JP2015175715A - タイヤ特性の試験装置 - Google Patents

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鈴木 晴之
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Abstract

【課題】簡易な構造によって供試タイヤに周期的な荷重を負荷することができ、供試タイヤに対する試験荷重の設定が容易となる試験装置1の提供。
【解決手段】この試験装置1は、駆動ドラム4を備えており、この駆動ドラム4が、その内周に、ドラムの軸方向に同軸状に並列された平坦路面17及び凹凸路面18を有しており、平坦路面17は、周方向に沿って均一な半径を有しており、凹凸路面18は、周方向に沿って1周期以上の正弦波状に変化する半径を有している。
【選択図】図2

Description

本発明は、周波状の荷重を受けたときのタイヤの特性の評価方法、及び、この評価方法に用いられうる試験装置に関する。
車両は、一般的に、そのバネ下に、上下方向の共振周波数(固有振動数)を有している。この共振周波数は、多くは15Hz近傍の値である。この共振周波数は、車両の構造に起因している。タイヤ、ホイール、リンクアーム、ブレーキ等の懸架系機器が振動することによる共振である。この共振が起こると、タイヤが上下方向に振動する。タイヤに対して、周期的な(周波状の)上下変位が入力される。このため、車両のコーナリング時には、タイヤのコーナリング特性(コーナリングパワー等)が上記共振周波数で変動することがある。従って、この共振は、車両のハンドリング性能に影響を及ぼす。
タイヤのコーナリング特性を測定しうる試験機としては、フラットベルト式試験機、インサイドドラム式試験機、アウトサイドドラム式試験機等が知られている。これらの試験機を用いた場合でも、市場での現象を再現するために、供試タイヤに対して周波状の荷重変動を作用させた状態でコーナリング特性が計測される。この荷重を周期的に変動させるためには、フラットベルト式試験機のベルト、ドラム式試験機のドラム、及び、供試タイヤの支持軸の少なくともいずれかを振動させる必要がある。さらに、試験機本体への共振の悪影響を避ける目的で、試験機本体の固有振動数を上昇させるために強固な基礎が必要となる。
供試タイヤに対する周波状の半径方向荷重を負荷するために、試験機のドラムに突起を設けることが考えられる。特開2008−082709号公報、特開2008−203209号公報、及び、特開2012−137419号公報には、前述の試験とはその目的は異なるが、走行路面に突起が形成されたドラム式試験機が開示されている。これらの試験機では、ドラムの回転中は、供試タイヤに対して負荷される荷重が常時変動している。このため、予め定められている試験荷重を装置上で設定することが容易ではない。
特開2008−082709号公報 特開2008−203209号公報 特開2012−137419号公報
本発明の目的は、簡易な構造によって供試タイヤに周期的な荷重を負荷し得るとともに、供試タイヤに対する試験荷重の設定も容易な試験装置の提供、及び、この試験装置を用いた評価試験方法の提供にある。
本発明に係る試験装置は、
タイヤの特性評価試験用の装置であって、
内周面及び外周面のうちの少なくとも一方にタイヤ走行用の路面が設けられたドラムと、
このドラムを回転可能に支持するドラム支持装置と、
供試タイヤを、回転可能に支持し、且つ、上記ドラムの半径方向及び軸方向それぞれに変位させうるタイヤ支持装置と、
上記供試タイヤを回転駆動するタイヤ駆動装置、及び、上記ドラムを回転駆動するドラム駆動装置のうちの少なくとも一方とを備えており、
上記路面が、ドラムの軸方向に並列された、少なくとも一つの平坦路面、及び、少なくとも一つの凹凸路面を有しており、
上記平坦路面は、周方向に沿って均一な半径を有しており、上記凹凸路面は、周方向に沿って1周期以上の正弦波状に変化する半径を有している。
好ましくは、上記平坦路面の半径が、上記凹凸路面の正弦波状に変化する半径の最小値以上最大値以下である。
好ましくは、上記凹凸路面の正弦波の振幅中心の半径が、上記平坦路面の半径と一致させられている。
好ましくは、上記平坦路面と上記凹凸路面との接続部付近において、この両路面のうち少なくとも凹凸路面の凸領域が、接続部の段差が解消される方向に、平坦路面に向けて傾斜している。
好ましくは、上記路面のうち、少なくとも上記凹凸路面が、ドラムに対して着脱可能に構成されており、
ドラムに対して着脱可能な取り替え用凹凸路面をさらに備えており、
この取り替え用凹凸路面が、上記凹凸路面とは、その正弦波の波長及び正弦波の振幅の少なくとも一方が互いに異なり、且つ、正弦波の振幅中心の半径が一致している。
好ましくは、上記タイヤ支持装置に、供試タイヤに発生する3軸方向の各力を測定するための荷重測定器が装着されている。
本発明に係るタイヤの特性の評価方法は、
試験装置を用いてタイヤの特性を評価する方法であって、
上記試験装置が、前述したうちのいずれかに記載の試験装置であり、
供試タイヤを平坦路面に押圧させて、所望の荷重が供試タイヤに負荷されたときの、供試タイヤの中心軸の、ドラム半径方向の位置を特定する試験荷重位置特定ステップと、
供試タイヤを凹凸路面上に移動させるタイヤ移動ステップと、
供試タイヤを、上記特定された試験荷重位置まで移動させて、凹凸路面に押圧させる押圧ステップと、
供試タイヤが押圧された状態で、供試タイヤ及びドラムの少なくとも一方を回転させる回転ステップとを含んでおり、
この回転ステップにおいて、供試タイヤに発生する力を測定する。
本発明に係るタイヤの特性の他の評価方法は、
試験装置を用いてタイヤの特性を評価する方法であって、
上記試験装置が、前述した試験装置のうち、平坦路面と凹凸路面との接続部付近において、この両路面のうち少なくとも凹凸路面の凸領域が、接続部の段差が解消される方向に、相手の路面に向けて傾斜している試験装置であり、
供試タイヤを平坦路面に押圧させて、所望の荷重が供試タイヤに負荷されたときの、供試タイヤの中心軸の、ドラム半径方向の位置を特定する試験荷重位置特定ステップと、
供試タイヤを、上記試験荷重位置特定ステップにおいて特定された試験荷重位置に固定した状態のまま、凹凸路面上まで移動させるタイヤ移動ステップと、
供試タイヤが凹凸路面に移動させられた状態で、供試タイヤ及びドラムの少なくとも一方を回転させる回転ステップとを含んでおり、
この回転ステップにおいて、供試タイヤに発生する力を測定する。
本発明によれば、簡易な構造によって供試タイヤに周期的な荷重を負荷し得る。また、供試タイヤに対する試験荷重の設定が容易となる。
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの試験装置を概略的に示す一部断面正面図である。 図2は、図1の試験装置における駆動ドラムをII−II線方向に沿って見た断面図である。 図3は、図2の路面における平坦路面及び凹凸路面の各一部を概略的に示す斜視図である。 図4は、図2に示された平坦路面及び凹凸路面のそれぞれを、平面に展開して対比する断面図であり、図4(a)は平坦路面を示し、図4(b)凹凸路面を示す。 図5は、図1の試験装置において、異なる路面に移動させられる供試タイヤの動きを概略的に示す一部断面正面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
[試験装置]
図1には、本実施形態に係るタイヤの雪上性能の評価方法の実行に用いられる試験装置1が示されている。この試験装置1は、供試タイヤ(以下、単にタイヤともいう)Tが装着される図示しない試験用のリム、このリムを先端に保持したタイヤ支持装置3、及び、供試タイヤTを回転駆動しうる駆動ドラム4を備えている。駆動ドラム4は、ドラム支持装置5に回転可能に支持されている。ドラム支持装置5は、駆動ドラム4を回転させるための、電動モータ等を含む駆動装置(ドラム用駆動装置)6を備えている。駆動装置6は回転速度の制御が可能である。
図2も併せて参照すれば明らかなように、駆動ドラム4は有底円筒状を呈している。駆動ドラム4の底板7に、ドラム支持装置5の回転軸8が連結されている。回転軸8は、軸受9に支持され、駆動装置6の出力軸に連結されている。リムに装着された供試タイヤTは、駆動ドラム4の開口10側から、駆動ドラム4の内部に挿入されている。駆動ドラム4の内周面には、後述する路面16が形成されている。上記供試タイヤTは、この路面16に押圧される。路面16は、実路面のレプリカ路面である。
リムは、タイヤ支持装置3の回転軸11に支持される。タイヤ支持装置3は、この回転軸11を回転駆動するための、電動モータ等を含む駆動装置(タイヤ用駆動装置)12を備えている。駆動装置12は回転速度の制御が可能である。この駆動装置12により、供試タイヤTは、駆動ドラム4に依らなくても回転しうる。タイヤ支持装置3は、回転軸11を自由回転状態にしたり、回転軸11の回転を加速、減速、停止したりする制動機能をも有している。タイヤ支持装置3及びドラム支持装置5はともに試験架台1aに設置されている。前述の各駆動装置6、12は、いずれも、回転速度制御手段を備えている。これらの回転速度制御手段により、供試タイヤTについて、任意のスリップ率を得ることができる。ここで、スリップ率は、自動車の車体の移動速度を車体速度とし、タイヤの回転数によって特定される自動車の速度を車輪速度としたとき、下記算式で表される。
スリップ率(%)={(車体速度−車輪速度)/車体速度}×100
タイヤ支持装置3は昇降装置13を備えている。この昇降装置13により、供試タイヤTが装着されたリムが上下動させられる。この昇降装置13により、供試タイヤTは駆動ドラム4の路面16に離間接近させられる。昇降装置13は、供試タイヤTを、路面16に任意荷重で押圧させうる。この昇降装置13は、タイヤTに負荷される荷重を制御する荷重制御手段を備えている。供試タイヤTが回転自在(フリー転動)の状態で路面16に押圧され、駆動ドラム4が回転すれば、供試タイヤTは従動回転する。駆動ドラム4が回転自在の状態で、供試タイヤTが路面16に押圧されて回転駆動されると、駆動ドラム4も従動回転する。供試タイヤT及び駆動ドラム4ともに、互いに異なる所望の速度で回転駆動されると、供試タイヤTにスリップを生じさせうる。
タイヤ支持装置3は、支持したタイヤTの中心軸の方向を、駆動ドラム4の中心軸に対して、任意角度傾斜させたり、平行にしたりすることのできる軸線角度制御手段を備えている。この軸線角度制御手段により、タイヤTには、任意のキャンバー角及びスリップ角を設定することができる。
回転軸11が支持される部分には、供試タイヤに発生する少なくとも3軸方向の各力を測定するためのロードセル14が取り付けられている。ロードセル14は、駆動ドラム4から供試タイヤTに対し、ドラム半径方向に加わる反力(荷重ともいう)Fz、駆動ドラム4及び供試タイヤTの接線方向の力(前後力ともいう)Fx、及び、駆動ドラム4の軸方向に加わる反力(横力ともいう)Fyの各力、並びに、セルフアライニングトルクMz、オーバーターニングモーメントMx、及び、転がり抵抗モーメントMyの各回転力を測定しうる方向に取り付けられている。このロードセル14として、6分力ロードセルが用いられてもよい。
図2及び図3も併せて参照すれば明らかなように、上記路面16は、駆動ドラム4の軸方向に同軸状に並列された、複数種類のレプリカ路面部材を有している。本実施形態では、路面16は、平坦路面17及び凹凸路面18の二種類のレプリカ路面部材から構成されている。一の平坦路面17と複数種類の凹凸路面とが形成されてもよい。また、例えば路肌の異なる複数の平坦路面が形成されてもよい。ここでは、平坦路面17は平面ではなく、凹凸の無い円筒内周面を意味する。この平坦路面17は、周方向に沿って均一な半径R2を有する。凹凸路面18は、周方向に沿って1周期以上の正弦波状に変化する半径を有する。すなわち、凹凸路面18の軸方向に垂直な断面は、1以上の整数周期の正弦波形状にされる。
凹凸路面18の半径は、駆動ドラム4の軸方向には変化せず一定にされている。図2に示されるように、本実施形態における凹凸路面18は、4周期の正弦波形状をなしている。路面16の直径は、2.5m以上が効果的であり、3m以上がより好ましい。また、上記正弦波の波長は、3m以下が効果的であり、2m以下がより好ましい。
図2から図5では、理解容易のために、凹凸路面18の正弦波の振幅λを、実際より大きく示している。この正弦波の振幅λの絶対値は、2.0mm以上にするのが、供試タイヤTに周期的荷重を負荷する上で効果的である。
本実施形態では、平坦路面17及び凹凸路面18は、互いに略同一の幅を有している。複数の路面部材は、同一幅である必要は無い。ただし、いずれの路面部材も、供試タイヤの幅よりは大きな幅とされている。また、各路面部材は、供試タイヤに大きなスリップ角及び/又はキャンバー角が設定された場合であっても、問題の無い程度の幅にされている。本実施形態では、凹凸路面18が駆動ドラム4の開口10側に形成されており、平坦路面17が駆動ドラム4の奥側に形成されている。しかし、かかる構成には限定されず、互いに上記とは逆側に形成されてもよい。
図3に示されるように、平坦路面17及び凹凸路面18のいずれも、円筒を複数個に分割した円弧状のセグメント17a、18aから構成されている。各セグメント17a、18aは、互いに隙間無く配列されている。各セグメント17a、18aは、公知の固定具により、駆動ドラム4の内周面に着脱可能に固定される。本実施形態では、固定具としてボルト19が使用されている。各セグメント17a、18aの路面は、金属路面、アスファルト路面、コンクリート路面、砂利路面等を含む、一般道、サーキット路面等を模して形成することが可能である。路面17、18は、特に分割型には限定されない。それぞれが円筒状の一体物でもよい。
上記凹凸路面18とは異なる波長の正弦波状に形成された、取り替え用の凹凸路面を少なくとも1個用意しておくのが好ましい。上記の通り、路面17、18は、駆動ドラム4に対して交換可能に構成されている。凹凸路面18を、異なる波長の正弦波状とされた凹凸路面に交換することにより、供試タイヤTに対する荷重変動の周波数を変更することができる。駆動ドラム4の回転速度を変更すれば、凹凸路面18を変更することなく、荷重変動の周波数を変更することができる。凹凸路面18を、異なる振幅の正弦波状とされた凹凸路面に交換することにより、供試タイヤTに対する変動荷重Fzの大きさを変更することができる。また、平坦路面17及び凹凸路面18のいずれも、少なくともその半径R1、R2の異なる平坦路面及び凹凸路面に取り替えうるようにしてもよい。
図2及び図4に示されるように、本実施形態では、凹凸路面18の正弦波の振幅中心CAの半径R1が、上記平坦路面17の半径R2と一致させられている。凹凸路面18の周方向に沿った平均半径は、平坦路面17の半径R2と略同一である。なお、図4は路面16を平面に展開して示した断面図である。平坦路面17は、図4(a)の表面を半径R2の円筒状に湾曲した形状を有する。凹凸路面18は、図4(b)の振幅中心CAがなす面を半径R1の円筒状に湾曲した形状を有する。平坦路面17の半径R2は、この試験装置1による試験の目的、条件等に応じて、凹凸路面18のいかなる部位の半径に一致させてもよい。すなわち、平坦路面17の半径R2は、凹凸路面18の正弦波状に変化する半径の最小値以上最大値以下の範囲内に設定されてもよい。凹凸路面18の半径の最小値とは、図4(b)に示された凸領域CVにおける、振幅λの絶対値が最大である位置における半径をいう。半径の最大値とは、図4(b)に示された凹領域CCにおける、振幅λの絶対値が最大である位置における半径をいう。図4(b)に示されるように、本実施形態における凹凸路面18の一波長は、駆動ドラム4の中心角90°に相当している。
図3に示されるように、平坦路面17と凹凸路面18との接続部分には段差20が生じている。この段差20を解消するために、図示されていないが、平坦路面17と凹凸路面18との接続部付近は、両路面17、18のうちの少なくとも一方が、相手の路面に向けて傾斜させられるのが好ましい。これにより、両路面17、18の接続部においては、段差20が小さくされ、両路面17、18が滑らかに接続されうる。かかる構成により、供試タイヤTを、平坦路面17から、接地した状態のまま、両路面17、18の接続部分に引っ掛かることなく、スムーズに凹凸路面18に移動させることができる。この観点から、両路面17、18は、接続部において段差20が無く面一に形成されるのがさらに好ましい。
段差20解消の一例としては、図4(b)に示された凹凸路面18の凸領域CVのみが、平坦路面17との接続部付近のみ、平坦路面17に一致するように、半径方向外方に傾斜させられてもよい。この場合、この傾斜面はテーパー状となる。この構成により、凹凸路面18へ移動する供試タイヤTが引っ掛かることが無くなる。上記構成に加えて、凹領域CCの路面についても、平坦路面17との接続部付近のみ、平坦路面17に向けて半径方向内方にテーパー状に傾斜させられてもよい。又は、平坦路面17についても、凹凸路面18との接続部付近のみ、凹凸路面18に向けてテーパー状に傾斜させられてもよい。もちろん、上記の場合、平坦路面17及び凹凸路面18には、供試タイヤTが載置されて走行するべき、傾斜されていない範囲が確保される。
本実施形態に係る試験装置1は、インサイドドラム式を例にとって説明された。しかし、本発明は、かかる構成には限定されず、アウトサイドドラム式試験装置であってもよい。すなわち、駆動ドラムの外周面に平坦路面及び凹凸路面を同軸状に並設し、供試タイヤをこれらの路面上に接地させて回転駆動するように構成してもよい。また、必要に応じて、駆動ドラムの内外周の両面に平坦路面及び凹凸路面を同軸状に並設してもよい。
[コーナリング特性の評価試験]
この試験装置1を使用した走行試験により、周期的な荷重変動を伴う供試タイヤTのコーナリング特性が評価されうる。ここで、コーナリング特性とは、コーナリングフォース(横力Fy)のことであり、さらには、コーナリングパワーのことである。コーナリングパワーとは、タイヤに設定された単位スリップ角当たりのコーナリングフォースをいう。コーナリングパワーは、スリップ角の増減によってコーナリングフォースがどの程度増減するかを示す。
供試タイヤTは、試験装置1の正規リムに組み込まれる。供試タイヤは、内部に空気が充填されて正規内圧とされる。
図5に示されるように、平坦路面17は、この試験装置1を使用した走行試験において、供試タイヤTへの上下方向(ドラム半径方向)の試験荷重を設定するために使用されうる。試験荷重の設定は、コーナリング特性の評価試験の前提となる作業である。駆動ドラム4を回転させた状態で、昇降装置13により、供試タイヤTが駆動ドラム4の平坦路面17に押圧させられる。このときの供試タイヤTに対するドラム半径方向の荷重(平均荷重)Fzが、所定の試験荷重(正規荷重)Faとなったとき、昇降装置13が停止される。このときの、供試タイヤTの中心軸の、ドラム半径方向の位置が記録される。この位置が、供試タイヤTの試験荷重位置FPとなる。この試験荷重位置FPは、同軸状の凹凸路面18にも共通する。この試験荷重位置FPは、平坦路面17から供試タイヤTの中心軸までの、ドラム半径方向距離として表されうる。
凹凸路面18は、供試タイヤTの走行試験用の路面として使用されうる。図5に示されるように、平坦路面17で試験荷重位置FPが決定された供試タイヤTは、平坦路面17から持ち上げられ、ドラム軸方向に移動され、凹凸路面18上に下降される。このとき、駆動ドラム4は静止している。供試タイヤTは、凹凸路面18上において、上記試験荷重位置FPまでドラム半径方向に移動させられる。なお、両路面17、18の接続部から、凹凸路面18のほうが高くなる段差20が実質的に解消されている路面16では、供試タイヤTは、試験荷重位置FPから持ち上げられることなく、凹凸路面18上までドラム軸方向に移動させられる。
試験荷重位置FPまで下降させられるときの、タイヤTの、凹凸路面18上の周方向の位置は特に限定されない。仮に、タイヤTが最初に接地した凹凸路面18の周方向位置が、正弦波のプラスの振幅の領域内、すなわち、路面が凸状である凸領域CV内であるとする。このときは、この試験荷重位置FPでの実際のタイヤTの荷重Fzは、所定の試験荷重Faより大きくなる。これは、図5に実線で示された状態である。仮に、図示していないが、タイヤTが接地される上記周方向位置が、正弦波のマイナスの振幅の領域内、すなわち、路面が凹状である凹領域CC内であるとする。このとき、試験荷重位置FPでの実際のタイヤTの荷重Fzは、所定の試験荷重Faより小さくなる。
しかし、駆動ドラム4の回転に伴って周期的に変化するこの荷重Fzの平均値は、平坦路面17で決定された試験荷重Fa又はこれに近似した値となる。なぜなら、凹凸が正弦波状であり、且つ、その振幅中心CAの半径R1が平坦路面17の半径R2と等しいからである。この決定試験荷重Faと、試験路面(凹凸路面18)での平均荷重Fzとの同一性が確保されることにより、精度の高い試験が実施されうる。
凹凸路面18での試験荷重位置FPにある供試タイヤTには、横力Fyを発生させるために、所定のスリップ角及び所定のキャンバー角が設定されている(図示せず)。この状態で、駆動ドラム4が所定の試験速度Vで回転させられる。供試タイヤTは回転自在(フリー)にされ、駆動ドラム4の回転に従動する。供試タイヤTに所定のスリップ率を設定する場合には、供試タイヤTをも所定の速度で回転させる。試験速度Vで回転中の供試タイヤTについて、縦荷重Fz及びコーナリングフォースFyが測定され、記録される。このコーナリングフォースFyの測定値と、設定スリップ角とから、コーナリングパワーが算出される。縦荷重Fzは周期的に変動しているので、その平均値も記録される。また、上記縦荷重Fzの変動周波数が記録される。
走行試験中に、供試タイヤTに周期的に発生する縦荷重Fzの周波数f(Hz)は、凹凸路面18に形成されている正弦波の個数Nと、凹凸路面18の速度V(m/s)と、凹凸路面18の振幅中心の直径Dとから算出されうる。すなわち、f = N×V/(D×π) なる算式により算出されうる。ここで、凹凸路面18上の正弦波の個数Nは、正弦波の波長λ(m)と、上記直径D(m)とから算出されうる。すなわち、N = D×π/λ なる算式により算出されうる。これにより、前述の周波数fは、f = V/λ となる。また、タイヤTに対する縦荷重Fzの変動分は、路面16からタイヤTへ加えられる半径方向変位と、タイヤTの半径方向の剛性(縦剛性)とからも算出されうる。
本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最高負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1及び図2に示された構成を備えた実施例1の駆動ドラムを得た。駆動ドラムの詳細仕様及び試験条件は、表1に示されるとおりである。この駆動ドラムの荷重設定用路面として、図示の平坦路面17が採用された。計測用路面(試験走行用路面)としては、図示の凹凸路面18と基本的構成を同等とする路面が採用された。表1における「計測用路面の直径」は、実施例1では凹凸の振幅中心線の直径である。この実施例1の駆動ドラムを用いて、互いに構造の異なる6種類の供試タイヤについて、前述した走行試験が行われた。供試タイヤのサイズは、全て、195/65R15である。リム幅は6Jである。供試タイヤの内圧は230kKaである。設定された試験荷重は3.8kNである。全供試タイヤのスリップ角は1°であり、キャンバー角は0°であった。その結果は表1に示されるとおりである。表1中の「CP」はコーナリングパワーを示す。
[実施例2−5]
図1及び図2に示された構成を備えた実施例2から5の駆動ドラムを得た。これらの駆動ドラムの詳細仕様及び試験条件は、表1に示された以外は実施例1におけると同一である。これら実施例2から5の各駆動ドラムを用いて、実施例1におけると同じ6種類の供試タイヤについて、前述した走行試験が行われた。その結果は表1に示されるとおりである。
[比較例1]
詳細仕様及び試験条件を表1に示されるとおりとした他は実施例1と同様にして、比較例1の駆動ドラムを得た。表1に示されるとおり、比較例1の駆動ドラムは荷重設定用路面及び計測用路面ともに、正弦波状の凹凸路面である。両路面の平均直径は同一であり、正弦波の仕様も同一である。従って、荷重設定用路面における設定試験荷重は、変動する縦荷重の平均値とされた。この比較例1の駆動ドラムを用いて、実施例1におけると同じ6種類の供試タイヤについて、前述した走行試験が行われた。その結果は表1に示されるとおりである。
[設定荷重の再現性の評価]
実施例1から5及び比較例1の各駆動ドラムにおいて、各供試タイヤに対して予め定められた試験荷重(正規荷重)につき、荷重設定用路面における前述の試験荷重位置FPが決定された。計測用路面において、各供試タイヤがこの試験荷重位置FPに位置決めされた。この状態で駆動ドラムが回転させられた。計測用路面において供試タイヤへの縦荷重が測定され、記録された。この測定結果から各供試タイヤの平均荷重値が得られた。この平均荷重値から、上記の予め定められた試験荷重を減じた差が得られた。この試験が複数回(10回)実施され、上記差の標準偏差σ(単位はN)が得られた。全供試タイヤのこの差の標準偏差σが表1に示されている。
Figure 2015175715
表1に示されるように、実施例1から5は、設定荷重と実測荷重との差が小さい。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
本発明に係る試験装置及びタイヤ特性の評価方法は、乗用車のタイヤに限らず、タイヤが装着される種々の走行体のタイヤに適用しうる。
1・・・試験装置
1a・・・試験架台
3・・・タイヤ支持装置
4・・・駆動ドラム
5・・・ドラム支持装置
6・・・(ドラム用)駆動装置
7・・・(ドラムの)底板
8・・・(ドラムの)回転軸
9・・・(ドラムの)軸受け
10・・・(ドラムの)開口
11・・・(タイヤ用)回転軸
12・・・(タイヤ用)駆動装置
13・・・昇降装置
14・・・ロードセル
16・・・路面
17・・・平坦路面
18・・・凹凸路面
19・・・ボルト
20・・・段差
CA・・・(正弦波の)振幅中心
CC・・・凹領域
CV・・・凸領域
λ・・・(正弦波の)振幅
FP・・・試験荷重位置

Claims (8)

  1. タイヤの特性評価試験用の装置であって、
    内周面及び外周面の少なくとも一方にタイヤ走行用の路面が設けられたドラムと、
    このドラムを回転可能に支持するドラム支持装置と、
    供試タイヤを、回転可能に支持し、且つ、上記ドラムの半径方向及び軸方向それぞれに変位させうるタイヤ支持装置と、
    上記供試タイヤを回転駆動するタイヤ駆動装置、及び、上記ドラムを回転駆動するドラム駆動装置のうちの少なくとも一方とを備えており、
    上記路面が、ドラムの軸方向に並列された、少なくとも一つの平坦路面、及び、少なくとも一つの凹凸路面を有しており、
    上記平坦路面は、周方向に沿って均一な半径を有しており、上記凹凸路面は、周方向に沿って1周期以上の正弦波状に変化する半径を有している、試験装置。
  2. 上記平坦路面の半径が、上記凹凸路面の正弦波状に変化する半径の最小値以上最大値以下である、請求項1に記載の試験装置。
  3. 上記凹凸路面の正弦波の振幅中心の半径が、上記平坦路面の半径と一致させられている、請求項2に記載の試験装置。
  4. 上記平坦路面と上記凹凸路面との接続部付近において、この両路面のうち少なくとも凹凸路面の凸領域が、接続部の段差が解消される方向に、平坦路面に向けて傾斜している、請求項1から3のいずれかに記載の試験装置。
  5. 上記路面のうち、少なくとも上記凹凸路面が、ドラムに対して着脱可能に構成されており、
    ドラムに対して着脱可能な取り替え用凹凸路面をさらに備えており、
    この取り替え用凹凸路面が、上記凹凸路面とは、その正弦波の波長及び正弦波の振幅の少なくとも一方が互いに異なり、且つ、正弦波の振幅中心の半径が一致している、請求項1から4のいずれかに記載の試験装置。
  6. 上記タイヤ支持装置に、供試タイヤに発生する3軸方向の各力を測定するための荷重測定器が装着されている、請求項1から5のいずれかに記載の試験装置。
  7. 試験装置を用いてタイヤの特性を評価する方法であって、
    上記試験装置が、請求項1から6のいずれかに記載の試験装置であり、
    供試タイヤを平坦路面に押圧させて、所望の荷重が供試タイヤに負荷されたときの、供試タイヤの中心軸の、ドラム半径方向の位置を特定する試験荷重位置特定ステップと、
    供試タイヤを凹凸路面上に移動させるタイヤ移動ステップと、
    供試タイヤを、上記特定された試験荷重位置まで移動させて、凹凸路面に押圧させる押圧ステップと、
    供試タイヤが押圧された状態で、供試タイヤ及びドラムの少なくとも一方を回転させる回転ステップとを含んでおり、
    この回転ステップにおいて、供試タイヤに発生する力を測定する、タイヤの特性評価方法。
  8. 試験装置を用いてタイヤの特性を評価する方法であって、
    上記試験装置が、請求項4に記載の試験装置であり、
    供試タイヤを平坦路面に押圧させて、所望の荷重が供試タイヤに負荷されたときの、供試タイヤの中心軸の、ドラム半径方向の位置を特定する試験荷重位置特定ステップと、
    供試タイヤを、上記試験荷重位置特定ステップにおいて特定された試験荷重位置に固定した状態のまま、凹凸路面上まで移動させるタイヤ移動ステップと、
    供試タイヤが凹凸路面に移動させられた状態で、供試タイヤ及びドラムの少なくとも一方を回転させる回転ステップとを含んでおり、
    この回転ステップにおいて、供試タイヤに発生する力を測定する、タイヤの特性評価方法。
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