JP2015187600A - トランジスタ型バイオセンサ - Google Patents

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豪 南
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大介 熊木
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Abstract

【課題】ヒスタミン等の生体物質を簡便に検出することができ、かつ、装置を容易に作製することができるトランジスタ型バイオセンサを提供する。
【解決手段】酸化酵素10が固定されたオスミウムポリマー9を備えており、オスミウムポリマー9が、トランジスタ上の絶縁膜7の上に設けられた金属薄膜8上に塗布成膜されているトランジスタ型バイオセンサにより、生体物質と酸化酵素とが反応して生じるしきい値電圧の変化を計測することにより、前記生体物質を検出する。
【選択図】図1

Description

本発明は、酵素反応を利用して生体物質を検出するセンサであり、特に、食品衛生管理分野に好適に適用することができるトランジスタ型バイオセンサに関する。
ヒスタミンは、下記(化1)に示す化合物であり、動物組織に広く分布するアミンの一種で、必須アミノ酸であるヒスチジンにバクテリア等が作用することにより生成される。ヒスタミンは血圧降下作用を有する物質であるが、アレルギー症状を引き起こすこともある。特に、鮮度に劣る魚類等に多く含まれ、食中毒の原因にもなる。
Figure 2015187600
したがって、食品衛生管理の観点から、食品中に含まれるヒスタミンを検出し、ヒスタミン濃度を定量することは重要である(非特許文献1参照)。
従来の検出方法は、食品からヒスタミンを抽出し、次いで、高速液体クロマトグラフ質量分析や色素反応等により行われている(非特許文献2参照)。
I.Al Bulushi, et al., Critical Reviews in Food Science and Nutrition,49, p.369-377 (2009) A.L. Cinquina, et al., Journal of Chromatography A, 1032, p.79-85(2004)
しかしながら、上記のような従来のヒスタミンの検出方法は、簡便に定量することができる方法であるとは言い難い。
したがって、食品鮮度のモニタリング等を簡便に行うために、高速液体クロマトグラフ質量分析等の大型の分析装置によらずに、食品品質検査等において生体物質を容易に検出することができる手段が求められている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ヒスタミン等の生体物質を簡便に検出することができ、かつ、装置を容易に作製することができるトランジスタ型バイオセンサを提供することを目的とするものである。
本発明に係るトランジスタ型バイオセンサは、酸化酵素が固定されたオスミウムポリマーを備えていることを特徴とする。
オスミウムポリマーと酸化酵素とを組み合わせることにより、オスミウムポリマーの酸化還元反応に伴うトランジスタ特性の変化から、様々な生体物質を検出することができる。
前記酸化酵素は、ジアミンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、グルタメートオキシダーゼ、グリセロールオキシダーゼ及びコリンオキシダーゼのうちのいずれかであることが好ましい。
このような酸化酵素を、標的物質に応じて使い分けることにより、基質特異性を有する酵素反応によって、試料中に標的物質以外の物質が存在していても影響を受けることなく検出することができる。
また、前記トランジスタ型バイオセンサは、前記オスミウムポリマーが、トランジスタ上の絶縁膜の上に設けられた金属薄膜上に塗布成膜されており、生体物質と酸化酵素とが反応して生じるしきい値電圧あるいはドレイン電流値あるいは電荷移動度の変化を計測することにより、前記生体物質を検出するものであることが好ましい。
このようなバイオセンサは、容易に作製することができ、標的物質の検出を簡便に行うことができる。
本発明によれば、標的物質である生体物質を簡便に検出することができるトランジスタ型バイオセンサが提供される。
したがって、本発明に係るトランジスタ型バイオセンサは、食品中の有害成分のモニタリングにも好適に適用することができ、特に、食品安全管理分野等において有用である。
本発明に係るトランジスタ型バイオセンサの一例の概略断面図である。 ヒスタミンの濃度変化に伴うしきい値電圧の応答を模式的に示したグラフである。 本発明に係るトランジスタ型バイオセンサの一例の概略断面図である。 実施例であるヒスタミン添加におけるゲート電圧とドレイン電流の絶対値との関係、及び、ゲート電圧とドレイン電流の絶対値の平方根との関係を示したグラフである。縦軸左は実線のグラフ、縦軸右は破線のグラフに対応する。 実施例におけるしきい値電圧の変化量とヒスタミンモル濃度の関係を示したグラフである。 実施例である乳酸添加におけるゲート電圧とドレイン電流の絶対値との関係、及び、ゲート電圧とドレイン電流の絶対値の平方根との関係を示したグラフである。縦軸左は実線のグラフ、縦軸右は破線のグラフに対応する。 実施例におけるしきい値電圧の変化量と乳酸モル濃度の関係を示したグラフである。
以下、本発明について、図面を参照して、より詳細に説明する。
本発明に係るトランジスタ型バイオセンサは、酸化酵素が固定されたオスミウムポリマーを備えていることを特徴とする。
オスミウムポリマーは、過酸化水素を検出して電子の授受を行う作用を奏するものである。このため、生体物質と反応して過酸化水素を発生する酸化酵素と組み合わせることにより、オスミウムポリマーの酸化還元反応による電子移動に基づくトランジスタ特性の変化をモニタリングし、様々な生体物質を検出することができる。
なお、オスミウムポリマーとしては、Bioanalyticalsystems社製のオスミウムポリビニルピリジン誘導体膜が市販されている。テキサス大学のA. Heller教授によって開発されたホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP:Horse Radish Peroxidease)を含むオスミウムポリマーが一般に知られている(Anal. Chem., 62, p.258-263 (1990)参照)。
前記酸化酵素としては、ジアミンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、グルタメートオキシダーゼ、グリセロールオキシダーゼ又はコリンオキシダーゼ等を用いることができる。
このような酸化酵素を固定させることにより、それぞれ、ヒスタミン、グルコース、乳酸、グルタミン酸、グリセリン、コリン等の生体物質を検出することができる。
このように、生体物質の検出は基質特異性を有する酵素反応を用いるため、標的物質以外の物質が系内(試料中)に存在していても影響を受けることなく検出することができる。
前記トランジスタ型バイオセンサは、前記オスミウムポリマーが、トランジスタ上の絶縁膜あるいはプラスチック基板の上に設けられた金属薄膜上に塗布成膜された構成であることが好ましく、このような構成により、生体物質と酸化酵素とが反応して生じるしきい値電圧の変化の計測値から、前記生体物質を検出することができる。
なお、本発明に係るトランジスタ型バイオセンサのトランジスタ部位は、公知のトランジスタ構造により構成することができ、無機トランジスタでも、有機トランジスタであってもよい。
中でも、小型で簡易的に用いることができる薄膜トランジスタ(TFT)が好ましく、この場合、基板としては、ガラス、セラミックス、金属等の無機材料の他、樹脂、紙等の有機材料等を適用することにより、フレキシブルな形態のバイオセンサを構成することができる。
有機TFTの場合は、基板としては、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリイミド、ポリパラキシリレン(パリレン(登録商標))等の樹脂、紙等を用いることができる。
ゲート電極材料としては、例えば、アルミニウム、銀、金、銅、チタン、ITO、PEDOT:PSS等が、ソース・ドレイン電極材料としては、金、銀、銅、白金、アルミニウム、PEDOT:PSS等の導電性高分子が挙げられる。
ゲート絶縁膜の構成材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、自己組織化単分子膜(SAM)、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリシルセスキオキサン、イオン液体、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標)AF、サイトップ(登録商標))等が挙げられる。
有機半導体の構成材料としては、P型の場合は、ペンタセン、ジナフトチエノチオフェン、ベンゾチエノベンゾチオフェン(Cn−BTBT)、TIPSペンタセン、TES−ADT、ルブレン、P3HT、PBTTT等を用いることができ、N型の場合は、フラーレン等を用いることができる。
封止膜(保護膜)の構成材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標)AF、サイトップ(登録商標))、ポリパラキシリレン(パリレン(登録商標))等が挙げられる。
また、TFTの作製方法は、蒸着法、スパッタリング法等のドライプロセスでも、スピンコート、バーコート、スプレーコート等による塗布、スクリーン印刷、グラビアオフセット印刷、凸版反転印刷、インクジェット印刷等の各種印刷機による印刷でもよい。印刷によれば、より効率的に低コストで作製することができる。
図1に、本発明に係るトランジスタ型バイオセンサの具体的な構成例を示す。ただし、本発明は該構成例に限定されるものではない。
図1に示すトランジスタ型バイオセンサは、例えば、以下のような工程で作製することができる。ヒスタミン検出を行うためのセンサを代表例として説明する。
まず、基板1の上にゲート電極2となる金属を蒸着し、その上に、絶縁膜3を形成する。その上に、ソース・ドレイン電極4,5を蒸着し、さらに、有機半導体(pBTTT−C16)を塗布し、半導体層(活性層)6を形成する。その上に、絶縁膜7(フッ素樹脂)により被覆し、さらに、その上に金属薄膜8(金薄膜)を蒸着する。
そして、電子移動を媒介するオスミウムポリマー9を塗布し、その上にヒスタミンの酸化酵素10であるジアミンオキシダーゼを固定化し、デバイスを作製する。
前記デバイスによるヒスタミンの検出は、ジアミンオキシダーゼ上に、ヒスタミンを含む水溶液試料を滴下する、あるいは、含水固形試料を接触させることにより行うことができる。
このように、試料調製も、従来法のような煩雑な操作を伴う固相抽出等を要さず、簡便な操作で行うことができる。
上記のようなデバイスによれば、水中に存在するヒスタミンが、酸化酵素であるジアミンオキシダーゼにより酸化され、この酸化還元反応を通じて電荷移動度またはしきい値電圧またはドレイン電流値に変化を与え、すなわち、トランジスタ特性に変化を与えることによって、標的物質であるヒスタミンが検出される。
図2に、上記のようにして作製したトランジスタ型バイオセンサによりヒスタミンを検出した際の、ヒスタミンの濃度変化に伴うトランジスタのしきい値電圧の応答の模式的なグラフを示す。図2に示したように、ヒスタミン濃度の増加に伴い、しきい値電圧も対応して増加することが認められる。
このため、しきい値電圧の変化を計測することにより、ヒスタミン濃度を簡便に定量することが可能である。
図3に、本発明に係るトランジスタ型センサの具体的な構成例を示す。図3に示すトランジスタ型センサは、ヒスタミン検出を行うためのセンサを代表例として示したものである。ただし、本発明は該構成例に限定されるものではない。
図3に示すトランジスタ型センサは、トランジスタ部位11と検出部位12である延長ゲートとから構成されている。トランジスタ部位11は、例えば、以下のような工程で作製することができる。
まず、ガラス基板13上にゲート電極14(Al、30nm)を形成し、その表面に、反応性イオンエッチング(RIE)処理によりAlOx膜を形成する。この基板をテトラデシルホスホン酸溶液に浸漬させ、ゲート絶縁膜15を形成する。次に、ソース・ドレイン電極16,17(Au、30nm)をパターニング形成する。その後、ディスペンサ装置を用いて撥液性バンク18(テフロン(登録商標)AF1600)を形成し、半導体層19(pBTTT−C16)をドロップキャスト法で形成する。基板上に、封止膜20(サイトップ(登録商標)CTL−809M)をスピンコート法により形成し、トランジスタ部位11を作製する。
図3のトランジスタ型センサの検出部位12である延長ゲートの構成及び機構を記す。具体的には、電子移動を媒介するオスミウムポリマー21を基板22上に作製した金属薄膜23の上に塗布し、その上に酸化酵素24を固定化し、デバイスを作製する。これをトランジスタ部位11と連結する。なお、Ag/AgCl電極を参照電極25とする。
この延長ゲート上に、標的物質を含む液体試料26を滴下すると、オスミウムポリマーの酸化還元反応による電子移動に基づくトランジスタ特性の変化が観測され、様々な生体物質を検出することができる。
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
上述した図3に示すような構成からなるトランジスタ型センサを用いて、ヒスタミン検出試験を行った。なお酸化酵素には、ジアミンオキシダーゼを用いた。液体試料には、pH7.4のHEPES緩衝液中にヒスタミン(0μM−40μM)を添加したものを用いた。
図4に、ヒスタミンの添加に伴うゲート電圧(VGS)とドレイン電流の絶対値(|IDS|)との関係(実線;縦軸左に対応)、及び、ゲート電圧(VGS)とドレイン電流の絶対値の平方根(|IDS|1/2)との関係(破線;縦軸右に対応)のグラフを示す。
図4に示したグラフから、ヒスタミン添加に伴うしきい値電圧の変化を確認することができ、ヒスタミン検出を行うことができることが認められた。
図5に、しきい値電圧の変化量とヒスタミンの関係を示したグラフを示す。
図5に示したグラフから、ヒスタミン濃度変化に伴うしきい値電圧の変化を確認することができ、ヒスタミン濃度変化の検出を行うことができることが認められた。また、応答は数分(5分程度)で飽和に達し、その後の応答は安定していることが確認された。
上述した図3に示すような構成からなるトランジスタ型センサを用いて、乳酸検出試験を行った。なお酸化酵素には、乳酸オキシダーゼを用いた。液体試料には、pH7.4のHEPES緩衝液中に乳酸(0μM−8μM)を添加したものを用いた。
図6に、乳酸の添加に伴うゲート電圧(VGS)とドレイン電流の絶対値(|IDS|)との関係(実線;縦軸左に対応)、及び、ゲート電圧(VGS)とドレイン電流の絶対値の平方根(|IDS|1/2)との関係(破線;縦軸右に対応)のグラフを示す。
図6に示したグラフから、乳酸添加に伴うしきい値電圧の変化を確認することができ、乳酸検出を行うことができることが認められた。
図7に、しきい値電圧の変化量と乳酸の関係を示したグラフを示す。
図7に示したグラフから、乳酸濃度変化に伴うしきい値電圧の変化を確認することができ、乳酸濃度変化の検出を行うことができることが認められた。また、応答は数分(5分程度)で飽和に達し、その後の応答は安定していることが確認された。
1,13,22 基板
2,14 ゲート電極
3,15 ゲート絶縁膜
4,16 ソース電極
5,17 ドレイン電極
6,19 半導体層
7 絶縁膜
8,23 金属薄膜
9,21 オスミウムポリマー
10,24 酸化酵素
11 トランジスタ部位
12 検出部位
18 撥液性バンク
20 封止膜
25 参照電極
26 液滴試料

Claims (3)

  1. 酸化酵素が固定されたオスミウムポリマーを備えていることを特徴とするトランジスタ型バイオセンサ。
  2. 前記酸化酵素が、ジアミンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、グルタメートオキシダーゼ、グリセロールオキシダーゼ及びコリンオキシダーゼのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1記載のトランジスタ型バイオセンサ。
  3. 前記オスミウムポリマーが、トランジスタ上の絶縁膜あるいはプラスチック基板の上に設けられた金属薄膜上に塗布成膜されており、生体物質と酸化酵素とが反応して生じるしきい値電圧の変化を計測することにより、前記生体物質を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載トランジスタ型バイオセンサ。
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