JP2015201443A - 軸線方向の力学的歪みに対する臨界電流依存性が低減された超伝導体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】軸線方向の機械的な歪みへの臨界電流依存性が低減された超伝導体の製造方法を提供する。【解決手段】複数のフィラメントを有する超伝導のワイヤーを製造方法は、複数のフィラメントのうちの少なくともいくつかはワイヤー軸線の周りに捩られている方法において、フィラメントの大部分が、ワイヤー軸線に対して50?よりも大きい捩れの角度となるように、超伝導フィラメントが捩られていることを特徴とする。これにより、簡単な技術的手段を使用することによって、軸線方向歪みの関数としての、高い磁場における超伝導ワイヤーの臨界電流の大きい依存性を著しく低減させることが可能である。加えて、その結果、超伝導フィラメントの対応する配置によって、軸線方向歪みの関数としての、高い磁場における超伝導ワイヤー臨界電流依存性をほとんど相殺させることが可能である。【選択図】図4A

Description

本発明は、複数のフィラメントを有する超伝導ワイヤーの製造方法に関し、複数のフィラメントのうちの少なくともいくつかは、ワイヤー軸線の周りに捩られている。
そのような方法は、たとえば、参照文献[4](非特許文献4)から、それ自体公知である。
本発明は、多芯の超伝導ワイヤーを製造するための方法を説明し、その多芯の超伝導ワイヤーにおいて、超伝導フィラメントの捩れは、標的方法で、おおよそ最適な捩れ長さに配置されている。捩れ長さは、ワイヤーの内部のフィラメントが360°の回転を行う長さであると理解される。最適な捩れ長さは、そこにおいて臨界電流が軸線方向の力学的歪み(ひずみ)に非常に敏感であるという超伝導体において、歪み感度が低減され得るということを意味している。これは、磁石設計に必要とされるワイヤーの長さを(それにしたがって、コストも)低減させるので、技術的に大変重要である。
NbSnは、極めて高い磁場を発生させるために今日最も一般に使用される産業用超伝導体の例として述べることが可能である。図1は、加えられる軸線方向歪みの関数として、4.2ケルビンにおける臨界電流を示している(参照文献[1](非特許文献1)参照)。7テスラの磁場において、臨界電流の軸線方向歪み依存性は、比較的に低い。しかし、磁場が増大するにつれて、臨界電流の感度は、歪みとともに大きく増加する。19テスラの場合では、たとえば、低い歪みにおいて、約100%(!)の臨界電流の可逆の(reversible)増加が起こり、その後、ゼロに接近するように低減していく。
磁石の中の超伝導ワイヤーは、高い電磁力(ローレンツ力)にさらされる。これらの力、及び、結果として生じる歪みに起因して、超伝導体の臨界電流は変化する。図1が示しているように、臨界電流の変化は、高い磁場において、とりわけ顕著である。磁石製造業者は、磁石の設計及び構築において、この性質を考慮しなければならない。
ここで、本発明は、特殊な製造プロセスによって、臨界電流が軸線方向歪みにほとんど依存しないようにすることを可能にする。そうするために、この性質の物理的な原理を、いくらかより詳細に論じることが必要である。
最近公表された研究では、ワイヤーの内部のNbSnの結晶学的な格子定数を、4.2ケルビンにおける歪みの関数として測定することに成功した(参照文献[2](非特許文献2)参照)。グルノーブルにある欧州シンクロトン放射光研究所(ESRF)で利用可能な高エネルギーX線放射のような高エネルギーX線放射の使用は、この実験にとって極めて重要であった。公知の内部スズ拡散法(Oxford Instruments Superconducting Technology)を使用して製造されたNbSnワイヤーが調査された。ワイヤーの直径は0.81mmであり、超伝導フィラメントは捩られている(捩れ長さ=15mm)。ワイヤーの応力−歪み曲線が、4.2ケルビンにおいて記録され、伝導体の中に存在する材料(とりわけ、NbSn)の格子定数が、原位置で測定された。加えて、熱圧縮(軸線方向及び半径方向に)の影響を検討するために、同じ伝導体に鋼製ジャケット(AISI316L)が設けられた。独立した実験において、臨界電流が、歪みの関数として測定された。図2A及び図2Bにおいて結果を要約している。
ゼロ歪みにおいて、立方体のNbSn格子がゆがめられている。軸線方向の格子定数の低減(圧縮)、及び、半径方向の格子定数の増加が観察される。軸線方向歪みの増加とともに、立方格子のゆがみが、直線的に低減されて特定の歪み値において消える。ここで調査されたNbSn伝導体の場合において、(ゆがめられていない)立方体のNbSn格子に関する外部歪みは、0.22%である(図2A)。同じ伝導体が鋼製ジャケットによって取り囲まれている場合には、立方体のNbSn格子のゆがみは、ゼロ歪みにおいて大きくなる。このことの理由は、超伝導体を4.2ケルビンまで冷却する際に、鋼製ジャケットの熱収縮がNbSn伝導体の熱収縮を超え、これが、付加的な圧縮を結果として生じさせるからである。0.53%の軸線方向歪みが、格子ゆがみを相殺するために必要とされる(図2B)。
両方の場合(鋼製ジャケットありの場合、及び、鋼製ジャケットなしの場合)において、ゆがめられていない、すなわち、立方体のNbSn格子によって、臨界電流は最大値に到達する。純立方体のNbSn格子に関して観察された最大臨界電流のシフト量(+0.03%)は、超伝導フィラメントの捩れに起因している。この捩れに起因して、電流搬送フィラメントのすべてが、外部歪みに平行であるわけではない。この理由のために、非平行のフィラメントの歪みが低減され、これによって臨界電流が変化する。
とりわけ注目すべきは、鋼製ジャケットの影響であり、これによってNbSnの付加的なゆがみが生じ、したがって、最大値の67A(最大値)から、ゼロ歪みにおける10A(!)へ、臨界電流を低減させる。この性質は、示されている歪みの1%までの区間において可逆的である。
磁石製造業者に関して、超伝導ワイヤーの性質は、図1、図2A及び図2B(先行技術)に示されているとおりである。磁場に対して超伝導ワイヤーの電流搬送容量をより良く利用するために、ソレノイド磁石はセクションに分割されている。最も高い磁場にさらされるセクションは、より大きい断面の超伝導体で巻かれている。磁場強度の低下とともに、超伝導体断面を低減することが可能である(参照文献[3](非特許文献3)参照)。しかし、また、磁石をセクション(たとえば、高エネルギー物理学のための多極磁石、核融合炉のための磁石)に分割することが、完全に不可能ではないが困難である用途も存在する。そして、電流搬送容量に関して、超伝導ワイヤーは、磁石のうちの小さい部分だけで十分に利用され、他の部分において、過剰に寸法決めされている。また、より大きい磁気システムでは、多大な電磁力も、重要な役割を果たす。そして、磁石の巻線は、機械的な補強によって保護されなければならない。
超伝導フィラメントの捩れは、同様に、先行技術から知られている。これは、経時的に変化する磁場で(たとえば、磁気的なコイルを充電又は放電するとき)、超伝導体を安定に維持するために必要である。物理的な観点から、フィラメント同士の間に結合電流を引き起こす電圧が、経時的に変化する磁場に生じる。これらの結合電流が、導電性であるが超伝導ではないマトリックスを通って流れるので、熱が発生する。フィラメントを捩ることは、そのような結合電流を低減させるための1つの可能性である。簡略化して言うと、誘導電圧が、捩れ長さ(フィラメントに対する360°の回転)にわたって相殺される。臨界捩れ長さは、以下の等式によって決定することが可能である(参照文献[4](非特許文献4)参照)。
ここで、lは臨界捩れ長さであり、ρは常伝導マトリックスの抵抗率であり、Jは超伝導体の電流密度であり、dは超伝導フィラメントの直径であり、μdH/dtは超伝導ワイヤーに対して直角に加えられる磁場の経時的な変化である。このとき、NbSn超伝導体に関して、ρ=4・10−8Ωm(銅−スズ青銅)、J=8・10A/m、d=5・10−6mであり、μdH/dtが10−3から10−1T/sの間であるとき、臨界捩れ長さは0.566m及び0.057mとなる。
臨界捩れ長さは、上限値であり、それは、実際にはかなり低くなる可能性がある。TF−ITER伝導体を、実際の例として述べることができる(TF−ITER=トロイダル磁場国際熱核融合実験炉)。0.81mmのワイヤー直径において、捩れ長さは15mmである。これは、10−1T/sの磁場変化の率であるとき、上記に引用された臨界捩れ長さの約4分の1に相当する。
上述されているフィラメント同士の間の結合電流の低減のための、ワイヤー軸線に対するフィラメントの最大捩れ角度は、以下の等式にしたがって決定することができる。
ここで、Dはワイヤー直径(又は、さらに言えば、ワイヤーの内側の外側フィラメントが位置付けられているところの直径)であり、lは実際の捩れ長さである。ここで、実際には、これは、約10°〜15°までの最大捩れ角度となる。上限値は、50/60Hz交流電流用途のための超伝導体であり、そこでは、25°までの捩れ角度が生じる(参照文献[5](非特許文献5)参照)。
ここで、NbSn超伝導体の臨界電流の歪み依存性を著しく改善する可能性が存在しており、これが、本発明の主題である。この目的のために、軸線方向及び半径方向のNbSn格子のゆがみを調査することは当然妥当である。上記に引用されているシンクロトン放射実験によって、任意の方向のNbSn格子定数の測定が可能になる(参照文献[3](非特許文献3)参照)。これの1つの例が、図3に図示されており、この例においては、4.2ケルビンへの冷却のプロセスの後に、すなわち、外側から作用する任意の歪みなしに、NbSn格子のゆがみ(歪み)が様々な方向において測定された。鋼製ジャケットの場合におけるワイヤー軸線の中のNbSnの軸線方向の圧縮(−0.53%)は、注目すべきである。鋼製ジャケットなしでは、圧縮は、−0.22%になっている。超伝導体フィラメントは、ワイヤー軸線とほとんど平行に配置されているので(捩れに起因して、10°の最大偏差が存在する)、臨界電流は影響を受ける。4.2ケルビン、19テスラの磁場において、臨界電流は、鋼製ジャケットなしで51Aであり、鋼製ジャケットありで10A(!)である(図2A及び図2Bにおいても示される)。
NbSn格子歪みの角度依存性をモデル化することが可能である(参照文献[6](非特許文献6)参照)。軸線ワイヤー方向の格子歪みをεax0とし、半径ワイヤー方向の格子歪みεrad0が測定によって知られているとすると、これを、他の角度θで計算することができる。
図3に示されているように、実験によって決定される格子歪みは、この関数によって非常に明白に説明される。
ここで、格子歪みの角度依存性を、軸線方向歪みの関数として計算することが可能である。図4A及び図4Bは、図2A及び図2Bに見られる軸線ワイヤー方向の格子歪みεax0、及び、半径ワイヤー方向の格子歪みεrad0を使用して計算された。以下の調査結果は、このように得ることが可能である。
鋼製ジャケットなしのNbSnワイヤーに関して、立方体のNbSn格子のゆがみは、0.22%の外部軸線方向歪みを加えるときに相殺される(図2Aも参照)。換言すれば、すべての方向における格子歪みがゼロである。鋼製ジャケットありのNbSnワイヤーの場合において、厳密な立方体のNbSn格子を得るために、0.53%の外部軸線方向歪みが必要とされる(図2Bも参照)。ここで、外部軸線方向歪みにかかわらず、特定の角度において格子ゆがみが存在しないという事実は、新規なことである。ワイヤー軸線に対するこの角度は、鋼製ジャケットなしのNbSnワイヤーに関して58°±2°であり(図4A)、鋼製ジャケットありのワイヤーに関して55°±5°である(図4B)。
図2A及び図2Bで示されているように、臨界電流は、純立方体のNbSn格子、すなわち、ゆがみがないNbSn格子に関して最大値を有している。NbSnワイヤーのフィラメントが捩られているという事実を考慮に入れた場合には、これは、捩れ長さを調節する可能性を生み出し、フィラメントのほとんどが、58°の付近に存在することとなる。したがって、外部軸線方向歪みに対する臨界電流依存性は、大きく低減され得る。これは、まさに、本発明の主題である。
参照文献[1] J.W.エキン、「実際の超伝導体における磁束ピン止め効果の歪みスケーリング則。第1部:基本的関係及びNb3Sn導体への適用」、クライオジェニクス、第20巻、1980年、第613頁 参照文献[2] L.ムッジら、「4.2Kで機械的負荷をかけられた内部スズワイヤーにおけるNb3Sn格子変形の高エネルギーX線回折による直接観察」、スーパーコンダクター・サイエンス・アンド・テクノロジー、第25巻、2012年、第05006頁 参照文献[3] M.N.ウィルソン、「超伝導磁石」、オクスフォード・ユニバーシティ・プレス、1983年、第23頁 参照文献[4] M.N.ウィルソンら、「フィラメント状超伝導複合体の実験的及び理論的研究。1.基本概念及び理論」、ジャーナル・オブ・フィジクス、3D、1970年、第1526頁 参照文献[5] P.ドゥボツら、「50−60Hz用途の超微細フィラメントを備えたNbTiワイヤー:フィラメント径が損失にもたらす影響 」、IEEEトランザクション・オン・マグネティクス、巻MAG−21、1985年、第177頁 参照文献[6] S.アワジら、「CuNb/(Nb,Ti)3Snワイヤーにおける残留歪みの角度依存性」、スーパーコンダクター・サイエンス・アンド・テクノロジー、第23巻、2010年、第105010頁 参照文献[7] A.ゴデク、「Nb3Sn及びA15組成を有するその変種の特性、モフォロジ及び歪み状態についての検討」、スーパーコンダクター・サイエンス・アンド・テクノロジー、第19巻、2006年、第R77頁 参照文献[8] J.W.エキン、「実際の超伝導体における磁束ピン止め効果の統一スケーリング則。1.分離可能性の仮定、生スケーリングデータ及び中程度の歪みでのパラメータ設定」、スーパーコンダクター・サイエンス・アンド・テクノロジー、第23巻、2010年、第7頁
先行技術と比較して、本発明の目的は、導入部分に規定されているタイプの方法を提示することであり、軸線方向歪み(ひずみ)の関数としての、高い磁場における超伝導ワイヤーの強力な臨界電流依存性は、最も簡単な可能な技術的手段を使用して大きく低減させることができる。加えて、本発明は、超伝導フィラメントの適切な配置によって、軸線方向歪みの関数としての、高い磁場における超伝導ワイヤーの臨界電流依存性をほとんど相殺するという結果をもたらすはずである。
この目的は、驚くほど簡単な方法で実現され、及び、導入部分に規定されている特徴を有する方法の修正によって容易に利用可能な技術的手段を使用することによって実現されており、超伝導フィラメントが捩られ、フィラメントの大部分が、ワイヤー軸線に対して50°よりも大きい捩れの角度となるようになっていることを特徴とする。
本発明の目標は、上記に規定されているように、ワイヤー軸線に対して50°よりも大きい角度で位置するフィラメントが、軸線方向歪み(ひずみ)にかかわらず、NbSn格子のゆがみをほとんど受けず、したがって、最大臨界電流を有する(図2A、図2B、図4A、図4Bも参照)という事実によって実現される。結果的に、本発明による方法を使用するとき、全体の伝導体の臨界電流は、軸線方向歪みにわずかにしか依存しない。
本発明にしたがって修正された方法の助けによって、高い磁場における軸線方向歪み(ひずみ)に対する臨界電流依存性は、とりわけ、最も近い先行技術と比較して、初めて影響を受け得る(参照文献[1]、[7]、及び[8](非特許文献1、7、及び8)を参照)。本発明による方法によって、臨界電流は、軸線方向歪みにほとんどかかわらず、その最大値で維持され得る。このことは、同等な磁場を有する磁石のために、ずっと少ない超伝導ワイヤーしか必要としないという大きい利点を有する。より高い臨界電流に起因して、より少ない巻線で足りる。したがって、経済的な利点、すなわち、より低いコストに加えて、はるかにコンパクトに磁石を設計することも可能である。コンパクトな設計は、超伝導体に作用する電磁力を低減させ、これは、また、超伝導磁石システムの概念及び構築のかなりの利点である。
とりわけ最も好適なのは、本発明による方法の変形例であり、これは、フィラメントの大部分がワイヤー軸線に対して58°、好ましくは50°から65°の間、とりわけ56°から60°の間の捩れの角度となるように、超伝導フィラメントが捩られていることを特徴とする。したがって、電流搬送フィラメントの結晶学的格子のゆがみは、外部軸線方向歪み(ひずみ)に依存しなくなる(図4Aも参照)。そのような性質は、全体の伝導体の最大臨界電流に関して有利であり、そして、これは、外部軸線方向歪みにほとんど依存していない(図2A及び図2Bも参照)。したがって、超伝導ワイヤーが、磁石の中でより良好に利用され、このことは、必要とされるワイヤー長さ(及び、したがって、とりわけコスト)を低減させることに相当する。
本発明による方法の有利な他の変形例は、NbSn、又は、NbSnに似た性質であって軸線方向歪みの関数としての臨界電流の性質を有する材料が、選択されることを特徴とする。また、これによって、電流搬送フィラメントの結晶学的格子のゆがみが、外部軸線方向歪みに依存しなくなる(図4Aも参照)。そのような性質は、最大臨界電流に関して有利であり、そして、この最大臨界電流は、外部軸線方向歪みにほとんど依存しない(図2A及び図2Bも参照)。したがって、超伝導ワイヤーが、磁石の中でより良好に利用され、そして、これは、必要とされるワイヤー長さ及びコストを低減させることに相当する。
また、超伝導ワイヤーが、外部又は内部のいずれかに、機械的に補強されているプロセス変形例も好適である。ステンレス鋼(AISI316L)によるNbSn超伝導体の外部補強の場合では、55°の捩れの角度において、電流搬送フィラメントの結晶学的格子のゆがみは、外部軸線方向歪みに依存していない(図4Bも参照)。そして、そのような性質は、最大臨界電流に関して有利であり、そして、この最大臨界電流は、外部軸線方向歪みにほとんど依存しておらず(図2A及び図2Bも参照)、超伝導ワイヤーが磁石の中でより良好に利用されるようになっており、これは、必要とされるワイヤー長さ及びコストの低減に相当する。最適な捩れの角度は、補強/超伝導体の断面比率から、並びに、外側と内側のどちらから補強がもたらされているかということから導かれる。
本発明による方法の変形例の1つのクラスは、超伝導フィラメントが、環状に配置されており、したがって、ワイヤー軸線に対する、必要とされる捩れの角度を有するフィラメントの部分が増加されていることを特徴とする。繰り返しになるが、このプロセス変形例によって、電流搬送フィラメントの結晶学的格子のゆがみが、外部軸線方向歪みに依存しなくなる(図4Aも参照)。そして、そのような性質は、最大臨界電流に関して有利であり、そして、これは、外部軸線方向歪みにほとんど依存していない(図2A及び図2Bも参照)。したがって、超伝導ワイヤーが、磁石の中でより良好に利用され、このことは、必要とされるワイヤー長さ及びコストを低減させることに相当する。
プロセス変形例の他のクラスでは、超伝導フィラメントが束にされており、ワイヤー軸線に対するフィラメントの捩れの角度の必要とされる角度範囲が満たされるように、束の中の捩れが設計されている。したがって、また、電流搬送フィラメントの結晶学的格子のゆがみが、外部軸線方向歪みに依存しなくなり、すでに上記に説明されている利点を伴う。
また、本発明による方法であって、捩れ操作がワイヤーの製造に続いて実施される方法が、有利である。
他の好適なプロセス変形例は、第1のワイヤー捩り操作の後に、ワイヤー直径が低減され、必要とされる直径公差が満たされることを特徴とする。
また、第2のワイヤー捩り操作の後に、ワイヤー直径が低減され、必要とされる直径公差が満たされるようになっているならば、有利である。
最後に、本発明による方法の好適な変形例は、1つ又は複数の回復アニールが実施され、より大きい捩れの角度が実現されることを特徴とする。
本発明のさらなる利点は、詳細な説明及び図面から導かれる。同様に、本発明による特徴であって、上述されており、さらに後述されることとなる特徴を、個別に単独で、若しくは複数を任意に組み合わせて使用することができる。ここで示されて説明されている実施形態は最終的なリストとして理解されるべきではなく、むしろ、本発明の説明のための例示的な特徴にすぎない。
本発明は、図面に図示されており、例示的な実施形態に基づいて、より詳細に説明されている。
4.2ケルビンにおけるNbSn超伝導体の臨界電流依存性を軸線方向歪みの関数及び磁場の関数として示す図である。 4.2ケルビン、19テスラにおけるNbSn超伝導体の臨界電流(■)を軸線方向歪みの関数として示す図である。同時に、軸線方向(●)及び半径方向(○)のNbSnの格子定数が示されている。図2Aにおいて示される性質は、鋼製ジャケットなしのNbSn超伝導体に対応している。 4.2ケルビン、19テスラにおけるNbSn超伝導体の臨界電流(■)を軸線方向歪みの関数として示す図である。同時に、軸線方向(●)及び半径方向(○)のNbSnの格子定数が示されている。図2Bにおいて示される性質は、鋼製ジャケットありのNbSn超伝導体に対応している。 4.2Kへの冷却プロセスの後に、軸線方向歪みなしで、NbSn格子のゆがみ(格子歪み)を、ワイヤー軸線に対する角度の関数として示す図である。矢印は、ワイヤー軸線の方向を示している。測定点は、鋼製ジャケットなしの(○)、及び鋼製ジャケットありの(□)NbSn超伝導体に基づいており、実線は、モデル計算との良好な一致を示している。 計算されたNbSn格子のゆがみ(格子歪み)を、ワイヤー軸線に対する角度及び軸線方向歪みの関数として示す図である。矢印は、ワイヤー軸線の方向を示している。図4Aにおいて示される性質は、鋼製ジャケットなしの、且つ、次のような軸線方向歪みを有するNbSn超伝導体の性質に対応している:………0%、- - - - 0.1%、━━━━0.22%、−−−−0.3%、- ・ - ・ -0.4%、-…-…0.5%。 計算されたNbSn格子のゆがみ(格子歪み)を、ワイヤー軸線に対する角度及び軸線方向歪みの関数として示す図である。矢印は、ワイヤー軸線の方向を示している。図4Bにおいて示される性質は、鋼製ジャケットありの、且つ、次のような軸線方向歪みを有する同じNbSn超伝導体の性質に対応している:………0%、- - - - 0.3%、━━━━0.53%、- ・ - ・ -0.7%、-…-…1.0%。 ワイヤーコア(1)の周りのリング形状のゾーン(2)における超伝導体NbSnフィラメントの配置の可能性を示す図である。この配置によって、必要とされる最適な捩れの角度を有するフィラメントの部分が増加する。 ワイヤーコア(3)の周りの束(4)に超伝導NbSnフィラメントを配置する可能性を示す図である。この配置は、必要とされる最適な捩れの角度を有するフィラメントの部分を増加させるさらなる可能性を生み出す。
本発明による方法を、実施例に基づいて、以下においてより詳細に説明することができる。
NbSnワイヤーの製造、詳しく述べると、製造プロセス(ブロンズ法、内部スズ拡散法、又はPIT法)にかかわらない製造が、通常通り行われる。製造プロセスの最後に、フィラメントが捩られる。フィラメントの大部分が、ワイヤー軸線に対して約58°の角度となるように、捩れ長さが調節される。
実施例1の場合では、ワイヤーの中心にあるフィラメントは捩られていないので、ワイヤーの概念を修正することができる。この場合では、フィラメントは、ワイヤー軸線の周りの同心のゾーンに配置されている(図5)。次いで、NbSnワイヤーが、詳しく述べると、製造プロセス(ブロンズ法、内部スズ拡散法、又はPIT法)にかかわらず通常通り製造される。製造プロセスの最後に、フィラメントが捩られる。フィラメントの大部分が、ワイヤー軸線に対して約58°の角度となるように、捩れ長さが調節される。
ワイヤー軸線に対する約58°の捩れの角度を実現する他の可能性は、フィラメントを束になるように配置させることである。この場合では、必要とされる約58°の捩れの角度が製造プロセスの終了後に定着される程度まで、個々の束が捩られる。
ワイヤー軸線に対して58°の角度だけフィラメントを捩ることによって、ワイヤー直径が変化し得る。プロセスの1つの変形例は、小さい捩れの角度(58°未満)で初めて捩った後に、ワイヤーの直径が、1つ又は複数のワイヤー引き抜きステップによって調整されるという事実から構成される。そして、捩りプロセスが継続される。
捩りプロセスは、ワイヤーの脆化を結果として生じさせる可能性がある。この場合では、1回又は複数回の歪み緩和アニールが、捩りプロセスにおいて実施されなければならない。
1 ワイヤーコア
2 リング形状のゾーン
3 ワイヤーコア
4 束

Claims (10)

  1. 複数のフィラメントを有する超伝導ワイヤーの製造方法であって、前記複数のフィラメントのうちの少なくともいくつかは、ワイヤー軸線の周りに捩られている超伝導ワイヤーの製造方法において、
    前記フィラメントの大部分が前記ワイヤー軸線に対して50°より大きい捩れの角度となるように、前記超伝導フィラメントが捩られていることを特徴とする超伝導ワイヤーの製造方法。
  2. フィラメントの大部分が、前記ワイヤー軸線に対して、60°の捩れの角度、好ましくは55°から65°の間、とりわけ57°から59°の間となるように、前記超伝導フィラメントが捩られていることを特徴とする請求項1記載の超伝導ワイヤーの製造方法。
  3. NbSn、又は、NbSnに似た性質であって軸線方向歪みの関数としての臨界電流の性質を有する材料が、前記超伝導ワイヤーの材料として選択されることを特徴とする請求項1又は2記載の超伝導ワイヤーの製造方法。
  4. 前記超伝導ワイヤーが、内部又は外部のいずれかに、機械的に補強されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超伝導ワイヤーの製造方法。
  5. 前記超伝導フィラメントが、環状に配置されており、前記ワイヤー軸線に対する必要とされる捩れの角度を満たすフィラメントの部分が増加されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の超伝導ワイヤーの製造方法。
  6. 前記超伝導フィラメントが束にされており、前記ワイヤー軸線に対する必要とされる前記フィラメントの角度範囲が満たされるように、束の中の前記捩れが設計されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の超伝導ワイヤーの製造方法。
  7. 前記捩りプロセスが、前記ワイヤーの製造に続いて行われることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の超伝導ワイヤーの製造方法。
  8. 第1のワイヤー捩り操作の後にワイヤー直径が低減されて、必要とされる直径公差が満たされることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の超伝導ワイヤーの製造方法。
  9. 第2のワイヤー捩り操作の後にワイヤー直径が低減されて、必要とされる直径公差が満たされることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の超伝導ワイヤーの製造方法。
  10. 1つ又は複数の回復アニールが実施されて、より大きい捩れの角度が実現されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の超伝導ワイヤーの製造方法。
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