以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の車両用空気調和装置1の一実施例の構成図を示している。この場合、本発明を適用する実施例の車両は、エンジン(内燃機関)を有さない電気自動車(EV)であって、バッテリに充電された電力で走行用の電動モータを駆動して走行するものであり(何れも図示せず)、本発明の車両用空気調和装置1もバッテリの電力で駆動されるものとする。
即ち、実施例の車両用空気調和装置1は、エンジン廃熱による暖房ができない電気自動車において、冷媒回路を用いたヒートポンプ運転により暖房を行い、更に、除湿暖房や除湿冷房、冷房等の各運転モードを選択的に実行するものである。尚、車両として電気自動車に限らず、エンジンと走行用の電動モータを供用する所謂ハイブリッド自動車にも本発明は有効である。更には、エンジンで走行する通常の自動車にも本発明は適用可能である。
実施例の車両用空気調和装置1は、電気自動車の車室内の空調(暖房、冷房、除湿、及び、換気)を行うものであり、冷媒を圧縮して昇圧する電動式の圧縮機2と、車室内空気が通気循環されるHVACユニット10の空気流通路3内に設けられて圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒を車室内に放熱させる放熱器4と、暖房時に冷媒を減圧膨張させる電子膨張弁から成る室外膨張弁(ECCV)6と、冷房時には冷媒を放熱させる放熱器として機能し、暖房時には冷媒を吸熱させる蒸発器として機能すべく冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器7と、冷媒を減圧膨張させる電子膨張弁から成る室内膨張弁8と、空気流通路3内に設けられて冷房時及び除湿時に車室内外から冷媒を吸熱させる吸熱器9と、吸熱器9における蒸発能力を調整する蒸発能力制御弁11と、アキュムレータ12等が冷媒配管13により順次接続され、冷媒回路Rが構成されている。
尚、室外熱交換器7には、車両の停止時等の外気を室外熱交換器7に通風して当該外気と冷媒とを熱交換させるための室外送風機15が設けられている。また、図中24はグリルシャッタである。このグリルシャッタ24は閉じられると、走行風が室外熱交換器7に流入することが阻止される。
また、室外熱交換器7は冷媒下流側にレシーバタンク部14と過冷却部16を順次有し、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは冷房時に開放される電磁弁(開閉弁)17を介してレシーバタンク部14に接続され、過冷却部16の出口が逆止弁18を介して室内膨張弁8に接続されている。尚、レシーバタンク部14及び過冷却部16は構造的に室外熱交換器7の一部を構成しており、逆止弁18は室内膨張弁8側が順方向とされている。
また、逆止弁18と室内膨張弁8間の冷媒配管13Bは、吸熱器9の出口側に位置する蒸発能力制御弁11を出た冷媒配管13Cと熱交換関係に設けられ、両者で内部熱交換器19を構成している。これにより、冷媒配管13Bを経て室内膨張弁8に流入する冷媒は、吸熱器9を出て蒸発能力制御弁11を経た低温の冷媒により冷却(過冷却)される構成とされている。
また、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは分岐しており、この分岐した冷媒配管13Dは、暖房時に開放される電磁弁(開閉弁)21を介して内部熱交換器19の下流側における冷媒配管13Cに連通接続されている。更に、放熱器4の出口側の冷媒配管13Eは室外膨張弁6の手前で分岐しており、この分岐した冷媒配管13Fは、除湿時に開放される電磁弁(開閉弁)22を介して逆止弁18の下流側の冷媒配管13Bに連通接続されている。
また、吸熱器9の空気上流側における空気流通路3には、内気吸込口と外気吸込口の各吸込口(図1では代表して吸込口25で示す)が形成されており、この吸込口25には空気流通路3内に導入する空気を車室内の空気である内気(内気循環モード)と、車室外の空気である外気(外気導入モード)とに切り換える吸込切換ダンパ26が設けられている。更に、この吸込切換ダンパ26の空気下流側には、導入した内気や外気を空気流通路3に送給するための室内送風機(ブロワファン)27が設けられている。
また、図1において23は実施例の車両用空気調和装置1に設けられた補助加熱手段としての熱媒体循環回路を示している。この熱媒体循環回路23は循環手段を構成する循環ポンプ30と、熱媒体加熱電気ヒータ35と、空気流通路3の空気の流れに対して、放熱器4の空気上流側となる空気流通路3内に設けられた熱媒体−空気熱交換器40とを備え、これらが熱媒体配管23Aにより順次環状に接続されている。尚、この熱媒体循環回路23内で循環される熱媒体としては、例えば水、HFO−1234yfのような冷媒、クーラント等が採用される。
そして、循環ポンプ30が運転され、熱媒体加熱電気ヒータ35に通電されて発熱すると、この熱媒体加熱電気ヒータ35により加熱された熱媒体が熱媒体−空気熱交換器40に循環されるよう構成されている。即ち、この熱交換器循環回路23の熱媒体−空気熱交換器40が所謂ヒータコアとなり、車室内の暖房を補完する。係る熱媒体循環回路23を採用することで、搭乗者の電気的な安全性を向上させている。
また、熱媒体−空気熱交換器40及び放熱器4の空気上流側における空気流通路3内には、内気や外気の放熱器4への流通度合いを調整するエアミックスダンパ28が設けられている。更に、放熱器4の空気下流側における空気流通路3には、フット、ベント、デフの各吹出口(図1では代表して吹出口29で示す)が形成されており、この吹出口29には上記各吹出口から空気の吹き出しを切換制御する吹出口切換ダンパ31が設けられている。
次に、図2において32はマイクロコンピュータから構成された制御手段としてのコントローラ(ECU)であり、このコントローラ32の入力には車両の外気温度を検出する外気温度センサ33と、車両の外気湿度を検出する外気湿度センサ34と、吸込口25から空気流通路3に吸い込まれる温度を検出するHVAC吸込温度センサ36と、車室内の空気(内気)の温度を検出する内気温度センサ37と、車室内の空気の湿度を検出する内気湿度センサ38と、車室内の二酸化炭素濃度を検出する室内CO2濃度センサ39と、吹出口29から車室内に吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ41と、圧縮機2の吐出冷媒圧力を検出する吐出圧力センサ42と、圧縮機2の吐出冷媒温度を検出する吐出温度センサ43と、圧縮機2の吸込冷媒圧力を検出する吸込圧力センサ44と、放熱器4の温度(放熱器4自体の温度、又は、放熱器4にて加熱された空気の温度)を検出する放熱器温度センサ46と、放熱器4の冷媒圧力(放熱器4内、又は、放熱器4を出た冷媒の圧力)を検出する放熱器圧力センサ47と、吸熱器9の温度(吸熱器9自体、又は、吸熱器9にて冷却された空気の温度)を検出する吸熱器温度センサ48と、吸熱器9の冷媒圧力(吸熱器9内、又は、吸熱器9を出た冷媒の圧力)を検出する吸熱器圧力センサ49と、車室内への日射量を検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ51と、車両の移動速度(車速)を検出するための車速センサ52と、温度や運転モードの切り換えを設定するための空調操作部53と、室外熱交換器7の温度を検出する室外熱交換器温度センサ54と、室外熱交換器7の冷媒圧力を検出する室外熱交換器圧力センサ56の各出力が接続されている。
また、コントローラ32の入力には更に、熱媒体循環回路23の熱媒体加熱電気ヒータ34の温度を検出する熱媒体加熱電気ヒータ温度センサ50と、熱媒体−空気熱交換器40の温度を検出する熱媒体−空気熱交換器温度センサ55の各出力も接続されている。
一方、コントローラ32の出力には、前記圧縮機2と、室外送風機15と、室内送風機(ブロワファン)27と、吸込切換ダンパ26と、エアミックスダンパ28と、吸込口切換ダンパ31と、室外膨張弁6、室内膨張弁8と、各電磁弁22、17、21と、循環ポンプ30と、熱媒体加熱電気ヒータ35と、蒸発能力制御弁11と、グリルシャッタ24が接続されている。そして、コントローラ32は各センサの出力と空調操作部53にて入力された設定に基づいてこれらを制御する。
以上の構成で、次に実施例の車両用空気調和装置1の動作を説明する。コントローラ32は実施例では大きく分けて暖房モードと、除湿暖房モードと、除湿冷房モードと、冷房モードの各運転モードを切り換えて実行する。先ず、各運転モードにおける冷媒の流れについて説明する。
(1)暖房モード
コントローラ32により或いは空調操作部53へのマニュアル操作により暖房モードが選択されると、コントローラ32は電磁弁21を開放し、電磁弁17、電磁弁22を閉じる。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は室内送風機27から吹き出された空気が熱媒体−空気熱交換器40及び放熱器4に通風される状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は熱媒体−空気熱交換器40により加熱された後(熱媒体循環回路23が作動している場合)、放熱器4内の高温冷媒により加熱される。一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。
放熱器4内で液化した冷媒は冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至り、そこで減圧された後、室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒は蒸発し、走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気中から熱を汲み上げる(ヒートポンプ)。そして、室外熱交換器7を出た低温の冷媒は冷媒配管13D及び電磁弁21を経て冷媒配管13Cからアキュムレータ12に入り、そこで気液分離された後、ガス冷媒が圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。熱媒体−空気熱交換器40や放熱器4にて加熱された空気は吹出口29から吹き出されるので、これにより車室内の暖房が行われることになる。
コントローラ32は放熱器圧力センサ47が検出する放熱器4の冷媒圧力、即ち、放熱器圧力PCI(冷媒回路Rの高圧圧力)に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、放熱器温度センサ46が検出する放熱器4の温度(放熱器温度TCI)に基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4の出口における冷媒の過冷却度SCを制御する。
(2)除湿暖房モード
次に、除湿暖房モードでは、コントローラ32は上記暖房モードの状態において電磁弁22を開放する。これにより、放熱器4を経て冷媒配管13Eを流れる凝縮冷媒の一部が分流され、電磁弁22を経て冷媒配管13F及び13Bより内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至るようになる。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
吸熱器9で蒸発した冷媒は蒸発能力制御弁11、内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cにて冷媒配管13Dからの冷媒と合流した後、アキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱されるので、これにより車室内の除湿暖房が行われることになる。
コントローラ32は放熱器圧力センサ47が検出する放熱器圧力PCI(冷媒回路Rの高圧圧力)に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)に基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御する。
図3は除湿暖房モード(前記暖房モードも同様)における圧縮機2の目標回転数(圧縮機目標回転数)TGNChを決定するコントローラ32の制御ブロック図である。コントローラ32のF/F(フィードフォワード)操作量演算部58は外気温度センサ33から得られる外気温度Tamと、吸熱器9の温度の目標値である目標吸熱器温度TEOと、空気流通路3に流入した空気の質量風量Gaと、放熱器4の出口における過冷却度SCの目標値である目標過冷却度TGSCと、放熱器4の温度の目標値である目標放熱器温度TCOと、放熱器4の圧力の目標値である目標放熱器圧力PCOに基づいて圧縮機目標回転数のF/F操作量TGNChffを演算する。
前記目標放熱器圧力PCOは上記目標過冷却度TGSCと目標放熱器温度TCOに基づいて目標値演算部59が演算する。更に、F/B(フィードバック)操作量演算部60はこの目標放熱器圧力PCOと放熱器4の冷媒圧力である放熱器圧力PCIに基づいて圧縮機目標回転数のF/B操作量TGNChfbを演算する。そして、F/F操作量演算部58が演算したF/F操作量TGNCnffとF/B操作量演算部60が演算したTGNChfbは加算器61で加算され、リミット設定部62で制御上限値と制御下限値のリミットが付けられた後、圧縮機目標回転数TGNChとして決定される。除湿暖房モード(前記暖房モードも同様)においては、コントローラ32はこの圧縮機目標回転数TGNChに基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
次に、図4は除湿暖房モードにおける室外膨張弁6の目標開度(室外膨張弁目標開度)TGECCVteを決定するコントローラ32の制御ブロック図である。コントローラ32のF/F操作量演算部65は、吸熱器9の目標吸熱器温度TEOと、目標放熱器温度TCOと、空気の質量風量Gaと、外気温度Tamに基づいて室外膨張弁目標開度のF/F操作量TGECCVteffを演算する。
また、F/B操作量演算部63は、目標吸熱器温度TEOと吸熱器温度Teに基づいて室外膨張弁目標開度のF/B操作量TGECCVtefbを演算する。そして、F/F操作量演算部65が演算したF/F操作量TGECCVteffとF/B操作量演算部63で演算されたF/B操作量TGECCVtefbは加算器66で加算され、リミット設定部67で制御上限値と制御下限値のリミットが付けられた後、室外膨張弁目標開度TGECCVteとして決定される。除湿暖房モードにおいては、コントローラ32はこの室外膨張弁目標開度TGECCVteに基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御する。
(3)除湿冷房モード
次に、除湿冷房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21、電磁弁22を閉じる。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は室内送風機27から吹き出された空気が熱媒体−空気熱交換器40及び放熱器4に通風される状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され(熱媒体循環回路40は停止)、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化していく。
放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至り、開き気味で制御される室外膨張弁6を経て室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバタンク部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は逆止弁18を経て冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
吸熱器9で蒸発した冷媒は蒸発能力制御弁11、内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて冷却され、除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱(暖房時よりも放熱能力は低い)されるので、これにより車室内の除湿冷房が行われることになる。
コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、前述した冷媒回路Rの高圧圧力(放熱器圧力PCI)に基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI)を制御する。
(4)冷房モード
次に、冷房モードでは、コントローラ32は上記除湿冷房モードの状態において室外膨張弁6を全開(弁開度を制御上限)とし、エアミックスダンパ28は放熱器4に空気が通風されない状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気は通風されないので、ここは通過するのみとなり、放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至る。
このとき室外膨張弁6は全開であるので冷媒はそのまま室外熱交換器7に流入し、そこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮液化する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバタンク部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は逆止弁18を経て冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却される。
吸熱器9で蒸発した冷媒は蒸発能力制御弁11、内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて冷却され、除湿された空気は放熱器4を通過すること無く吹出口29から車室内に吹き出されるので、これにより車室内の冷房が行われることになる。この冷房モードにおいては、コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度Teに基づいて圧縮機2の回転数を制御する。そして、コントローラ32は、外気温度や目標吹出温度に応じて上記各運転モードを選択し、切り換えていくものである。
(5)除湿暖房モードにおける室外送風機15の制御
次に、図5〜図13を参照しながら、コントローラ32による前記除湿暖房モードにおける室外送風機15の制御について説明する。実施例でコントローラ32は、放熱器圧力センサ47が検出する放熱器圧力PCI(高圧)が目標放熱器圧力PCOに収束しているか否か、或いは、それより高いか低いかで、放熱器温度TCIが目標放熱器温度TCOに収束している(この状態を満足な状況と云う)か否か、或いは、それより高いか低いかを判定する。また、吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器温度Teに基づき、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOに収束している(この状態を満足な状況と云う)か否か、或いは、それより高いか低いかを判定するものとする。
コントローラ32は、図5のステップS1で各センサからのデータを読み込み、ステップS2で、現在の運転モードが除湿暖房モードであるか否か判断する。そして、現在の運転モードが除湿暖房モードであれば、ステップS3に進み、除湿暖房モードが安定しているか否か判断する。このとき、車両用空気調和装置1の起動直後である場合や、除湿暖房モードに切り換わった直後である等の過渡期であるとき、コントローラ32はステップS17に進んで室外送風機15の通常制御を実行する。この通常制御でコントローラ32は、後述する室外送風機15の風量減少/増加制御を実行せず、室外送風機15に印加する電圧を最大として風量を最大とする。これにより、起動初期や除湿暖房モードへの切り換わり直後等の過渡期に、早期に安定状態に移行させる。尚、このとき室外送風機15の風量を最大とするのでは無く、予め設定された印加電圧による所定の風量で制御するようにしてもよい。
一方、ステップS3で除湿暖房モードが安定した後である場合、コントローラ32はステップS4に進み、図6の除湿暖房状態の判定テーブルを参照して現在の除湿暖房状態を判定する。図6の除湿暖房状態の判定テーブルにおいてケースナンバー0は、放熱器温度TCI(PCI(高圧)から判断)と吸熱器温度Teが双方とも目標放熱器温度TCO及び目標吸熱器温度TEOに収束しており、且つ、圧縮機2の回転数と室外膨張弁6の弁開度が制御範囲内にある場合である。
図6のケースナンバー1は、放熱器温度TCIは目標放熱器温度TCOに収束しているが、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOより高く、且つ、圧縮機2の回転数は制御範囲内であるが、室外膨張弁6は閉方向に張り付いて弁開度が制御下限値となっている場合、ケースナンバー2は、放熱器温度TCIは目標放熱器温度TCOに収束しているが、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOより低く、且つ、圧縮機2の回転数は制御範囲内であるが、室外膨張弁6は開方向に張り付いて弁開度が制御上限値となっている場合である。これらは何れも室外膨張弁6の弁開度では吸熱器温度Teを制御できなくなっている場合である。
図6のケースナンバー3は、吸熱器温度Teは目標吸熱器温度TEOに収束しているが、放熱器温度TCIが目標放熱器温度TCOより高く、且つ、室外膨張弁6の弁開度は制御範囲内であるが、圧縮機2の回転数は制御下限値に張り付いている場合であり、ケースナンバー4は、吸熱器温度Teは目標吸熱器温度TEOに収束しているが、放熱器温度TCIが目標放熱器温度TCOより低く、且つ、室外膨張弁6の弁開度は制御範囲内であるが、圧縮機2の回転数は制御上限値に張り付いている場合である。これらは何れも圧縮機2の回転数では放熱器温度TCIを制御できなくなっている場合である。
図6のケースナンバー5は、放熱器温度TCI及び吸熱器温度Teの双方が目標放熱器温度TCO及び目標吸熱器温度TEOより高く、且つ、圧縮機2の回転数は制御下限値に張り付き、室外膨張弁6の弁開度も閉方向に張り付いて制御下限値となっている場合であり、ケースナンバー6は、放熱器温度TCI及び吸熱器温度Teの双方が目標放熱器温度TCO及び目標吸熱器温度TEOより低く、且つ、圧縮機2の回転数は制御上限値に張り付き、室外膨張弁6の弁開度も開方向に張り付いて制御上限値となっている場合である。これらは何れも圧縮機2の回転数や室外膨張弁6の弁開度では放熱器温度TCIと吸熱器温度Teを制御できなくなっている場合である。
図6のケースナンバー7は、放熱器温度TCIは目標放熱器温度TCOより高く、吸熱器温度Teは目標吸熱器温度TEOより低く、且つ、圧縮機2の回転数は制御下限値に張り付き、室外膨張弁6の弁開度は開方向に張り付いて制御上限値となっている場合であり、ケースナンバー8は、放熱器温度TCIは目標放熱器温度TCOより低く、吸熱器温度Teは目標吸熱器温度TEOより高く、且つ、圧縮機2の回転数は制御上限値に張り付き、室外膨張弁6の弁開度は閉方向に張り付いて制御下限値となっている場合である。これらも圧縮機2の回転数や室外膨張弁6の弁開度では放熱器温度TCIと吸熱器温度Teを制御できなくなっている場合である。
コントローラ32は、ステップS4において放熱器圧力PCIと吸熱器温度Teに基づき、現在の除湿暖房状態が図6のどのケースに当てはまるか判断し、ケースナンバー0である場合、即ち、放熱器温度TCI及び吸熱器温度Teが双方とも目標放熱器温度TCO及び目標吸熱器温度TEOに収束しており、且つ、圧縮機2の回転数及び室外膨張弁6の弁開度が双方とも制御範囲内にある場合には、ステップS5、ステップS9、ステップS11、ステップS13、ステップS15からステップS17に進んで前述した室外送風機15の通常制御を実行する。
一方、現在の除湿暖房状態がケースナンバー1、又は、ケースナンバー2である場合、即ち、放熱器温度TCIは目標放熱器温度TCOに収束しているが、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOより高く、且つ、圧縮機2の回転数は制御範囲内であるが、室外膨張弁6は閉方向に張り付いて弁開度が制御下限値となっている場合、又は、放熱器温度TCIは目標放熱器温度TCOに収束しているが、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOより低く、且つ、圧縮機2の回転数は制御範囲内であるが、室外膨張弁6は開方向に張り付いて弁開度が制御上限値となっている場合、コントローラ32はステップS5からステップS6に進んで、図6のケースナンバー1、2に対応する欄の最下段に示す方式で吸熱器温度Teに基づき、室外送風機15の印加電圧である室外送風機電圧FANVout(風量)を制御する。
図7はこの場合の室外送風機15の制御ブロック図の一例を示しており、コントローラ32の室外送風機電圧補正部71は、吸熱器温度Teと目標吸熱器温度TEOの差(Te−TEO)に基づいて室外送風機電圧補正値FANVouthosを上限値FANVouthosHi(正の値。例えば10V)と下限値FANVouthosLo(負の値。例えば、−10V)の間で決定する。その方法は、差(Te−TEO)が大きい、即ち、吸熱器温度Teが高いときから0に低下するまでは室外送風機電圧補正値FANVouthosを下限値FANVouthosLoとし、差(Te−TEO)が0から更に負の値に低下するに従って所定の傾斜を有して室外送風機電圧補正値FANVouthosを上限値FANVouthosHiまで増大させていく。
差(Te−TEO)が小さい(負の値)、即ち、吸熱器温度Teが低いときから0に上昇するまでは室外送風機電圧補正値FANVouthosを上限値FANVouthosHiとし、差(Te−TEO)が0から更に上昇するに従って所定の傾斜を有して室外送風機電圧補正値FANVouthosを下限値FANVouthosLoまで低下させていくというものである。
このようにして室外送風機電圧補正部71で決定された室外送風機電圧補正値FANVouthosは、加算器72でベースとなる室外送風機電圧FANVoutbaseに加算され、リミット設定部73で制御上限値と制御下限値のリミットが付けられた後、室外送風機電圧FANVoutとして決定される。
即ち、図6のケースナンバー1の如く吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOより高い場合は、室外送風機電圧補正値FANVouthosが負の値でその絶対値が大きくなるので、室外送風機電圧FANVoutは低下し、風量が減少する。室外送風機15の風量が減少すると、室外熱交換器7での吸熱量が減少するので、放熱器温度TCIが低下する。同時に放熱器圧力PCIも低下するので、コントローラ32は放熱器圧力PCIを目標放熱器圧力PCOに維持するために圧縮機2の目標回転数TGNCh(図3)を上昇させる。これにより、冷媒回路R内の冷媒循環量が増大し、吸熱器9への冷媒流入量も増加するので、結果として吸熱器温度Teが下がることになる。
また、図6のケースナンバー2の如く吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOより低い場合は、室外送風機電圧補正値FANVouthosが正の値で大きくなるので、室外送風機電圧FANVoutは上昇し、風量が増加する。室外送風機15の風量が増加すると、室外熱交換器7での吸熱量が増加するので、放熱器温度TCIが上昇する。同時に放熱器圧力PCIも上昇するので、コントローラ32は放熱器圧力PCIを目標放熱器圧力PCOに維持するために圧縮機2の目標回転数TGNCh(図3)を低下させる。これにより、冷媒回路R内の冷媒循環量が減少し、吸熱器9への冷媒流入量も減少するので、結果として吸熱器温度Teが上がることになる。
図8は係る吸熱器温度Teに基づいた室外送風機15の風量減少/増加制御の様子を示している。この図において室外送風機通常制御の範囲は前述した過渡期を示している。除湿暖房モードが安定した後、放熱器圧力PCIが目標放熱器圧力PCOに収束している(即ち、放熱器温度TCIが目標放熱器温度TCOに収束している)ものの、吸熱器温度Teは目標吸熱器温度TEOより高く、且つ、圧縮機2の回転数は制御範囲内となっているものの、室外膨張弁6の弁開度は制御下限値に張り付いてしまった場合(所定時間判定する)、コントローラ32は室外送風機電圧FANVoutを低下させて風量を減少させる(室外送風機風量下げ制御)。また、放熱器圧力PCIが目標放熱器圧力PCOに収束している(即ち、放熱器温度TCIが目標放熱器温度TCOに収束している)ものの、吸熱器温度Teは目標吸熱器温度TEOより低く、且つ、圧縮機2の回転数は制御範囲内となっているものの、室外膨張弁6の弁開度は制御上限値に張り付いてしまった場合(所定時間判定する)、コントローラ32は室外送風機電圧FANVoutを上昇させて風量を増加させる(室外送風機風量上げ制御)。
これらにより、環境条件に対する除湿暖房モードの有効範囲(守備範囲)が拡大し、環境条件の広い範囲で除湿暖房モードによる車室内の除湿暖房空調を円滑に実現することができるようになり、前述した内部サイクルモードを廃止することが可能となる。
ここで、図9は係るケースナンバー1又は2のときの室外送風機15の制御ブロック図の他の例を示している。この場合、吸熱器温度Teと目標吸熱器温度TEOの差(Te−TEO)が減算器76で算出され、この差(Te−TEO)が不感帯部77を介して増幅器78で増幅される。増幅された値には加算器79で前回値(1/Z)が加算される。即ち、この場合はフィードバック(F/B)制御となる。加算器79を経た値はリミット設定部81で制御上限値と制御下限値のリミットが付けられた後、室外送風機電圧補正値FANVouthosとなって減算器82でベースとなる室外送風機電圧FANVoutbaseから減算され、リミット設定部83で制御上限値と制御下限値のリミットが付けられた後、室外送風機電圧FANVoutとして決定される。
即ち、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOより高い場合(ケースナンバー1)は、室外送風機電圧補正値FANVouthosが正の値で大きくなるので、室外送風機電圧FANVoutは低下し、風量が減少する。逆に、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOより低い場合(ケースナンバー2)は、室外送風機電圧補正値FANVouthosが負の値でその絶対値が大きくなるので、室外送風機電圧FANVoutは上昇し、風量が増加する。これにより、図7の場合と同様に環境条件に対する除湿暖房モードの有効範囲が拡大し、環境条件の広い範囲で除湿暖房モードによる車室内の除湿暖房空調を円滑に実現することができるようになる。
他方、現在の除湿暖房状態がケースナンバー3、又は、ケースナンバー4である場合、即ち、吸熱器温度Teは目標吸熱器温度TEOに収束しているが、放熱器温度TCIが目標放熱器温度TCOより高く、且つ、室外膨張弁6の弁開度は制御範囲内であるが、圧縮機2の回転数は制御下限値に張り付いている場合、又は、吸熱器温度Teは目標吸熱器温度TEOに収束しているが、放熱器温度TCIが目標放熱器温度TCOより低く、且つ、室外膨張弁6の弁開度は制御範囲内であるが、圧縮機2の回転数は制御上限値に張り付いている場合、コントローラ32はステップS5からステップS9、ステップS9からステップS10に進んで、図6のケースナンバー3、4に対応する欄の最下段に示す方式で放熱器圧力PCI(高圧)に基づき、室外送風機15の印加電圧である室外送風機電圧FANVout(風量)を制御する。
図10はこの場合の室外送風機15の制御ブロック図の一例を示しており、コントローラ32のこの場合の室外送風機電圧補正部84は、目標放熱器圧力PCOと放熱器圧力PCIの差(PCO−PCI)に基づいて室外送風機電圧補正値FANVouthosを上限値FANVouthosHi(正の値。例えば10V)と下限値FANVouthosLo(負の値。例えば、−10V)の間で決定する。その方法は、差(PCO−PCI)が小さい(負の値)、即ち、放熱器圧力PCIが高い(放熱器温度TCIが高い)ときから0に上昇するまでは室外送風機電圧補正値FANVouthosを下限値FANVouthosLoとし、差(PCO−PCI)が0から更に上昇するに従って所定の傾斜を有して室外送風機電圧補正値FANVouthosを上限値FANVouthosHiまで増大させていく。
差(PCO−PCI)が大きい、即ち、放熱器圧力PCIが低いときから0に低下するまでは室外送風機電圧補正値FANVouthosを上限値FANVouthosHiとし、差(PCO−PCI)が0から更に負の値に低下するに従って所定の傾斜を有して室外送風機電圧補正値FANVouthosを下限値FANVouthosLoまで低下させていくというものである。
このようにして室外送風機電圧補正部84で決定された室外送風機電圧補正値FANVouthosは、加算器72でベースとなる室外送風機電圧FANVoutbaseに加算され、リミット設定部73で制御上限値と制御下限値のリミットが付けられた後、室外送風機電圧FANVoutとして決定される。
即ち、図6のケースナンバー3の如く放熱器温度TCIが目標放熱器温度TCOより高い場合は、室外送風機電圧補正値FANVouthosが負の値でその絶対値が大きくなるので、室外送風機電圧FANVoutは低下し、風量が減少する。室外送風機15の風量が減少すると、室外熱交換器7での吸熱量が減少するので、放熱器温度TCIも低下することになる。
また、図6のケースナンバー4の如く放熱器温度TCIが目標放熱器温度TCOより低い場合は、室外送風機電圧補正値FANVouthosが正の値で大きくなるので、室外送風機電圧FANVoutは上昇し、風量が増加する。室外送風機15の風量が増加すると、室外熱交換器7での吸熱量が増加するので、放熱器温度TCIも上昇することになる。
図11は係る放熱器圧力PCIに基づいた室外送風機15の風量減少/増加制御の様子を示している。この図において室外送風機通常制御の範囲は前述した過渡期を示している。除湿暖房モードが安定した後、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOに収束している(即ち、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOに収束している)ものの、放熱器圧力PCIは目標放熱器圧力PCOより高く、且つ、室外膨張弁6の弁開度は制御範囲内となっているものの、圧縮機2の回転数は制御下限値に張り付いてしまった場合(所定時間判定する)、コントローラ32は室外送風機電圧FANVoutを低下させて風量を減少させる(室外送風機風量下げ制御)。また、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOに収束している(即ち、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOに収束している)ものの、放熱器圧力PCIは目標放熱器圧力PCOより低く、且つ、室外膨張弁6の弁開度は制御範囲内となっているものの、圧縮機2の回転数は制御上限値に張り付いてしまった場合(所定時間判定する)、コントローラ32は室外送風機電圧FANVoutを上昇させて風量を増加させる(室外送風機風量上げ制御)。
これらにより、環境条件に対する除湿暖房モードの有効範囲が拡大し、環境条件の広い範囲で除湿暖房モードによる車室内の除湿暖房空調を円滑に実現することができるようになり、前述した内部サイクルモードを廃止することが可能となる。
ここで、図12は係るケースナンバー3又は4のときの室外送風機15の制御ブロック図の他の例を示している。この場合、目標放熱器圧力PCOと放熱器圧力PCIの差(PCO−PCI)が減算器86で算出され、この差(PCO−PCI)が不感帯部87を介して増幅器88で増幅される。増幅された値には加算器89で前回値(1/Z)が加算される。即ち、この場合はフィードバック(F/B)制御となる。加算器89を経た値はリミット設定部91で制御上限値と制御下限値のリミットが付けられた後、室外送風機電圧補正値FANVouthosとなって加算器92でベースとなる室外送風機電圧FANVoutbaseに加算され、リミット設定部93で制御上限値と制御下限値のリミットが付けられた後、室外送風機電圧FANVoutとして決定される。
即ち、放熱器温度TCI(放熱器圧力PCIで判断)が目標放熱器温度TCO(目標放熱器圧力PCOと比較)より高い場合(ケースナンバー3)は、室外送風機電圧補正値FANVouthosが負の値でその絶対値が大きくなるので、室外送風機電圧FANVoutは低下し、風量が減少する。逆に、放熱器温度TCI(放熱器圧力PCI)が目標放熱器温度TCO(目標放熱器圧力PCO)より低い場合(ケースナンバー4)は、室外送風機電圧補正値FANVouthosが正の値で大きくなるので、室外送風機電圧FANVoutは上昇し、風量が増加する。これにより、図10の場合と同様に環境条件に対する除湿暖房モードの有効範囲が拡大し、環境条件の広い範囲で除湿暖房モードによる車室内の除湿暖房空調を円滑に実現することができるようになる。
また、現在の除湿暖房状態がケースナンバー5である場合、即ち、放熱器温度TCI及び吸熱器温度Teがともに目標放熱器温度TCO及び目標吸熱器温度TEOより高く、且つ、圧縮機2の回転数は制御下限値に張り付き、室外膨張弁6の弁開度は閉方向に張り付いて制御下限値になっている場合、コントローラ32はステップS5からステップS9、ステップS9からステップS11に進み、ステップS11からはステップS12に進んで、図6のケースナンバー5に対応する欄の最下段に示す方式で放熱器圧力PCI(高圧)、又は、吸熱器温度Teに基づき、室外送風機15の印加電圧である室外送風機電圧FANVout(風量)を制御する。
放熱器温度TCIが高く、吸熱器温度Teも高い場合には、前述した図7、図9の吸熱器温度Teに基づく制御によっても、図10、図12の放熱器圧力PCIに基づく制御によっても、何れも室外送風機電圧FANVoutを低下させるものとなるので、それらのうちの小さい方の値(Min)を採用し、室外送風機15の風量を減少させる。
室外送風機15の風量が減少すると、室外熱交換器7における吸熱量が減少するので、先ず放熱器4の温度を下げることができる。また、このとき放熱器圧力PCI(高圧)も下がるので、目標放熱器圧力PCOに維持するために圧縮機2の目標回転数TGNCh(図3)は上昇することになり、冷媒回路R内の冷媒循環量が増大し、吸熱器9への冷媒流入量も増加し、結果として吸熱器9の温度も下げることができる。これにより、環境条件に対する除湿暖房モードの有効範囲を更に拡大し、環境条件のより広い範囲で除湿暖房モードによる車室内の除湿暖房空調を円滑に実現することができるようになる。
また、現在の除湿暖房状態がケースナンバー6である場合、即ち、放熱器温度TCI及び吸熱器温度Teのともに目標放熱器温度TCO及び目標吸熱器温度TEOより低く、且つ、圧縮機2の回転数は制御上限値に張り付き、室外膨張弁6の弁開度は開方向に張り付いて制御上限値になっている場合、コントローラ32はステップS5からステップS9、ステップS9からステップS11、ステップS11からステップS13に進み、ステップS13からはステップS14に進んで、図6のケースナンバー6に対応する欄の最下段に示す方式で放熱器圧力PCI(高圧)、又は、吸熱器温度Teに基づき、室外送風機15の印加電圧である室外送風機電圧FANVout(風量)を制御する。
放熱器温度TCIが低く、吸熱器温度Teも低い場合には、前述した図7、図9の吸熱器温度Teに基づく制御によっても、図10、図12の放熱器圧力PCIに基づく制御によっても、何れも室外送風機電圧FANVoutを上昇させるものとなるので、それらのうちの大きい方の値(Max)を採用し、室外送風機15の風量を増加させる。
室外送風機15の風量が増加すると、室外熱交換器7における吸熱量が増加するので、先ず放熱器4の温度を上げることができる。また、このとき放熱器圧力PCI(高圧)も上がるので、目標放熱器圧力PCOに維持するために圧縮機2の目標回転数TGNCh(図3)は低下することになり、冷媒回路R内の冷媒循環量が減少し、吸熱器9への冷媒流入量も減少し、結果として吸熱器9の温度も上げることができる。これにより、同様に環境条件に対する除湿暖房モードの有効範囲を更に拡大し、環境条件のより広い範囲で除湿暖房モードによる車室内の除湿暖房空調を円滑に実現することができるようになる。
ここで、現在の除湿暖房状態がケースナンバー7又は8である場合、即ち、放熱器温度TCIが目標放熱器温度TCOより高く、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOより低く、且つ、圧縮機2の回転数は制御下限値に張り付き、室外膨張弁6の弁開度は開方向に張り付いて制御上限値になっている場合(ケースナンバー7)、又は、放熱器温度TCIが目標放熱器温度TCOより低く、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOより高く、且つ、圧縮機2の回転数は制御上限値に張り付き、室外膨張弁6の弁開度は閉方向に張り付いて制御下限値になっている場合(ケースナンバー8)、コントローラ32はステップS15からステップS16に進んで除湿暖房モードは成立しないものと判定し、他の運転モードに切り換える。
また、ステップS6、ステップS10、ステップS12、ステップS14で室外送風機15の風量減少/増加制御を実行した後、コントローラ32はステップS7に進んで放熱器温度TCI及び吸熱器温度Teが目標放熱器温度TCO及び目標吸熱器温度TEOに収束しているか否か判断する。そして、収束している場合にはステップS8に進んで除湿暖房モードを継続可能と判定し、除湿暖房モードを継続する。ステップS7で放熱器温度TCI及び吸熱器温度Teが収束していない場合には、ステップS16に進んで除湿暖房モードは成立しないものと判定し、他の運転モードに切り換えるものである。
(5−1)過渡期における室外送風機15の制御の他の例
尚、上記実施例では車両用空気調和装置1の起動直後である場合や、除湿暖房モードに切り換わった直後である等の過渡期であるとき、除湿暖房モードが安定するまでは、コントローラ32は室外送風機15の風量を最大とし、或いは、所定の風量とするようにしたが(通常制御)、それに限らず、下記の式(I)により過渡期における室外送風機電圧FANVoutを決定するようにしてもよい。
FANVout=f(Tam、TCO、TEO、Ga、Tin、RHin)・・(I)
この場合、Tamは前述した外気温度、TCOは前述した目標放熱器温度、TEOは前述した目標吸熱器温度、Gaは前述した空気の質量風量、Tinは内気温度センサ37が検出する車室内温度、RHinは内気湿度センサ38が検出する車室内湿度であり、これらのパラメータに基づいて室外送風機電圧FANVoutを決定するものであるが、各パラメータによる制御の傾向を図13に示す。
即ち、外気温度Tamが高い場合、コントローラ32は式(I)の室外送風機電圧FANVoutを下げ、風量を下げる方向に制御する。外気温度Tamが高い場合には、室外熱交換器7における吸熱量も増えるため、室外送風機15の風量を下げることで過剰な吸熱を回避する。逆に、外気温度Tamが低い場合には、式(I)の室外送風機電圧FANVoutを上げ、風量を上げる方向に制御し、室外熱交換器7からの吸熱を促進する。これらにより、係る過渡期における放熱器温度TCIと吸熱器温度Teを各目標値に収束させる。
また、目標放熱器温度TCOが高い場合、コントローラ32は式(I)の室外送風機電圧FANVoutを上げ、風量を上げる方向に制御して室外熱交換器7からの吸熱を促進する。逆に、目標放熱器温度TCOが低い場合には、式(I)の室外送風機電圧FANVoutを下げ、風量を下げる方向に制御し、室外熱交換器7からの過剰な吸熱を回避する。これらにより、係る過渡期における放熱器温度TCIと吸熱器温度Teを各目標値に収束させる。
また、目標吸熱器温度TEOが高い場合、コントローラ32は式(I)の室外送風機電圧FANVoutを上げ、風量を上げる方向に制御して室外熱交換器7からの吸熱を促進し、前述同様に循環冷媒量を減少させて吸熱器温度Teの低下を抑制する。逆に、目標吸熱器温度TEOが低い場合には、式(I)の室外送風機電圧FANVoutを下げ、風量を下げる方向に制御し、室外熱交換器7からの吸熱を削減して前述同様に循環冷媒量を増やし、吸熱器温度Teの低下を促進する。これらにより、係る過渡期における放熱器温度TCIと吸熱器温度Teを各目標値に収束させる。
また、空気流通路3に流入した空気の質量風量Gaが高い場合、コントローラ32は式(I)の室外送風機電圧FANVoutを上げ、風量を上げる方向に制御して室外熱交換器7からの吸熱量を増やす。逆に、質量風量Gaが低い場合には、式(I)の室外送風機電圧FANVoutを下げ、風量を下げる方向に制御し、室外熱交換器7からの吸熱を削減する。これらにより、係る過渡期における放熱器温度TCIと吸熱器温度Teを各目標値に収束させながら、吹出温度の過剰な上昇や低下を防ぐ。
また、車室内温度Tinが高い場合、コントローラ32は式(I)の室外送風機電圧FANVoutを下げ、風量を下げる方向に制御し、室外熱交換器7での過剰な吸熱を回避する。逆に、車室内温度Tinが低い場合には、式(I)の室外送風機電圧FANVoutを上げ、風量を上げる方向に制御し、室外熱交換器7からの吸熱を促進する。これらにより、係る過渡期における放熱器温度TCIと吸熱器温度Teを各目標値に収束させながら、車室内温度を維持する。
また、車室内湿度RHinが高い場合、コントローラ32は式(I)の室外送風機電圧FANVoutを下げ、風量を下げる方向に制御し、前述同様に循環冷媒量を増大させて吸熱器温度Teを確保し、車室内湿度の低下を図る。逆に、車室内湿度RHinが低い場合には、式(I)の室外送風機電圧FANVoutを上げ、風量を上げる方向に制御し、前述同様に循環冷媒量を減少させて吸熱器温度Teの低下を抑制する。これらにより、係る過渡期における放熱器温度TCIと吸熱器温度Teを各目標値に収束させながら、車室内湿度を維持する。
(5−2)車速を考慮した室外送風機15の制御の他の例
ここで、車速センサ52が検出する車両の速度、即ち、車速が高い場合(所定値より高い、若しくは、段階的にリニアに制御)は、コントローラ32により室外送風機電圧FANVoutを低下させ、室外送風機15の風量を減少させ、若しくは室外送風機15を停止させるように制御してもよい。
車速が高い場合には、室外熱交換器7への風量は走行風で賄われるので、室外送風機15の風量を減少、若しくは、零とすることで、不必要な室外送風機15の運転を解消することが可能となる。
(5−3)グリルシャッタ24と協働した室外送風機15の制御の他の例
更に、前述した各実施例の室外送風機15の風量減少/増加制御を行う場合、コントローラ32によりグリルシャッタ24を閉じ、又は、グリルシャッタ24の開度により走行風の室外熱交換器7への流入を制限した状態としてもよい。
グリルシャッタ24を閉じ、又は、グリルシャッタ24の開度により走行風の室外熱交換器7への流入を制限した状態で室外送風機15の風量減少/増加制御を実行するようにすれば、室外熱交換器7への風量の全て、又は、殆どを室外送風機15で制御できるようになるので、走行中における室外送風機15による放熱器温度TCIと吸熱器温度Teの制御性を向上させることが可能となる。
尚、上記実施例では暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モードの各運転モードを切り換えて実行する車両用空気調和装置1について本発明を適用したが、それに加えて所謂内部サイクルモードを実行してもよい。その場合にも、除湿暖房モードの有効範囲を拡大して、できるだけ内部サイクルモードの実行を回避することが可能となる。
また、上記実施例で説明した冷媒回路の構成や各数値はそれに限定されるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。