以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
本実施形態の濾過装置は、工作機械において循環使用されるクーラントの濾過に用いられるものを例示している。また、本実施形態の濾過装置は、クーラントが大流量の濾過に用いるフィルタケースの内部に複数のフィルタを配設したものを例示している。
図1から図8に示すように、本実施形態の濾過装置1は、複数のフィルタ2と、フィルタサポート3と、フィルタケース4と、ブロック5とを有している。
前記フィルタ2は、濾過対象液としての工作機械における加工部分の冷却に使用されたクーラントである原液G(図9)を濾過、すなわち原液Gに含まれる所定の大きさ以上の固体としての加工粉K(図9)を分離するための濾材となるものである。本実施形態のフィルタ2としては、一端が開口する袋状フィルタ2aが用いられている。この袋状フィルタ2aは、編まれた伸縮性糸により伸縮自在に形成されている。
この伸縮性糸は、弾性ソックスや弾性ストッキングなどに用いられるものであり、弾性繊維(エラストマー繊維)に合成繊維を組み合わせて形成されたものである。例えば、弾性繊維としてのポリウレタン弾性繊維(スパンデックス)の糸に、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステルなどの合成繊維のフィラメント数の多いハイマルチタイプの糸(1フィラメントが1.45デニールより細い糸)をカバーリングしたシングルカバーリングヤーン(SCY20 WN 70/48)を挙げることができる。また、ポリウレタン弾性繊維の糸に、2本の合成繊維の糸をカバーリングしたダブルカバーリングヤーン(DCY)であってもよい。なお、ポリウレタン弾性繊維のかわりにポリエーテルエステル弾性繊維を用いてもよい。
このように、ポリウレタン弾性繊維の糸あるいはポリエーテルエステル弾性繊維の糸を合成繊維の糸で被覆することにより、加工粉Kによって編み目の破損や損傷が短時間で発生するのを防止することができるようになっている。さらに、伸縮性糸は、靴下編み機であるハイゲージ丸編み機(4インチ:400針)などにより袋状の編地とされ、この編地により袋状フィルタ2aが形成されている。なお、編地は、天笠(無地)編み、針抜き編みなどを単独もしくは組み合わせて編まれている。
前記フィルタ2としては、長さ方向の一端に開口を有する袋状、有底筒状、長さ方向の両端に開口を有する筒状などの少なくとも長さ方向の一端が開口するものであればよい。なお、長さ方向の一端の開口は、原液Gが流入されるものである。また、フィルタ2の数としては、原液Gの流量(処理量)などの装置の仕様により、2つ以上から選択することができる。本実施形態においては、4つの袋状フィルタ2aが用いられている。
前記フィルタサポート3は、袋状フィルタ2aの開口側端部、すなわち原液Gの入口側部位を着脱自在に保持するものであり、本実施形態においては4つの袋状フィルタ2aを相互に平行に保持することができるようになっている。
本実施形態のフィルタサポート3は、取付リング7およびフィルタ取付板8を有している。
前記取付リング7は、袋状フィルタ2aの開口側端部が装着されるものであり、樹脂あるいは金属により形成されている。この取付リング7は、図8に詳示するように、円筒状に形成された筒状基体10と、この筒状基体10の外周面の上端部に、径方向外側に向かって延出形成された環状の鍔部11とを有しており、全体として円筒状に形成されている。この筒状基体10は、その内径寸法が袋状フィルタ2aの自由状態における外径寸法より大径、例えば67mm程度に形成されている。また、筒状基体10の外周面の下端部近傍には、袋状フィルタ2aの開口側端縁が装着される装着用環状凹溝12が周方向に沿って形成されている。さらに、取付リング7の内孔の上部には、上端に向かって徐々に拡径する上方から見て凹状の凹テーパ面13が形成されている。
そして、袋状フィルタ2aに取付リング7を、あるいは取付リング7に袋状フィルタ2aを取り付けたフィルタ取付状態においては、袋状フィルタ2aの開口側端部が拡開されて鍔部11を覆うように外側に折り返されて着脱自在に取り付けられている。なお、フィルタ取付状態としては、少なくとも鍔部11の外周面が袋状フィルタ2aにより覆われていればよい。
前記フィルタ取付板8は、フィルタ取付状態とされた取付リング7が取り付けられるものであり、金属あるいは樹脂により形成されている。このフィルタ取付板8は、例えば全体として直径寸法が300mm程度の円盤状に形成されている。
図8に示すように、フィルタ取付板8の外周面の上部には、径方向外側に向かって延出形成された環状の上フランジ14が形成されている。また、フィルタ取付板8の上面の外周側には、フィルタ取付板8を厚さ方向に貫通する4つの嵌合孔15(図8に1つのみ図示)が形成されている。これらの嵌合孔15は、フィルタ取付状態とされた取付リング7の筒状基体10が上方から嵌合されるものであり、フィルタ取付板8の軸線(中心線)から等距離位置において隣位する2つの嵌合孔15の中心間距離(間隔)が等しくなるように等角度分配置されている。これにより4つの袋状フィルタ2aを相互に平行に配置することができるようになっている。なお、嵌合孔15の配置としては、縦横に整列配置してもよく、種々の配列から選択することができる。
前記フィルタ取付板8の上面のうち、少なくとも嵌合孔15の周囲には、フィルタ取付状態とされた取付リング7の鍔部11を下方から支持する平坦な鍔支持面16が凹設されている。この鍔支持面16の上面からの深さ寸法は、鍔部11の厚さ寸法より深く形成されている。さらに、フィルタ取付板8の上面のうち、相互に対向する2つの嵌合孔15の周囲には、図5に示すように、それぞれフィルタケース4に対するフィルタサポート3の着脱に用いる全体として円弧状をなす取っ手18がその先端部を径方向内側に向けて起倒自在に取り付けられている。
図8に示すように、取付リング7の筒状基体10の外周面とフィルタ取付板8の嵌合孔15との間には、金属あるいは樹脂により有底円筒状に形成されたガイドチューブ20の上端部が挿入されている。このガイドチューブ20は、フィルタ取付状態における袋状フィルタ2aの取付リング7の下方に露出した部分を外側から囲むことにより、袋状フィルタ2aの内部に残留する加工粉Kの量の増加にともなう袋状フィルタ2aの径方向外側への膨張を規制するものである。勿論、袋状フィルタ2a同士が接触するのを防止するものでもある。
図1および図2に示すように、ガイドチューブ20は、円筒状のチューブ胴部21と、このチューブ胴部21の下端部に取り付けられた円盤状のチューブ底板部22とを有している。また、図8に詳示するように、チューブ胴部21の上端部外周には、径方向外側に向かって突出する環状のチューブフランジ部23が形成されている。そして、チューブ胴部21は、例えば線径1mm程度のステンレスにより形成された複数の環状のリング体を軸線方向に沿って平行に配置し、これらのリング体の外周を線径1mm程度のステンレスにより形成された複数の棒状体によりピッチ20mm程度となるように間隔をおいて溶接により一体化した溶接金網により形成されている。このチューブ胴部21の外周面に設けられた網目は、袋状フィルタ2aで濾過した後の濾液E(図9参照)を径方向外側に向かって通過させるための内外を連通する複数の第1通過開口25a(一部のみ図示)とされている。
前記チューブ底板部22には、袋状フィルタ2aで濾過した後の濾液Eを下方に向かって通過させるための内外を連通する複数の第2通過開口25b(図6、図7に、一部のみ図示)が形成されている。本実施形態においては、チューブ底板部22として厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有するパンチングメタルを用いることで、その貫通孔により第2通過開口25bが形成されている。なお、通過開口25(第1通過開口25aおよび第2通過開口25bを総称する。)の形状としては、扇形、矩形、菱形、円形、多角形などの各種の形状を用いることができる。また、通過開口25の配列としては、マトリクス、デルタ、モザイク、ストライプなどの各種の配列を用いることができる。また、ガイドチューブ20としては、円筒状に形成した金網や樹脂網を用いることができる。
図8に示すように、ガイドチューブ20のチューブ胴部21の内径寸法は、取付リング7の筒状基体10の外周面にガイドチューブ20の内周面を嵌合できるように、筒状基体10の外径寸法より若干大きく形成されている。また、チューブ胴部21の外径寸法は、取付リング7の嵌合孔15の内径寸法より小さく形成されている。また、ガイドチューブ20のチューブフランジ部23の外径寸法は、鍔部11の外径寸法より小さく、かつ嵌合孔15の内径寸法より大きく形成されており、ガイドチューブ20を取付リング7の筒状基体10に嵌合した状態で、チューブフランジ部23は、チューブ用ガスケット26を介して鍔支持面16により下方から支持されている。
前記チューブ用ガスケット26は、チューブフランジ部23と鍔支持面16との間をシール、すなわちフィルタケース4の内部において、チューブフランジ部23と鍔支持面16との間から、フィルタ取付板8より下方でかつ袋状フィルタ2aの外側に原液Gが流入して袋状フィルタ2aで濾過した後の濾液Eと混ざるのを防止するための固定用シールである。このチューブ用ガスケット26としては、NBRなどの合成ゴムにより環状に形成されたゴムシートガスケットを挙げることができる。
したがって、本実施形態のフィルタサポート3は、フィルタ取付状態とされた取付リング7、フィルタ取付板8およびガイドチューブ20が一体に組み立てられており、各部を分解できるようになっている。すなわちフィルタサポート3は、組立・分解可能に形成されている。
なお、フィルタサポート3は、取っ手18を起こし、この取っ手18にロープを係止してホイストやクレーンで吊り上げたり、取っ手18を掴んで人力で持ち上げたりすることができるようになっている。また、フィルタサポート3としては、フィルタ2の形状、数などに応じて、ガイドチューブ20を設けない構成としてもよい。さらに、フィルタサポート3としては、袋状フィルタ2aの開口端側を取付リング7とフィルタ取付板8との間で挟持する構成としてもよい。
前記フィルタケース4は、フィルタサポート3を袋状フィルタ2aの開口側を上方にするとともに、その長さ方向を上下方向に向けて収容するものであり、ケース本体30および上蓋31を有している。
図1および図2に示すように、ケース本体30は、フィルタサポート3が挿脱自在に収容されるものであり、金属あるいは樹脂により上部が開口する有底円筒状に形成されている。このケース本体30は、濾液Eの流路を形成するために、少なくともフィルタサポート3の外周を囲繞するように、フィルタ取付板8の外周面の上部に形成された上フランジ14の外径寸法より大径、例えば内径寸法が312mm程度の円筒状に形成された本体胴部33を有している。なお、ケース本体30の形状としては、筒状であればよく、断面が四角形や多角形などの角筒状とすることができる。勿論、ケース本体30の形状に合わせて、フィルタ取付板8などの対応する部材の外周形状を設定することになる。また、ケース本体30を樹脂で形成する場合、樹脂を透明なものとしてもよい。
前記本体胴部33の内面には、本体胴部33の上部開口端から予め設定された間隔、例えば50mm程度の間隔をおいて環状に形成された支持リング34が接合(溶着あるいは接着など、以下、同じ)などにより取り付けられている。この支持リング34の内孔は、図8に詳示するように、フィルタ取付板8の上フランジ14の外形寸法より小径で、かつフィルタ取付板8の外周の外径寸法より大径に形成されており、フィルタ取付板8の上フランジ14を下方から支持している。なお、上フランジ14の下面と支持リング34の上面との対向面間には、フィルタケース4の内部において、上フランジ14と支持リング34との間から、フィルタ取付板8より下方でかつ袋状フィルタ2aの外側に原液Gが流入して袋状フィルタ2aで濾過した後の濾液Eと混ざるのを防止するためのガスケットを配設するとよい。
図1および図3に示すように、本体胴部33の支持リング34より上方の上端部近傍には、3つの係止ピン35(図1に2つのみ図示)がその先端を径方向外側に向けて取り付けられている。これら3つの係止ピン35は、本体胴部33の軸線から等距離位置において隣位する2つの係止ピン35の中心間距離が等しくなるように等角度配置されている。
図8に詳示するように、本体胴部33の上端部には、環状体36が配設されている。この環状体36の上面には、環状のシール装着溝36aが凹設されており、このシール装着溝36aには、上蓋31とケース本体30との間をシール、すなわち上蓋31とケース本体30との間から原液Gが外部に漏洩したりケース本体30と上蓋31との間から外部の空気がフィルタケース4の内部に流入したりするのを防止するための固定用シールである開口用ガスケット38が装着されている。本実施形態の開口用ガスケット38としては、ゴム製のO−リングが用いられている。また、環状体36の底面には、下部が開口する上下方向に長い断面矩形の環状の本体装着溝36bが凹設されており、この本体装着溝36bには、本体胴部33の上端部が着脱可能に嵌合されている。なお、本体胴部33の上端部と環状体36の嵌合部との間、例えば本体胴部33の上端と本体装着溝36bの上壁面との間に、少なくとも外部の空気がフィルタケース4の内部に流入するのを防止するための固定用シールを設けるとよい。
図1および図2に示すように、ケース本体30の底壁部39の中心部には、底壁部39を内外に連通する管継手などにより形成された流出管40の基端部が取り付けられており、その先端(下端)は、底壁部39の下面より下方に突出されている。そして、流出管40の先端の開口は、濾液Eを外部に排出する流出口41とされている。
前記本体胴部33の支持リング34と底壁部39との間には、フィルタケース4の内部空間の容積を減らすためのブロック5としての胴ブロック5aが配置されている。この胴ブロック5aは、フィルタケース4の内部空間のうちのフィルタサポート3におけるガイドチューブ20とケース本体30における本体胴部33との相互間の内部空間の容積を減らすためのものである。そして、胴ブロック5aは、例えば全体として直径寸法が支持リング34の内径寸法より若干小径の円柱状に形成されている。この胴ブロック5aの内側には、胴ブロック5aを長さ方向に貫通する4つの装着孔5aaが形成されている(図6)。これらの装着孔5aaは、ガイドチューブ20が挿通されるものであり、その内径寸法は、ガイドチューブ20の外径寸法より3mm程度大径とされている。これにより、袋状フィルタ2aの外周から径方向外側に流出する濾液Eを円滑に流下させることのできる流路を確保することができるようになっている。なお、本体胴部33の内面のうちの支持リング34より下方には、胴ブロック5aの位置決めに用いるための図示しない複数の位置決めガイドが設けられている。
前記本体胴部33の開口端側には、フィルタケース4の内部空間の容積を減らすためのブロック5としての上ブロック5bが配置されている。この上ブロック5bは、フィルタケース4の内部空間のうちのフィルタサポート3の上方における本体胴部33の内部空間の容積を減らすためのものである。そして、上ブロック5bは、例えば全体として直径寸法が環状体36の内径寸法より若干小径の筒状に形成されている。また、上ブロック5bは、その上面が環状体36の上面と同一高さ位置となるように上下方向に示す長さ寸法が設定されている。さらに、上ブロック5bの内孔は、後述する流入口54を介してフィルタケース4の内部に流入する原液Gを4つの袋状フィルタ2aのそれぞれの開口に誘導することができるとともに、4つの取付リング7のそれぞれの上面のうちの本体胴部33の内孔側に位置する外周側の一部を上方から覆うことができる形状とされている。この上ブロック5bの横断面形状を図4に斜線領域にて示す。なお、上ブロック5bとしては、本体胴部33の内径寸法より若干小径の筒状に形成してもよい。この場合、上ブロック5bの上面が環状体36の下面より下方となるように長さ寸法を設定することができる。また、上ブロック5bとしては、本体胴部33の内径寸法より若干小径の大径部と、環状体36の内径寸法より若干小径の小径部とを有する段付き筒状としてもよい。
前記胴ブロック5aおよび上ブロック5bの材料としては、樹脂、樹脂発泡体、金属などを挙げることができる。なお、ブロック5の材料としては、軽量化を容易に図ることができるという意味では、樹脂、より好ましくは樹脂発泡体を用いるとよい。また、ブロック5の材料として樹脂発泡体を用いる場合には、気泡が連通しないのでフィルタケース4の内部空間の容積を確実に減らすことができるし、接触する原液Gあるいは濾液Eを円滑に流動させることができるなどという意味で独立気泡とすることが好ましい。
ここで、上ブロック5bの材料としては、加工粉Kとの接触による摩耗を低減できるという意味では、金属を用いるとよい。勿論、ブロック5の材料としては、装置の仕様、設計コンセプトなどの必要に応じて設定することができる。また、ブロック5の配置としては、フィルタケース4の内部空間のうちの少なくともフィルタサポート3とケース本体30との相互間の一部に配置されていればよく、装置の仕様、設計コンセプトなどの必要に応じて設定することができる。さらに、ブロック5の形状としては、装置の仕様、設計コンセプトなどの必要に応じて設定することができる。
前記本体胴部33の外周面の下側には、ケース本体30を支持するための複数、本実施形態においては3つの脚部47の上部がその長さ方向を上下方向に向けて接合などにより取り付けられている。これら3つの脚部47の下端には、設置対象箇所との取り付けに用いる取付孔48aを有する平板状の設置板48が取り付けられている(図4−図7)。なお、脚部47の数としては、4以上としてもよい。
前記上蓋31は、ケース本体30の上部開口を覆うものであり、金属あるいは樹脂により形成されている。この上蓋31は、図1に示すように、円筒状に形成された蓋胴部51と、この蓋胴部51の上部開口を閉塞するようにほぼ円盤状に形成された蓋天壁部52とにより、全体として下部が開口する有底円筒状に形成されている。そして、蓋胴部51の内孔は、ケース本体30の上端部の外周面を取り囲むことができるように、環状体36の外径寸法より大径に形成されている。
前記蓋天壁部52の中心部には、蓋天壁部52を内外に連通する管継手の一種であるブッシングなどからなる流入管53の基端部が取り付けられており、その先端(上端)は、蓋天壁部52の上面より上方に突出されている。そして、流入管53の上方を向いた先端の開口は、フィルタケース4の内部に原液Gを流入させる流入口54とされている。
図2および図3に示すように、流入管53の蓋天壁部52の上方に突出した上部には回転自在な回転リング56が取り付けられており、この回転リング56の外周面には、蓋支持棒57の基端部が固着されている。この蓋支持棒57は、回転リング56の外周面から径方向外側に向かって延出された水平部57aと、この水平部57aの先端から蓋胴部51の外周に沿って下方に延出された垂直部57bとにより、全体として倒立L字状の棒状に形成されている。
前記垂直部57bの中間部分は、本体胴部33の外周面に取り付けられた上下1対の蓋棒支持ブラケット58に設けられた上下方向に延在するスライド孔58a(図4、図5)に挿通されており、垂直部57bの先端(下端)は、蓋棒支持ブラケット58の下方に突出されている。
前記垂直部57bの先端部には、平面矩形のブロック体57cが図示しない割りピンなどにより着脱自在に取り付けられており、ケース本体30に対するフィルタサポート3の着脱時において、上蓋31をケース本体30の上方へ移動させた際に、ブロック体57cが蓋棒支持ブラケット58に当接することで、上方への最大移動位置が規制されている。このケース本体30に対する上蓋31の上方への移動量は、蓋胴部51の軸線方向の長さ寸法より大きくされており、上蓋31をケース本体30の上方に離間させた際に、スライド孔58aに蓋支持棒57の垂直部57bを挿入した状態で、上蓋31をスライド孔58aを中心として回転させることにより、ケース本体30の上部開口を外部に露出させることができるようになっている。
これにより、フィルタケース4に対するフィルタサポート3の着脱時に、ケース本体30から上蓋31を外してケース本体30の上部を上方から作業者が容易に視認することができるし、上蓋31がケース本体30から離間することがないので、作業性を向上、すなわち作業者による使い勝手の向上を図ることができるようになっている。
図1および図3に示すように、前記蓋天壁部52の上面の径方向外側には、蓋天壁部52を内外に連通する管継手の一種であるソケットなどからなる供給管60の基端部が接合などにより取り付けられており、その先端は、蓋天壁部52の上面より上方に突出されている。そして、供給管60の上方を向いた先端の開口は、袋状フィルタ2aの交換などのメンテナンス時において、フィルタケース4の内部に残存する原液Gを濾液Eとするとともに、フィルタケース4の内部に残存する濾液Eを排出する脱液時に、フィルタケース4の内部に圧縮空気などの脱液用気体D(図9)を供給する供給口61とされている。なお、供給管60は、装置の仕様や設計コンセプトなどの必要に応じて設ければよい。
図1から図3に示すように、前記蓋天壁部52の径方向外側の供給管60と干渉しない位置には、2つの蓋グリップ63の基端部がその先端を上方に向けて取り付けられている。これらの蓋グリップ63は、ケース本体30に対する上蓋31の着脱時に、作業者が把持して操作するためのものである。また、2つの蓋グリップ63は、蓋天壁部52の軸線を中心として対向配置されている。
図1および図2に示すように、前記蓋胴部51の外周面には、本体胴部33に配設された3つの係止ピン35(図1において2つのみ図示)のそれぞれが挿入可能な3つの係止溝65(図1において2つのみ図示)が形成されている。これらの係止溝65は、蓋胴部51の中心から等距離位置において隣位する2つの係止溝65の距離が等しくなるように等角度配置されている。また、3つの係止溝65のそれぞれは、蓋胴部51の下端面から上方に向かって形成された係止ピン35が挿入可能な内外を径方向に貫通する第1挿入溝65aと、この第1挿入溝65aの天部から蓋胴部51の周方向に沿って形成された係止ピン35が挿入可能な内外を径方向に貫通する第2挿入溝65bとを有している。
前記第2挿入溝65bは、第1挿入溝65aから離間した先端に向かって上方に傾斜するように形成されている。そして、上蓋31の係止ピン35を第1挿入溝65aに挿入した後、上蓋31を周方向に回して係止ピン35を第2挿入溝65bの先端に向かって挿入することにより、蓋天壁部52の下面と、これに対向する本体胴部33の上端面とが接近するようになっており、開口用ガスケット38を上下方向に圧縮した状態で上蓋31がケース本体30に着脱自在に取り付けられている。
図2に示すように、上蓋31とケース本体30とは、周知のラッチ錠70により抜け止めがなされている。すなわち、係止ピン35を第2挿入溝65bの先端に向かって挿入した後に、ラッチ錠70をかけることにより、上蓋31がケース本体30から離脱できないように形成されている。このラッチ錠70は、例えばケース本体30の外周面に取り付けられた進退操作可能とされたラッチ部を具備するラッチ本体70aと、ラッチ部が挿脱自在に挿入されるラッチ受け70bとを有している。なお、ラッチ錠の代わりに周知のスナップ錠を用いてもよい。
なお、図1から図8において、要部についてのみ符号を付してあるとともに、複数の同じ部分品については一部にのみ符号を付してある。
ここで、本実施形態の濾過装置1の設置例、すなわち濾過システムの一例について図9により説明する。
図9に示すように、本実施形態の濾過システム80においては、濾過装置1に対してクーラントタンク82に貯留された原液Gがポンプ86により供給できるようになっている。このクーラントタンク82は、濾過対象液としての工作機械に供給するクーラントである原液Gを濾過した後の濾液E(未使用のクーラントを含む)を貯留する供給液貯留部83と、濾過対象液としての工作機械から回収した使用後のクーラントである原液Gを貯留する原液貯留部84とを有している。
前記濾過装置1の流入管53には、流入用バルブ88が直接あるいは図示しないジョイントを介して接続されており、この流入用バルブ88には、ホースなどの可撓性を有する原液供給用配管89の一端が直接あるいは図示しないジョイントを介して接続されている。この原液供給用配管89の他端は、濾過状態において原液Gの液面下となるように、原液貯留部84の底面近傍に配置されている。なお、原液供給用配管89の他端にストレーナを配置する構成としてもよい。
前記濾過装置1の供給管60には、供給用バルブ91が直接あるいは図示しないジョイントを介して接続されており、この供給用バルブ91には、ホースなどの可撓性を具備する脱液用供給配管92の一端が直接あるいは図示しないジョイントを介して接続されている。この脱液用供給配管92の他端は、図示しないジョイントを介して脱液用気体Dとしての圧縮空気を供給する供給源としてのエアーコンプレッサなどからなる圧縮空気供給源93に直接あるいは図示しないエアー配管を介して間接的に接続されている。
前記濾過装置1の流出管40には、流出用バルブ95が直接あるいはジョイントを介して接続されており、この流出用バルブ95には、ホースなどの可撓性を具備する流出用配管96の一端が図示しないジョイントを介して接続されている。この流出用配管96の他端は、ポンプ86の図示しない吸込口に接続されている。また、ポンプ86の図示しない吐出口には、ホースあるいは配管などにより形成された還流用配管97の一端が図示しないジョイントを介して接続されており、還流用配管97の他端は、供給液貯留部83の上方に配置されている。
なお、流入用バルブ88、供給用バルブ91および流出用バルブ95のそれぞれは、手動弁であってもよいし、操作弁であってもよい。この操作弁としては、空気圧駆動、電気駆動などから選択することができる。
前記ポンプ86は、原液供給用配管89を介してフィルタケース4の内部に原液Gを吸引供給するものであり、本実施形態においては、運転を停止した際に、フィルタケース4の内部に流入した原液Gおよび袋状フィルタ2aを通過した濾液Eの共有液面を同一高さ位置に保持させることができるという意味でダイヤフラムポンプが好ましい。また、ポンプ86としては、空気圧駆動、電気駆動などから選択することができる。本実施形態においては、空気圧駆動のダイヤフラムポンプが用いられている。さらに、ポンプ86としては、自給式および非自給式のどちらも使用することができるが、初回のみ呼び水をすれば次回からは呼び水をしなくても原液Gの吸引を行うことができるという意味で自給式が好ましい。そこで、本実施形態のポンプ86としては、作業者の使い勝手のよい自給式のものが用いられている。
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
まず、本実施形態の濾過装置1を用いた濾過システム80による濾過動作について説明する。
本実施形態の濾過装置1による濾過は、流入用バルブ88および流出用バルブ95を開操作してそれぞれの流路を開放し、供給用バルブ91を閉操作してその流路を遮断した閉状態でポンプ86を駆動することにより行う。そして、ポンプ86を駆動すると、ポンプ86の自給作用により原液供給用配管89からポンプ86に至る流路に存在する空気がポンプ86から排出される。そして、ポンプ86に至る流路から空気が排出されると、ポンプ86の自給作用が完了し、クーラントタンク82の原液貯留部84に貯留された原液Gは、原液供給用配管89の先端から吸い込まれ、原液供給用配管89の内部を流動し、流入用バルブ88を介して濾過装置1の流入口54からフィルタケース4の内部に流入する。
このとき、ブロック5の存在により、フィルタケース4の内部空間の容積を減らすことができるので、複数の袋状フィルタ2aを使用しても、ポンプ86の自給作用を短時間で完了させることができる。すなわち、ポンプ86の自給完了までの時間を実用上問題がない程度に短くすることができる。これにより、フィルタケース4の内部に原液Gを簡単に吸引することができる。
ついで、フィルタケース4の内部に流入した原液Gは、上ブロック5bの内孔を通過して各袋状フィルタ2aの内部に流入する。そして、袋状フィルタ2aの内部に流入した原液Gは、袋状フィルタ2aの内部を流下しながら袋状フィルタ2aの内部を内側から外側に向かって通過する。この時、原液Gに含まれる所定の大きさ、例えば20μm以上の加工粉Kは、袋状フィルタ2aの編み目により捕捉されることで分離され、袋状フィルタ2aの内部に残留して濾塊になる。
ここで、袋状フィルタ2aが弾性繊維によって伸縮自在に形成されているので、濾塊の堆積の進行にともなって、袋状フィルタ2aは、その長さ方向に順次伸長するとともに、濾塊の堆積部分が拡径するので、原液Gから分離した加工粉Kの濾塊により袋状フィルタ2aが目詰まりしてきた場合にも、袋状フィルタ2aが膨張して袋状フィルタ2aの編み目が拡大することにより初期の濾過機能を維持する。なお、袋状フィルタ2aの最大伸長は、その下端がケース本体30の底壁部39の上面に当接することにより規制され、最大径は、ガイドチューブ20の内面に当接することにより規制される。
ついで、袋状フィルタ2aを通過した濾液Eは、流出口41、流出用バルブ95、流出用配管96、ポンプ86、および還流用配管97をこの順に通過して還流用配管97の先端からクーラントタンク82の供給液貯留部83に流入する。
また、袋状フィルタ2aにより捕捉された加工粉Kは、袋状フィルタ2aの内部において底部から順次堆積して濾塊となる。
上記のように、本実施形態の濾過装置1によれば、流入口54からフィルタケース4の内部に流入した原液Gは、袋状フィルタ2aを通過する際に、原液Gに含まれる所定の大きさ以上の加工粉Kが袋状フィルタ2aの編み目により捕捉されることで分離され、袋状フィルタ2aの内部に残留する。また、袋状フィルタ2aにより濾過された濾液Eは、流出口41から流出する。
また、本実施形態の濾過装置1によれば、ブロック5の存在により、フィルタケース4の内部空間の容積を減らすことができるので、フィルタケース4の内部に複数の袋状フィルタ2aを使用しても、濾過の開始時に、フィルタケース4の内部に原液Gを簡単に吸引することができる。これにより、原液Gの吸引に自給式のポンプ86を用いることが可能になる。その結果、作業者による使い勝手の向上を容易に図ることができる。勿論、複数の袋状フィルタ2aを使用することで、大流量の原液の濾過を確実に行うことができる。
さらに、本実施形態の濾過装置1のブロック5は、フィルタサポート3におけるガイドチューブ20の外周面とケース本体30の内面との相互間に配置された胴ブロック5aと、ケース本体30における本体胴部33の開口端側に配置された上ブロック5bとを有しているから、フィルタケース4の内部空間の容積を容易に減らすことができる。
さらにまた、本実施形態の濾過装置1によれば、ブロック5が樹脂あるいは樹脂発泡体により形成されているから、ブロック5を金属により形成する場合に比較して、軽量化を図ることができる。勿論、ブロック5を金属により形成することにより、加工粉Kとの接触による摩耗を抑えることができる。
また、本実施形態の濾過装置1によれば、フィルタ2が袋状であるから、フィルタ2を容易に形成することができる。
さらに、本実施形態の濾過装置1によれば、袋状フィルタ2aが編まれた伸縮性糸により伸縮自在に形成されているから、袋状フィルタ2aの目詰まりの進行にともなって編み目が拡大して、濾過機能の低下や流量の低下を軽減することができるし、袋状フィルタ2aの下端側から目詰まりが生じても、袋状フィルタ2aの目詰まりしていない上端側により濾過機能が保持されるので、全体として初期の濾過機能を長期間に亘って保持することができる。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、フィルタとして筒状フィルタを用いる構成とした場合、フィルタサポートの取付リングとして、筒状フィルタの一端部である上端部が拡開されて外側に折り返すように取り付けられてフィルタ取付板の鍔支持面によって下方から支持される上取付リング部と、筒状フィルタの他端部である下端部が拡開されて外側に折り返すように取り付けられて下受け筒部の上端によって下方から支持される下取付リング部と、上取付リング部と下取付リング部とを所定の間隔をおいて接続する上下接続部とを有する全体として筒状に形成し、上下接続部の外周面には、筒状フィルタで濾過した後の濾液を通過させるための内外を連通する通過開口を形成する構成を挙げることができる。この場合、上下接続部は、ガイドチューブとしての機能を具備する構成となる。