JP2015205321A - 熱間鍛造金型の摩耗評価試験法 - Google Patents

熱間鍛造金型の摩耗評価試験法 Download PDF

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Abstract

【課題】実機における熱間鍛造時の摩耗現象を再現することが可能であり、鍛造温度の影響や、被鍛造材の影響を系統的に評価することが可能な熱間鍛造金型の摩耗評価試験法を提供すること。【解決手段】外径/内径比が2以上である円筒形の熱間鍛造金型を用意する。次いで、鍛造後に、厚さが1mm以上であり、かつ直径が前記熱間鍛造金型の外径以上であるバリを生成させることが可能な体積を持つワークを前記熱間鍛造金型に挿入し、厚さが1mm以上であり、かつ直径が前記熱間鍛造金型の外径以上である前記バリが生成するように、前記熱間鍛造金型を用いて前記ワークを熱間鍛造する。さらに、前記バリと前記熱間鍛造金型との接触面の摩耗量を評価する。【選択図】図4

Description

本発明は、熱間鍛造金型の摩耗評価試験法に関する。
「熱間鍛造」とは、再結晶温度以上の温度に加熱された金属材料を工具の間で圧縮し、所定の形状に加工する方法をいう。熱間鍛造は、変形抵抗が小さいという利点がある。しかしながら、熱間鍛造は、工具も高温に曝されるため、特に型鍛造においては、金型の摩耗が進行しやすい。金型の摩耗が過度に進行すると、製品の寸法精度が低下する。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、金型と加工素材の間の摩擦係数と、金型と潤滑剤との間の熱伝達係数に基づいて、金型の摩耗量を予測する金型摩耗量予測装置が開示されている。
同文献には、このような装置を用いて、現実に近い潤滑剤の吹付け状態で金型の摩耗量を予測することが可能になる点が記載されている。
特許文献2には、金型に対する機械的負荷と、金型の熱的劣化強度を算出し、これらを用いて予測摩耗量を算出する金型摩耗量予測装置が開示されている。
同文献には、このような装置を用いて、寿命検出を加工回数で把握できる点が記載されている。
さらに、特許文献3には、所定の成分を有する耐摩耗性に優れた金型用鋼、及び大越式摩耗試験を用いた金型用鋼の評価方法が開示されている。
特許文献1、2に記載されているように、金型摩耗予測の重要因子を実機の鍛造金型の状況からモニタリングする方法は、実機の鍛造ラインにおける金型の摩耗量をある程度予測することができる。しかしながら、この方法は、実際に鍛造条件(被鍛造材の組成、鍛造温度等)を変更した後に生ずる金型の摩耗量を予測することはできても、摩耗量の少ない最適な鍛造条件を予測することはできない。
一方、特許文献3に記載されている評価方法は、実機の摩耗条件(高い面圧、高温材の接触、表面拡大を伴った摺動など)を再現したものではない。そのため、得られた評価結果を実機の鍛造に適用した時に整合性が疑われる。
自動車向け部品(クランクシャフト、コンロッド、プーリーなど)の熱間鍛造金型については、実機の損傷条件を再現した損傷評価方法は無い。そのため、実際の製造ラインでの評価と、シミュレーションのフィードバック解析により現象の考察が現状のやり方であった。そのため、製品製造のタイミング待ち、大型の金型の使用、複雑な鍛造形状などのために、試験に要する期間や解析の煩雑さに課題を抱えていた。
特開2006−224125号公報 特開2002−321032号公報 特開2003−321032号公報
本発明が解決しようとする課題は、実機における熱間鍛造時の摩耗現象を再現することが可能であり、鍛造温度の影響や、被鍛造材の影響を系統的に評価することが可能な熱間鍛造金型の摩耗評価試験法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る熱間鍛造金型の摩耗評価試験法は、
(a)外径/内径比が2以上である円筒形の熱間鍛造金型を用意し、
(b)鍛造後に、厚さが1mm以上であり、かつ直径が前記熱間鍛造金型の外径以上であるバリを生成させることが可能な体積を持つワークを前記熱間鍛造金型に挿入し、
(c)厚さが1mm以上であり、かつ直径が前記熱間鍛造金型の外径以上である前記バリが生成するように、前記熱間鍛造金型を用いて前記ワークを熱間鍛造し、
(d)前記バリと前記熱間鍛造金型との接触面の摩耗量を評価する
ことを要旨とする。
単純な円筒形の熱間鍛造金型を用いて、所定の体積を持つワークを熱間鍛造すると、上型の下面と下型の上面との間にバリが発生し、このバリは厚さを減少させながら径方向に拡大する。この時、熱間鍛造金型の上下面とバリとの間に大きな摩擦力が発生し、上型及び下型の表面が摩耗する。また、このときに生ずる摩耗は、実機の熱間鍛造金型のフラッシュランド部において生ずる摩耗現象を再現している。そのため、鍛造温度の影響や、被鍛造材の影響などを系統的に評価することができる。しかも、熱間鍛造金型は単純な円筒形であるため、試験に要する期間も短く、解析の煩雑さも回避できる。
図1(a)は、熱間鍛造金型の下型の平面図(上図)、及びそのA−A'線断面図(下図)である。図1(b)は、熱間鍛造金型の上型の底面図(上図)、及びそのB−B’線断面図である。 図1に示す金型を用いてワークを鍛造した時の模式図である。 熱間鍛造(1000ショット)後の金型摩耗写真(ショットブラスト後)である。 レーザー顕微鏡を用いて測定した熱間鍛造(1000ショット)後の金型プロファイルである。
熱間鍛造時におけるワーク表面の表面積拡大履歴である。 熱間鍛造時におけるワーク表面の表面積拡大履歴(図5の続き)である。 熱間鍛造時におけるワーク表面の表面積拡大履歴(図6の続き)である。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 熱間鍛造金型の摩耗評価試験法]
本発明に係る熱間鍛造金型の摩耗評価試験法は、
(a)外径/内径比が2以上である円筒形の熱間鍛造金型を用意し、
(b)鍛造後に、厚さが1mm以上であり、かつ直径が前記熱間鍛造金型の外径以上であるバリを生成させることが可能な体積を持つワークを前記熱間鍛造金型に挿入し、
(c)厚さが1mm以上であり、かつ直径が前記熱間鍛造金型の外径以上である前記バリが生成するように、前記熱間鍛造金型を用いて前記ワークを熱間鍛造し、
(d)前記バリと前記熱間鍛造金型との接触面の摩耗量を評価する
ことを要旨とする。
[1.1. 熱間鍛造金型]
[1.1.1. 材料]
熱間鍛造金型の材料には、検査対象となる材料を用いる。材料の異なる熱間鍛造金型を用いて、同一のワーク(被鍛造材)を鍛造すると、そのワークに適した熱間鍛造金型の材料を探索することができる。
[1.1.2. 形状]
熱間鍛造金型は、円筒形の金型からなる。金型形状を円筒形とすることにより、解析が容易となる。また、これによって、鍛造温度の影響や、被鍛造材の影響などを系統的に評価することができる。
金型のキャビティ部分の内径(DI)に対する金型の外径(DO)の比(外径(DO)/内径(DI)比)が小さくなりすぎると、実機の熱間鍛造金型において発生する摩耗現象を再現することができない。従って、外径/内径比は、2以上である必要がある。
一方、外径/内径比を必要以上に大きくしても、実益がない。従って、外径/内径比は、4以下が好ましい。
金型の実寸法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な実寸法を選択することができる。金型の実寸法が実際の熱間鍛造金型より小さい場合(例えば、実際の熱間鍛造金型と同程度から5分の1程度の大きさ)であっても、実際の熱間鍛造金型において発生する摩耗現象を忠実に再現することができる。金型の実寸法は、例えば、外径70mm程度が好ましい。
[1.1.3. 具体例]
図1に、本発明において用いられる熱間鍛造金型の一例を示す。図1(a)は、熱間鍛造金型の下型の平面図(上図)、及びそのA−A'線断面図(下図)である。図1(b)は、熱間鍛造金型の上型の底面図(上図)、及びそのB−B’線断面図である。
図1において、熱間鍛造金型10は、下型12と、上型14とを備えている。
下型12は、その上部に円柱状のキャビティ12aを備えている。キャビティ12aの内周面は、中心軸に対して完全に平行ではなく、鍛造品を取り出すことが可能な程度のテーパが付けられている。下型12の上端面は、中心軸に対してほぼ垂直な平面になっている。キャビティ12aの下部中央には、鍛造品の取り出しに用いられるノックアウトピンを挿入するための穴12bが設けられている。
上型14は、その下部(図1(b)においては、紙面の上部)に円柱状のキャビティ14aを備えている。キャビティ14aの内周面は、中心軸に対して完全に平行ではなく、鍛造品を取り出すことが可能な程度のテーパが付けられている。上型14の下端面は、中心軸に対してほぼ垂直な平面になっている。
[1.2. ワーク]
[1.2.1. 材料]
ワークの材料には、検査対象となる材料を用いる。同一の熱間鍛造金型を用いて、材料の異なるワーク(被鍛造材)を鍛造すると、熱間鍛造金型の摩耗に及ぼす被鍛造材の影響を評価することができる。
[1.2.2. 体積]
本発明においては、熱間鍛造金型のキャビティの体積より大きな体積を持つワークを用いる。これは、熱間鍛造時に下型の上面と上型の下面との隙間にバリを発生させるためである。バリが径方向に拡大する際に伴い、熱間鍛造金型の表面(下型の上面及び上型の下面)と、バリとの間に摩擦が発生し、摩耗が進行する。
ワークの体積が小さすぎると、変形中にバリの厚さが極端に薄くなり、バリが径方向に拡大しなくなる。そのため、1回のプレス当たりの摩耗量が少なくなり、加速試験を行うのが困難となる。
一方、金型の径方向に十分な大きさのバリが発生する場合であっても、バリの厚さが厚すぎると、金型/バリ間で大きな摩擦が発生することなく、バリの変形が進行する。
従って、上型と下型の隙間に形成されるバリの中に、表面積拡大比が10以上となる領域を発生させることが可能となるように、ワークの体積を選択するのが好ましい。
ここで、「表面積拡大比」とは、塑性加工における被加工材の元の表面積に対する加工後の表面積の比をいう。
具体的には、ワークの体積は、鍛造後に、厚さが1mm以上であり、かつ直径が前記熱間鍛造金型の外径以上であるバリを生成させることが可能な体積が好ましい。
但し、鍛造後のバリの厚さが厚くなりすぎると、金型/バリ間に発生する摩擦が過度に小さくなる。従って、鍛造後のバリの厚さは、4mm以下が好ましい。バリの厚さは、さらに好ましくは、3mm以下、さらに好ましくは、2mm以下である。
また、鍛造後のバリの直径を必要以上に大きくしても、効果に差が無く、実益がない。従って、鍛造後のバリの直径は、熱間鍛造金型の外径の1.2倍以下が好ましい。
[1.3. 鍛造条件]
所定の温度に加熱したワークを金型のキャビティ内に挿入し、熱間鍛造を行う。この時、熱間鍛造は、上型と下型の隙間に形成されるバリの中に、表面積拡大比が10以上となる領域が発生する条件下で行うのが好ましい。
具体的には、熱間鍛造は、厚さが1mm以上であり、かつ直径が前記熱間鍛造金型の外径以上である前記バリが生成する条件下で行うのが好ましい。
表面積拡大比、並びに、バリの厚さ及び直径については、上述した通りであるので、説明を省略する。
鍛造回数は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な回数を選択することができる。ワークの体積及び鍛造時のプレスストロークを最適化すると、金型/バリ間に大きな摩擦が発生する。そのため、少ない鍛造回数で実機の熱間鍛造時に生ずる摩耗現象を再現することができる。
[1.4. 評価]
鍛造後、前記バリと前記熱間鍛造金型との接触面との摩耗量を評価する
評価方法としては、例えば、
(1)レーザー顕微鏡を用いた試験後の金型プロファイルの測定、
(2)鍛造試験条件を考慮した摩耗量のシミュレーション結果と、鍛造試験結果との照らし合わせ、
などがある。
[2. 作用]
図2に、図1に示す熱間鍛造金型を用いてワークを鍛造した時の模式図を示す。熱間鍛造金型10の下型12及び上型14をそれぞれ金型ケース16、16で固定し、上型14をラム(図示せず)に固定する。下型12のキャビティ12aに所定の体積を有するワーク18を挿入し、上型14でプレスする。この時、上型14の下降に伴い、下型12と上型14との隙間にバリ18aが発生し、径方向に拡大する。その結果、熱間鍛造金型10/バリ18a界面において摩擦が発生し、熱間鍛造金型10の摩耗が進行する。
単純な円筒形の熱間鍛造金型10を用いて、所定の体積を持つワークを熱間鍛造18すると、上型14の下面と下型12の上面との間にバリ18aが発生し、このバリ18aは厚さを減少させながら径方向に拡大する。この時、熱間鍛造金型10の上下面とバリ18aとの間に大きな摩擦力が発生し、上型14及び下型12の表面が摩耗する。また、このときに生ずる摩耗は、実機の熱間鍛造金型のフラッシュランド部において生ずる摩耗現象を再現している。そのため、鍛造温度の影響や、被鍛造材の影響などを系統的に評価することができる。しかも、熱間鍛造金型10は単純な円筒形であるため、試験に要する期間も短く、解析の煩雑さも回避できる。
(実施例1)
[1. 試験方法]
図1に示す熱間鍛造金型10を用いて、熱間鍛造試験を行った。熱間鍛造条件は、以下の通りである。
金型の材料: JIS−SKD61(熱間工具鋼)
被鍛造材: 0.4%C−0.2%Si鋼(炭素鋼)
加熱温度: 1200℃、1100℃、又は1000℃
鍛造数: 1000ショット
サイクルタイム: 5.5〜5.7秒
潤滑剤: 白色系、日華化学F−500(希釈10倍)、プレー噴霧
型予熱: 150〜200℃
[2. 結果]
図3に、熱間鍛造(1000ショット)後の金型摩耗写真(ショットブラスト後)を示す。図4に、レーザー顕微鏡を用いて測定した熱間鍛造(1000ショット)後の金型プロファイルを示す。金型プロファイルは、金型の外周から内周方向に向かって計測した。図3及び図4より、以下のことがわかる。
(1)熱間鍛造金型10の摩耗は、主にキャビティの内周面近傍において発生した。すなわち、熱間鍛造金型10において発生した摩耗は、実機の熱間鍛造時のフラッシュランド部において発生する摩耗現象を再現しており、かつ、実機の熱間鍛造回数(通常、8000回程度)より少ない回数で摩耗現象を再現可能であることがわかった。
(2)熱間鍛造金型10の摩耗領域は、鍛造温度が高くなるほど、外周方向に拡大した。
(3)鍛造温度が1100℃以上になると、キャビティの内周面近傍に盛り上がりが発生した。これは、内周面近傍が熱ダレ(軟化)効果により、塑性流動を起こしたためと考えられる。
(実施例2)
[1. 試験方法]
図1に示す熱間鍛造金型でワークの鍛造を行った時の表面積拡大履歴をシミュレーションにより求めた。シミュレーション条件は、以下の通りである。
解析ソフトウェア: DEFORM−2D
計算モデル: 2次元軸対称、応力−熱連性、弾塑性解析
材料データ: [ワーク]0.4C−0.2Si鋼、[金型]JIS−SKD61
[2. 結果]
図5〜図7に、熱間鍛造時におけるワーク表面の表面積拡大履歴を示す。なお、図5〜図7中、黒丸は、表面積拡大比の算出に用いた基準点である。図5〜図7より、以下のことがわかる。
(1)鍛造初期(図5(a)〜図5(d))において、上型14と下型12との隙間にバリが張り出すが、この時点では、表面積拡大比は小さい。
(2)鍛造中期(図6(a)〜図6(c))〜鍛造終期(図7(a)〜図7(b))において、バリ18aは、厚さを減少させながら径方向に拡大する。その際、基準点間距離の拡大(すなわち、表面積拡大比の増大)は、バリ18a全体で一様ではなく、金型10のキャビティの内周面側において著しいことが分かった。この結果は、実施例1の結果、及び実機の熱間鍛造時のフラッシュランド部において発生する摩耗現象と良く一致した。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る熱間鍛造金型の摩耗評価試験法は、金型寿命に及ぼす金型の材料、被鍛材の材料、鍛造条件などの影響を評価するための加速試験方法として用いることができる。

Claims (3)

  1. (a)外径/内径比が2以上である円筒形の熱間鍛造金型を用意し、
    (b)鍛造後に、厚さが1mm以上であり、かつ直径が前記熱間鍛造金型の外径以上であるバリを生成させることが可能な体積を持つワークを前記熱間鍛造金型に挿入し、
    (c)厚さが1mm以上であり、かつ直径が前記熱間鍛造金型の外径以上である前記バリが生成するように、前記熱間鍛造型を用いて前記ワークを熱間鍛造し、
    (d)前記バリと前記熱間鍛造金型との接触面の摩耗量を評価する
    熱間鍛造金型の摩耗評価試験法。
  2. 前記ワークは、前記鍛造後に、前記熱間鍛造金型の上型と下型の隙間に形成される前記バリの中に、表面積拡大比が10以上となる領域を発生させることが可能な体積を持ち、
    前記上型と前記下型の隙間に形成される前記バリの中に、前記表面積拡大比が10以上となる領域が発生するように、前記熱間鍛造金型を用いて前記ワークを熱間鍛造する
    請求項1に記載の熱間鍛造金型の摩耗評価試験法。
  3. 前記ワークは、前記鍛造後に、厚さが1mm以上4mm以下であり、かつ直径が前記熱間鍛造金型の外径以上であるバリを生成させることが可能な体積を持ち、
    厚さが1mm以上4mm以下であり、かつ直径が前記熱間鍛造金型の外径以上である前記バリが生成するように、前記熱間鍛造型を用いて前記ワークを熱間鍛造する
    請求項1又は2に記載の熱間鍛造金型の摩耗評価試験法。
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