JP2015174926A - ポリ乳酸系樹脂シート - Google Patents
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Abstract
【課題】ラップフィルム用のカッターに好適なポリ乳酸系樹脂シートを提供する。
【解決手段】D体含有量が4モル%以下であるポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、平均粒子径が0.5〜7μmの無機充填剤(B)が5〜25質量部、有機結晶核剤(C)が0.5〜5質量部、コアシェル型耐衝撃改良剤(D)が1〜10質量部含有されているポリ乳酸系樹脂組成物からなるシートであって、結晶化度が8J/g以上であり、衝撃強度が0.5J以上であり、90℃処理時の熱収縮率が1%以下であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂シート。
【選択図】なし
【解決手段】D体含有量が4モル%以下であるポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、平均粒子径が0.5〜7μmの無機充填剤(B)が5〜25質量部、有機結晶核剤(C)が0.5〜5質量部、コアシェル型耐衝撃改良剤(D)が1〜10質量部含有されているポリ乳酸系樹脂組成物からなるシートであって、結晶化度が8J/g以上であり、衝撃強度が0.5J以上であり、90℃処理時の熱収縮率が1%以下であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂シート。
【選択図】なし
Description
本発明は、ポリ乳酸樹脂が主成分であって、地球環境への負荷が低い樹脂組成物からなるポリ乳酸系樹脂シートに関するものであって、詳しくは、プラスチック製ラップフィルム等のフィルムを切断するカッターに好適なポリ乳酸系樹脂シートに関するものである。
従来、ラップフィルム収納ケースのような紙製包装容器において、ラップフィルム用のカッターには、金属製やプラスチック製の鋸刃形状の部材が使用されてきた。そして近年の環境問題等への配慮から、この容器を廃棄処分する際には、カッターを容器から取り外すようになってきた。しかし、カッターの取り外しは手間が掛かるものであり、カッター部材が金属製である場合は、取り外しの際、誤って手を傷めてしまう危険性があった。また、カッター部材がプラスチック製である場合は、誤って廃棄されると、その形状をとどめたまま半永久的に放置されることとなり、環境の悪化に繋がる恐れもあった。
このような近年の環境問題等への配慮から、カッター部材に生分解性プラスチックを利用することが検討されている。例えば特許文献1、2には、ポリ乳酸系樹脂から成形されたカッターが開示されている。しかしながらこのカッターは、カッター形状への加工の際の打ち抜き不良や、刃こぼれ等の問題を解消し、加工性、カット性、耐久性を持たせるために、二軸延伸によって形成されなければならず、延伸工程を実施するためにコスト面において実用的ではないという問題があった。
一方、特許文献3には、D体含有量が5モル%のポリ乳酸樹脂とPMMAとからなる積層シートから形成されたカッターが開示されている。しかしながら、D体含有率の高いポリ乳酸樹脂を用いているために、収縮率が大きく、超音波接着時に外観不良などの問題が発生することがあった。さらに、耐衝撃性に劣るため、使用しているうちに刃こぼれするなど長期耐久性にも劣っていた。
本発明は上記のような問題点を解決し、延伸工程を経ることがなくても得ることが可能で、ラップフィルム用のカッターに好適なポリ乳酸系樹脂シートを提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)D体含有量が4モル%以下であるポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、平均粒子径が0.5〜7μmの無機充填剤(B)が5〜25質量部、有機結晶核剤(C)が0.5〜5質量部、コアシェル型耐衝撃改良剤(D)が1〜10質量部含有されているポリ乳酸系樹脂組成物からなるシートであって、
結晶化度が8J/g以上であり、衝撃強度が0.5J以上であり、90℃処理時の熱収縮率が1%以下であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂シート。
(2)さらにポリ乳酸系樹脂組成物中に、300℃、12Nにおけるメルトフローレートが20g/10分以上であるポリカーボネート樹脂(E)が、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜3質量部含有されていることを特徴とする(1)に記載のポリ乳酸系樹脂シート。
(3)延伸工程を経ずに得られたものであることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリ乳酸系樹脂シート。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂シートからなることを特徴とするフィルム用カッター。
(1)D体含有量が4モル%以下であるポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、平均粒子径が0.5〜7μmの無機充填剤(B)が5〜25質量部、有機結晶核剤(C)が0.5〜5質量部、コアシェル型耐衝撃改良剤(D)が1〜10質量部含有されているポリ乳酸系樹脂組成物からなるシートであって、
結晶化度が8J/g以上であり、衝撃強度が0.5J以上であり、90℃処理時の熱収縮率が1%以下であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂シート。
(2)さらにポリ乳酸系樹脂組成物中に、300℃、12Nにおけるメルトフローレートが20g/10分以上であるポリカーボネート樹脂(E)が、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜3質量部含有されていることを特徴とする(1)に記載のポリ乳酸系樹脂シート。
(3)延伸工程を経ずに得られたものであることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリ乳酸系樹脂シート。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂シートからなることを特徴とするフィルム用カッター。
本発明のポリ乳酸系樹脂シートを構成するポリ乳酸系樹脂組成物は、D体含有量が4モル%以下であるポリ乳酸樹脂(A)を含有するため、結晶性に優れている。つまり、結晶化速度が速いだけでなく、結晶化が十分に進行しやすいものであるため、熱収縮率が低く、寸法安定性に優れ、また耐熱性にも優れたシートを得ることが可能となる。
そして、このようなD体含有量が特定範囲のポリ乳酸樹脂(A)に有機結晶核剤(C)とコアシェル型耐衝撃改良剤(D)を特定量含有させることで、コアシェル型耐衝撃改良剤(D)を添加することによる結晶性向上を阻害する効果が小さくなり、得られる樹脂組成物は、結晶性に優れるととともに、コアシェル型耐衝撃改良剤(D)による耐衝撃性付与効果もより向上したものとなる。さらに、平均粒子径が特定の無機充填剤(B)を含有していることにより、寸法安定性をさらに向上させることができ、本発明のシートより各種製品を得る際の加工性が良好となる。
そして、このようなD体含有量が特定範囲のポリ乳酸樹脂(A)に有機結晶核剤(C)とコアシェル型耐衝撃改良剤(D)を特定量含有させることで、コアシェル型耐衝撃改良剤(D)を添加することによる結晶性向上を阻害する効果が小さくなり、得られる樹脂組成物は、結晶性に優れるととともに、コアシェル型耐衝撃改良剤(D)による耐衝撃性付与効果もより向上したものとなる。さらに、平均粒子径が特定の無機充填剤(B)を含有していることにより、寸法安定性をさらに向上させることができ、本発明のシートより各種製品を得る際の加工性が良好となる。
つまり、本発明によれば、上記のような特定の組成を満足するポリ乳酸系樹脂組成物を用いることによって、延伸工程を経ることなく、結晶化度、衝撃強度、熱収縮率が特定の値を満足するポリ乳酸系樹脂シートを得ることができる。このため、コスト面に関して実用的であり、また、生産も容易であるのみならず、ラップフィルム用のカッターに好適なものであり、カッターを得る際の打ち抜き性に優れるとともに、フィルムのカット性、耐久性にも優れたカッターを得ることができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、低環境負荷材料であるポリ乳酸樹脂の使用範囲を大きく広げることができ、産業上の利用価値はきわめて高い。
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、低環境負荷材料であるポリ乳酸樹脂の使用範囲を大きく広げることができ、産業上の利用価値はきわめて高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸系樹脂シートを構成するポリ乳酸系樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ということがある)は、ポリ乳酸樹脂(A)、無機充填剤(B)、有機結晶核剤(C)およびコアシェル型耐衝撃改良剤(D)を特定量含有する。
本発明のポリ乳酸系樹脂シートを構成するポリ乳酸系樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ということがある)は、ポリ乳酸樹脂(A)、無機充填剤(B)、有機結晶核剤(C)およびコアシェル型耐衝撃改良剤(D)を特定量含有する。
まず、ポリ乳酸樹脂(A)について説明する。
本発明においてポリ乳酸系樹脂組成物を構成するポリ乳酸樹脂(A)は、D体含有量が4.0モル%以下であることが必要であり、中でも、0.1〜2.0モル%であることが好ましく、さらには0.1〜1.5モル%であることが好ましい。
D体含有量がこの範囲内であることにより、ポリ乳酸樹脂(A)は、結晶性に優れる。つまり、結晶化速度が速いだけでなく、結晶化が十分に進行しやすいものであるため、短い成形サイクルで熱収縮率が低く、寸法安定性に優れるとともに耐熱性にも優れたシートを得ることが可能となる。また、後述する有機結晶核剤(C)を含有することによりさらに結晶性に優れるものとなる。
本発明においてポリ乳酸系樹脂組成物を構成するポリ乳酸樹脂(A)は、D体含有量が4.0モル%以下であることが必要であり、中でも、0.1〜2.0モル%であることが好ましく、さらには0.1〜1.5モル%であることが好ましい。
D体含有量がこの範囲内であることにより、ポリ乳酸樹脂(A)は、結晶性に優れる。つまり、結晶化速度が速いだけでなく、結晶化が十分に進行しやすいものであるため、短い成形サイクルで熱収縮率が低く、寸法安定性に優れるとともに耐熱性にも優れたシートを得ることが可能となる。また、後述する有機結晶核剤(C)を含有することによりさらに結晶性に優れるものとなる。
本発明における樹脂組成物は、後述するコアシェル型耐衝撃改良剤(D)を含有することにより、耐衝撃性が向上するが、D体含有量が上記範囲のポリ乳酸樹脂を用いると、耐衝撃性が大幅に向上し、耐久性も向上する。つまり、D体含有量が4.0モル%を超えるポリ乳酸樹脂にコアシェル型耐衝撃改良剤(D)を添加すると、耐衝撃性を付与することはできるが、結晶性が低下する。しかしながら、上記したD体含有量が4.0モル%以下であるポリ乳酸樹脂(A)と特定の有機結晶核剤(C)により結晶性が向上したポリ乳酸系樹脂組成物においては、結晶性が良好なまま、耐衝撃性を付与することが可能となる。
しかも、このように結晶性が向上した樹脂組成物中においては、コアシェル型耐衝撃改良剤(D)の効果が十分に発揮され、耐衝撃性も大幅に向上する。したがって、D体含有量が4.0モル%を超えるポリ乳酸樹脂であると、結晶性が向上せず、また耐衝撃性の大幅な向上も見られない。さらに、このような樹脂組成物からなるシートは熱収縮も大きく、寸法安定性にも劣るものとなる。
しかも、このように結晶性が向上した樹脂組成物中においては、コアシェル型耐衝撃改良剤(D)の効果が十分に発揮され、耐衝撃性も大幅に向上する。したがって、D体含有量が4.0モル%を超えるポリ乳酸樹脂であると、結晶性が向上せず、また耐衝撃性の大幅な向上も見られない。さらに、このような樹脂組成物からなるシートは熱収縮も大きく、寸法安定性にも劣るものとなる。
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量とは、ポリ乳酸樹脂(A)を構成する総乳酸単位のうち、D乳酸単位が占める割合(モル%)である。したがって、例えば、D体含有量が1.0モル%のポリ乳酸樹脂(A)の場合、このポリ乳酸樹脂(A)は、D乳酸単位が占める割合が1.0モル%であり、L乳酸単位が占める割合が99.0モル%である。
本発明においては、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量は、実施例にて後述するように、ポリ乳酸樹脂(A)を分解して得られるL乳酸とD乳酸を全てメチルエステル化し、L乳酸のメチルエステルとD乳酸のメチルエステルとをガスクロマトグラフィー分析機で分析する方法により算出するものである。
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)としては、市販の各種ポリ乳酸樹脂のうち、D体含有量が本発明で規定する範囲のポリ乳酸樹脂を用いることができる。また、乳酸の環状2量体であるラクチドのうち、D体含有量が十分に低いL−ラクチドを原料に用い、公知の溶融重合法で、あるいは、さらに固相重合法を併用して製造したものを用いることができる。
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)は、重量平均分子量が8万〜30万であることが好ましく、中でも10万〜25万であることがより好ましく、12万〜20万であることがさらに好ましい。ポリ乳酸樹脂(A)は、重量平均分子量が8万未満であると、実用的な強度や耐久性を有するシートを得ることが困難となりやすい。一方、ポリ乳酸樹脂(A)は、重量平均分子量が30万を超えると、流動性が低く、溶融押出が困難となりやすいことがある。シートを作製する際、押出機の昇圧などが問題になることがある。
なお、ポリ乳酸樹脂(A)の重量平均分子量は、後述のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析する方法により算出する。
なお、ポリ乳酸樹脂(A)の重量平均分子量は、後述のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析する方法により算出する。
ポリ乳酸樹脂(A)は、190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が、0.1〜50g/10分であることが好ましく、中でも0.3〜30g/10分であることがより好ましく、1〜15g/10分であることがさらに好ましい。メルトフローレートが50g/10分を超える場合は、溶融粘度が低すぎて、得られるシートの機械的特性や耐熱性が劣るものとなりやすい。メルトフローレートが0.1g/10分未満の場合は、成形加工時の負荷が高くなりすぎて操業性が低下する場合がある。
なお、本発明におけるポリ乳酸系樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)の割合は、50質量%以上であることが好ましく、中でも60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)の割合が50質量%未満であると、結晶性に優れたポリ乳酸樹脂(A)の特性を生かすことができない。
次に無機充填剤(B)について説明する。
本発明のポリ乳酸系樹脂シートを構成するポリ乳酸系樹脂組成物は、無機充填剤(B)を含有することで、得られるシートのソリが低減できるだけでなく、寸法安定性が付与され、打抜き加工時の打ち抜き性を向上させることができる。
無機充填剤(B)としては、タルク、シリカ、スメクタイト、バーミキュライト、膨潤性フッ素雲母などに代表される層状珪酸塩などが好ましい。これらは、後述する有機結晶核剤(C)との相乗効果によって、結晶化度を大きく向上させることができる。これらの無機充填剤は2種以上組み合わせて用いてもよい。中でもタルクは、ポリ乳酸樹脂(A)に対して最も結晶化効率の高い無機物質であることが知られており、また、非常に安価で、しかも自然界に存在するため、工業的にも有利で地球環境にも負荷を与えないものである。
本発明のポリ乳酸系樹脂シートを構成するポリ乳酸系樹脂組成物は、無機充填剤(B)を含有することで、得られるシートのソリが低減できるだけでなく、寸法安定性が付与され、打抜き加工時の打ち抜き性を向上させることができる。
無機充填剤(B)としては、タルク、シリカ、スメクタイト、バーミキュライト、膨潤性フッ素雲母などに代表される層状珪酸塩などが好ましい。これらは、後述する有機結晶核剤(C)との相乗効果によって、結晶化度を大きく向上させることができる。これらの無機充填剤は2種以上組み合わせて用いてもよい。中でもタルクは、ポリ乳酸樹脂(A)に対して最も結晶化効率の高い無機物質であることが知られており、また、非常に安価で、しかも自然界に存在するため、工業的にも有利で地球環境にも負荷を与えないものである。
無機充填剤(B)の平均粒子径は、0.5〜7μmであることが必要であり、中でも1〜5μmであることが好ましい。平均粒子径が0.5μm未満であると、分散不良や二次凝集を生じるために、結晶化度の向上効果に乏しいものとなり、寸法安定性に対して十分な効果が得られないだけでなく、外観にも悪影響を及ぼす可能性がある。一方、平均粒子径が7μmを超えると、シートを作製する際、フィルター詰まりが生じるなど加工性へ悪影響があるだけでなく、得られるポリ乳酸系樹脂シートの物性や外観に悪影響を与えることがある。
なお、樹脂組成物中には、無機充填剤(B)を効率よく分散させるために、分散剤を配合してもよい。分散剤としては、ポリ乳酸樹脂(A)との相溶性に優れるとともに、無機充填剤(B)との濡れ性にも優れているものが好適に使用できる。このような物質としては、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミドなどの脂肪族アミドが挙げられ、これらは単独で使用しても複数組み合わせて使用してもよい。
無機充填剤(B)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対し、5〜25質量部であることが必要であり、中でも7〜20質量部であることが好ましく、さらには8〜15質量部であることがより好ましい。無機充填剤(B)の含有量が5質量部未満の場合、得られるシートのソリを低減させたり、打抜き加工時の打ち抜き性を向上させることができず、バリが多く、カット性に劣る製品(ラップの歯など)となるため好ましくない。一方、含有量が25質量部を超える場合、シートが脆くなるために、耐久性が低下し、割れやヒビの原因となる可能性もあり、また、結晶化速度や寸法安定性効果が飽和となり、また比重も大きくなるため好ましくない。
次に有機結晶核剤(C)について説明する。
本発明において、有機結晶核剤(C)としては、有機スルホン酸塩と、有機アミド化合物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。このような特定の有機結晶核剤を用いることにより、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶性が向上するとともに、コアシェル型耐衝撃改良剤(D)による耐衝撃性付与効果が十分に発揮され、結晶性と耐衝撃性ともに優れた樹脂組成物とすることが可能となる。
本発明において、有機結晶核剤(C)としては、有機スルホン酸塩と、有機アミド化合物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。このような特定の有機結晶核剤を用いることにより、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶性が向上するとともに、コアシェル型耐衝撃改良剤(D)による耐衝撃性付与効果が十分に発揮され、結晶性と耐衝撃性ともに優れた樹脂組成物とすることが可能となる。
有機スルホン酸塩としては、スルホイソフタル酸塩など、種々のものを用いることができ、中でも、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩が、結晶化促進効果の点から好ましい。さらに、バリウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、ナトリウム塩などが好ましい。
有機アミド系結晶核剤としては、種々の物を用いることができ、具体的には、N,N′−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、リシノール酸アミド、リシノステアロール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N−ヒドロキシエチル−リシノール酸アミド、N−ヒドロキシエチル−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N′−エチレン−ビス−リシノール酸アミド、N,N′−ヘキサメチレン−ビス−リシノール酸アミド、N,N′−ヘキサメチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N′−キシリレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。なかでも、結晶化促進効果、耐熱性の観点から、N,N′−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N′−ヘキサメチレン−ビス−リシノール酸アミド、N,N′−ヘキサメチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N′−キシリレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドを好適に用いることができる。これらのアミド系結晶核剤は、単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
本発明において、ポリ乳酸系樹脂組成物中の有機結晶核剤(C)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対し、0.5〜5質量部であることが必要であり、中でも0.8〜4質量部であることが好ましく、1〜3質量部であることがより好ましい。有機結晶核剤(C)の含有量が0.5質量部未満であると、結晶性の向上効果や耐衝撃性の向上効果が乏しくなり、配合することによる上記したような効果(結晶化速度が速く、耐熱性に優れた成形体を得ることができ、かつ耐衝撃性も向上する)を奏することができない。一方、含有量が5質量部を超えると、結晶核剤としての効果が飽和し、経済的に不利であるだけでなく、生分解後の残渣分が増大するため、環境面でも好ましくない。
次にコアシェル型耐衝撃改良剤(D)について説明する。
コアシェル型耐衝撃改良剤(D)は、コア層とそれを覆うシェル層から構成され、隣接し合う層は異種の重合体から構成される耐衝撃改良剤である。コア層とシェル層は、それぞれ複数の層を有してもよい。コアシェル型耐衝撃改良剤(D)は、コア層成分の存在下に、シェル層成分がグラフト重合されることにより得られるものであることが好ましい。
コアシェル型耐衝撃改良剤(D)は、コア層とそれを覆うシェル層から構成され、隣接し合う層は異種の重合体から構成される耐衝撃改良剤である。コア層とシェル層は、それぞれ複数の層を有してもよい。コアシェル型耐衝撃改良剤(D)は、コア層成分の存在下に、シェル層成分がグラフト重合されることにより得られるものであることが好ましい。
本発明において、コアシェル型耐衝撃改良剤(D)は、耐衝撃性向上や衛生性の面からコア層は、ブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムから選ばれることが好ましい。
コア成分を形成するブタジエン系ゴムとは、1,3−ブタジエン単量体のみからなる重合体、もしくは、1,3−ブタジエン単量体と、これと共重合可能な1種以上のビニル系単量体とからなる重合体である。
ブタジエン系ゴムにおける、上記1種類以上のビニル系単量体の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、中でも30質量%以下であることが好ましい。
1,3−ブタジエン単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル系単量体等が挙げられる。
また、上記以外に、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族多官能ビニル化合物、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート等の多価アルコール、トリメタクリル酸エステル、トリアクリル酸エステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等のカルボン酸アリルエステル、ジアリルフタレート、ジアリルセバケート等のジアリル化合物、トリアリルトリアジン等のトリアリル化合物などの架橋性単量体(架橋剤)を用いることができる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
ブタジエン系ゴムにおける、上記1種類以上のビニル系単量体の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、中でも30質量%以下であることが好ましい。
1,3−ブタジエン単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル系単量体等が挙げられる。
また、上記以外に、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族多官能ビニル化合物、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート等の多価アルコール、トリメタクリル酸エステル、トリアクリル酸エステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等のカルボン酸アリルエステル、ジアリルフタレート、ジアリルセバケート等のジアリル化合物、トリアリルトリアジン等のトリアリル化合物などの架橋性単量体(架橋剤)を用いることができる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
コア成分を形成するアクリル系ゴムは、主構成単位のアクリル酸エステルを50〜100質量%含有することが好ましく、中でも70〜100質量%含有することがより好ましい。アクリル系ゴムにおける、アクリル酸エステル以外の他の成分は、アクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体であることが好ましい。
アクリル系ゴムを構成するアクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が2〜8であるアクリル酸アルキルエステルが挙げられ、例えば、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。
アクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル系単量体などが挙げられる。
アクリル系ゴムを構成するアクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が2〜8であるアクリル酸アルキルエステルが挙げられ、例えば、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。
アクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル系単量体などが挙げられる。
本発明においてコアシェル型耐衝撃改良剤(D)を構成するシェル成分は、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、グリシジル基含有ビニル系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位および/またはその他のビニル系単位などを含有する重合体により形成されていることが好ましい。中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、グリシジル基含有ビニル系単位および/または不飽和ジカルボン酸無水物系単位を含有する重合体が好ましく、さらに不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位を含有する重合体がより好ましい。
シェル成分の重合体を構成する不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく使用される。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられ、樹脂への分散性を向上する効果が大きいという観点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
シェル成分の重合体を構成するグリシジル基含有ビニル系単位としては、特に限定されるものではなく、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテル、4−グリシジルスチレンなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
シェル成分の重合体を構成する脂肪族ビニル系単位としては、エチレン、プロピレンまたはブタジエンなどが挙げられる。芳香族ビニル系単位としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンまたはハロゲン化スチレンなどが挙げられる。シアン化ビニル系単位としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルまたはエタクリロニトリルなどが挙げられる。マレイミド系単位としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミド、N−(クロロフェニル)マレイミドなどが挙げられる。不飽和ジカルボン酸系単位として、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、フタル酸などが挙げられる。
シェル成分の重合体を構成するその他のビニル系単位としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン、2−スチリル−オキサゾリンなどが挙げられる。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
上記したようなコア層とシェル層を組み合わせたコアシェル型耐衝撃改良剤(D)の中でも以下の2種のコアシェル型耐衝撃改良剤(D1)、(D2)は、耐衝撃性の向上効果が特に優れるため好ましい。
コアシェル型耐衝撃改良剤(D1)は、コア層がアクリルゴム、シェル層がビニル系単位を含有する重合体からなるものであり、中でも、シェル層が、コア層のアクリルゴムの存在下に、1種または2種以上のビニル系単量体を、コア層のアクリルゴムにグラフト重合させることにより得られるものであることが好ましい。市販品として、ロームアンドハース社製パラロイドBPM−500、パラロイドBPM−515、三菱レイヨン社製メタブレンW−450A、メタブレンW−600Aなどが挙げられる。
コアシェル型耐衝撃改良剤(D2)は、コア層がブタジエン系ゴム、シェル層がメタクリル酸メチル重合体からなるものである。中でも、シェル層は、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合ゴムであることが好ましい。市販品としては、三菱レイヨン社製メタブレンC−223A、メタブレンC−323A、カネカ社製カネエースB−564、ロームアンドハース社製パラロイドBPM−520が挙げられる。
本発明において、樹脂組成物におけるコアシェル型耐衝撃改良剤(D)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対し、1〜10質量部であることが必要であり、2〜8質量部であることが好ましく、2〜5質量部であることがより好ましい。コアシェル型耐衝撃改良剤(D)の含有量が1質量部未満の場合には、十分な耐衝撃性を付与することができない。一方、10質量部を超える場合には、樹脂組成物の結晶性を低下させるため、得られるシートは、後述するシートの特性値(結晶化度や熱収縮率)を満足しないものとなる。また、耐衝撃性については飽和状態となり大幅な向上はみられない。
さらに、本発明のポリ乳酸系樹脂シートを構成するポリ乳酸系樹脂組成物中には、300℃、12Nにおけるメルトフローレートが20g/10分以上であるポリカーボネート樹脂(E)が含まれていることが好ましい。ポリカーボネート樹脂(E)を含むことにより、上記した有機結晶核剤(C)とコアシェル型耐衝撃改良剤(D)による効果(結晶性の向上効果と耐衝撃性の付与効果)をさらに向上させることができる。
ポリカーボネート樹脂(E)は、ビスフェノール類残基単位とカーボネート残基単位とを含むものである。
ビスフェノール類としては、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジチオジフェノール、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジクロロジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−2,5−ジヒドロキシジフェニルエーテル等が挙げられる。その他にも米国特許明細書第2999835号、第3028365号、第3334154号および第4131575号に記載されているジフェノールが使用できる。これらは単独で使用してもよいし、あるいは2種類以上混合して使用してもよい。
カーボネート残基単位を導入する為の前駆物質としては、例えばホスゲン、あるいはジフェニルカーボネート等が挙げられる。
そして、ポリカーボネート樹脂(E)は、300℃、12Nにおけるメルトフローレートが20g/10分以上であることが好ましく、中でも30g/10分以上であることがより好ましく、40〜90g/10分であることがさらに好ましい。
本発明においては、上記のようなメルトフローレートのポリカーボネート樹脂を用いることにより、ポリカーボネート樹脂(E)が樹脂組成物中に均一に分散され、ポリ乳酸系樹脂組成物(海)中にポリカーボネート樹脂(E)が島のように分散した構造(いわゆる海島構造)を得ることができる。これにより可塑剤的な働きをするものと想定され、上記した有機結晶核剤(C)やコアシェル型耐衝撃改良剤(D)の働きをより活性化させ、結晶化促進効果や耐熱性、耐衝撃性向上効果をより顕著なものとすることが可能となる。
300℃、12Nにおけるメルトフローレートが20g/10分以下であると溶融粘度が高すぎるために、ポリ乳酸系樹脂組成物への分散性が低くなり、上記したような効果をより向上させる働きをすることが困難となる。
本発明においては、上記のようなメルトフローレートのポリカーボネート樹脂を用いることにより、ポリカーボネート樹脂(E)が樹脂組成物中に均一に分散され、ポリ乳酸系樹脂組成物(海)中にポリカーボネート樹脂(E)が島のように分散した構造(いわゆる海島構造)を得ることができる。これにより可塑剤的な働きをするものと想定され、上記した有機結晶核剤(C)やコアシェル型耐衝撃改良剤(D)の働きをより活性化させ、結晶化促進効果や耐熱性、耐衝撃性向上効果をより顕著なものとすることが可能となる。
300℃、12Nにおけるメルトフローレートが20g/10分以下であると溶融粘度が高すぎるために、ポリ乳酸系樹脂組成物への分散性が低くなり、上記したような効果をより向上させる働きをすることが困難となる。
また、樹脂組成物中のポリカーボネート(E)の含有量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して0.1〜3質量部であることが好ましく、0.3〜2質量部であることがより好ましく、0.5〜1.5質量部であることが最も好ましい。含有量が0.1質量部未満であると、上記したような有機結晶核剤(C)やコアシェル型耐衝撃改良剤(D)の働きをより活性化させることができない。一方、含有量が3質量部を超えた場合、このような効果が飽和するだけでなく、ポリカーボネート樹脂の分散性が低くなるため、外観悪化が起こりやすくなる。
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、ラップフィルム用のカッターとして好適なものであり、このような用途において隠ぺい性が必要とされる場合は、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、白色顔料を含有することが好ましい。
白色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミナが挙げられ、中でも、酸化チタンが好ましい。酸化チタンの種類としては特に制限させるものではないが、光安定性が良好なルチル型が好ましい。また、酸化チタンは、中性化のために表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、ステアリン酸等の有機酸またはそれらの金属塩、ポリオール、シランカップリング剤、チタンカップリング剤が挙げられる。
白色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミナが挙げられ、中でも、酸化チタンが好ましい。酸化チタンの種類としては特に制限させるものではないが、光安定性が良好なルチル型が好ましい。また、酸化チタンは、中性化のために表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、ステアリン酸等の有機酸またはそれらの金属塩、ポリオール、シランカップリング剤、チタンカップリング剤が挙げられる。
白色顔料の粒子径は、0.05〜2.0μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。
白色顔料の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対し、0.1〜5質量部であることが好ましく、中でも0.5〜3質量部であることがより好ましく、0.8〜2質量部であることがさらに好ましい。白色顔料の含有量が0.1質量部未満の場合、隠ぺい性が不十分となることがある。一方、含有量が5質量部を超える場合、その効果が飽和するのみならず、比重が大きくなるため、取扱性が悪くなり、さらに、機械的強度も低下することがある。
さらに、本発明におけるポリ乳酸系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、末端封鎖剤、熱安定剤、酸化防止剤、有機充填剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等の添加剤を含有してもよい。
末端封鎖剤としては、モノカルボジイミドやポリカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物やエポキシ化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
熱安定剤や酸化防止剤としては、たとえばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物、ビタミンEが挙げられる。
有機充填剤としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ、ケナフ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品などが挙げられる。
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤が使用できるが、環境を配慮した場合、非ハロゲン系難燃剤の使用が望ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)、N含有化合物(メラミン系、グアニジン系)、無機系化合物(硼酸塩、Mo化合物)が挙げられる。
可塑剤としては、一般に公知のものを使用することができる。例えば、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、燐酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、およびエポキシ系可塑剤等が挙げられる。
滑剤としては、各種カルボン酸系化合物を用いることができ、中でも、各種脂肪酸金属塩、特に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどが好ましい。
離型剤としては、各種カルボン酸系化合物、中でも、各種脂肪酸エステル、各種脂肪酸アミドなどが、好適に用いられる。
末端封鎖剤としては、モノカルボジイミドやポリカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物やエポキシ化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
熱安定剤や酸化防止剤としては、たとえばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物、ビタミンEが挙げられる。
有機充填剤としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ、ケナフ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品などが挙げられる。
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤が使用できるが、環境を配慮した場合、非ハロゲン系難燃剤の使用が望ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)、N含有化合物(メラミン系、グアニジン系)、無機系化合物(硼酸塩、Mo化合物)が挙げられる。
可塑剤としては、一般に公知のものを使用することができる。例えば、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、燐酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、およびエポキシ系可塑剤等が挙げられる。
滑剤としては、各種カルボン酸系化合物を用いることができ、中でも、各種脂肪酸金属塩、特に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどが好ましい。
離型剤としては、各種カルボン酸系化合物、中でも、各種脂肪酸エステル、各種脂肪酸アミドなどが、好適に用いられる。
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、ポリ乳酸樹脂(A)以外の他の樹脂を含有していてもよい。他の樹脂を配合して、ポリ乳酸樹脂(A)とのアロイとすることも可能である。
他の樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)共重合体、液晶ポリマー、ポリアセタールなどが挙げられる。
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10Tなどが挙げられる。
ポリエステルとしては、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル等が挙げられる。
芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリブチレンアジペートテレフタレートをはじめ、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレートコテレフタレート、ポリブチレンイソフタレートコテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、シクロヘキシレンジメチレンイソフタレートコテレフタレート、p−ヒドロキシ安息香酸残基とエチレンテレフタレート残基からなるコポリエステル、植物由来の原料である1,3−プロパンジオールからなるポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート−乳酸)共重合体、ポリヒドロキシ酪酸などが挙げられる。
ポリ乳酸樹脂とこれらの樹脂を混合する方法は特に限定されない。
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10Tなどが挙げられる。
ポリエステルとしては、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル等が挙げられる。
芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリブチレンアジペートテレフタレートをはじめ、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレートコテレフタレート、ポリブチレンイソフタレートコテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、シクロヘキシレンジメチレンイソフタレートコテレフタレート、p−ヒドロキシ安息香酸残基とエチレンテレフタレート残基からなるコポリエステル、植物由来の原料である1,3−プロパンジオールからなるポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート−乳酸)共重合体、ポリヒドロキシ酪酸などが挙げられる。
ポリ乳酸樹脂とこれらの樹脂を混合する方法は特に限定されない。
このように、本発明におけるポリ乳酸系樹脂組成物は、添加剤や他の樹脂を含有してよいが、樹脂組成物におけるポリ乳酸樹脂(A)の含有量は、前述のように50質量%以上であることが好ましい。
本発明におけるポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、工業的に最も簡便である溶融混練法を採用することができる。
溶融混練には一般的な押出機を用いることができ、混練状態の向上のためには、二軸押出機を使用することが好ましい。
ポリ乳酸樹脂(A)、無機充填剤(B)、有機結晶核剤(C)、コアシェル型グラフト共重合体(D)を押出機に供給する際には、予め全ての原料をドライブレンドしたものを一つのホッパーに供給する方法、複数のフィーダーを用いて押出機トップから供給する方法、サイドフィーダーを用いて溶融混練の途中から添加する方法などが挙げられる。
また、ポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法として、ポリ乳酸樹脂(A)の重合時に、無機充填剤(B)や有機結晶核剤(C)やコアシェル型グラフト共重合体(D)を添加する方法を採用することもできる。つまり、D体含有量が十分に低いL−ラクチドを原料に用い、無機充填剤(B)や有機結晶核剤(C)、コアシェル型グラフト共重合体(D)を添加させた状態で、公知の溶融重合法、もしくはさらに固相重合法を併用してポリ乳酸系樹脂組成物を得てもよい。重合温度は170〜230℃が好ましい。重合温度が高すぎるとポリ乳酸樹脂(A)が分解したり、ラセミ化によってD体含有量が増加する。一方、重合温度が低すぎると、重合に長時間を要するため、実用的でない。
溶融混練には一般的な押出機を用いることができ、混練状態の向上のためには、二軸押出機を使用することが好ましい。
ポリ乳酸樹脂(A)、無機充填剤(B)、有機結晶核剤(C)、コアシェル型グラフト共重合体(D)を押出機に供給する際には、予め全ての原料をドライブレンドしたものを一つのホッパーに供給する方法、複数のフィーダーを用いて押出機トップから供給する方法、サイドフィーダーを用いて溶融混練の途中から添加する方法などが挙げられる。
また、ポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法として、ポリ乳酸樹脂(A)の重合時に、無機充填剤(B)や有機結晶核剤(C)やコアシェル型グラフト共重合体(D)を添加する方法を採用することもできる。つまり、D体含有量が十分に低いL−ラクチドを原料に用い、無機充填剤(B)や有機結晶核剤(C)、コアシェル型グラフト共重合体(D)を添加させた状態で、公知の溶融重合法、もしくはさらに固相重合法を併用してポリ乳酸系樹脂組成物を得てもよい。重合温度は170〜230℃が好ましい。重合温度が高すぎるとポリ乳酸樹脂(A)が分解したり、ラセミ化によってD体含有量が増加する。一方、重合温度が低すぎると、重合に長時間を要するため、実用的でない。
次に、本発明のポリ乳酸系樹脂シートについて説明する。
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、上記ポリ乳酸系樹脂組成物からなるものであるため、延伸工程を経ることなく得られたものであっても、ラップフィルム用のカッターに好適な特性値を有する。つまり、下記に示す(1)〜(3)の特性値をいずれも満足するものである。
(1)結晶化度が8J/g以上
(2)衝撃強度が0.5J以上
(3)90℃処理時の熱収縮率が1%以下
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、上記ポリ乳酸系樹脂組成物からなるものであるため、延伸工程を経ることなく得られたものであっても、ラップフィルム用のカッターに好適な特性値を有する。つまり、下記に示す(1)〜(3)の特性値をいずれも満足するものである。
(1)結晶化度が8J/g以上
(2)衝撃強度が0.5J以上
(3)90℃処理時の熱収縮率が1%以下
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、結晶化度が8J/g以上であることが必要であり、中でも10J/g以上であることが好ましい。
結晶化度が8J/g未満であると、ラップフィルム用のカッター等の製品に打ち抜き作業を行う際に、バリが生じやすくなり、品位に劣る製品になるとともに、得られるカッターは、ラップフィルムのカット性に劣るものとなる。
結晶化度が8J/g未満であると、ラップフィルム用のカッター等の製品に打ち抜き作業を行う際に、バリが生じやすくなり、品位に劣る製品になるとともに、得られるカッターは、ラップフィルムのカット性に劣るものとなる。
結晶化度は、シートの一部を切り出してサンプル(7mg)とし、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、DSC装置「DSC7」)を用い、サンプルを20℃から200℃まで20℃/分の昇温速度で加熱した際の、昇温結晶化熱量(ΔHc)と結晶融解熱量(ΔHm)を測定し、下記式により結晶化度を算出する。
結晶化度(J/g)=|ΔHm|−|ΔHc|
結晶化度(J/g)=|ΔHm|−|ΔHc|
さらに、本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、衝撃強度が0.5J以上であることが必要であり、中でも0.6J以上であることが好ましい。
衝撃強度が0.5J未満であると、耐衝撃性に劣るとともに、打ち抜き加工時に割れやヒビが生じやすく、得られるカッターは、耐久性に劣るものとなる。
衝撃強度が0.5J未満であると、耐衝撃性に劣るとともに、打ち抜き加工時に割れやヒビが生じやすく、得られるカッターは、耐久性に劣るものとなる。
衝撃強度は、JIS K5600−5−3の「6.デュポン式」に従って耐衝撃性(耐おもり落下性)を測定し、測定によって得られた50%破壊エネルギーの値で耐衝撃性を評価する。
そして、本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、90℃で処理した時の熱収縮率が1%以下であることが必要であり、0.7%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。熱収縮率は、本発明のポリ乳酸系樹脂シートが耐熱性と寸法安定性に優れることを示すものである。
熱収縮率が1%を超えると、寸法安定性に劣るものとなり、ラップフィルムのカッター等の製品にする際の加工性に劣るものとなり、打ち抜き性にも劣るものとなる。
熱収縮率が1%を超えると、寸法安定性に劣るものとなり、ラップフィルムのカッター等の製品にする際の加工性に劣るものとなり、打ち抜き性にも劣るものとなる。
熱収縮率は、得られたシートを用い、ASTM D1204−94に従って、90℃で処理して測定する。
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、上記したようにラップフィルムのカッターを得るのに好適なものであり、このような用途に用いる際には、厚みが100〜500μmであることが好ましい。なお、本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、ラップフィルムのカッター以外にも弁当容器や簡易食器などに用いることができるものであり、厚みは、それらの用途に応じて適宜変更すればよい。
次に、本発明のポリ乳酸系樹脂シートを製造する方法について説明する。
本発明のポリ乳酸系樹脂シートを得るための成形方法は特に限定されず、公知の成形方法を適用することができる。例えば、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法等が例示でき、中でもTダイ法が好ましい。
本発明のポリ乳酸系樹脂シートを得るための成形方法は特に限定されず、公知の成形方法を適用することができる。例えば、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法等が例示でき、中でもTダイ法が好ましい。
Tダイ法では、前述のポリ乳酸系樹脂組成物を、押出機ホッパーに供給し、溶融混練して押し出し、キャストロールで冷却することにより、厚み100〜500μmのシートを得ることができる。なお、このとき延伸は行わなくても、前記の特性を有するシートが得られる。この方法においては、シリンダー温度を160〜250℃、Tダイ温度を200〜250℃、キャストロールの表面温度を30〜80℃とすることが好ましい。キャストロールの表面温度が30℃より低い場合、ポリ乳酸系樹脂組成物のモノマーがキャストロールに付着し、シートの汚れとなることがある。また、キャストロール温度が80℃を超える場合、冷却が不十分であるため、シートがロールに巻きついたり、安定した形態のシートが得られないことがある。
得られたシートは、必要に応じてコート剤をコーティングしてもよい。コーティング方法は特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング等が挙げられる。
さらに、本発明のポリ乳酸系樹脂シートよりフィルム用カッターを得る際には、上記の製造方法によって得られた未延伸のシートを打ち抜くことで形成することができる。打ち抜きによって形成される刃の形状は、鋸刃形状であることが好ましく、鋭角状の刃であることが好ましい。なお、刃の先端の角度、刃の大きさ、長さ、形状に関しては特に限定されない。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量
得られた樹脂組成物を0.3g秤量し、1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した。次いで、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸を分解させ、サンプルとして5mLを計り取った。このサンプルに純水3mL、および、塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HewletPackard社製HP−6890SeriesGCsystemを用いてガスクロマトグラフィー測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量(モル%)とした。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量
得られた樹脂組成物を0.3g秤量し、1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した。次いで、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸を分解させ、サンプルとして5mLを計り取った。このサンプルに純水3mL、および、塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HewletPackard社製HP−6890SeriesGCsystemを用いてガスクロマトグラフィー測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量(モル%)とした。
(2)ポリ乳酸樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)
示差屈折率検出器(島津製作所社製 RID−10A)を備えたゲル浸透クロマトグラフィ装置(島津製作所社製)を用い、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として、流速1.0ml/分、40℃で測定した。カラムは、SHODEX KF−805L、KF−804L(昭和電工社製)を用いた。サンプルは、樹脂組成物10mgをクロロホルム0.5mlに溶解後、THF5mlで希釈し、0.45μmのフィルターでろ過してから測定に供した。分子量は、ポリスチレン(Waters社製)を標準試料として換算した。
示差屈折率検出器(島津製作所社製 RID−10A)を備えたゲル浸透クロマトグラフィ装置(島津製作所社製)を用い、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として、流速1.0ml/分、40℃で測定した。カラムは、SHODEX KF−805L、KF−804L(昭和電工社製)を用いた。サンプルは、樹脂組成物10mgをクロロホルム0.5mlに溶解後、THF5mlで希釈し、0.45μmのフィルターでろ過してから測定に供した。分子量は、ポリスチレン(Waters社製)を標準試料として換算した。
(3)ポリカーボネート樹脂のメルトフローレート(MFR)
JIS K−7210に従い、300℃、12Nの荷重において測定した。
JIS K−7210に従い、300℃、12Nの荷重において測定した。
(4)シートの結晶化度
得られたシートを用い、前記した方法で測定、算出した。
(5)シートの衝撃強度
得られたシートを用い、前記した方法で測定した。
(6)シートの熱収縮率
得られたシートを用い、前記した方法で測定した。
得られたシートを用い、前記した方法で測定、算出した。
(5)シートの衝撃強度
得られたシートを用い、前記した方法で測定した。
(6)シートの熱収縮率
得られたシートを用い、前記した方法で測定した。
(7)シートの全光線透過率
得られたシートの全光線透過率をJIS K7375に準拠して行った。本発明におけるシートおよび成形体の全光線透過率は、30%以下が好ましく、25%以下がより好ましい。
得られたシートの全光線透過率をJIS K7375に準拠して行った。本発明におけるシートおよび成形体の全光線透過率は、30%以下が好ましく、25%以下がより好ましい。
(8)シートの打抜加工性
得られたシートをフィルム用カッター形状へ打ち抜き加工する際に発生する刃こぼれ、割れ等の加工不良を、次の基準により評価した。また、打抜いたサンプルに関して、顕微鏡観察し、バリの有無を確認した。
(割れ・ヒビ)
○:刃こぼれなし
×:刃こぼれ、ひび割れ発生
(バリ)
○:バリなし
×:バリ発生
得られたシートをフィルム用カッター形状へ打ち抜き加工する際に発生する刃こぼれ、割れ等の加工不良を、次の基準により評価した。また、打抜いたサンプルに関して、顕微鏡観察し、バリの有無を確認した。
(割れ・ヒビ)
○:刃こぼれなし
×:刃こぼれ、ひび割れ発生
(バリ)
○:バリなし
×:バリ発生
(9)フィルム用カッターのカット性・耐久性
市販の食品包装用ラップフィルム用紙容器(ポリ塩化ビニリデン製ラップフィルム、幅30cm、長さ50mに付属)のフィルム用カッターを、実施例、比較例で得たカッターに取り換え、それぞれラップフィルムを300mmずつ紙容器から引き出し、取り換えたカッターによる切断を100回繰り返し行い、カット性、耐久性を評価した。また、100回カット後のラップ刃の変形有無を確認した。
(カット性)
○:引掛りなく容易に切断
△:引掛りが時々発生
×:引掛りが多数発生
(耐久性)
○:刃こぼれ、割れなし
△:わずかに刃こぼれ、割れ発生
×:刃こぼれ、割れ多発
(変形)
○:変形なし
×:変形あり
市販の食品包装用ラップフィルム用紙容器(ポリ塩化ビニリデン製ラップフィルム、幅30cm、長さ50mに付属)のフィルム用カッターを、実施例、比較例で得たカッターに取り換え、それぞれラップフィルムを300mmずつ紙容器から引き出し、取り換えたカッターによる切断を100回繰り返し行い、カット性、耐久性を評価した。また、100回カット後のラップ刃の変形有無を確認した。
(カット性)
○:引掛りなく容易に切断
△:引掛りが時々発生
×:引掛りが多数発生
(耐久性)
○:刃こぼれ、割れなし
△:わずかに刃こぼれ、割れ発生
×:刃こぼれ、割れ多発
(変形)
○:変形なし
×:変形あり
以下、用いた原料を示す。
〔ポリ乳酸樹脂〕
・A−1:D体含有量0.2モル%、MFR4g/10分、重量平均分子量15万(トヨタ自動車社製『U‘Z S−6』)
・A−2:D体含有量1.4モル%、MFR3g/10分、重量平均分子量16万(NatureWorks社製『PLA−4032D』)
・A−3:D体含有量4.2モル%、MFR4g/10分、重量平均分子量16万(NatureWorks社製『PLA4042D』)
〔ポリ乳酸樹脂〕
・A−1:D体含有量0.2モル%、MFR4g/10分、重量平均分子量15万(トヨタ自動車社製『U‘Z S−6』)
・A−2:D体含有量1.4モル%、MFR3g/10分、重量平均分子量16万(NatureWorks社製『PLA−4032D』)
・A−3:D体含有量4.2モル%、MFR4g/10分、重量平均分子量16万(NatureWorks社製『PLA4042D』)
〔無機充填剤〕
・B−1:タルク、平均粒子経2.7μm(林化成社製『MW HS-T』)
・B−2:シリカ、平均粒子径0.25μm(アドマテックス社製『SO−C1』)
・B−1:タルク、平均粒子経2.7μm(林化成社製『MW HS-T』)
・B−2:シリカ、平均粒子径0.25μm(アドマテックス社製『SO−C1』)
〔有機結晶核剤〕
C−1:有機スルホン酸カリウム系結晶核剤(竹本油脂社製『LAK301』)
C−2:有機アミド系結晶核剤(伊藤製油社製『A−S―A−T−530SF』)
C−1:有機スルホン酸カリウム系結晶核剤(竹本油脂社製『LAK301』)
C−2:有機アミド系結晶核剤(伊藤製油社製『A−S―A−T−530SF』)
〔コアシェル型耐衝撃改良剤〕
・D−1:コア成分=アクリル系ゴム、シェル成分=(メタ)アクリル酸メチル重合体(三菱レイヨン社製『メタブレンW−600』)
・D−2:コア成分=ブタジエン系ゴム、シェル成分=(メタ)アクリル酸メチル重合体(ロームアンドハース社製『BPM-520』)
・D−1:コア成分=アクリル系ゴム、シェル成分=(メタ)アクリル酸メチル重合体(三菱レイヨン社製『メタブレンW−600』)
・D−2:コア成分=ブタジエン系ゴム、シェル成分=(メタ)アクリル酸メチル重合体(ロームアンドハース社製『BPM-520』)
〔ポリカーボネート樹脂〕
・E−1:MFR80g/10分(住友ダウ社製『カリバー200−80』)
・E−2:MFR13g/10分(住友ダウ社製『カリバー200−13』)
・E−1:MFR80g/10分(住友ダウ社製『カリバー200−80』)
・E−2:MFR13g/10分(住友ダウ社製『カリバー200−13』)
〔白色顔料〕
・F−1:酸化チタン、平均粒子径0.21μm(WHITE社製『CR−60』)
・F−1:酸化チタン、平均粒子径0.21μm(WHITE社製『CR−60』)
実施例1
二軸押出機(東芝機械社製 TEM37BS型)を用い、ポリ乳酸樹脂(A−1)100質量部と、無機充填剤(B−1)10質量部と、有機結晶核剤(C−1)1.5質量部と、耐衝撃改良剤(D−1)4質量部と、白色顔料(F−1)1質量部とをドライブレンドして、押出機の根元供給口から供給し、混練温度210℃、スクリュー回転数150rpm、吐出20kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出しを実施した。押出機先端から吐出された樹脂をペレット状にカッティングしてポリ乳酸系樹脂組成物のペレットを得た。
次いでポリ乳酸系樹脂組成物を、幅1000mmのTダイを装着したスクリュー径90mmの単軸押出機を用い、押出温度220℃にて溶融押出し、50℃に設定されたキャストロールに密着させて厚み250μmの未延伸シートを得た。
得られたシートを打ち抜き、鋸刃形状のフィルム用カッター(長さ300mm、幅10mm、1辺のみ鋸刃形状)を作製した。
二軸押出機(東芝機械社製 TEM37BS型)を用い、ポリ乳酸樹脂(A−1)100質量部と、無機充填剤(B−1)10質量部と、有機結晶核剤(C−1)1.5質量部と、耐衝撃改良剤(D−1)4質量部と、白色顔料(F−1)1質量部とをドライブレンドして、押出機の根元供給口から供給し、混練温度210℃、スクリュー回転数150rpm、吐出20kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出しを実施した。押出機先端から吐出された樹脂をペレット状にカッティングしてポリ乳酸系樹脂組成物のペレットを得た。
次いでポリ乳酸系樹脂組成物を、幅1000mmのTダイを装着したスクリュー径90mmの単軸押出機を用い、押出温度220℃にて溶融押出し、50℃に設定されたキャストロールに密着させて厚み250μmの未延伸シートを得た。
得られたシートを打ち抜き、鋸刃形状のフィルム用カッター(長さ300mm、幅10mm、1辺のみ鋸刃形状)を作製した。
実施例2〜21、比較例1〜9
ポリ乳酸系樹脂組成物を構成する各種成分の種類、量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸系樹脂組成物のペレット、未延伸シートおよび鋸刃形状のフィルム用カッターを得た。
ポリ乳酸系樹脂組成物を構成する各種成分の種類、量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸系樹脂組成物のペレット、未延伸シートおよび鋸刃形状のフィルム用カッターを得た。
実施例1〜21、比較例1〜9で得られたポリ乳酸系樹脂シート、フィルム用カッターの特性を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜21で得られたポリ乳酸系樹脂シートは、結晶化度、衝撃強度、熱収縮率が、本発明で規定する範囲にあるため、このシートは打抜加工性に優れ、得られたフィルム用カッターは、カット性、耐久性に優れるものであった。
比較例1、2では、樹脂組成物が無機充填剤を含有しないか、含有量が少ないため、シートの結晶化度が低く、熱収縮率が高く、打抜加工時にバリが発生し、得られたカッターは、カット性に劣り、変形するものであった。また比較例4において、無機充填剤として、平均粒子径が小さすぎるものを用いた場合、比較例5において、有機結晶核剤を含有しない場合、比較例9において、ポリ乳酸樹脂のD体含有量が多すぎる場合も、同様の結果となり、比較例9では、衝撃強度も低下した。比較例3では、樹脂組成物における無機充填剤の含有量が多すぎるため、また比較例7では、樹脂組成物におけるコアシェル型耐衝撃改良剤の含有量が少ないため、シートは衝撃強度が低く、打抜加工時に割れ・ヒビが発生し、得られたカッターは耐久性に劣るものであった。
比較例8では、樹脂組成物におけるコアシェル型耐衝撃改良剤の含有量が多すぎるため、シートの熱収縮率が高く、打抜加工時にバリが発生し、得られたカッターは、カット性に劣るものであった。
比較例1、2では、樹脂組成物が無機充填剤を含有しないか、含有量が少ないため、シートの結晶化度が低く、熱収縮率が高く、打抜加工時にバリが発生し、得られたカッターは、カット性に劣り、変形するものであった。また比較例4において、無機充填剤として、平均粒子径が小さすぎるものを用いた場合、比較例5において、有機結晶核剤を含有しない場合、比較例9において、ポリ乳酸樹脂のD体含有量が多すぎる場合も、同様の結果となり、比較例9では、衝撃強度も低下した。比較例3では、樹脂組成物における無機充填剤の含有量が多すぎるため、また比較例7では、樹脂組成物におけるコアシェル型耐衝撃改良剤の含有量が少ないため、シートは衝撃強度が低く、打抜加工時に割れ・ヒビが発生し、得られたカッターは耐久性に劣るものであった。
比較例8では、樹脂組成物におけるコアシェル型耐衝撃改良剤の含有量が多すぎるため、シートの熱収縮率が高く、打抜加工時にバリが発生し、得られたカッターは、カット性に劣るものであった。
Claims (4)
- D体含有量が4モル%以下であるポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、平均粒子径が0.5〜7μmの無機充填剤(B)が5〜25質量部、有機結晶核剤(C)が0.5〜5質量部、コアシェル型耐衝撃改良剤(D)が1〜10質量部含有されているポリ乳酸系樹脂組成物からなるシートであって、
結晶化度が8J/g以上であり、衝撃強度が0.5J以上であり、90℃処理時の熱収縮率が1%以下であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂シート。 - さらにポリ乳酸系樹脂組成物中に、300℃、12Nにおけるメルトフローレートが20g/10分以上であるポリカーボネート樹脂(E)が、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜3質量部含有されていることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂シート。
- 延伸工程を経ずに得られたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリ乳酸系樹脂シート。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂シートからなることを特徴とするフィルム用カッター。
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JP2014052868A JP2015174926A (ja) | 2014-03-17 | 2014-03-17 | ポリ乳酸系樹脂シート |
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CN112442263A (zh) * | 2020-11-09 | 2021-03-05 | 河南龙都天仁生物材料有限公司 | 一种水稻用生物降解地膜的制作方法 |
-
2014
- 2014-03-17 JP JP2014052868A patent/JP2015174926A/ja active Pending
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