JP2015223259A - ハイドロキシアパタイト誘導体粒子群 - Google Patents

ハイドロキシアパタイト誘導体粒子群 Download PDF

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カーロ和重 河邉
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Abstract

【課題】優れた生体適合性、生体組織に対する密着性あるいは接着性、低い生体分解吸収性等のHApの機能を維持したまま、健全な組織に悪影響を殆ど与えることのないマイルドな抗菌性を有するハイドロキシアパタイト誘導体粒子からなるハイドロキシアパタイト誘導体粒子群を提供する。
【解決手段】抗菌材料として、ハイドロキシアパタイトの結晶構造中のカルシウムイオンの少なくとも一部が銀イオンに置換された抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子、又は、ハイドロキシアパタイトの結晶構造中の水酸化物イオンの少なくとも一部がフッ化物イオンに置換された抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子からなるハイドロキシアパタイト誘導体粒子群を使用する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ハイドロキシアパタイトの結晶構造の一部が他のイオンで置換された抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子からなるハイドロキシアパタイト誘導体粒子群に関する。
従来から、溶媒中で単結晶一次粒子として存在し、分散性の高いセラミック粒子、特に生体適合性、生体組織に対する密着性あるいは接着性を有し、生体分解吸収性の低い、医療用材料に有用である単結晶ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH)、以下、「HAp」と称する。)を始めとするリン酸カルシウム焼成体粒子群(セラミック粒子群)が知られていた(例えば、特許文献1を参照)。このような単結晶HApの用途としては、骨充填剤、歯科用充填剤、薬物徐放剤等の歯科用材料や、医療用材料や、菌体、酵母等の固定化担体、カラムクロマトグラフィー用充填剤、消臭剤等の吸着剤等や、ナノメートルサイズのドラッグデリバリーシステム(ナノDDS)等の各種用途が知られていた。
特許第5043436号公報
ここで、HAp等のリン酸カルシウム焼成体粒子群を、骨充填剤、歯科用充填剤、薬物徐放剤等の歯科用材料や、医療用材料や、タンパク質、アミノ酸、多糖類、生理活性物質等の固定化担体、カラムクロマトグラフィー用充填剤、消臭剤等の吸着剤等や、ナノメートルサイズのドラッグデリバリーシステム(ナノDDS)等の用途に利用する場合、抗菌作用が要求されるケースが多い。このようなケースでは、これまでは、例えば、Ag等の抗菌性金属や当該金属のイオンやその他の抗菌成分をHAp等と混合する等して、単純に組み合わせて用いることが一般的であった。
しかしながら、上記のように、単にAg等の抗菌性金属やその他の抗菌成分をHApと単純に組み合わせて用いた場合、抗菌性が強すぎるため、菌等に感染した組織のみならず、健全な組織にも悪影響を与える、という問題があった。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた生体適合性、生体組織に対する密着性あるいは接着性、低い生体分解吸収性等のHApの機能を維持したまま、健全な組織に悪影響を殆ど与えることのないマイルドな抗菌性を有するハイドロキシアパタイト誘導体粒子からなるハイドロキシアパタイト誘導体粒子群を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、銀イオン(Ag)またはフッ化物イオン(F)をHApの結晶構造中に組み込むことにより、HApの結晶構造の一部を銀イオンまたはフッ化物イオンで置換したAg−HAp、F−HApといったHAp誘導体がマイルドな抗菌性を有することを見出した。また、本発明者らは、このようなマイルドな抗菌性を有するHAp誘導体の粒子からなるHAp誘導体粒子群を抗菌成分として用いることで、優れた生体適合性、生体組織に対する密着性あるいは接着性、低い生体分解吸収性等のHApの機能を維持したまま、健全な組織に悪影響を殆ど与えることのないマイルドな抗菌性を有する材料が得られることを見出した。以上のような知見に基づいて本発明が完成された。
すなわち、本発明は、ハイドロキシアパタイトの結晶構造中のカルシウムイオンの少なくとも一部が銀イオンに置換された抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子からなることを特徴とする、ハイドロキシアパタイト誘導体粒子群(第1のハイドロキシアパタイト誘導体粒子群)である。
前記第1のハイドロキシアパタイト誘導体粒子群において、5.0×10個/μLの所定の微生物と、銀イオン換算で2.47mmol/L以上の濃度で前記抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子と、を共存させた分散液を調製し、当該分散液を培地にスポットし、37℃で1日培養した後の殺菌率が90%以上であることが好ましい。
前記第1のハイドロキシアパタイト誘導体粒子群において、前記抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子のXRDにより定量したハイドロキシアパタイト結晶相純度が90%以上であることが好ましい。
また、本発明は、ハイドロキシアパタイトの結晶構造中の水酸化物イオンの少なくとも一部がフッ化物イオンに置換された抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子からなることを特徴とする、ハイドロキシアパタイト誘導体粒子群(第2のハイドロキシアパタイト誘導体粒子群)である。
前記第2のハイドロキシアパタイト誘導体粒子群において、5.0×10個/μLの所定の微生物と、フッ化物イオン換算で89.3mmol/L以上の濃度で前記抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子と、を共存させた分散液を調製し、当該分散液を培地にスポットし、37℃で1日培養した後の殺菌率が50%以上であることが好ましい。
前記第2のハイドロキシアパタイト誘導体粒子群において、5.0×10個/μLの所定の微生物と、フッ化物イオン換算で178.6mmol/L以上の濃度で前記抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子と、を共存させた分散液を調製し、当該分散液を培地にスポットし、37℃で1日培養した後の殺菌率が95%以上であることが好ましい。
前記第1及び第2のハイドロキシアパタイト誘導体粒子群において、前記抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子が、焼成ハイドロキシアパタイト誘導体粒子であることが好ましい。
前記第1及び第2のハイドロキシアパタイト誘導体粒子群において、前記抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子の粒子径が、10nm〜1,000nmの範囲内であることが好ましい。
本発明によれば、HApの結晶構造の一部を銀イオンまたはフッ化物イオンで置換したAg−HAp、F−HApといったHAp誘導体の粒子からなるHAp誘導体粒子群を抗菌成分として用いることにより、HApの機能を維持したままマイルドな抗菌性を有する材料を得ることができる。また、このようなマイルドな抗菌性により、菌等に感染していない健全な組織には殆ど悪影響を与えることなく、殺菌作用や静菌作用を発揮することが可能となる。
実施例で作製したAg−HApのFTIRスペクトルを示す図である。 実施例で作製したAg−HApのXRD回折パターンを示す図である。 実施例で作製したAg−HApのSEM画像(倍率2万倍)を示す写真である。 実施例におけるAg−HAP又はF−HApを用いた抗菌性試験におけるサンプルの希釈方法を示す模式図である。 実施例で作製したAg−HApの抗菌性試験の結果を示す写真である。 実施例で作製したF−HApのXRD回折パターンを示す図である。 市販のF−HApのSEM画像(倍率2万倍)を示す写真である。 実施例で作製したF−HApのSEM画像(倍率2万倍)を示す写真である。 実施例で作成したF−HApと市販のHAp(3種類)耐酸性を表したグラフである。 実施例におけるNaFを用いた抗菌性試験の方法を示す模式図である。 実施例におけるNaFを用いた抗菌性試験の結果を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明に係るHAp誘導体粒子群については、以下の順序で説明する。
1 HAp誘導体粒子群の構成
2 抗菌作用の原理
3 HAp誘導体粒子群の用途
≪HAp誘導体粒子群の構成≫
初めに、本発明に係るHAp誘導体粒子群の構成について説明する。本発明に係るHAp誘導体粒子群は、HApの結晶構造中に銀イオン又はフッ化物イオンを含むHAp誘導体粒子からなる。本発明者らが知見したところによれば、この銀イオン又はフッ化物イオンを含むHAp誘導体粒子群は、マイルドな抗菌性を有するものである。ここで、本明細書で言う「マイルドな抗菌性」とは、菌等に感染していない健全な組織には殆ど悪影響を与えることなく、菌等に対して殺菌作用や静菌作用を発揮することが可能な程度の抗菌性を意味する。言い換えると、「マイルドな抗菌性」とは、銀イオンを含むHAp誘導体に関しては、HAp誘導体粒子群が抗菌性を発揮するために必要な銀イオン量が、銀イオン単独で抗菌性を発揮するために必要な銀イオン量と比較して非常に多く、抗菌活性が抑制されている場合を意味する。また、フッ化物イオンを含むHAp誘導体に関しては、HAp誘導体粒子群が抗菌性を発揮するために必要なフッ化物イオン量が、広く抗菌性が認知されている銀イオンの濃度、及び、上記銀イオンを含むHAp誘導体中に含まれる銀イオン量と比較して非常に多く、抗菌活性が抑制されている場合を意味する。
なお、本発明に係るHAp誘導体粒子群が抗菌性を発現可能な微生物(ここでは、狭義の「微生物」だけでなく、ウイルスや菌類をも含む概念である。)としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、赤痢菌(Shigella dysenteriae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、チフス菌(Salmonella typhimurium)、サルモネラ菌(Salmonella enteritidis)、ペスト菌(Yersinia. pestis )、腸炎エルシニア (Yersinia enterocolitica)、セラチア菌(Serratia marcescens)、プロテウス菌(Proteus, Providencia, Morganella)、シトロバクター菌(Citrobacter freundii)、コレラ菌 (Vibrio cholerae)、腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、セパシア菌(Burkholderia (Pseudomonas) cepacia)、レジオネラ菌(Legionella pneumophila)、百日咳菌 (Bordetella pertussis)、淋菌 (Niserria gonorrhoeae)、髄膜炎菌 (Niserria meningitides)カタル球菌(Moraxella (Branhamella) catarrhalis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、バクテロイド属菌等の細菌(Bacteroides fragilis )、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin−resistant Staphylococcus aureus:MRSA)、古草菌(Bacillus subtilis)、セレウス菌(Bacillus cereus)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens )、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、ジフテリア菌 (Corynebacterium diphthriae)、ノルカジア菌(Nocardia属菌 )、腸内細菌エンテロバクテリア(Enterobacter cloacae)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、アシネトバクテリア菌(Acinetobacter calcoaceticus)、腸球菌(Enterococcus属菌)、バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin−resistant Enterococcus、VRE)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、B群レンサ球菌(Streptococcus agalactiae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、アクネ菌(Propionibacterium acnes)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、カンピロバクター(Campylobacter jejuni, Campylobacter coli)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumonia)、性行為感染症クラミジア(Chlamydia trachomatis)、歯周病菌(Porphyromonas gingivalis, Treponema denticola, Tannerella forsythensis)などの細菌;白癬菌(Trichophyton rubrum, Trichophyton mentagrophytes)、アスペルギルス菌(Aspergillus fumigatus)、カンジダ菌(Candida albicans)、クリプトコッカス菌(Cryptococcus neoformans)等の真菌類;インフルエンザウイルス(influenzavirus) 、肝炎ウイルス(hepatitisvirus)、ヘルペスウイルス(Herpesviridae)、ヘルペスウイルス(herpesvirus)、アデノウイルス(adenovirus)、エイズウイルス(Human Immunodeficiency Virus:HIV)等のウイルス等が挙げられる。
また、本発明に係るHAp誘導体粒子群を抗菌材料として用いる場合には、HAp誘導体粒子が水や有機溶媒等に溶解又は分散された液体状の抗菌材料であってもよく、HAp誘導体粒子を顆粒状、塊状、シート状などに加工した固体状の抗菌材料であってもよく、HAp誘導体粒子と他の材料とを混合したり、他の材料の表面にHAp誘導体粒子を偏在させたりした抗菌性を有する複合材料であってもよい。
本発明における抗菌性HAp誘導体としては、HApの結晶構造の一部が銀イオンに置換されたAg−HApと、HApの結晶構造の一部がフッ化物イオンに置換されたF−HApとがある。以下、Ag−HApとF−HApについて詳細に説明する。
ここで、本発明で用いるAg−HAp及びF−HApとしては、例えば、これらのHAp誘導体の粒子からなるHAp誘導体粒子群を医療用材料、高分子医療用材料に結合させる場合やクロマトグラフィー用の充填剤として利用する場合においては、生体内での安定性の向上や成形性を確保するため、HAp誘導体粒子群を焼成して得られる焼成HAp誘導体粒子群(焼成体)であることが好ましい。また、焼成HAp誘導体粒子群(焼成体)は結晶質であり、このような結晶質の焼成体を抗菌材料として用いることで、よりマイルドな抗菌性を発揮することができる。このように、焼成体の方が未焼成体よりも抗菌性がマイルドである理由は明らかではないが、本発明者らは、未焼成体は非晶質であるため、イオンの溶出速度が早くなるため、短期間に集中して抗菌作用が発現する、また、抗菌作用の発現に必要なイオン濃度が一時的に高まるため、生体組織への損傷リスクが高くなり、さらには、抗菌作用の発現に必要なイオン濃度を維持できる期間が短くなるためと推測している。なお、この焼成体はセラミックであり、ここでのセラミックとしては、狭義のセラミックのみならず、いわゆる「ニューセラミック」あるいは「ファインセラミック」を含む広義のセラミックをも意味する。なお、焼成方法の詳細については後述する。
また、焼成HAp誘導体の粒子の集合からなる焼成HAp誘導体粒子群は、後述する融着防止剤の作用によって一次粒子同士の融着が防止されているために、その過半数が一次粒子の状態を維持している。よって、当該焼成HAp誘導体粒子群を溶媒中に懸濁した際には、該焼成HAp誘導体粒子群の過半数が単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊(単結晶一次粒子)で分散することができる。
さらに、焼成HAp誘導体粒子群を医療用高分子基材に吸着させる場合は、分散性が高いことが重要である。また、クロマトグラフィー用充填剤として利用する場合は、表面積が高いことが重要である。本発明に係る焼成HAp誘導体粒子群は、その過半数が単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊(単結晶一次粒子)であり、溶媒中で分散性が良く、二次粒子を形成していないためにその表面積も高い。したがって、本発明に係る焼成HAp誘導体粒子群は、特に上記用途に好適に利用することができる。
ここで、焼成HAp誘導体粒子が一次粒子で存在しているか否かを評価する方法としては、例えば、電子顕微鏡観察によって粒子径を測定した結果と、動的光散乱法により溶媒に懸濁した状態で粒子径を測定した場合の結果とを対比することにより、両者の結果がほぼ一致すれば、その焼成HAp誘導体粒子群のほとんどが一次粒子の状態であると判断することができる。一方、電子顕微鏡観察による粒子径の測定結果より、動的光散乱法による粒子径測定の結果が大きくなれば、一次粒子同士の融着が起こり二次粒子を形成しているものと判断することができる。
なお、焼成HAp誘導体粒子群を分散させる溶媒としては、焼成HAp誘導体粒子を溶解しないものであれば特に限定されるものではない。例えば、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、トルエン、キシレン、ヘキサン、ドデカン、シクロヘキサン等の炭化水素類、クロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等が挙げられ、これらの溶媒は、使用目的に応じて1種もしくは2種を選択して使用すればよい。
動的光散乱法から求めた粒子径分布図をもとに、電子顕微鏡から求めた一次粒子の粒子径とほぼ一致する粒子径である粒子の割合を求めることで、単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊(単結晶一次粒子)の割合が算出可能である。
焼成HAp誘導体の原料、融着防止剤の種類、焼成の条件等によって異なる場合があるが、後述する本発明に係る焼成HAp誘導体粒子群の製造方法によれば、少なくとも50%以上が単結晶一次粒子として存在し、より好適な場合には60%以上が単結晶一次粒子として存在し、最も好適な条件下においては70%以上が単結晶一次粒子として存在させることができる。
また、焼成HAp誘導体粒子を医療用高分子基材に吸着させる場合や、クロマトグラフィー用充填剤、医療用材料等に用いる場合においては、その粒子が微細(ナノメートルサイズ)であることが好ましい。かかる微細な(ナノメートルサイズの)焼成HAp誘導体粒子群を製造するためには、後述する本発明に係る焼成HAp誘導体粒子群の製造方法の一次粒子生成工程において、微細(ナノメートルサイズ)の一次粒子を作製しておけばよい。例えば、一次粒子生成工程において、10nm〜1,000nm、より好ましくは15nm〜700nm、最も好ましくは20nm〜500nmの範囲内の粒子径を有する一次粒子を作製しておくことで、10nm〜1,000nm、より好ましくは20nm〜700nm、最も好ましくは25nm〜750nmの範囲内の一次粒子径を有する焼成HAp誘導体粒子群を製造することができる。
また、焼成HAp誘導体粒子群は、その粒子径が均一である(粒度分布が狭い)ことが好ましい。かかる粒子径が均一な(粒度分布が狭い)焼成HAp誘導体粒子群を製造するためには、上記一次粒子生成工程において、粒子径が均一な(粒度分布が狭い)一次粒子群を作製しておけばよい。かかる粒子径が均一な(粒度分布が狭い)焼成HAp誘導体粒子群は、例えば医療用高分子基材に吸着させる場合や、クロマトグラフィー用充填剤、医療用材料等に好適に利用可能である。
[Ag−HAp:構造]
Ag−HApは、銀イオンを結晶構造中に含んでおり、HApの結晶構造中のカルシウムイオン(Ca2+)部分(少なくとも一部)が銀イオン(Ag)に置換されたものである。言い換えると、Ag−HApは、銀イオンをHApのカルシウムイオンの位置にドープしたHAp誘導体である。このAg−HApは、銀イオンを含まないHApとは異なり抗菌性を有するものであり、また、銀イオンとHApとの単なる混合物と比較して抗菌性はマイルドなものとなる。なお、Ag−HApにおいて、HAp結晶構造中のカルシウムイオンの少なくとも一部が銀イオンで置換されている場合、HAp結晶構造中の水酸化物イオンの少なくとも一部が、フッ化物イオン又はその他の陰イオンで置換されていてもよい。
[Ag−HAp:合成方法]
上述したような特徴を有するAg−HApは、湿式法、乾式法、加水分解法、水熱法等の既知の製造方法によって製造することができる。以下の説明では、湿式法の一つである共沈法を用いてAg−HApを合成する方法を例に挙げ、Ag−HApの合成方法を述べる。なお、湿式法を含む化学反応法を用いることで、低温合成が可能となることから、化学組成を容易に制御でき、また、医学的処置における応用にも好適である。
本発明に係るAg−HApの製造方法は、少なくとも「一次粒子生成工程」を含んでいればよいが、この他、「混合工程」、「焼成工程」、「除去工程」を含んでいてもよい。なお、以下の説明においては、上記4工程を全て含んだ製造方法について説明する。
本発明に係るAg−HApの製造方法において、上記4工程は、例えば「1.一次粒子生成工程」→「2.混合工程」→「3.焼成工程」→「4.除去工程」の順で行われる。
(1.一次粒子生成工程)
ここで、「一次粒子」とは、HAp誘導体粒子の製造工程の焼成前に、HAp誘導体原料(フッ素、HAp等)によって形成された粒子のことを意味する。すなわち、HAp誘導体粒子の製造工程において、初めて形成された粒子のことを意味する。また、狭義には単結晶粒子のことを意味する。なお、本発明の説明において「一次粒子」とは、非晶質(アモルファス)の状態のもの、及びその後に焼成を行った焼成体の状態のものをも含む意味である。
これに対して、「二次粒子」とは、複数の「一次粒子」同士が、融着等の物理的結合、イオン結合又は共有結合等の化学的結合によって、結合して形成された状態の粒子を意味する。特に、一次粒子同士の結合の個数、結合後の形状等は限定されるものではなく、2つ以上の一次粒子が結合したもの全てを意味する。
特に、「単結晶一次粒子」とは、HAp誘導体原料の単結晶からなる一次粒子、もしくは前記単結晶からなる一次粒子がイオン的相互作用にて集合化した粒子塊を意味する。なお、「イオン的相互作用にて集合化した粒子塊」とは、水もしくは有機溶媒を含む媒体にて分散させた場合にイオン的相互作用で自己集合する粒子塊であって、焼成により粒子間が溶融して多結晶化した二次粒子を含まないものである。
一次粒子生成工程は、上述した一次粒子を生成することができる工程であれば特に限定されるものではなく、製造するHAp誘導体の原料により適宜選択の上、採用すればよい。例えば、以下の方法によりAg−HApの一次粒子を生成することができる。まず、所定の溶媒に、銀(Ag)源(銀化合物)及びカルシウム(Ca)源(カルシウム化合物)を溶解させ、所定時間撹拌し、銀化合物溶液とカルシウム化合物溶液を調製する。同様に、所定の溶媒にリン(P)源(リン化合物)を溶解させ、所定時間撹拌し、リン化合物溶液を調製する。次に、銀化合物溶液とカルシウム化合物溶液を混合した後に、更に、リン化合物溶液を滴下、混合し、所定温度に加熱して撹拌する。その結果、Ag−HApの粒子が沈殿する。
Ag−HApの原料については、Ag源としては、硝酸銀、過塩素酸銀、銀アンミン錯体、銀チオ硫酸錯体、銀シアノ錯体等、Ca源としては、硝酸カルシウム(水和物も含む。)、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム等、P源としては、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム等を用いることができる。また、上記原料を溶解させる溶媒としては、上記原料が溶解するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、水、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、トルエン等が挙げられる。上記Ag源、Ca源、P源、溶媒としては、上述した化合物を単独で使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。
本発明に係るHAp誘導体粒子の製造方法は、上記の一次粒子生成工程によって生成した一次粒子の集合からなる一次粒子群を、融着等を防止しながら焼成してHAp誘導体粒子の集合からなるHAp誘導体粒子群を製造するものである。よって、当該一次粒子生成工程によって生成された一次粒子の状態(粒子径、粒度分布)が、最終生産物であるHAp誘導体粒子の状態(粒子径、粒度分布)にそのまま反映される。
また、本工程には生成した一次粒子を水等で洗浄する工程、遠心分離、ろ過等で一次粒子を回収する工程が含まれていてもよい。
(2.混合工程)
本混合工程は、上記工程で生成された一次粒子と、焼成時における一次粒子同士の融着を防止する融着防止剤とを混合する工程である。上記一次粒子生成工程によって得られた一次粒子群の粒子間に、予め融着防止剤を介在させておくことで、その後の焼成工程における一次粒子同士の融着を防止することができる。なお、本混合工程によって得られた一次粒子と融着防止剤との混合物を「混合粒子」と呼ぶこととする。
ここで、「融着防止剤」としては、一次粒子間の融着を防止できるものであれば特に限定されるものではないが、後の焼成工程の焼成温度において、不揮発性であることが好ましい。焼成温度条件下で不揮発性であるために、焼成工程中に一次粒子間から消失することは無く、一次粒子同士の融着を確実に防止することができるからである。ただし、焼成温度において100%の不揮発性を有する必要は無く、焼成工程終了後に一次粒子間に10%以上残存する程度の不揮発性であればよい。また、融着防止剤は、焼成工程終了後に熱により化学的に分解するものであってもよい。すなわち、焼成工程終了後に残存していれば、焼成工程の開始前後で、同一の物質(化合物)である必要は無い。
また、融着防止剤が、溶媒、特に水系溶媒に溶解する物質であることが好ましい。このように、融着防止剤として、溶媒に溶解する融着防止剤を用いることにより、融着防止剤が混在するHAp誘導体粒子群を純水等の水系溶媒に懸濁するだけで、融着防止剤(例えば、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム等)を除去することができる。特に、水系溶媒に溶解する融着防止剤であれば、融着防止剤を除去する際に有機溶媒を用いる必要が無いため、除去工程に有機溶媒の使用に対応する設備、有機溶媒廃液処理が不要となる。それゆえ、より簡便にHAp誘導体粒子群から融着防止剤を除去することができる。上記溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水系溶媒としては、水、エタノール、メタノール等が挙げられ、有機溶媒としては、アセトン、トルエン等が挙げられる。
また、上記水系溶媒は、融着防止剤の水への溶解性を上げるために、シュウ酸塩、エチレンジアミン、ビピリジン、エチレンジアミン四酢酸塩などのキレート化合物を含んでいてもよい。さらに、上記水系溶媒は、融着防止剤の水への溶解性を上げるために、塩化ナトリウム、硝酸アンモニウム、炭酸カリウム等の電解質イオンを含んでいてもよい。
上記融着防止剤の具体例としては、塩化カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム等のカルシウム塩(または錯体)、塩化カリウム、酸化カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウム等のカリウム塩、塩化ナトリウム、酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム等のナトリウム塩等が挙げられる。
なお、本混合工程において一次粒子と融着防止剤とを混合させる方法については、特に限定されるものではなく、固体の一次粒子に固体の融着防止剤を混合後、ブレンダーを用いて混合する方法であってもよいし、融着防止剤の溶液中に一次粒子を分散させる方法であってもよい。ただし、固体と固体を均一に混合することは困難であるため、一次粒子間に均一かつ確実に融着防止剤を介在させるためには、後者が好ましい方法であるといえる。後者の方法を採用した場合は、一次粒子を分散させた融着防止剤溶液を乾燥させておくことが好ましい。一次粒子と融着防止剤が均一に混合された状態を長期にわたって持続することができるからである。
また、本混合工程は、側鎖にカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを有する高分子化合物を含む溶液と、上記一次粒子とを混合し、金属塩(アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩および/または遷移金属塩)をさらに添加する工程であってもよい。この工程を採用することによって、高分子化合物がHAp誘導体表面に吸着することで融着防止剤混合過程におけるHAp誘導体同士の接触を確実に防ぐことができ、その後にカルシウム塩を添加することでHAp誘導体表面に確実に融着防止剤を析出させることが可能となる。なお、以下の説明において、側鎖にカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを有する高分子化合物のことを、単に「高分子化合物」と称する。
上記高分子化合物は、側鎖にカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを有する化合物であれば特に限定されるものではない。例えば、側鎖にカルボキシル基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシメチルセルロース、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられ、側鎖に硫酸基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸アルキル硫酸エステル、ポリメタクリル酸アルキル硫酸エステル、ポリスチレン硫酸等が挙げられ、側鎖にスルホン酸基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸アルキルスルホン酸エステル、ポリメタクリル酸アルキルスルホン酸エステル、ポリスチレンスルホン酸等が挙げられ、側鎖にリン酸基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸アルキルリン酸エステル、ポリメタクリル酸アルキルリン酸エステル、ポリスチレンリン酸、ポリアクリロイルアミノメチルホスホン酸等が挙げられ、側鎖にホスホン酸基を有する高分子化合物としては、ポリアクリル酸アルキルホスホン酸エステル、ポリメタクリル酸アルキルホスホン酸エステル、ポリスチレンホスホン酸、ポリアクリロイルアミノメチルホスホン酸、ポリビニルアルキルホスホン酸等が挙げられ、側鎖にアミノ基を有する高分子化合物としては、ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、ポリメタクリル酸アミノアルキルエステル、ポリアミノスチレン、ポリペプチド、タンパク質等が挙げられる。なお当該混合工程においては、上記高分子化合物のいずれか1種類を用いればよいが、複数種類の高分子化合物を混合して用いてもよい。
なお、高分子化合物を含む溶液は、水溶液であることが好ましい。HAp誘導体の焼成体粒子は強い酸性条件下で溶解してしまうからである。このとき、高分子化合物が含まれる水溶液のpHは、5以上14以下でHAp誘導体粒子が不溶な条件あれば特に限定されるものではない。当該高分子化合物を含む水溶液は、高分子化合物を蒸留水、イオン交換水等に溶解し、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液でpHを調整すればよい。
また、上記水溶液に含まれる高分子化合物の濃度は、0.001%w/v以上50%w/v以下が好ましく、0.005%w/v以上30%w/v以下がさらに好ましく、0.01%w/v以上10%w/v以下が最も好ましい。上記好ましい範囲未満であると一次粒子間に入り込む量が少なく、一次粒子同士の接触を阻止する割合が低くなる。また上記好ましい範囲を超えると、高分子化合物の溶解が困難となること、当該高分子化合物を含む溶液の粘度が高くなる等の操作性が悪くなるために好ましくない。
本発明における混合工程では、上記高分子化合物を含む溶液と、一次粒子とを混合する。かかる混合は、例えば、当該溶液中に一次粒子を投入し、撹拌操作等によって、当該一次粒子を分散させればよい。かかる操作によって、上記本発明に係るHAp誘導体粒子群の製造方法では、一次粒子の表面に上記高分子化合物が吸着し、カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基のいずれかを当該一次粒子の表面に付加することができる。このとき当該カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基またはアミノ基は、溶液中でイオンの状態で存在している。
次に、高分子化合物を含む溶液と一次粒子とを混合した溶液に、金属塩(アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩および/または遷移金属塩)をさらに添加すれば、上記一次粒子の表面に存在するカルボン酸イオン、硫酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン、ホスホン酸イオン、アミノイオンと、金属イオン(アルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンおよび/または遷移金属イオン)とが結合し、一次粒子の表面にカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩が生じる。かかる金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩が、上記融着防止剤として機能する。したがって、金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩がその表面に生じた一次粒子は、いわゆる「混合粒子」である。なお、かかる金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩は沈殿するため、当該沈殿物を回収後、乾燥させて後述する焼成工程に供すればよい。前記乾燥は、例えば減圧条件下で、加熱して行う方法が挙げられる。なお、上記乾燥においては、乾燥温度を下げることができることから減圧条件下が好ましいが、大気圧条件下で行ってもよい。
上記アルカリ金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、塩化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ酸ナトリウム、酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、セレン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、リン化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩化カリウム、次亜塩素酸カリウム、亜塩素酸カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ酸カリウム、酸化カリウム、過酸化カリウム、硫酸カリウム、チオ硫酸カリウム、セレン酸カリウム、亜硝酸カリウム、硝酸カリウム、リン化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム等が利用可能である。
また、上記アルカリ土類金属塩としては、例えば、塩化マグネシウム、次亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、過酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸マグネシウム、セレン酸マグネシウム、亜硝酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、リン化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ酸カルシウム、酸化カルシウム、過酸化カルシウム、硫酸カルシウム、チオ硫酸カルシウム、セレン酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等が利用可能である。
また、上記遷移金属塩としては、例えば塩化亜鉛、次亜塩素酸亜鉛、亜塩素酸亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、ヨウ酸亜鉛、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、硫酸亜鉛、チオ硫酸亜鉛、セレン酸亜鉛、亜硝酸亜鉛、硝酸亜鉛、リン化亜鉛、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、塩化鉄、次亜塩素酸鉄、亜塩素酸鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、ヨウ酸鉄、酸化鉄、過酸化鉄、硫酸鉄、チオ硫酸鉄、セレン酸鉄、亜硝酸鉄、硝酸鉄、リン化鉄、炭酸鉄、水酸化鉄等が利用可能である。また、ニッケル化合物であってもよい。
なお、高分子化合物を含む溶液と一次粒子とを混合した溶液に添加する金属塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩)は、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。また、金属塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属)は、固体の状態としてもよいが、均一に添加することができること、および添加する濃度を制御することが可能である等の理由から水溶液として添加することが好ましい。また、添加する金属塩(アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩および/または遷移金属塩)の量(濃度)は、一次粒子表面に存在するカルボン酸イオン、硫酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン、ホスホン酸イオン、アミノイオンと結合して、金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩が生じる条件であれば特に限定されるものではなく、適宜検討の上、決定すればよい。
ここで、上記工程によって一次粒子の表面に生じた金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)のカルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミノ酸塩は、後述する焼成工程において熱分解を受け、金属(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属)の酸化物になる。例えば、一次粒子の表面にポリアクリル酸カルシウムが生じている場合は、焼成工程によって酸化カルシウムとなる。なお、当該金属酸化物(アルカリ金属酸化物および/またはアルカリ土類金属酸化物(例えば酸化カルシウム)および/または遷移金属酸化物)は水溶性であるため、後述する除去工程によって簡単に除去することが可能である。
また、ポリアクリル酸ナトリウムは水に可溶なため、本混合工程において融着防止剤としてそのまま利用可能であるが、ポリアクリル酸カルシウムは水に不溶なため、一旦ポリアクリル酸のみを一次粒子表面に吸着させた後に、カルシウム塩等を添加することで、ポリアクリル酸カルシウムを一次粒子表面に析出させるようにすることが好ましい。
(3.焼成工程)
本焼成工程は、上記混合工程によって得られた混合粒子を焼成温度に曝して、当該混合粒子に含まれる一次粒子をセラミックのHAp誘導体粒子(焼成体粒子)にする工程である。一次粒子の粒子間に融着防止剤が介在しているために、焼成工程における高温条件に曝された場合であっても一次粒子同士の融着を防止することができる。
当該焼成工程における焼成温度は、HAp誘導体粒子の硬度が所望の硬度となるように適宜設定すればよく、例えば、100℃〜1800℃の範囲内がより好ましく、150℃〜1500℃がさらに好ましく、200℃〜1200℃が最も好ましい。さらに、マイルドな抗菌性を発現させるという観点からは、焼成温度を500℃以上とすることが好ましく、700℃以上とすることがより好ましい。また、焼成時間については所望するHAp誘導体粒子の硬度等を基準に適宜設定すればよい。例えば、後述する実施例においては、700℃で2時間焼成を行っている。
なお、本焼成工程に用いる装置等は特に限定されるものではなく、製造規模、製造条件等に応じて市販の焼成炉(電気炉等)を適宜選択の上、採用すればよい。
(4.除去工程)
本除去工程は、上述した焼成工程によって得られたHAp誘導体粒子群の粒子間に混在する融着防止剤を取り除く工程である。
除去の手段および手法については、上記混合工程において採用した融着防止剤に応じて適宜採用すればよい。例えば、溶媒溶解性を有する融着防止剤を用いた場合は、HAp誘導体粒子を溶解しない溶媒(非溶解性)でかつ融着防止剤を溶解する(溶解性)溶媒を用いることによって、融着防止剤のみを溶解して除去することができる。用いる溶媒としては、上記要件を満たす溶媒であれば特に限定されるものではなく、水系溶媒であっても、有機溶媒であってもよい。例えば、水系溶媒としては、水、エタノール、メタノール等が挙げられ、有機溶媒としては、アセトン、トルエン等が挙げられる。
また、上記水系溶媒は、融着防止剤の水への溶解性を上げるために、シュウ酸塩、エチレンジアミン、ビピリジン、エチレンジアミン四酢酸塩等のキレート化合物を含んでいてもよい。さらに、上記水系溶媒は、融着防止剤の水への溶解性を上げるために、塩化ナトリウム、硝酸アンモニウム、炭酸カリウム等の電解質イオンを含んでいてもよい。
ただし、当該除去工程において有機溶媒の使用に対応する設備が不要となること、有機溶媒廃液処理が不要となること、製造作業の安全性が高いこと、環境に対するリスクが低いこと等の理由から、使用する溶媒は水系溶媒が好ましい。
ところで、溶媒を用いて融着防止剤を除去する場合は、焼成工程によって得られた融着防止剤を含むHAp誘導体(焼成体)粒子群を溶媒に懸濁させた後、ろ過または遠心分離によってHAp誘導体(焼成体)粒子のみを回収すればよい。本発明に係るHAp誘導体粒子群の製造方法において、上記操作は1回に限られるものではなく2回以上行ってもよい。上記操作を複数回行うことで、HAp誘導体粒子間の融着防止剤の除去率がさらに向上する。ただし、製造工程が複雑になること、製造コストが高くなること、HAp誘導体粒子の回収率が低下すること等の理由により、必要以上に多く上記操作を行うことは好ましくない。よって、上記操作の回数は、目標とする融着防止剤の除去率を基準に適宜決定することが好ましい。
なお、本工程には、さらに粒子径を均一にするために分級する工程が含まれていてもよい。
上記溶媒を用いて融着防止剤を除去する方法の他、融着防止剤に磁性体を用いることによって、マグネットを用いて融着防止剤を除去することができる。より具体的には、焼成工程によって得られた融着防止剤を含むHAp誘導体粒子(粗HAp誘導体粒子)群を適当な溶媒(水等)に懸濁して分散させた後、当該懸濁液に磁力をかけ、融着防止剤のみをマグネットに吸着させ、吸着しなかったHAp誘導体粒子のみを回収する。また、特に溶媒に懸濁することなく、粗HAp誘導体粒子をすりつぶして粉体にした後、マグネットによって融着防止剤を分離する方法であってもよい。ただし、懸濁液にした方がHAp誘導体粒子と融着防止剤が剥離しやすく、融着防止剤の除去率は高い。なお、この手法を適用することができるHAp誘導体粒子は、非磁性体または、弱磁性体であることが好ましい。
[Ag−HAp:同定方法]
上述したようにして合成されたAg−HApは、例えば、各種構造解析手法により同定することができる。例えば、X線回折装置(X−Ray Diffractometer:XRD)を用いて測定した回折パターンと、既知のAg−HApの回折パターンとを比較し、これらの回折パターンがほぼ一致していれば、Ag−HApが得られていると同定することができる。なお、上記回折パターンにおけるピーク値から結晶格子の軸長を調べることができ、この軸長からカルシウムイオンが銀イオンに置換されていることを確認することもできる。
また、フーリエ変換型赤外分光分析(FTIR)によれば、得られたAg−HApに含まれる官能基を同定することができる。
また、合成したAg−HApを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することで、Ag−HAp粒子の表面形状や粒径を測定することができる。
また、合成したAg−HApを誘導結合プラズマ−原子発光分析法(ICP−AES)により分析することで、Ag−HApナノ結晶中の元素の組成比及び銀の量を求めることができる。
なお、Ag−HApの結晶構造中に、あまりに多くの銀イオンが含まれていると、金属銀がHApの結晶構造から析出し、Ag−HApの結晶構造を維持することができないおそれがある。すると、HAp自体の特性(例えば、生体中での安定性、生体適合性、生体組織に対する密着性あるいは接着性等)が発揮されなくなる可能性もあるとともに、生体毒が生じる恐れがある。また、銀イオンが多すぎると、金属銀の析出に伴い、Ag−HApの結晶構造を構成するイオン種の比率が崩れ、リン酸三カルシウム(β−TCP)等の他の結晶層が生成し、Ag−HAp粒子の水溶性、生体中での代謝速度が高まりすぎるため、HAp代替材料として使用する場合には不適である。さらに、結晶構造を維持することができないため、銀イオンの放出速度が高まり、マイルドな抗菌性を発揮できなくなってしまう。このような観点から、Ag−HApの結晶構造中のAgの置換割合(=Ag/(Ca+Ag)×100[mol%])が、0.75mol%未満であることが好適である。このようなAgの置換割合である場合には、Ag−HAp粒子のXRDにより定量した(XRDの回折パターンから求めた)ハイドロキシアパタイト結晶相純度が90%以上となる。ここで、XRDによる定量分析方法としては、一般に、リートベルト法、検量線法、回折積分強度比を用いた方法等が知られているが、本発明では、これらのいずれかの方法を用いて結晶相純度を求めることができる。
さらに、合成したAg−HApを誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)により分析することで、元素の組成比を求めることができる。
[Ag−HAp:抗菌力]
上述したようにして得られるAg−HApの抗菌力は、例えば、以下に述べる条件を満たすことが好ましい。すなわち、マイクロプレートリーダーで測定した吸光度の値が0.1(10個/μL)に濃度調整した所定の細胞を含む菌液と、該菌液と同体積のNaCl溶液にAg−HAp粒子を銀イオン換算で2.47mmol/L以上の濃度で分散させた溶液と、を混合した混合液を培地にスポットし、37℃で1日培養した後の殺菌率が90%以上であることが好ましい。これにより、本発明のHAp誘導体粒子群が、健全な組織に対しては悪影響を与えずに細菌等を静菌又は殺菌することが可能な、マイルドな抗菌性をより確実に発揮することができる。なお、ここでの「銀イオン換算の濃度」とは、抗菌力の評価に使用したAg−HApの組成(Ca10−x・Ag(PO(OH))からその式量を求め、この式量と、上記NaCl溶液中のAg−HApのモル濃度(mol/L)とから算出された、上記NaCl溶液中に含まれる銀イオンのモル濃度(mol/L)を意味する。
[F−HAp:構造]
F−HApは、フッ化物イオンを結晶構造中に含んでおり、HApの結晶構造中の水酸化物イオン(OH)部分(少なくとも一部)がフッ化物イオン(F)に置換されたものである。言い換えると、F−HApは、フッ化物イオンをHApの水酸化物イオンの位置にドープしたHAp誘導体である。このF−HApは、フッ化物イオンを含まないHApとは異なり抗菌性を有するものであり、また、フッ化物イオンとHApの単なる混合物と比較して抗菌性はマイルドなものとなる。さらに、F−HApは、高い耐酸性も有する。なお、F−HApにおいて、HAp結晶構造中の水酸化物イオンの少なくとも一部がフッ化物イオンで置換されている場合、HAp結晶構造中のカルシウムイオンの少なくとも一部が、銀イオン又はその他の陽イオンで置換されていてもよい。
ここで、例えば、カテーテル等の医療機器は、体外と体内を繋いで、血液の輸血や排液といった医療行為に用いられるが、カテーテル等の材料として、一般に、シリコーン等の弾力性が優れた高分子材料が使用されているが、実際に長期間このデバイスを装着する場合、カテーテルと生体との接着部に隙間が生じ、細菌感染を引き起こすことが懸念されていた。そこで、近年、細菌感染を防止するのに有用な、高い分散性と結晶性を有するHApナノ単結晶を作製し、高分子基材にコーティングしたカテーテルの開発が行われている。これにより、生体とデバイスが密着し、刺入部からの細菌侵入を従来のカテーテルに比較して有意に抑制することが可能となる。しかしながら、経皮デバイスの周囲に極度の炎症が生じると、好中球やマクロファージなどの食細胞がこれを貪食し、食べた異物を溶かすために活性酸素やライソゾーム酵素を放出する。過酸化水素などの活性酸素は、プロトンを放出し炎症をおこした周囲が弱酸性となるため、酸に弱いHApが溶解することが危惧されている。
このような場合に、高分子基材の表面に、高い耐酸性を有するF−HApをコーティングすることで、活性酸素等により溶解することを抑制することができる。また、F−HApは、通常のHApに比べ耐酸性が向上し、かつマイルドな抗菌性を発現するため、本発明のF−HApを歯科用材料として使用することで、う蝕を予防することができる。
[F−HAp:合成方法]
上述したような特徴を有するF−HApは、湿式法、乾式法、加水分解法、水熱法等の既知の製造方法によって製造することができる。以下の説明では、湿式法の一つである共沈法を用いてF−HApを合成する方法を例に挙げ、F−HApの合成方法を述べる。
本発明に係るF−HApの製造方法は、少なくとも「一次粒子生成工程」を含んでいればよいが、この他、「混合工程」、「焼成工程」、「除去工程」を含んでいてもよい。なお、以下の説明においては、上記4工程を全て含んだ製造方法について説明する。
本発明に係るF−HApの製造方法において、上記4工程は、例えば「1.一次粒子生成工程」→「2.混合工程」→「3.焼成工程」→「4.除去工程」の順で行われる。
(1.一次粒子生成工程)
ここで、「一次粒子」、「二次粒子」、「単結晶一次粒子」の定義については、Ag−HApと同様である。
一次粒子生成工程は、上述した一次粒子を生成することができる工程であれば特に限定されるものではなく、製造するHAp誘導体の原料により適宜選択の上、採用すればよい。例えば、以下の方法によりF−HApの一次粒子を生成することができる。まず、所定の溶媒に、フッ素(F)源(フッ素化合物)及びカルシウム(Ca)源(カルシウム化合物)を溶解させ、所定時間撹拌し、フッ素化合物溶液とカルシウム化合物溶液を調製する。同様に、所定の溶媒にリン(P)源(リン化合物)を溶解させ、所定時間撹拌し、リン化合物溶液を調製する。次に、フッ素化合物溶液とカルシウム化合物溶液を混合した後に、更に、リン化合物溶液を混合し、所定温度に加熱して撹拌する。その後、常温で更に所定時間撹拌する。その結果、F−HApの粒子が沈殿する。
F−HApの原料については、F源としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等、Ca源としては、硝酸カルシウム(水和物も含む。)、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム等、P源としては、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム等を用いることができる。また、上記原料を溶解させる溶媒としては、上記原料が溶解するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、水、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、トルエン等が挙げられる。上記Ag源、Ca源、P源、溶媒としては、上述した化合物を単独で使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。
本発明に係るHAp誘導体粒子の製造方法は、上記の一次粒子生成工程によって生成した一次粒子の集合からなる一次粒子群を、融着等を防止しながら焼成してHAp誘導体粒子の集合からなるHAp誘導体粒子群を製造するものである。よって、当該一次粒子生成工程によって生成された一次粒子の状態(粒子径、粒度分布)が、最終生産物であるHAp誘導体粒子の状態(粒子径、粒度分布)にそのまま反映される。
また、本工程には生成した一次粒子を水等で洗浄する工程、遠心分離、ろ過等で一次粒子を回収する工程が含まれていてもよい。
(2.混合工程)
本混合工程は、上記工程で生成された一次粒子と、焼成時における一次粒子同士の融着を防止する融着防止剤とを混合する工程である。本混合工程については、上述したAg−HApの場合と同様であるので、詳細な説明を省略する。
(3.焼成工程)
本焼成工程は、上記混合工程によって得られた混合粒子を焼成温度に曝して、当該混合粒子に含まれる一次粒子をセラミックのHAp誘導体粒子(焼成体粒子)にする工程である。本焼成工程についても、上述したAg−HApの場合と同様であるので、詳細な説明を省略する。ただし、後述する実施例における焼成条件は、Ag−HApの場合と異なり、800℃で1時間焼成を行っている。
(4.除去工程)
本除去工程は、上述した焼成工程によって得られたHAp誘導体粒子群の粒子間に混在する融着防止剤を取り除く工程である。本除去工程についても、上述したAg−HApの場合と同様であるので、詳細な説明を省略する。
[F−HAp:同定方法]
上述したようにして合成されたF−HApは、例えば、各種構造解析手法により同定することができる。例えば、X線回折装置(X−Ray Diffractometer:XRD)を用いて測定した回折パターンと、既知のF−HApの回折パターンとを比較し、これらの回折パターンがほぼ一致していれば、F−HApが得られていると同定することができる。なお、上記回折パターンにおけるピーク値から結晶格子の軸長を調べることができ、この軸長から水酸化物イオンがフッ化物イオンに置換されていることを確認することもできる。
また、フーリエ変換型赤外分光分析(FTIR)によれば、得られたF−HApに含まれる官能基を同定することができ、さらに、合成したF−HApと市販されているF−HApのFTIRのスペクトルを比較し、各官能基に帰属する吸収ピークがほぼ一致していれば、合成したものがF−HApであると推測することができる。
また、合成したF−HApを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することで、F−HAp粒子の表面形状や粒径を測定することができる。
また、フッ素イオン濃度計を用いることで、合成したF−HAp中のフッ化物イオンの濃度を測定することができ、当該フッ化物イオン濃度の測定値と、理論濃度(化学両論的に求めたF−HAp中のフッ化物イオン濃度)との比から、HAp中の水酸化物イオンのフッ化物イオン置換率を求めることもできる。
[F−HAp:抗菌力]
上述したようにして得られるF−HApの抗菌力は、例えば、以下に述べる条件を満たすことが好ましい。すなわち、マイクロプレートリーダーで測定した吸光度の値が0.1(10個/μL)に濃度調整した所定の細胞を含む菌液と、該菌液と同体積のNaCl溶液にF−HAp粒子をフッ化物イオン換算で89.3mmol/L以上の濃度で分散させた溶液と、を混合した混合液を培地にスポットし、37℃で1日培養した後の殺菌率が50%以上であることが好ましい。これにより、本発明の抗菌剤が、健全な組織に対しては悪影響を与えずに細菌等を静菌することが可能な、マイルドな抗菌性をより確実に発揮することができる。さらに、マイクロプレートリーダーで測定した吸光度の値が0.1(10個/μL)に濃度調整した所定の細胞を含む菌液と、該菌液と同体積のNaCl溶液にF−HAp粒子をフッ化物イオン換算で178.6mmol/L以上の濃度で分散させた溶液と、を混合した混合液を培地にスポットし、37℃で1日培養した後の殺菌率が95%以上であることが好ましい。これにより、本発明の抗菌剤が、健全な組織に対しては悪影響を与えずに細菌等を殺菌することが可能な、マイルドな抗菌性をより確実に発揮することができる。なお、ここでの「フッ化物イオン換算の濃度」とは、抗菌力の評価に使用したF−HApの組成(Ca10(PO2−y(OH))からその式量を求め、この式量と、上記NaCl溶液中のF−HApのモル濃度(mol/L)とから算出された、上記NaCl溶液中に含まれるフッ化物イオンのモル濃度(mol/L)を意味する。
≪抗菌作用の原理≫
本発明に係る抗菌剤の作用機序は不明であるが、本発明者らは、上述したようにHAp誘導体をナノ粒子にした結果、数μm程度の大きさの菌の内部に取り込まれやすくなり、このようにして菌の内部に取り込まれたマイルドな抗菌性を有するHAp誘導体が、菌の内部から菌を静菌又は殺菌する作用を示すものと推測している。
≪抗菌剤の用途≫
本発明に係るHAp誘導体、特に、焼成HAp誘導体は、生体活性が非常に高いため、医療分野において、例えば、骨充填剤、歯科用充填剤、薬物徐放剤等の歯科用材料または医療用材料として広く用いることができる。また、HAp誘導体は、生体活性が高いので、特に医療用材料として好適に用いることができる。また、焼成HAp誘導体粒子群は、菌体、酵母等の固定化担体、カラムクロマトグラフィー用充填剤、消臭剤等の吸着剤等に好適に用いることができる。さらに、本発明にHAp誘導体は、ナノメートルサイズのドラッグデリバリーシステム(ナノDDS)にもその利用が期待される。特に、本発明に係るHAp誘導体及びこれを含む抗菌剤は、これらの用途の中でも、抗菌性が要求される用途、例えば、体外と体内を繋いで、カテーテル、人工関節等の医療機器等の用途に好適に用いられる。
次に、本発明を実施例及び比較例により、更に具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
≪Ag−HAp≫
初めに、Ag−HApを合成し、得られたAg−HApを同定した上で、当該Ag−HApの抗菌性について評価した結果を説明する。
<Ag−HApの合成>
湿式法の一つである共沈法を用いて、Ag−HAp{Ca10−xAg(PO(OH)(式中、x=0、0.1、0.2)}ナノ単結晶の作製を行った。出発原料については、Ca源として硝酸カルシウム四水和物{Ca(NO・4HO}、P源としてリン酸二水素アンモニウム{(NHHPO}、Ag源として硝酸銀{AgNO}を用い、脱イオン水中で混合しながら室温で合成された。具体的には以下のようにして行った。
(一次粒子生成工程)
硝酸カルシウム四水和物、硝酸銀、及びリン酸二水素アンモニウムとしては、いずれも和光純薬工業株式会社から購入したものを精製せずに用いた。また、HAp中の銀含有量を確認するために、Ca:Ag=80:20(モル%)のAg含有HApを調製した。すべての反応は100℃の温度で行い、(Ca2+ + Ag):PO 3−のモル比が10:6となるように計算して反応物の量を定めた。
まず、80mmolの硝酸カルシウム四水和物及び20mmolの硝酸銀をそれぞれ300mLの脱イオン水と混合し、0.3Mの溶液(Ca及びAgの硝酸塩溶液)を調製した。この溶液を油浴内において、100℃で30分間撹拌した。同様に、所定量のリン酸二水素アンモニウムを300mLの脱イオン水と混合し、0.2Mの溶液(リン溶液)を調製した。この溶液に28%濃度のNHOHを加えることによりpHを10.0に調整し、室温で30分間撹拌した。次いで、100℃の温度に維持したCa及びAgの窒化物溶液に、リン溶液を一滴ずつ添加し、これらの溶液を混合した。リン溶液の添加が終了した後、混合物を2時間100℃に維持した状態で撹拌した。撹拌(反応)中、溶液のpHが10.0に保たれるように常にpHを調整した。リン溶液をCa及びAgの窒化物溶液に混合する前は、両者の溶液は透明であったが、リン溶液の添加量を増やすにつれ、混合溶液は徐々に白色になった。得られた混合溶液を12時間放置した後、不純物イオン(NH 、NO )を取り除くために遠心分離法を用いて脱イオン水で3回洗浄した。洗浄後、混合物をろ過して湿ったケーク(Ag−HApケーク)を得た。湿ったケークを低圧ポンプにより十分に乾燥した後に、オーブン内に60℃で一晩放置した。さらに、Ag−HApケークをめのう乳鉢と乳棒を用いて粉砕してAg−HAp粉体を得た。
(混合工程及び焼成工程)
次に、上記で得られたAg−HAp粉体の一部を融着防止剤を添加せずに焼成し、他の一部を融着防止剤と混合した後に焼成した。焼成は、るつぼ内にて700℃で2時間行った。
(除去工程)
最後に、Ag−HApの焼成体にNHNO溶液を加えることでpHを約7まで低下させた後に、遠心分離を用いて脱イオン水で洗浄した。洗浄後、Ag−HApの焼成体をろ過し、60℃のオーブンで十分に乾燥させ、Ag−HApの焼成体のサンプルを得た。
<Ag−HApの同定>
上述のようにして得られたAg−HApのサンプルに関し、Ag−HApの同定として、フーリエ変換型赤外分光光度計(FTIR)による官能基分析、X線回折装置(XRD)による結晶構造解析、走査型電子顕微鏡(SEM)による表面形状及び粒径測定、並びに、誘導結合プラズマ−原子発光分析法(ICP−AES)による元素組成分析を行った。
(FTIRによる官能基分析)
赤外分光測定による官能基の測定は、フーリエ変換型赤外分光光度計(パーキンエルマー(株)製、Spectrum50)を用いて行った。測定方法としてはKBr法を採用した。Ag−HApのサンプル1質量%に対して臭化カリウム(KBr)粉末を99質量%の比率で混合し、乳鉢を用いて十分にすりつぶし、均一に混合した粉末を拡散反射モードで測定波長範囲を4000cm−1から400cm−1、分解能4で積算回数は16回で測定した。なお、F−HApのサンプルとしては、(a)上記一次粒子生成工程で作製したAg−HApと、(b)(a)のAg−HApを融着防止剤を添加せずに焼成したサンプルと、(c)(a)のAg−HApを融着防止剤{Ca(NO}を添加して焼成したサンプルとを用いた。図1に、上記(a)〜(c)のサンプルのIRスペクトルを示す。
図1からわかるように、P−O結合に帰属される吸収ピークが、1095cm−1、1035cm−1、及び960cm−1付近に認められた。また、O−P−O結合に帰属されると考えられる吸収ピークが、606cm−1、561cm−1及び473cm−1付近に認められた。これらの吸収ピークから、いずれのサンプルもホスフェート基を含有していることが示唆された。
また、ヒドロキシル基(水酸基)に帰属される吸収ピークが、3571cm−1および629cm−1付近に認められたことから、いずれのサンプルもヒドロキシル基を含有していることが示唆された。
さらに、いずれのサンプルにおいても、HO分子に帰属される2つのブロードな吸収ピークが、1630cm−1及び3400cm−1付近に観察されたが、700℃で2時間焼成することで大幅にピーク強度が小さくなっていることがわかった。
加えて、図1に示すように、サンプル(b)及び(c)の方がサンプル(a)よりも、632及び3571cm−1のヒドロキシル基に帰属されるピーク強度と、962cm−1のホスフェート基に帰属されるピーク強度が増加していることから、焼成されたサンプルにおいて結晶性が増大していることが示唆された。なお、この結果は、後述するXRDによる結果と一致している。
また、サンプル(a)では、ヒドロキシル基に帰属されるピークがシャープではなかったのに対し、焼成されたサンプル(b)及び(c)では、ヒドロキシル基に帰属されるピークがシャープになったことから、焼成したサンプルでは、完全な結晶質のAg−HApが生成されていることが示唆された。なお、このことは、後述するXRDの回折ピークにおいても観察された。
(XRDによる結晶構造解析)
粉末X線回析装置(理学電機(株)製、RAD−X)を用いて、作製したAg−HApの結晶構造解析を行った。XRDで使用したX線源としてはCuKα線源(λ=1.541841Å(オングストローム))を用い、出力は30kV/15mA、スキャンスピードは1.0°/min、サンプリング幅は0.01°、測定モードは連続の条件とした。図2に、作製したAg−HApのX線回析ピークを示す。なお、ピークの同定には、ICCD−PDFカード(00−009−0432)のHApの標準データと、ICCD−PDFカード(04−0783)の金属銀の標準データとを用いた。
図2に示す作製したAg−HApは、主要なピークについては、ICCD−PDFカード(00−009−0432)のHApデータ(標準HApデータ)とほぼ一致した。また、図2に示すように、2θ=38.1°における金属銀のピークは、上記3種のサンプルのいずれにもほとんど観察されなかった。従って、上記方法で合成したAg−HApは、一次粒子生成直後及び焼成後(融着防止剤の有無に関わらず)のいずれにおいても、銀イオンがHAp結晶中にドープされていることがわかった。
また、上記で測定したX線回折ピークに基づき、上記サンプル(a)〜(c)の結晶格子の(211)面における半値全幅(FWHM:Full Width Half Maximum)を下記表1に示す。なお、表1の上段から順にサンプル(a)、(b)、(c)の結果を示している。なお、標準HApデータにおける(211)面におけるピークは、2θ=31.773°であった。
一般に、X線回折ピークにおけるFWHMは、焼成温度を高くすればするほど減少し、且つ、粒子はより完全な結晶質になることが知られている。本実施例においては、焼成を行っていないサンプル(a)のFWHMよりも、700℃で焼成温度したサンプル(b)及び(c)のFWHMが減少していることから、本実施例で焼成したAg−HApはより完全な結晶質になっていると言える。
また、上記で測定したX線回折ピーク値から軸長を調べた。軸長は、上記で測定したXRDピークから得られた2θの値に基づき、「単位格子ソフト(unit cell soft)」を用いることで計算することができる。その結果を表2に示す。なお、表2の上段から順に、HAp標準データ、サンプル(a)、(b)、(c)の結果を示している。
表2より、作製したAg−HApは、a軸がHAp標準データの軸長より長いことが確認できた。カルシウムイオンの半径(=0.99Å)より銀イオンの半径(=1.28Å)の方が大きいため、HApのカルシウムイオンが銀イオンに置換されたことが示唆された。
(SEMによる表面形状及び粒径測定)
作製したAg−HApの形態をSEMを用いて観察した。作製したAg−HApのサンプル(a)〜(c)のSEM画像を図3に示す。図3に示すように、一次粒子の状態のサンプル(a)では、各粒子が互いに近づいていることが観察された。すなわち、サンプル(a)は、不十分な結晶質(非晶質)であることがわかった。また、融着防止剤を添加せずに焼成したサンプル(b)では、一次粒子同士が融着して大きな塊状となっていることが観察された。一方、融着防止剤を添加して焼成したサンプル(c)では、一次粒子同士がほとんど融着されずに焼結され、球形又は棒状の粒子の混合物である(各粒子が互いに分離されている)ことが観察された。また、一次粒子の粒径は、融着防止剤の有無で殆ど変わらなかった。
また、作製したAg−HApのサンプル(a)〜(c)の平均粒径を動的光散乱法(ELS、「大塚電子製ELS−8000」を用いた)により測定した。
その結果、サンプル(a)の平均粒径が502.0nmであったのに対して、融着防止剤を添加せずに焼成したサンプル(b)の平均粒径は1671.8nmと大きくなることがわかった。一方、融着防止剤を添加して焼成したサンプル(c)の平均粒径は374.7nmと小さかった。このことより、融着防止剤を用いない場合には、一次粒子同士が凝集、融着して二次粒子を形成し、粒径が大きくなることが示唆された。
以上のことから、融着防止剤を用いてF−HApの合成を行ったことにより、1次粒子及び2次粒子ともに小さいF−HApが作製できたと考えられた。
(ICP−AESによる元素組成分析)
Ag−HAp中の銀の組成比を、誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP−AES)により求めた。測定装置としては、Optima 2000DV(株式会社パーキンエルマージャパン製)を用いた。ICP測定用のサンプルとして、100ppmのAg−HAp溶液を調製した。その結果を表3に示した。一次粒子の状態のサンプル(a)(表中の「sample−1」に相当)中のAgは1.5%であるが、融着防止剤を添加して焼成したサンプル(c)(表中の「sample−3」に相当)のAgは0.5%であった。このAgの減少は、除去工程におけるAg−HApの洗浄に起因するものと推測された。
<抗菌性評価>
次に、上記で作成したAg−HApに対する抗菌性評価について説明する。以下の説明では、評価方法、評価結果の順に説明する。
(評価方法)
作製したAg−HApを用いて、粉末添加法によりAg−HApの抗菌性を評価した。なお、Ag−HApの抗菌性はE.Coliに対して行った.E.coliは、インプラントに関連する感染の原因となりうる微生物であり、グラム陰性細菌の一種である。
〔Ag−HApの洗浄〕
まず、抗菌性試験に使用するAg−HAp(Ca9.95Ag0.05(PO(OH):式量=1015.0)の洗浄を行った。乳鉢で十分に粉砕しチューブの中に入れたAg−HAp10mgに、70%エタノールを1mL加えピペッティングした。その後15,000rpmで5分間遠心分離し、上澄みを捨てた。これを2回繰り返し、次に140mMのNaClで同様に洗浄を行った。
〔菌の準備〕
菌液の濃度を調整するためにマイクロプレートリーダーで吸光度を測定した。液体培養した菌を20倍に希釈し、プレートに150μLスポットし波長600nmにおける吸光度を測定した。バックグラウンドには140mMのNaClを用いた。吸光度の値が0.1(10個/μL)になるよう菌液を希釈した。
〔アッセイ〕
粉末添加法
100μL の140mM NaCl溶液に分散させたAg−HApを含む溶液と、菌液100μLをチューブの中に入れ、ピペッティングし、1時間プチローターで撹拌を行い、Ag−HApと細菌とを接触させた。次いで、チューブ5本に180μLずつNaCl溶液を入れたものを用意し、順番に(1)〜(5)と番号をつけ、1時間撹拌させた細菌とAg−HApの混合液20μLを(1)に入れ、ピペッティングして十分に撹拌した。次に(1)の溶液20μLを(2)に入れ、ピペッティングして十分に撹拌した。これを図4のように(2)から(3)、(3)から(4)・・・と同様の手順で繰り返し、細菌とAg−HApの混合液を希釈した(20μLを180μLに加えているため、10倍ずつ希釈していることになる)。さらに、10倍ずつ5段階に希釈した溶液を濃度の薄い(5)から順番に5μLずつ寒天培地のシャーレにスポットし、37℃に設定したインキュベータで1日培養した。なお、抗菌性試験のコントロールとしてB社製HApを使用した。以上のような評価を、100μLのNaCl溶液に分散させるAg−HApをそれぞれ上記サンプル(a)〜(c)としたNo.1〜No.3の溶液に対して行った。なお、NaCl溶液中のAg−HAp濃度は、49.3mmol/L(5.0mg/100μL)とした。
(評価結果)
〔Ag−HApの抗菌性〕
上記粉末添加法によりAg−HApの抗菌性試験を行った結果を図5及び表4に示す。なお、図5の最上段にはコントロールとしてのHApの結果を示し、それ以下の段にはAg−HApの結果を示している。表4に記載の殺菌率は、コントロールのコロニー数に対するAg−HApのコロニー数の割合、すなわち、(F−HApのコロニー数の減少数)/(コントロールのコロニー数)から求めた。その結果、全てのサンプル(a)〜(c)において、すなわち、焼成の有無に関わらず、90%以上の殺菌率を示した。なお、本抗菌性試験は、上記No.1〜No.3の溶液に対して、それぞれ3回ずつ(n=3)行った。また、図5には、n=3のうちの特定の1回の試験の結果を一例として示している。
ここで、本抗菌性試験に使用したAg−HApの組成は、Ca9.95Ag0.05(PO(OH)であることから、Agイオン換算での濃度(Agイオン濃度)は、49.3mmol×0.05=2.47mmol/Lである。一般に、Agイオン単独での抗菌性としては、Agイオン濃度が5〜10ppb(0.093×10−3mmol)であれば大腸菌に対して抗菌性を発現すると言われている。一方で、上記試験に示すように、Ag−HApとしての抗菌性を発現させるためには、Agイオン換算で、2.47mmol/L必要となり、Agイオン単独の場合と比較して、抗菌性を発現するためにより多くのAgイオンを必要とすることがわかった。このことから、Ag−HApの抗菌性は、Agイオン単独の抗菌性と比較してマイルドであると言える。
≪F−HAp≫
次に、F−HApを合成し、得られたF−HApを同定した上で、当該F−HApの耐酸性及び抗菌性について評価した結果を説明する。
<F−HApの合成>
湿式法の一つである共沈法を用いて、F−HApナノ単結晶の作製を行った。出発原料については、Ca源として硝酸カルシウム四水和物、P源としてリン酸、F源としてフッ化ナトリウムを用いた。具体的には以下のようにして行った。
(一次粒子生成工程)
エタノール(99.5%水溶液)200mlに硝酸カルシウム四水和物7.03gとフッ化ナトリウム0.254gをそれぞれ溶解させ、窒素雰囲気下で30分間撹拌した。同様に、エタノール50mlにリン酸2.04gを溶解させ、窒素雰囲気下で30分間撹拌した。次に、硝酸カルシウムにフッ化ナトリウムを一気に混合し、5分撹拌後リン酸を加え、ウォーターバスにて80℃に保ったまま1時間撹拌し反応させた。その後、常温で15時間撹拌を行った。撹拌後、遠心分離機を用いて6,500rpmで3分間遠心分離し、上澄み液を捨てた。純水を加え超音波照射を行い、沈殿した反応物を十分に分散させ、6,500rpmで3分間遠心分離を行った。この精製を3回繰り返し、得られたサンプル(F−HAp)を水に分散させた。
(混合工程及び焼成工程)
上記で作製したF−HAp 1.0gに対して、ポリアクリル酸1.0gを100mlの純水に溶解させ、アンモニア水(28.0%)を用いてポリアクリル酸のpHが5になるように調製した(溶液A)。その後、F−HAp溶液を撹拌しながら、溶液Aをペリスタポンプを用いて1分間10mlの割合で滴下した。さらに、5分間そのまま撹拌させた(溶液B)。同様に、作製したF−HAp 1.0gに対して、硝酸カルシウム3.7gを370mlの純水に溶解させた(溶液C)。溶液Bを撹拌しながら、溶液Cをぺリスタポンプを用いて1分間10mlの割合で滴下した。その後、混合液をアスピレータを用いて吸引濾過し、取り出したサンプルを1時間減圧乾燥した。乾燥させたサンプルを乳鉢で粉砕し、るつぼに入れ電気炉にて800℃で1時間焼成した。炉冷後、焼成したF−HApを乳鉢で粉砕した。
(除去工程)
純水800mlに硝酸アンモニウム8.0gを溶解させ、窒素雰囲気下で30分間撹拌した。焼成したF−HApに溶液を加え、超音波照射を行い沈殿した反応物を十分に分散させ、8,500rpmで3分間遠心分離を行った。上澄み液を捨てて硝酸水素アンモニウム水溶液を加え、以下、この精製を上澄み液のpHが中性になるまで4回繰り返した。さらに取り出したサンプルを、純水を用いて同様の方法で精製した。最後に、サンプルを1時間減圧乾燥させ、乳鉢で粉砕し回収した。
<F−HApの同定>
上述のようにして得られたF−HApのサンプルに関し、F−HApの同定として、X線回折装置(XRD)による結晶構造解析、走査型電子顕微鏡(SEM)による表面形状測定及び粒径測定(DLS)による分散性評価、並びに、フッ素イオン濃度計による濃度分析を行った。
(XRDによる結晶構造解析)
粉末X線回析装置(理学電機(株)製、Mini Flex/HCM)を用いて、作製したF−HApの結晶構造解析を行った。XRDで使用したX線源としてはCuKα線源(λ=1.541841Å(オングストローム))を用い、出力は30kV/15mA、スキャンスピードは1.0°/min、サンプリング幅は0.01°、測定モードは連続の条件とした。図6に、作製したF−HApのX線回析ピークを示す。なお、図6の上段がF−HApのピークであり、下段がJCPDSカードのF−HApデータである。
図6からわかるように、作製したF−HApは、JCPDSカードのF−HApデータ(標準データ)のピーク値とほぼ一致した。作製したF−HApにおいて、F単体の回析パターンが検出されていないため、HApの結晶構造の中にフッ化物イオンが置換されていると推測された。以上より、JCPDSカードのF−HApデータと結晶構造が類似したF−HApが作製できたと推測された。
また、上記で測定したX線回折ピーク値から軸長を調べた。その結果を表5に示す。
表5より、作製したF−HApは、a軸がHAp標準品の軸長より短いことが確認できた。水酸化物イオンの半径(=1.37Å)よりフッ化物イオンの半径(=1.33Å)の方が小さいため、HApの水酸化物イオンがフッ化物イオンに置換されたことが分かった。
(SEMによる表面形状測定及びDLSによる分散性評価)
作製したF−HApの形態をSEMを用いて観察した。市販のF−HApを図7に、作製したF−HApのSEM画像を図8に示す。図7、8より、融着防止剤を用いて合成した(上記で作製した)F−HApの方が、市販のF−HApよりも1次粒子が小さく、均一な球体状であることが分かった。
また、作製したF−HApの分散性をDLSによる平均粒径測定の結果から評価した。サンプル(作製したF−HAp及び市販のF−HAp)をエタノール中に分散させ、1重量%のエタノール分散体を調製した。調製後、四面セルにサンプル/エタノール分散体を加えた。解析条件として、解析手法:NNLS、表示項目:自己相関関数、散乱強度ヒストグラム、重量換算ヒストグラム、個数換算ヒストグラムとし、測定波長範囲:8500cm−1〜100cm−1とし粒径分布解析を行った。
その結果、平均粒径は図8の市販のF−HApが17507.7±1161.0nmであり、図8の作製したF−HApが319.2±51.3nmであった。よって、融着防止剤を用いて合成したF−HApの方が2次粒子が小さく、また、粒度分布も小さいことが分かった。
以上のことから、融着防止剤を用いてF−HApの合成を行ったことにより、1次粒子及び2次粒子ともに小さいF−HApが作製できたと考えられた。
(フッ素イオン濃度計による濃度分析)
フッ素イオン濃度計(笠原理化工業(株)製、F−10Z)を用いて、市販のF−HApと作製したF−HApのフッ化物イオン濃度を測定した。サンプル(市販のF−HAp及び作製したF−HAp)約50mgに、0.5M塩酸4mlと純水15mlとを混ぜ合わせ、純水を容積が25mlになるまで加えた。しばらく溶液を振り混ぜた後、サンプルの溶解を確認し、溶解していなければ0.5Mの塩酸を加え溶かした。サンプルの入った溶液25mlとマスキング剤2mlを100mlのメスフラスコに入れ、更に純水を加えて溶液が100mlになるよう調整した。超音波照射により溶液中の濃度を均一にした後、アンモニア水を加えてpHを5.0に調整した。表6にそれぞれのサンプルの理論濃度(mmol/L)、測定濃度(mmol/L)を示す。
表6より、作製したF−HApの方がフッ化物イオン濃度が高いことが確認できた。理論濃度と測定濃度との比から水酸化物イオンのフッ化物イオンによる置換率は約90%であると推測された。
<耐酸性評価>
次に、上記で作成したF−HApに対する耐酸性評価について説明する。以下の説明では、評価方法、評価結果の順に説明する。
(評価方法)
作製したF−HApの溶解点を調べるため耐酸性試験を行った。比較のために、A社製F−HAp、B社製HAp、C社製HApの3つを加えた合計4つのサンプルの耐酸性を評価した。
まず、純水に0.02mMの塩酸溶液を加え、pHの異なる溶媒(pH=1.6、2.0、2.5、2.8、3.2、3.6、4.0、4.6)を準備した。pH調整した溶液5mLにサンプル2mgを加え、ボルテックスミキサーで1分間撹拌後、石英ガラスセルに移し、紫外・可視分光光度計(日本分光(株)製、V550)で吸光度を測定した。固定波長測定を選択し、測光モード:Abs、レスポンス:Quick、バンド幅:2.0nm、測定波長:595nm、繰り返し回数:3、繰り返し間隔:0という条件で各サンプル、各濃度における測定を行った。測定した吸光度から透過度を求め、縦軸を透過度、横軸をpHとしたグラフを作成し、4つのサンプルの溶解点を比較した。グラフに漸近線を2本引き、その交点のpHを溶解点とした。作成したグラフを図9に示す。
(評価結果)
図9より、C社製化学製とB社製のHApの溶解点はpH=4.0、A社製のF−HApの溶解点はpH=3.2、作製したF−HApの溶解点はpH=2.9であった。よって、作製したF−HApは、HApと比較して耐酸性が高いことが確認できた。今回合成したF−HApとA社製F−HApの耐酸性の違いは、フッ素含有率の違いに由来するものと考えられた。
<抗菌性評価>
次に、上記で作成したF−HApに対する抗菌性評価について説明する。以下の説明では、評価方法、評価結果の順に説明する。
(評価方法)
作製したF−HApを用いて、粉末添加法によりF−HApの抗菌性を評価した。なお、F−HApの抗菌性は、大腸菌に対して行った。なお、フッ化ナトリウムを用いてフッ化物イオンの抗菌性も併せて評価した。フッ化物イオンの抗菌性評価については、表7に記載の7菌種に対して行った。
〔菌の準備〕
菌液の濃度を調整するためにマイクロプレートリーダーで吸光度を測定した。液体培養した菌を20倍に希釈し、プレートに150μLスポットし波長600nmにおける吸光度を測定した。バックグラウンドには140mMのNaClを用いた。吸光度の値が0.1(10個/μL)になるよう菌液を希釈した。
〔アッセイ〕
粉末添加法
100μL の140mM NaCl溶液に分散させたF−HAp(Ca10(PO1.8(OH)0.2:式量=1008.2)を含む溶液と、菌液100μLをチューブの中に入れ、ピペッティングし、1時間プチローターで撹拌を行い、F−HApと細菌とを接触させた。次いで、チューブ5本に180μLずつNaCl溶液を入れたものを用意し、順番に(1)〜(5)と番号をつけ、1時間撹拌させた細菌とF−HApの混合液20μLを(1)に入れ、ピペッティングして十分に撹拌した。次に(1)の溶液20μLを(2)に入れ、ピペッティングして十分に撹拌した。これを図4のように(2)から(3)、(3)から(4)・・・と同様の手順で繰り返し、細菌とF−HApの混合液を希釈した(20μLを180μLに加えているため、10倍ずつ希釈していることになる)。さらに、10倍ずつ5段階に希釈した溶液を濃度の薄い(5)から順番に5μLずつ寒天培地のシャーレにスポットし、37℃に設定したインキュベータで1日培養した。なお、抗菌性試験のコントロールとしてB社製HApを使用した。以上のような評価を、100μLのNaCl溶液に分散させるF−HApの含有量を変化させた実施例1〜7の溶液に対して行った。なお、上記F−HApの組成式は、F−HApサンプル中のフッ化物イオンの理論濃度18.8mg/L(100%フッ化物イオンに置換されていた場合)をベースに、作製したサンプルの実測値(16.9mg/L)との比を計算し、元々のHAp;Ca10(PO(OH)と100%フッ化物イオンに置換されたF−HAp;Ca10(POより、理論量に不足したイオン種は、すべて水酸化物イオンに換算して求めた。
フッ化ナトリウムを用いた抗菌性試験の方法
人体に害のない濃度の50mMのNaF溶液を作製し、フィルトレーションを行い除菌した。それをオートクレーブしたLB溶液と混合して5mM、0.5mM、0.05mM、0.005mM、0mMの5つの濃度の異なる混合液を作製し、プレートに流し込んでNaF入りの寒天培地を用意した。液体培養させた細菌をOD600の値を1(10個/μL)として濃度のことなる5つのプレートに5μLスポットし図10のようにコンラージ棒で塗り広げた。その後37℃に設定したインキュベータで1日培養した。
(評価結果)
〔F−HApの抗菌性〕
上記粉末添加法によりF−HApの抗菌性試験を行った結果、菌液に加えるF−HAp溶液の濃度を49.6mmol/L以上にすると53.7〜99.9%の抗菌性を確認することができた。その結果を表8に示す。なお、表8の上段にはコントロールとしてのHApの結果を示し、下段にはF−HApの結果を示している。表8に記載の殺菌率は、コントロールのコロニー数に対するF−HApのコロニー数の割合、すなわち、(F−HApのコロニー数の減少数)/(コントロールのコロニー数)から求めた。
表8に記載のようにF−HApの濃度を変えて抗菌性試験を行ったところ、全ての実施例において抗菌性を確認することができた。その殺菌率はF−HAp濃度が99.2mmol/L以上で98.0%〜99.9%であった。
F−HAp濃度が49.6mmol/Lでは53.7%の殺菌率がみられたため、F−HApが49.6mmol/L以上の場合、静菌性を有すると言える。また、F−HApが99.2mmol/L以上の場合、殺菌性を有すると言える。
ここで、本抗菌性試験に使用したF−HApの組成は、Ca10(PO1.8(OH)0.2であることから、F−HApが抗菌性(静菌性)を発現するためのフッ化物イオン換算での濃度(フッ化物イオン濃度)は、49.6mmol×1.8=89.3mmol/L以上(さらに殺菌率95%以上の抗菌性を発現するためには、178.6mmol/L以上)である。このフッ化物イオン濃度は、例えば、広く抗菌性が認知されている銀イオンが大腸菌に対する抗菌性を発現可能な濃度である5〜10ppb(0.093×10−3mmol)や、上記Ag−HApの抗菌性を発現可能な銀イオン濃度である2.47mmol/Lと比較して、抗菌性を発現するためにより高い(フッ化物)イオン濃度を必要とすることがわかった。このことから、F−HApの抗菌性は、銀イオン単独の抗菌性、更にはAg−HApの抗菌性と比較してもマイルドであると言える。
〔フッ化物イオンの抗菌性〕
上記方法で行ったフッ化ナトリウム用いた抗菌性試験の結果を図11に示す。(1)がセレウス菌、(2)がサルモネラ菌、(3)が黄色ブドウ球菌、(4)が大腸菌、(5)が緑膿菌、(6)が肺炎桿菌、(7)が化膿レンサ球菌である。
図11に示すように、5つの濃度の異なるプレートを比較すると、(7)の化膿レンサ球菌が濃度が上がるにつれて薄くなっていることが確認できた。よって、フッ化物イオン自体は化膿レンサ球菌に対して抗菌性があることが分かった。ここで、フッ化物イオン自体は大腸菌に対しては抗菌性を有していないにも関わらず、F−HApは大腸菌に対する抗菌性を有している理由は明らかではないが、F−HApの抗菌性は、単にフッ化物イオン自体の抗菌性によるものではないことが推測された。このように、本試験及びF−HApの抗菌性試験の結果から、フッ化物イオン単独では、抗菌性を発現可能な菌種と発現不可能な菌種があるが、F−HApはフッ化物イオン単独では抗菌性を発現できない菌種(例えば、化膿レンサ球菌)に対しても抗菌性を発現できることがわかった。
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述した形態に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で当業者が想到し得る他の形態または各種の変更例についても本発明の技術的範囲に属するものと理解される。

Claims (8)

  1. ハイドロキシアパタイトの結晶構造中のカルシウムイオンの少なくとも一部が銀イオンに置換された抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子からなることを特徴とする、ハイドロキシアパタイト誘導体粒子群。
  2. 5.0×10個/μLの所定の微生物と、銀イオン換算で2.47mmol/L以上の濃度で前記抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子と、を共存させた分散液を調製し、当該分散液を培地にスポットし、37℃で1日培養した後の殺菌率が90%以上である、請求項1に記載のハイドロキシアパタイト誘導体粒子群。
  3. 前記抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子のXRDにより定量したハイドロキシアパタイト結晶相純度が90%以上である、請求項1又は2に記載のハイドロキシアパタイト誘導体粒子群。
  4. ハイドロキシアパタイトの結晶構造中の水酸化物イオンの少なくとも一部がフッ化物イオンに置換された抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子からなることを特徴とする、ハイドロキシアパタイト誘導体粒子群。
  5. 5.0×10個/μLの所定の微生物と、フッ化物イオン換算で89.3mmol/L以上の濃度で前記抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子と、を共存させた分散液を調製し、当該分散液を培地にスポットし、37℃で1日培養した後の殺菌率が50%以上である、請求項4に記載のハイドロキシアパタイト誘導体粒子群。
  6. 5.0×10個/μLの所定の微生物と、フッ化物イオン換算で178.6mmol/L以上の濃度で前記抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子と、を共存させた分散液を調製し、当該分散液を培地にスポットし、37℃で1日培養した後の殺菌率が95%以上である、請求項4に記載のハイドロキシアパタイト誘導体粒子群。
  7. 前記抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子が、焼成ハイドロキシアパタイト誘導体粒子であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のハイドロキシアパタイト誘導体粒子群。
  8. 前記抗菌性ハイドロキシアパタイト誘導体粒子の粒子径が、10nm〜1,000nmの範囲内であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のハイドロキシアパタイト誘導体粒子群。
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