JP2015206706A - 微量元素を利用した南米産大豆の産地判別方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】南米産大豆とその他の産地の大豆と判別することができる方法を提供する。より詳しくは、南米産大豆のうち、どの地域(州など)で産出された大豆かを判別することができる方法を提供する。【解決手段】大豆試料に含まれる、マンガン、銅、鉄などの元素の量を分析し、それらの分析情報に基づいて大豆の産地を判別する。より詳しくは、マンガン、銅、鉄などの元素の量について、クラスター解析を行い、南米産大豆のうち、どの地域(州など)で産出された大豆かを判別する。【選択図】図1
Description
本発明は、南米産大豆とその他の産地の大豆と判別することができる方法に関する。より詳しくは、南米産大豆のうち、どの地域(州など)で産生された大豆かを判別することができる方法に関する。
日本においては、食用油として大豆油が大量に使用されており、その原料の大豆は、アメリカ産、ブラジル産、アルゼンチン産など多くの産地からの大豆が使用されている。一般に、流通過程では、国毎に集荷され、船で日本へ輸出される。国毎の集荷時点では、買付け時に、どこの地域のものがどれだけ入っているかは、正確には不明である。
大豆油は、フライ油あるいはサラダ油等として産地の区別なく、これまで使用されてきたが、南米産大豆は、一般に品質が悪く、精製条件を厳しくするなどの必要が生じていた。また、従来から一部の大豆油では、長期低温(例えば0℃で5〜30時間)で保存するとゲル状になるという現象(以下、「ゲル化」ともいう)がみられ、低温で保存する食品の用途には一般に不向きであった。これらのゲル化する大豆油の多くは、ブラジルの一部の地域でみられることが最近わかってきている。
そこで、搾油時にサイロ中の大豆を判別し、精製条件を予測するために、南米産大豆とその他の大豆を区別する必要性が生じていた。また、ゲル化しない大豆油を入手するため、ブラジルの特定の地域の大豆とその他の地域の大豆を区別する必要性が生じていた。そこで、品質の良い、一定の品質の大豆を判別する精度の高い判別法の開発が求められていた。
大豆油は、フライ油あるいはサラダ油等として産地の区別なく、これまで使用されてきたが、南米産大豆は、一般に品質が悪く、精製条件を厳しくするなどの必要が生じていた。また、従来から一部の大豆油では、長期低温(例えば0℃で5〜30時間)で保存するとゲル状になるという現象(以下、「ゲル化」ともいう)がみられ、低温で保存する食品の用途には一般に不向きであった。これらのゲル化する大豆油の多くは、ブラジルの一部の地域でみられることが最近わかってきている。
そこで、搾油時にサイロ中の大豆を判別し、精製条件を予測するために、南米産大豆とその他の大豆を区別する必要性が生じていた。また、ゲル化しない大豆油を入手するため、ブラジルの特定の地域の大豆とその他の地域の大豆を区別する必要性が生じていた。そこで、品質の良い、一定の品質の大豆を判別する精度の高い判別法の開発が求められていた。
従来、農作物の産地を判別する方法としては、無機元素組成によるもの、安定同位体比によるもの、DNA分析によるものなどがある。
このうち、無機元素組成による産地の判別方法は、農水産物に含まれる無機元素組成が、産地の水や土壌に含まれる無機元素組成を反映するものであることを利用したものであり、産地の明確な試料を入手するために幅広い農水産物に用いられている。例えば、ネギ、タマネギ、黒大豆、ショウガ、ニンニク、ゴボウ、コンブ、梅干し、シイタケなどの農水産物の産地を判別するために用いられてきたが(非特許文献1)、大豆の産地を判別するために用いられた例はこれまで知られていない。
このうち、無機元素組成による産地の判別方法は、農水産物に含まれる無機元素組成が、産地の水や土壌に含まれる無機元素組成を反映するものであることを利用したものであり、産地の明確な試料を入手するために幅広い農水産物に用いられている。例えば、ネギ、タマネギ、黒大豆、ショウガ、ニンニク、ゴボウ、コンブ、梅干し、シイタケなどの農水産物の産地を判別するために用いられてきたが(非特許文献1)、大豆の産地を判別するために用いられた例はこれまで知られていない。
安井明美、「食品の産地判別技術の展望」、食衛誌、2009年、第50巻、第5号、p.191−197
本発明の課題は、南米産大豆とその他の産地の大豆と判別することができる方法を提供することである。より詳しくは、南米産大豆のうち、どの地域(州など)で産出された大豆かを判別することができる方法を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、大豆試料に含まれる特定の微量元素の量を利用することにより、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の一態様によれば、大豆試料に含まれるマンガン、銅、及び鉄の量を分析し、それらの分析情報に基づいて大豆の産地の判別方法を提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、さらに、カルシウム、硫黄、及びリンの量を分析し、それらの分析情報に基づいて大豆の産地の判別方法を提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、さらに、メタン、カリウム、亜鉛、ルビジウム、及びストロンチウムの量を分析し、それらの分析情報に基づいて大豆の産地の判別方法を提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、南米産大豆とその他の産地の大豆とを判別する、大豆の産地の判別方法を提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、大豆試料において、鉄が多く、マンガン及び銅が少ない場合にブラジル産大豆と判別する、大豆の産地の判別方法を提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、大豆試料において、さらに、カルシウム、硫黄、及びリンの量が少ない場合に、ブラジル産大豆と判別する、大豆の産地の判別方法を提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、上記元素の量について統計処理(クラスター解析)を行い、南米産大豆がブラジル東部、中西部、南部のいずれかの州であることを判別する、大豆の産地の判別方法を提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、南米産大豆が、特にバイーア州産であることを判別する、大豆の産地の判別方法を提供することができる。
また、本発明の一態様によれば、次の工程:(1)大豆試料を酸分解して無機成分を主に含む溶液を調製する工程、(2)工程(1)で調製した溶液中の、各元素の量を測定する工程、(3)工程(2)で得られたそれぞれの量と、判別したい産地由来の大豆試料の前記各元素の量を比較し、大豆の産地を判別する工程を含む、大豆の産地の判別方法を提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、上記工程(1)を省略するとともに、上記工程(2)における、各元素のそれぞれの量を、蛍光X線分析によって測定する、大豆の産地の判別方法を提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、さらに、カルシウム、硫黄、及びリンの量を分析し、それらの分析情報に基づいて大豆の産地の判別方法を提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、さらに、メタン、カリウム、亜鉛、ルビジウム、及びストロンチウムの量を分析し、それらの分析情報に基づいて大豆の産地の判別方法を提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、南米産大豆とその他の産地の大豆とを判別する、大豆の産地の判別方法を提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、大豆試料において、鉄が多く、マンガン及び銅が少ない場合にブラジル産大豆と判別する、大豆の産地の判別方法を提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、大豆試料において、さらに、カルシウム、硫黄、及びリンの量が少ない場合に、ブラジル産大豆と判別する、大豆の産地の判別方法を提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、上記元素の量について統計処理(クラスター解析)を行い、南米産大豆がブラジル東部、中西部、南部のいずれかの州であることを判別する、大豆の産地の判別方法を提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、南米産大豆が、特にバイーア州産であることを判別する、大豆の産地の判別方法を提供することができる。
また、本発明の一態様によれば、次の工程:(1)大豆試料を酸分解して無機成分を主に含む溶液を調製する工程、(2)工程(1)で調製した溶液中の、各元素の量を測定する工程、(3)工程(2)で得られたそれぞれの量と、判別したい産地由来の大豆試料の前記各元素の量を比較し、大豆の産地を判別する工程を含む、大豆の産地の判別方法を提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、上記工程(1)を省略するとともに、上記工程(2)における、各元素のそれぞれの量を、蛍光X線分析によって測定する、大豆の産地の判別方法を提供することができる。
本発明によれば、ブラジル産大豆とその他の地域の大豆とを精度よく判別することができる。さらに、南米産大豆のうち、どの地域(州など)で産出された大豆かを精度よく判別することができる。これにより、冷却試験によってゲル化するような大豆油の製造を未然に防止できる。冷却試験を行ってもゲル化しない大豆油は、クリーム、マーガリン、ドレッシングなどの冷蔵製品において凝固分離により乳化破壊を引き起こさず、安心して利用できるため、性状の安定した大豆油を求める需要者の要求を満足することができる。
以下、本発明の「大豆の産地の判別方法」について順を追って記述する。
本発明における「大豆」は特に限定されないが、外皮を含む全粒及び外皮を除去した穀粒のほか、圧扁しフレーク状となった大豆や、大豆粉などの粉砕物が含まれる。なお、「大豆の産地」も限定されない。「南米産大豆」のほか、「北米産大豆」、「中国産大豆」、「国産大豆」などが含まれる。
本発明における「大豆」は特に限定されないが、外皮を含む全粒及び外皮を除去した穀粒のほか、圧扁しフレーク状となった大豆や、大豆粉などの粉砕物が含まれる。なお、「大豆の産地」も限定されない。「南米産大豆」のほか、「北米産大豆」、「中国産大豆」、「国産大豆」などが含まれる。
本発明の「南米産大豆」は特に限定されないが、例えば、ブラジル東部のバイーア州やトカンティンス州で収穫された大豆、ブラジル中西部のマットグロッソ州で収穫された大豆、ブラジル南部のリオグランデ・ド・スル州で収穫された大豆が挙げられる。特に、ブラジル東部のバイーア州で生産された大豆は、ゲル化しやすい傾向が見られたので、バイーア州産であるか否かを判別することが好ましい。
本発明の大豆の産地の判別方法としては、大豆試料に含まれるマンガン、銅、鉄の量を少なくとも分析し、それらの分析情報に基づいて大豆の産地を判別し得るものであれば、特に制限されない。例えば、下記の「酸分解」工程、「マンガン、銅、鉄などの量の測定」工程、「マンガン、銅、鉄などの量を比較する産地の判別」工程を含む方法が好ましい。さらに、下記「酸分解」工程を省略し、下記「マンガン、銅、鉄などの量の測定」工程が、蛍光X線分析によって行われる方法が好ましい。
本発明の「酸分解」工程は、大豆試料を酸分解して無機成分を主に含む溶液を調製する工程である。大豆に含まれるマンガン、銅、及び鉄などの量はごく僅かであることから、使用する器具などからサンプルへのコンタミネーションを抑制するため、清浄な樹脂製使い捨てチューブを容器として用いることが好ましい。この容器内に大豆試料を採取し、硝酸を主とした酸を添加し加温して酸分解して、有機物を揮散させて無機成分を主に含む溶液を調製する。
本発明の「マンガン、銅、鉄などの量の測定」工程は、マンガン、銅、及び鉄などの各種元素のそれぞれの量を測定する工程である。前記元素の定量は公知の微量元素分析方法、例えば、誘導結合プラズマ質量分析方法(ICP−MS:Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)、誘導結合プラズマ発光分光分析方法(ICP−AES:Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometry)、原子吸光分析方法(AAS:Atomic Absorption Spectrometry)、蛍光X線分析方法(XRF:X-ray Fluorescence Analysis)、中性子放射化分析方法(NAA:Neutron Activation Analysis)により行うことができる。これらの方法はいずれも当業者に周知慣用のものである。
前記の分析方法のうち、誘導結合プラズマ質量分析方法(ICP−MS)、誘導結合プラズマ発光分光分析方法(ICP−AES)、原子吸光分析方法(AAS)は、基本的には溶液や溶液に溶かした試料を用いる。蛍光X線分析方法(XRF)、中性子放射化分析方法(NAA)は通常酸分解せずに固体試料を測定に用いる。
誘導結合プラズマ質量分析方法の特徴としては、多くの元素に対して高感度であることと、多元素の同時測定が可能であることが挙げられる。
誘導結合プラズマ発光分光分析方法は、誘導結合プラズマを熱源とした発光分光分析の1つである。誘導結合プラズマ発光分光分析方法は、感度的にはフレーム原子吸光分析方法より優れているが、フレームレス原子吸光分析方法と比べると同等か元素によって劣る。しかし、多元素同時分析が可能である点は原子吸光分析方法に比べて大きな利点である。また、誘導結合プラズマ質量分析方法と比べると、同じく多元素同時分析ができるものの感度的には劣る。
原子吸光分析方法は、アセチレンなどのフレーム中や黒鉛炉(高電流を流す)など高温状態下に試料溶液を噴射し、元素を原子化し、そこに光を透過して吸収スペクトルを測定することで元素の濃度を測定する方法である。原子化された状態に、目的元素の波長の光を入射すると、その元素の濃度に応じてそれが吸収されるので、元素の同定および定量が可能になる。この方法は、個々の元素に対し高い選択性をもっており、装置もそれほど複雑ではないので広く利用されている。しかし、一度に1元素の定量しかできず、また、誘導結合プラズマ質量分析方法や誘導結合プラズマ発光分光分析方法と比べると、フレーム法においては分析感度的の点で劣る。
蛍光X線分析方法(XRF)は、3次元偏光光学系蛍光X線分析装置を用いることにより、従来法よりも高感度な定量は可能となったが、誘導結合プラズマ質量分析方法や誘導結合プラズマ発光分光分析方法と比べると、検出感度がやや劣る。
しかし、誘導結合プラズマ質量分析方法(ICP−MS)等は、酸を用いて試料を分解する煩雑な前処理を必要とし、専用の実験設備や分析技術を持っていなければ信頼できる分析結果が得られないが、これに対し、蛍光X線分析方法は、化学的前処理が不要な非破壊分析法のため、迅速にかつ簡便に試料の元素分析を行うことができるだけでなく、分析者に依存せず、再現性の高い分析を行うことができる利点がある。そのため、本発明においては、蛍光X線分析方法を用いることが好ましい。
本発明の「マンガン、銅、鉄などの量を比較する産地の判別」工程は、大豆試料のマンガン、銅、及び鉄などのそれぞれの量を測定し、これを判別したい産地の大豆のマンガン、銅、及び鉄などのそれぞれの量と比較し、これらの量の類似性をもって、大豆試料の産地を判別する工程を含む。例えば、ブラジル産大豆とアメリカ産大豆のマンガン、銅、及び鉄などの量を予め決定しておき、大豆試料が、どちらの大豆に近い量を持っているかにより、当該試料の産地を判別することができる。
また、本発明により、ブラジル産大豆では、マンガン及び銅の量が少なく、鉄の量が多い傾向が見られたので、例えば、アメリカ産大豆のマンガン、銅、及び鉄の量を基準とし、これよりもマンガン及び銅の量が少なく、鉄の量が多い場合にブラジル産大豆と判別することもできる。
さらに、判別したい様々な産地及び地域の大豆のマンガン、銅、及び鉄などの量を予め決定して、これら値をデータベース化し、このようにして事前に構築しておいたこのデータベースと比較して、どの産地に近いかを確認することで産地を判別することもできる。このためには、対象となる産地から偏りなくできるだけ産地を代表するように試料を多数収集し、データを得ておく必要がある。これによって、より信頼性の高い産地判別方法となる。
また、本発明により、ブラジル産大豆では、マンガン及び銅の量が少なく、鉄の量が多い傾向が見られたので、例えば、アメリカ産大豆のマンガン、銅、及び鉄の量を基準とし、これよりもマンガン及び銅の量が少なく、鉄の量が多い場合にブラジル産大豆と判別することもできる。
さらに、判別したい様々な産地及び地域の大豆のマンガン、銅、及び鉄などの量を予め決定して、これら値をデータベース化し、このようにして事前に構築しておいたこのデータベースと比較して、どの産地に近いかを確認することで産地を判別することもできる。このためには、対象となる産地から偏りなくできるだけ産地を代表するように試料を多数収集し、データを得ておく必要がある。これによって、より信頼性の高い産地判別方法となる。
本発明は、目的に応じて、水素、炭素、窒素、硫黄などの軽元素の同位体比、鉛などの重元素の同位体比、1種又は2種以上の元素(例えば、マグネシウム、モリブデン、ニッケルなどから選ばれる1種又は2種以上の元素)の濃度など他のファクターと併せて判断してもよい。逆に、ブラジル産大豆とアメリカ産大豆を判別する場合は、少なくともマンガン、銅、及び鉄の量を利用すればよいので、コスト面を考慮して、他のファクターを省略することもできる。
次に、実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
[実施例]
<蛍光X線分析に供した大豆試料とゲル化傾向>
蛍光X線分析に供した大豆試料は、ブラジル産大豆が4種(産地概ね判明)であり、アメリカ産大豆が2種(産地不明)であった。また、これらの大豆試料について、ゲル化傾向を測定した。0℃の冷却試験を15時間行い、ゲル化傾向が見られるものを○、ゲル化傾向が見られないものを×とした。以下の表1に結果を示す。
<蛍光X線分析に供した大豆試料とゲル化傾向>
蛍光X線分析に供した大豆試料は、ブラジル産大豆が4種(産地概ね判明)であり、アメリカ産大豆が2種(産地不明)であった。また、これらの大豆試料について、ゲル化傾向を測定した。0℃の冷却試験を15時間行い、ゲル化傾向が見られるものを○、ゲル化傾向が見られないものを×とした。以下の表1に結果を示す。
<蛍光X線分析>
上記大豆試料#1ないし6を、蛍光X線分析に供した。大豆試料をフルイ掛けし、サヤなどの夾雑物を取り除いた。夾雑物を取り除いた大豆試料5gをフードミルで粉砕し、EDAX Falconエネルギー分散型X線分析装置(エダックス・ジャパン株式会社製)に数十mgを供することで軽元素を測定した。また、EDAX Falconエネルギー分散型X線分析装置で得られた結果を基にEpsilon5 エネルギー分散型蛍光X線(スペクトリス株式会社)の条件設定を行い、残った全量を測定に供した。X線分析に際し、CH4をバランス成分として指定し、二次ターゲットとして、Ti、Ge、Mo、Al2O3を使用し、500秒積算によりデータを取得した。FP法(測定条件とファンダメンタルパラメーターを用いて理論的な蛍光X線強度を計算)により、各元素含量の定量を行った。
また、分析精度を確認するため、大豆試料#5については、同一サンプルを2つ((1)と(2))に分けて蛍光X線分析に供した。CH4(メタン)をバランス成分とした計15元素の蛍光X線分析の結果を以下の表2に示す。
上記大豆試料#1ないし6を、蛍光X線分析に供した。大豆試料をフルイ掛けし、サヤなどの夾雑物を取り除いた。夾雑物を取り除いた大豆試料5gをフードミルで粉砕し、EDAX Falconエネルギー分散型X線分析装置(エダックス・ジャパン株式会社製)に数十mgを供することで軽元素を測定した。また、EDAX Falconエネルギー分散型X線分析装置で得られた結果を基にEpsilon5 エネルギー分散型蛍光X線(スペクトリス株式会社)の条件設定を行い、残った全量を測定に供した。X線分析に際し、CH4をバランス成分として指定し、二次ターゲットとして、Ti、Ge、Mo、Al2O3を使用し、500秒積算によりデータを取得した。FP法(測定条件とファンダメンタルパラメーターを用いて理論的な蛍光X線強度を計算)により、各元素含量の定量を行った。
また、分析精度を確認するため、大豆試料#5については、同一サンプルを2つ((1)と(2))に分けて蛍光X線分析に供した。CH4(メタン)をバランス成分とした計15元素の蛍光X線分析の結果を以下の表2に示す。
大豆試料#5(1)及び5(2)は同一検体であるが、#5(1)ではBrが検出されたが、#5(2)ではBrが検出されなかった。しかし、測定された濃度が低いため、測定誤差であると判断した。その他の元素については、ほぼ同一の結果となっており、分析精度に問題がないことが確認された。
<Welchのt検定>
上記表2の結果について、ブラジル産大豆(大豆試料#1ないし4)とアメリカ産大豆(大豆試料#5ないし6)との元素の違いを明らかにするため、Welchのt検定を行い、各元素のp値を得た。その結果を以下の表3に示す。なお、p値が0.25以下である場合、有意傾向があると考えられる。
上記表2の結果について、ブラジル産大豆(大豆試料#1ないし4)とアメリカ産大豆(大豆試料#5ないし6)との元素の違いを明らかにするため、Welchのt検定を行い、各元素のp値を得た。その結果を以下の表3に示す。なお、p値が0.25以下である場合、有意傾向があると考えられる。
表3に示した結果から、有意傾向があると認められる元素は、P(リン)、S(硫黄)、Ca(カルシウム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Cu(銅)の6元素であった。ここで、有意傾向のあった元素のうち、ブラジル産大豆はアメリカ産大豆よりFe(鉄)の量が多いことが判明した。その他有意傾向のあったP(リン)、S(硫黄)、Ca(カルシウム)、Mn(マンガン)、Cu(銅)についてはブラジル産大豆よりもアメリカ産大豆に多いことが判明した。
したがって、本有意傾向より、前述したMn(マンガン)、Cu(銅)及びFe(鉄)の3元素はブラジル産大豆とアメリカ産大豆とを区別することができる元素であることが判明した。さらに、P(リン)、S(硫黄)及びCa(カルシウム)を利用すれば、より高い精度で、ブラジル産大豆とアメリカ産大豆とを区別することができる。
したがって、本有意傾向より、前述したMn(マンガン)、Cu(銅)及びFe(鉄)の3元素はブラジル産大豆とアメリカ産大豆とを区別することができる元素であることが判明した。さらに、P(リン)、S(硫黄)及びCa(カルシウム)を利用すれば、より高い精度で、ブラジル産大豆とアメリカ産大豆とを区別することができる。
<統計処理(クラスター解析)>
上記表2に示した結果から、「−:検出せず」を除いたCH4(メタン)を含む計11元素を統計処理(クラスター解析)に供した。図1はブラジル産大豆とアメリカ産大豆の樹形図であり、図2はブラジル産大豆だけの樹形図である。その結果、図1では、ブラジル産大豆のクラスター2つと、アメリカ産大豆のクラスター1つに分けることができた。そして、図2では、母数が少ないものの、ブラジルの地方ごとに分けることができた。このことから、11元素を用いた統計処理(クラスター解析)を行えば、ブラジル産大豆というだけでなく、どの地域や州から産出された大豆かを判別することができることも明らかとなった。これにより、ゲル化傾向を示さない、品質の良い大豆を高い精度をもって判別することができる。
上記表2に示した結果から、「−:検出せず」を除いたCH4(メタン)を含む計11元素を統計処理(クラスター解析)に供した。図1はブラジル産大豆とアメリカ産大豆の樹形図であり、図2はブラジル産大豆だけの樹形図である。その結果、図1では、ブラジル産大豆のクラスター2つと、アメリカ産大豆のクラスター1つに分けることができた。そして、図2では、母数が少ないものの、ブラジルの地方ごとに分けることができた。このことから、11元素を用いた統計処理(クラスター解析)を行えば、ブラジル産大豆というだけでなく、どの地域や州から産出された大豆かを判別することができることも明らかとなった。これにより、ゲル化傾向を示さない、品質の良い大豆を高い精度をもって判別することができる。
Claims (10)
- 大豆試料に含まれるマンガン、銅、鉄の量を分析し、それらの分析情報に基づいて大豆の産地を判別する方法。
- さらに、カルシウム、硫黄及びリンの量を分析し、それらの分析情報に基づいて大豆の産地を判別する、請求項1に記載の方法。
- さらに、メタン、カリウム、亜鉛、ルビジウム、及びストロンチウムの量を分析し、それらの分析情報に基づいて大豆の産地を判別する、請求項2に記載の方法。
- 南米産大豆とその他の産地の大豆とを判別する、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
- 大豆試料において、鉄の量が多く、マンガン及び銅の量が少ない場合に、南米産大豆と判別する、請求項4に記載の方法。
- 大豆試料において、さらに、カルシウム、硫黄、リンの量が少ない場合に、南米産大豆と判別する、請求項5に記載の方法。
- 上記元素の量について統計処理(クラスター解析)を行い、南米産大豆が、ブラジル東部、中西部、南部のいずれかの州に由来するものであることを判別する、請求項4ないし6のいずれかに記載の方法。
- 南米産大豆が、特にバイーア州産であることを判別する、請求項7に記載の方法。
- 次の工程:
(1)大豆試料を酸分解して無機成分を主に含む溶液を調製する工程、
(2)工程(1)で調製した溶液中の、各元素のそれぞれの量を測定する工程、
(3)工程(2)で得られた各元素のそれぞれの量と、判別したい産地由来の大豆試料の前記各元素の量とを比較し、大豆の産地を判別する工程
を含む、請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。 - 上記工程(1)を省略されるとともに、上記工程(2)において測定される各元素のそれぞれの量が、蛍光X線分析によって測定される、請求項9に記載の方法。
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2014
- 2014-04-22 JP JP2014087967A patent/JP2015206706A/ja active Pending
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