JP2015206525A - 容器回転型ミキサーおよび容器回転型ミキサーの設計方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】原料の混合性を改善することによって、占積率が高い場合でも十分な反応性を維持する。【解決手段】中心軸を略水平方向として配置された円筒容器を回転させて、該円筒容器内に投入された原料を撹拌しながら円筒容器内の雰囲気ガスと反応させる容器回転型ミキサーであって、円筒容器の内周面から突出する周面リフターと、円筒容器の断面中心から放射状に突出する中央リフターとを備える容器回転型ミキサーが提供される。かかる構成によれば、占積率が高い場合であっても、周面リフターと中央リフターとの両方によって原料を効率的に撹拌し、雰囲気ガスへの接触(暴露)の機会を多くすることによって反応性を高めることができる。【選択図】図21

Description

本発明は、容器回転型ミキサーおよび容器回転型ミキサーの設計方法に関する。
容器回転型ミキサー(転動型ミキサー)は、中心軸を略水平方向として配置された円筒容器を回転させて、円筒容器内に投入された原料を撹拌しながら、円筒容器内の雰囲気ガスと反応させる。円筒容器を入口から出口に向かって緩傾斜するように配置し、原料を入口から出口に向かって移動させながら連続的に燃焼・反応させるものは、ロータリーキルンとしても知られている。従来の転動型ミキサーとしては、例えば特許文献1に記載されているように、円筒容器の内周面から突出する複数のリフターを備え、リフターによって円筒容器内の原料(粉粒体)をかき上げてから落下させることを繰り返して原料を撹拌および混合するものが知られている。しかしながら、このようなリフターを備えた従来の転動型ミキサーでは、占積率が高くなると搬送可能量が低下するだけでなく、小径粒子の偏析が生じるために混合性も悪くなる。
図1は、円筒容器1の内周面に4本の凸条型の周面リフター2を有する従来の転動型ミキサーにおける、占積率ごとの原料の混合状態の解析結果を示す図である。なお、原料は粒度分布を有するものとし、解析には離散要素法(DEM)を利用した。図1(a)は占積率10%、図1(b)は占積率20%、図1(c)は占積率40%の場合について、それぞれ1回転に対する粒子挙動が定常的になったときの粒径分布を示す。濃い色は粒径の大きい粒子を、薄い色は粒径の小さい粒子を示す。図1(a)では、様々な粒径の粒子が均等に混合されているため、粒径の小さい粒子は分散して粒径の大きい粒子の隙間に入り、原料全体が濃い色で表示されている。一方、図1(c)では、小径の粒子が偏析しているため、この部分で原料が薄い色で表示されている。つまり、図1に示す解析結果は、占積率の上昇によって、周面リフター2が設けられているにもかかわらず、円筒容器1内で粒度偏析が生じていることを示している。
転動型ミキサーでは、原料の粒子と雰囲気ガスとの接触の機会が増えるほど反応が促進される。従って、粒度偏析が生じると、偏析した粒子の雰囲気ガスとの接触の機会が少なくなり、反応効率が低下してしまう。本発明者らは、さらに、円筒容器1の内周面に設けられる周面リフター2の形状を変更して(傾斜させる、屈折させる、など)解析を実施したが、結果は同様であった。解析では、粒子が雰囲気ガスに接触(暴露)した時間を積算し、暴露時間が一定時間を超えた粒子の割合を算出したが、占積率が高くなるほどこの割合が100%に到達するまでにかかる時間は長くなり、占積率40%では時間をかけても100%に到達しない場合もあった。
ここで、例えば特許文献2に記載されているように、ラジアルプレートによって区画されるアウターセルとインナーセルとを設けることによって、原料全体の熱ガス接触度を高め、含水率の高い原料であってもガスとの高い熱交換率を達成できる回転式熱交換装置も提案されている。しかしながら、この回転式熱交換装置は、燃焼ガスとの接触を目的としており、例えば転動型ミキサーのような反応を目的としたものとは異なる。また、原料はアウターセルに投入されることとなっており、占積率は低いことが前提である。占積率を上げると、ラジアルプレートの存在によって搬送能力が低下すると考えられ、またアウターセルとインナーセルとが分離されているために、原料に粒度分布があった場合には混合性が低くなる。
特開昭52−57228号公報 特開2005−351495号公報
上述のように、従来の転動型ミキサーでは、特に占積率が比較的高い場合において、原料の混合性が低下し、雰囲気ガスとの接触の機会が少なくなる結果、反応性が低下するという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、原料の混合性を改善することによって、占積率が高い場合でも十分な反応性を維持することが可能な、新規かつ改良された容器回転型ミキサーおよび容器回転型ミキサーの設計方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、中心軸を略水平方向として配置された円筒容器を回転させて、該円筒容器内に投入された原料を撹拌しながら円筒容器内の雰囲気ガスと反応させる容器回転型ミキサーであって、円筒容器の内周面から突出する周面リフターと、円筒容器の断面中心から放射状に突出する中央リフターとを備える容器回転型ミキサーが提供される。
かかる構成によれば、占積率が高い場合であっても、周面リフターと中央リフターとの両方によって原料を効率的に撹拌し、雰囲気ガスへの接触(暴露)の機会を多くすることによって反応性を高めることができる。なお、このような効果は、後述するような本発明者らによる離散要素法(DEM)を用いた解析によって明らかになった。
上記の容器回転型ミキサーにおいて、円筒容器は、中心軸が入口から出口に向かって緩傾斜するように配置され、周面リフターおよび中央リフターのうちの少なくともいずれかは、入口から出口に向かって断面形状が変化してもよい。より具体的には、中央リフターの断面形状が、入口から出口に向かって徐々に小さくなってもよい。また、中央リフターの配置が断続的であってもよい。また、中央リフターは、中心軸周りの螺旋構造を有してもよく、あるいはメッシュ構造を有してもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記の容器回転型ミキサーの設計方法であって、離散要素法(DEM)を用いて原料を構成する粒子の挙動を解析した結果を利用して周面リフターおよび中央リフターを設計する設計方法が提供される。より具体的には、設計方法は、粒子の混同度合、粒子の雰囲気ガスへの暴露度合、または粒子の雰囲気ガスとの反応度合のうちの少なくともいずれかを解析した結果を利用してもよい。
以上説明したように本発明によれば、原料の混合性を改善することによって、占積率が高い場合でも十分な反応性を維持することができる。
従来の転動型ミキサーにおける、占積率ごとの原料の混合状態の解析結果を示す図である。 ミキサー内の粒子の流れの中で、雰囲気ガスに接触したか否かを判定するためのロジックについて説明するための図である。 ミキサーにおける雰囲気ガスと原料粒子との化学反応度合の計測方法について説明するための図である。 検討の対象とされた転動型ミキサーのリフター構造を示す図である。 図4に示した3種類のリフター構造のそれぞれについて、原料粒子の挙動に関するDEM解析を実施した結果を示すグラフである。 DEM解析において、暴露時間が所定の時間を超えた粒子の全粒子に対する割合の推移を示すグラフである(占積率10%)。 DEM解析において、暴露時間が所定の時間を超えた粒子の全粒子に対する割合の推移を示すグラフである(占積率20%)。 DEM解析において、暴露時間が所定の時間を超えた粒子の全粒子に対する割合の推移を示すグラフである(占積率40%)。 製鋼スラグの炭酸化実験結果と、解析による計算結果との比較結果を示すグラフである。 DEM解析における炭酸化反応の進行予測結果を、pH値の推移によって示すグラフである(占積率10%)。 DEM解析における炭酸化反応の進行予測結果を、pH値の推移によって示すグラフである(占積率40%)。 炭酸化反応実験の結果を示すグラフである(占積率10%)。 炭酸化反応実験の結果を示すグラフである(占積率40%)。 占積率10%の場合の粒子挙動のDEM解析結果を示す図である。 転動型ミキサーのリフター構造の変形例を示す図である。 図14に示した変形例に係るリフター構造について原料粒子の挙動に関するDEM解析を実施した結果を示すグラフである。 転動型ミキサーのリフター構造のさらなる変形例を示す図である。 図16に示した変形例に係るリフター構造について原料粒子の挙動に関するDEM解析を実施した結果を示すグラフである。 連続処理型の転動型ミキサーのリフター構造の例を示す図である。 図18に示した連続処理型の転動型ミキサーについて原料粒子の挙動に関するDEM解析を実施した結果を示すグラフである。 DEM解析における経過時間と排出粒子の化学反応度の平均値との関係を示すグラフである。 連続処理型の転動型ミキサーのリフター構造の他の例(連続タイプ)を示す図である。 連続処理型の転動型ミキサーのリフター構造の他の例(連続螺旋タイプ)を示す図である。 連続処理型の転動型ミキサーのリフター構造の他の例(連続メッシュタイプ)を示す図である。 連続処理型の転動型ミキサーのリフター構造の他の例(連続櫛歯タイプ)を示す図である。 連続処理型の転動型ミキサーのリフター構造の他の例(不連続複数配置タイプ)を示す図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
まず、本発明者らが実施した、DEMを利用した解析について説明する。
原料粒子の化学反応は、ミキサー内の雰囲気ガスと原料との接触の程度に大きく影響される。より具体的には、原料粒子が流動層の表層およびその近傍に位置する場合には、反応が進むことになる。従って、原料粒子がミキサー内でどのような動きをするかを解析することは、ミキサーの最適な構造を決定するために有用である。本発明者らは、離散要素法(DEM)を利用して、ミキサー内での原料粒子の動き、粉粒体の混合度合、流動中の粉粒体の雰囲気ガスへの暴露度合、および雰囲気ガスと原料粒子との化学反応度合を定量的に評価した。
なお、ミキサー内の原料粒子の挙動のモデル化については、例えばM. A. Romero Valle,「Numerical Modeling of Granular Flows in Rotary Kilns」,Delft University of Technology,2012年5月などの例があるが、これらの例ではリフターの存在が考慮されていない。本発明者らは、今回、リフターが設置された複雑な構造のミキサーの最適な設計を実現するために、離散要素法(DEM)を用いた解析を実施した。
ここで、本発明者らが検討に用いた離散要素法(DEM)について簡単に説明する。離散要素法(DEM:Discrete Element Method)は、個別要素法(DEM:Distinct Element Method)とも呼ばれる。以下の説明では、これらの方法を単にDEMともいう。DEMは、解析の対象を自由に運動できる多角形、円形、または球の要素の集合体としてモデル化し、要素間の接触および滑動を考慮して、各時刻におけるそれぞれの要素の運動を逐次追跡して解析する手法である。なお、DEMの手法およびプログラミングについては、例えば酒井幹夫編著,「粉体の数値シミュレーション」,丸善出版,2012年8月等の公知文献において既に説明されているため、ここでは詳細な説明を省略する。
続いて、ミキサーにおける雰囲気ガスへの暴露判定および暴露積算時間計測の方法について説明する。本解析において、化学反応は、粒子がミキサー内の雰囲気ガスに接触(暴露)した時点で開始されるものとする。それゆえ、ミキサー内の粒子の流れの中で、雰囲気ガスに接触したか否かを判定するためのロジックが提供される。
このロジックでは、まず、ミキサーの内部空間をグリッドに分割し、各グリッドにおいて粒子密度を測定する。ここで、グリッドのサイズは、最大粒子の直径に等しい。例えば、図2(a)に示すように、ある粒子p(代表粒子)に着目した場合、この粒子pを含む3×3×3の27グリッドg(3次元)が解析対象になる。これらのグリッドg全体について算出された粒子体積割合が閾値(例えば50%)以下の場合に、粒子pが雰囲気ガスに接触したと判定されうる。
なお、図2(b)に示すように、解析対象の空間内に容器やリフターなどの壁wがある場合、壁wの内部では粒子密度が0になるために、そのままでは粒子pが壁wに接している場合などにも雰囲気ガスへの接触が判定されてしまう。そこで、本解析では、粒子中心と壁wとの距離rが閾値(例えば粒子直径の2倍)以下の場合に、粒子体積割合に重さのバイアスをかけることによって、粒子pが壁wに接している状態を解析に反映させる。
次に、ミキサーにおける雰囲気ガスと原料粒子との化学反応度合の計測方法について説明する。上述の通り、本解析において、化学反応は、粒子が雰囲気ガスに接触(暴露)した時点で開始されるが、粒子が再び埋もれた場合は反応が低減されるものとする。その一方で、常に埋もれていて雰囲気ガスに接触しない粒子でも、雰囲気ガスが次第に粒子間に浸透することによって少しずつ反応が進むものとしてもよい。このような場合のモデル化について、図3を参照してさらに説明する。
図3(a)は、粒子が時間Δtだけ雰囲気ガスに暴露した後、埋もれて非暴露状態になった場合のモデルを示す。この場合、グラフに破線で示すように反応が進行し、非暴露状態になった後Δtneで反応が収束するものとする。該図において、横軸の時間は雰囲気ガスに暴露される毎にリセットされる。モデルでは、実線で示すように、暴露状態(Δt)では一定の反応度合αで反応が進行し、非暴露状態(Δtne)では反応度合がα2.maxからα2.minまで時間tαをかけて線型的に低下し、その後0になる。ここで、パラメータα、α、およびtαは、実験との比較によって決定される。図3(b)は、粒子が非暴露状態のままである場合のモデルを示す。この場合、処理開始から時間tが経過した時点から反応度合αで反応が開始され、時間tαの間継続するものとする。図3(a)の例と同様に、パラメータt、α、およびtαは、実験との比較によって決定される。なお、これらの例におけるパラメータの決定にあたっては、速度依存性などがさらに加味されてもよい。
次に、上述した解析における諸量の決定について、さらに説明する。粒子が、暴露時間Δtおよび非暴露時間Δtneの繰り返しを経た結果、反応指標Rが指定反応指標R を超えた粒子の個数をNRT>RT*とする。さらに、NRT>RT*の粒子総数Nに対する比を反応終了粒子割合Pとし、反応終了粒子割合Pが100%になった時刻を反応終了時刻とする。また、雰囲気ガスに暴露しない粒子の反応についても考慮するため、トータル時間ttotalに対する反応度合も考慮する。以上のような諸量の関係を数式で表現すると、以下の式1,2のようになる。
Figure 2015206525
ここで、上記の数式において、αは雰囲気暴露時の反応速度比であり、α=1.0を基本とする。αは雰囲気非暴露時の反応速度比であり、非暴露状態になってからの経過時間t(非暴露状態になる度にクリアされる)を用いて以下の式3および式4のように表される。
Figure 2015206525
また、αは原料層内へのガス浸透に伴う反応速度比であり、処理開始後t以降に時間tαの間アクティブになるものとする。つまり、αは以下の式5および式6のように表される。
Figure 2015206525
さらに、反応終了粒子割合Pを、原料粒子の粒度分布を考慮して算出する場合、粒径d,d,…,dのn種類の粒子が原料粒子に含まれるとして、反応終了粒子割合Pを算出するための上記の式2は、以下の式7のように修正される。
Figure 2015206525
ここで、NRT>RT*iは、粒径dの粒子で、反応指標Rが指定反応指標R を超えた粒子の個数である。Nciは、粒径dの粒子の総数である。wは、粒径dの粒子に対して与えられる重み係数であり、粒子の表面積に比例するものとして以下の式8によって与えられる。なお、dminは、粒径d,d,…,dのうちの最小値である。
Figure 2015206525
図4は、検討の対象とされた転動型ミキサーのリフター構造を示す図である。図4(a)に示す例では、中心軸を略水平方向として配置された円筒容器1の内周面から突出する、4本の凸条型の周面リフター2が設けられている。このようなリフター構造を、以下の説明では周面4本リフター、または単に4本リフターともいう。グラフでは、この周面4本リフターの場合の結果がL4という記号によって表される場合がある。図4(b)に示す例では、円筒容器1の内周面にはリフターが設けられず、3本の中央リフター3が設けられている。中央リフター3は、円筒容器1の断面中心から放射状に突出している。このようなリフター構造を、以下の説明では中央3本リフター、または単に3本リフターともいう。グラフでは、この中央3本リフターの場合の結果がL3という記号によって表される場合がある。図4(c)に示す例では、円筒容器1の内周面に3本の凸条型の周面リフター2が設けられるとともに、3本の中央リフター3も設けられている。このようなリフター構造を、以下の説明では6本リフターともいう。グラフでは、この6本リフターの場合の結果がL6という記号によって表される場合がある。
図5は、図4に示した3種類のリフター構造のそれぞれについて、占積率が40%の場合に、原料粒子の挙動に関するDEM解析を実施した結果を示すグラフである。グラフでは、円筒容器1を回転させて処理が開始された後、1回転に対する粒子挙動が定常的になった状態で、円筒容器1の1回転を回転角度30°ごとに12分割し、それぞれの時点で原料粒子が雰囲気ガスに接触している面(暴露面)の、円筒容器1の横断面における長さの推移が示されている。図5に示される解析の結果によると、中央3本リフターの場合(L3)および6本リフターの場合(L6)は、周面4本リフターの場合(L4)に比べて最大で約2倍の雰囲気接触面積が発生していることがわかる。また、中央3本リフターの場合(L3)と6本リフターの場合(L6)とを比較すると、6本リフターの場合の方が平均的に雰囲気接触面積が大きく、最も反応促進効果が大きいことがわかる。
図6A、図6Bおよび図7は、上記のDEM解析において、原料粒子が雰囲気ガスに接触(暴露)した時間を積算し、暴露時間が所定の時間を超えた粒子の全粒子に対する割合の推移を示すグラフである。図6Aには占積率が10%の場合を、図6Bには占積率が20%の場合を、図7には占積率が40%の場合を、それぞれ示す。図6Aに示す占積率10%の場合、中央3本リフター(L3)は実質的にリフターとして機能せず(リフターなしの場合と同じ)、時間が経過しても暴露粒子割合が100%に到達しない。一方、周面4本リフターの場合(L4)と6本リフターの場合(L6)とでは、暴露粒子割合が100%に到達するまでの時間に大きな差は生じない。図6Bに示す占積率20%の場合、どのリフター構造の場合も暴露粒子割合が100%に到達するが、中央3本リフターの場合(L3)および6本リフターの場合(L6)の方が、周面4本リフターの場合(L4)よりも100%に到達するまでの時間が短い。中央3本リフターの場合(L3)と6本リフターの場合(L6)とを比較すると、6本リフターの場合の方が100%に到達するまでの時間が短い。
一方、図7に示す占積率40%の場合、周面4本リフターの場合(L4)には暴露粒子割合が約30%で頭打ちになり、それ以上反応を進行させることが困難である。一方、中央3本リフターの場合(L3)および6本リフターの場合(L6)には、暴露粒子割合を100%に到達させることが可能である。この結果から、占積率が高い場合(例えば、図7に示す占積率40%の場合)には中央リフターが有効であり、占積率が低い場合(例えば、図6Aに示す占積率10%の場合)には周面リフターが有効であることがわかる。つまり、中央リフターと周面リフターとを組み合わせた6本リフターの構造は、占積率が高い場合にも低い場合にも有効であり、例えば反応容器1の入口側と出口側とで占積率が変化するような場合にも、それぞれの区間で十分に効果を発揮することができる。
さらに、周面4本リフターの場合と、6本リフターの場合とについて、化学反応性の評価を実施した。本検討では、製鋼スラグの炭酸化を対象とした。まず、先に示した化学反応進行モデルのパラメータを決定するための実験を実施した。実験は、炭酸化を実施する際の実機速度の一例である回転速度0.5rpmの場合と、リフター構造の影響がなくなり反応速度の限界になると想定される23rpmの場合とで実施した。また、化学反応指標Rと実験で計測されるpH値との換算には、以下の式9を用いた。なお、s,s,s,Cは定数であり、Rは式1に示す化学反応指標であり、単位は時間[hour]に換算されている。
Figure 2015206525
図8は、製鋼スラグの炭酸化実験結果と、解析による計算結果との比較結果を示すグラフである。以下の評価に用いる化学反応進行モデルの各パラメータは、図8にグラフに示すような実験結果と計算結果との合わせ込みの結果に基づいて決定されている。図8(a)は回転速度0.5rpmの場合の結果を示し、図8(b)は回転速度23rpmの場合の結果を示す。回転数23rpmというのは、炭酸化反応時の容器の回転数としては極めて高い値である。回転数23rpmの例は、ミキサー内で粒子がリフターにより勢いよく持ち上げられるとともに、粒子が雰囲気ガス内を落下する頻度が増加することによって、反応効率が最大となった状態を模擬している。なお、図8に示す実験は、周面4本リフターの場合について実施されているが、化学反応進行モデルの各パラメータについては、他のリフター構造の場合にも同様に適用されうる。
図8に示すような実験の結果を利用した合わせ込み計算の結果、以下のようなパラメータが決定された。
α=α2.max=0.56,
α2.min=α=0.44,
=0,
α2=200,
α3=∞,
=0.000274,
=0.00100,
=0.00113,
C=12.3
図9および図10は、DEM解析において、上記の指標を用いて実施した炭酸化反応の進行予測結果を、pH値の推移によって示すグラフである。図9には占積率が10%の場合を、図10には占積率が40%の場合を、それぞれ示す。図9に示す占積率10%の場合、周面4本リフターの場合(L4)および6本リフターの場合(L6)の方が、中央3本リフターの場合(L3)よりもpH値の低下が早い、つまり炭酸化反応の進行が速いことが予測されている。これは、占積率が低い場合、原料粒子は円筒容器1の内周面に沿って分布するため、中央リフター3によって掻き上げられることが少なく、リフターが原料粒子の反応にあまり影響しないためである。反応が進行すると(pH11以下)、6本リフターの場合(L6)の方が炭酸化反応の進行が速くなる。
一方、図10に示す占積率40%の場合、周面4本リフターの場合(L4)よりも、中央3本リフターの場合(L3)および6本リフターの場合(L6)の方が、炭酸化反応の進行が速いことが予測されている。これは、占積率が上昇したことで周面リフター2が十分に機能しなくなる一方で、原料粒子が円筒容器1の中央に近い領域にも分布するようになるため、中央3本リフターが効果を発揮するためである。中央3本リフターの場合(L3)でも反応の進行はかなり早いが、反応が進行すると6本リフターの場合(L6)の方が炭酸化反応の進行が速くなる。
図11および図12は、上記の解析結果を受けて実施した炭酸化反応実験の結果を示すグラフである。図11には占積率が10%の場合を、図12には占積率が40%の場合を、それぞれ示す。図11に示す占積率10%の場合の結果は、炭酸化反応が進行するほど(pH値が低下するほど)周面4本リフターの場合(L4)よりも6本リフターの場合(L6)との反応速度の差が顕著になることを示している。例えば、pH値が10.2に到達するまでの時間で比較した場合、6本リフターの場合(L6)の所要時間は周面4本リフターの場合(L4)の約半分である。占積率が比較的低い(10%)の場合でも6本リフターの方が有利であるのは、図13(占積率10%の場合の粒子挙動のDEM解析結果)に示すように、周面リフター2が掻き上げた粒子を中央リフター3がすくい上げることによって、粒子の雰囲気ガスへの暴露時間が長くなっているためと推定される。
一方、図12に示す占積率40%の場合の結果でも、周面4本リフターの場合(L4)よりも6本リフターの場合(L6)の方が炭酸化反応の進行が速いことを示している。例えば、pH値が10.4に到達するまでの時間で比較した場合、6本リフターの場合(L6)の所要時間は周面4本リフターの場合(L4)の約60%である。また、周面4本リフターの場合(L4)ではpH値が10.4前後に到達して以降は反応が進行しにくくなっているのに対し、6本リフターの場合(L6)ではpH値が10.4以下になっても反応が進行していることもわかる。
図14は、転動型ミキサーのリフター構造の変形例を示す図である。図14に示す例では、円筒容器1の内周面に設けられる3本の周面リフターが内周面に対して傾斜して、周面リフター2tになっている。3本の中央リフター3については、図4(c)に示した例と同様である。
図15は、図14に示した変形例に係るリフター構造について、占積率が40%の場合に、原料粒子の挙動に関するDEM解析を実施した結果を示すグラフである。DEM解析では、原料粒子が雰囲気ガスに接触(暴露)した時間を積算し、暴露時間が所定の時間を超えた粒子の全粒子に対する割合の推移をグラフに示した。図15には、図14に示す、傾斜した周面リフター2tを含む6本リフターの場合(L6t)と、図4(c)に示す6本リフターの場合(L6)と、比較のために図4(a)に示す周面4本リフターの場合(L4)と、周面4本リフターで傾斜した周面リフター2tが設けられる場合(L4t)とが示されている。図15に示される解析結果によると、周面4本リフターの場合(L4,L4t)よりも6本リフターの場合(L6,L6t)の方が暴露粒子割合の増加が速いのに加えて、傾斜した周面リフター2tが設けられる場合の方が、暴露粒子割合の増加が速い。従って、図14に示すように傾斜した周面リフター2tを設けることは、原料粒子の反応促進のために有効であるといえる。
図16は、転動型ミキサーのリフター構造のさらなる変形例を示す図である。図16に示す例では、円筒容器1の中央に、メッシュ構造を有する3本の中央リフター3mが設けられている。図示された例では周面リフターが設けられていないが、例えば図4(c)の例に示されたような周面リフター2や、図14の例に示したような傾斜した周面リフター2tを設けてもよい。
上述の通り、原料粒子の反応性を向上させるためには、雰囲気ガスとの接触(暴露)機会を多くすることが必要である。図示された例では、中央リフター3mが原料粒子をすくい上げるときに、メッシュ構造を通して一部の粒子がふるい落とされる。より具体的には、中央リフター3mが原料粒子をかき上げるときには、リフター面に原料の粗粒が、その上に細粒が積層した状態になって、原料粒子が雰囲気ガスに暴露する。さらに、中央リフター3が下降するときには、原料の細粒が粗粒の下に移動し、メッシュ構造を通して落下することによって、さらに雰囲気ガスに暴露される。このため、メッシュ構造のサイズは、原料の粒度分布に基づいて決定されることが望ましい。
図17は、図16に示した変形例に係るリフター構造について、占積率が20%および40%の場合に、原料粒子の挙動に関するDEM解析を実施した結果を示すグラフである。DEM解析では、原料粒子が雰囲気ガスに接触(暴露)した時間を積算し、暴露時間が所定の時間を超えた粒子の全粒子に対する割合の推移をグラフに示した。図17には、図16に示す、メッシュ構造の中央リフター3mの場合(L3m)と、図4(b)に示す中央3本リフターの場合(L3)とが示されている。図17に示される解析結果によると、占積率20%の場合も、占積率40%の場合も、メッシュ構造の中央リフター3mの場合(L3m)の方が、中央3本リフターの場合(L3)よりも暴露粒子割合の増加が速い。従って、図16に示すようにメッシュ構造の中央リフター3mを設けることは、原料粒子の反応促進のために有効であるといえる。
以下、転動型ミキサーが原料を連続的に処理する場合の構成について説明する。ここまでに説明された構成は、転動型ミキサーが原料を連続的に処理しない場合、つまりバッチ処理する場合にも適用可能であったが、以下で説明する構成は、主に転動型ミキサーが原料を連続的に処理する場合に適用される。この場合、転動型ミキサーでは、円筒容器1の中心軸が、円筒容器1の入口から出口に向かって緩傾斜するように配置され、この傾斜によって原料が円筒容器1の長手方向に移動する。円筒容器1の入口から投入された原料は、円筒容器1内を移動しながら雰囲気ガスと反応し、出口から排出される。原料の投入速度と円筒容器1の傾斜および回転速度を適切に設定することによって、原料を定常的かつ連続的に処理することができる。
図18は、連続処理型の転動型ミキサーのリフター構造の例を示す図である。図18(A)には、周面リフター2および中央リフター3が、円筒容器1の入口から出口まで一様な断面形状を有する例(均一タイプ)が示されている。一方、図18(B)には、周面リフター2が円筒容器1の入口から出口まで一様な断面形状を有するのに対して、中央リフター3が、円筒容器1の入口から出口にかけて段階的に小さくなる例(多段タイプ)が示されている。
図18(A)に示す均一タイプの場合、円筒容器1の入口に設けられる原料投入口から原料を投入すると、投入口付近で原料が堆積し、占積率が高くなる傾向がある。従って、図18(B)に示す多段タイプのリフター構造によって、中央リフター3の効果が高い入口側の区間では中央リフター3の断面形状を大きくし、出口側に向かって中央リフター3の断面形状を段階的に小さくしてもよい。
図19は、図18に示した連続処理型の転動型ミキサーについて、実機をスケールダウンした実験用の環境で、原料粒子の挙動に関するDEM解析を実施した結果を示すグラフである。図19のグラフには、円筒容器1の入口からの距離(cm)と、各位置での断面における占積率(%)とが、周面4本リフターの場合(L4)、図18(A)に示す6本リフターの均一タイプの場合(L6_1)、および図18(B)に示す6本リフターの多段タイプの場合(L6_2)について示されている。図19に示される解析結果によると、6本リフターの均一タイプの場合(L6_1)には入口付近で占積率が100%に達するのに対し、6本リフターの多段タイプの場合(L6_2)、入口付近では中央リフター3が大きいために、均一タイプの場合(L6_1)のように占積率が100%に達することはなく、90%程度に抑えられる。多段タイプではその後の占積率の低下も均一タイプより速く、出口近傍では4本リフターの場合(L4)とほぼ同程度になる。
図20は、上記のDEM解析における経過時間と排出粒子の化学反応度の平均値との関係を示すグラフである。化学反応度は式1により計算され、単位は[sec]である。解析では、初期状態では円筒容器1内に原料粒子が存在しない(粒子数0)とし、その後一定量の原料粒子を投入口から円筒容器1内に投入し、円筒容器1内の滞留粒子数がほぼ一定になるまで投入を継続する。図20に示される解析結果によると、4本リフターの場合(L4)の排出粒子の化学反応度が最も低く、6本リフターの多段タイプの場合(L6_2)は、4本リフターの場合(L4)と6本リフターの均一タイプの場合(L6_1)との中間の化学反応度になる。
上記で図19および図20を参照して示した解析結果によれば、連続処理型の転動型ミキサーでは、4本リフターの場合(L4)、全体的に占積率を抑制することができるが、化学反応が十分に進まないまま原料粒子が排出される可能性がある。一方、6本リフターの均一タイプの場合(L6_1)、原料粒子を十分に反応させることができるが、特に円筒容器1の入口付近で占積率が高くなりすぎる傾向がある。6本リフターの多段タイプの場合(L6_2)、原料粒子を十分に反応させつつ、円筒容器1の入口付近での占積率を低減することができる。
図21〜図24は、連続処理型の転動型ミキサーのリフター構造の他の例を示す図である。図21には、中央リフター3が円筒容器1の入口から出口にかけて連続的に小さくなる例(連続タイプ)が示されている。この例では、図18(B)に示した多段タイプと同様に、中央リフター3の効果が高い入口側の区間で中央リフター3を大きくし、出口側に向かって中央リフター3の断面形状を徐々に小さくしている。
図22には、図21に示した連続タイプと同様に中央リフター3sが円筒容器1の入口から出口にかけて連続的に小さくなるのに加えて、円筒容器1の軸線回りの螺旋形状をなす例(連続螺旋タイプ)が示されている。この例では、図21に示した連続タイプと同様の効果に加えて、中央リフター3sが原料粒子を入口から出口に向かう方向に搬送する作用を有することによって、原料粒子の滞留を緩和する効果が得られる。
図23には、図21に示した連続タイプと同様に中央リフター3mが円筒容器1の入口から出口にかけて連続的に小さくなるのに加えて、メッシュ構造を有する例(連続メッシュタイプ)が示されている。この例では、図21に示した連続タイプと同様の効果に加えて、図16を参照して説明したように、中央リフター3mのメッシュ構造によって原料粒子が雰囲気ガスに接触(暴露)する機会を多くし、反応性を向上させる効果が得られる。
図24には、図21に示した連続タイプと同様に中央リフター3cが円筒容器1の入口から出口にかけて連続的に小さくなるのに加えて、櫛歯構造を有する例(連続櫛歯タイプ)が示されている。この例では、図23に示した連続メッシュタイプと同様に、入口付近での原料粒子の滞留を緩和するとともに、原料粒子が雰囲気ガスに接触(暴露)する機会を多くして反応性を向上させる効果が得られる。
図25には、図21に示した連続タイプと同様に中央リフター3dが円筒容器1の入口
から出口にかけて断続的に複数配置された例が示されている。この例においても、入口付近での原料粒子の滞留を緩和するとともに、原料粒子が雰囲気ガスに接触(暴露)する機会を多くして反応性を向上させる効果が得られる。
以上で説明したような転動型ミキサーのリフター構造によれば、周面リフター2と中央リフター3とを併用することによって原料粒子を効率的に撹拌して偏析を防ぎ、雰囲気ガスとの接触(暴露)による反応を促進させることができる。上述した例のように、例えばバッチ処理においては2倍以上の反応効率を実現することも可能である。反応効率の向上によって、例えばバッチ処理の場合には処理時間を短縮したり、連続処理の場合には円筒容器1の長さを短縮したりすることができる。また、リフター構造の設計にあたっては、DEMによる原料粒子の挙動解析が利用されうる。上記の例では、例えば、粉粒体の混合度合、雰囲気ガスへの暴露度合、および雰囲気ガスとの化学反応度合を定量的に評価することによって、上記のような最適なリフター構造が示された。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
なお、本発明の実施形態に係るリフター構造は、上記で説明された例には限られない。例えば、DEMによる原料粒子の挙動解析を利用して設計されるリフター構造として、中央リフターの本数が3本ではなく4本以上であるものが実現されてもよい。同様に、周面リフターの本数が3本ではなく4本以上であるものが実現されてもよい。
1 円筒容器
2,2t 周面リフター
3,3m,3s,3c 中央リフター

Claims (8)

  1. 中心軸を略水平方向として配置された円筒容器を回転させて、該円筒容器内に投入された原料を撹拌しながら前記円筒容器内の雰囲気ガスと反応させる容器回転型ミキサーであって、
    前記円筒容器の内周面から突出する周面リフターと、
    前記円筒容器の断面中心から放射状に突出する中央リフターと
    を備えることを特徴とする容器回転型ミキサー。
  2. 前記周面リフターおよび前記中央リフターのうちの少なくともいずれかは、前記円筒容器の入口から前記円筒容器の出口に向かって断面形状が変化することを特徴とする、請求項1に記載の容器回転型ミキサー。
  3. 前記中央リフターの断面形状が、前記入口から前記出口に向かって徐々に小さくなることを特徴とする、請求項2に記載の容器回転型ミキサー。
  4. 前記中央リフターの配置が断続的であることを特徴とする、請求項2または3に記載の容器回転型ミキサー。
  5. 前記中央リフターが前記中心軸回りの螺旋構造を有することを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の容器回転型ミキサー。
  6. 前記中央リフターがメッシュ構造を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の容器回転型ミキサー。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の容器回転型ミキサーの設計方法であって、
    離散要素法(DEM)を用いて前記原料を構成する粒子の挙動を解析した結果を利用して前記周面リフターおよび前記中央リフターを設計することを特徴とする設計方法。
  8. 前記粒子の混同度合、前記粒子の前記雰囲気ガスへの暴露度合、または前記粒子の前記雰囲気ガスとの反応度合のうちの少なくともいずれかを解析した結果を利用することを特徴とする、請求項7に記載の設計方法。
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