JP2015223562A - 微量液体移送デバイス - Google Patents

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Takeshi Okumura
剛 奥村
厚輝 神谷
Koki Kamiya
厚輝 神谷
竜司 川野
Ryuji Kawano
竜司 川野
茉莉 谷
Mari Tani
茉莉 谷
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Abstract

【課題】本発明は、基板上において微量液体を移送するための微量液体移送デバイスであって、その移送にマイクロポンプを利用しない微量液体移送デバイスや、該デバイスを用いた微量液体の移送方法や、該デバイスの製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】(a)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、(b)前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、(c)前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を用いる。【選択図】図4

Description

本発明は、基板上において微量液体を移送するための微量液体移送デバイスであって、その移送にマイクロポンプを利用しない微量液体移送デバイスや、該デバイスを用いた微量液体の移送方法や、該デバイスの製造方法に関する。
1990年台の後半頃から、超微細加工技術の進歩により、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、センサーなど)を微細化して1つの基板上に集積化したシステムの開発が進められている。このようなシステムは、マイクロ総合分析システム(Micro-Total Analysis Systems: Micro-TAS:μ−TAS)、マイクロバイオリアクターシステム、ラブ・オン・チップ(Lab-on-chips)などとも呼ばれ、医療検査、医療診断分野、生化学分野、化学分野などでその応用が進められている。DNAチップやタンパク質チップはその典型的な例である。μ−TASを利用することにより、従来は煩雑な操作や、熟練した技術が必要とされていた分析が、高度に自動化、高速化、簡便化され、その結果、分析に必要な試料量はもちろん、分析に要する時間や手間が大幅に削減されている。
μ−TASのような、微量の液体を基板上の微細流路で移送させることを伴う技術分野においては、従来、特許文献1、2や3に記載されているように、微細流路の端部の開口部以外は閉じた管状の毛管(すなわち、蓋のある閉毛管)が微細流路として用いられ、しかも、微量液体を基板上の所望の部位まで送液して複数種の少量液体を混合するためには、電気エネルギー等を利用したマイクロポンプが用いられていた。
従来の技術では、上記のような、蓋のある閉毛管の微細流路を構成するために、代表的な2つの方法がある。
第1の方法は、リソグラフィー技術及び微細加工技術によって、まず、蓋の無い開毛管の微細流路を作製するための「鋳型」を製造し、その「鋳型」を鋳型としてポリジメチルシロキサン(PDMS)ゲルで開毛管の微細流路を有する基板を作製した後、その開毛管の微細流路に「蓋」を接着する方法である(以下、この方法を「PDMSリソグラフィー・モールド法」とも表示する。)。この方法は、一度鋳型を作製すれば、それを利用して閉毛管の微細流路を有する基板を比較的容易に量産することができるという利点があるが、鋳型を作製する際に必要となるリソグラフィー装置が非常に高額であり、また工程も複雑であるという欠点があった。
第2の方法は、微細ミル加工装置を用いて、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂などの基板上に溝を直接掘って開毛管の微細流路を形成した後、その開毛管の微細流路に「蓋」を接着する方法である(以下、この方法を「PMMAミル加工法」とも表示する。)この方法に用いる微細ミル加工装置は、前述のリソグラフィー装置よりも安価であり、また、リソグラフィー装置のようにクリーンルームでの使用が必須ともされていないため、簡便に利用することができるという利点がある。また、計算機数値コントロール(CNC)を備えた微細ミル加工装置を利用すると、非常に手軽かつ正確に加工することもできる。しかし、このPMMAミル加工法では、開毛管の微細流路を閉じるための蓋の接着方法について、PDMSリソグラフィー・モールド法における蓋の接着方法のような確立された接着方法がなく、熟練した技術者でないと、蓋のある閉毛管の微細流路を作製することは難しいという欠点があった。
また、従来の蓋及びマイクロポンプを備えた閉毛管の微細流路において液体試料を移送する場合、液体試料の無駄を少なくするために、微細流路を細くすることが考えられるが、微細流路を細くすれば細くするほど、液体試料の粘性の影響が大きくなって、より強力なマイクロポンプでより強力な圧力を生じさせて液体試料の移送を行う必要が生じたり、場合によっては、マイクロポンプの最大出力がネックとなって、液体試料の移送ができないという欠点があった。このような粘性の比較的高い液体試料として、無細胞タンパク質合成に用いる液体が挙げられる。無細胞タンパク質合成技術とは、大腸菌等の細胞を直接使用せず、細胞内の酵素やアミノ酸などを利用してタンパク質を合成する技術であり、近年、注目が高まってきている。
特開2007−322284号公報 国際公開2007/105584号パンフレット 特開2005−114430号公報
本発明の課題は、基板上において微量液体を移送するための微量液体移送デバイスであって、その移送にマイクロポンプを利用しない微量液体移送デバイスや、該デバイスを用いた微量液体の移送方法や、該デバイスの製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行ったところ、基板上において微量液体を移送するための微量液体移送デバイスにおいて、その基板上の微細流路を蓋のある閉毛管ではなく、蓋の無い溝状の開毛管とすることにより、従来の閉毛管の微細流路で用いられていたマイクロポンプを利用することなく、毛管力を利用して液体を液体供給部から液体移送目的部まで移送できることを見いだした。閉毛管の微細流路の場合も毛管力は生じるが、液体が閉毛管内をある方向に進むと、その分だけ進行方向の先の空間が狭まって圧力が上がり、進行方向逆側の空間が広がって圧力が下がるため、その圧力差により液体を進行方向逆側へ押し戻す力が発生し、マイクロポンプを利用しないと液体を移送することができない。液体が、蓋の無い溝状の開毛管内を毛管力により移動すること自体は、これまでに知られていたが、基板上において微量液体を移送するための微量液体移送デバイスという、移送の精度や正確性の要求される技術分野においては、マイクロポンプの利用が必須であることは当然と理解されており、毛管を用いた微量液体移送デバイスの分野において、マイクロポンプを利用しない微量液体移送デバイスを作製するという課題や発想自体が従来なかったものである。したがって、蓋のある閉毛管に代えて、蓋の無い開毛管を用いるという動機はもちろんのこと、そのような発想自体が、本技術分野の当業者には全くなかったものである。
また、マイクロポンプを利用する従来の微量液体移送デバイスでは、特に微細流路を細くした場合、微細流路が細くなるほど粘性抵抗が大きくなるために、粘性の高い液体の移送が困難であったが、本発明の蓋の無い溝状の開毛管を微細流路とする微量液体移送デバイスでは、微細流路が細くなるほどその力が増す毛管力を利用するため、そのような粘性の高い液体であっても、容易に移送することができることを本発明者らは見いだした。
また、蓋の無い溝状の開毛管を利用する本発明の微量液体移送デバイスは、PMMAミル加工法で熟練した技術が必要とされている、開毛管の微細流路を閉じるための蓋の接着工程が不要であるため、PDMSリソグラフィー・モールド法よりも手軽で簡便なPMMAミル加工法を利用して、より簡便に、かつ、特に熟練した技術を要することなく、製造することができることを本発明者らは見いだした。
さらに、本発明者らは、横断面が縦長の長方形形状である溝状の微細流路における毛管吸引の動力学を詳細に調べたところ、溝状の開毛管に対する液体の浸透距離(液体が毛管内を進む距離)zが以下の数式(I)で導かれることを理論的に見いだした。
z=k(γcosθwt/(3η))1/2 (I)
(ただし、zが浸透距離(mm)であり、tが経過時間(秒)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ηが液体の粘性(mPa・s)であり、wが微細流路の幅(mm)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、kが0.4〜0.7の範囲内の値である。)
また、上記数式(I)の関係は、溝状の微細流路の幅が0.5mm以下、その深さが幅の2倍以上の場合に特に精度よく成立することを、本発明者らは理論的にも実験的にも確認した。
また、本発明者らは、上記数式(I)の関係を利用すれば、液体の浸透距離などを事前に予測でき、その予測を微量液体移送デバイスの設計の大きな指針とすれば、試行錯誤をほとんど要さずに複雑な微細流路の設計も容易に行うことができることを見いだした。
本発明者らは以上のことなどを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は
(1)基板上において微量液体を移送するための微量液体移送デバイスであって、前記微量液体移送デバイスが基板を備え、前記基板上に、
(a)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
(b)前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
(c)前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを備え、
前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされることを特徴とする微量液体移送デバイスや、
(2)微細流路の溝の横断面が、略上向きコの字形状であることを特徴とする上記(1)に記載の微量液体移送デバイスや、
(3)微細流路の幅が0.03mm〜3mmの範囲内であり、深さが0.06mm〜15mmの範囲内であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の微量液体移送デバイスや、
(4)微細流路の深さの、幅に対する比が、1〜12の範囲内であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の微量液体移送デバイスや、
(5)液体供給部から液体移送目的部までの微細流路の長さ(mm)の値が、以下の数式(I)により算出されるz(浸透距離)の値(mm)以下になるように、微細流路の長さ(mm)及び/又は幅(mm)が調整されたことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の微量液体移送デバイス:
z=k(γcosθwt/(3η))1/2 (I)
(ただし、zが浸透距離(mm)であり、tが経過時間(秒)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ηが液体の粘性(mPa・s)であり、wが微細流路の幅(mm)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、kが0.4〜0.7の範囲内の値である。):や、
(6)微細流路の平面視の形状が一直線状であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の微量液体移送デバイスに関する。
また、本発明は
(7)上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の微量液体移送デバイスを用いた微量液体の移送方法であって、
(A)前記微量液体移送デバイスにおける1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部に、1種又は2種以上の液体を供給する工程A:
を含むことを特徴とする微量液体の移送方法や、
(8)さらに、(B)微量液体移送デバイスにおける1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部で、2種以上の液体を混合させる工程B:
を含むことを特徴とする上記(7)に記載の微量液体の移送方法や、
(9)さらに、(a1)微量液体移送デバイスにおける1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部に、1種又は2種以上の液体を供給する工程a1:及び、
(b1)液体供給部に供給した前記液体と、液体移送目的部に供給した液体とを、液体移送目的部で混合させる工程b1:
を含むことを特徴とする上記(7)に記載の微量液体の移送方法や、
(10)以下の数式(I)により算出されるz(浸透距離)の値(mm)が、液体供給部から液体移送目的部までの微細流路の長さの値(mm)以上になるように、移送に要する経過時間t(秒)、液体の表面張力(mN/m)及び液体の粘性(mPa・s)から選択される1種又は2種以上を調整されたことを特徴とする上記(7)〜(9)のいずれか1つに記載の微量液体の移送方法:
z=k(γcosθwt/(3η))1/2 (I)
(ただし、zが浸透距離(μm)であり、tが経過時間(秒)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ηが液体の粘性(mPa・s)であり、wが微細流路の幅(μm)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、kが0.4〜0.7の範囲内の値である。)に関する。
さらに、本発明は
(11)基板上において微量液体を移送するための微量液体移送デバイスの製造方法であって、
(X)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製する工程X:
を含み、
前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされ得る、微量液体移送デバイスの製造方法や、
(12)工程Xが、
(x1)基板を用意する工程x1:及び、
(x2)前記基板上に、
1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを設ける工程x2:
を含み、
前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされ得る、上記(11)に記載の微量液体移送デバイスの製造方法や、
(13)工程Xが、
(x3)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製するための鋳型を製造する工程x3:及び、
(x4)工程x3で製造した鋳型に基板材料を供給することによって、
1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製する工程x4:
を含み、
前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされ得る、上記(11)に記載の微量液体移送デバイスの製造方法に関する。
また、本発明は
(14)上記(6)に記載の微量液体移送デバイスと、以下の数式(II)又は(III)を利用することを特徴とするパラメーターの算出方法であって、
=2γcosθ/(ρgw) (II)
(ただし、zが最高到達高さ(mm)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ρが液体の密度(g/cm)であり、gが重力加速度(m/s)であり、wが微細流路の幅(mm)であり、θが開毛管壁と液体の接触角である。):
η=4kγcosθwt/(3z (III)
(ただし、ηが液体の粘性が(mPa・s)であり、kが0.4〜0.7の範囲内の値であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、wが微細流路の幅(mm)であり、tが、液体が前述の最高到達高さzの半分の高さに到達するまでの時間(秒)であり、zが液体の最高到達高さ(mm)である。):
(P)数式(II)又は(III)の数式に含まれるパラメーターのうち、1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定する工程P:及び、
(Q)工程Pで調べた又は測定した値を数式(II)又は(III)の数式に代入し、前記1つのパラメーターの値を算出する工程Q:
を含むことを特徴とするパラメーターの算出方法や、
(15)(R)数式(II)及び(III)のうち、工程P及び工程Qで用いていない方の数式を選択する工程R:
(S)工程Rで選択した数式のパラメーターのうち、1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定する工程S:及び、
(T)工程Sで調べた又は測定した値を、工程Rで選択した数式に代入し、工程Sにおける1つのパラメーターの値を算出する工程T:をさらに含み、
前記工程Sにおける1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定することが、工程Qで算出したパラメーターの値を用いることを特徴とする上記(14)に記載のパラメーターの算出方法に関する。
本発明の微量液体移送デバイスによれば、マイクロポンプを利用せずに、基板上において微量液体を移送することができる。本発明の微量液体移送デバイスは、マイクロポンプを利用しないため、より単純でより安価なデバイスとすることができる。
また、マイクロポンプを利用する従来の微量液体移送デバイスでは、特に微細流路を細くした場合、微細流路が細くなるほど粘性抵抗が大きくなるために、粘性の高い液体(例えば、無細胞タンパク質合成に用いる液体、膵液、血液など)の移送が困難であったが、本発明の蓋の無い溝状の開毛管を微細流路とする微量液体移送デバイスでは、微細流路が細くなるほどその力が増す毛管力を利用するため、そのような粘性の高い液体であっても、容易に移送することができる。したがって、病原微生物検査用の簡易デバイスや、酵素反応検査用デバイスといった分野への応用も可能である。
また、本発明の微量液体移送デバイスは、微細ミル加工法を用いた場合は、従来の蓋のある管状の閉毛管を利用する微量液体移送デバイスと比較して、より簡便に、かつ、特に熟練した技術を要することなく製造することができる。
さらに、本発明の微量液体移送デバイスは、上記数式(I)の関係式を利用することにより、液体の浸透距離などを事前に予測でき、その予測を利用すれば、試行錯誤をほとんど要さずに複雑な流路の設計も容易に行うことができる。
本発明の微量液体移送デバイスの一実施形態(6本の直線状の微細流路(溝状の開毛管流路)を備えた微量液体移送デバイス)において、下端の液体供給部に液体を供給した後、液体が微細流路を移動していく様子を経時的に示した平面図である。「10s」は液体供給から10秒後の様子であり、「1min」は液体供給から1分後の様子であり、「30min」は液体供給から30分後の様子であり、「240min」は液体供給から240分後の様子である。各時間における下の矢印は液体の先端を表す。なお、各時間における上の矢印は、液面に先行して伸びる液体の薄膜の先端を表す。 上パネルは、本発明の微量液体移送デバイスの一実施形態を示した平面図である。円形のS1及びS2は液体供給部であり、正方形のMは液体移送目的部であり、C1及びC2の黒線は溝状の開毛管流路である微細流路である。下パネルは、図2上パネルの本発明の微量液体移送デバイスの微細流路の液体供給部及び微細流路の深さを表す側面断面図である。液体供給部の深さは2.0mmであり、微細流路及び液体移送目的部の深さは0.6mmである。 GFP発現用の無細胞タンパク溶液を構成する2種類の液体を、図2の本発明の微量液体移送デバイスの2箇所の液体供給部に供給し、両液体が液体移送目的部で混合した後、該液体移送目的部においてGFP蛍光を経時的に観察した結果を示す図である。上パネルは混合から15分後の結果であり、中央パネルは20分後の結果であり、下パネルは20.33分後の結果を示す。 本発明の微量液体移送デバイスの別の実施形態を示した平面図である。左端の白抜きの円形が液体供給部であり、右端の4つの黒塗りの正方形が液体移送目的部であり、液体供給部と液体移送目的部を結ぶ黒線は、溝状の開毛管流路である微細流路である。 本発明の微量液体移送デバイスのさらに別の実施形態を示した平面図である。左端の白抜きの円形が液体供給部であり、右端の4つの黒塗りの円形が液体移送目的部であり、液体供給部と液体移送目的部を結ぶ黒線は、溝状の開毛管流路である微細流路である。 図4及び図5の本発明の微量液体移送デバイスの微細流路の液体供給部、微細流路及び液体移送目的部の深さを表す側面断面図である。液体供給部の深さは0.3mmであり、微細流路の深さは0.6mmであり、液体移送目的部の深さは1.2mmである。また、本発明者らは、液体移送目的部の深さが1.7mmのものも作製した。 図4の本発明の微量液体移送デバイスにおいて、液体供給部に供給したBTB溶液が微細流路を流れていき、移送目的部に到達して反応が生じた様子を経時的に示した図である。上パネルは、液体供給部に供給してから0.73秒後の様子であり、中央パネルは、4.30秒後の様子であり、下パネルは7.97秒後の様子である。
(微量液体移送デバイス)
基板上において微量液体を移送するための微量液体移送デバイス(以下、「本発明の微量液体移送デバイス」とも表示する。)としては、基板を備えており、前記基板上に、(a)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
(b)前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
(c)前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを備え、
前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされるものである限り特に制限されない。
本発明における基板の形状としては、基板上(好ましくは基板の表面上)に、後述するような液体供給部、液体移送目的部及び微細流路を備えている限り特に制限されないが、微細流路の形成や、液体の移送の行い易さ等の観点から、それら液体供給部、液体移送目的部、微細流路の部分を除いて、平板状であることが好ましく挙げられ、例えば、縦1mm〜30cmの範囲内、横1mm〜30cmの範囲内、厚さ0.5〜3cmの範囲内の、平面視略四角形状の平板が好ましく挙げられる。
上記基板の材質としては、特に制限されず、硬質塩化ビニール樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、メチルペンテン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等の樹脂や、アルミニウム、真鍮、鉄、銅、ステンレス、チタン合金、マグネシウム合金、ジュラルミン等の金属、ガラス、セラミックスなどが挙げられるが、微細流路の形成の行い易さ等の観点から、硬質塩化ビニール樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、メチルペンテン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等の樹脂が好ましく挙げられ、中でもアクリル樹脂がより好ましく挙げられ、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂が特に好ましく挙げられる。また、基板をリソグラフィー・モールド法を用いて製造する場合は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)樹脂が好ましく挙げられる。上記基板に用いる材質は、1種であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記基板上の液体供給部としては、微細流路に連通している凹状の部分であり、かつ、該部分に液体を供給すると微細流路に液体が供給される部分である限り、その形状や材質について特に制限されず、かかる凹状の液体供給部の形状としては、平面視で例えば略四角形状や略円形状の形状を挙げることができ、横断面で例えば略四角形形状の凹形状や、円や楕円の弧の一部である凹形状を挙げることができる。液体供給部の深さは、該液体供給部に液体を供給すると微細流路に液体が供給される限り特に制限されないが、液体供給部に供給した液体がより効率的に微細流路に供給されるように、液体供給部の深さがそれに隣接する微細流路の深さよりも浅いことが好ましい。
液体供給部の平面視の面積や深さとしては、液体供給部から液体移送目的部への液体の移送が可能な限り特に制限されないが、かかる面積として例えば0.01〜400mmの範囲内を挙げることができ、1〜100mmの範囲内を好ましく挙げることができ、かかる深さとして例えば0.05〜14.95mmの範囲内を挙げることができ、中でも、より好適な液体移送を実現する観点から、0.08〜12.45mmの範囲内を好ましく挙げることができ、0.17〜9.95mmの範囲内をより好ましく挙げることができ、0.17〜4.95mmの範囲内をさらに好ましく挙げることができ、0.17〜1.95mmの範囲内をより好ましく挙げることができる。
上記基板上の液体移送目的部としては、微細流路に連通している凹状の部分であり、かつ、液体供給部に液体を供給すると液体が微細流路を経て到達する部分である限り、その形状や材質について特に制限されず、かかる凹状の液体移送目的部の形状としては、平面視で例えば略四角形状や略円形状の形状を挙げることができ、横断面で例えば略四角形形状の凹形状や、円や楕円の弧の一部である凹形状を挙げることができる。なお、液体移送目的部の平面視の形状が正方形等の略四角形状の場合は、略円形状の場合よりも、液体が液体移送目的部へ同時に到達するという、液体到達の同時性の点で優れており、一方、液体移送目的部の平面視の形状が、円形等の略円形状の場合は、略四角形状の場合よりも液体移送目的部での液体混合後の微細流路への逆流が生じにくい点で優れている。液体移送目的部の深さは、液体供給部に液体を供給すると液体が微細流路を経て到達する限り特に制限されないが、液体供給部に供給した液体が微細流路を経てより効率的に液体移送目的部に到達するように、液体移送目的部の深さがそれに隣接する微細流路の深さよりも深いことが好ましい。また、液体移送目的部の深さが、それに隣接する微細流路の深さよりも深いと、液体供給部に加えて液体移送目的部にも液体を供給する場合に、液体が微細流路に逆流しにくくなる点でも好ましい。
液体移送目的部の平面視の面積や深さとしては、液体供給部から液体移送目的部への液体の移送が可能な限り特に制限されないが、かかる面積として例えば0.01〜400mmの範囲内を挙げることができ、1〜100mmの範囲内を好ましく挙げることができ、かかる深さとして例えば0.07〜15.05mmの範囲内を挙げることができ、中でも、より好適な液体移送を実現する観点から、0.12〜12.55mmの範囲内を好ましく挙げることができ、0.22〜10.05mmの範囲内をより好ましく挙げることができ、0.22〜5.05mmの範囲内をさらに好ましく挙げることができ、0.22〜2.05mmの範囲内をより好ましく挙げることができ、0.33〜1.55mmの範囲内をさらに好ましく挙げることができる。
上記基板上の微細流路は、液体供給部から液体移送目的部へと液体を移送させるためのものであり、該微細流路としては、液体供給部から液体移送目的部へと連通する、蓋の無い溝状の毛管(すなわち、溝状の開毛管)の流路であって、液体の移送が毛管力を利用してなされる限り、その平面視の形状や横断面の形状等の形状、あるいは材質などについて特に制限されない。
微細流路の平面視の形状としては、液体供給部から液体移送目的部への液体の移送が可能な限り特に制限されず、平面視で一直線状の微細流路のみから構成されていてもよいし、平面視で直線状の微細流路の組合せで構成されていてもよいし、曲線状の微細流路の組合せで構成されていてもよいし、直線状の微細流路と曲線状の微細流路の組合せで構成されていてもよく、例えば微細流路の分岐点付近などは、円弧形状などの曲線状の微細流路で流路が滑らかにつながるように構成されていると、液体がよりスムーズに分岐点を通過するため好ましい。一方、ある場所で液体を止めたい場合は、微細流路の先端を例えばT字状に分岐させるなどして、液体の移動が止まるように設計することにより、液体の進行を制御することもできる。また、微細流路は、1箇所の液体供給部から2箇所以上の液体移送目的部へ連通していてもよいし、2箇所以上の液体供給部から1箇所の液体移送目的部へ連通していてもよいし、2箇所以上の液体供給部から2箇所以上の液体移送目的部へ連通していてもよい。また、微細流路は、液体供給部から液体移送目的部に至る途中で、2以上の微細流路に分岐してもよいし、他の微細流路と合流してもよい。また、液体移送目的部は、さらに別の液体移送目的部へと連通する微細流路を有していてもよい。なお、微細流路の平面視の形状の好適な態様の1つとして、例えば図4や図5のように、1本の微細流路が2本に分岐するということがn回繰り返されて、1箇所の液体供給部に対して2箇所(ただしnは1以上の整数であり、好ましくは1〜5の範囲内の整数である)の液体移送目的部へと連通する態様の微細流路を備えた微量液体移送デバイスや、この態様の微細流路を1セットとしてこの微細流路を複数セット備えた微量液体移送デバイスを挙げることができる。
本発明の微量液体移送デバイスのうち、微細流路の平面視の形状が一直線状であるデバイスは、微量液体を単に移送する用途のほか、後述の数式(II)や数式(III)を利用して、最高到達高さz、表面張力γ、液体の密度ρ、微細流路の幅w、開毛管壁と液体の接触角θ、液体の粘性η、kの値、最高到達高さzの半分の高さに到達するまでの時間tなどのパラメーターを算出する用途にも好適に用いることができる。そのため、本明細書では、本発明の微量液体移送デバイスのうち、微細流路の平面視の形状が一直線状であるデバイスは、「パラメーター算出用デバイス」とも表示する。パラメーター算出用デバイスは、微細流路の平面視の形状が一直線状に限定されていること以外は、本発明の微量液体移送デバイスと何ら変わるところはなく、本発明の微量液体移送デバイスの微細流路の平面視の形状を一直線状とすること以外は同様の方法で作製することができる。
微細流路の横断面の形状としては、液体供給部から液体移送目的部への液体の移送が可能な限り特に制限されず、略上向きコの字形状、略U字型形状、略V字型形状、略半円形状、略半楕円形状などを挙げることができ、中でも、後述の数式(I)〜(III)の関係がより精度よくあてはまり、微細流路の設計をより正確に行い得る観点から、略上向きコの字形状、略U字型形状を好ましく挙げることができ、中でも、略上向きコの字形状をより好ましく挙げることができる。
微細流路の幅や深さとしては、液体供給部から液体移送目的部への液体の移送が可能な限り特に制限されないが、幅としては、例えば0.03〜3mmの範囲内を挙げることができ、中でも、より好適な液体移送を実現する観点から、0.05〜2.5mmの範囲内を好ましく挙げることができ、0.1〜2mmの範囲内をより好ましく挙げることができ、0.1〜1mmの範囲内をさらに好ましく挙げることができ、0.1〜0.5mmの範囲内をより好ましく挙げることができ、深さとしては、例えば0.06〜15mmの範囲内を挙げることができ、中でも、より好適な液体移送を実現する観点から、0.1〜12.5mmの範囲内を好ましく挙げることができ、0.2〜10mmの範囲内をより好ましく挙げることができ、0.2〜5mmの範囲内をさらに好ましく挙げることができ、0.2〜2.0mmの範囲内をより好ましく挙げることができ、0.3〜1.5mmの範囲内をさらに好ましく挙げることができる。また、微細流路の幅や深さは、基板上のすべての流路で統一されていてもよいが、微細流路ごとに異なっていてもよく、また、同じ微細流路内でも部位によって異なっていてもよい。
微細流路の深さの、幅に対する比としては、液体供給部から液体移送目的部への液体の移送が可能な限り特に制限されないが、後述の数式(I)〜(III)の関係がより精度よくあてはまり、微細流路の設計をより正確に行い得る観点から、1〜12の範囲内が好ましく、1.8〜12の範囲内がより好ましく、2〜10の範囲内がさらに好ましく、3〜10の範囲内がさらにより好ましい。
微細流路の長さとしては、液体供給部から液体移送目的部への液体の移送が可能な限り特に制限されないが、例えば0.5〜150mmの範囲内を挙げることができ、中でも、より好適な液体移送を実現する観点から、1〜100mmの範囲内を好ましく挙げることができ、1〜90mmの範囲内をより好ましく挙げることができる。
本発明の微量液体移送デバイスは、基板や基板上の微細流路が略水平となるような状態で用いることが好ましく挙げられるが、基板及び/又は基板上の微細流路が水平方向に対して傾斜した状態で用いてもよい。水平方向に対する傾斜角度としては特に制限されないが、0°〜90°の範囲内を挙げることができる。また、本発明の微量液体移送デバイスの基板の上面は、液体供給部や液体移送目的部の凹みや、微細流路の溝の凹みを除いて略水平状であることが好ましいが、液体供給部から液体移送目的部への液体の移送が可能な限り、隆起や陥没などを有していてもよく、その場合は、液体供給部や液体移送目的部の凹みや、微細流路の溝は、前述の隆起や陥没の上に形成されていてもよい。
本発明の微量液体移送デバイスにおける微細流路では、液体の移送が毛管力を利用してなされる。本明細書において「液体の移送が毛管力を利用してなされる」とは、微細流路における液体の移送が毛管力を利用してなされることを意味し、かかる移送に要するエネルギーのすべてが毛管力によるエネルギーである必要はなく、例えば重力や電力のエネルギーを一部に利用することを排除するものではないが、「液体の移送が毛管力を利用してなされる」ことには、液体供給部から液体移送目的部までの液体の移送に要するエネルギーのうち、85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上が毛管力によるエネルギーであることが好ましく含まれる。また、「液体の移送が毛管力を利用してなされる」ことに含まれる好適な態様の1つとして、液体供給部から液体移送目的部までの液体の移送にポンプを利用しないことが挙げられる。
本発明の微量液体移送デバイスは、微量液体を移送するためのものであるが、ここで「微量」とは、1箇所の液体供給部に1度に供給する液体の量が100μL未満であることを意味し、かかる「微量」には、0.01μL〜100μL未満の範囲内の量が好ましく含まれる。また、本発明における「微細流路」とは、横断面の面積が0.001〜50mmの範囲内の流路を意味し、かかる「微細流路」の好ましい横断面の面積としては、0.0018〜45mmの範囲内を挙げることができ、0.005〜31.25mmの範囲内を好ましく挙げることができ、0.02〜20mmの範囲内をより好ましく挙げることができ、0.02〜5mmの範囲内をさらに好ましく挙げることができ、0.02〜1mmの範囲内をより好ましく挙げることができ、0.03〜0.75mmの範囲内をさらに好ましく挙げることができる。
本発明の微量液体移送デバイスが基板上において移送する「液体」としては、液体供給部から液体移送目的部への液体の移送が可能な限り特に制限されず、具体的には、液状の試料や試薬を挙げることができ、かかる試料としては、液状の生体試料や化学試料を挙げることができ、前述の液状の試薬としては、検出反応で使用されるもの(プローブDNA、金コロイド、インターナルコントロール用プローブDNA、ポジティブコントロール、ネガティブコントロール等のプローブ類、ハイブリダイゼーションバッファー、発色試薬、標識化抗体、洗浄液など)、合成反応で使用されるもの(化学合成反応に用いる化合物、無細胞タンパク質合成に用いられるバッファー、細胞抽出液など)を挙げることができる。また、移送する液体は、親水性であっても親油性であってもよいが、液体と、微細流路との親和性が高い方が、接触角θが0°に近づき、浸透距離が伸びるため、好ましい。したがって、例えば、液体が水又は水溶性の液体である場合は、親水性の微細流路を用いることが好ましく、かかる微細流路としては、親水化処理した微細流路などが挙げられる。
本発明の微量液体移送デバイスにおける液体供給部、液体移送目的部、微細流路の材質は前述したとおり特に制限されず、基板の材質と同じであっても異なっていてもよいが、該デバイスの製造し易さや製造コストなどの観点から、基板の材質と同じであることが好ましい。
本発明の微量液体移送デバイスが移送する液体が水又は水溶性の液体である場合は、液体の浸透距離をより長くする観点から、該デバイスにおける微細流路は親水化処理されていることが好ましい。微細流路を親水化処理する方法は特に制限されないが、微細な部位であっても親水化処理を行い易いため、酸素プラズマ処理する方法を好適に挙げることができる。酸素プラズマ処理は、例えば「FA−1」(Samco社製)など、市販のエッチング装置を用いて行うことができる。親水化処理すると、水又は水溶性の液体の接触角θは0°に近づく方向にシフトし、浸透距離が伸びるため好ましい。なお、微量液体移送デバイスで液体を移送した後、微細流路を超音波洗浄器で洗うことにより、微細流路の親水性を回復することができる。
本発明の微量液体移送デバイスにおける液体供給部から液体移送目的部までの微細流路の長さ(mm)の値は、以下の数式(I)により算出されるz(浸透距離)の値(mm)以下になるように、微細流路の長さ(mm)及び/又は幅(mm)が調整されたものであることが好ましい。
z=k(γcosθwt/(3η))1/2 (I)
(ただし、zが浸透距離(mm)であり、tが経過時間(秒)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ηが液体の粘性(mPa・s)であり、wが微細流路の幅(mm)であり、θが液体と開毛管壁の接触角であり、kが0.4〜0.7(好ましくは0.55〜0.65)の範囲内の値である。)
液体の表面張力γ(mN/m)は、公知の方法で測定することができ、中でも、毛管上昇法による測定を好ましく挙げることができる。毛管上昇法による測定は、市販の表面張力計を用いて行うことができる。また、液体の粘性η(mPa・s)も、公知の方法で測定することができ、中でも、毛細管粘度計法による測定を好ましく挙げることができる。毛細管粘度計法による測定は、例えばJIS Z 8803に規定される方法にしたがって、市販の毛細管粘度計を用いて行うことができる。また、微細流路の幅w(mm)は、顕微鏡を用いるなどして測定することができる。また、本発明の微量液体移送デバイスの微細流路の平面視の形状を一直線状としたこと以外は、同じ方法で作製したパラメーター算出用デバイスの液体供給部に液体を供給して最高到達高さzを測定し、及び、数式(II)のw以外のパラメーター(液体の表面張力γ、液体の密度ρ、液体と開毛管壁との接触角θ)を測定あるいは調べた後で、パラメーター算出用デバイスの微細流路の幅wを算出することによって、本発明の微量液体移送デバイスの微細流路の幅wを間接的に測定することもできる。また、液体と開毛管壁の接触角θは公知の方法で測定することができ、中でも、手軽であるため、θ/2法による測定を好ましく挙げることができる。θ/2法は、液滴の半径をr、液滴の高さをhとしたときに、θ=2arctan(h/r)という関係式が成り立つことに基づいて接触角θを算出する方法である。ただし、θ/2法を用いる場合は、大きな液滴を用いると重力の影響により誤差が大きくなるため、半径1mm以下の液滴(すなわち1μL以下の液滴)を用いることが好ましい。
本発明の微量液体移送デバイスにおける液体供給部から液体移送目的部までの微細流路の長さ(mm)の値を、上記数式(I)により算出されるz(浸透距離)の値(mm)以下になるように(好ましくはさらに、各液体が液体移送目的部まで同時に又は所望の時間差で到達するように)、微細流路の長さ(mm)及び/又は幅(mm)を調整する方法としては、微量液体移送デバイスにおいて、微細流路の長さ(mm)及び/又は幅(mm)をそのように調整する限り特に制限されず、例えば液体供給部から液体移送目的部までの微細流路の長さ(mm)及び/又は幅(mm)の値を、上記数式(I)により算出されるz(浸透距離)の値(mm)以下になるように設定することが挙げられる。また、数式(I)を利用した上記調整は、粘性の同じ又は異なる複数種の液体を、移送目的部に同時に又は所望の時間差で到達させるためのそれぞれの微細流路の長さの調整や、それぞれの微細流路への液体供給の時間差の調整なども、便宜上含んでいる。なお、幅(mm)を広げると、浸透距離zの値(mm)は大きくなり、幅(mm)を狭くすると、浸透距離zの値(mm)は小さくなる。
上記数式(I)の関係がより正確に成り立ち、より正確な調整が可能となる点で、以下の[I−1]〜[I−8]に示される8種の条件のうち、1種又は2種以上(好ましくは3種以上、より好ましくは5種以上、さらに好ましくは7種以上、特に好ましくは8種すべて)の条件を満たしている微量液体移送デバイスや使用態様である場合に、上記数式(I)を利用した調整をより好適に使用することができる。
[I−1]微細流路の横断面の形状が略上向きコの字形状である:
[I−2]微細流路の幅が3mm以下(より好ましくは0.1〜1mmの範囲内)である:
[I−3]微細流路の深さが幅の2〜10倍の範囲内である:
[I−4]浸透距離zが1〜100mmの範囲内である:
[I−5]液体の表面張力γが10〜100mN/mの範囲内である:
[I−6]液体の粘性ηが1〜1000mPa・sの範囲内(好ましくは10〜1000mPa・sの範囲内、より好ましくは20〜1000mPa・sの範囲内)である:
[I−7]液体が液体供給部から液体移送目的部に到達するのに要する時間が1秒間〜30分間の範囲内である:
[I−8]微細流路が略水平である:
なお、上記kとして0.4〜0.7(好ましくは0.55〜0.65)の範囲内のいずれか一つの値を用いて数式(I)を利用した調整を行ってもよいが、kが0.4〜0.7の範囲内のいずれの値であっても、本発明の微量液体移送デバイスにおける液体供給部から液体移送目的部までの微細流路の長さ(mm)の値が、上記数式(I)により算出されるz(浸透距離)の値(mm)以下になるように、微細流路の長さ(mm)及び/又は幅(mm)を調整することが好ましい。また、ある微量液体移送デバイスについてのkの値をより正確に知りたい場合は、その微量液体移送デバイスに対応するパラメーター算出用デバイスの微細流路の幅w、液体の表面張力γ及び粘性η、液体と開毛管壁との接触角θの値を測定あるいは調べた後、実際にその液体をその微量液体移送デバイスの液体供給部に供給して、その液体の浸透距離z及び経過時間tを測定し、それらの値を数式(I)に代入することにより、パラメーター算出用デバイスについての正確なkを算出し、それによって、微量液体移送デバイスについての正確なkの値を間接的に求めることもできる。また、同様にして、パラメーター算出用デバイス及び数式(III)を利用することによっても、微量液体移送デバイスについての正確なkの値を間接的に求めることができる。
また本発明者らは、前述のパラメーター算出用デバイスのような、一直線状の微細流路が鉛直方向になるように該デバイスを立てた状態で、微細流路の下端に液体を供給したときに、その液体が微細流路を上昇して最終的に到達する最高到達高さzは、以下の数式(II)で導かれることを理論的及び実験的に見いだした。
=2γcosθ/(ρgw) (II)
(ただし、zが最高到達高さ(mm)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ρが液体の密度(g/cm)であり、gが重力加速度(m/s)であり、wが微細流路の幅(mm)であり、θが開毛管壁と液体の接触角である。)
実際に製造した本発明の微量液体移送デバイスに対応するパラメーター算出用デバイス、及び、かかる数式(II)を利用すれば、例えば実際に製造した本発明の微量液体移送デバイスの微細流路の幅w(mm)の長さや、その幅が設計通りの幅であるかを、顕微鏡等を使用せずに、間接的ではあるが正確に測定又は確認することができる。具体的には、表面張力γ(mN/m)及び密度ρ(g/cm)、液体と開毛管壁の接触角θがあらかじめ分かっている液体(例えば水など)をパラメーター算出用デバイスに供給したときの最高到達高さz(mm)を測定し、それらの数値を数式(II)にあてはめることにより、そのパラメーター算出用デバイスにおける実際の幅w(mm)を算出し、それによって、本発明の微量液体移送デバイスの幅wを間接的に求めることができる。顕微鏡を用いて幅wを用いる方法では、通常、数カ所程度の流路の幅の計測値から求めた平均値になるのに対し、前述のようにパラメーター算出用デバイスを用いて幅wを求める方法は、ある程度の長さの間の流路の幅の平均値を求めることになり、より正確な幅wを算出し得るため、好ましく用いることができる。また、パラメーター算出用デバイスの実際の幅(mm)が判明していれば、未知の液体についても、その密度ρ(g/cm)と、液体と開毛管壁の接触角θさえ測定すれば、上記数式(II)を利用することにより、表面張力γ(mN/m)を算出することができる。なお、液体の密度ρ(g/cm)は、JIS Z 8804に規定される方法にしたがって、測定することができる。
また、上記数式(II)は、基板が隆起や陥没などを有していることにより、微細流路が水平方向に対して上昇及び/又は下降を有している場合の調整にも用いることができる。微細流路の鉛直方向の変位がz(mm)以下であれば、その液体はその微細流路を移送されることができ、該変位がz(mm)より大きければ、その液体は高さz(mm)の地点で停止することになる。このような微細流路の高さの調整は、液体を基板のある地点で停止させる手段としても利用することができる。
上記数式(II)の関係がより正確に成り立ち、より正確な調整が可能となる点で、以下の[II−1]〜[II−6]に示される6種の条件のうち、1種又は2種以上(好ましくは3種以上、より好ましくは5種以上、特に好ましくは6種すべて)の条件を満たしている微量液体移送デバイスや使用態様である場合に、上記数式(II)をより好適に使用することができる。
[II−1]微細流路の横断面の形状が略上向きコの字形状である:
[II−2]微細流路の幅wが3mm以下(より好ましくは0.1〜1mmの範囲内)である:
[II−3]微細流路の深さが幅の2〜10倍の範囲内である:
[II−4]最高到達高さzが5〜100mmの範囲内である:
[II−5]液体の表面張力γが10〜100mN/mの範囲内である:
[II−6]液体の密度ρが0.4〜15g/cmの範囲内である:
さらに、本発明者らは、液体の粘性η(mPa・s)が、液体が前述の最高到達高さzの半分の高さに到達するまでの時間t(秒)等を含む以下の数式(III)で導かれることを理論的及び実験的に見いだした。
η=4kγcosθwt/(3z (III)
(ただし、ηが液体の粘性が(mPa・s)であり、kが0.4〜0.7(好ましくは0.55〜0.65)の範囲内の値であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、wが微細流路の幅(mm)であり、tが、液体が前述の最高到達高さzの半分の高さに到達するまでの時間(秒)であり、zが液体の最高到達高さ(mm)である。)
パラメーター算出用デバイス、及び、かかる数式(III)を利用すれば、例えば未知の液体の粘性(mPa・s)を調べることができる。具体的には、その液体の表面張力γ(mN/m)を前述の数式(II)によりあるいは別の手段で算出又は測定し、及び、その液体が前述の最高到達高さzの半分の高さに到達するまでの時間tを測定し、それらの数値を数式(III)にあてはめることにより、その液体の粘性(mPa・s)を算出することができる。
上記数式(III)の関係がより正確に成り立ち、より正確な調整が可能となる点で、以下の[III−1]〜[III−7]に示される7種の条件のうち、1種又は2種以上(好ましくは3種以上、より好ましくは5種以上、特に好ましくは7種すべて)の条件を満たしている微量液体移送デバイスや使用態様である場合に、上記数式(III)をより好適に使用することができる。
[III−1]微細流路の横断面の形状が略上向きコの字形状である:
[III−2]微細流路の幅wが3mm以下(より好ましくは0.1〜1mmの範囲内)である:
[III−3]微細流路の深さが幅の2〜10倍の範囲内である:
[III−4]液体の表面張力γが10〜100mN/mの範囲内である:
[III−5]最高到達高さzが5〜100mmの範囲内である:
[III−6]液体が最高到達高さzの半分の高さに到達するまでの時間t
0.1秒〜24時間の範囲内である:
[III−7]液体の粘性ηが0.1〜1000mPa・sの範囲内(好ましくは10〜1000mPa・sの範囲内、より好ましくは20〜1000mPa・sの範囲内)である:
本発明の微量液体移送デバイスにおける液体供給部や、液体移送目的部や、微細流路の形成方法としては、これらの構造を形成し得る限り特に制限されず、例えば、微細ミル加工技術等の微細切削加工技術により基板を切削して、液体供給部等を形成する方法や、液体供給部等を基板上に備えた基板に対する鋳型をリソグラフィー技術を利用して作製し、その鋳型に樹脂(好ましくはゲル状のPDMS樹脂)等を導入して、液体供給部等を備えた基板を形成する方法などを挙げることができる。リソグラフィー技術を用いた鋳型を利用する形成方法は、微量液体移送デバイスを大量生産する場合や、例えば微細流路の幅が1mm未満であるような特に小型の微量液体移送デバイスを製造する場合に適しており、微細ミル加工技術等の微細切削加工技術を利用する形成方法は、例えば微細流路の幅が0.1mm以上の微量液体移送デバイスを比較的少量生産する場合に適している。リソグラフィー技術を用いた鋳型を利用する形成方法は、より微細な加工を行うことができ、また、鋳型の作製に高いコストを要するが、大量生産する場合はそのコストを回収することができるのに対し、微細切削加工技術を利用する形成方法は、先の形成方法よりも手軽な装置で微量液体移送デバイスを形成することができる。微細切削加工技術を利用する形成方法においては、計算機数値コントロール(CNC)の備わった微細ミル加工装置を利用すると非常に手軽かつ正確に加工することができる。
(微量液体の移送方法)
本発明の微量液体の移送方法としては、本発明の微量液体移送デバイスを用いた微量液体の移送方法であって、(A)前記微量液体移送デバイスにおける1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部に、1種又は2種以上の液体を供給する工程A:を含んでいる限り特に制限されないが、中でも、2箇所以上の液体供給部に2種以上の液体を供給して、それらの液体を混合することを含む、微量液体の混合方法であることが好ましい。
本発明の微量液体の移送方法は、上記工程Aに加えて、さらに、(B)微量液体移送デバイスにおける1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部で、2種以上の液体を混合させる工程B:を含んでいてもよい。なお、かかる工程Bには、便宜上、液体供給部から液体移送目的部に至る途中の微細流路で液体を混合させ、その後液体移送目的部に液体を移送する工程も含まれる。本明細書における「2種以上の液体を混合させる」ことには、2箇所以上の部位に供給した同種の液体を混合させることも含まれる。上記工程Bには、2種以上の液体を混合させ、さらにそのことによって、2種以上の液体に含まれる成分同士を反応させることや、2種以上の液体のうち、いずれか1種以上の液体を溶媒で希釈することも好ましく含まれる。なお、閉毛管を利用したマイクロ流体デバイスに関する特許文献2(国際公開2007/105584号パンフレット)に記載されているように、液体と希釈液を混合した後、その混合液を希釈液と混合する、ということを繰り返すような微細流路を備えた本発明の微量液体移送デバイスを用いることなどによって、本発明においても、元の液体を様々な希釈倍率で希釈することができる。さらに、それらの各希釈液が、試薬等の液体と混合されるような微細流路を備えた本発明の微量液体移送デバイスを用いると、元の液体を様々な倍率で希釈した液体に対して試薬等の液体と混合させ、その反応を確認するなどして、様々な希釈倍率で一括検査を行うことが可能となる。
また、本発明の微量液体の移送方法は、上記工程Aに加えて、さらに、(a1)微量液体移送デバイスにおける1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部に、1種又は2種以上の液体を供給する工程a1:及び、(b1)液体供給部に供給した前記液体と、液体移送目的部に供給した液体とを、液体移送目的部で混合させる工程b1:を含んでいてもよい。なお、かかる工程b1にも、便宜上、液体供給部から液体移送目的部に至る途中の微細流路で液体を混合させ、その後液体移送目的部に液体を移送する工程が含まれる。
また、本発明の微量液体の移送方法は、上記工程Aに加えて、さらに、(a2)微量液体移送デバイスにおける1箇所又は2箇所以上の微細流路の途中の部分に、1種又は2種以上の液体を供給する工程a2:及び、(b2)液体移送供給部に供給した液体と、微細流路の途中の部分に供給した前記液体とを、微細流路の途中又は液体移送目的部で混合させる工程b2:を含んでいてもよい。なお、かかる工程b2の場合、[1]微細流路の途中で液体を供給するタイミングやその位置、[2]微細流路の途中で供給する液体と、液体供給部に供給した液体との粘性等の違いなどによる、微細流路を移送する速度の違いなどにより、これらの液体が微細流路から液体移送目的部に至る途中で混合するか、液体移送目的部で混合するかが決まる。
本発明の微量液体の移送方法においては、前述の数式(I)により算出されるz(浸透距離)の値(mm)が、液体供給部から液体移送目的部までの微細流路の長さの値(mm)以上になるように(好ましくはさらに、各液体が液体移送目的部まで同時に又は所望の時間差で到達するように)、移送に要する経過時間t(秒)、液体の表面張力(mN/m)及び液体の粘性(mPa・s)から選択される1種又は2種以上を調整されたものであることが好ましい。かかる調整の方法としては、かかる移送方法において、前述の数式(I)により算出されるz(浸透距離)の値(mm)が、液体供給部から液体移送目的部までの微細流路の長さの値(mm)以上になるように、移送に要する経過時間t(秒)、液体の表面張力(mN/m)及び液体の粘性(mPa・s)から選択される1種又は2種以上を調整する限り特に制限されない。
上記の移送に要する経過時間t(秒)の調整は、その移送にかける時間t(秒)を調整することにより行うことができ、液体の表面張力や粘性の調整は、例えば界面活性剤や粘性調整剤などを添加することにより行うことができる。なお、数式(I)を利用した上記調整は、粘性の同じ又は異なる複数種の液体を、移送目的部に同時に又は所望の時間差で到達させるために、それぞれの微細流路における移送に要する経過時間t(秒)、液体の表面張力(mN/m)及び液体の粘性(mPa・s)から選択される1種又は2種以上を調整することや、それぞれの微細流路への液体供給の時間差を調整することなども、便宜上含んでいる。
(微量液体移送デバイスの製造方法)
本発明の微量液体移送デバイスの製造方法としては、基板上において微量液体を移送するための微量液体移送デバイスの製造方法であって、
(X)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製する工程X:
を含み、
前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされ得るものである限り特に制限されない。
上記工程Xとしては、上記のような基板を作製する工程である限り特に制限されないが、例えば以下の工程x1及び工程x2を含み、かつ、微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされ得る工程(以下、「態様A」とも表示する。)や、後述の工程x3及び工程x4を含み、かつ、微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされ得る工程(以下、「態様B」とも表示する。)が好ましく挙げられる。上記態様Aは、微細ミル加工技術等の微細切削加工技術を利用する場合に好適な態様であり、上記態様Bは、リソグラフィー技術を用いた鋳型を利用する場合に好適な態様である。
(x1)基板を用意する工程x1:及び、
(x2)前記基板上に、
1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを設ける工程x2:
(x3)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製するための鋳型を製造する工程x3:及び、
(x4)工程x3で製造した鋳型に基板材料を供給することによって、
1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製する工程x4:
上記工程x1としては、基板を用意する工程である限り特に制限されず、市販の基板を購入して基板を用意してもよいし、樹脂等から基板を作製して基板を用意してもよい。
上記工程x2は、基板上に、液体供給部と、液体移送目的部と、微細流路とを設ける工程であり、かかる工程は、市販の微細ミル加工装置等を利用して行うことができる。より正確に行う観点から、計算機数値コントロール(CNC)の備わった微細ミル加工装置を利用することが好ましい。
上記工程x3は、液体供給部と、液体移送目的部と、微細流路とを基板上に備えた基板を作製するための鋳型を製造であり、かかる工程は、リソグラフィー装置を用いなくてもよいが、より精密な鋳型を製造する観点から、リソグラフィー装置を用いて鋳型を製造することが好ましい。
(微量液体移送デバイスの製造装置)
本発明の微量液体移送デバイスの製造装置としては、本発明の微量液体移送デバイスの製造方法の各工程を実施できる装置である限り特に制限されず、製造する微量液体移送デバイスの微細流路を溝状の開毛管流路とすること以外は、公知の微細ミル加工装置や、リソグラフィー装置と同様のものである。
(パラメーターの算出方法)
本発明のパラメーターの算出方法としては、本発明のパラメーター算出用デバイスと、以下の数式(II)又は(III)を利用することを特徴とするパラメーターの算出方法であって、
=2γcosθ/(ρgw) (II)
(ただし、zが最高到達高さ(mm)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ρが液体の密度(g/cm)であり、gが重力加速度(m/s)であり、wが微細流路の幅(mm)であり、θが開毛管壁と液体の接触角である。):
η=4kγcosθwt/(3z (III)
(ただし、ηが液体の粘性が(mPa・s)であり、kが0.4〜0.7(好ましくは0.55〜0.65)の範囲内の値であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、wが微細流路の幅(mm)であり、tが、液体が前述の最高到達高さzの半分の高さに到達するまでの時間(秒)であり、zが液体の最高到達高さ(mm)である。):
(P)数式(II)又は(III)の数式に含まれるパラメーターのうち、1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定する工程P:及び、
(Q)工程Pで調べた又は測定した値を数式(II)又は(III)の数式に代入し、前記1つのパラメーターの値を算出する工程Q:
を含んでいる限り特に制限されない。
上記工程Pとしては、数式(II)又は(III)の数式に含まれるパラメーターのうち、1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定する工程である限り特に制限されない。数式(II)に含まれるパラメーターは、最高到達高さz、表面張力γ、開毛管壁と液体の接触角θ、液体の密度ρ、微細流路の幅wであり、数式(III)に含まれるパラメーターは、液体の粘性η、kの値、表面張力γ、開毛管壁と液体の接触角θ、微細流路の幅w、最高到達高さzの半分の高さに到達するまでの時間t、最高到達高さzである。なお、重力加速度gは、地球上においてはパラメーターではなく定数であり、9.80665m/sである。
最高到達高さzは、本発明のパラメーター算出用デバイスの微細流路が鉛直方向になるように該デバイスを立てた状態で、微細流路の下端に液体を供給したときに、その液体が微細流路を上昇して最終的に到達する高さとして測定することができる。また、液体の密度ρは、公知の方法で測定することができ、例えばJIS Z 8804に規定される方法にしたがって測定することができる。また、最高到達高さzの半分の高さに到達するまでの時間tは、最高到達高さzを測定するのと同様の方法を用いて、液体がzの半分の高さに到達するまでの時間として計測することができる。
工程Qとしては、工程Pで調べた又は測定した値を数式(II)又は(III)の数式に代入し、前記1つのパラメーターの値を算出する工程である限り特に制限されない。なお、工程Pで調べた又は測定したパラメーター群が数式(II)のパラメーター群である場合は、工程Qで代入する数式として数式(II)を用い、工程Pで調べた又は測定したパラメーター群が数式(III)のパラメーター群である場合は、工程Qで代入する数式として数式(III)を用いる。
本発明のパラメーターの算出方法は、さらに
(R)数式(II)及び(III)のうち、工程P及び工程Qで用いていない方の数式を選択する工程R:
(S)工程Rで選択した数式のパラメーターのうち、1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定する工程S:及び、
(T)工程Sで調べた又は測定した値を、工程Rで選択した数式に代入し、工程Sにおける1つのパラメーターの値を算出する工程T:
を含み、
前記工程Sにおける1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定することが、工程Qで算出したパラメーターの値を用いることであってもよい。
本発明のパラメーターの算出方法の中で特に好適な態様として、工程P及び工程Qで数式(II)を用いて液体の表面張力γの値を算出し、次いで、工程R、工程S及び工程Tで数式(III)と、先に算出した表面張力γの値を用いて液体の粘性ηを算出する方法を挙げることができる。このように、本発明のパラメーターの算出方法は、本発明の微量液体移送デバイスにおける、上記数式(I)を利用した微細流路の長さ(mm)及び/又は幅(mm)の調整や、本発明の微量液体の移送方法における、上記数式(I)を利用した、移送に要する経過時間t(秒)、液体の表面張力(mN/m)及び液体の粘性(mPa・s)から選択される1種又は2種以上の調整に好適に用いることができる。
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[微量液体移送デバイスによる微量液体移送試験1]
PMMA樹脂製の基板を用意し、微細ミル加工装置(「MM100」、モディアシステムズ株式会社製)を用いて、平面図が図1の例えば10sの部分に示されるような微量液体移送デバイスを作製した。このデバイスは、互いに平行な6本の一直線状の微細流路を備えており、図1に示される微細流路の下端に液体供給部を、上端に液体移送目的部を備えている。微細流路は溝状の開毛管流路であり、横断面の形状は上向きコの字形状とした。微細流路の幅は0.2mm、深さは0.4mm、長さ100mmとした。なお、後述するように、本実施例の微量液体移送試験では、液体として、親油性の液体、すなわち、シリコンオイルの1種であるポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いたため、微細流路に対する親水化処理は行わなかった。
この微量液体移送デバイスの液体移送目的部に液体(PDMS)を供給した後、液体が微細流路を移動していく様子を経時的に示したのが図1である。液体供給から10秒後(「10s」)、1分後(「1min」)、30分後(「30min」)と時間が経過するにつれて、液体の先端(各時間における下の矢印)が液体移送目的部に向かって上方に移動した。ただし、液体の先端の高さは240分後(「240min」)でも変わらなかった。なお、各時間における上の矢印は、液体の先端(液面)に先行して伸びる、液体の薄膜の先端を表している。このような薄膜は、液体が垂直方向に移動する場合に生じることがある。本発明の数式(II)や(III)における最高到達高さzは、薄膜の先端の高さではなく、液面の高さを意味する。
本実施例で用いたような、微細流路が一直線状のデバイスは、パラメーター算出用デバイスとしても好適に用いることができる。なお、本発明者らは、このような微量液体移送デバイスを用いて様々な液体を用いて微量液体移送試験を行い、本願明細書の数式(I)、数式(II)及び数式(III)がそれぞれ成り立つことを確認した。
[微量液体移送デバイスによる微量液体移送試験2]
PMMA樹脂製の基板を用意し、微細ミル加工装置(「MM100」、モディアシステムズ株式会社製)を用いて、平面図が図2に示されるような微量液体移送デバイスを作製した。このデバイスの円形の液体供給部S1、S2の直径はそれぞれ3mmとし、正方形の液体移送目的部Mの一辺は1mmとした。また、微細流路C1及びC2の長さはそれぞれ40mm(20mm+20mm)とした。さらに、液体供給部S1、S2の深さはそれぞれ2mmとし、液体移送目的部の深さは0.6mmとした。また、溝状の開毛管流路である微細流路の横断面の形状は上向きコの字形状とし、微細流路の幅は0.2mm。深さは0.6mmとした。なお、この微量液体移送デバイスの微細流路の長さ及び幅は、後述の液体を液体供給部に供給した場合に、液体移送目的部に到達するように、前述の数式(I)で調整したものである。
また、かかる微量液体移送デバイスの微細流路側の表面全面には、酸素プラズマ処理を施すことによって、微細流路の内壁表面に親水化処理を行った。この酸素プラズマ処理には、「FA−1」(Samco社製)のエッチング装置を用い、条件は、RFパワー:25W、酸素(O)流量:10mL/min、処理時間:1sec〜100secとした。
微量液体移送試験に用いる液体として、無細胞タンパク溶液によるGFP発現用のキット(S30 T7 High-Yield Protein Expression System, Promega)を用意した。液体aは、該キットの「S30 Premix Plus」と「S30-T7 Extract for Circular DNA」を10:9の体積比で混合した溶液であり、液体bは、「S30 T7 Control DNA(0.5μg/μL)」と「Nuclease-Free Water」を1:5の体積比で混合した溶液であり、いずれの溶液も、正確な粘度は未測定であるが、高粘度であった。
微量液体移送デバイスの液体供給部S1に20μL程度の液体aを、液体供給部S2に20μL程度の液体bを同時に滴下したところ、液体aは微細流路C1内を、液体bは微細流路C2内を移動し、両液体はそれぞれ5秒以内に液体移送目的部に到達し、液体移送目的部にて両液体は混合された。混合後、液体移送目的部におけるGFP蛍光を経時的に観察した結果を図2に示す。混合後、時間が経過するにつれて、GFP蛍光の強度が高くなっていることから、液体供給部に供給された2種の液体が液体移送目的部で混合して正しく反応したことが示された。
[微量液体移送デバイスによる微量液体移送試験3]
実施例2と同様の製法を用いて、平面図が図4に示されるような微量液体移送デバイス、及び、図5に示されるような微量液体移送デバイスをそれぞれ作製した。図4のデバイスの円形の液体供給部の直径(φ)は4mmとし、正方形の液体移送目的部の1辺の長さは2mmとした。また、図5のデバイスの円形の液体供給部の直径は4mmとし、円形の液体移送目的部の直径は2mmとした。また、図4及び図5のデバイスの微細流路の長さは、図4や図5に示すとおりとした。これらの微細流路における曲がった部分は、液体がよりスムーズに流れるように、円弧曲線を利用した。液体供給部に近い方の分岐点(第1分岐点)から次の分岐点(第2分岐点)に至るまでの曲がった部分ではでは曲率半径2mm(直径4mm)の円弧を利用し、第2分岐点から液体移送目的部に至るまでの曲がった部分では曲率半径1mm(直径2mm)の円弧を利用した。図4及び図5のデバイスのいずれでも、液体供給部の深さは0.3mmとし、液体移送目的部の深さは1.2mm又は1.7mmとした。また、溝状の開毛管流路である微細流路の横断面の形状は上向きコの字形状とし、微細流路の幅は0.2mm、深さは0.6mmとした。液体移送目的部を微細流路よりも深くすることにより、液体移送目的部から微細流路に液体が逆流することを防止し、微細流路を液体供給部よりも深くすることにより、液体が移送目的部で混合するまで微細流路から液体供給部に液体が逆流することを防止した。なお、図4及び図5のデバイスのいずれでも、微細流路の長さ及び幅は、後述の液体を液体供給部に供給した場合に、液体移送目的部に到達するように、前述の数式(I)で調整したものである。また、図4や図5では、液体供給部はそれぞれ1つずつであり、液体移送目的部はそれぞれ4つずつであるが、液体供給部の数や液体移送目的部の数は使用目的に合わせて増減させてもよい。例えば、1箇所の液体供給部に対して2箇所(ただしnは1以上の整数であり、好ましくは1〜5の範囲内の整数である)の液体移送目的部を設けてもよい。
また、図4及び図5の微量液体移送デバイスの微細流路側の、液体供給部及び液体移送目的部を除く表面には、酸素プラズマ処理を施すことによって、微細流路の内壁表面について親水化処理を行った。この酸素プラズマ処理には、「FA−1」(Samco社製)のエッチング装置を用い、条件は、RFパワー:25W、酸素(O)流量:10mL/min、処理時間:1sec〜100secとした。液体移送目的部に親水化処理を行わなかったのは、後述するように、液体移送目的部にあらかじめ供給した液体が、微細流路に自発的に流出することを防止するためである。
図4及び図5の液体供給部に液体を供給することに先立ち、各液体移送目的部にpHの異なる様々な液体を供給した。この際、これらの溶液が微細流路を逆流しないように、液体の表面が、隣接する微細流路の底面よりも低くなるように液体の供給量を調整した。次いで、図4及び図5の液体供給部にそれぞれBTB溶液(粘性1mPa・s程度;表面張力40mN/m程度)を供給した。すると、図4、図5のいずれの微量液体移送デバイスでも、BTB溶液は分岐した流路内をポンプなしで流れて行き、右端の各液体移送目的部に同時に到達した。その結果、図4、図5の微量液体移送デバイスでそれぞれ4通りずつの異なる反応がほぼ同時にスタートし、その反応開始からの時間経過を同時に観察できた。図7には、図4の微量液体移送デバイスにおいて、液体供給部に供給したBTB溶液が微細流路を流れていき、移送目的部に到達して反応が生じた様子を経時的に示す。なお、BTB溶液は、酸性では黄色、中性では緑色、アルカリ性では青色を示すが、図4、図5の微量液体移送デバイスの各液体移送目的部において、液体のpHに応じた変色が確認された。また、液体移送目的部の平面視の形状が正方形である微量液体移送デバイス(図4)と、円形である微量液体移送デバイス(図5)を比較したところ、正方形の方が、液体が液体移送目的部へ同時に到達するという、液体到達の同時性の点で優れており、一方、円形の方が、液体移送目的部での液体混合後の微細流路への逆流が生じにくい点で優れていることが分かった。
また、液体移送目的部の深さが1.7mmであること以外は図4や図5の微量液体移送デバイスと同様の微量液体移送デバイスについても、同様の微量液体移送試験を行ったところ、移送目的部の深さが1.2mmの微量液体移送デバイスと同様の結果が得られた。
本発明の微量液体移送デバイスによれば、マイクロポンプを利用せずに、基板上において微量液体を移送することができる。本発明の微量液体移送デバイスは、マイクロポンプを利用しないため、より単純でより安価なデバイスとすることができる。また、マイクロポンプを利用する従来の微量液体移送デバイスでは、特に微細流路を細くした場合、微細流路が細くなるほど粘性抵抗が大きくなるために、粘性の高い液体の移送が困難であったが、本発明の蓋の無い溝状の開毛管を微細流路とする微量液体移送デバイスでは、微細流路が細くなるほどその力が増す毛管力を利用するため、そのような粘性の高い液体であっても、容易に移送することができる。したがって、病原微生物検査用の簡易デバイスや、酵素反応検査用デバイスといった分野への応用も可能である。また、本発明の微量液体移送デバイスは、従来の蓋のある管状の閉毛管を利用する微量液体移送デバイスと比較して、より簡便に、かつ、特に熟練した技術を要することなく製造することができる。 さらに、本発明の微量液体移送デバイスは、上記数式(I)の関係式を利用することにより、液体の浸透距離などを事前に予測でき、その予測を利用すれば、試行錯誤をほとんど要さずに複雑な流路の設計も容易に行うことができる。

Claims (15)

  1. 基板上において微量液体を移送するための微量液体移送デバイスであって、
    前記微量液体移送デバイスが基板を備え、
    前記基板上に、
    (a)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
    (b)前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
    (c)前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを備え、
    前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされることを特徴とする微量液体移送デバイス。
  2. 微細流路の溝の横断面が、略上向きコの字形状であることを特徴とする請求項1に記載の微量液体移送デバイス。
  3. 微細流路の幅が0.03mm〜3mmの範囲内であり、深さが0.06mm〜15mmの範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の微量液体移送デバイス。
  4. 微細流路の深さの、幅に対する比が、1〜12の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の微量液体移送デバイス。
  5. 液体供給部から液体移送目的部までの微細流路の長さ(mm)の値が、以下の数式(I)により算出されるz(浸透距離)の値(mm)以下になるように、微細流路の長さ(mm)及び/又は幅(mm)が調整されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の微量液体移送デバイス:
    z=k(γcosθwt/(3η))1/2 (I)
    (ただし、zが浸透距離(mm)であり、tが経過時間(秒)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ηが液体の粘性(mPa・s)であり、wが微細流路の幅(mm)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、kが0.4〜0.7の範囲内の値である。)。
  6. 微細流路の平面視の形状が一直線状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の微量液体移送デバイス。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の微量液体移送デバイスを用いた微量液体の移送方法であって、
    (A)前記微量液体移送デバイスにおける1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部に、1種又は2種以上の液体を供給する工程A:
    を含むことを特徴とする微量液体の移送方法。
  8. さらに、(B)微量液体移送デバイスにおける1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部で、2種以上の液体を混合させる工程B:
    を含むことを特徴とする請求項7に記載の微量液体の移送方法。
  9. さらに、(a1)微量液体移送デバイスにおける1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部に、1種又は2種以上の液体を供給する工程a1:及び、
    (b1)液体供給部に供給した前記液体と、液体移送目的部に供給した液体とを、液体移送目的部で混合させる工程b1:
    を含むことを特徴とする請求項7に記載の微量液体の移送方法。
  10. 以下の数式(I)により算出されるz(浸透距離)の値(mm)が、液体供給部から液体移送目的部までの微細流路の長さの値(mm)以上になるように、移送に要する経過時間t(秒)、液体の表面張力(mN/m)及び液体の粘性(mPa・s)から選択される1種又は2種以上を調整されたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の微量液体の移送方法:
    z=k(γcosθwt/(3η))1/2 (I)
    (ただし、zが浸透距離(μm)であり、tが経過時間(秒)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ηが液体の粘性(mPa・s)であり、wが微細流路の幅(μm)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、kが0.4〜0.7の範囲内の値である。)。
  11. 基板上において微量液体を移送するための微量液体移送デバイスの製造方法であって、
    (X)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
    前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
    前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製する工程X:
    を含み、
    前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされ得る、微量液体移送デバイスの製造方法。
  12. 工程Xが、
    (x1)基板を用意する工程x1:及び、
    (x2)前記基板上に、
    1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
    前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
    前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを設ける工程x2:
    を含み、
    前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされ得る、請求項11に記載の微量液体移送デバイスの製造方法。
  13. 工程Xが、
    (x3)1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
    前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
    前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製するための鋳型を製造する工程x3:及び、
    (x4)工程x3で製造した鋳型に基板材料を供給することによって、
    1種又は2種以上の液体を供給するための1箇所又は2箇所以上の凹状の液体供給部と、
    前記液体の移送目的部位である1箇所又は2箇所以上の凹状の液体移送目的部と、
    前記液体供給部から前記液体移送目的部へと連通し、前記液体供給部から前記液体移送目的部へと液体を移送させるための微細流路とを基板上に備えた基板を作製する工程x4:
    を含み、
    前記微細流路が溝状の開毛管流路であり、液体の移送が毛管力を利用してなされ得る、請求項11に記載の微量液体移送デバイスの製造方法。
  14. 請求項6に記載の微量液体移送デバイスと、以下の数式(II)又は(III)を利用することを特徴とするパラメーターの算出方法であって、
    =2γcosθ/(ρgw) (II)
    (ただし、zが最高到達高さ(mm)であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、ρが液体の密度(g/cm)であり、gが重力加速度(m/s)であり、wが微細流路の幅(mm)であり、θが開毛管壁と液体の接触角である。):
    η=4kγcosθwt/(3z (III)
    (ただし、ηが液体の粘性が(mPa・s)であり、kが0.4〜0.7の範囲内の値であり、γが液体の表面張力(mN/m)であり、θが液体と開毛管壁との接触角であり、wが微細流路の幅(mm)であり、tが、液体が前述の最高到達高さzの半分の高さに到達するまでの時間(秒)であり、zが液体の最高到達高さ(mm)である。):
    (P)数式(II)又は(III)の数式に含まれるパラメーターのうち、1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定する工程P:及び、
    (Q)工程Pで調べた又は測定した値を数式(II)又は(III)の数式に代入し、前記1つのパラメーターの値を算出する工程Q:
    を含むことを特徴とするパラメーターの算出方法。
  15. (R)数式(II)及び(III)のうち、工程P及び工程Qで用いていない方の数式を選択する工程R:
    (S)工程Rで選択した数式のパラメーターのうち、1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定する工程S:及び、
    (T)工程Sで調べた又は測定した値を、工程Rで選択した数式に代入し、工程Sにおける1つのパラメーターの値を算出する工程T:をさらに含み、
    前記工程Sにおける1つのパラメーター以外のパラメーターの値を調べる又は測定することが、工程Qで算出したパラメーターの値を用いることを特徴とする請求項14に記載のパラメーターの算出方法。
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