JP2015193905A - 耐食性金型用鋼材 - Google Patents

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Tsukasa Shirafuji
司 白藤
藤綱 宣之
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Abstract

【課題】良好な耐食性と熱伝導率とを有し、金型の材料として用いた際に外観に優れた製品を成形できる耐食性金型用鋼材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、C(炭素):0.03質量%以上0.1質量%以下、Si(ケイ素):0.2質量%以上0.6質量%以下、Mn(マンガン):0.3質量%以上0.8質量%以下、S(硫黄):0質量%以上0.006質量%以下、Ni(ニッケル):1質量%以上3質量%以下、Cr(クロム):12質量%以上14質量%以下、Mo(モリブデン):0.5質量%以上1.5質量%以下の基本成分を含み、残部がFe(鉄)及び不可避的不純物である組成を有する耐食性金型用鋼材である。耐食性金型用鋼材の金属組織がマルテンサイトを主体とし、δ−フェライト面積分率が10面積%以下であるとよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐食性金型用鋼材に関する。
近年の環境意識の高まりから、生分解性プラスチックの需要が高まっている。中でも再生可能資源であるトウモロコシ等の澱粉から化学合成されるポリ乳酸を用いるバイオプラスチックは、石油由来の汎用プラスチックと比較し焼却の際に発生するCOの発生量が少ないこと、及び植物が大気中の二酸化炭素を固定して生成した物質から製造するため地上の二酸化炭素の増減に影響を与えないこと(カーボンニュートラルであること)から注目されている。
このバイオプラスチックの製造過程で、バイオプラスチックを射出成形する際に有機酸が発生し、金型が腐食されることがある。このため、金型を形成する鋼には耐食性が要求される。この鋼の耐食性の向上にはCrやNi等の添加が有効である(特開昭63−162837号公報、特開平6−240413号公報等参照)。しかし、これらの金属を多量に添加すると、鋼の結晶格子に歪みが発生し、結晶格子の熱振動が阻害され、熱伝導率が低下する。このため、CrやNi等の金属を多量に添加した鋼を用いてバイオプラスチックを射出成形する金型を形成すると、プラスチック成形までのリードタイムが長くなり、生産性が低下する。
また、強度、耐食性及び切削性を改良した鋼として、CやNの含有量を調整し、さらにSを積極的に添加した鋼が提案されている(特開平5−171366号公報参照)。しかしながら、Sは鋼中でMnと結合して粗大なMnSを形成することがある。この粗大なMnSが形成されると、この鋼を用いた金型によりプラスチックを成形した際に点状の疵が残り、成形プラスチックの美観性が損なわれるおそれがある。
特開昭63−162837号公報 特開平6−240413号公報 特開平5−171366号公報
本発明は、上述の事情に基づいてなされたものであり、良好な耐食性と熱伝導率とを有し、金型の材料として用いた際に外観に優れた製品を成形できる耐食性金型用鋼材を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、バイオプラスチックを射出成形する際に発生する有機酸による腐食形態が主に孔食であることを知得した。そこで、本発明者らは、Mo及びCrの添加により耐孔食性を改善する一方で、耐孔食性の寄与が少ないNiの添加を抑えることで、鋼材の良好な耐食性と高い熱伝導率とが両立できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、上記課題を解決するためになされた発明は、C(炭素):0.03質量%以上0.1質量%以下、Si(ケイ素):0.2質量%以上0.6質量%以下、Mn(マンガン):0.3質量%以上0.8質量%以下、S(硫黄):0質量%以上0.006質量%以下、Ni(ニッケル):1質量%以上3質量%以下、Cr(クロム):12質量%以上14質量%以下、Mo(モリブデン):0.5質量%以上1.5質量%以下の基本成分を含み、残部がFe(鉄)及び不可避的不純物である組成を有する耐食性金型用鋼材である。
当該耐食性金型用鋼材は、Mo及びCrの含有率が上記範囲であるため、高い耐孔食性を有する。一方、当該耐食性金型用鋼材は、耐孔食性の寄与が少ないNiの含有率が上記範囲であるため、熱伝導率の低下が抑えられる。また、当該耐食性金型用鋼材は、Sの含有率が上記範囲であるため、Sが鋼中でMnと結合して粗大なMnSを形成することが抑制され、当該耐食性金型用鋼材を金型の材料として用いた際に外観に優れた製品を成形できる。従って、当該耐食性金型用鋼材は、例えばバイオプラスチックの射出成形用の耐食性金型の材料として好適に用いられる。
耐食性金型用鋼材の金属組織がマルテンサイトを主体とするとよく、δ−フェライト面積分率としては10面積%以下が好ましい。このように金属組織がマルテンサイトを主体とし、δ−フェライト面積分率が上記範囲内であることにより、耐食性金型用鋼材の硬度が高められる。その結果、金型に必要な硬さを確保し易くなる。
なお、金属組織の「主体」とは、その面積分率が全組織に対し90面積%以上占めるものをいう。また、「δ−フェライト面積分率」とは、全組織に対するδ−フェライトが存在する面積の割合を意味する。なお、マルテンサイトの面積分率は、ビレラ溶液でエッチングした耐食性金型用鋼材の断面を光学顕微鏡で写真撮影し、その顕微鏡写真を目視でマルテンサイト及びマルテンサイト以外の金属組織に分け、それらの面積比を求めることで求められる。また、δ−フェライト面積分率は、JIS−D−0555(2003)に記載の点算法に基づき、δ−フェライトを不純物と置き換えることで求められる。
以上説明したように、本発明の耐食性金型用鋼材は、良好な耐食性と熱伝導率とを有する。また、当該耐食性金型用鋼材を金型の材料として用いることで外観に優れた製品が成形できる。従って、当該耐食性金型用鋼材は、バイオプラスチックの射出成形用の耐食性金型の材料として好適に用いることができる。
以下、本発明に係る耐食性金型用鋼材の実施形態について説明する。
<金属組織>
当該耐食性金型用鋼材の金属組織は、マルテンサイトを主体とするとよい。上記マルテンサイト面積分率の下限としては、90面積%が好ましく、95面積%がより好ましい。このように金属組織がマルテンサイトを主体とすることにより、耐食性金型用鋼材の硬度が高められ、金型に必要な硬さを確保し易くなる。
また、当該耐食性金型用鋼材のδ−フェライト面積分率の上限としては、10面積%が好ましく、5面積%がより好ましい。上記δ−フェライト面積分率が上記上限を超える場合、金型に必要な硬さを確保することが困難となるおそれがある。
<組成>
当該耐食性金型用鋼材は、C:0.03質量%以上0.1質量%以下、Si:0.2質量%以上0.6質量%以下、Mn:0.3質量%以上0.8質量%以下、S:0質量%以上0.006質量%以下、Ni:1質量%以上3質量%以下、Cr:12質量%以上14質量%以下、Mo:0.5質量%以上1.5質量%以下の基本成分を含み、残部がFe及び不可避的不純物である組成を有する。
当該耐食性金型用鋼材のC含有率の下限としては、0.03質量%であり、0.04質量%が好ましい。また、当該耐食性金型用鋼材のC含有率の上限としては、0.1質量%であり、0.08質量%が好ましい。当該耐食性金型用鋼材のC含有率が上記下限未満である場合、熱伝導率が低下するおそれやC含有率を上記下限未満とするために行う脱炭工程に時間がかかり生産効率が劣るおそれがある。一方、当該耐食性金型用鋼材のC含有率が上記上限を超える場合、鋼材の結晶粒界付近においてCがCrとの炭化物を生成することで、粒界近傍のCrが不足(鋭敏化)し、耐食性が低下するおそれがある。当該耐食性金型用鋼材のC含有率を上記範囲とすることで、当該耐食性金型用鋼材の耐食性を適切に確保することができる。
当該耐食性金型用鋼材のSi含有率の下限としては、0.2質量%である。また、当該耐食性金型用鋼材のSi含有率の上限としては、0.6質量%である。当該耐食性金型用鋼材のSi含有率が上記下限未満である場合、脱酸が十分にできないおそれや、強度を確保できないおそれがある。一方、当該耐食性金型用鋼材のSi含有率が上記上限を超える場合、熱伝導率が低下するおそれや逆V偏析を助長するおそれがある。当該耐食性金型用鋼材のSi含有率を上記範囲とすることで、当該耐食性金型用鋼材の熱伝導率及び強度を適切に確保することができる。
当該耐食性金型用鋼材のMn含有率の下限としては、0.3質量%であり、0.4質量%が好ましい。また、当該耐食性金型用鋼材のMn含有率の上限としては、0.8質量%である。当該耐食性金型用鋼材のMn含有率が上記下限未満である場合、十分な強度と焼入れ性とを確保できないおそれがある。一方、当該耐食性金型用鋼材のMn含有率が上記上限を超える場合、熱伝導率が低下するおそれや焼戻し脆化を助長するおそれがある。当該耐食性金型用鋼材のMn含有率を上記範囲とすることで、当該耐食性金型用鋼材の熱伝導率、焼入れ性及び強度を適切に確保することができる。
当該耐食性金型用鋼材のS含有率の下限としては、0質量%であり、Sは含まれていなくてもよい。また、当該耐食性金型用鋼材のS含有率の上限としては、0.006質量%である。Sは、鋼中でMnと結合してMnSを形成する。このMnSが形成されることで、主鍛造方向に対して垂直方向の延性や靭性が低下するおそれがある。また、鋼材内に粗大なMnSが形成されると、例えばこの鋼を用いた金型によりプラスチックを成形した際に点状の疵が残り、成形プラスチックの美観性が損なわれるおそれがある。当該耐食性金型用鋼材のS含有率を上記範囲とすることで、当該耐食性金型用鋼材の延性及び靭性を適切に確保することができると共に、金型の材料として用いた際に外観に優れた製品を成形できる当該耐食性金型用鋼材を用いることができる。
当該耐食性金型用鋼材のNi含有率の下限としては、1質量%であり、1.2質量%が好ましい。また、当該耐食性金型用鋼材のNi含有率の上限としては、3質量%であり、2.8質量%が好ましい。当該耐食性金型用鋼材のNi含有率が上記下限未満である場合、十分な強度と焼入れ性とを確保できないおそれがある。一方、当該耐食性金型用鋼材のNi含有率が上記上限を超える場合、熱伝導率が低下するおそれがある。当該耐食性金型用鋼材のNi含有率を上記範囲とすることで、当該耐食性金型用鋼材の熱伝導率、焼入れ性及び強度を適切に確保することができる。
当該耐食性金型用鋼材のCr含有率の下限としては、12質量%である。また、当該耐食性金型用鋼材のCr含有率の上限としては、14質量%であり、13.6質量%が好ましい。当該耐食性金型用鋼材のCr含有率が上記下限未満である場合、十分な耐孔食性を確保できないおそれがある。一方、当該耐食性金型用鋼材のCr含有率が上記上限を超える場合、熱伝導率が低下するおそれやδ−フェライトが増加し金型に必要な硬さを確保することが困難となるおそれがある。当該耐食性金型用鋼材のCr含有率を上記範囲とすることで、当該耐食性金型用鋼材の熱伝導率、耐孔食性及び硬さを適切に確保することができる。
当該耐食性金型用鋼材のMo含有率の下限としては、0.5質量%である。また、当該耐食性金型用鋼材のMo含有率の上限としては、1.5質量%であり、1.45質量%が好ましい。当該耐食性金型用鋼材のMo含有率が上記下限未満である場合、十分な耐孔食性を確保できないおそれがある。一方、当該耐食性金型用鋼材のMo含有率が上記上限を超える場合、熱伝導率が低下するおそれや生成されるδ−フェライトが増加し金型に必要な硬さを確保することが困難となるおそれがある。当該耐食性金型用鋼材のMo含有率を上記範囲とすることで、当該耐食性金型用鋼材の熱伝導率、耐孔食性及び硬さを適切に確保することができる。
当該耐食性金型用鋼材は、上述した基本成分以外に残部にFe及び不可避的不純物を含む。また、不可避的不純物としては、例えば原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれるP(リン)、Sn(スズ)、As(ヒ素)、Pb(鉛)等の元素の混入が許容される。
<機械的性質>
当該耐食性金型用鋼材の焼入れ直後のビッカース硬さの下限としては、330Hvが好ましい。当該耐食性金型用鋼材の焼入れ直後のビッカース硬さが上記下限未満である場合、焼戻しによる硬さ低下により金型としての硬さが不足するおそれがある。なお、ビッカース硬さは、JIS−Z−2244(2009)に記載の試験方法に基づいて測定される値である。
当該耐食性金型用鋼材の熱伝導率の下限としては、20W/m/Kが好ましい。当該耐食性金型用鋼材の熱伝導率が上記下限未満である場合、例えばこの鋼を用いた金型によりプラスチック成形する際のリードタイムが長くなり、プラスチック製品の生産性が低くなるおそれがある。なお、熱伝導率は、レーザーフラッシュ法により求めた熱拡散率に示差操作熱量測定法により求めた比熱及び水中置換法により求めた室温の密度を乗じて算出される値である。
<製造方法>
当該耐食性金型用鋼材は、例えば溶解工程、鋳造工程、加熱工程、鍛造工程、溶体化処理工程、熱処理工程及び機械加工工程を備える製造方法により製造される。さらに当該耐食性金型用鋼材を金型加工工程により加工することでバイオプラスチックの射出成形用の金型が製造される。
(溶解工程)
溶製工程では、まず高周波溶解炉、電気炉、転炉等を用いて、上述した所定の組成に調整した鋼を溶製する。その後、その溶鋼に真空処理を施し、O(酸素)、H(水素)等のガス成分や不純元素を除去する。
(鋳造工程)
鋳造工程では、上記溶製工程で成分調整した鋼を用いてインゴット(鋼塊)を鋳造する。大型鍛鋼品用鋼の場合は、主としてインゴット鋳造が採用され、比較的小型の鍛鋼品の場合は連続鋳造法を採用することも可能である。
(加熱工程)
加熱工程では、所定の温度で所定時間、鋼塊を加熱する。低温になると材料の変形抵抗が増大するので、材料の変形能の良好な範囲で加工を行うために、加熱温度は例えば1150℃以上とする。また、鋼塊の表面と内部との温度を均一にするために所定の加熱時間が必要であり、加熱時間は例えば3時間以上とする。加熱時間は、一般的に被加工物の直径の2乗に比例すると考えられており、大型材ほど加熱保持時間は長くなる。
(鍛造工程)
鍛造工程では、加熱工程で例えば1150℃以上の温度に加熱された鋼塊を鍛造する。ザク巣やミクロポロシティ等の鋳造欠陥を圧着させるために、鍛錬成形比としては3S以上が好ましい。
(溶体化処理工程)
溶体化処理工程では、所定のミクロ組織を得るために鍛造された鋼塊(鍛造品)に熱処理を行い、炭化物を固溶体化する。溶体化処理は、鍛造品を所定の温度まで昇温速度30℃/hr以上70℃/hr以下で徐加熱し、一定時間(例えば30分以上)保持し、鍛造品の内部の温度が均質になった後に冷却する。溶体化処理は、Cr炭化物がγ層に固溶する1000℃以上で行う。ただし、高温になると旧オーステナイト結晶粒の粗大化が生じるため、溶体化処理は例えば1100℃以下で行う。特に大型材の場合、加熱時に材料の内外で温度差が生じやすいため、オーステナイト化温度(例えば850℃以上920℃以下)まで除加熱する。なお、鍛造品の表面と内部との温度を均一にするための保持時間は、一般的に被加工物の直径に依存し、大型材ほど加熱保持時間は長くなる。
溶体化後の冷却は、金型に必要な硬度を得るため、空冷、水冷、ポリマー冷却又は油冷により行う。また、鍛造品を完全に変態させるため、例えば200℃以下まで冷却する。この冷却温度が上記上限を超える場合、未変態オーステナイトが残存し、鍛造品の特性がばらつくおそれがある。
(熱処理工程)
熱処理工程では、溶体化処理を行った鍛造品の焼戻し処理を行う。鍛造品の焼戻しは、所定の温度(例えば550℃以上650℃以下)まで昇温速度30℃/hr以上70℃/hr以下で徐加熱し、一定時間(例えば5時間以上20時間以下)保持した後冷却する。焼戻しは、強度、延性及び靭性のバランスを調整すると共に、相変態で生じた内部応力(残留応力)を除去するために例えば550℃以上で行う。ただし、高温になると炭化物の粗大化、転位組織の回復等により鋼材が軟化し十分な強度が確保できないため、焼戻しは例えば650℃以下で行う。
(機械加工工程)
熱処理工程後の鍛造品から、必要に応じ表層の一部を切削又は研削を含む仕上げ機械加工を施すことで、当該耐食性金型用鋼材を得ることができる。
(金型加工工程)
さらに、マシニングセンター等を用いて当該耐食性金型用鋼材に切削加工を施すことで、耐食性金型を得ることができる。
<利点>
当該耐食性金型用鋼材は、Mo及びCrの含有率が上記範囲であるため、高い耐孔食性を有する。一方、当該耐食性金型用鋼材は、耐孔食性の寄与が少ないNiの含有率が上記範囲であるため、熱伝導率の低下が抑えられる。また、当該耐食性金型用鋼材は、Sの含有率が上記範囲であるため、Sが鋼中でMnと結合して粗大なMnSを形成することが抑制され、当該耐食性金型用鋼材を金型の材料として用いた際に外観に優れた製品を成形できる。従って、当該耐食性金型用鋼材は、例えばバイオプラスチックの射出成形用の耐食性金型の材料として好適に用いられる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[試験試料]
表1のA〜D及びG〜Kの欄に示す組成を有する鋼原料を真空溶解炉により溶解し、20kgのインゴット(鋼塊)を鋳造した。得られた鋼塊を1230℃で3時間以上加熱した後、鍛錬成形比を3S以上4S以下として熱間で鍛伸し、大気中で室温まで放冷した。その後、各鍛伸材に対し、機械的特性を確保するための熱処理(焼入れ処理)を行った。焼入れ処理の条件については、1050℃まで60℃/hrで昇温し、その温度で30分保持した後、水冷した。このようにして表2に示す実施例1〜5、比較例1〜3及び比較例6の鍛鋼品の試験試料を作成した。
また、ステンレス材料として、JIS−G−4304(2012)のステンレス鋼SUS410及びSUS431を準備した。SUS410の組成は表1のE欄に示す。また、SUS431の組成は表1のF欄に示す。このSUS410及びSUS431を用いて、比較例4及び5の試験試料を作成した。なお、表1中「−」は測定限界以下を示す。
(実施例1〜5)
実施例1〜5の試験試料は、C、Si、Mn、S、Ni、Cr及びMoの含有率が本発明の範囲内である鋼材A又は鋼材G〜Jを用いて作成したものである。
(比較例1〜3、比較例6)
比較例1〜3の試験試料は、Ni及びMoの少なくともいずれかの含有率が本発明の範囲外である鋼材B〜Dを用いて作成したものである。また、比較例6の試験試料は、Cの含有率が本発明の範囲外である鋼材Kを用いて作成したものである。
(比較例4、5)
比較例4、5は既存のSUS系材料E、Fを用いて作成したものである。これらのSUS系材料は、C、Ni、Cr及びMoの少なくともいずれかの含有率が本発明の範囲外である。
Figure 2015193905
[評価方法]
実施例1〜5及び比較例1〜6の試験試料について以下の評価を行った。
<ミクロ組織観察>
熱処理後、試験試料からミクロ組織観察用の試験片を切り出し、その試験片の表面を鍛伸方向に鏡面研磨し、ビレラ溶液でエッチングして光学顕微鏡で観察した。観察は400倍の倍率で行い、任意に5視観察してミクロ組織を判定し、5視野それぞれのマルテンサイト組織及びδ−フェライト組織を観察した。また、δ−フェライト面積分率をJIS−D−0555(2003)に記載の点算法に基づき、δ―フェライトを不純物と置き換えることで算出した。各試験試料について求めたδ−フェライト組織の面積分率を表2に示す。表2では、マルテンサイト組織を「M」、δ−フェライト組織を「D」と記載した。なお、ミクロ組織は、マルテンサイト単相(M)又はマルテンサイト及びδ−フェライト(M+D)の複合組織のいずれかであった。
<ビッカース硬さ試験>
焼入れ直後の試験試料からビッカース硬さ用の試験片を切り出し、その試験片に対し、JIS−Z−2244(2009)に記載の試験方法に基づいてビッカース硬さの測定を行った。ビッカース硬さが330Hv以上の場合、耐食性金型として十分な硬さがあると判断した。この結果を表2に示す。
<熱伝導率>
各試験試料について、100℃においてレーザーフラッシュ法により求めた熱拡散率(m/s)に示差操作熱量測定法により求めた比熱(J/kg/K)及び水中置換法により求めた密度(kg/m)を乗じて、熱伝導率(W/m/K)を算出した。熱伝導率が20W/m/K以上の場合、プラスチック成形のリードタイムが短く、生産性が高いと判断した。この結果を表2に示す。
<耐食性評価試験>
熱処理後の試験試料から長さ70mm、幅30mm、厚さ5mmの短冊状の試験片を切り出した。その試験片を酸濃度10%の木酢酸、マレイン酸及び乳酸の混合溶液に168時間浸漬した後の腐食減量を測定し、試験片の表面積で規格化した単位面積当たりの腐食減量速度を算出した。この結果を表2に示す。なお、混合溶液としては、有機酸の配合比を変えた以下の3つの条件で行った。腐食減量速度が0.1g/mm/Hr未満の場合、バイオマスプラスチック成形時に金型が腐食されにくいと判断した。
(配合条件1)
木酢酸:マレイン酸:乳酸=70:20:10である。
(配合条件2)
木酢酸:マレイン酸:乳酸=20:70:10である。
(配合条件3)
木酢酸:マレイン酸:乳酸=15:15:70である。
さらに、浸漬後の試験片の腐食形態を観察するため、耐食性評価試験後の試験片を走査型電子顕微鏡にて1000倍の倍率で腐食表面の観察を行った。下記の判断基準にて2段階で評価した。この結果を表2に示す。
(腐食形態の評価基準)
A:断面に孔食が観察されない。
B:断面に孔食が観察される。
Figure 2015193905
なお、表2中「−」は未測定であることを意味する。
[評価結果]
表2に示すようにC、Si、Mn、S、Ni、Cr及びMoの含有率が本発明の範囲内である鋼材A又は鋼材G〜Jを用いて作成した実施例1〜5は、熱伝導率が20W/m/Kより大きく、腐食減量速度が0.1g/mm/Hrより小さく、またビッカース硬さが330Hvより大きい。さらに実施例1〜5は、孔食も観察されない。従って、C、Si、Mn、S、Ni、Cr及びMoの含有率が本発明の範囲内である鋼材A又は鋼材G〜Jを用いて作成することで、良好な耐食性と熱伝導率とを有し、バイオプラスチックを射出成形用の金型として好適に用いることができることが分かる。
一方、比較例1はMoの含有率が低いため、腐食減量速度が0.1g/mm/Hrより大きくなったと考えられる。また、比較例2はNiの含有率が高いため、熱伝導率が20W/m/Kより小さくなったと考えられる。比較例3はMoの含有率が高いため、ビッカース硬さが330Hvより小さくなったと考えられる。比較例4、5はMoの含有率が低いため、腐食減量速度が0.1g/mm/Hrより大きくなったと考えられる。さらに、比較例6はCの含有率が高いため、熱伝導率が20W/m/Kより小さくなったと考えられる。
また、上記実施例1〜5及び比較例1〜6の測定結果を比較すると、Mo含有率を0.5質量%以上とすると、腐食減量速度が0.1g/mm/Hr未満となることが分かる。また、Mo含有率が1.98質量%である比較例3は、ビッカース硬さが330Hvより小さい。比較例3はδ―フェライト面積分率が10面積%を超えており、Mo含有率が高いためδ−フェライトの生成量が増加し、金型に必要な硬さを確保することが困難となっていることが分かる。このことから、鋼材のMoの含有率を本発明の範囲内とすることで耐孔食性に優れることが分かる。
さらに、上記実施例1〜5及び比較例1〜6の測定結果を比較すると、C含有率を0.1質量%以下とすると、腐食減量速度が0.1g/mm/Hr以下となることが分かる。このことから、鋼材のCの含有率を本発明の範囲内とすることで腐食減量速度を低減できることが分かる。
また、上記実施例1〜5及び比較例1〜6の測定結果を比較すると、Ni含有率を3質量%以下とすることで熱伝導率を20W/m/K以上とできることが分かる。このことから、鋼材のNiの含有率を抑えることで熱伝導率を高められることが分かる。
以上説明したように、本発明の耐食性金型用鋼材は、良好な耐食性と熱伝導率とを有する。また、当該耐食性金型用鋼材を金型の材料として用いることで外観に優れた製品が成形できる。従って、当該耐食性金型用鋼材は、バイオプラスチックの射出成形用の耐食性金型の材料として好適に用いることができる。

Claims (2)

  1. C:0.03質量%以上0.1質量%以下、
    Si:0.2質量%以上0.6質量%以下、
    Mn:0.3質量%以上0.8質量%以下、
    S:0質量%以上0.006質量%以下、
    Ni:1質量%以上3質量%以下、
    Cr:12質量%以上14質量%以下、
    Mo:0.5質量%以上1.5質量%以下
    の基本成分を含み、残部がFe及び不可避的不純物である組成を有する耐食性金型用鋼材。
  2. 金属組織がマルテンサイトを主体とし、
    δ−フェライト面積分率が10面積%以下である請求項1に記載の耐食性金型用鋼材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN115948695A (zh) * 2022-11-25 2023-04-11 烟台华新不锈钢有限公司 一种高铬马氏体不锈钢及其生产制造方法

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