JP2015189779A - 共重合ポリウレタン樹脂、エマルションおよびそれらの製造方法 - Google Patents

共重合ポリウレタン樹脂、エマルションおよびそれらの製造方法 Download PDF

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奈央子 篠沢
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Abstract

【課題】 エマルション保存中の安定性が改善された環境負荷の少ないポリウレタン、特にポリ乳酸ウレタンを提供する。【解決手段】 プレポリマー(P成分)がカルボキシル基含有ジオール(Q成分)および3官能以上のポリオール(R成分)で鎖延長されて得られる化学構造からなり、錫濃度が10mg/kg未満であり、チタン濃度が80mg/kg以上200mg/kg以下であり、前記P成分が、スルホン酸塩基を含有する親水性高分子ポリオールであるA成分と、スルホン酸塩基を有さない高分子ポリオールであるB成分と、有機ジイソシアネ−ト化合物であるC成分との重付加反応によって得られる化学構造からなる、共重合ポリウレタン樹脂。前記共重合ポリウレタン樹脂と水から主としてなり、前記Q成分が有するカルボン酸基の少なくとも一部がアミン塩を形成しており、有機溶媒および界面活性剤を含有しないエマルション。【選択図】 なし

Description

本発明は共重合高分子量ポリウレタン樹脂、これを含有するエマルションおよびこれらの製造方法に関する。前記ポリウレタン樹脂は、スルホン酸金属塩基とカルボン酸塩基を分子中に同時に併せ持つ構造を有し、従来の錫系触媒に代えてチタン系触媒により重合されているおり、乳化剤を添加することなく保存安定性に優れた生分解性エマルションを得ることができる。
ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸セグメントを有するポリ乳酸系樹脂は、植物由来原料から製造することができまた生分解性でもあることから、環境汚染防止の面から好ましい材料とみなされている。近年環境問題から塗料、インキ、コーティング剤、接着剤、粘着剤、シール剤、プライマー及び繊維製品や紙製品の各種処理剤が従来の有機溶剤系から水系化、ハイソリッド化、粉体化の方向に進みつつある。とりわけ水分散体による水系化は作業性の良さと作業環境保護の面から最も汎用的で有望視されている。
ポリ乳酸系樹脂の水分散体としては特許文献1にあるように、ポリ乳酸系樹脂自体が乳化機能を有し、水分散化のための乳化剤を必要としない自己乳化分散体が提案されている。スルホン酸塩基含有セグメントとポリ乳酸セグメントとを共重合しスルホン酸塩基をポリ乳酸系樹脂に導入することで、従来の乳化剤を使用する強制乳化分散体よりも、エマルション粒子径が小さく保存安定性に優れた水分散体が得られている。また特許文献2にあるように、乳化剤を使用しないことにより接着性に優れた接着剤を提供できることも提案されている。
ポリ乳酸系樹脂は優れた生分解性を示す一方で背反する特性として耐加水分解性が悪い。特許文献3〜特許文献6では残存重合触媒を失活させ、耐加水分解性を改善しようとしているが、得られたポリ乳酸樹脂から有機リン化合物がブリードし、環境に付加を与える可能性がある。水とポリマーが常に接触した状態にある水性エマルションでは保存中の経時加水分解の問題は特に切実である。
またポリ乳酸の反応触媒としては錫系触媒が主流で、その毒性が特に食品用途や医療用途分野では懸念されている。この様な状況で毒性の強い金属系触媒に代わる種々触媒が検討されているが、反応効率の面から十分代替可能な化合物はみつかっていない。このことはポリ乳酸関連の種々文献等に述べられており、非特許文献1の緒言にはその一例をみることが出来る。
またポリウレタン触媒も従来からジブチル錫ラウレート(DBTDL)に代表される錫系触媒が主流で毒性の低いその他触媒が検討されて来たが、ポリウレタンポリマーを効率的に高分子量化出来る代替触媒は依然見つかっていないのが現状である。ジアザビシクロウンデセン(DBU)に代表されるアミン系触媒は、DBTDL等の錫系触媒に比較して、水との反応を活性化させる機能が強く、水との反応により3次元架橋構造を積極的に進めようとするウレタンフォームの形成には適するも、アルコール性水酸基との反応によりポリマーをリニヤーに高分子量化させる目的にはそぐわない。このことは非特許文献2の緒言にも記載されている。特許文献7には錫系触媒に代えて、ビスマス触媒が提案されているが、ビスマスにしても環境にやさしい金属とは言いがたい。
WO2010/053065 特開2010−275441号公報 特開2010−111735号公報 特開2010−132871号公報 特開2010−150395号公報 WO2010/053167 特許第4220467号
Polyhedron,27,319〜320(2008) J. Appl. Polym. Sci., 65, 1217〜1218(1997)
本発明の目的は上記問題に鑑みエマルション保存中の安定性が改善された環境負荷の少ないポリウレタン、特にポリ乳酸ウレタンを提供するものである。
本発明者等は鋭意検討した結果、分子中にスルホン酸金属塩基とカルボン酸塩基を同時に含有した構造を有するポリ乳酸ウレタンをTBT(テトラブトキシチタネート)等の汎用チタン系触媒の存在下に重合することで環境にやさしい保存安定性により優れたポリ乳酸ウレタンエマルションを調製できることを見出した。
すなわち本発明は下記のとおりのものである。
[1] プレポリマー(P成分)がカルボキシル基含有ジオール(Q成分)および3官能以上のポリオール(R成分)で鎖延長されて得られる化学構造からなり、
錫濃度が10mg/kg未満であり、
チタン濃度が80mg/kg以上200mg/kg以下であり、
前記P成分が
スルホン酸塩基を含有する親水性高分子ポリオールであるA成分と
スルホン酸塩基を有さない高分子ポリオールであるB成分と
有機ジイソシアネ−ト化合物であるC成分との
重付加反応によって得られる化学構造からなる、
共重合ポリウレタン樹脂。
[2] 前記A成分が、脂肪族ヒドロキシカルボン酸がスルホン酸塩基含有ポリオールに付加して得られる化学構造からなる脂肪族ポリエステルポリオールであり、
前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸が、L−乳酸およびε−カプロラクトンまたはD−乳酸からなり、前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸の50モル%以上をL−乳酸が占めることを特徴とする、
[1]に記載の共重合ポリウレタン樹脂。
[3] 50eq/ton以上500eq/ton以下のスルホン酸塩基を有することを特徴とする[1]または[2]に記載の共重合ポリウレタン樹脂。
[4] 前記B成分の共重合比率が共重合ポリウレタン樹脂の10重量%以下であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の共重合ポリウレタン樹脂。
[5] 前記A成分に占める乳酸残基の重量分率が50%以上90%以下であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の共重合ポリウレタン樹脂。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の共重合ポリウレタン樹脂と水から主としてなり、前記Q成分が有するカルボン酸基の少なくとも一部がアミン塩を形成しており、有機溶媒および界面活性剤を含有しないエマルション。
[7] チタン系触媒の共存下で高分子ポリオールVを製造する工程(1)、
前記高分子ポリオールVとジイソシアネート化合物Wとの重付加反応によりイソシアネート基を有するプレポリマーXを製造する工程(2)、
チタン系触媒の共存下でプレポリマーXとポリオール化合物Yとの重付加反応により共重合ポリウレタン樹脂Zを製造する工程(3)、
を少なくとも有する共重合ポリウレタン樹脂の製造方法。
[8] [7]に記載の製造方法によって得られた共重合ポリウレタン樹脂Zを、アミンにより中和する工程(4)を少なくとも有する、共重合ポリウレタン樹脂含有エマルションの製造方法。
[9] 共重合ポリウレタン樹脂と水から主としてなるエマルションであって、
前記共重合ポリウレタン樹脂は、イソシアネ−ト基を少なくとも1個分子中に有するプレポリマー(P成分)が、カルボン酸基含有ジオール(Q成分)および3官能以上のポリオール(R成分)で鎖長延長されて得られる共重合ポリウレタン樹脂であり、
前記プレポリマーは、スルホン酸塩基を含有する親水性高分子ポリオール(A成分)、スルホン酸を有さない高分子ポリオール(B成分)、及び有機ジイソシアネ−ト化合物(C成分)の反応によって得られるものであり、
A成分及び前記共重合ポリウレタン樹脂はチタン系触媒により重合されているものである、
エマルション。
本発明のポリウレタン樹脂は、分子中に親水性基としてスルホン酸塩基とカルボン酸塩基を共に有するので、エマルションのpHが5〜7の弱酸性〜中性域で安定化し、長期保存安定性が向上する。また、重合触媒として、従来の錫系触媒に代えてチタン系触媒を用いることにより、残留触媒による加水分解の促進が抑制され、エマルションの長期保存性が向上する。さらに、チタンは金属の中では最も毒性が低い元素として知られており、本発明の親水性ポリウレタン樹脂は環境にやさしいエマルションとなる。
<共重合ポリウレタン樹脂>
本発明のポリウレタン樹脂は、プレポリマー(P成分)がカルボキシル基含有ジオール(Q成分)および/または3官能以上のポリオール(R成分)で鎖延長されて得られる化学構造からなり、錫濃度が10mg/kg未満であり、チタン濃度が80mg/kg以上200mg/kg以下であり、前記P成分がスルホン酸塩基を含有する親水性高分子ポリオールであるA成分とスルホン酸塩基を有さない高分子ポリオールであるB成分と有機ジイソシアネ−ト化合物であるC成分との重付加反応によって得られる化学構造からなる、共重合ポリウレタン樹脂である。錫濃度は低いほど好ましく、より好ましくは5mg/kg未満、さらに好ましくは1mg/kg未満、錫を含有しないことがよりさらに好ましい。
また、本発明のポリウレタン樹脂は、イソシアネ−ト基を少なくとも1個分子中に有するプレポリマー(P成分)が、カルボン酸基含有ジオール(Q成分)および3官能以上のポリオール(R成分)で鎖長延長されて得られる共重合ポリウレタン樹脂であり、前記プレポリマーは、スルホン酸塩基を含有する親水性高分子ポリオール(A成分)、スルホン酸を有さない高分子ポリオール(B成分)、及び有機ジイソシアネ−ト化合物(C成分)の反応によって得られるものであり、前記A成分及び前記共重合ポリウレタン樹脂はチタン系触媒により重合されているものであってもよい。
<重合触媒>
ポリウレタン樹脂の重合触媒として、従来は一般に、ポリ乳酸ベースの原料ジオールの重合触媒としてビス(2−エチルヘキサン酸)錫やウレタン重合反応促進のためのジブチルチンジラウレート等の2種の錫系触媒が組み合わされて使用されてきた。本発明者らは上記従来の錫系触媒に代えて1種のみのチタン系触媒のみで実用に十分耐える触媒効果が得られることを見出した。本発明のポリウレタン樹脂の重合に用いることのできるチタン系触媒としてはテトラアルコキシチタン、テトラアリールオキシチタン等を挙げることができるが、これらのうち、テトラブトキシチタンが反応効率とエマルションの保存安定性の面から好ましい。
チタン系触媒の添加量は、スルホン酸塩基を含有する親水性高分子ポリオール(A成分)の重合に際しては、全二塩基酸成分あるいは全ヒドロキシカルボン酸に対して0.01モル%から0.05モル%であることが好ましく、より好ましくは0.02モル%から0.04モル%、更に好ましくは0.03モル%である。0.01モル%未満では十分な触媒効果が発現せず、0.05モル%を超えると更に添加量を増やしても触媒効果に明確な差異が得られなくなる。
一方、本発明のポリウレタン樹脂の重合に際しては、A成分が既にチタン系触媒を含有しており、このチタン系触媒がポリウレタン樹脂の重合時の触媒としても機能するが、更に追加することでポリウレタン樹脂の重合反応を効率良く進行させることができる。ポリウレタン樹脂中のチタン元素の含有量は80ppmから200ppmであることが好ましく、より好ましくは90ppmから150ppm、更に好ましくは100ppmから120ppmである。80ppm未満では十分な触媒効果が得られず、ポリウレタン樹脂の重合反応時間が長くなる。一方、200ppmを越えると、更に添加量を増してもポリウレタン重合反応の効率化が進まないことと、重合反応後の樹脂中の残存チタン触媒により樹脂の保存安定性が悪化することとが懸念される。
重合触媒として従来の錫系触媒に代えてチタン系触媒を用いることにより、残留触媒による加水分解の促進が抑制され、エマルションの長期保存性が向上する。チタン触媒は錫系触媒に比較して水による失活を受けやすく、水性エマルション中では容易に失活してしまうためであると、発明者らは考えている。また、リン化合物等の添加による触媒失活の必要がない点でも、チタン系触媒は優れている。さらに、チタンは金属の中では最も毒性が低い元素として知られており、錫系触媒を用いて合成されたポリウレタン樹脂を含有するエマルションと比較すると、本発明の親水性ポリウレタン樹脂は環境にやさしいエマルションとなる。
<スルホン酸塩基を含有する親水性高分子ポリオール(A成分)>
本発明におけるA成分は、スルホン酸塩基を含有する親水性高分子ポリオールである。A成分は例えば以下の方法によって得ることができる。すなわち、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のスルホン酸塩基を有する二塩基酸或いはそのジメチルエステル化合物とその他の二塩基酸とをポリオールと重縮合することで調製することができる。前記二塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸等の芳香族二塩基酸や、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸等の脂肪族二塩基酸、或いは1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族二塩基酸を好適な例として挙げることができる。これら二塩基酸の内、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸等の脂肪族二塩基酸を用いると、生分解機能が発現しやすいため、環境負荷低減の観点から好ましい。更には琥珀酸、セバシン酸は植物由来原料であることからより好ましい。一方、前記ポリオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2−メチル−1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3−ヒドロキシプロパネート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3−オクチル−1,5−ペンタンジオール等の脂肪族ジオール類や1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシプロピル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシメトキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4ヒドロキシエトキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、3(4),8(9)−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール等の脂環族グリコール類、またビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のような芳香族系ジオールが挙げられる。これらグリコール化合物の内、1,3−プロピレングリコールは植物由来原料であり、環境負荷低減の観点から好ましい。
また、A成分は以下の方法により得ることもできる。すなわち、スルホン酸塩残基を有するポリオール化合物(a成分)に脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分を付加して得ることができる。脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分としては、L−乳酸、D−乳酸、グリコール酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド等のラクチド類、およびこれらの混合物を挙げることができる。原料の汎用性と生成する高分子ポリオールの特性から、L−乳酸とε−カプロラクトンの共重合組成が好ましい。また、原料の汎用性に加え、植物由来原料であるという点から、前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸が、L−乳酸およびε−カプロラクトンまたはD−乳酸からなり、前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸の50モル%以上をL−乳酸が占めることがより好ましい。
A成分は、スルホン酸塩基を有する二塩基酸および/またはスルホン酸塩基を有するグリコール成分とその他の二塩基酸および/またはその他のグリコールの縮合反応により得られる化学構造を有するポリエステルジオール化合物であることが、汎用溶剤への溶解性の点で好ましい。前記スルホン酸塩基を有する二塩基酸としては、イソフタル酸−5−スルホン酸塩、テレフタル酸−3−スルホン酸塩、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物−4−スルホン酸塩等を例示することができ、これらから選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。また、これらの二塩基酸のジエステル化合物であっても良い。また、これらの二塩基酸とエチレングリコール、プロピレングリコール等のジオールとのジエステル化合物を、スルホン酸塩基を有するグリコール成分として用いることができる。特に、下記一般式(1)に示す化合物であることが素原料の入手容易性と汎用溶剤への溶解性の点で特に好ましい。
(但し、Rは炭素数2〜5の2価の飽和脂肪族炭化水素基、MはLi、Na、K、四級アンモニウムまたは四級ホスホニウム、mは正の整数、nは正の整数、m+nは2〜10の整数を示す)
なお、前記一般式(1)において、前記四級アンモニウムとしては下記一般式(2)、前記四級ホスホニウムとしては下記一般式(3)であることが好ましい。
(但し、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なってもよい炭素数1〜18の炭化水素基を示す)
(但し、R5、R6、R7、R8は同一であっても異なってもよい炭素数1〜18の炭化水素基を示す)
A成分の数平均分子量は500〜6000が好ましい。500以下では汎用溶剤への溶解性が不足し、6000以上では有機ジイソシアネート成分(C成分)との反応性が低下する。
<スルホン酸塩基を有さない高分子ポリオール(B成分)>
本発明におけるB成分は、スルホン酸塩基を有さない高分子ポリオールである。B成分としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ−1,2−プロピレングリコール(PPG)、ポリ−n−ブチレングリコール(PTMG)等の汎用ポリエーテルポリオールを挙げることができるが、スルホン酸塩基を有さない高分子ポリオールであれば特に限定されない。ポリエチレングリコールが原料の汎用性の面とより均一で微粒子化されたエマルション粒子を形成できる点で特に好ましい。本発明のB成分として好適なポリエーテルポリオールの数平均分子量は好ましくは200〜6000、より好ましくは500〜4000、更に好ましくは500〜2000である。数平均分子量が300以下では原料の汎用性が無いこと、また一定重量あたりのモル分子数が多くなり、ポリウレタン樹脂中のウレタン結合が増加し、生分解特性が悪くなるため好ましくない。一方、数平均分子量が4000を超えると、分子末端の水酸基の反応性が悪くなり、重合反応時間が長くなる。また原料の汎用性も低くなり、好ましくない。
更にB成分として、一分子中に水酸基を1個のみ有するポリエチレングリコールモノアルキルエーテル等のモノヒドロキシエーテルを、生成するポリウレタン樹脂の高分子量化を阻害しない範囲で共重合することができる。モノヒドロキシエーテルは本ポリウレタン樹脂の分子末端に存在することになる。その結果、水分散化製造工程時に有機溶剤相で生成したポリウレタン樹脂が高濃度の有機溶剤溶液相から水相へとスムーズに相転移し、結果として留去させる有機溶剤量が少量で済むことで工程時間の低減による生産性の効率化と廃棄有機溶剤量の削減による環境負荷の低減化を可能とする。本発明のB成分として好適なポリエチレングリコールモノアルキルエーテルの数平均分子量は好ましくは500〜4000で、より好ましくは500から1000である。数平均分子量500未満では共重合重量当たりの分子数が多くなり、ポリウレタン樹脂の分子量が上がりにくくなる。一方、数平均分子量が4000以上では水酸基の反応性が悪くなり、未反応で残存する成分が増え、上記水分散化製造工程時に期待される効果が得られにくい。
その他、B成分としては、種々のポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等の汎用ポリオールを共重合することができ、その数平均分子量は500から4000であることが好ましい。
本発明の共重合ポリウレタン樹脂に対するB成分の共重合比率は特に限定されないが、ポリウレタンの生分解特性の点から10重量%以下であることが好ましい。
<ジイソシアネート化合物(C成分)>
本発明におけるC成分は、有機ジイソシアネ−ト化合物である。C成分としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの水添物およびm−キシレンジイソシアネートの水添物等の脂肪族ジイソシアネートおよび脂環族ジイソシアネートを挙げることができるが、これらのうち、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが汎用性の面から好ましい。
<プレポリマー(P成分)>
P成分は、A成分とB成分とC成分の重付加反応によって得られる化学構造からなるプレポリマーである。
P成分は1分子あたりに少なくとも1個以上のイソシアネート基を有しており、例えば以下の様に製造される。すなわち初めにA成分とC成分をMEK或いはトルエンとMEKの混合有機溶剤中、70℃で30分以上反応させた後、B成分を添加して少なくとも1時間以上、同温度で反応させて得られるものである。
<カルボキシル基含有ジオール(Q成分)>
Q成分は、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有するものである。具体的にはジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリン酸を挙げることができる。Q成分を共重合成分として用いることによって、本発明の共重合ポリウレタン樹脂にペンダントカルボキシル基が導入され、水分散性を向上させる効果および硬化剤との反応性を向上させる効果が発揮される。なお、本発明においてペンダントカルボキシル基とは、ポリマー主鎖の末端以外の部分に存在するカルボキシル基を指す。
Q成分の共重合比率は、A成分残基の重量分率を100%としたときのQ成分残基の重量分率が1〜6%であることが好ましく、1〜5%であることがより好ましい。Q成分(の共重合比率が高すぎると得られるエマルションの粒子安定性が悪くなる傾向があり、低すぎると硬化剤との反応性が悪くなり十分な接着強度を得られなくなる傾向がある。
スルホン酸塩基は非常に親水性の高い官能基であり、カルボン酸塩基に比較し乳化作用が強いので、より少量の官能基の導入でポリマーをエマルション化させることが可能である。しかしながらスルホン酸は非常に強い酸なので、スルホン酸塩基存在下の系中に僅かでも酸痕が存在するとスルホン酸塩基の一部が強酸として作用し、ポリマー成分の加水分解反応を促進させる。これを抑制するために水溶性アミン化合物等を単に添加すると、添加したアミン化合物により系がアルカリ化し、やはりポリマー成分の加水分解反応が促進される。また、水溶性多官能エポキシ化合物を配合して系中の酸痕を反応により除去し、ポリマー成分の加水分解を抑制することが可能であるが、過度の配合はバイオマス度の低下や架橋による生分解特性の低下を招く、との問題が生じる。一方、アミン化合物がカルボン酸アミン塩の状態で存在していると、対をなすカルボキシアニオンの影響でアルカリ機能が中和され、同時に4級アンモニウムイオンはスルホン酸アニオンのカウンターカチオンとしても作用し、スルホン酸の強酸としての機能を緩和してくれる。その結果としてポリマー成分の加水分解反応の進行が抑制され、エマルションの保存安定性が向上する。
<3官能以上のポリオール(R成分)>
R成分を共重合することにより、本発明の共重合ポリウレタン樹脂に分岐構造を形成させることができ、分子量を容易に高くできる効果を発揮する。R成分としては、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール化合物を挙げることができる。また、R成分を共重合することにより、硬化剤との反応性を向上させることが可能である。R成分としては、バイオマス度を比較的高く保つことができるので、分子量の小さいトリメチロールプロパンが好ましい。R成分の共重合比率は、本発明の共重合ポリウレタン樹脂を構成するA成分、B成分、C成分、Q成分の合計に対し、0.1モル%以上5モル%以下であることが好ましく、0.5モル%以上3モル%以下であることが更に好ましい。
<本発明の共重合ポリウレタン樹脂の好ましい物性>
本発明の共重合ポリウレタン樹脂の数平均分子量は特に限定されないが、5,000以上80,000未満であることが好ましい。より好ましくは10,000以上50,000未満、更に好ましくは15,000以上40,000未満である。数平均分子量が低すぎると共重合ポリウレタン樹脂一分子中のスルホン酸金属塩基の数が少なくなり、安定なエマルション粒子を形成しにくくなる傾向にあり、また、薄膜状に成形した際に脆くなる傾向にある。一方、数平均分子量が高すぎると、均一なエマルションが得られにくくなる。
本発明の共重合ポリウレタン樹脂の酸価は特に限定されないが、50eq/ton以上500eq/ton以下であることがより好ましく、80eq/ton以上300eq/ton以下であることがさらに好ましく、90eq/ton以上150eq/ton以下であることがよりさらに好ましい。この範囲の酸価を有する共重合ポリウレタン樹脂は、水分散性に優れ、なおかつ接着剤として用いた際に、硬化性と耐水性のバランスが良い。
本発明の共重合ポリウレタン樹脂は、50eq/ton以上500eq/ton以下のスルホン酸塩基を有することが好ましく、特に水分散性に優れるとの効果を発揮する。スルホン酸塩基の濃度は、より好ましくは80eq/ton以上300eq/ton以下、さらに好ましくは100eq/ton以上200eq/ton以下である。スルホン酸金属塩基濃度が低すぎると形成される水分散体粒子の粒子径が大きくなり、保存安定性、及びコーティング適性が低下する。また、スルホン酸金属塩基濃度が高すぎるとポリウレタン溶液の溶液粘度が高くなり、重合反応が困難となる傾向がある。ここで言及するコーティング適性とはエマルション液を基材上に塗布し、引き続き乾燥させた際、透明性に優れた平滑なコート層が得られる特性を指す。コーティング適性が悪い場合、乾燥塗膜表面が粗面になり、透明性が低下する、或いは造膜特性自体が得られず、コーティング層が形成されずにぼろぼろになったフィルムの屑が形成される。
<本発明のポリウレタン樹脂の一部変更>
C成分の一部を3官能以上のポリイソシアネートで置換することにより、本発明の共重合ポリウレタン樹脂の分子量を上げやすくすること、また硬化剤との反応性を向上させることが可能である。但し、3官能以上のポリイソシアネートの置換比率が低すぎるとこれらの効果が発揮されず、置換比率が高すぎると共重合ポリウレタン樹脂のゲル化が生じるので、3官能以上のポリイソシアネートへの置換率は0.1モル%以上5モル%以下であることが好ましく、0.5モル%以上3モル%以下であることが更に好ましい。好ましい3官能以上のポリイソシアネートとしては、トリメチロールプロパン或いはグリセリン各々1分子に対し、3分子のトリレンジイソシアネートもしくは3分子の1,6−ヘキサンジイソシアネートの付加物、さらには3分子の1,6−ヘキサンジイソシアネートで形成されるイソシアヌレート環を有する化合物を挙げることができる。
また、本発明の共重合ポリウレタン樹脂に少量のアミノアルコール化合物および/または、ジアミン化合物を共重合することにより、塗膜の強靭性を向上させることが出来る場合がある。N−メチルモノエタノールアミン、エチレンジアミン等の比較的低分子量の化合物が、バイオマス度を比較的高く保つことができ、好ましい。
<エマルション>
本発明のエマルションは、本発明の共重合ポリウレタン樹脂と水から主としてなるエマルションである。ここで主としてなるとは、エマルションを構成する固形分の50重量%以上が本発明の共重合ポリウレタン樹脂からなり、なおかつ、エマルションを構成する媒体の50重量%以上が水からなることを指す。
本発明のエマルションは、有機溶剤を含有していてもよいが、本発明の特に好ましい実施態様においては、有機溶剤を含有しないエマルションを形成することができる。また、本発明のエマルションは、界面活性剤を含有していてもよいが、本発明の特に好ましい実施態様においては、界面活性剤を含有しないエマルションを形成することができる。更には、本発明の特に好ましい実施態様においては、有機溶剤および界面活性剤の両方を含有しないエマルションを形成することができる。
本発明のエマルションの平均粒子径は特に限定されないが、200nm以下であることが好ましい。平均粒子径が大きいとエマルションの保存安定性が悪く、保存中に樹脂が沈殿し易い傾向にある。また、コーティング適性も低下し、透明で平滑なコート層が形成されにくい傾向にある。
本発明のエマルションは、まずメチルエチルケトン(以下、MEKと略記する場合がある)等の親水性有機溶剤中で共重合ポリウレタン樹脂を重合し、次いで得られた樹脂の親水性有機溶剤溶液にアミン等の塩基性物質を添加混合し、次いで水を混合し、次いで系から親水性有機溶剤を留去させる方法で調製することができるが、この方法に限ったものではない。アミン等の塩基性物質は重合後すぐに添加し保管しても良く、エマルション調製の直前に添加しても良い。また、得られた樹脂の親水性有機溶剤溶液に水を混合する前に、他の親水性有機溶剤を混合する場合もある。
本発明の特に好ましい実施態様においては、本発明の共重合ポリウレタン樹脂は有機溶剤を含有しない水性媒体中にポリマー粒子が分散した分散液として安定に保存でき、なおかつ基材に塗布可能である。一方、共溶剤としてメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の低級モノアルコール類、或いはエチルアセテート、ブチルアセテート等のアセテート類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤を任意の濃度で配合することにより、特定基材へのコーティング適性が改善される場合もある。
<本発明のエマルションの使用方法の例>
本発明のエマルションは、これ自体、塗料、インキ、コーティング剤、接着剤、粘着剤、シール剤、プライマー及び繊維製品や紙製品の各種処理剤として用いることが可能である。また、硬化剤を配合することにより、接着強度や耐溶剤性、耐水性が向上する。硬化剤としては、カルボキシル基に対して反応性を有する多官能性化合物が好適であり、具体的には、多官能カルボジイミド、多官能イソシアネート、多官能エポキシ、多官能オキサゾリン等が特に有効である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。また、部は特記のない限り重量部である。
なお、本明細書中で採用した測定、評価方法は次の通りである。
(1)スルホン酸ナトリウム塩基濃度の定量
スルホン酸ナトリウム含有ジオール原料及び共重合ポリウレタン樹脂中のスルホン酸金属塩基濃度を見積もるための手段としてナトリウム濃度の定量を行った。ナトリウムの定量は試料を加熱炭化、灰化させ、残留灰分を塩酸酸性溶液とした後、原子吸光法により定量した。検出されたナトリウムが全て試料に含まれているスルホン酸ナトリウム塩基に由来するものとみなして、スルホン酸金属塩基濃度を算出した。濃度の単位は樹脂試料10g(すなわち1ton)あたりの当量数(eq/ton)とした。
(2)スルホン酸塩基含有ジオールオリゴマーの酸価
試料(80重量%トルエン溶液)0.2gを20mlのテトラヒドロフランに溶解後、0.1N−NaOHエタノール溶液でフェノールフタレインを指示薬として測定した。測定値を樹脂固形分10g中の当量数(eq/ton)で示した。
(3)ポリマー組成
試料をクロロホルム−d/DMSO−d=1/1(重量比)混合溶媒に溶解し、ヴァリアン社製核磁気共鳴分析計(NMR)“ジェミニ−400−MR”を用い、H−NMR分析により樹脂組成比を求めた。
(4)数平均分子量
試料濃度が0.5重量%程度となるように試料をテトラヒドロフランに溶解し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブレンフィルターで濾過したものを測定用試料とした。ウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)150Cを用い、テトラヒドロフランをキャリアー溶剤とし、RI検出器を用いて流速1ml/分で測定した。カラムとして昭和電工(株)製 Shodex KF−802、KF−804、KF−806を3本連結しカラム温度は30℃に設定した。分子量標準サンプルとしてはポリスチレン標準物質を用いた。
(5)ガラス転移温度
試料5mgをアルミニウム製サンプルパンに入れて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製示差走査熱量分析計DSC−220を用いて、200℃まで、昇温速度20℃/分にて測定した。ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
(6)エマルションのpH測定
ユーテックインストルメントズ社のpH510を用い、25℃でのエマルションのpHを測定した。
(7)エマルション粒子の平均粒子径
Beckman Coulter LS 13 320を用いて0.040μmから2000μmの体積統計値に基づく算術平均による平均径を測定し、エマルション粒子の平均粒子径として採用した。平均粒子径の測定は、エマルション調製の翌日(初期)および室温20℃の恒温室にて密閉静置保管1ヶ月毎に行なった。
(8)エマルション中錫濃度の定量
ガラスビーカーにエマルションを120℃でキャストしたフィルム試料0.2gを精秤し、98%濃硫酸3mlを添加し、ホットプレートで加温。350℃まで加温し、30%過酸化水素水を適量添加して試料を完全分解した。次いで室温まで冷却後、塩酸(6M)10mlと超純水を加え50mlにメスアップしたものを測定用の試料溶液とした。試料中の錫濃度はIPC発光分析法及びICP質量分析法により求めた。
(9)エマルション中チタン濃度の定量
エマルションを120℃でキャストしたフィルム試料を0.1g精秤採取し、磁性るつぼ内で炭化・灰化した後、残渣を6M−塩酸に溶解し、IPC発光分析法によりチタン濃度を求めた。
以下、実施例中の本文及び表に示した化合物の略号はそれぞれ以下の化合物を示す。
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
MH−PEG#500:片末端がメトキシ封鎖されたポリエチレングリコール、数平均分子量500
MH−PEG#1000:片末端がメトキシ封鎖されたポリエチレングリコール、数平均分子量1000
PEG#1000:両末端が水酸基であるポリエチレングリコール、数平均分子量1000
TMP:トリメチロールプロパン
PCL:ポリカプロラクトンジオール、数平均分子量2000
TEA:トリエチルアミン
MEK:メチルエチルケトン
IPA:イソプロピルアルコール
TBT:チタン酸テトラ−n−ブチル
Sn(Oct)2:ビス(2−エチルヘキサン酸)錫
BTL:ジブチル錫ジラウレート
1)スルホン酸ナトリウム塩基含有ジオール混合物−Xの合成
温度計、攪拌棒、リービッヒ冷却管を具備した1Lガラスフラスコに2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3’−ヒドロキシプロパネート408部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル197部、テトラブチルチタネート(TBT)触媒0.1部を仕込んだ。190℃で溜出するメタノールを溜去しつつ、1時間攪拌反応後、以後1時間毎に10℃ずつ昇温させ、230℃まで到達させた。230℃でメタノールの溜出終了を確認後、250℃に昇温、10分間減圧下に攪拌し、反応物を100℃まで冷却した。次いでトルエン141部を混合し、均一溶解させた。得られた80重量%トルエン溶液中のスルホン酸金属塩基濃度及び酸価は下記のとおりであった。
スルホン酸金属塩基濃度:948eq/ton溶液
酸価 : 23eq/ton溶液
2)高分子ポリオール1の合成
原料組成と合成結果を表1にまとめた。具体な合成方法は下記のようにした。
2)−1 ポリラクチド−ラクトン共重合ジオールA1
温度計、攪拌棒、リービッヒ冷却管を具備した1Lガラスフラスコに前記スルホン酸ナトリウム塩基含有ジオール混合物−X(80重量%トルエン溶液)100部、L−ラクチド285部、ε−カプロラクトン166部、トルエン190部及び触媒としてチタン酸テトラnブチル0.34部を仕込み、窒素ガス気流下でトルエン共沸脱水しながら反応系を180℃に昇温し、3時間攪拌した。その後、系を減圧し、未反応残留モノマーを留去した。約20分後、未反応モノマーの留出が収まった後減圧を解除し、窒素ガス気流下で120℃以下に冷却してトルエンに溶解させて82重量%トルエン溶液とした。得られたポリポリラクチド−ラクトン共重合ジオールA1の数平均分子量は3100であった。また溜去された未反応残留モノマー成分を分析したところ、L−ラクチド成分が8.3重量%、ε−カプロラクトン成分が0.5重量(それぞれ仕込み重量に対する比率として)であった。
2)−2 ポリラクチド−ラクトン共重合ジオールA2、A3
上記ポリラクチド−ラクトン共重合ジオールA1と同様の方法で、但し、チタン酸テトラ−n−ブチルの添加量のみを0.23部、0.12部にして、ポリラクチド−ラクトン共重合ジオールA2、A3を得た。
2)−3 ポリラクチドジオールA4
温度計、攪拌棒、リービッヒ冷却管を具備した1Lガラスフラスコに前記スルホン酸ナトリウム塩基含有ジオール混合物−X(80重量%トルエン溶液)100部、L−ラクチド439部、D−ラクチド110部、トルエン200部及び触媒としてチタン酸テトラ−n−ブチル0.39部を仕込み、窒素ガス気流下でトルエン共沸脱水しながら反応系を180℃に昇温し、3時間攪拌した。その後、系を減圧し、未反応残留モノマーを留去した。約20分後、未反応モノマーの留出が収まった後減圧を解除し、生成物をバットに取り出した。
2)−4 ポリラクチド−ラクトン共重合ジオールA5
上記ポリラクチド−ラクトン共重合ジオールA1と同様の方法で、但し、チタン酸テトラ−n−ブチルをビス(2−エチルヘキサン酸)錫、0.14部に代えて、ポリラクチド−ラクトン共重合ジオールA5を得た。
2)−5 ポリラクチド−ラクトン共重合ジオールA6
上記ポリラクチド−ラクトン共重合ジオールA1と同じ方法で、但し、スルホン酸ナトリウム塩基含有ジオール混合物−Xに代えてネオペンチルグリコール20部を用いポリラクチド−ラクトン共重合ジオールA6を得た。窒素ガス気流下で120℃以下に冷却してトルエンに溶解させて84重量%トルエン溶液とした。
2)−6 ポリラクチドジオールA7
上記ポリラクチド−ラクトン共重合ジオールA4と同様の、但し、チタン酸テトラ−n−ブチルをビス(2−エチルヘキサン酸)錫、0.14部に代えて、ポリラクチド−ラクトン共重合ジオールA7を得た。
3)共重合ポリウレタン樹脂の合成
原料組成および合成結果を表2、表3にまとめた。
3)−1 共重合ポリウレタン樹脂UR1の合成
温度計、攪拌棒、コンデンサーを具備した1Lガラスフラスコに、高分子ポリオール1として固形分換算100部(82重量%トルエン溶液122部)のポリラクチド−ラクトン共重合ジオールA1とMEK40部とを仕込み、均一に混合した。次いで有機ジイソシアネートとしてHDIを10.7部仕込み均一混合し、系を70℃に加温した。反応触媒としてチタン酸テトラ−n−ブチルを0.02部添加し、70℃で2時間反応させた。次いでカルボキシル基含有ジオールとしてジメチロールプロピオン酸1.7部を添加し、更に3時間撹拌しつつ反応させた後、高分子ポリオール2としてMH−PEG#1000(日油(株)製ユニオックスM−1000)を6部添加した。同70℃で2時間反応させた後、3官能以上のポリオールとしてトリメチロールプロパン1.7部を添加し更に3時間反応させ、次いでMEK60部で希釈して反応を終了させ、共重合ポリウレタン樹脂UR1の固形分濃度50重量%溶液を得た。
3)−2 共重合ポリウレタン樹脂UR2、UR5、UR6、UR7
前記した共重合ポリウレタン樹脂UR1の合成と同様にして、但し、原料組成を表2の記載のように一部変更して、共重合ポリウレタン樹脂UR2、UR5、UR6、UR7の溶液を得た。
3)−3 共重合ポリウレタン樹脂UR3の合成
温度計、攪拌棒、リービッヒ冷却管を具備した1Lガラスフラスコに高分子ポリオール1としてポリラクチドジオールA4の100部をトルエン100部に溶解し、系中の水分をトルエンと水の脱水共沸により取り除くため、常圧下に75部のトルエンを溜去した。次いで冷却管を取り外し、コンデンサーを装着して40部のMEKを投入し、70℃で均一に溶解させた。更に有機ジイソシアネート化合物として14部のHDIを混合し、30分後に反応触媒として0.02部のチタン酸テトラ−n−ブチルを追加して2時間反応させた。次いでカルボキシル基含有ジオールとしてジメチロールプロピオン酸1.7部を添加し、更に3時間撹拌しつつ反応させた後、高分子ポリオール2として三洋化成工業(株)製ニューポールPEG#1000を6部添加し、同温度で更に2時間反応させた。最後に3官能以上のポリオールとしてトリメタノールプロパン1.7部を添加し、3時間反応させた後、120部のMEKで希釈し、ポリウレタン樹脂UR3の固形分濃度40重量%の溶液を得た。
3)−4 共重合ポリウレタン樹脂UR4、UR8、UR9
前記した共重合ポリウレタン樹脂UR3の合成と同様にして、但し、原料組成を表2に記載のように一部変更して、共重合ポリウレタン樹脂UR4、UR8、UR9を得た。
4)エマルションの調製
得られたエマルションおよびエマルション中に含有されているポリウレタン樹脂の物性を表4に、得られたエマルションを20℃で密閉静置保管した際のエマルション中に含有されているポリウレタン樹脂の分子量保持率を表5にまとめた。
4)−1 ポリウレタン樹脂UR1を含有するエマルションEM1の調製
共重合ポリウレタン樹脂UR1の50重量%溶液240部にトリエチルアミン1.3部を混合し、40℃で均一にした。次いでIPA(イソプロパノール)を30部混合し、均一に攪拌した。更に脱イオン水240部を同温度で攪拌しつつ徐々に投入し、投入後15分間攪拌を続ける。フラスコ内の生成物が均一攪拌されていることを確認し、減圧下に有機溶剤を溜去し始めた。フラスコ内の固形分濃度が35重量%になったら減圧蒸留操作を中止し、内容物を常温まで冷却した。
4)−2 ポリウレタン樹脂UR2、UR5を含有するエマルションEM2、EM5の調製
エマルションEM1と同様にして、但し、用いる共重合ポリウレタン樹脂を変更して、EM2、EM5を調製した。
4)−3 ポリウレタン樹脂UR3を含有するエマルションEM1の調製
共重合ポリウレタン樹脂UR3の40重量%溶液300部にトリエチルアミン1.3部を混合し、40℃で均一にした。次いでIPA(イソプロパノール)を45部混合し、均一に攪拌した。更に脱イオン水238部を同温度で攪拌しつつ徐々に投入し、投入後15分間攪拌を続ける。フラスコ内の生成物が均一攪拌されている事を確認し、減圧下に有機溶剤を溜去し始めた。フラスコ内の固形分濃度が35重量%になったら減圧蒸留操作を中止し、内容物を常温まで冷却した。
4)−4 ポリウレタン樹脂UR4、UR6、UR7、UR8、UR9を含有するエマルションEM4、EM6、EM7、EM8、EM9の調製
エマルションEM3と同様にして、但し、用いる共重合ポリウレタン樹脂を変更して、EM4、EM6、EM7、EM8、EM9を調製した。
比較例4は共重合ポリウレタン樹脂にカルボン酸基含有ジオール(Q成分)が含有されない場合である。比較例5は錫触媒を用いて合成された場合の例である。比較例6はスルホン酸塩基を含有する親水性高分子ポリオール(A成分)が共重合されていない場合である。比較例7は錫触媒を用いて合成され、かつカルボン酸基含有ジオール(Q成分)が共重合されていない場合である。比較例8と比較例9は、錫触媒を用いて合成され、かつ、スルホン酸塩基を有さない高分子ポリオール(B成分)およびカルボン酸基含有ジオール(Q成分)が共重合されていない場合の例である。
本発明のポリウレタン樹脂は、植物由来原料から製造することができ、生分解性でもあるうえに、重合触媒由来の錫を含有しない。このため、環境中に放出された際の環境汚染防止の点で好ましい材料である。また、乳化剤を添加することなく保存安定性に優れた水性エマルションを得ることができる。本発明のポリウレタン樹脂は、塗料、インキ、コーティング剤、接着剤、粘着剤、シール剤、プライマー及び繊維製品や紙製品の各種処理剤等への応用が期待できる。

Claims (9)

  1. プレポリマー(P成分)がカルボキシル基含有ジオール(Q成分)および3官能以上のポリオール(R成分)で鎖延長されて得られる化学構造からなり、
    錫濃度が10mg/kg未満であり、
    チタン濃度が80mg/kg以上200mg/kg以下であり、
    前記P成分が
    スルホン酸塩基を含有する親水性高分子ポリオールであるA成分と
    スルホン酸塩基を有さない高分子ポリオールであるB成分と
    有機ジイソシアネ−ト化合物であるC成分との
    重付加反応によって得られる化学構造からなる、
    共重合ポリウレタン樹脂。
  2. 前記A成分が、脂肪族ヒドロキシカルボン酸がスルホン酸塩基含有ポリオールに付加して得られる化学構造からなる脂肪族ポリエステルポリオールであり、
    前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸が、L−乳酸およびε−カプロラクトンまたはD−乳酸からなり、前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸の50モル%以上をL−乳酸が占めることを特徴とする、
    請求項1記載の共重合ポリウレタン樹脂。
  3. 50eq/ton以上500eq/ton以下のスルホン酸塩基を有することを特徴とする請求項1または2に記載の共重合ポリウレタン樹脂。
  4. 前記B成分の共重合比率が共重合ポリウレタン樹脂の10重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の共重合ポリウレタン樹脂。
  5. 前記A成分に占める乳酸残基の重量分率が50%以上90%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の共重合ポリウレタン樹脂。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の共重合ポリウレタン樹脂と水から主としてなり、前記Q成分が有するカルボン酸基の少なくとも一部がアミン塩を形成しており、有機溶媒および界面活性剤を含有しないエマルション。
  7. チタン系触媒の共存下で高分子ポリオールVを製造する工程(1)、
    前記高分子ポリオールVとジイソシアネート化合物Wとの重付加反応によりイソシアネート基を有するプレポリマーXを製造する工程(2)、
    チタン系触媒の共存下でプレポリマーXとポリオール化合物Yとの重付加反応により共重合ポリウレタン樹脂Zを製造する工程(3)、
    を少なくとも有する共重合ポリウレタン樹脂の製造方法。
  8. 請求項7に記載の製造方法によって得られた共重合ポリウレタン樹脂Zを、アミンにより中和する工程(4)を少なくとも有する、共重合ポリウレタン樹脂含有エマルションの製造方法。
  9. 共重合ポリウレタン樹脂と水から主としてなるエマルションであって、
    前記共重合ポリウレタン樹脂は、イソシアネ−ト基を少なくとも1個分子中に有するプレポリマー(P成分)が、カルボン酸基含有ジオール(Q成分)および3官能以上のポリオール(R成分)で鎖長延長されて得られる共重合ポリウレタン樹脂であり、
    前記プレポリマーは、スルホン酸塩基を含有する親水性高分子ポリオール(A成分)、スルホン酸を有さない高分子ポリオール(B成分)、及び有機ジイソシアネ−ト化合物(C成分)の反応によって得られるものであり、
    A成分及び前記共重合ポリウレタン樹脂はチタン系触媒により重合されているものである、
    エマルション。
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