JP2015183322A - パラ型全芳香族ポリアミド繊維 - Google Patents
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中でも、魚網、釣り糸、ロープ、消波網などの水産資材用繊維には、水中での沈降性、保形性、耐久性、安全性が要求され、高比重繊維が要望されていた。特に、魚網においては、海中での形状が漁獲量に大きな影響を与えるため、繊維の比重が大きく沈降性が高いとともに、長期間の繰り返し使用に耐える高い耐久性が要求されてきた。
すなわち本発明は、パラ型全芳香族ポリアミドを含む繊維であって、平均粒径0.05μm〜1.0μmの酸化鉄(III)を該パラ型全芳香族ポリアミドに対して20〜50重量%含有するパラ型全芳香族ポリアミド繊維および該繊維を用いた魚網である。
<パラ型全芳香族ポリアミド>
本発明におけるパラ型全芳香族ポリアミドは、1種または2種以上の2価の芳香族基が、アミド結合により直接連結されたポリマーである。芳香族基には、2個の芳香環が酸素、硫黄、または、アルキレン基を介して結合されたもの、あるいは、2個以上の芳香環が直接結合したものも含む。さらに、これらの2価の芳香族基には、メチル基やエチル基等の低級アルキル基、メトキシ基、クロル基等のハロゲン基等が含まれていてもよい。なお、2価の芳香族基を直接連結するアミド結合の位置は、パラ型である。
本発明におけるパラ型全芳香族ポリアミドは、従来公知の方法にしたがって製造することができる。例えば、アミド系極性溶媒中で、芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分と芳香族ジアミン成分とを低温溶液重合、または界面重合などにより反応せしめることにより得ることができる。
(芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分)
パラ型全芳香族ポリアミドの製造において使用される芳香族ジカルボン酸クロライド成分としては、特に限定されるものではなく、一般的に公知なものを用いることができる。例えば、テレフタル酸クロライド、2−クロルテレフタル酸クロライド、2,5−ジクロルテレフタル酸クロライド、2,6−ジクロルテレフタル酸クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライドなどが挙げられる。
パラ型全芳香族ポリアミドの製造において使用される芳香族ジアミン成分としては、特に限定されるものではなく、一般的に公知なものを用いることができる。例えば、p−フェニレンジアミン、2−クロル−p−フェニレンジアミン、2,5−ジクロル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジクロル−p−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォンなどを挙げることができる。
これらのなかでは、高温熱延伸における安定性の観点から、p−フェニレンジアミンを単独で使用、あるいは併用することが好ましく、p−フェニレンジアミンと3,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの組み合わせが最も好ましい。
芳香族ジカルボン酸クロライド成分と芳香族ジアミン成分との比は、芳香族ジアミン成分に対する芳香族ジカルボン酸クロライド成分のモル比として、0.90〜1.10の範囲とすることが好ましく、0.95〜1.05の範囲とすることがより好ましい。芳香族ジカルボン酸クロライド成分のモル比が0.90未満または1.10を超える場合には、芳香族ジアミン成分との反応が十分に進まず、高い重合度が得られないため好ましくない。
芳香族ジカルボン酸クロライド成分と芳香族ジアミン成分との反応条件は、特に限定されるものではない。酸クロライドとジアミンとの反応は一般に急速であり、反応温度としては、例えば、−25℃〜100℃の範囲とすることが好ましく、−10℃〜80℃の範囲とすることがさらに好ましい。
パラ型全芳香族ポリアミドを重合する際の溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタムなどの有機極性アミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの水溶性エーテル化合物、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどの水溶性アルコール系化合物、アセトン、メチルエチルケトンなどの水溶性ケトン系化合物、アセトニトリル、プロピオニトリルなどの水溶性ニトリル化合物などが挙げられる。
これらの溶媒は、1種単独であっても、また、2種以上の混合溶媒として使用することも可能である。なお、上用いられる溶媒は、脱水されていることが望ましい。
本発明に用いられるパラ型全芳香族ポリアミドの製造においては、汎用性、有害性、取り扱い性、パラ型全芳香族ポリアミドに対する溶解性等の観点から、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いることが最も好ましい。
生成するパラ型全芳香族ポリアミドの溶解性を挙げるために、重合前、途中、終了時のいずれかに、一般に公知の無機塩を適当量添加しても差し支えない。このような無機塩としては、例えば、塩化リチウム、塩化カルシウム等が挙げられる。
また、パラ型全芳香族ポリアミドの末端は、封止することもできる。末端封止剤を用いて末端を封止する場合には、例えば、フタル酸クロライドおよびその置換体、アニリンおよびその置換体等を末端封止剤として用いることができる。
また、生成する塩化水素のごとき酸を捕捉するために、脂肪族や芳香族のアミン、第4級アンモニウム塩等を併用することもできる。
反応の終了後は、必要に応じて、塩基性の無機化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等を添加し、中和反応を実施してもよい。
上記のようにして得られるパラ型全芳香族ポリアミドは、アルコール、水等の非溶媒に投入して沈殿せしめ、パルプ状にして取り出すことができる。取り出されたパラ型全芳香族ポリアミドを再度他の溶媒に溶解し、その後に繊維の成形に供することもできるが、重合反応によって得たポリマー溶液をそのまま紡糸用溶液(ドープ)に調整して用いることも可能である。一度取り出してから再度溶解させる際に用いる溶媒としては、パラ型全芳香族ポリアミドを溶解するものであれば特に限定されるものではないが、上記パラ型全芳香族ポリアミドの重合に用いられる溶媒とすることが好ましい。
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維を製造するにあたっては、湿式紡糸法または半乾半湿式紡糸法を採用し、先ず、パラ型全芳香族ポリアミド、酸化鉄(III)、および溶媒を含む均一な紡糸用溶液(ポリマードープ)を調整し、紡糸口金から吐出する。
パラ型全芳香族ポリアミド、酸化鉄(III)、および溶媒を含む均一な紡糸用溶液(ポリマードープ)を調整する方法としては、特に限定されるものではない。例えば、パラ型全芳香族ポリアミド溶液と、酸化鉄(III)分散液とを混合する方法が挙げられる。ここで、パラ型全芳香族ポリアミド溶液と酸化鉄(III)の分散液に用いられる溶媒としては、上記したパラ型全芳香族ポリアミドの重合に用いられる溶媒を使用することができる。また、用いられる溶媒は、1種単独であっても2種以上を併用してもよい。パラ型全芳香族ポリアミドの製造によって得られたポリマー溶液から当該ポリマーを単離することなく、そのまま用いることも可能である。なお、紡糸上、パラ型全芳香族ポリアミド溶液と酸化鉄(III)の分散に用いられる溶媒は、同一であることが好ましい。
(平均粒径)
本発明に用いられる酸化鉄(III)粒子は、動的光散乱法で測定した平均粒径が、0.05〜1.00μmの範囲であり、0.05〜0.80μmの範囲であることが好ましい。ここで、本発明における「平均粒径」とは、酸化鉄(III)粒子が分散媒中に20質量%濃度で分散された状態で、動的光散乱法により測定した値である。
酸化鉄(III)粒子の平均粒径を上記範囲内にすると、酸化鉄(III)粒子自体が非常に細かいため、繊維中での粒子に起因する亀裂の発生を抑える事ができる。その結果、繊維への高い配合量を確保する事ができ、高比重の繊維とすることができる。
本発明においては、市販の酸化鉄(III)粒子を用いることも可能である。酸化鉄(III)粒子としては、種々ものが市販されており、本発明においては、それらの市販品を好ましく用いることができる。
本発明の繊維における酸化鉄(III)の含有量は、パラ型全芳香族ポリアミドに対して20〜50質量%であり、好ましくは30〜40質量%の範囲である。20質量%未満の場合には、得られる繊維の比重が十分ではない。一方で、50質量%を超える場合には、繊維成形性が乏しくなり好ましくない。
本発明の繊維の製造においては、上述の如く調整された紡糸用溶液(ドープ)を用いて、湿式紡糸法またはエアギャップを設けた半乾半湿式紡糸法によって繊維を成形する。すなわち、先ず、上記で得られた紡糸用溶液(ドープ)をノズルから吐出し、続いて、凝固浴中の凝固液に接触させて凝固糸を形成する。
凝固液から凝固糸条を引き上げた後は、公知の方法によって、最終的なパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。例えば、水洗工程を実施して形成された未延伸糸から溶媒を除去し、必要に応じて延伸を実施し、乾燥工程等を経た後に必要に応じて延伸することにより配向させ、最終的な繊維を得ることができる。
本発明の繊維は、延伸配向されていることが好ましい。延伸の方法としては特に限定されるものではなく、凝固糸状態での水洗延伸、沸水延伸のみならず、乾燥糸状態での加熱延伸等、いずれでもよい。また、延伸倍率については特に制限はないが、5倍以上であることが好ましく、8倍以上であることがさらに好ましい。延伸倍率を制御することにより、得られる芳香族ポリアミド繊維の伸度および強度を制御することができる。
熱延伸を実施する場合には、その温度は、全芳香族ポリアミドのポリマー骨格にもよるが、好ましくは300〜600℃、さらに好ましくは350〜550℃とし、また、延伸倍率は、好ましくは10倍以上、さらに好ましくは10〜15倍とする。
(引張強度)
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維の引張強度は、高い程好ましいが、酸化鉄(III)の濃度を上げるにつれて強度は低下する傾向があり、8cN/dtex未満では高強度繊維としての特長が不足する。このため、本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維の引張強度としては、8cN/dtex以上とすることが好ましく、さらに好ましくは、10cN/dtex以上である。
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維の伸度は、3.0%以上であることが好ましい。3.0%未満の場合には、撚糸して使用する場合に撚り歪が大きくなり、撚糸時の強力利用率が低下する。このため、例えば耐久性が特に要求される用途に用いた場合に、耐久性が不足する場合がある。伸度は、好ましくは3.2〜5.0%の範囲である。
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維の単糸繊度は、好ましくは0.5〜50dtexの範囲、さらに好ましくは1.0〜10dtexの範囲である。0.5dtex未満の場合には、添加された酸化鉄(III)が糸欠陥として作用し、製糸性が不安定となる場合がある。また、繊維の比表面積が大きくなるため、耐光劣化を受け易い。一方で、50dtexを超える場合には、繊維の比表面積は小さくなり、耐光劣化を受けにくい反面、比表面積が小さいために製糸工程において凝固が不完全になりやすく、その結果、紡糸や延伸工程での工程調子が乱れやすく、物性も低下しやすくなる。
実施例および比較例においては、以下の項目について、以下の方法で測定・評価を実施した。
酸化鉄(III)20質量%を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に分散した状態で、NMP分散径として測定した。NMP分散径は、「マイクロトラックMT3300EX」(日機装(株)製)を用いて、レーザー回折法により求めた。
柴田科学(株)社製の精密密度勾配管用恒温槽を用い、密度勾配管法に準じて測定した。
JIS−L−1015に準じて測定した。
引張試験機(INSTRON社製、商品名:INSTRON、型式:5565型)を用いて、ASTM D885の手順に基づき、以下の条件で測定を実施した。
(測定条件)
温度 :室温
測定試料長 :500mm
チャック引張速度 :250mm/分
初荷重 :0.2cN/dtex
JIS L0842−71に準拠し、紫外線カーボンアーク灯式耐候性試験機にて100時間で180,000kJ/m2照射前後における引張強度の測定を実施した。光照射前後の引張強度の値を用いて、以下の式により強度保持率を求めた。
強度保持率(%)=(光照射後の引張強度)/(光照射前の引張強度)×100
[紡糸用溶液(ポリマードープ)の調整]
酸化鉄(III)微粒子(戸田工業(株)製、製品名:Toda Color 130ED、平均粒子径=0.2μm、比重=5.1)を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に濃度20質量%となるように、ビーズミル(淺田鉄工(株)製、Nano Grain Mill)を用いて分散させた。このとき、メディアとして、0.3mmのジルコニアビーズを使用した。
得られた分散液を、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド(98%濃度の濃硫酸中、ポリマー濃度0.5g/dlの溶液について30℃で測定した固有粘度(IV):3.4)の濃度6質量%のNMP溶液中に添加し、攪拌機(栗本鐵工所製、KRCニーダーS1)を用いて、60℃で2時間、攪拌機の周速度が0.81m/sの条件で撹拌混合し、紡糸用溶液(ポリマードープ)を得た。このとき、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドに対する酸化鉄(III)の配合量は、30質量%となるようにした。
得られた紡糸用溶液(ポリマードープ)を用い、孔数25ホールの紡糸口金から吐出し、エアギャップ約10mmを介してNMP濃度30質量%の水溶液中に紡出して凝固させた後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、温度530℃下で10倍に延伸した後巻き取ることにより、酸化鉄(III)が良好に分散したパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
酸化鉄(III)粒子の含有量を20質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で、酸化鉄(III)が分散したパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
酸化鉄(III)粒子の含有量を50質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で、酸化鉄(III)が分散したパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
酸化鉄(III)粒子を含有量しない以外は、実施例1と同様の方法で、酸化鉄(III)が分散したパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
酸化鉄(III)粒子の含有量を60質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で、酸化鉄(III)が分散したパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
酸化鉄(III)粒子の含有量を10質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で、酸化鉄(III)が分散したパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
実施例1において酸化鉄(III)微粒子(戸田工業(株)製、製品名:Toda Color 130ED、平均粒子径=0.2μm、比重=5.1)を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に濃度20質量%となるように分散する際に、ビーズミルを用いなかった以外は、実施例1と同様の方法で、酸化鉄(III)が分散したパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1に示す。
Claims (4)
- パラ型全芳香族ポリアミドを含む繊維であって、
平均粒径0.05μm〜1.0μmの酸化鉄(III)を、該パラ型全芳香族ポリアミドに対して20〜50重量%含有するパラ型全芳香族ポリアミド繊維。 - 前記パラ型全芳香族ポリアミドが、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドである請求項1に記載のパラ型全芳香族ポリアミド繊維。
- 延伸配向されてなる、請求項1、2いずれか記載のパラ型全芳香族ポリアミド繊維。
- 請求項1〜3いずれか記載のパラ型全芳香族ポリアミド繊維を用いた魚網。
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