとしては、プラスミドベクター、ファージベクター、ファージミドベクター、コスミドベクター、ウイルスベクター等の公知の任意のものを利用することができる。核酸構築物またはベクターは、例えば哺乳動物、微生物、ウイルス、または昆虫遺伝子から誘導される適当な転写または翻訳制御配列を少なくとも含んでいることが好ましい。かかる制御配列は、遺伝子発現において調節的役割を有する配列、例えば転写プロモーターまたはエンハンサー、転写を調節するためのオペレーター配列、メッセンジャーRNA内部のリボゾーム結合部位をコードしている配列、ならびに、転写、翻訳開始または転写終了を調節する適切な配列を包含する。
遺伝子発現に必要な制御配列の詳細な性質は、生物種または細胞種によって異なってもよいが、一般的には、少なくとも、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などの、各々転写および翻訳の開始に関与する5’非転写、および5’非翻訳配列を含み得る。特に、かかる5’非転写制御配列は、作動可能に連結された遺伝子の転写調節のためのプロモーター配列を含む、プロモーター領域を含み得る。制御配列はまた、エンハンサー配列か、または所望の上流のアクチベーター配列を含んでもよい。上記核酸構築物およびベクターは、任意に5’リーダーまたはシグナル配列を含んでもよい。適切な核酸構築物およびベクターの選択および設計は、当業者の能力および自由裁量の範囲内にある。
特に有用な制御配列は、種々の哺乳動物、ウイルス、微生物、および昆虫遺伝子由来のプロモーター領域を包含する。このプロモーター領域は、対象となる遺伝子の転写の開始を指令し、そして対象となる遺伝子を含むDNAの全ての転写をもたらす。有用なプロモーター領域は、CAGプロモーター、レトロウイルスのdLTRプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー/プロモーター領域、RSVのLTRプロモーター、lacプロモーター、およびアデノウイルスから単離されたプロモーターを包含するが、真核生物、原核生物、ウイルス、または微生物細胞での遺伝子発現に有用な、当業者に公知の他の任意のプロモーターを用いることもできる。
真核生物細胞内で、遺伝子およびタンパク質を発現するのにとりわけ有用なその他のプロモーターは、哺乳動物細胞プロモーター配列およびエンハンサー配列、例えばポリオーマウイルス、アデノウイルス、SV40ウイルス、およびヒトサイトメガロウイルスから誘導されるものを包含する。典型的にはSV40などのウイルスのウイルス複製起点に隣接して見出される、ウイルスの初期および後期プロモーターが、特に有用である。特定の有用なプロモーターの選択は、その細胞系、および、特定の細胞系内部で対象となるタンパク質または核酸を発現させるために使用する核酸構築物についての、他の様々なパラメータに依存する。さらに、本発明において有用な充分高いレベルで、標的細胞に遺伝子を発現させることが知られている任意のプロモーターを選択することができる。例えば、標的細胞(がん細胞など)に特異的なプロモーターを採用することにより、遺伝子を特定の標的細胞で効率的に発現させることができる。組織特異的プロモーターとしては、限定されずに、例えば、GFAPプロモーター(脊髄、海馬、線状体のニューロン)、MCKプロモーター(筋肉など)、NSEプロモーター(CNSなど)、デスミンプロモーター(心筋、骨格筋など)、RhMLVプロモーター(骨)、オステオカルシンプロモーター(骨)等が挙げられる(Howarth JL et al., Cell Biol Toxicol. 2010 Feb;26(1):1-20等参照)。
本発明の核酸分子は、かかる制御配列と作動可能に連結されていることが好ましい。核酸が制御配列に作動可能に連結されているとは、制御配列の作用により、該核酸のコードするタンパク質が適切に産生等されるように、該核酸と制御配列とが配置されていることを意味する。より具体的には、核酸分子のコード配列と、核酸構築物やベクターの制御配列とが、当該コード配列の発現または転写が、当該制御配列の影響または支配下にあるように位置される様式で連結されている場合、「作動可能に」連結されている。当該コード配列を機能的なタンパク質に翻訳することが望まれる場合には、2つのDNA配列は、5’制御配列におけるプロモーターによる誘導の結果、当該コード配列の転写が生じ、また当該2つのDNA配列の間の連結の性質が、(1)フレームシフト突然変異を誘導する結果とならず、(2)当該コード配列の転写を指示するための当該プロモーターの能力を妨害せず、あるいは(3)タンパク質に翻訳されるべき対応するRNA転写物の能力を妨害しない場合には、「作動可能に」連結されている。したがってプロモーター領域は、当該プロモーター領域が、結果として得られる転写物が所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳されるように、そのDNA配列を転写できれば、作動可能にコード配列に連結されていることになる。
本発明における「p53AIP1、CASP10、KCNK3およびPYCARDからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を誘導するための有効量」は、上記遺伝子の発現を、例えば、野生型p53またはp63を導入した場合と比較して、1.5倍以上、2倍以上、2.5倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4.5倍以上、5倍以上、5.5倍以上、6倍以上、6.5倍以上、7倍以上、7.5倍以上、8倍以上、8.5倍以上、9倍以上、9.5倍以上、または10倍以上増大させる量であり、野生型p53またはp63との比較実験などにより容易に決定することができる。
上記のキメラ分子は、単一の種類を用いても、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。異なる種類の遺伝子の発現を誘導することができるキメラ分子を組み合わせることで、より多くの遺伝子を誘導することが可能となる。また、実施例に示すとおり、本発明のキメラ分子が誘導する遺伝子群は、野生型p53およびp63が誘導するものと一部重複するものの、大部分異なっているため、野生型のp53、p63、さらにはp73(以下、野生型p53ファミリー分子と総称することもある)などと組み合わせて用いることもできる。
本発明はまた、(i)上記のキメラ分子、または上記遺伝子発現誘導剤を含む、アポトーシス誘導剤もしくはアポトーシス誘導用組成物、(ii)上記キメラ分子の、前記アポトーシス誘導剤もしくはアポトーシス誘導用組成物の製造のための使用、(iii)アポトーシスを誘導するための上記キメラ分子、および(iv)アポトーシスを誘導するための有効量の上記キメラ分子を含む組成物に関する。本発明のこの側面におけるキメラ分子の存在態様などは、特に別記しない限り、遺伝子発現誘導剤に関して上記したとおりである。
上記のキメラタンパク質および/またはその機能的変異体によって発現誘導される遺伝子には、アポトーシス関連遺伝子が含まれる。かかる遺伝子としては、限定されずに、例えば、p53AIP1、CASP10、KCNK3およびPYCARD遺伝子等が挙げられる。p53AIP1は、p53が誘導するアポトーシスにおける重要な因子であることが知られており(例えば、Oda K et a., Cell. 2000 Sep 15;102(6):849-62)、CASP10は、細胞死誘導シグナル複合体(DISC)によるアポトーシスを開始するカスパーゼ−10をコードする(Tibbetts MD et al., Nat Immunol 2003; 4: 404-409)。PYCARDは、CARD含有アポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC)をコードし、アポトーシス、免疫応答およびがん発生に重要な役割を担う(Masumoto J et al., J Biol Chem 1999; 274: 33835-33838)。KCNK3はこれまでアポトーシスとの関連性は知られていなかったが、今回本発明者によってアポトーシスの誘導に関与することが初めて明らかとなった。また、上記の核酸分子を細胞に導入することにより種々の細胞においてアポトーシスが誘導されることもこれまで知られていなかったが、本発明者の実験により今回初めて明らかとなった。
本発明におけるアポトーシスの誘導は、細胞に上記キメラ分子を導入した後、種々の既知の手法、例えば、DNA断片化、アネキシンVの細胞膜への結合、ミトコンドリア膜電位の変化、カスパーゼの活性化、PARPタンパク質の切断などのアポトーシス特有の現象の検出、sub−G1にある細胞の割合の測定、TUNEL染色などにより評価することができる。本発明におけるアポトーシスの誘導は、典型的には、上記キメラ分子を導入していない状態よりも高く、好ましくは、野生型p53またはp63を導入した状態よりも高い。アポトーシス誘導の増大の程度は、例えば、キメラ分子を導入していない状態、あるいは、野生型p53またはp63を導入した状態と比べ、1.5倍以上、2倍以上、2.5倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4.5倍以上、5倍以上、5.5倍以上、6倍以上、6.5倍以上、7倍以上、7.5倍以上、8倍以上、8.5倍以上、9倍以上、9.5倍以上、または10倍以上であってもよい。
本発明における「アポトーシスを誘導するための有効量」は、例えば、アポトーシスを、キメラ分子を導入していない状態、あるいは、野生型p53またはp63を導入した状態と比べて、1.5倍以上、2倍以上、2.5倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4.5倍以上、5倍以上、5.5倍以上、6倍以上、6.5倍以上、7倍以上、7.5倍以上、8倍以上、8.5倍以上、9倍以上、9.5倍以上、または10倍以上増大させる量であり、上記状態との比較実験などにより容易に決定することができる。
本発明のキメラ分子は、単一の種類を用いても、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。異なる種類の遺伝子の発現を誘導することができるキメラ分子を組み合わせることで、より多くの遺伝子が誘導され、アポトーシスをより強く誘導することが期待される。また、実施例に示すとおり、本発明のキメラ分子が誘導する遺伝子群は、野生型p53およびp63が誘導するものと一部重複するものの、大部分異なっており、野生型p53およびp63ではほとんど誘導されないアポトーシス促進性遺伝子(CASP10、KCNK3、PYCARDなど)を誘導することができるため、野生型p53ファミリー分子などと組み合わせて用いることで、アポトーシスをより強く誘導することが期待される。
本発明はまた、上記のキメラ分子、または上記遺伝子発現誘導剤を含む医薬組成物に関する。上記のキメラ分子、または上記遺伝子発現誘導剤は、特定の遺伝子の発現や、アポトーシスを誘導することができるため、医薬組成物の有効成分として有用である。本発明の医薬組成物は、上記のキメラ分子、または上記遺伝子発現誘導剤と、1または2以上の薬学的に許容し得る界面活性剤、担体、希釈剤および/または賦形剤を含んでもよい。薬学的に許容し得る担体、希釈剤等は医薬分野でよく知られており、例えば、その全体を本明細書に援用するRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)などに記載されている。
上記医薬組成物は、限定されずに、上記のキメラ分子によって発現が誘導される遺伝子や、アポトーシスの誘導がその処置に有用な疾患、例えば、前記遺伝子の発現異常に関連する疾患や、細胞増殖性疾患などの処置に用いることができる。したがって、本発明はまた、(i)上記のキメラ分子、または上記遺伝子発現誘導剤を含むアポトーシスの誘導が有用な疾患の処置のための医薬組成物、(ii)上記キメラ分子の、アポトーシスの誘導が有用な疾患の処置のための医薬組成物の製造のための使用、(iii)アポトーシスの誘導が有用な疾患の処置のための上記キメラ分子、および(iv)アポトーシスの誘導が有用な疾患の処置のための有効量の上記キメラ分子を含む医薬組成物に関する。本発明のこの側面におけるキメラ分子の存在態様などは、特に別記しない限り、遺伝子発現誘導剤に関して上記したとおりである。
細胞増殖性疾患としては、限定されずに、例えば、良性腫瘍または悪性腫瘍、過形成症、ケロイド、クッシング症候群、原発性アルドステロン症、紅板症、真性多血症、白板症、過形成瘢痕、扁平苔癬および黒子症などを含む。本発明の一態様において、細胞増殖性疾患はがんである。
本発明が対象とするがんとしては、限定されずに、例えば、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、リンパ管肉腫、滑膜肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫などの肉腫、脳腫瘍、頭頚部癌、乳癌、肺癌、食道癌、胃癌、十二指腸癌、虫垂癌、大腸癌、直腸癌、肝癌、膵癌、胆嚢癌、胆管癌、肛門癌、腎癌、尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、精巣癌、子宮癌、卵巣癌、外陰癌、膣癌、皮膚癌などの癌腫、さらには白血病や悪性リンパ腫などが挙げられる。なお、本発明では、「がん」は、上皮性悪性腫瘍および非上皮性悪性腫瘍を含む。本発明におけるがんは、身体の任意の部位、例えば、脳、頭頚部、胸部、四肢、肺、心臓、胸腺、食道、胃、小腸(十二指腸、空腸、回腸)、大腸(結腸、盲腸、虫垂、直腸)、肝臓、膵臓、胆嚢、肛門、腎、尿管、膀胱、前立腺、陰茎、精巣、子宮、卵巣、外陰、膣、皮膚、横紋筋、平滑筋、滑膜、軟骨、骨、甲状腺、副腎、腹膜、腸間膜、骨髄、血液、血管系、リンパ節等のリンパ系、リンパ液などに存在し得る。
本発明が対象とするがんの一態様は、p53に変異を有するがん細胞から構成されるがんである。p53の変異としては、例えば、p53の欠失や、p53におけるアミノ酸置換が挙げられる。p53におけるアミノ酸置換としては、限定されずに、例えば、ヒトp53における、G117E、P152T、T155I、R156P、R175H、P177S、P177F、P177H、H179Y、E180K、R181G、R181H、N239S、S241T、S241F、C242Y、G244S、G245S、G245D、M246L、P250L、L257P、D259V、R273C、R273H、V274F、G279E、G279V、G279R、D281N、D281E、R282Q、E286Kなどのアミノ酸置換が挙げられる(Willis et al., Oncogene 2004; 23:2330-8、Blagosklonny et al., Faseb J 2000; 14:1901-7、Monti et al., Oncogene 2002; 21:1641-8参照)。がん細胞が上記変異を有するか否かは、がん細胞のp53遺伝子を解析することで決定することができる。
本発明の医薬組成物は、対象とする疾患を処置するのに有用な他の作用物質、例えば抗腫瘍剤、抗炎症剤、ビタミンなどをさらに含んでもよい。
抗腫瘍剤としては、限定されずに、例えば、イホスファミド、ニムスチン(例えば、塩酸ニムスチン)、シクロホスファミド、ダカルバジン、メルファラン、ラニムスチン等のアルキル化剤、ゲムシタビン(例えば、塩酸ゲムシタビン)、エノシタビン、シタラビン・オクホスファート、シタラビン製剤、テガフール・ウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(例えば、TS−1)、ドキシフルリジン、ヒドロキシカルバミド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン等の代謝拮抗剤、イダルビシン(例えば、塩酸イダルビシン)、エピルビシン(例えば、塩酸エピルビシン)、ダウノルビシン(例えば、塩酸ダウノルビシン、クエン酸ダウノルビシン)、ドキソルビシン(例えば、塩酸ドキソルビシン)、ピラルビシン(例えば、塩酸ピラルビシン)、ブレオマイシン(例えば、塩酸ブレオマイシン)、ペプロマイシン(例えば、硫酸ペプロマイシン)、ミトキサントロン(例えば、塩酸ミトキサントロン)、マイトマイシンC等の抗腫瘍性抗生物質、エトポシド、イリノテカン(例えば、塩酸イリノテカン)、ビノレルビン(例えば、酒石酸ビノレルビン)、ドセタキセル(例えば、ドセタキセル水和物)、パクリタキセル、ビンクリスチン(例えば、硫酸ビンクリスチン)、ビンデシン(例えば、硫酸ビンデシン)、ビンブラスチン(例えば、硫酸ビンブラスチン)等のアルカロイド、アナストロゾール、タモキシフェン(例えば、クエン酸タモキシフェン)、トレミフェン(例えば、クエン酸トレミフェン)、ビカルタミド、フルタミド、エストラムスチン(例えば、リン酸エストラムスチン)等のホルモン療法剤、カルボプラチン、シスプラチン(CDDP)、ネダプラチン等の白金錯体、サリドマイド、ネオバスタット、ベバシズマブ等の血管新生阻害剤、L−アスパラギナーゼなどが挙げられる。
抗炎症剤としては、限定されずに、ステロイド系抗炎症剤(プレドニゾロン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、フルチカゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン等)や非ステロイド系抗炎症剤(アセチルサリチル酸、ロキソプロフェン、アセトアミノフェン、ケトプロフェン、チアプロフェン酸、スプロフェン、トルメチン、カルプロフェン、ベノキサプロフェン、ピロキシカム、ベンジダミン、ナプロキセン、ジクロフェナク、イブプロフェン、ジフルニサール、アザプロパゾン等)、炎症性サイトカインの発現を抑制するRNAi分子(例えば、siRNA、shRNA、ddRNA、miRNA、piRNA、rasiRNAなど)、アンチセンス核酸などの物質、および/または炎症性サイトカインの作用を抑制する薬物、例えば、炎症性サイトカインに対する抗体や、炎症性サイトカインの受容体拮抗剤などが挙げられる。
ビタミンとしては、限定されずに、VA(レチノール)、VB1(チアミン)、VB2(リボフラビン)、VB3(ナイアシン)、VB5(パントテン酸)、VB6(ピリドキシン)、VB7(ビオチン)、VB9(葉酸)、VB12(シアノコバラミン)、VC(アスコルビン酸)、VD(カルシフェロール)、VE(トコフェロール)およびVK(フィロキノン)、ならびにこれらの誘導体およびアナログなどが挙げられる。
本発明の遺伝子発現誘導剤、アポトーシス誘導剤、医薬組成物などに関し、p53は、アポトーシス促進性遺伝子の発現を誘導するが、同時にアポトーシス抑制遺伝子の発現も誘導する。アポトーシス抑制遺伝子としては、例えば、限定されずに、p21(NM_000389)、SFN(ストラチフィン、14−3−3シグマ、NM_006142)、Gadd45(NM_001924)、p300(EP300、NM_001429)、BTG2(TIS21、NM_006763)、CAV1(NM_001753)、DUSP5(NM_004419)、EGFR(NM_005228)、HGF(SF、NM_000601)、MET(NM_000245)、PCNA(NM_002592)、PLAGL1(ZAC、BC074814)、SESN1(PA26、AF033120)、SH2D1A(SAP、NM_002351)、TGFA(NM_003236)、PCBP4(NM_020418)、RRM2B(NM_015713)、STEAP3(NM_001008410)、ARID3A(E2FBP1、NM_005224)、C13orf15(RGC32、NM_014059)、CCNG1(NM_004060)、CCNK(NM_003858)、DDB2(NM_000107)、DDIT4(REDD1、NM_019058)、GML(NM_002066)、GPX1(NM_000581)、HRAS(c−Ha−Ras、NM_176795)、IBRDC2(NM_182757)、MET(NM_000245)、MSH2(NM_000251)、PLK2(SNK、NM_006622)、RB1(NM_000321)、S100A2(NM_005978)、TP53i3(Pig3、NM_004881)、TRIM22(Staf50、NM_006074)、VCAN(CSPG2、NM_004385)などの細胞周期停止に関与する遺伝子(Riley et al., Nat Rev Mol Cell Biol. 2008;9(5):402-12、特にその補足情報を参照。括弧内の番号は、GenBankアクセッション番号を示す)、MDM2(GenBankアクセッション番号:NM_002392、NM_006878、NM_006879、NM_006881、NM_006882)などのユビキチンリガーゼ等が挙げられる。
また、変異型p53ファミリータンパク質を有する細胞においては、これがドミナントネガティブ変異体として作用し、上記キメラタンパク質やその機能的変異体の効果を妨げることがある。p53ファミリータンパク質のドミナントネガティブ変異体としては、限定されずに、例えば以下の変異を有するヒトp53が挙げられる:G117E、P152T、T155I、R156P、R175H、P177S、P177F、P177H、H179Y、E180K、R181G、R181H、N239S、S241T、S241F、C242Y、G244S、G245S、G245D、M246L、P250L、L257P、D259V、R273C、R273H、V274F、G279E、G279V、G279R、D281N、D281E、R282Q、E286K(上記Willis et al., 2004、Blagosklonny et al., 2000、Monti et al., 2002参照)。
したがって、キメラ分子を、遺伝子発現の誘導、アポトーシスの誘導、細胞増殖性疾患の処置などに使用する際に、これらのアポトーシス抑制遺伝子やドミナントネガティブ変異体の発現を同時に抑制することで、キメラ分子の効果を高めることが可能となる。したがって、上記キメラ分子は、上記のアポトーシス抑制遺伝子やドミナントネガティブ変異体の発現を阻害する物質(例えば、アポトーシス抑制遺伝子やドミナントネガティブ変異体に対するRNAi分子(例えば、siRNA、shRNA、ddRNA、miRNA、piRNA、rasiRNAなど)、リボザイム、アンチセンス核酸(RNA、DNA、PNA、またはこれらの複合物を含む)などの物質、もしくはアポトーシス抑制タンパク質のドミナントネガティブ変異体等のドミナントネガティブ効果を有する物質、またはこれらを発現するベクター)と併用することが可能である。
p53ファミリータンパク質のドミナントネガティブ変異体の発現を阻害する核酸分子に関し、核酸分子は変異体遺伝子のコード領域を標的としてもよいが、その非翻訳領域、特にp53ファミリーmRNAの3’UTRを標的とし、全ての内因性ドミナントネガティブタンパク質を特異的にノックダウンする一方、本発明の剤または組成物から発現される、コード領域だけを含むであろうキメラ分子や、外因性の野生型p53ファミリータンパク質を無傷のままとすることができる。
本発明の遺伝子発現誘導剤、アポトーシス誘導剤、医薬組成物などにおいて、2種以上のキメラ分子および/または野生型p53ファミリー分子を組み合わせて用いる場合、2種以上の分子を単一の組成物に含めても、複数の組成物に別々に含ませ、それらを組み合わせて用いてもよい。例えば、核酸分子であれば、2種以上の核酸分子を単一の核酸構築物またはベクターに組み込んでも、それぞれ1種類ずつの核酸分子を含む複数種の核酸構築物またはベクターの組合わせとして調製してもよい。2種以上の核酸分子を単一の核酸構築物またはベクターに組み込む場合、各核酸分子は共通の制御配列の制御下にあっても、同一種の複数の制御配列の制御下にあっても、複数種の異なる制御配列の制御下にあってもよい。共通の制御配列の制御下にある場合、ある核酸分子は発現するが、別の核酸分子は発現しないといった状況が生じる可能性が少なくなる。したがって、この態様は、同時に発現しないと効果が得られないか、悪影響が生じるような核酸分子を組み合わせて用いる場合に有用である。一態様において、本発明の核酸分子はWO 2009/125607に記載の核酸構築物またはベクターに担持させることができる。この核酸構築物およびベクターは、所望の遺伝子と、望まない遺伝子の発現を阻害する核酸分子をコシストロニックに発現することができる。
本発明の種々の態様において、上記のキメラ分子は、種々の薬物送達担体に担持させて使用することもできる。かかる担体としては、限定されずに、例えば、ポリマーナノ粒子、ポリマーミセル、デンドリマー、リポソーム、ウイルスナノ粒子、カーボンナノチューブ等が挙げられる(Cho K. et al., Clin Cancer Res. 2008 Mar 1;14(5):1310-6など参照)。これらの担体は、所望の標的細胞または標的組織に標的化されていてもよい。標的化は、既知の任意の手法により達成することができる。がんへの送達を企図する場合は、限定されずに、例えば、製剤をEPR(enhanced permeability and retention)効果の発現に好適な直径50〜200μm、特に75〜150μmなどのサイズにすることによるパッシブターゲティングや、CD19、HER2、トランスフェリン受容体、葉酸受容体、VIP受容体、VEGFR、αvβ3、VCAM−1、EGFR(Torchilin, AAPS J. 2007;9(2):E128-47、Ranganathan R et al., Int J Nanomedicine. 2012;7:1043-60)、RAAG10(特表2005−532050)、PIPA(特表2006−506071)、KID3(特表2007−529197)などのリガンドや、RGDモチーフやNGRモチーフを有するペプチド、F3、LyP−1(Ruoslahti et al., J Cell Biol. 2010;188(6):759-68)、レチノール、レチノイン酸などのレチノイド(WO 2008/120815)などを標的化剤として利用するアクティブターゲティングなどの手法を用いることができる。
他の標的化方法としては、例えば、磁性ナノ粒子などの磁性担体を用いる方法(例えば、Charles L., Oncotarget. 2012 April; 3(4): 365-370など参照)、pH応答性ナノ粒子などのpH応答性担体を用いる方法(例えば、Gao W., Mol Pharm. 2010 December 6; 7(6): 1913-1920など参照)、蛍光担体を用いる方法(例えば、Jiang S. et al., J R Soc Interface. 2010 Jan 6;7(42):3-18など参照)、細胞外活性化ナノ粒子などの細胞外活性化担体を用いる方法(例えば、Gullotti E. et al., Mol Pharm. 2009 Jul-Aug; 6(4): 1041-1051など参照)などが挙げられる。
本発明の剤や組成物は、経口および非経口の両方を包含する種々の経路、たとえば、限定することなく、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所、直腸、腫瘍内、動脈内、門脈内、骨髄内、歯髄内、舌下、口腔内、心室内、経粘膜、経皮、鼻内、腹腔内、肺内および子宮内等の経路で投与してもよく、各投与経路に適した剤形に製剤してもよい。かかる剤形および製剤方法は任意の公知のものを適宜採用することができる(たとえば、標準薬剤学、渡辺喜照ら編、南江堂、2003年、上記Remington's Pharmaceutical Sciencesなどを参照)。
例えば、経口投与に適した剤形としては、限定することなく、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゲル剤、シロップ剤などが挙げられ、また非経口投与に適した剤形としては、溶液性注射剤、懸濁性注射剤、乳濁性注射剤、用時調製型注射剤などの注射剤が挙げられる。非経口投与用製剤は、水性または非水性の等張性無菌溶液または懸濁液の形態であることができる。
本明細書に記載される本発明の各種剤または組成物(各種医薬組成物を含む)はいずれの形態で供給されてもよいが、保存安定性の観点から、用時調製可能な形態、例えば、医療の現場あるいはその近傍において、医師および/または薬剤師、看護士、もしくはその他のパラメディカルなどによって調製され得る形態で提供してもよい。かかる形態は、本発明の剤または組成物が、脂質やタンパク質、核酸などの安定した保存が難しい成分を含むときに特に有用である。この場合、本発明の剤または組成物は、これらに必須の構成要素の少なくとも1つを含む1個または2個以上の容器として提供され、使用の前、例えば、24時間前以内、好ましくは3時間前以内、そしてより好ましくは使用の直前に調製される。調製に際しては、調製する場所において通常入手可能な試薬、溶媒、調剤器具などを適宜使用することができる。
したがって、本発明は、本発明の各種剤または組成物に含まれ得る活性成分を、単独でもしくは組み合わせて含む1個または2個以上の容器を含む組成物の調製キット、ならびに、そのようなキットの形で提供される各種剤または組成物の必要構成要素にも関する。本発明のキットは、上記のほか、本発明の各種剤または組成物の調製方法や投与方法などが記載された指示、例えば説明書や、CD、DVD等の電子記録媒体等を含んでいてもよい。また、本発明のキットは、本発明の各種剤または組成物を完成するための構成要素の全てを含んでいてもよいが、必ずしも全ての構成要素を含んでいなくてもよい。したがって、本発明のキットは、医療現場や、実験施設などで通常入手可能な試薬や溶媒、例えば、無菌水や、生理食塩水、ブドウ糖溶液などを含んでいなくてもよい。
本発明の一側面は、本発明のキメラ分子を用いる方法に関する。
本発明のこの一側面における一態様は、本発明のキメラ分子または遺伝子発現誘導剤を用いる遺伝子発現誘導方法に関する。本発明の遺伝子発現誘導方法は、本発明のキメラ分子または遺伝子発現誘導剤を、細胞内に導入する工程を含んでもよい。具体的な導入方法については、遺伝子発現誘導剤に関して上記したとおりである。本方法で誘導することができる遺伝子としては、例えば、表7〜8に記載のものが挙げられる。本発明の一態様において、誘導される遺伝子は、AGRN、APOBEC2、AQP3、ARHGAP23、ASB17、BAI1、C15orf52、C3orf45、CACNA1A、CASP10、CDH3、CITED1、CLDN19、COL16A1、DDR1、DLGAP1、DLX3、DMBX1、DYSFIP1、EGR2、FBP2、FGF1、GAST、GPR89A、GRHL3、GRRP1、HVCN1、IL2RB、IL8RB、ITGA3、KATNAL2、KCNA2、KCNK3、KRT17、KRT34、LHX1、MALL、MYH3、MYH7、MYH7B、MYL7、NCRNA00173、NEFH、NEFL、NPPC、NTF4、p53AIP1、PLCD4、PYCARD、SEC14L5、SEZ6、SLC47A2、SLCO2B1、SLCO2B1、SRL、STAR、SYTL3、TLX1、TMEM121、TP73、TP73、TTYH2、WNT7BおよびZNF365からなる群から選択される。
本方法の一態様において、キメラ分子または遺伝子発現誘導剤は、遺伝子発現誘導に有効な量で細胞に投与される。遺伝子発現誘導に有効な量については、遺伝子発現誘導剤について上記したとおりである。本方法は、in vivo、in vitroまたはex vivoで行うことができる。本方法は、標的細胞において特定の遺伝子の発現を調節することなどに用いることができる。
本発明の別の態様は、本発明のキメラ分子またはアポトーシス誘導剤を用いるアポトーシス誘導方法に関する。本発明のアポトーシス誘導方法は、本発明のキメラ分子、遺伝子発現誘導剤またはアポトーシス誘導剤を、細胞内に導入する工程を含んでもよい。具体的な導入方法については、遺伝子発現誘導剤に関して上記したとおりである。本方法の一態様において、キメラ分子または各種剤は、アポトーシス誘導に有効な量で細胞に投与される。アポトーシス誘導に有効な量については、アポトーシス誘導剤について上記したとおりである。本方法は、in vivo、in vitroまたはex vivoで行うことができる。本方法は、異常に増殖している細胞、例えばがん細胞などでアポトーシスを誘導することなどに用いることができる。
本発明のさらなる態様は、本発明のキメラ分子または医薬組成物を用いる疾患の処置方法に関する。本発明の処置方法は、本発明のキメラ分子、各種剤または医薬組成物を対象に投与する工程を含む。投与される対象は、典型的には本発明のキメラ分子等による処置を必要としている。かかる対象としては、限定されずに、例えば、上記のキメラ分子によって発現が誘導される遺伝子や、アポトーシスの誘導がその処置に有用な疾患、例えば、前記遺伝子の発現異常に関連する疾患や、細胞増殖性疾患などを患っているか、これらの疾患を有すると診断されたか、これらの疾患を発症するリスクが高い対象である。したがって、本発明の処置方法は、本発明のキメラ分子、各種剤または医薬組成物による処置を必要としている対象を同定する工程をさらに含んでもよい。細胞増殖性疾患の具体例は、医薬組成物に関して上記したとおりである。
本発明の処置方法においては、本発明のキメラ分子または医薬組成物を、対象とする疾患を処置するのに有用な他の作用物質または処置方法と併用することができる。p53の変異または欠失が、がんの予後不良および化学療法や放射線に対する耐性に関連していることから(Clarke et al., Oncogene 1994; 9:1767-73、Merritt et al., Cancer Res 1994; 54:614-7、Poeta et al., N Engl J Med 2007; 357:2552-61、Patocs et al., N Engl J Med 2007; 357:2543-51)、本発明のキメラ分子により、化学療法や放射線治療に対するがんの感受性が改善することが期待される。疾患の処置において、本発明のキメラ分子または医薬組成物と併用し得る作用物質、例えば、例えば抗腫瘍剤、抗炎症剤、ビタミンなどは、医薬組成物に関して上記したとおりである。また、本発明の処置方法は、放射線治療などの物理療法や外科手術などの外科的治療などと併用することができる。
本発明の処置方法における有効量とは、例えば、疾患の症状を低減し、または疾患の進行を遅延もしくは停止する量であり、好ましくは、疾患を抑制し、または治癒する量である。また、投与による利益を超える悪影響が生じない量が好ましい。かかる量は、培養細胞などを用いたin vitro試験や、マウス、ラット、イヌまたはブタなどのモデル動物における試験により適宜決定することができ、このような試験法は当業者によく知られている。また、本発明の処置方法に用いる薬物の用量は当業者に公知であるか、または、上記の試験等により適宜決定することができる。
本明細書に記載される本発明の処置方法において投与する活性成分の具体的な用量は、処置を要する対象に関する種々の条件、例えば、症状の重篤度、対象の一般健康状態、年齢、体重、対象の性別、食事、投与の時期および頻度、併用している医薬、治療への反応性、剤形、および治療に対するコンプライアンスなどを考慮して決定され得る。
投与経路としては、経口および非経口の両方を包含する種々の経路、例えば、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所、腫瘍内、直腸、動脈内、門脈内、骨髄内、歯髄内、舌下、口腔内、心室内、経粘膜、経皮、鼻内、腹腔内、肺内および子宮内等の経路が含まれる。
投与頻度は、用いる剤や組成物の性状や、上記のものを含む対象の条件によって異なるが、例えば、1日多数回(すなわち1日2、3、4回または5回以上)、1日1回、数日毎(すなわち2、3、4、5、6、7日毎など)、1週間毎、数週間毎(すなわち2、3、4週間毎など)であってもよい。
本明細書で用いる場合、用語「対象」は、任意の生物個体を意味し、好ましくは動物、さらに好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトの個体である。本発明において、対象は健常であっても、何らかの疾患に罹患していてもよいものとするが、特定の疾患の処置が企図される場合には、典型的にはかかる疾患に罹患しているか、罹患するリスクを有する対象を意味する。
また、用語「処置」は、本明細書で用いる場合、疾患の治癒、一時的寛解または予防などを目的とする医学的に許容される全ての種類の予防的および/または治療的介入を包含するものとする。例えば、「処置」の用語は、疾患の進行の遅延または停止、病変の退縮または消失、発症の予防または再発の防止などを含む、種々の目的の医学的に許容される介入を包含する。
今回本発明者により、本発明のキメラタンパク質が、表7に記載の広範な種類の遺伝子を誘導することが明らかになった。したがって、本発明のキメラタンパク質は、これらの遺伝子またはその組合せが誘導する、アポトーシスや細胞増殖阻害以外の作用をもたらすことができる。したがって、本発明はまた、上記キメラ分子を含む、上記作用を提供するための組成物、上記キメラ分子の上記作用を提供するための組成物の製造における使用、上記作用を提供するための上記キメラ分子、上記作用を提供するための有効量の上記キメラ分子を含む組成物、ならびに、上記キメラ分子の上記作用を提供するための使用にも関する。
本発明の一側面は、KCNK3タンパク質および/またはその機能的変異体、および/または、前記タンパク質またはその機能的変異体をコードする核酸分子(以下、KCNK3関連分子と総称することがある)の新規な用途に関する。KCNK3は、TWIK関連酸感受性カリウムチャンネル(TASK−1)をコードし、細胞の膜電位の維持などに関与していることが知られており(Bayliss DA et al., Trends Pharmacol Sci 2008; 29: 566-575、Heitzmann D et al., EMBO J 2008; 27: 179-187、Bautista DM et al., Nat Neurosci 2008; 11: 772-779)、結腸直腸がん患者の手術後の生存期間の長さと関連していることが報告されているものの(Cavalieri D et al., Oncol Res. 2007;16(11):535-48)、アポトーシスとの関連性についてはこれまで知られていなかった。今回本発明者によってアポトーシスの誘導に関与することが初めて明らかとなった(実施例参照)。
したがって、本発明の一態様は、(i)KCNK3関連分子を含む、アポトーシス誘導剤もしくはアポトーシス誘導用組成物、(ii)KCNK3関連分子の、前記アポトーシス誘導剤もしくはアポトーシス誘導用組成物の製造のための使用、(iii)アポトーシスを誘導するためのKCNK3関連分子、および(iv)アポトーシスを誘導するための有効量のKCNK3関連分子を含む組成物に関する。
KCNK3の核酸配列およびアミノ酸配列は種々の生物種について知られており、例えば、ヒトKCNK3の核酸配列およびアミノ酸配列は、Genbankアクセッション番号NM_002246(配列番号201)およびNP_002237(配列番号202)などとして入手可能である。KCNK3タンパク質の機能的変異体は、(i)KCNK3タンパク質のアミノ酸配列に対し1個または2個以上、例えば、1個または数個(例えば、2、3、4または5個)のアミノ酸の変異(例えば、保存的なアミノ酸置換)を有し、アポトーシス誘導能を有する変異体、(ii)KCNK3タンパク質の全長アミノ酸配列と50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上、または99%以上の配列相同性を有し、アポトーシス誘導能を有する変異体、(iii)KCNK3タンパク質の全長をコードする核酸分子にストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸分子によってコードされ、アポトーシス誘導能を有する変異体などが含まれる。
アポトーシスの誘導は、細胞に上記変異体を導入した後、種々の既知の手法、例えば、DNA断片化、アネキシンVの細胞膜への結合、ミトコンドリア膜電位の変化、カスパーゼの活性化、PARPタンパク質の切断などのアポトーシス特有の現象の検出、sub−G1にある細胞の割合の測定、TUNEL染色などにより評価することができる。
KCNK3タンパク質またはその機能的変異体をコードする核酸分子は、既知のKCNK3遺伝子の核酸配列(例えば、ヒトKCNK3については配列番号201)に依拠して決定することができる。本発明のアポトーシス誘導剤に含まれる核酸分子は、既知の核酸配列に基づく核酸分子の縮重物、すなわち、遺伝子コドンの縮重により上記核酸分子と核酸配列は異なるが、それと同じアミノ酸配列のタンパク質をコードするものを含む。
KCNK3関連分子のアポトーシス誘導に関する種々の態様は、原則的に本発明のキメラ分子に関して上記したとおりである。
本発明の別の態様は、(i)KCNK3関連分子を含むアポトーシスの誘導が有用な疾患の処置のための医薬組成物、(ii)KCNK3関連分子の、アポトーシスの誘導が有用な疾患の処置のための医薬組成物の製造のための使用、(iii)アポトーシスの誘導が有用な疾患の処置のためのKCNK3関連分子、および(iv)アポトーシスの誘導が有用な疾患の処置のための有効量のKCNK3関連分子を含む医薬組成物に関する。KCNK3関連分子を含む、アポトーシス細胞増殖性疾患の処置のための医薬組成物。
KCNK3関連分子の、アポトーシスの誘導が有用な疾患の処置に関する種々の態様は、原則的に本発明のキメラ分子に関して上記したとおりである。
本発明の別の態様は、KCNK3関連分子またはこれを含むアポトーシス誘導剤を用いるアポトーシス誘導方法に関する。本発明のアポトーシス誘導方法は、本発明のKCNK3関連分子またはこれを含むアポトーシス誘導剤を、細胞内に導入する工程を含んでもよい。具体的な導入方法については、キメラ分子を含む遺伝子発現誘導剤に関して上記したとおりである。本方法の一態様において、KCNK3関連分子またはこれを含むアポトーシス誘導剤は、アポトーシス誘導に有効な量で細胞に投与される。アポトーシス誘導に有効な量については、キメラ分子を含むアポトーシス誘導剤について上記したとおりである。本方法は、in vivo、in vitroまたはex vivoで行うことができる。本方法は、異常に増殖している細胞、例えばがん細胞などでアポトーシスを誘導することなどに用いることができる。
本発明の別の態様は、KCNK3関連分子を用いた疾患の処置方法に関する。本発明の処置方法は、KCNK3関連分子、またはこれを含む剤もしくは医薬組成物を対象に投与する工程を含んでもよい。投与される対象は、典型的にはKCNK3関連分子による処置を必要としている。かかる対象としては、限定されずに、例えば、アポトーシスの誘導がその処置に有用な疾患、例えば、細胞増殖性疾患などを患っているか、これらの疾患を有すると診断されたか、これらの疾患を発症するリスクが高い対象である。したがって、本発明の処置方法は、KCNK3関連分子による処置を必要としている対象を同定する工程をさらに含んでもよい。細胞増殖性疾患の具体例は、キメラ分子を含む医薬組成物に関して上記したとおりである。
本発明の一側面は、p63由来の転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含むN末端側領域と、p53由来のオリゴマー化ドメインを含むC末端側領域とを含むキメラタンパク質またはその機能的変異体であって、配列番号152のアミノ酸配列からなるキメラタンパク質を除くもの、前記キメラタンパク質もしくはその機能的変異体をコードする核酸分子、当該核酸分子を含む核酸構築物またはベクター、前記核酸分子、および/または、前記核酸構築物および/またはベクターを含む組成物に関する。キメラタンパク質およびその機能的変異体、およびこれらをコードする核酸分子、核酸構築物、ベクターおよび組成物の種々の態様は、配列番号152のアミノ酸配列からなるキメラタンパク質および配列番号151の核酸配列からなる核酸分子が含まれないことを除き、キメラ分子について上記したとおりである。
本発明の一態様において、配列番号140、142、144、146、148、150、154、156、158および160からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、キメラタンパク質もしくはその機能的変異体が提供される。本発明の機能的変異体は、(i)配列番号140、142、144、146、148、150、154、156、158および160からなる群から選択されるアミノ酸配列に対し1個または2個以上、例えば、1個または数個(例えば、2、3、4または5個)のアミノ酸の変異(例えば、保存的アミノ酸置換)を有し、前記キメラタンパク質の機能を有する変異体、(ii)配列番号140、142、144、146、148、150、154、156、158および160からなる群から選択されるアミノ酸配列と50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上、または99%以上の配列相同性を有し、前記キメラタンパク質の機能を有する変異体、(iii)配列番号139、141、143、145、147、149、153、155、157および159からなる群から選択される核酸配列からなる核酸分子にストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸分子によってコードされ、前記キメラタンパク質の機能を有する変異体などが含まれる。
今回本発明者により、異なる種類のp53ファミリータンパク質の転写活性化ドメイン、DNA結合ドメインおよびオリゴマー化ドメインを組み合わせることで、野生型p53ファミリータンパク質とは異なる遺伝子発現誘導プロファイルを有するキメラタンパク質を作製できることが明らかとなった。したがって、本発明はまた、(i)2種以上のp53ファミリータンパク質に由来する転写活性化ドメイン、DNA結合ドメインおよびオリゴマー化ドメインを組み合わせてなるキメラタンパク質を得る工程、(ii)得られたキメラタンパク質の遺伝子発現誘導プロファイルを決定する工程、(iii)得られたキメラタンパク質の遺伝子発現誘導プロファイルを、野生型p53ファミリータンパク質の遺伝子発現誘導プロファイルと比較する工程、(iv)野生型p53ファミリータンパク質の遺伝子発現誘導プロファイルとは異なる遺伝子発現誘導プロファイルを有するキメラタンパク質を選択する工程を含む、野生型p53ファミリータンパク質の遺伝子発現誘導プロファイルとは異なる遺伝子発現誘導プロファイルを有するキメラタンパク質の製造方法、スクリーニング方法または探索方法にも関する。
本発明におけるp53ファミリータンパク質としては、限定されずに、例えば、p53、p63およびp73を含む。したがって、本発明の一態様において、工程(i)で得られるキメラタンパク質は、限定されずに、例えば、下表から選択されるドメインの組合わせを有する。下表において、例えばキメラタンパク質1は、p53に由来する転写活性化ドメイン、p53に由来するDNA結合ドメインおよびp63に由来するオリゴマー化ドメインを含む。
遺伝子発現誘導プロファイルは、上記キメラタンパク質またはこれをコードする核酸分子を細胞に導入し、所定時間後に発現が誘導された遺伝子を、例えば、本願実施例に記載の手法で決定することによって得られる、発現が上昇した(誘導された)遺伝子および/または発現が低下した遺伝子および/または発現が変わらなかった遺伝子の組合せを意味する。発現の上昇、低下などは、上記キメラタンパク質またはこれをコードする核酸分子を導入しない対照細胞との比較などにより決定することができる。
以下の例で本発明をより詳細に説明するが、これらの例は例証を目的とするものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
材料と方法(例1〜例6)
細胞株および細胞培養
使用した11のヒトがん細胞株は、American Type Culture Collection (Manassas, VA)またはJapanese Collection of Research Bioresources (Osaka, Japan)から購入した。細胞はすべて、各寄託者によって推奨される条件下で培養した。
p53およびTAp63γのハイブリッド分子の構築
全長のp53またはTAp63γを含むpCMV−Tag2プラスミドは、Sasaki et al., 2011およびSasaki et al., 2009に記載されている。p53−p63ハイブリッドは、オーバーラップ伸長法(overlapping extension method)を用いて、p53およびTAp63γの3つのドメインを入れ替えて作製した。N末端でのFLAGエピトープ標識法を可能とするために、これら遺伝子をインフレームで構築した。同一性を確認するために、ハイブリッド分子をコードするcDNAの配列決定を行った。
複製欠損型組み換えアデノウイルスの産生、精製および感染の手順は、Sasaki et al., 2008に記載される。複製欠損型E1欠失Ad5ベクターpJM17(Microbix Biosystem)をバックボーンとして用い、対応する遺伝子をヒトサイトメガロウイルスプロモーター/エンハンサーおよびウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルの制御下で発現させた。プラーク形成単位(p.f.u.)でのアデノウイルスの力価を、293T細胞感染後のプラーク形成アッセイによって決定した。感染多重度(MOI)を、感染した細胞の総数に対する導入されたp.f.u.総数の比として定義した。実験の再現性を確認するために、2組の試料でアデノウイルスの力価測定を行った。細菌のLacZ遺伝子(Ad−LacZ)またはGFP遺伝子(Ad−GFP)を含むコントロールについては、Sasaki et al., 2011、Sasaki et al., 2009およびSasaki et al., 2008に記載のものを使用した。
アポトーシスの検出
細胞を5×10細胞/フラスコの密度でT25フラスコに播種した。24時間後、1%FCSを含む培地1mL中で精製したウイルスとともに細胞をインキュベートし、10分毎に軽く攪拌した。フローサイトメトリー解析のために、細胞をトリプシン処理によって回収し、感染後に様々な時間で遠心分離することによりペレット化した。ペレット化した細胞を90%の冷エタノールで固定し、RNase A(500ユニット/mL)で処理し、ヨウ化プロピジウム(50μg/mL)で染色した。試料は、FACSCaliburフローサイトメーター(Becton-Dickinson)で分析した。実験を少なくとも3回繰り返し、各試料につき50,000例を分析した。データは、ModFITプログラム(Becton-Dickinson)を用いて分析した。
TUNELアッセイのために、細胞を4ウェルチャンバースライド(Nalge Nunc)に、5×10細胞/ウェルで播種した。上述のようにウイルスを感染し、24時間後にパラホルムアルデヒドで30分間固定後、製造業者の指示書に従って、DeadEnd Fluorometric TUNEL system (Promega)を用いてTUNEL反応を行った。蛍光顕微鏡で観察するために、核をDAPI(Sigma)で対比染色し、グリセロール−ゼラチンにマウントした。
カスパーゼ−3アッセイキット(BioVision)を、製造業者のプロトコルに従って用い、カスパーゼ活性を比色法により測定した。これらキットは、p−ニトロアニリドで標識した合成テトラペプチドを用いる。簡潔に述べると、キットに含まれる溶解緩衝液中で細胞を溶解し、上清を収集し、ジチオスレイトールおよび基質を含む反応緩衝液にて37℃でインキュベートし、マイクロプレートリーダーを用いて、405nmにおける吸光度の変化を測定することによりカスパーゼ活性を決定した。
イムノブロット解析
イムノブロット解析を、Sasaki et al., 2011に記載のように行った。本実施例において、免疫ブロット法に用いた主要な抗体は以下のとおりである。
マウス抗FLAGモノクローナル抗体(mAb)(Sigma)、マウス抗ヒトp21mAb(EA10、Oncogene Research)、マウス抗ヒトMDM2mAb(SMP14、Santa Cruz Biotechnology)、マウス抗ヒトPARPmAb(BD Pharmingen)、マウス抗ヒトカスパーゼ−9mAb(BD Transduction Laboratory)、マウス抗ヒトカスパーゼ−3mAb(BD Transduction Laboratory)、ウサギ抗ヒトp53AIP1ポリクローナルAb(AnaSpec)、およびマウス抗ヒトアクチンmAb(Chemicon)
ノーザンブロットおよびリアルタイムRT−PCR
ノーザンブロット分析のために、2.2Mホルムアルデヒドを含む1%アガロースゲルで、全RNA(10μg)を電気泳動により分離し、ニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell, Dassel, Germany)に移した。RNAがインタクトであり、同量でロードされて適切に移されたことを確認するため、エチジウムブロマイドで可視化した。ハイブリダイゼーションを、以前に記載した方法で行った(Sasaki et al., 2009)。p53AIP1(ヌクレオチド(nt)345〜554)およびp21(nt11〜429)のためのcDNAプローブを、RT−PCRにより増幅し、これらの同一性を確認するために配列決定を行った。
リアルタイムPCR用に、全RNAをSuperScript III(Invitrogen)を用いてランダムプライマーで逆転写した。定量的RT−PCRは、製造業者のプロトコルに従って、TaqMan Gene Expressionアッセイおよび7900HT Real-Time PCR System(Applied Biosystems)を用いて行った。
相対的な遺伝子発現レベルはΔΔCt法を用いて定量し、一定に発現するハウスキーピング遺伝子、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)に対する標的遺伝子の発現比を計算した。用いたプライマー/プローブのセットは次とおりである。
p53AIP1(Hs00223141_m1)およびGAPDH(Hs99999905_m1)
値をそれぞれのコントロールに対して正規化し、3つの独立した実験の平均値±標準誤差として示した。
クロマチン免疫沈降(ChIP)およびルシフェラーゼアッセイ
Sasaki et al., 2011およびSasaki et al., 2009に記載のとおり、ChIPをChIP Assay Kit(Upstate Biotechnology)を用いて行った。沈殿したp53AIP1プロモーターDNAの量を、p53のコンセンサス結合部位にまたがるオリゴヌクレオチド(センス鎖:5’−TGGGTAGGAGGTGATCTCACC−3’(配列番号1)、アンチセンス鎖:5’−GAGCAGCACAAAATGGACTGGG−3’(配列番号2))を用いてPCRにより決定した。MDM2プロモーターに特異的なオリゴヌクレオチド(センス鎖:5’−GTTCAGTGGGCAGGTTGACT−3’(配列番号3)、アンチセンス鎖:5’−GCTACAAGCAAGTCGGTGCT−3’(配列番号4))をポジティブコントロールとして用いた。いずれの場合においても、30サイクルで増幅を行った。
ルシフェラーゼアッセイ用に、p53のヒトp53AIP1遺伝子におけるコンセンサス結合配列(5’−TCTCTTGCCCGGGCTTGTCG−3’;配列番号5)およびこの配列の変異型(5’−TCTATTTCCCGGGATTTTCG−3’;配列番号6)を合成し、pGL3−プロモーターベクター(Promega)における最小プロモーターの上流に挿入した。得られたコンストラクトを、それぞれpGL3−p53AIP1−PROおよびpGL3−p53AIP1−pro−mutと命名した。また、この結合部位を含む100bpの断片をpGL3−ベーシックベクターにクローニングしてコンストラクトをそれぞれ作製し、pGL3−p53AIP1−baおよびpGL3−p53AIP1−ba−mutと命名した。
ヒトp21遺伝子内のp53ファミリーメンバーのコンセンサス結合配列(pGL3−P21、5’−GAACATGTCCCAACATGTTG−3’(el-Deiry et al., 1993;配列番号7)およびJAG1遺伝子内のp53ファミリーメンバーのコンセンサス結合配列(pGL3−JAG1、5’−AGGCTTCTTGTTCAGGCTTGCTCTGTGTGAACCAGACCGTTGTGCTTGGCT−3’(Sasaki et al., 2002;配列番号8))ならびにそれらの変異体もまた合成し、pGL3−プロモーターベクター(Promega)の最小プロモーターの上流に挿入した。ルシフェラーゼアッセイは、Sasaki et al., 2011およびSasaki et al., 2009に記載されるように行った。
動物モデル
すべての動物を、病原体フリーの条件下で維持し、札幌医科大学の動物実験委員会(Animal Care and Use Committee of Sapporo Medical University)のガイドラインに従って処理した。株化した腫瘍における治療効果を評価するため、メスのBALB/cヌードマウスに2×10個のSW480細胞を右側腹部に皮下注射(s.c.)した。腫瘍が100mmに達したときに、5×10p.f.u(100μPBS中)の表示したアデノウイルスで、マウスを1日1回、3または4日連続で腫瘍内投与した。各治療群は8匹のマウスを含む。
それらの6匹のマウスを腫瘍形成のモニタリングに使用した。他の2匹のマウスは、TUNEL解析のために処置5日後に屠殺した。腫瘍体積を、式:V(mm)=a×b/2を用いて算出し、ここでaは長径(largest dimension)あり、bは短径(perpendicular diameter)である。2つの群の差は、25日目にStudentt検定によって決定した。In vivoにおけるTUNEL解析のために、パラフィン包埋組織切片は、キシレン中で5分間脱パラフィンし、勾配エタノールで再水和し、4%パラホルムアルデヒドで固定した。プロテイナーゼKで組織を透過処理した後、4%パラホルムアルデヒドで再固定した。TUNEL反応は、DeadEnd Fluorometric TUNEL System (Promega)を用いて、製造業者の指示書に従って行った。組織をDAPIで対比染色した。それぞれの腫瘍について、3つの異なるスライドを調べた。
図面の説明
図1は、Ad−p53遺伝子ファミリーのアポトーシス効果の比較を示す。
(上段)11種のp53野生型(wt)および4種のp53欠失(del)のがん細胞株を、表示のMOIのアデノウイルスで48時間感染させ、各集団におけるsub−G1の核の割合を定量化するため、細胞内DNA含量をヒストグラム解析で決定した。実験を3回繰り返し、平均の百分率で表した。
(下段)p53が野生型のHCT116細胞およびNUGC4細胞を、48時間アデノウイルスで感染し、続いてアポトーシスをTUNEL解析で評価した。TUNEL解析のため、4ウェルチャンバースライドに細胞を5×10細胞/ウェルでプレートした(Nalge Nunc International, Naperville, IL)。24時間後、細胞は上述のとおりに処理した。TUNEL反応は、製造業者の指示書に従い、DeadEnd Fluorometric TUNEL system(Promega)を用いて行った。核は、DAPI(Sigma)で対比染色し、蛍光顕微鏡で観察するためにグリセロール−ゼラチンにマウントした。TUNEL陽性細胞の平均百分率を示す。
図2は、Ad−p53およびAd−p63γの併用によって増加したアポトーシスの誘導を示す。
(A)アポトーシス誘導におけるAd−p53およびAd−p63γの相乗的効果を調べた。MKN45細胞およびSW480細胞を、別々に200MOIのAd−p53またはAd−p63γで、またはそれぞれ表示したMOIの2つのベクターを併用して感染させた。感染後48時間で細胞を回収し、フローサイトメトリーによって分析した。アポトーシス細胞はsub−G1画分(%)を形成する。
(B)MKN45ヒト胃癌細胞,およびSW480ヒト大腸癌細胞を、表示したMOIのAd−p53および/またはAd−p63γで感染させた。感染の48時間後に、アポトーシスをPARP切断によって分析した。
(C)MKN45ヒト胃癌細胞は、表示したMOIのAd−p53および/またはAd−p63γで感染させた。感染後48時間で、アポトーシスをTUNEL解析によって分析した。TUNEL陽性細胞の平均百分率を示す。
(D)ヒトがんの皮下異種移植片におけるAd−p53およびAd−p63γの併用効果を実証した。MKN45細胞(部位あたり2×10個)をヌードマウスに皮下注射した。腫瘍が100mmに達したとき、マウスは5×10p.f.u.(PBS100μL中)の表示したアデノウイルスで、1日目、2日目、3日目および4日目に1回ずつ、4回直接の腫瘍内注射を受けた。マウスを4つの処置群に無作為に分け、Ad−LacZ、Ad−p53またはAd−p63γでの処置、またはAd−p53およびAd−p63γでの連続併用処置(1日目および3日目にAd−p53、および2日目および4日目にAd−p63γ)をそれぞれ施した。6匹のマウスが各処置群に含まれる。腫瘍形成は3週間まで毎週評価した。
図3は、p53−p63ハイブリッド分子の模式図を示す。野生型p53タンパク質(白)および野生型TAp63γタンパク質(黒)をN末端で並べた。矢印は接合位置を示す。TAD(トランス活性化ドメイン)、DBD(DNA結合ドメイン)およびOLD(オリゴマー化ドメイン)を表示し、各転写物のドメイン構造を示す。
p63−53O:TAp63γのMet1からLys352までの残基およびp53のLys319からAsp393までの残基、
p63−53D:TAp63γのMet1からSer141までの残基、p53のPhe113からArg289までの残基およびTAp63γのLys321からPro448までの残基
p53−63T:TAp63γのMet1からSer141までの残基およびp53のPhe113からAsp393までの残基
p53−63O:p53のMet1からPro318までの残基およびTAp63γのLys353からPro448までの残基
p53−63D:p53のMet1からGly112までの残基、TAp63γのPhe142からArg320までの残基およびp53のLys290からAsp393までの残基
p63−53T:p53のMet1からGly112までの残基およびTAp63γのPhe142からPro448までの残基
水平方向のバーは、核移行シグナル(NLS)を表す。細胞中のタンパク質の核への移行は、PSORT IIソフトウェア解析によるNLSスコアとして予測した(右)。
図4は、p53−p63ハイブリッドの細胞内局在を示す。MKN45細胞を、p53、TAp63γ、p63−53O、p63−53Dまたはp53−63Dを発現するFLAGタグ化pCMV−Tag2ベクターで、一過性にトランスフェクションした。24時間後、FLAG M2抗体およびAlexa488標識二次抗体(緑)を用いて免疫蛍光標識を行った。核はDAPI染色(青)で検出した。
図5は、PARPタンパク質の切断およびカスパーゼ−3の活性を示す。
(A)PARPタンパク質の切断は免疫ブロットで検出した。SW480細胞、H1299細胞およびMKN45細胞を100MOI(SW480細胞およびMKN45)または25MOI(H1299)のアデノウイルスで48時間感染させ、これら細胞からの20μgの総タンパク質をSDS−PAGEによって分離した。切断されたPARP、カスパーゼ−3、カスパーゼ−9およびβ−アクチンを検出する免疫ブロットを示す。
(B)カスパーゼ−3アッセイキットを用い、製造業者のプロトコルに従ってカスパーゼ−3活性を測定した。MKN45細胞をアデノウイルスで感染させて回収し、感染の48時間後に溶解した。カスパーゼ−3のペプチダーゼ活性は、ペプチド基質DEVD−pNAの切断によって測定した。
(C)MKN45細胞は、表示したMOIのアデノウイルスで48時間感染させ、20μgの総タンパク質をSDS−PAGEによって分離した。切断されたPARP、カスパーゼ−3およびβ−アクチンを検出する免疫ブロットを示す。
(D)MKN45細胞は、表示したMOIのアデノウイルスで48時間感染させた。カスパーゼ−3活性は、感染後48時間で測定した。
図6は、p53−p63ハイブリッドのアデノウイルス媒介性発現後のアポトーシス細胞のフローサイトメトリー解析を示す。細胞を表示したMOIのアデノウイルスで感染させた。感染の48時間後に細胞を回収し、フローサイトメトリーにより分析した。3つの独立した実験を行い、1つの実験の代表的なデータを示した。sub−G1細胞の百分率を下段に示す。
図7は、皮下に移植したヒトがんの異種移植片におけるp53ファミリーメンバーのアデノウイルス媒介性発現の治療効果を示す。
(A)SW480細胞(部位当たり2×10個)をヌードマウスへ皮下注射した。腫瘍が100mmに達したとき、マウスに3日連続で、組み換えアデノウイルスを皮下注射した。各群には6匹のマウスが含まれる。データポイントは、平均の腫瘍サイズを示す。
(B)SW480細胞異種移植片におけるTUNELアッセイを、(A)に記載の処置後5日目に行った。アポトーシスの増加が、Ad−p63−53Oで処置した異種移植片で検出された(緑色の細胞)。核のDNAはDAPIで染色した。
図8は、MKN45異種移植片におけるp53ファミリーメンバーのアデノウイルス媒介性発現の治療効果を示す。
(a)MKN45細胞(部位あたり2×10個)をヌードマウスに皮下注射した。腫瘍が100mmに達したとき、マウスに3日間連続で組み換えアデノウイルスを腫瘍内注射した。6匹のマウスが各群に含まれる。データポイントは、平均腫瘍サイズを示す。
(b)MKN45異種移植片におけるTUNELアッセイは、(a)に記載の処置の5日後に行った。各処置条件からの代表的な画像を示す。核のDNAをDAPIで染色した。
図9は、p53−p63ハイブリッドのアデノウイルス媒介性トランスフェクション後のヒトがん細胞株におけるp53標的およびアポトーシス関連タンパク質の発現を示す。Saos−2細胞、H1299細胞およびSW480細胞は、25MOIのアデノウイルスで24時間感染させ、10μgの総タンパク質をSDS−PAGEによって分離した。p21、MDM2、サバイビン、サイクリンB1、Noxa、Bax、PUMA、JAG1、p55CDCおよびアクチンのレベルを、免疫ブロットによって測定した。
使用した一次抗体は、以下のとおりである。マウス抗FLAGモノクローナル抗体(mAb)(Sigma)、マウス抗ヒトp21mAb(EA10, Oncogene Research)、マウス抗ヒトMDM2mAb(SMP14, Santa Cruz Biotechnology)、ラビット抗ヒトサバイビンポリクローナル抗体(S8191, Sigma)、マウス抗ヒトサイクリンB1 mAb(GNS1, Santa Cruz Biotechnology)、ラビット抗ヒトBAXポリクローナルAb(P19, Santa Cruz Biotechnology)、マウス抗ヒトNoxa mAb(114C307, Oncogene Research)、ラビット抗ヒトPUMAポリクローナルAb(BD Transduction Laboratory)、ラビット抗ヒトJAG1ポリクローナル抗体(H-144, Santa Cruz Biotechnology)、マウス抗ヒトp55CDC mAb(E-7, Santa Cruz Biotechnology)およびマウス抗ヒトアクチンmAb(Chemicon)
図10は、p63−53Oハイブリッドによるp53AIP1の効率的なトランス活性化を示す。
(A)4種のヒトがん細胞株を、50または100MOIのアデノウイルスで感染させ、細胞を感染の24時間後に回収した。全RNAを抽出し、ノーザンブロットを行った。全RNA(10μg)を各レーンにロードし、同じフィルターをヒトp53AIP1およびp21のcDNAで再ハイブリダイズした。28SリボソームRNA(28S)のエチジウムブロマイド染色を下段のパネルに示す。等量のRNAが各レーンにロードされたことが確認される。
(B)p63−53Oは、in vivoにおいて、p53AIP1遺伝子のp53−REと効率的に相互作用する。「材料と方法」に記載のようにChIPアッセイを行った。
(C)p63−53Oは、p53−REを含むp53AIP1プロモーターを効率的に誘導する。SW480細胞に、pGL3−p53AIP1−pro、pGL3−p53AIP1−ba、pGL3−p21またはpGL3−JAG1と、pCMV−Tag2コントロールベクター、p53、TAp73β、TAp63γ、p63−53Oまたはp63−53Dとを同時導入した。ルシフェラーゼ活性は、「材料と方法」に記載のように、感染の24時間後に定量した。エラーバーは、3つの独立した実験から計算された2つの標準偏差を表す。
図11は、p63−53Oによるアポトーシス誘導のp53AIP1 siRNAによる拮抗を示す。
(A)p53AIP1 mRNAの発現は、siRNAによって抑制された。SW480細胞を、3日連続で24時間毎にコントロールまたはp53AIP1 siRNAで感染させた。最後のsiRNAトランスフェクションの18時間後に、p53AIP1 mRNAの抑制をリアルタイムRT−PCRによって測定した。
(B)上述のとおり、SW480細胞を、コントロールまたはp53AIP1 siRNAで感染させた。最後のsiRNAトランスフェクションの8時間前に、細胞を100MOIのAd−GFPまたはAd−p63−53Oで感染させた。p53AIP1タンパク質の量を、免疫ブロットによって測定した。アポトーシスは、カスパーゼ−3の切断(上段パネル)およびカスパーゼ−3活性(下段パネル)によって調べた。
例1:p53ファミリーのアポトーシス促進能
p53の機能を回復させる遺伝子治療は、ヒトがん治療用に臨床的に試験されている。しかしながら、いくつかのがんはp53に対して耐性である。大腸癌細胞株において、TAp63γおよびTAp73βは、p63およびp73のすべてのアイソフォームの中で最も強いアポトーシス促進能を有する。アデノウイルスベクターを用いて、p53、TAp63γおよびTAp73βを56のがん細胞株へ導入し、フローサイトメトリーを用いて細胞死およびアポトーシスに対するそれらの効果を比較した。
sub−G1画分(%)は、アポトーシス細胞を含む。いくつかの細胞株では、p53、p73βまたはp63γに応じてアポトーシスが生じたが、約25%の細胞株は、p53ファミリーメンバーによって誘導されるアポトーシスに対して、少なくとも幾分かの耐性を示した。興味深いことに、TAp63のアポトーシスの効果は、内在性の野生型p53対立遺伝子を有するがん細胞株22種のうち15種(68.2%)において、野生型p53のものよりも大きかった(表2および図1)。
表2は、Ad−p53ファミリー遺伝子のアポトーシス効果の比較を示す。
アデノウイルス媒介性導入の48時間後におけるsub−G1細胞の百分率を示す。実験は3回繰り返され、平均百分率が示される。wt=p53野生型;mut=p53変異型;del=p53欠失
p53、p73βまたはp63γを単独で導入してもアポトーシスを誘導しなかったMKN45胃癌細胞およびSW480大腸癌細胞を、200MOIのAd−p53またはAd−p63γで、または2つの組み換えアデノウイルスをそれぞれ表示したMOIで併用して感染させた。感染の48時間後に細胞を回収し、アポトーシスをフローサイトメトリー、カスパーゼ活性化およびTUNELアッセイによって分析した。p53およびTAp63γの遺伝子発現において、アポトーシス促進性の相乗作用が観察された(図2A〜C)。
ヒトがんの異種移植片増殖に対するAd−p53およびAd−p63γの併用処置の効果も調べた。MKN45細胞をヌードマウスに皮下注射して腫瘍が100mmに達したとき、アデノウイルスの腫瘍内直接注射を1日当たり4回、1日目、2日目、3日目および4日目に行った。マウスを4つの処置群に無作為に分け、Ad−LacZ、Ad−p53またはAd−p63γでの処置、またはAd−p53およびAd−p63γでの連続併用処置(1日目および3日目にAd−p53、および2日目および4日目にAd−p63γ)をそれぞれ施した。
MKN45異種移植片の増殖は、Ad−p53またはAd−p63γ単独の処置と比較して、併用処置によって有意に抑制された(図2D)。したがって、Ad−p53およびAd−p63γの同時処置により、in vitroおよびin vivoにおいて、抗腫瘍性の強い相乗効果が生じることが示された。
例2:p53−p63ハイブリッド遺伝子の構築
p53ファミリーの腫瘍抑制活性を増強させるために、p53およびp63の機能の制御差を利用するハイブリット遺伝子のセットを作製した。6種のハイブリッドタンパク質は、3つの機能的ドメインからなり、各ドメインはそれぞれp53またはTAp63γに由来する。例えば、「p53−63O」は、p53のN末端ドメインおよび中央ドメインを含むハイブリッドタンパク質であって、インフレームでp63のC末端ドメインを融合させたものであり、「p53−63D」は、p63の中央ドメインを含むハイブリッドp53タンパク質である。
6種のハイブリッドタンパク質の組成を図3に示す。6種のハイブリッドの中で、p63−53Dは、典型的なNLSモチーフを欠失しているため、主に細胞質へ局在する。他の5種のハイブリッドは、p53およびTAp63γを模倣し、NLSの存在と一致して主に核に局在する(図4)。3種のハイブリッド分子(p53−63O、p63−53Dおよびp63−53T)は、p63のC末端ドメインを含むが、内在性の変異型または野生型のp53とはオリゴマー形成することができない。p63のN末端ドメインを含むp53−63Tおよびp63−53Dは、p53の中央DNA結合ドメインを含むとしても、MDM2に結合することや、プロテアソーム分解が起こらないことが予測される。
最後に、異なるTAp63アイソフォームの独特のC末端(α、βおよびγ)が、遺伝子発現のトランス活性化能力を調整すると考えられることから、p53−63D、p53−63Tおよびp63−53Oは、p63の転写活性を変化させると考えられた。
例3:p53−p63ハイブリッドのアデノウイルス媒介性発現後のアポトーシスプロファイル
p53およびTAp63γとの比較におけるハイブリッドの抗がん活性を評価するために、FLAGタグ化ヒトp53(Ad-p53)、TAp63γ(Ad−p63γ)またはp53−p63ハイブリッド(Ad−p63−53O、Ad−p63−53D,Ad−p53−63T、Ad−p53−63O、Ad−p53−63DおよびAd−p63−53T)を発現する組み換えアデノウイルスベクターを作製した。
アデノウイルス媒介遺伝子送達の相対的効率は、25〜200MOIでのAd−GFP感染後のGFP陽性細胞の割合として定量化した。GFPの発現によって決定された遺伝子導入効率によれば、各細胞株は適切なMOIでアデノウイルスに感染した。図5Aに示されるように、MKN45(胃癌)およびH1299(肺癌)などのいくつかのがん細胞株において、ハイブリッドが同程度で発現しているかどうかを測定した。その後、ヒトがん細胞株のパネルにおいて、アポトーシスの誘導をフローサイトメトリーによって分析した。細胞をアデノウイルスで48時間感染させた後、細胞内DNA含量を分析した。これらデータは、集団あたり合計5×10個の細胞において、sub−G1の核(アポトーシス細胞)の割合を示すヒストグラムにまとめられる。
Ad−GFPで感染した細胞株においては、有意なアポトーシス画分は観察されなかった。重要なこととして、Ad−p63−53Oは、試験した4種の細胞株すべての中で、Ad−p53またはAd−p63γよりも効率的にアポトーシスを誘導した(図6)。14の癌細胞株において、フローサイトメトリーによってアポトーシスの誘導を分析した。Ad−p63−53Oは、試験した14の細胞株のすべてにおいて、p53野生型、変異型、欠失のいずれの状態にも関わらずアポトーシスを誘導した(表3)。
表3は、p53−p63ハイブリッド間におけるアポトーシス効果の比較を示す。
アデノウイルス媒介性導入の48時間後におけるsub−G1細胞の百分率を示す。実験は3回繰り返され、平均百分率が示される。wt=p53野生型;mut=p53変異型;del=p53欠失
DNA修復に関与する酵素PARPは、カスパーゼ−3によって切断され、切断されたPARP(85kDa、未切断タンパク質で116kDa)の存在はアポトーシスの特徴とみなされる。p53−p63ハイブリッドによるアポトーシスの誘導は、PARPおよびカスパーゼ−3/9の切断(図5A)ならびにカスパーゼ−3活性(図5B)によって確認された。これら観察は、フローサイトメトリーの結果と一致した。
また、MKN45細胞を48時間、50MOIからの様々な希釈倍率でアデノウイルスに感染させ、PARP切断およびカスパーセ−3活性について分析した。Ad−p63−53Oを50MOIで感染させた後のPARP切断およびカスパーゼ−3活性のレベルは、Ad−p53またはAd−p63γを200MOIで感染させた後のものと同様であった(図5C、D)。
例4:皮下に移植したヒト異種移植片増殖に対するp53−p63ハイブリッドアデノウイルスの腫瘍内注射の治療効果
アデノウイルスベクターのin vivo投与の効果を調べた。ヌードマウスにおけるヒトSW480細胞の異種移植片を樹立した。腫瘍が100mmに達したとき、Ad−LacZ、Ad−p53、Ad−p63γまたはAd−p63−53Oを5×10p.f.uで含む100μLの腫瘍内注射を各マウスに3回与え、腫瘍サイズをモニタリングした。
Ad−p53またはAd−p63γでの処置と比較して、Ad−p63−53Oでの処置によって、SW480異種移植片増殖が有意に抑制された(p<0.001:図7A)。25日目のアデノウイルス処置マウスの平均腫瘍体積は、Ad−p53については350mm、Ad−p63γについては331mm、Ad−p63−53Oについては102mm、Ad−LacZについては869mmであった。特に、Ad−p63−53O処置は、腫瘍を有するマウス33%(2/6)において、完全な腫瘍退縮を誘導した。このin vivoでの結果は、in vitroで観察された特異性と相関した。
加えて、各処置群由来の動物2匹を処置5日目で安楽死させ、それらの腫瘍をin situ TUNEL分析用に回収した。Ad−p53またはAd−p63γで処置した場合と比較して、Ad−p63−53Oで処置したSW480異種移植片において、アポトーシスの顕著な増加が観察された(図7B)。p53−p63ハイブリッドと同様の治療効果が、MKN45異種移植片において観察された(P<0.001、図8)
例5:ハイブリッドp63−53Oによるp53AIP1の効率的な転写誘導
ハイブリッドp63−53Oは、TAp63のMet1からLys352の残基およびp53のLys319からAsp393を含む。本発明のハイブリッドは、TAp63のTADおよびDBDならびにp53のOLDを含む。p63−53Oハイブリッドのアポトーシス促進活性の上昇が、全般的な転写活性化によるものかどうかを決定するため、特定のがん細胞において、p21、MDM2、サバイビン、Noxa、BaxおよびPumaを含むp53標的遺伝子の誘導を免疫ブロットによって調べた(図9)。p63−53Oハイブリッドは、試験した3種の細胞株すべてにおいて、p53標的遺伝子のサブセットを誘導したが、誘導の度合いはp53またはTAp63γのものほど顕著ではなかった。これら結果は、本発明のハイブリッドは、単に一般的なp53標的遺伝子の転写活性の増加によって作用するものではないことを示唆する。
ハイブリッドp63−53Oによって特異的に制御されるアポトーシス促進性の標的遺伝子を同定するため、Affymetrix Genechip解析が行われ、Ad−p53、Ad−p63γまたはAd−p63−53OでトランスフェクションしたSaos−2ヒト骨肉腫細胞の発現パターンを比較した。データはGEOデータベース(GSE35512)で入手可能である。p53媒介の細胞死応答の重要な標的であるp53AIP1が、候補遺伝子として同定された。p53AIP1遺伝子は、p63−53Oでトランスフェクションした細胞において、p53またはTAp63γでトランスフェクションした細胞と比較して、再現性よく、少なくとも4倍の発現上昇があった。
p53AIP1cDNAをプローブとして用いて、Saos−2、H1299、DLD1およびSW480のヒトがん細胞株のノーザンブロット解析を行った。図10Aに示されるように、Ad−p63−53Oに感染後、試験した細胞株すべてにおいて、p53AIP1の最も強い誘導が観察された。
次に、in vivoにおいて、p63−53Oハイブリッドタンパク質が、Oda et al., 2000によって特徴付けられるp53応答エレメント(p53−RE)を含むヒトp53AIP1プロモーター領域に効率的に結合することができるかを決定するため、クロマチン免疫染色法(ChIP)を使用した。ChIPアッセイでは、特定の抗体を用い、結合するゲノムDNAとともにDNA結合タンパク質を免疫沈降させる。Ad−p53、Ad−p63γ、Ad−p63−53OまたはAd−p63−53Dで感染したSW480細胞を分析した。Ad−p53、Ad−p63γ、Ad−p63−53OまたはAd−p63−53Dで感染したSW480細胞のホルムアルデヒド架橋抽出物から、抗FLAG抗体を用いてDNA−タンパク質複合体を免疫沈降した。
免疫沈降複合体内の候補配列の存在量をPCRによって定量化した。図10Bに示されるように、p63−53Oは、p53またはTAp63よりも効率的にp53AIP1プロモーターにリクルートされていた(上段、レーン12)。ChIPアッセイのためのポジティブコントロールとして、MDM2プロモーターを分析した。予想通りに、p53、TAp63γおよびp63−53Oは、MDM2プロモーター内のp53結合部位と共に免疫沈降した(図10B、下段、レーン8、10および12)。これら結果は、SW480細胞において、p63−53Oハイブリッドタンパク質が、p53AIP1プロモーターに効率的に結合することを示す。
p63−53Oの転写増強活性をさらに評価するため、レポーターアッセイを行った。pGL3プロモーターベクター(pGL3−p53AIP1−pro)中のSV40最小プロモーターの上流に、p53AIP1遺伝子内のp53−REを含むゲノム断片をクローニングして、異種レポーターベクターを構築した。また、p53AIP1遺伝子のp53−REに対応する100bpのDNA断片を、pGL3ベーシックベクター(pGL3−p53AIP1−ba)中にクローニングした。
p63−53Oは、両方のp53AIP1ルシフェラーゼレポーターを活性化したが、p53およびTAp63γは、p53AIP1の転写をより低い効率で活性化した(図10C)。さらに、p53AIP1のp53−REにおける点変異(pGL3−p53AIP1−pro−mutおよびpGL3−p53AIP1−ba−mut)は、p63−53Oによるトランス活性化を消滅させた。
p21のp53−RE(pGL3−p21)または既知のTAp63標的であるJAG1(pGL3−JAG1)を、pGL3プロモーターベクター中へクローニングしてルシフェラーゼレポーターアッセイを行った。pGL3−p21のルシフェラーゼ活性は、p53で同時導入した細胞において、p63−53Oで同時導入した場合よりも高かった。対照的に、TAp63γおよびTAp73βは、JAG1ルシフェラーゼレポーターを効率的に活性化した(図10C)。これら結果は、ChIPデータと併せて、p63−53Oハイブリッドが効率的にp53AIP1をトランス活性化することを示す。
例6:p53AIP1 siRNAは、p63−53Oのアポトーシス効果を拮抗する
p63−53Oのヒトがんでのアポトーシス促進効果におけるp53AIP1の重要性を決定するため、p53媒介アポトーシスに比較的に耐性のSW480細胞において、p53AIP1発現をノックダウンするsiRNAを使用した。いずれのヒト遺伝子に対しても配列相同性がないsiRNAをコントロールとして使用し、細胞を3日連続で24時間毎にsiRNAでトランスフェクションした。
図11Aに示されるように、リアルタイムRT−PCRは、p53AIP1 siRNAでトランスフェクションした細胞において、p53AIP1 mRNAの減少を実証した。最後のトランスフェクションから8時間後に、細胞はAd−GFPまたはAd−p63−53Oで48時間感染させ、免疫ブロットおよびカスパーセ−3アッセイを行った。SW480細胞のp53AIP1 siRNAでの前処理は、p63−53O媒介のp53AIP1の誘導をタンパク質レベルで強力に抑制した(図11B)。さらに、p53AIP1 siRNAは、p63−53Oのアポトーシス促進効果と拮抗した(図11B)。
これら結果は、本発明のハイブリッドタンパク質のアポトーシス効果が、少なくとも部分的に、p53AIP1活性を介することを示唆する。すなわち、本発明のハイブリッドは、p53AIP1プロモーターの転写を効率的に活性化し、アポトーシスを誘導した。
材料と方法(例7〜例10)
細胞培養およびトランスフェクション
使用したヒト胃癌細胞(MKN−45)、ヒト膵癌細胞(PANC−1)、ヒト肝細胞癌細胞(HLFおよびHuH−7)、ヒト結腸腺癌細胞(SW48およびSW480)およびヒト骨肉腫細胞(G−292、HOS、Saos−2およびU−2 OS)は、American Type Culture CollectionまたはJapanese Collection of Research Bioresourcesから購入した。トランスフェクションは、すべてLipofectamine 2000(Lifetechnologies)を用いて行った。
プラスミド、組み換えアデノウイルスおよびsiRNA
それぞれFLAGタグ化した、p53、p63γ(Sasaki et al., 2009)およびp53とp63γとのハイブリッド変異体(p63γの1〜351アミノ酸およびp53の318〜393アミノ酸を含む63−53Oならびにp63γの1〜352アミノ酸およびp53の290〜393アミノ酸を含むスーパーハイブリッドp53(SHp53))を、それぞれpcDNA3.2/V5/GW/D−TOPOベクター(Lifetechnologies)に挿入した。アデノウイルスを産生するために、cDNAおよびLacZ遺伝子をpAd/CMV/V5−DESTベクター(Lifetechnologies)へ導入した。Fast-Trap Adenovirus Purification and Concentration Kit (Millipore)を用いて、組み換えアデノウイルスを精製した。
ヒトのCASP10(5’−rGrCUUrCUrGrAUUrAUUrGrAUUrCrATT−3’;配列番号9)、KCNK3(5’−rCrGUrGUrArCrGUUUrGrCrAUrCUrCUTT−3’;配列番号10)、PYCARD(5’−rCrCrGrCrCrGrArGrGrCUrCrArArGrArATT−3’;配列番号11)を標的とするsiRNAおよびコントロールsiRNAを、SIGMA社から購入した(RNAのヌクレオチドを「rN」で示す。)。
抗体
実験に使用した抗体は、以下のとおりである。
抗FLAG抗体(M2、Sigma)、抗カスパーゼ−3抗体(8G10、Cell Signaling)、抗PARP−1抗体(H−250、Santa Cruz Biotechnology)、抗トリメチルヒストンH3(Lys4)(H3K4me3)抗体(MC315、MILLIPORE)、抗アクチン抗体(MAB1501R、Millipore)およびHRP標識二次抗体(Santa Cruz Biotechnology)
RT−PCR
RT−PCRを、以前に報告したとおりに行った(Kashima et al., 2009)。PCRの条件は、94℃で2分の初期変性ステップ後、94℃で30秒、65℃(CASP10)、59℃(CDKN1A)、63℃(KCNK3,PYCARDおよびTP53)、55℃(FLAG−TP63)または55℃(GAPDH)で30秒、および72℃で30秒をそれぞれ26サイクル(CASP10)、25サイクル(CDKN1A)、29サイクル(KCNK3)、35サイクル(PYCARD)、25サイクル(TP53)、18サイクル(FLAG−TP63)または16サイクル(GAPDH)で行うことを含む。
オリゴヌクレオチドのプライマー配列は、以下のとおりである。
CASP10センス(5’−GCTGCAGCACCTCAACTGTACCAAAGAGGA−3’;配列番号12)およびアンチセンス(5’−GCAGAGGTCCTCCAGGCATGTCAGATTATC−3’;配列番号13)、KCNK3センス(5’−TACGAGGAGCTGGAGCGCGTC−3’;配列番号14)およびアンチセンス(5’−GATGCCCAGCAGCGCGTAGAACAT−3’;配列番号15)、PYCARDセンス(5’−TCACCGACAAGCTGGTCAGCTTCTAC−3’;配列番号16)およびアンチセンス(5’−TCGCGATAAGCGCAGCCCGGT −3’;配列番号17)、TP53センス(5’−CCACTGGATGGAGAATATTTCACCCTTCAG−3’;配列番号18)およびアンチセンス(5’−TGGCTCCTTCCCAGCCTGGGCATC−3’;配列番号19)、FLAG−TP63センス(5’−CACCGTCGACGCCACCATGGATTACAAGGA−3’;配列番号20)およびアンチセンス(5’−GGACACGTCGAAACTGTGCG−3’;配列番号21)、ならびにGAPDHセンス(5’−CGGAGTCAACGGATTGGTCGTAT−3’;配列番号22)およびアンチセンス(5’−AGCCTTCTCCATGGTGGTGAAGAC−3’;配列番号23)
CDKN1A用のオリゴヌクレオチドプライマーは、以前に報告されている (Idogawa et al., 2009)。PCR産物は、1.5%アガロースゲルの電気泳動によって可視化した。
免疫蛍光顕微鏡
免疫蛍光顕微鏡は、以前に報告したとおりに行った(Kashima et al., 2009)。簡潔に述べると、細胞を4ウェルチャンバースライド上で培養し、トランスフェクションした。24時間後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、抗FLAG抗体とともにインキュベートした後、Alexa488標識二次抗体とともにインキュベートした。標識した細胞は、BZ-8100(KEYENCE)蛍光顕微下で調べた。
TaqMan低密度アレイ
TaqMan Low Density Array (LDA)は、96 TaqMan Gene Expression Assays (Applied Biosystems)からなり、表4に記載のとおり、93のp53標的遺伝子および3の内因性コントロール遺伝子(GUSB、HPRT1およびGAPDH)を含み、384ウェルフォーマットに設計され、マイクロ流体カードにスポットされている(1アッセイあたり4つ)。選択した遺伝子の発現は、LDAとして製造業者の指示書に従って分析した。
クロマチン免疫沈降−配列決定解析
クロマチン免疫沈降−配列決定(ChIP−seq)解析を、以前に報告したとおりに行った(Suzuki et al.)。まず、HuH−7細胞をアデノウイルスベクターで感染させた。24時間後、細胞を1%ホルムアルデヒドで10分間固定した。SOLiD ChIP-seq manualに記載のように、クロマチン試料について、抗H3K4me3抗体を用いてChIPを行い、SOLiD3 Plus system(Applied Biosystems)を用いて大規模なパラレルシークエンスを行った。質が悪いか、一意的に位置づけられなかった配列の読み込みは、研究から除外した。ピークは、Model-based Analysis for ChIP-seq (MACS) software(Zhang et al., 2008)を用いて同定し、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のゲノムブラウザを用いて可視化した。ゲノム位置は、International Human Genome Sequencing Consortiumによって作成されたUCSChg18(National Center for Biotechnology Information Build 36.1, March 2006)に基づく。
マイクロアレイ解析
27,958のEntrez gene RNAおよび7,419のlarge intergenic non-coding RNA(lincRNA)を、SurePrint G3 Human Gene Expression Microarray (Agilent Technologies)を用いて解析した。マイクロアレイデータは、GeneSpring GX ver. 11 (Agilent Technologies)を用いてさらに解析された。
p53結合部位の予測
p53結合部位は、p53スキャンアルゴリズム(Smeenk et al., 2008)を用いてコンピューターで予測した。
クロマチン免疫沈降−PCR
タンパク質をDNAと架橋するため、アデノウイルス感染の24時間後に、HuH−7細胞を10分間1%ホルムアルデヒドで固定した。クロマチン試料を、抗FLAG抗体を用いて、4℃で16時間免疫沈降した。ChIPは、MAGnify ChIP system(Lifetechnologies)を用いて行った。PCRプライマーを表5に示す。
表5は、使用したプライマー配列およびChIP−PCR産物のサイズを示す。
フローサイトメトリー
100万個の細胞を6mmプレートまたはT25フラスコで培養し、アデノウイルスで感染させた。以前の報告のように(Ogi et al., 2005)、細胞を48時間後にフローサイトメトリーに供した。データは、FlowJo softwareを用いて解析した。
カスパーゼ−3活性の測定
カスパーゼ−3活性を、caspase-3 assay kit(Biovision)を用い、製造業者の指示書に従って比色定量アッセイにより測定した。
In vivo腫瘍形成アッセイ
5週齢のBALB/cAJc1−nu/nuマウスにおいて、2×10個のMKN−45細胞または3×10個のSW480細胞を100μLの無菌PBS中に再懸濁し、続いてこれら細胞を21ゲージの針を用いて動物の側腹部へ注射した。キャリパーを用いて3日毎に腫瘍サイズをモニタリングし、発達する腫瘍の長さ(l)および幅(w)をV=(w×l)/2の式を用いて体積に変換した。腫瘍サイズが100mmに達したとき、100μL当たり5×10プラーク形成単位(p.f.u.)の各精製アデノウイルスを、26ゲージの針を用いて3日間毎日腫瘍内投与した。
図面の説明
図12は、スーパーハイブリッドp53のがん細胞におけるアポトーシスの強い誘導を示す。
(A)FLAG−p53コンストラクト(ダークグレー)、FLAG−p63γコンストラクト(ライトグレー)、FLAG−63−53コンストラクトOおよびFLAG−SHp53コンストラクトの模式図。TA:トランス活性化ドメイン、DB:DNA結合ドメイン、OL:オリゴマー化ドメイン。水平のバーは、核移行シグナル(NLS)を示す。NLSスコアを、PSORT IIプログラムを用いて計算し、右側に示した。矢印は、RT−PCR解析に用いたプライマーの位置を示している。
(B)SW480細胞に、図12Aに記載の表示のベクターをトランスフェクションした。24時間トランスフェクションした後、全RNAを単離し、RT−PCRを行った。図12Aに表示のFLAG配列特異的フォワードプライマー、TP63配列プライマーならびにTP53特異的フォワードおよびリバースプライマーを、FLAG−TP63およびTP53をそれぞれ検出するために用いた。
(C)SW480細胞を、表示したベクターでトランスフェクションした。24時間トランスフェクション後、全細胞のライセートを、表示の抗体を用いてウェスタンブロットにより分析した。*は、非特異的なバンドを示している。
(D)Saos−2細胞を、表示したベクターでトランスフェクションした。24時間トランスフェクションした後、抗FLAG抗体(緑)を用いて免疫細胞化学を行った。DAPI染色によって核を検出した(青色)。
(E)G−292細胞、U−2 OS細胞、MKN−45細胞、HLF細胞、HOS細胞、HuH−7細胞、PANC−1細胞、SW48細胞およびSW480細胞を表示した組み換えアデノウイルスで感染させ、感染の48時間後にフローサイトメトリーによって分析した。Sub−G1における細胞の百分率を示す。
(F)アデノウイルス感染の48時間後に、カスパーゼ−3活性ならびにカスパーゼ−3およびPARP−1切断をアッセイした。カスパーゼ−3活性の測定は3回行い、平均値と標準偏差を示す。
(G)「材料と方法」に記載されるように、ヌードマウスにSW480細胞およびMKN−45細胞を皮下注射した。表示のアデノウイルスベクターを、1、2および3日目に腫瘍内に注射した(矢印)。データは、アデノウイルスを注射した5つの独立した腫瘍の平均体積を表している。1日目の体積を1として、各腫瘍の体積を1日目の体積に対する相対値として表す。エラーバーは、標準偏差を示す。
図13は、p53(ダークグレー)、p63γ(ライトグレー)、63−53Oおよびp53ファミリーハイブリッドのコンストラクトの模式図を示す。TA:トランス活性化ドメイン、DB:DNA結合ドメイン、OL:オリゴマー化ドメイン。水平なバーは、核移行シグナル(NLS)を示す。NLSスコアをPSORT IIプログラムを用いて計算した。
図14は、p53ファミリーハイブリッドのコンストラクトの構造をPCR法およびウェスタンブロット法で確認したことを示す。
(A)Flag−SHp53およびRT−PCRプライマー位置(矢印)の模式図である。ダークまたはライトグレーのバーは、それぞれp53およびp63由来の配列を示す。
(B)SW480細胞は、表示した図13に記載のFlag−タグ化コンストラクトでトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、全RNAを単離し、RT−PCRを行った。Flag−TP63、TP53およびFlag−TP53を検出するために、それぞれ(A)に表示されるFlag配列特異的フォワードプライマーおよびTP63配列プライマーおよびTP53特異的なフォワードおよびリバースプライマーを使用した。
(C)SW480細胞は、表示したベクターでトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、全細胞ライセートを、表示した抗体を用いてウェスタンブロットにより解析した。
図15は、p53、p63γ、p63−53Oおよびp53ファミリーハイブリッドによる各種がん細胞におけるアポトーシス誘導の比較を示す。
G−292細胞、Saos−2細胞、MCF−7細胞、MKN−45細胞、U−2 OS細胞、HaCaT細胞、HOS細胞およびSW480細胞を、表示した組み換えアデノウイルスで感染し、感染の48時間後にフローサイトメトリーによって解析した。sub−G1における細胞の百分率を示す。各細胞のTP53遺伝子型を、WT(野生型)、nullまたはMUT(変異体)として示す。
図16は、p53、p63γ、p63−53Oおよびp53ファミリーハイブリッドタンパク質の細胞内局在を示す。
Saos−2細胞を、表示のベクターでトランスフェクトした。24時間トランスフェクションした後、抗FLAG抗体(緑)を用いて免疫細胞化学を行った。核はDAPI染色(青)を介して検出した。
図17は、p53、p63γ、p63−53OおよびSHp53による特異的p53AIP1発現誘導を示す。
MKN−45細胞、U−2 OS細胞、G−292細胞およびSW480細胞を、表示のアデノウイルスで感染させ、感染の24時間後に、各遺伝子に特異的なプライマーを用いて遺伝子発現をRT−PCRによって解析した。TP53の遺伝子型を括弧内に示す。
図18は、SHp53により誘導される遺伝子発現プロファイリングを示す。
(A)Huh−7細胞を、Ad−LacZ、Ad−FLAG−p53、Ad−FLAG−p63γまたはAd−FLAG−SHp53で感染させた。全RNAを、感染24時間後にTRIzol(Lifetechnologies)を用いて単離し、p53標的遺伝子の誘導はLDAを用いて定量し、GAPDHで正規化した。実験を3回行った。平均値および標準偏差を示す。
(B)Huh−7細胞を、Ad−LacZ、Ad−FLAG−p53は、Ad−FLAG−p63γまたはAd−FLAG−SHp53で感染した。感染24時間後、全RNAを単離し、遺伝子発現はマイクロアレイを用いて分析した。発現上昇した遺伝子を>10の比で同定し、解析した。ベン図は、Ad−FLAG−p53、Ad−FLAG−p63γまたはAd−FLAG−SHp53の感染により、別個に制御されているものとして同定された遺伝子群の交わりを表示する。遺伝子数および典型的な発現上昇した遺伝子を示す。
(C)ヒートマップは、階層的クラスタリングにより分析された発現上昇した遺伝子(図18B)を示し、FLAG−SHp53特異的に誘導された遺伝子クラスターを同定した(ボックス、表6)。SHp53標的遺伝子を同定するために、模式図に示すように追加のフィルタリングを行った。遺伝子数が表示される。(C)遺伝子を特異的に制御するAd−FLAG−SHp53における推定p53の結合部位(BS)同定のためのストラテジー(D)Huh−7細胞におけるAd−FLAG−SHp53特異的に発現上昇する遺伝子およびこれらのp53BSの選択のためのフローチャート
図19〜21は、リアルタイムRT−PCR法によって確認されたSHp53により特異的に発現誘導される遺伝子群を示す。
MKN−45細胞、U−2 OS細胞、G−292細胞、HuH−7細胞およびSW480細胞を、表示したアデノウイルスで感染させ、遺伝子発現を、感染の24時間後にTaqMan LDAによって解析した。遺伝子発現の相対レベルを、ハウスキーピング遺伝子であるグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の発現に対する標的遺伝子の発現比率を算出するΔΔCt法を用いて定量した。Ad−FLAG−SHp53によって特異的に誘導される遺伝子を示した。各細胞のTP53遺伝子型を括弧内に示した。プライマー/プローブのセットを、表4に示す。
図22は、スーパーハイブリッドp53特異的な標的遺伝子のトランス活性化の制御を示す。
(A)〜(C)CASP10遺伝子(A)、KCNK3遺伝子(B)およびPYCARD遺伝子(C)のp53BS候補の位置および配列(灰色のバー)を転写開始部位に相対的に示す。エクソンおよびイントロンを、それぞれ白いボックスまたは太字のバーで示す。ヒトおよびマウスの配列ならびに相同性を示す。コンセンサスp53結合配列(RRRCWWGYYY;配列番号24、R:プリン、C:シトシン、W:アデニンまたはチミン、G:グアニン、Y:ピリミジン)と比較してマッチした、またはミスマッチしたヌクレオチドを、それぞれ大文字または小文字で示す。相同性をアスタリスクで示す。
(D)〜(F)Huh−7細胞をAd−LacZ、Ad−FLAG−p53は、Ad−FLAG−p63γまたはAd−FLAG−SHp53で感染させ、感染の24時間後に抗FLAG抗体またはコントロールIgGを用いてクロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイを行った。ChIPサンプルおよび10%のインプットDNAを、p53BS、CASP10−3090または+489(D)、KCNK3+1269または+1432(E)またはPYCAD+1269または+1432(F)をそれぞれ含む領域を標的にした特異的なプライマーで増幅した。
(G)〜(I)HuH−7細胞またはSW480細胞を、野生型p53BS(WT)または表示した部位が変異した配列(mut)を含むレポーター、またはFLAG−SHp53発現ベクターを有するまたはモック(−)のpGL3プロモーターの空ベクターでトランスフェクションした。ルシフェラーゼ活性を、デュアルルシフェラーゼアッセイシステムを用いて決定した。実験は3回行った。平均値および標準偏差を示す。モックでトランスフェクションした試料を1とした。**P<0.01
図23は、SHp53が特異的に結合する部位を持つ標的遺伝子を示す。
Huh−7細胞を、Ad−LacZ、Ad−FLAG−P53、Ad−FLAG−p63γまたはAd−FLAG−SHp53で感染させ、感染後24時間で抗FLAG抗体またはコントロールIgGを用いてクロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイを行った。ChIPサンプルおよび10%のインプットDNAを、各遺伝子のp53BSを含む領域を標的とした特異的なプライマーで増幅した。p53BSおよびプライマー配列を表5に記載した。
図24は、特定の標的遺伝子の発現制御によるスーパーハイブリッドp53のアポトーシスの誘導を示す。(A)〜(B)HuH−7細胞およびSW480細胞を、CASP10に特異的なsiRNA(siCASP10、A)、KCNK3に特異的なsiRNA(siKCNK3、B)またはPYCARDに特異的なsiRNA(siPYCARD、C)、またはコントロールsiRNAでトランスフェクションした。トランスフェクション後4時間で、細胞をAd−LacZ、Ad−FLAG−p53、Ad−FLAG−p63γまたはAd−FLAG−SHp53で感染させた。感染の24時間後に全RNAを単離し、各遺伝子の発現レベルをRT−PCRにより解析した(上)。感染の48時間後に、sub−G1の百分率をフローサイトメトリーによって分析した(下)。
(A)FLAG−SHp53およびRT−PCRプライマーの位置(矢印)の模式図を示す。ダークまたはライトグレーのバーは、p53およびp63に由来する配列をそれぞれ示す。(B)SW480細胞を、図13に記載する表示のFLAGタグ化したコンストラクトでトランスフェクションした。24時間トランスフェクションした後、全RNAを単離し、RT−PCRを行った。図14に表示のFLAG配列特異的フォワードプライマー、TP63配列プライマーならびにTP53特異的フォワードおよびリバースプライマーを、FLAG−TP63、TP53およびFLAG−TP53をそれぞれ検出するために用いた。(C)SW480細胞を、表示したベクターでトランスフェクションした。24時間トランスフェクションした後、全細胞ライセートを、表示した抗体を用いてウェスタンブロットにより解析した。
例7:がん細胞におけるスーパーハイブリッドp53の誘導
p53に基づく新規ながん治療のためのスクリーニングによって、p63γのTADおよびDBDならびにp53のOLDを組み合わせたp53ファミリーのハイブリッド遺伝子「63−53O」(図12A)が、強力な腫瘍抑制遺伝子であることを見出した。63−53Oハイブリッドのアデノウイルス(Ad)媒介遺伝子導入は、TP53AIP1のトランス活性化によって、in vitroおよびin vivoの両方においてアポトーシスを強く誘導した。
63−53Oハイブリッドのアポトーシス促進活性を増強させるため、一連のハイブリッド遺伝子の誘導体を作製した(図13、表6および図14)。いくつかのがん細胞において、p63γの1〜352番目のアミノ酸とp53の290〜393番目のアミノ酸を融合したハイブリッドが、p53、p63γまたは他のハイブリッド遺伝子と比較して、アポトーシスを強く誘導したことが示された(図12Eおよび図15)。
したがって、当該ハイブリッドを、「スーパーハイブリッドp53(SHp53)」と命名し、そのアポトーシス促進活性を評価するためにさらに分析を行った。SW480細胞を、FLAG−p53、FLAG−p63γ、FLAG−63−53OまたはFLAG−SHp53発現ベクターで感染させた。FLAG−SHp53のmRNAおよびタンパク質は、他の遺伝子と同様に発現し(図12Bおよび図12C)、同様のデータがHEK293細胞においても得られた。各タンパク質の細胞内局在は、免疫細胞化学によって分析した(図12D)。
図12Dに示すように、FLAG−p53、FLAG−p63γ、FLAG−63−53OおよびFLAG−SHp53は、核に局在した。NLSスコアと一致して、FLAG−SHp53の核移行が最も強く観察された(図12Aおよび図12D)。これら遺伝子のアデノウイルス媒介性導入によって誘導されたアポトーシス促進効果は、核移行およびNLSスコアと一致する傾向にあった(図13〜16)。これは、p53ファミリーおよびハイブリッド遺伝子の核移行が、アポトーシス促進機能に必要であることを示唆する。
アポトーシス性細胞死を示すsub−G1画分の増加は、Ad−FLAG−SHp53によって誘導され、それはTP53遺伝子型とは関係なく、ほとんどのがん細胞において他の分子よりも大きく誘導されることが、フローサイトメトリー分析で明らかになった(図12Eおよび図15)。63−53Oハイブリッドの標的であるTP53AIP1の発現もまた、Ad−FLAG−SHp53によって誘導され(図17)、TP53AIP1は、63−53OおよびSHp53の共通の標的であることが示された。これらデータは、Ad−SHp53が、アポトーシス促進活性を通じて、がん治療のための新規で潜在的な標的であることを示唆する。
Ad−SHp53のin vitroおよびin vivoのアポトーシス促進活性を確認するため、カスパーゼ−3活性およびPARP−1タンパク質の切断を測定し(図12F)、腫瘍形成の異種移植モデルで試験した(図12G)。カスパーゼ−3は、多様なアポトーシス経路における切断によって活性化し、活性化したカスパーゼ−3は、PARP−1を切断する。したがって、カスパーゼ−3およびPARP−1の切断は、アポトーシスの特徴とみなされる。
MKN−45、HuH−7、PANC−1およびSW480細胞のAd−FLAG−SHp53での感染は、カスパーゼ−3活性およびPARP−1切断の両方を最も大きく増加させた(図12F)。これは、アデノウイルス媒介のSHp53遺伝子導入が、がん細胞において強くアポトーシスを促進したことを確認するものである。
さらに、SHp53のin vivoにおける治療上の効果と相関するin vitroでのアポトーシスへの効果を測定するために、腫瘍形成の異種移植モデルにおいて、Ad−FLAG−SHp53ベクターの活性を調べた。SW480およびMKN−45細胞を、ヌードマウスに皮下注射した。腫瘍体積が一定の大きさに達したとき、アデノウイルスを1日目、2日目および3日目に腫瘍へ直接注射した(図12G、矢印)。
Ad−FLAG−SHp53とともに注射したSW480由来およびMKN−45由来の腫瘍体積は、Ad−LacZ、Ad−FLAG−p53またはAd−FLAG−p63γを注射した腫瘍体積よりも小さかった(図12G)。すなわち、これら結果は、アデノウイルス媒介のSHp53遺伝子導入が、p53耐性がん患者に対して有利であり、新規のがん遺伝子治療となり得ることを示す。
例8:スーパーハイブリッドp53によって誘導される遺伝子発現プロファイル
がん細胞におけるAd−FLAG−SHp53誘導アポトーシスの分子的基盤を明らかにするため、SHp53によって特異的に制御される標的遺伝子をスクリーニングした。最初に、TaqManに基づくハイスループットリアルタイムPCRであるTaqMan低密度アレイ(Low Density Array;LDA)を用いて、特にアポトーシスに関連する93種の既知のp53標的遺伝子の発現を調べた。TP53WT細胞(MKN−45細胞およびU−2 OS細胞)、ヌル細胞(G−292細胞)および変異細胞(HuH−7細胞およびSW480細胞)を、Ad−LacZ、FLAG−p53、FLAG−p63γおよびFLAG−SHp53で感染させ、感染の24時間後に遺伝子発現レベルを定量した。
Ad−FLAG−p53およびAd−FLAG−SHp53の導入では、p53の最も有名な標的遺伝子の一つであるCDKN1Aがそれぞれ同程度誘導されたが、いくつかのがん細胞において、18種の遺伝子(APOBEC2、AQP3、CASP10、CST11、EGR2、EGFR、IL2RB、JAG2、KCNA2、PGA5、PLCD4、PYCARD、SLCO2B1、TTYH2、ICAM2、TNXB、TP73およびLRDD)が、Ad−FLAG−SHp53の導入によって、有意に高い誘導を示した(図17、図18A、および図19〜21)。
第二のアプローチでは、SHp53によって制御される遺伝子をゲノムワイドにスクリーニングするため、Ad−LacZ、Ad−FLAG−p53、Ad−FLAG−p63γまたはAd−FLAG−SHp53で感染したHuH−7細胞において、27,958種のEntrez gene RNAおよび7,419種のlincRNAを含む遺伝子発現マイクロアレイ(Agilent Technologies社)で解析を行った。Ad−FLAG−p53、Ad−FLAG−p63γおよびAd−FLAG−SHp53でそれぞれ感染したすべての細胞において、CDKN1Aの発現上昇が検出された(図18A)。これは、LDAの結果とも一致する(図21)。
総遺伝子数だけではなく、Ad−FLAG−SHp53感染によって特異的に発現上昇した遺伝子数が、Ad−FLAG−p53またはAd−FLAG−p63γ感染によって発現上昇した遺伝子数よりも多かった。これは、FLAG−SHp53が、FLAG−p53またはFLAG−p63γとは異なるトランス活性化活性を得たことを示唆する(図18B)。階層的クラスタリング解析は、FLAG−SHp53特異的に発現上昇した238種の遺伝子を同定した(図18Cおよび表7)。
表7は、階層的クラスタリング解析によって同定されたFlag−SHp53特異的に制御される遺伝子を示す。
興味深いことに、Ad−FLAG−p53、Ad−FLAG−p63γまたはAd−FLAG−SHp53の感染によって誘導された遺伝子発現のパターンは、HuH−7細胞においてそれぞれ異なっていた。これは、Ad−FLAG−SHp53が、DNA結合ドメインはp63γに由来するが、新規なトランス活性化活性を有することを示唆する。FLAG−SHp53の推定標的遺伝子群を得るために、Ad−FLAG−SHp53の導入によって誘導される遺伝子であって、Ad−FLAG−p53またはAd−FLAG−p63γよりも少なくとも10倍発現量の多い遺伝子を抽出した。FLAG−SHp53によって発現上昇する潜在的な遺伝子として、64種の遺伝子が同定された(図18Cおよび表8)。
表8は、マイクロアレイ解析によって同定された推定Flag−SHp53遺伝子を示す。
第三のアプローチでは、SHp53特異的に発現上昇する遺伝子をさらにゲノムワイドに同定するために、Ad−LacZ、Ad−FLAG−p53、Ad−FLAG−p63γまたはAd−FLAG−SHp53で感染したHuH−7細胞において、活性型の遺伝子プロモーターを標識する抗H3K4me3抗体を用いてクロマチン免疫沈降シーケンス(ChIP−seq)解析を行った。ChIP−seq解析は、57種のFLAG−SHp53特異的なH3K4me3標識化RefSeq遺伝子を同定した(表9)。TTYH2を除いて、他の56種の遺伝子を、Ad−FLAG−SHp53の導入によって発現上昇する遺伝子候補としてさらに同定した。
表9は、Ad−Flag−SHp53導入細胞において特異的に検出されたH3K4me3標識化遺伝子のリストである。
SHp53によって転写的に制御され得る遺伝子を同定するために、これら遺伝子におけるp53結合部位(BS)を3種のスクリーニングアプローチで同定し、p53スキャンアルゴリズム(Smeenk et al., 2008)を用いてin silico解析で探索した後、図18Dに示すように2つの独立した基準によって選別した。コンセンサスp53BSは、0〜21bpのスペーサー配列で区切られた10bpのモチーフ(RRRCWWGYYY;配列番号24)の2つのコピーからなる(R:アデニンまたはグアニン、C:シトシン、W:アデニンまたはチミン、G:グアニン、Y:シトシンまたはチミン)。よく保存されたCまたはGを変更することは、p53に対する応答性を劇的に減少させ得るため (Menendez et al., 2009)、これらコアC/Gを保存したp53BSを精製した(図18D)。スペーサー長のバリエーションが特定のレベルの機能を維持するために重要なメカニズムであることもまた示唆されており、実際、検証されたヒトp53BSのほとんどが、3塩基より小さいスペーサーを有している (Menendez et al., 2009)。
したがって、0〜2塩基のスペーサーを有するp53BSを選択した。さらに、転写開始部位(TSS)からのp53BSの位置および距離は、任意の推定p53BSを受け入れるための閾値を決定するのに役立つ。遺伝子におけるp53BSは、最も一般的には、遺伝子の5’プロモーター−エンハンサー領域またはイントロン1に位置し、DNAにおける機能的低親和性p53BSはTSSの周りにのみ存在する (Riley et al., 2008)。したがって、遺伝子のTSSの−5kbpと+10kbpとの間に位置するp53BSを選択した。
別のアプローチとして、ヒトゲノムおよびマウスゲノムの配列比較解析は推定p53BSの検索に役立つことから (Maruyama et al., 2006)、オーソロガス遺伝子におけるヒトとマウスとの間の保存性をコンピューター検索に適用した。これとともに、推定SHp53標的遺伝子を同定するために2つの基準を適応した。
遺伝子は、1)TSSの−5kbpと+10kbpとの間に位置し、完全に保存されたコアC/G、3以下のミスマッチ、および2以下のスペーサーを含むp53BS、ならびに2)TSSの−5kbpと10kbpとの間に位置し、完全に保存されたコアC/G、5以下のミスマッチ、およびオーソロガス遺伝子におけるヒトとマウスとの間の50%以上の相同性を含むp53のBSを有していた(図18C)。これらアプローチを使用して、63種のSHp53特異的標的遺伝子候補における133箇所の推定p53BSを同定した(図18Dおよび表10)。
表10は、スーパーハイブリッドp53の標的遺伝子候補を示す。
略記:p53BS、p53結合部位;ChIP+、結合;ChIP−、非結合;N.A.、未評価;ChIP−seq、クロマチン免疫沈降−配列決定;LDA、TaqMan低密度アレイ
例9:スーパーハイブリッドp53による特定の標的遺伝子トランス活性化の制御
in silico解析によって予測されたp53BSへ直接結合することによって、これら候補遺伝子がSHp53によって転写的に制御されたかを評価するために、HuH−7細胞を、Ad−LacZ、Ad−FLAG−P53、Ad−FLAG−p63γまたはAd−FLAG−SHp53に感染させ、抗FLAG抗体を用いてChIP解析を行った。63種のSHp53特異的標的遺伝子のうち、細胞増殖、アポトーシスに関与していることが報告されている26種において、コンピューター予測によって同定されたp53BS候補を含むDNA断片に対してのFLAG−SHp53タンパク質特異的な相互作用を評価し、19種の遺伝子において確認がされた。これは、これらアプローチが機能的p53BSの検索において信頼できるものであることを示唆する(表10、図22および図23)。
さらに、これらp53BSが転写制御に関与し得るかどうかを決定するために、ChIP解析によって確認されたAPOBEC2、CASP10およびPYCARDのWTp53BSを含むオリゴヌクレオチド、または非活性型変異体(mut)を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流にクローニングした。その後、得られたコンストラクトを、FLAG−SHp53有りまたは無しで、TP53変異を有するHuH−7細胞またはSW480細胞にトランスフェクションした。変異の配列とは異なり、WTp53BSは、レポーターコンストラクトにFLAG−SHp53に応答性を与え、これは、モックトランスフェクションした細胞と比較しても少なくとも2倍のルシフェラーゼ活性の増加となる(図22)。図18Aに示すように、これら遺伝子のAd−FLAG−SHp53特異的な誘導が、リアルタイムPCRによって確認された(図18A)。つまり、これら知見は、ゲノムワイドなスクリーニングによって同定されたSHp53特異的に発現上昇した遺伝子のほとんどが、p53BSに直接結合することによって転写的に制御され得ることを示唆する(表10)。
例10:スーパーハイブリッドp53は特定の標的遺伝子の発現を制御することによりアポトーシスを誘導する
いくつかのがん細胞において、Ad−SHp53がアポトーシスおよびを特定の標的遺伝子の転写を強く誘導したことから(図12Aおよび図18A)、ハイブリッドが、SHp53特異的標的遺伝子のトランス活性化を介してアポトーシス促進活性を獲得したと考えた。この考えを評価するために、SHp53特異的にトランス活性化した遺伝子をノックダウンし、フローサイトメトリーでAd−SHp53媒介アポトーシスを解析した。
HUH−7細胞、SW480細胞を、Ad−LacZ、AD−FLAG−p53、Ad−FLAG−SHp63γまたはAD−FLAG−SHp53で感染した後、ヒトCASP10、KCNK3、SEZ6、SLCO2BもしくはPYCARDを含むFLAG−SHp53特異的に制御された遺伝子を標的とするsiRNAまたはコントロールsiRNAでトランスフェクションした。SEZ6またはSLCO2Bとは異なり、CASP10、KCNK3およびPYCARDがアポトーシス応答性遺伝子として同定された(図24)。コントロールsiRNAでトランスフェクションした細胞における他のアデノウイルスと比較して、CASP10、KCNK3またはPYCARDがAd−FLAG−SHp53の導入によって強く誘導された一方で、RT−PCR分析は、これらの3種の遺伝子の発現上昇が、各siRNA媒介のノックダウン細胞において50%以上阻害されたことを実証した(図24、上段)。
PYCARD遺伝子には、エクソン1、2および3ならびにエクソン1および2からなる2種の選択的スプライシングバリアントがあるところ、短い型の発現がAd−FLAG−SHp53の導入によって有意に誘導された。これは、FLAG−SHp53が、短い型のPYCARDのみをトランス活性化することを示唆する。コントロールsiRNAでトランスフェクションした細胞において、Ad−FLAG−SHp53の導入によって誘導されたアポトーシス性細胞死を示すsub−G画分における増加は、Ad−LacZ、Ad−FLAG−p53またはAd−FLAG−63γのものより大きく、図12Eと一致する(図12Eおよび図24、下段)。Ad−FLAG−SHp53で誘導されるアポトーシスは、CASP10、KCNK3またはPYCARDをノックダウンした細胞において有意に抑制されたが、Ad−FLAG−p53またはAd−FLAG−p63γで誘導されるアポトーシスは、これらsiRNAのトランスフェクションによっては影響を受けなかった(図24、下段)。これらデータは、Ad−FLAG−SHp53は、CASP10、KCNK3およびPYCARDなどのアポトーシス促進性遺伝子を介してアポトーシスを誘導することを示唆する。
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以上に述べたとおり、本発明のp53ファミリーのキメラ遺伝子および/またはキメラタンパク質を含む遺伝子発現誘導剤などによって、腫瘍細胞の増殖を抑制することができ、p53遺伝子治療を改善する医薬などの提供を可能とする。

Claims (16)

  1. p63由来の転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含むN末端側領域と、p53由来のオリゴマー化ドメインを含むC末端側領域とを含むキメラタンパク質および/もしくはその機能的変異体、および/または、前記キメラタンパク質もしくはその機能的変異体をコードする核酸分子を含む、p53AIP1、CASP10、KCNK3およびPYCARDからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現誘導剤。
  2. キメラタンパク質が、配列番号162のアミノ酸配列を含む転写活性化ドメイン、配列番号166のアミノ酸配列を含むDNA結合ドメイン、および配列番号180のアミノ酸配列を含むオリゴマー化ドメインを含む、請求項1に記載の遺伝子発現誘導剤。
  3. キメラタンパク質が核移行シグナルまたはその部分配列を含む、請求項1または2に記載の遺伝子発現誘導剤。
  4. キメラタンパク質が、配列番号140、142、144、146、148、150、152、154、156、158および160のいずれかのアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の遺伝子発現誘導剤。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の遺伝子発現誘導剤を含む、アポトーシス誘導剤。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の遺伝子発現誘導剤を含む、医薬組成物。
  7. 細胞増殖性疾患の処置のための、請求項6に記載の医薬組成物。
  8. p63由来の転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含むN末端側領域と、p53由来のオリゴマー化ドメインを含むC末端側領域とを含むキメラタンパク質もしくはその機能的変異体、および/または、前記キメラタンパク質もしくはその機能的変異体をコードする核酸分子を、in vitroまたはex vivoで細胞に投与すること含む、アポトーシス関連遺伝子の発現誘導方法。
  9. p63由来の転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含むN末端側領域と、p53由来のオリゴマー化ドメインを含むC末端側領域とを含むキメラタンパク質もしくはその機能的変異体、および/または、前記キメラタンパク質もしくはその機能的変異体をコードする核酸分子を、in vitroまたはex vivoで細胞に投与すること含む、アポトーシス誘導方法。
  10. KCNK3タンパク質および/もしくはその機能的変異体、および/または、前記タンパク質もしくはその機能的変異体をコードする核酸分子を含む、アポトーシス誘導剤。
  11. KCNK3タンパク質および/もしくはその機能的変異体、および/または、前記タンパク質もしくはその機能的変異体をコードする核酸分子を含む、細胞増殖性疾患の処置のための医薬組成物。
  12. KCNK3タンパク質および/もしくはその機能的変異体、および/または、前記タンパク質もしくはその機能的変異体をコードする核酸分子を、in vitroまたはex vivoで細胞に投与すること含む、アポトーシス誘導方法。
  13. 配列番号140、142、144、146、148、150、154、156、158および160のいずれかのアミノ酸配列を含む、キメラタンパク質もしくはその機能的変異体。
  14. 請求項13に記載のキメラタンパク質もしくはその機能的変異体をコードする核酸分子。
  15. 請求項14に記載の核酸分子を含む核酸構築物またはベクター。
  16. 請求項14に記載の核酸分子、および/または、請求項15に記載の核酸構築物および/またはベクターを含む組成物。
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