JP2015194315A - 冷却器 - Google Patents

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Abstract

【課題】冷媒流体の自励振動変位を伴い発熱体を冷却する冷却器であって、冷却能力の低下を防止できる冷却器を提供する。
【解決手段】冷却器10の加熱部14は、発熱体収容空間14aに発熱体12が複数配置されるとともに、隣り合う発熱体12の間に対向部材15が配置される。このとき、表面張力の作用によって液体冷媒が発熱体表面121とそれに対向する対向部材表面151との間にブリッジされるように、発熱体12と対向部材15とが配置される。これによれば、気液界面26が発熱体収容空間14aから冷却部空間16aへ変位したときに、液体冷媒が発熱体表面121と対向部材表面151との間にブリッジされるので、蒸気生成に伴う発熱体表面121からの液体冷媒の飛散を防止でき、発熱体表面121に液体冷媒を保持し続けることができる。このため、発熱体表面121への液体供給状態を長く維持でき、冷却器10の冷却能力の低下を防止できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、冷媒を用いて発熱体を冷却する冷却器に関するものである。
流体が封入された流体容器内の流体を加熱する加熱部と、その加熱部により加熱され気化した蒸気を冷却する冷却部とを有する蒸気エンジンが、特許文献1に開示されている。その特許文献1の蒸気エンジンは、蒸気の膨脹圧力により液体を流動変位させて機械的エネルギを出力するとともに、蒸気を冷却部にて冷却して液化することにより流体容器内の流体を自励振動変位させる。
特許第4411829号公報
特許文献1の蒸気エンジンは、上述のように機械的エネルギを出力するものであるが、機械的エネルギを得ることとは別の目的に活用することができる。例えば、発明者らは、加熱部から冷却部への熱移動が流体容器内での流体の自励振動変位により促進されるので、冷却すべき発熱体を利用して加熱部を構成すれば、その発熱体を冷却するための冷媒流体として流体容器内の流体を用いることができると考えた。すなわち、特許文献1の蒸気エンジンを、その発熱体を冷却する冷却器として活用することが可能であると考えた。
しかし、特許文献1の蒸気エンジンのような構成を有する冷却器では、冷媒流体(液体)が自励振動変位するため、加熱部における発熱体を収容する発熱体収容空間が、常に、液体で満たされるわけではない。このため、発熱体表面への液体供給が不足し、冷却器の冷却能力が低下するという問題が生じる。
具体的には、発熱体収容空間内の液体が発熱体からの熱によって気化し、気液界面が発熱体収容空間から冷却部空間へ変位するとき、発熱体表面に液膜が形成される。さらに、この液膜が発熱体からの熱によって沸騰し、蒸気が生成する。このとき、生成した蒸気(気泡)の力によって発熱体表面に残存する液体が飛散してしまうと、発熱体表面に液体が存在しないドライ領域が発生する。ドライ領域が発生すると、発熱体表面の伝熱面積が低下し、発熱体表面と液体との間の熱交換量が低下する。一度、ドライ領域が発生すると、気液界面が冷却部空間から発熱体収容空間へ変位する次の周期まで、発熱体表面へ液体が供給されず、熱交換量が低下した状態が続いてしまう。このように、気液界面が発熱体収容空間から冷却部空間へ変位したときに、発熱体表面から液体が飛散して、発熱体表面への液体供給状態を維持できなくなるので、冷却器の冷却能力が本来発揮可能な冷却能力よりも低下してしまう。
本発明は上記点に鑑みて、冷媒流体の自励振動変位を伴い発熱体を冷却する冷却器であって、冷却能力の低下を防止できる冷却器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
発熱体(12)が収容される発熱体収容空間(14a)を形成しており、発熱体からの熱により、発熱体収容空間内に入っている冷媒流体を加熱し気化させる加熱部(14)と、
発熱体収容空間と連通している冷却部空間(16a)を形成しており、加熱部で気化され冷却部空間へ流入してきた冷媒流体を冷却して液化させる冷却部(16)と、
冷却部空間と連通している吸収部空間(28a)を形成しており、冷媒流体の加熱および冷却による体積変化を吸収する吸収部(28)とを備え、
発熱体収容空間、冷却部空間、及び吸収部空間は全体として、冷媒流体が封入された一空間(32)を構成し、
加熱部および冷却部は、冷媒流体に気化と液化とを繰り返させることにより、一空間内で冷媒流体を自励振動させるようになっており、
加熱部は、発熱体表面(121)に対向する対向面(151、142、121)を有し、表面張力の作用によって液状の冷媒流体が発熱体表面と対向面との間にブリッジされるように、発熱体と対向面が配置されることを特徴としている。
なお、「液状の冷媒流体が発熱体表面と対向面との間にブリッジされる」とは、液状の冷媒流体が発熱体表面と対向面とを橋渡しする状態を意味し、換言すると、液状の冷媒流体が発熱体表面から対向面までつながった状態であって、発熱体表面と対向面の間に保持される状態を意味する。
本発明では、気液界面が発熱体収容空間から冷却部空間へ変位したときに、冷媒流体(液体)が発熱体表面と対向面との間にブリッジされるので、蒸気生成に伴う発熱体表面からの液体の飛散を防止でき、発熱体表面に液体を保持し続けることができる。このため、液面が発熱体収容空間から冷却部空間へ変位したときにおいても、発熱体表面への液体供給状態を長く維持できるので、冷却器の冷却能力の低下を防止できる。
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
第1実施形態における冷却器の全体構成を示す断面図である。 ラプラス長さを説明するための断面図である。 (a)、(b)は、図1中の発熱体と対向部材の拡大図であり、(a)は膨張行程初期の液体冷媒の状態を示し、(b)は一定時間経過後の液体冷媒の状態を示している。 比較例1における冷却器の全体構成を示す断面図である。 (a)、(b)は、図4中の発熱体の拡大図であり、(a)は膨張行程初期の液体冷媒の状態を示し、(b)は一定時間経過後の液体冷媒の状態を示している。 第2実施形態における発熱体と対向部材の拡大図である。 第3実施形態における発熱体と対向部材の拡大図である。 第4実施形態における発熱体と対向部材の拡大図である。 図8中の領域A1の拡大図である。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の冷却器10の全体構成を示す図であり、断面図示されている。冷却器10は、その冷却器10内に封入された冷媒を利用して発熱体12を冷却する。図1に示すように、冷却器10は、加熱部14、冷却部16、駆動補助装置18等を備えている。冷却器10の冷媒は、常温では液体で、発熱体12により加熱されることにより沸騰する流体であり、一例を挙げれば、フッ素系不活性液体である。なお、図1の矢印DR1は、冷却器10が設置された状態での上下方向DR1すなわち鉛直方向DR1を表している。
発熱体12は、発熱するために、冷却器10により冷却される部材であり、具体的には、冷却が必要な半導体素子などの電子部品である。一例を挙げれば、インバータの半導体素子モジュールである。発熱体12の電気端子12a、12bは加熱部14から突き出ており、発熱体12は、その電気端子12a、12bに通電されることにより発熱する。
加熱部14には、発熱体12が収容される発熱体収容空間14aが形成されており、加熱部14は、その発熱体収容空間14a内に発熱体12を有している。そして、加熱部14は、その発熱体12からの熱により、発熱体収容空間14a内に入っている液体の冷媒すなわち、液状の冷媒流体を加熱し沸騰気化させる。
詳細には、加熱部14は、加熱部空間としての発熱体収容空間14aを形成している箱状の発熱体収容壁141を備えている。そして、その発熱体収容壁141内において、発熱体12は、発熱体12まわりが気体または液体の冷媒で満たされるように収容されている。例えば、本実施形態では、発熱体収容空間14a全体が気体または液体の冷媒で満たされており、その冷媒が全て液体となっているときには発熱体12全体もしくは一部が液体の冷媒に漬かるようになっている。なお、発熱体収容空間14aの冷却部16側である一端は後述の冷却部16の冷却部空間16aに連通しているが、発熱体収容空間14aの他端は閉塞されている。
本実施形態では、加熱部14は、発熱体収容空間14aに発熱体12が2つ配置されているとともに、隣り合う発熱体12の間に対向部材15が配置されている。対向部材15は、発熱体12とは別の部材であり、対向部材表面151が発熱体表面121と対向している。したがって、対向部材表面151が発熱体表面121に対向する対向面を構成している。なお、発熱体表面121は、液体冷媒と接する発熱体12の表面であって、主として液体冷媒との間で熱交換する面である。
対向部材15は、発熱体収容壁141のうち図示しない部分に保持されている。対向部材15は、導電性材料、例えば、金属材料で構成されている。
発熱体12および対向部材15は、後述する図3(b)に示すように、表面張力の作用によって液体冷媒が発熱体表面121と対向部材表面151との間にブリッジされるように、配置されている。具体的には、発熱体表面121と対向部材表面151との間の距離L1が、下記の数式で表されるラプラス長さlよりも短くなるように、発熱体12および対向部材15が配置されている。
Figure 2015194315

σ:冷媒流体の表面張力
g:重力加速度
ρ:冷媒流体の飽和液密度
ρ:冷媒流体の飽和蒸気密度
ここで、一般的に、ラプラス長さlは、図2に示すように、管内部の液体と気泡プラグにおいて、浮力と表面張力のつりあいで、気泡プラグが管内部に保持される限界管径のことである。気泡プラグが管内部に保持される状態のとき、表面張力の作用によって管内部の液体が管内壁にブリッジされた状態となる。したがって、このラプラス長さlを目安として、発熱体表面121と対向部材表面151との間の距離L1を設定すればよい。
また、本実施形態では、加熱部14は、発熱体収容壁141のうち発熱体表面121に対向する対向面142を有している。そして、発熱体12は、発熱体表面121と対向面142の間の距離L2が上記した距離L1と同じとなるように配置されている。
冷却部16は、発熱体収容空間14aと連通している冷却部空間16aを形成しており、加熱部14で気化され冷却部空間16aへ流入してきた気体の冷媒を冷却して液化させる。具体的に冷却部16は、冷却部壁161と冷却装置162とを備えている。冷却部16は、加熱部14に対し水平方向に並んで配置されている。
冷却部壁161は管状の形状を成しており、その内側に冷却部空間16aを形成している。冷却装置162は、冷却部壁161の周りに設けられた多数の冷却フィン162aから構成されている。そして、冷却装置162は、冷却部空間16a内の冷媒を、外気と熱交換させることにより冷却する。すなわち、冷却部16は、冷媒を冷却する際に、その冷媒からの熱を、冷却部16の外部すなわち冷却部16まわりの外部空間16bへ放熱する。
冷却部壁161は、高い放熱性能が得られるように、例えば薄肉の金属、好ましくは薄肉のアルミニウム合金で構成されている。また、冷却部壁161、冷却装置162、および発熱体収容壁141は一体となって、アルミニウム合金等の金属から成り冷媒が収容される1つの冷媒容器を構成している。
冷却部空間16aは管状に形成された空間であり、その長手方向に直交する管路断面積が極めて小さい管路で構成されている。そのため、冷却部空間16a内に冷媒の気液界面26が存在する場合には、その気液界面26は、重力方向に拘わらず、冷媒の表面張力により、冷却部空間16aの長手方向を向くように維持される。すなわち、冷却部空間16aの長手方向において、気液界面26を境に加熱部14側には気体冷媒が存在し、その反対側には液体冷媒が存在する。
例えば、冷媒が加熱部14で加熱されることにより、気体になった冷媒の体積が増すほど、冷却部空間16a内において気液界面26は、発熱体収容空間14aから遠ざかる方向すなわち図1の左方向に移動する。そうすると、冷却部16は、液体冷媒も冷却するが、それと共に、加熱部で気化された気体冷媒も冷却し凝縮させる。
駆動補助装置18は、一軸方向または略一軸方向へ伸縮する伸縮部28と、錘30とを備えている。伸縮部28は、冷媒の加熱および冷却によって発熱体収容空間14a内および冷却部空間16a内で生じる冷媒の体積変化を吸収する。すなわち、伸縮部28は、その冷媒の体積変化を吸収する吸収部として機能する。そして、伸縮部28は、伸縮部28の内側に、冷却部空間16aと連通している吸収部空間としての伸縮部空間28aを形成している。
伸縮部28は、例えば蛇腹等で構成されており、本実施形態では上下方向DR1に伸縮する。駆動補助装置18は機械的な動作を行う部分であるので、冷却器10における駆動部と呼んでもよい。伸縮部28が上下に伸縮すると、それに伴い、伸縮部空間28aも上下に伸縮する。伸縮部空間28a内は液体冷媒で満たされている。
また、伸縮部28の下端は冷却部壁161に対して固定されており、伸縮部空間28aの下端は冷却部空間16aに連通している。その一方で、伸縮部28の上端には錘30が固定されており、伸縮部空間28aの上端は閉塞されている。従って、この伸縮部空間28a、上述の発熱体収容空間14a、および冷却部空間16aは全体として、冷媒が封入された一空間としての気密な冷媒封入空間32を構成している。そして、冷却部空間16a内の冷媒が伸縮部空間28a内へ流入すると、伸縮部空間28aが伸びて伸縮部28の上端および錘30が上昇する。逆に、伸縮部空間28aが縮んで伸縮部28の上端および錘30が下降すると、伸縮部空間28a内の冷媒が冷却部空間16a内へ流出する。すなわち、その冷媒は、伸縮部28を伸縮作動させる作動流体として機能している。
錘30は、伸縮部28が上下に伸縮する際の慣性を増すために設けられている。錘30は、高密度の部材であれば良く、例えば鉄で構成されている。
このように構成された冷却器10では、発熱体収容空間14a内の液体冷媒が発熱体12により加熱され沸騰させられると冷媒の気体部分が増し、それと共に冷媒全体の体積が増加し伸縮部28の上端が上昇する。冷媒の気体部分がある程度増し、例えば、気液界面26が図1のように冷却部空間16a内に入ると、冷却部16が、その冷媒の気体部分を冷却し凝縮させる。
冷媒の気体部分が凝縮することにより気体部分が少なくなると、それと共に冷媒全体の体積が減少し伸縮部28の上端が下降する。そして、発熱体12の一部または全部が液体の冷媒に浸かるようになる。発熱体12が液体の冷媒に浸かると、上述したように再び発熱体収容空間14a内の液体の冷媒が沸騰し蒸発する。
このように、冷却器10において加熱部14および冷却部16は、冷媒に蒸発と凝縮とを繰り返させることにより、冷媒封入空間32内で冷媒の気液界面26を自励振動させる。要するに、冷媒封入空間32内で冷媒を自励振動させる。そして、伸縮部28は、その冷媒の自励振動に伴う冷媒全体の体積変化を吸収する。更に、伸縮部28は、所定のばね定数を持っているので、その伸縮部28の伸縮方向における釣合い点に向って伸縮量に応じた反力を生じ、冷媒の自励振動を補助する役割を果たす。
この気液界面26の自励振動すなわち冷媒の自励振動に伴い冷媒が蒸発と凝縮とを繰り返すことで、発熱体12の熱を、冷媒と冷却部壁161と冷却装置162とを介し、冷却部16から外気へ放出させることができる。
ここで、図4に示す比較例1について説明する。比較例1の冷却器J10は、第1実施形態の冷却器10に対して対向部材15が省略されているとともに、隣り合う発熱体12同士の距離L3が第1実施形態の発熱体表面121と対向部材表面151との間の距離L1よりも大きいものである。その他の構成は第1実施形態と同じである。
比較例1の冷却器J10では、加熱部14の発熱体収容空間14a内の液体冷媒が発熱体12からの熱によって気化し、気液界面26が、図4に示すように、26a→26b→26cの順に変位する。このように、気液界面26が発熱体収容空間14aから冷却部空間16aへ変位するとき、図5(a)に示す膨張行程初期において、発熱体表面121に液体冷媒40の膜(液膜40)が形成される。その後、この液膜40が発熱体12からの熱によって沸騰し、蒸気が生成する。このとき、図5(b)に示すように、生成した蒸気(気泡)の力によって発熱体表面121に残存していた液体冷媒40が飛散してしまうと、発熱体表面121に液体冷媒が存在しないドライ領域が発生する。ドライ領域が発生すると、発熱体表面121の伝熱面積が低下し、発熱体表面121と液体冷媒との間の熱交換量が低下する。一度、ドライ領域が発生すると、気液界面26が冷却部空間16aから発熱体収容空間14aへ変位する次の周期まで、発熱体表面121へ液体冷媒が供給されず、熱交換量が低下した状態が続いてしまう。
このように、比較例1の冷却器J10では、気液界面26が発熱体収容空間14aから冷却部空間16aへ変位したときに、発熱体表面121から液体冷媒40が飛散して、発熱体表面121への液体供給状態を維持できなくなるので、冷却器の冷却能力が本来発揮可能な冷却能力よりも低下してしまう。すなわち、液体冷媒40が発熱体12と熱交換せずに発熱体表面121から飛散してしまうので、冷却器の冷却能力が本来発揮可能な冷却能力よりも低下してしまう。
これに対して、本実施形態の冷却器10では、気液界面26が発熱体収容空間14aから冷却部空間16aへ変位したときに、表面張力の作用によって液体冷媒40が発熱体表面121と対向部材表面151との間にブリッジされるように、発熱体12と対向部材15が配置されている。
このため、図3(a)に示す膨張行程初期において、発熱体表面121と対向部材表面151の両方に液体冷媒40の膜(液膜40)が形成される。その後、この液膜40が発熱体12からの熱によって沸騰して蒸気が生成したとき、図3(b)に示すように、生成した気泡によって液膜40が発熱体表面121から対向部材表面151側に押し出されることによって、液体冷媒40が発熱体表面121と対向部材表面151の間にブリッジされる。なお、このとき、発熱体表面121と対向部材表面151の間には、液体冷媒40と気体冷媒41が混在する状態となり、時間経過と共に液体冷媒40が気化していく。
これにより、蒸気生成に伴う発熱体表面121からの液体冷媒40の飛散を防止でき、発熱体表面121に液体冷媒40を保持し続けることができる。すなわち、発熱体表面121が液体冷媒40で濡れている状態を維持できる。このように、気液界面26が発熱体収容空間14aから冷却部空間16aへ変位したときにおいても、発熱体表面121への液体供給状態を長く維持できるので、冷却器の冷却能力の低下を防止できる。
また、本実施形態では、図1に示すように、発熱体表面121と発熱体収容壁141の対向面142との間の距離L2が、発熱体表面121と対向部材表面151との間の距離L1と同じであるので、発熱体表面121と発熱体収容壁141の対向面142との間においても、上記と同様のことが言える。
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態に対して対向部材の材質を変更したものであり、その他の構成は第1実施形態と同じである。
図6に示すように、本実施形態では、対向部材15は、絶縁性材料である樹脂材料で構成されている。このため、対向部材15は絶縁性を有している。なお、絶縁性材料としてセラミックスを用いてもよい。
ところで、発熱体12が電気部品である場合、対向部材15が導電性を有すると、発熱体12と対向部材15との間の距離および発熱体12同士の距離が一定の距離以下のときに、絶縁破壊が生じてしまう。このため、発熱体12と対向部材15との間の距離L1および発熱体12同士の距離L3を一定の距離以下にすることができない。
これに対して、本実施形態では、対向部材15の全体が絶縁性を有しているので、対向部材15が導電性を有する場合と比較して、発熱体12と対向部材15との間の距離L1および発熱体12同士の距離L3を短くすることができる。
なお、本実施形態では、対向部材15の全体が絶縁性材料で構成されていたが、対向部材15の表層部が絶縁性材料で構成され、内部が導電性材料で構成されていてもよい。この場合も、対向部材表面151が絶縁性を有するので、本実施形態と同様の効果を奏する。
(第3実施形態)
図7に示すように、本実施形態では、発熱体表面121を絶縁性材料である樹脂材料で構成された薄膜13で覆っている。このため、発熱体表面121は絶縁性を有している。この薄膜13は、発熱体12の冷却に影響を与えない厚さとされる。なお、その他の構成は、第1実施形態と同じである。
本実施形態によれば、対向部材15が導電性材料で構成されていても、発熱体表面121が絶縁性を有しているので、対向部材15が導電性を有し、発熱体表面121に薄膜13を設けていない場合と比較して、発熱体12と対向部材15との間の距離L1および発熱体12同士の距離L3を短くすることができる。
(第4実施形態)
本実施形態は、第1実施形態に対して対向部材の材質を変更したものであり、その他の構成は第1実施形態と同じである。
図8、9に示すように、本実施形態では、対向部材表面151における液体冷媒40の接触角θ1が、発熱体表面121における液体冷媒40の接触角θ2よりも大きくなるように、対向部材15が構成されている。接触角とは、液体の自由表面がその接触する固体
表面となす角のことである。例えば、冷媒として水を用いる場合、対向部材15として全体が疎水性材料で構成されたものを用いる。疎水性材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。なお、対向部材表面151に疎水性材料で構成された疎水性層を形成してもよい。要するに、対向部材表面151が疎水性を有していればよい。
本実施形態では、対向部材表面151における液体冷媒40の接触角θ1が、発熱体表面121における液体冷媒40の接触角θ2よりも大きいので、発熱体表面121における液体冷媒40の接触角θ2と同等以下の場合と比較して、液体冷媒40が発熱体12側により多く供給されることとなる。換言すると、発熱体表面121が濡れている時間を伸ばすことができる。このため、本実施形態によれば、発熱体12と液体冷媒40との熱交換量をより増大させることができ、冷却器の冷却能力の低下をより一層防止できる。
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、下記のように、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
(1)上記した各実施形態では、表面張力の作用によって液体冷媒40が発熱体表面121と対向部材表面151との間にブリッジされるように、発熱体12と対向部材15とを配置したが、2つの隣り合う発熱体12をそのように配置してもよい。すなわち、一方の発熱体12の発熱体表面121と、それに対向する他方の発熱体12の発熱体表面121との間に表面張力の作用によって液体冷媒40がブリッジされるように、2つの発熱体12を配置してもよい。この場合、他方の発熱体12の発熱体表面121が、一方の発熱体表面121に対向する対向面を構成する。なお、この場合、絶縁破壊防止のため、第3実施形態のように、発熱体表面121に絶縁性材料で構成された薄膜13を設けることが好ましい。
(2)上記した各実施形態では、加熱部14の発熱体収容空間14aに発熱体12が2つ配置されていたが、発熱体収容空間14aに配置される発熱体12の数は、3つ以上の複数や1つでもよい。発熱体12が1つの場合では、発熱体表面121と発熱体収容壁141の発熱体表面121に対向する対向面142との間に、表面張力の作用によって液体冷媒がブリッジされるように、発熱体表面121と対向面142の間の距離L2を設定する。
(3)上記した各実施形態において、発熱体収容空間14aおよび冷却部空間16aは、その長手方向が水平方向となるように設けられているが、例えば冷媒封入空間32が特許文献1に記載された流体容器のようにU字状に形成されていても差し支えない。
(4)上記した各実施形態では、冷却器10は、冷却部空間16aの長手方向が水平方向を向くように設置されているが、冷却部空間16a内の気液界面26の向きは冷媒の表面張力により維持されるので、冷却器10の設置向きに限定はない。
(5)上記した各実施形態において、発熱体12からの発熱が止まると、発熱体12全体が液体冷媒に浸るが、発熱体12の一部分が液体冷媒に浸るのでも差し支えない。
(6)上記した各実施形態において、冷却部16は、冷却部空間16a内の冷媒を外気と熱交換させることにより冷却するが、冷却部16まわりに冷却水が流れる配管を設け、冷媒を、その冷却水と熱交換させることにより冷却しても差し支えない。
(7)上記した各実施形態において、駆動補助装置18は錘30を備えているが、錘30は無くても差し支えない。或いは、錘30が、冷媒の振動を助長するように慣性力を付加する他の部品又は装置に置き換わっていても差し支えない。
(8)上記した各実施形態において、伸縮部28は蛇腹等で構成され上下に伸縮するが、例えばダイヤフラム等で構成されていてもよいし、或いは、冷媒の振動を吸収できれば伸縮しない構成であっても差し支えない。
(9)上記した各実施形態において、発熱体12は、冷却が必要な半導体素子などであるが、電気部品である必要はない。
(10)上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
10 冷却器
12 発熱体
121 発熱体表面
14 加熱部
14a 発熱体収容空間
15 対向部材
151 対向部材表面(対向面)
16 冷却部
16a 冷却部空間
28 伸縮部(吸収部)
28a 伸縮部空間(吸収部空間)
32 冷媒封入空間(一空間)

Claims (5)

  1. 発熱体(12)が収容される発熱体収容空間(14a)を形成しており、前記発熱体からの熱により、前記発熱体収容空間内に入っている冷媒流体を加熱し気化させる加熱部(14)と、
    前記発熱体収容空間と連通している冷却部空間(16a)を形成しており、前記加熱部で気化され前記冷却部空間へ流入してきた前記冷媒流体を冷却して液化させる冷却部(16)と、
    前記冷却部空間と連通している吸収部空間(28a)を形成しており、前記冷媒流体の加熱および冷却による体積変化を吸収する吸収部(28)とを備え、
    前記発熱体収容空間、前記冷却部空間、及び前記吸収部空間は全体として、前記冷媒流体が封入された一空間(32)を構成し、
    前記加熱部および前記冷却部は、前記冷媒流体に気化と液化とを繰り返させることにより、前記一空間内で前記冷媒流体を自励振動させるようになっており、
    前記加熱部は、前記発熱体表面(121)に対向する対向面(151、142、121)を有し、表面張力の作用によって液状の前記冷媒流体が前記発熱体表面と前記対向面との間にブリッジされるように、前記発熱体と前記対向面が配置されることを特徴とする冷却器。
  2. 前記加熱部は、前記発熱体収容空間に前記発熱体が複数配置されているとともに、隣り合う前記発熱体の間に対向部材(15)が配置されており、
    前記対向部材表面(151)が前記対向面を構成することを特徴とする請求項1に記載の冷却器。
  3. 前記発熱体表面と前記対向面の少なくとも一方は、絶縁性を有することを特徴とする請求項1または2に記載の冷却器。
  4. 前記対向面は、前記発熱体表面と比較して、液状の前記冷媒流体の接触角が大きいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の冷却器。
  5. 前記発熱体表面と前記対向面との間の距離(L1、L2)は、下記の数式で表されるラプラス長さよりも短いことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の冷却器。
    Figure 2015194315

    数式において、lはラプラス長さを示し、σは前記冷媒流体の表面張力を示し、gは重力加速度を示し、ρは前記冷媒流体の飽和液密度を示し、ρは前記冷媒流体の飽和蒸気密度を示す。
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