JP2015171345A - 骨前駆細胞 - Google Patents
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Abstract
【課題】多能性幹細胞から形成された胚様体由来の単細胞をbFGF及びTGFの存在下で接着培養する、RUNX2陰性、OSX陽性である骨前駆細胞の製造方法。【解決手段】多能性幹細胞から形成された胚様体由来の単細胞をbFGF及びTGFの存在下で接着培養する。前記単細胞をbFGF、TGFおよびIGFの存在下で接着培養してもよい。【選択図】なし
Description
本発明は、骨前駆細胞に関する。
骨組織の疾患に対する現在の治療方法は、ビスホスホネート剤を含め、骨吸収を抑制することが中心に考えられている。一方、再生医療の観点から、幹細胞を用い、患者自身の骨前駆細胞や骨細胞を製造して移植する治療方法の開発が期待されている。
しかしながら、これまで、幹細胞から骨分化に成功した報告は、ほとんどなく、骨髄幹細胞や間葉系幹細胞(特許文献1または2参照)から骨分化の報告があるだけで、多能性幹細胞から骨分化に成功した報告は無い。
本発明は、新規な骨前駆細胞を提供することを目的とする。
本発明の一実施態様は、RUNX2陰性、OSX陽性である骨前駆細胞である。この骨前駆細胞は、COL1A1陰性であってもよく、ALP陽性であってもよい。
本発明の他の一実施態様は、上記いずれかの骨前駆細胞を有効成分として含有する移植物である。
本発明のさらなる一実施態様は、上記いずれかの骨前駆細胞の製造方法であって、多能性幹細胞から形成された胚様体由来の単細胞をbFGF及びTGFの存在下で接着培養する、骨前駆細胞の製造方法である。この製造方法において、前記単細胞をbFGF、TGFおよびIGFの存在下で接着培養してもよい。
本発明によって、新規な骨前駆細胞を提供することができるようになった。
実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.等の標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例等は、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示または説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
==骨前駆細胞の製造方法==
本発明による骨前駆細胞の製造方法は、多能性幹細胞から形成された胚様体(embryoid body)由来の単細胞をbFGF及びTGF−β1の存在下で接着培養することを特徴とする。ここで、多能性幹細胞とは、分化多能性を有する幹細胞のことであって、胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)などが例示できる。以下、骨前駆細胞の製造方法を詳細に記述する。
==骨前駆細胞の製造方法==
本発明による骨前駆細胞の製造方法は、多能性幹細胞から形成された胚様体(embryoid body)由来の単細胞をbFGF及びTGF−β1の存在下で接着培養することを特徴とする。ここで、多能性幹細胞とは、分化多能性を有する幹細胞のことであって、胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)などが例示できる。以下、骨前駆細胞の製造方法を詳細に記述する。
まず、多能性幹細胞から胚様体を形成する。その形成方法は特に限定されず、液内懸濁培養、メチルセルロース培養、懸滴培養など、通常行われる方法に従えばよい。一例として、多能性幹細胞を、bFGFなどの増殖因子を添加していない培地で浮遊培養することによって、胚様体を形成することができる。
次に、形成された胚様体を解離し、その単一細胞を得る。胚様体を解離する方法は特に限定されず、トリプシンやプロテアーゼなどを用いた酵素処理によっても、ピペットマンなどを用いた物理的処理によっても、それらを組み合わせてもよい。完全に解離するのが好ましいが、部分的に解離した場合、単一細胞になっている部分を用いて次の実験に進む。こうして単一細胞にした幹細胞に対し、骨芽細胞誘導培地を用いて、bFGF及びTGF−β1の存在下で接着培養する。さらにIGFが存在している方が好ましい。添加するbFGF、TGF−β1、IGFの最終濃度は、それぞれ、10−50ng/mL、1−10ng/mL、50−200ng/mLであることが好ましい。この状態で、14日間、接着培養することにより、高頻度でアルカリフォスファターゼ陽性の骨芽細胞に分化させることができる。骨芽細胞がほとんどを占める細胞集団を得るためには、ここで得られた細胞をもとにして、アルカリフォスファターゼ陽性細胞を単離すればよい。
次に、形成された胚様体を解離し、その単一細胞を得る。胚様体を解離する方法は特に限定されず、トリプシンやプロテアーゼなどを用いた酵素処理によっても、ピペットマンなどを用いた物理的処理によっても、それらを組み合わせてもよい。完全に解離するのが好ましいが、部分的に解離した場合、単一細胞になっている部分を用いて次の実験に進む。こうして単一細胞にした幹細胞に対し、骨芽細胞誘導培地を用いて、bFGF及びTGF−β1の存在下で接着培養する。さらにIGFが存在している方が好ましい。添加するbFGF、TGF−β1、IGFの最終濃度は、それぞれ、10−50ng/mL、1−10ng/mL、50−200ng/mLであることが好ましい。この状態で、14日間、接着培養することにより、高頻度でアルカリフォスファターゼ陽性の骨芽細胞に分化させることができる。骨芽細胞がほとんどを占める細胞集団を得るためには、ここで得られた細胞をもとにして、アルカリフォスファターゼ陽性細胞を単離すればよい。
ここで、浮遊培養とは、目的の細胞や細胞塊を培養器の底面に接着させずに培養することを意味し、接着培養とは、目的の細胞や細胞塊を培養器の底面に接着させて培養することを意味する。培養中、細胞や細胞塊が培養器の底面に接着するとは、細胞や細胞塊が、ECMなどに含まれる細胞-基質接着分子を通じて、培養器底面と接着している状態を意味し、培養液を軽く揺らしても細胞や細胞塊が培養液中に浮かんでこない状態を言う。一方、培養中、細胞や細胞塊が培養器の底面に接着しないとは、細胞や細胞塊が、培養器底面と接していない状態や、接していてもECMなどに含まれる細胞-基質接着分子を通じて培養器底面と接着していない状態を意味し、たとえ底面に触れていても培養液を軽く揺らすと細胞や細胞塊が培養液中に浮かんでくるような状態も含む。接着培養の際は、細胞の基質への接着を促進するために、プラスティックディッシュの底表面を化学処理したり、接着を促進する接着用コーティング剤(ゼラチン、ポリリジン、寒天など)でコートしたりすることが好ましい。浮遊培養のためには、培養皿は、非接着状態で培養できる浮遊培養用のディッシュを用いる。例えば、細菌培養用プラスティックディッシュなどの、非接着培養用ディッシュを用いればよい。そして、プラスティックディッシュの底表面は処理しないか、細胞の気質への接着を阻止するための接着阻止用コーティング剤(ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)など)でコートしたりすることが好ましい。なお、接着培養であっても、目的の細胞が接着するまでに時間がかかり、ある程度の時間、浮遊状態にある場合があるが、接着させるために行なっており、時間がかかってもその細胞が最終的に接着する場合は、接着培養に含めることとする。
==本発明に係る骨前駆細胞==
上述したようにして胚様体から分化させた細胞には、アルカリフォスファターゼ陽性細胞が高頻度(70%〜80%)で存在する。このアルカリフォスファターゼ陽性細胞を単離してビタミンDを作用させると、RUNX2陽性、COL1A1陽性、OSX(Osterix)陽性の骨細胞がほぼ100%生じることから、このアルカリフォスファターゼ陽性細胞が、均一な骨芽細胞であることがわかる。
==本発明に係る骨前駆細胞==
上述したようにして胚様体から分化させた細胞には、アルカリフォスファターゼ陽性細胞が高頻度(70%〜80%)で存在する。このアルカリフォスファターゼ陽性細胞を単離してビタミンDを作用させると、RUNX2陽性、COL1A1陽性、OSX(Osterix)陽性の骨細胞がほぼ100%生じることから、このアルカリフォスファターゼ陽性細胞が、均一な骨芽細胞であることがわかる。
しかしながら、胚様体から分化させた直後の細胞ではアルカリフォスファターゼ陽性、OSX陽性にもかかわらず、RUNX2陰性である(実施例図3参照)。RUNX2とOSXは、骨芽細胞の骨への分化に必須の要素であって、RUNX2は間葉系幹細胞という分化初期から発現して骨芽細胞まで発現が続くのに対し、OSXは前骨芽細胞という一時期にしか発現しない(Cells Tissues Organs 2009 vol.189 p.144-152; J.Cell.Biol. 2006 vol.99 p.1233-1239; J.Cell.Biol. 2013 vol.114 p.975-984)。従って、骨の分化過程で本願の骨芽細胞のように、OSX陽性にもかかわらず、RUNX2陰性という時期は存在せず、これまで、OSX陽性RUNX2陰性という本発明の骨芽細胞は知られていなかった。そして、発現レベルがRUNX2の発現に依存していることが知られているCOL1A1は、本発明のRUNX2陰性骨芽細胞では陰性であった。
この骨芽細胞に対し、さらに接着培養を続けると、通常の骨芽細胞と同様に、RUNX2、COL1A1、OSX、BSP、OCNというような骨芽細胞のマーカーが発現するようになる(実施例図4参照)。
ここで、骨芽細胞のマーカーが「陽性」とは、アルカリフォスファターゼ陽性細胞群(骨芽細胞)において、アルカリフォスファターゼ陰性細胞群に比べ、有意に発現が高いことを言い、「陰性」とは、アルカリフォスファターゼ陰性細胞群(非骨芽細胞)と比べた時、発現レベルに有意な差がないか、さらに発現レベルが低いことを言う。なお、アルカリフォスファターゼ陽性細胞群におけるアルカリフォスファターゼの発現レベル(平均)は、アルカリフォスファターゼ陰性細胞群に比べ、10倍以上高くなるように、それぞれの細胞群に細胞を割り当てるものとする。
==本発明に係る移植物==
OSX陽性RUNX2陰性という本願の骨芽細胞を、骨折、骨の欠損、骨の形成不全、などの骨の疾患に移植するための移植物とすることができる。移植物の製造方法泳ぎ移植方法は特に限定されず、当業者の技術常識に従って、移植物を製造することができる。
==本発明に係る移植物==
OSX陽性RUNX2陰性という本願の骨芽細胞を、骨折、骨の欠損、骨の形成不全、などの骨の疾患に移植するための移植物とすることができる。移植物の製造方法泳ぎ移植方法は特に限定されず、当業者の技術常識に従って、移植物を製造することができる。
(1)胚様体の形成
ヒトES細胞用培地(DMEM/HAM F−12に、20% Knockout Serum Replacement、1% Non-essential amino acids solution、1% L-glutamine、0.11mM 2-mercaptoethanol、5ng/mL bFGFを添加したもの)で培養したヒトiPS細胞をPBSで洗浄後、フィーダー細胞解離液(0.25% Trypsin、1mg/mL Collagenase IV、1mM CaCl2)を添加し、フィーダー細胞だけがはがれ始めた時、解離液を除去してPBSでiPS細胞を洗浄した。スクレイパーでiPS細胞をかき集め、bFGFを添加していないヒトES細胞用培地で懸濁し、ペトリディッシュで浮遊培養した。2−3日ごとに、培地交換し、6日間培養することで、胚様体が得られた。
(2)骨前駆細胞の誘導
生じた胚様体を回収し、PBSで洗浄した。その後、0.1〜1.0mg/mLタイプIVコラゲナーゼに懸濁し、37℃で20−40分間インキュベートした。PBSで洗浄後、0.05%トリプシン・EDTAに懸濁し、37℃で5−10分間インキュベートした。ピペッティングして、細胞を解離し、メッシュサイズ35μMのセルストレイナーを通過させ、解離しなかった細胞塊を除去した。こうして単細胞にした胚様体細胞を10cm細胞培養用ディッシュに1x106個/ディッシュで播種し、α−MEM(10%FBS及び1−2μM Thiazovivinを含む)を使用して、37℃、5%CO2存在下で培養した。翌日、培地を、50ng/mL bFGF、1ng/mL TGF−β1、200ng/mL IGF−1を含む骨芽細胞誘導培地(α−MEMに、10%FBS、1%P/S、50μg/mL L-ascorbic acid、10mM β-glycerophosphate、10nM Dexamethasone)に交換し、さらに2週間培養した。なお、培地は、3−4日ごとに新鮮な培地と交換した。
ヒトES細胞用培地(DMEM/HAM F−12に、20% Knockout Serum Replacement、1% Non-essential amino acids solution、1% L-glutamine、0.11mM 2-mercaptoethanol、5ng/mL bFGFを添加したもの)で培養したヒトiPS細胞をPBSで洗浄後、フィーダー細胞解離液(0.25% Trypsin、1mg/mL Collagenase IV、1mM CaCl2)を添加し、フィーダー細胞だけがはがれ始めた時、解離液を除去してPBSでiPS細胞を洗浄した。スクレイパーでiPS細胞をかき集め、bFGFを添加していないヒトES細胞用培地で懸濁し、ペトリディッシュで浮遊培養した。2−3日ごとに、培地交換し、6日間培養することで、胚様体が得られた。
(2)骨前駆細胞の誘導
生じた胚様体を回収し、PBSで洗浄した。その後、0.1〜1.0mg/mLタイプIVコラゲナーゼに懸濁し、37℃で20−40分間インキュベートした。PBSで洗浄後、0.05%トリプシン・EDTAに懸濁し、37℃で5−10分間インキュベートした。ピペッティングして、細胞を解離し、メッシュサイズ35μMのセルストレイナーを通過させ、解離しなかった細胞塊を除去した。こうして単細胞にした胚様体細胞を10cm細胞培養用ディッシュに1x106個/ディッシュで播種し、α−MEM(10%FBS及び1−2μM Thiazovivinを含む)を使用して、37℃、5%CO2存在下で培養した。翌日、培地を、50ng/mL bFGF、1ng/mL TGF−β1、200ng/mL IGF−1を含む骨芽細胞誘導培地(α−MEMに、10%FBS、1%P/S、50μg/mL L-ascorbic acid、10mM β-glycerophosphate、10nM Dexamethasone)に交換し、さらに2週間培養した。なお、培地は、3−4日ごとに新鮮な培地と交換した。
コントロールを含め、得られた細胞を4%パラホルムアルデヒド緩衝液で固定し、PBSで洗浄後、BCIP/NBT溶液(Roche社)を用いてアルカリフォスファターゼの染色を行なった。その結果、図1に示したように、bFGF、TGF−β1、IGF-1存在下で培養した場合に、アルカリフォスファターゼが高頻度で発現した。
また、50ng/mL bFGF、1ng/mL TGF−β1、及び200ng/mL IGF−1存在下で培養して得られた細胞をPBSで洗浄し、0.05%トリプシンEDTAを添加して37℃で5−10分間インキュベートする。細胞を回収し、セルストレイナーを通過させた後、0.5%BSA含有PBSで4X106個/mLになるように、細胞を希釈する。この細胞懸濁液に対し、フィコエリスリン標識抗ヒトアルカリフォスファターゼ抗体(ALP抗体)(R&D社)を添加して、氷上で30−45分インキュベートした。その後、PBSで4回洗浄し、PBSに再懸濁してセルストレイナーを通過させた。こうして得られた細胞から、FACSを用いてアルカリフォスファターゼ陽性細胞を単離した。
このアルカリフォスファターゼ陽性細胞について、CD90及びE−カドヘリンの発現をFACSで調べたところ、図2に示すように、CD90陽性でE−カドヘリン陰性であった。このように、本願に係る骨芽細胞は、非上皮間葉系幹細胞の特徴を有している。
また、このアルカリフォスファターゼ陽性細胞に対し、RUNX2、COL1A1、OSX、BSP、OCNの発現をリアルタイムPCRで調べたところ、図3に示すように、OSXがアルカリフォスファターゼ陽性細胞特異的に発現しているにもかかわらず、RUNX2及びCOL1A1は、アルカリフォスファターゼ陽性細胞でも、発現の亢進は観察されなかった。通常、RUNX2及びCOL1A1は、骨芽細胞分化の初期に発現するのであるが、本発明の骨芽細胞では、OSXという骨芽細胞のマーカーが発現しているにもかかわらず、RUNX2及びCOL1A1は、発現していなかった。
このアルカリフォスファターゼ陽性細胞を、さらに培養用ディッシュに播種し、接着培養した。40日間培養後、再度RUNX2、COL1A1、OSX、BSP、OCNの発現を調べたところ、図4に示すように、通常の骨芽細胞と同様に、これらの骨芽細胞マーカーの発現は、アルカリフォスファターゼ陰性細胞に比べて亢進していた。
(3)骨細胞への分化
(2)で得られたアルカリフォスファターゼ陽性細胞を、カバーガラス上へ播種し、一昼夜培養して接着させた。翌日、骨芽細胞誘導培地に培地を交換し40日間培養した。培地は3〜4日毎に交換した。得られた細胞において、石灰物の検出のためアリザリンレッド染色を行なった。また、骨細胞マーカーであるRANKL、SOSTを抗RANKL抗体(Santa Cruz Biotechnology、1:100)、及び抗SOST抗体(Santa Cruz Biotechnology、1:50)を用いて蛍光免疫染色にて検出した。すると、アルカリフォスファターゼ陽性細胞由来の細胞でのみ、各マーカーが陽性であった。このように、本発明のアルカリフォスファターゼ陽性細胞は、骨芽細胞であり、かつ骨細胞への分化能を有する。
(4)電子顕微鏡での解析
(2)で得られたアルカリフォスファターゼ陽性細胞、及びアルカリフォスファターゼ陰性細胞をそれぞれカバーガラス上へ播種し、一昼夜培養して接着させた。翌日、骨芽細胞誘導培地に培地を交換し120日間培養した。得られた細胞をKarnovskyの固定液[2.5%グルタルアルデヒド、2%パラホルムアルデヒド、0.1Mカコジル酸ナトリウム溶液(pH7.4)]を用いて4℃で一昼夜固定した。0.1Mカコジル酸ナトリウム溶液(pH7.4)で洗浄しエタノールで脱水後、t−ブチルアルコールに浸漬し4℃で30分間インキュベートした。その後、Freeze Dryer ID-2(Eiko社)を用いて凍結乾燥し、続いてcool sputter coater SC500A(VG Microtech社)を用いて蒸着した。得られたサンプルを走査型電子顕微鏡(SU-6600、日立ハイテク)にて観察した(図5a)。透過型電子顕微鏡での観察は、上記Karnovskyの固定液にて同様に固定後、0.1Mカコジル酸ナトリウム溶液(pH7.4)で洗浄し1%オスミウム四酸化物を用いて室温で1時間後固定した。その後サンプルを脱水し、エポキシレジンに包埋した。厚切り切片はトルイジンブルーで染色し光学顕微鏡にて観察した(図5b)。超薄切片は酢酸ウラニルとクエン酸鉛で染色し、透過型電子顕微鏡(H-7650、日立ハイテク)にて観察した(図5c)。
(3)骨細胞への分化
(2)で得られたアルカリフォスファターゼ陽性細胞を、カバーガラス上へ播種し、一昼夜培養して接着させた。翌日、骨芽細胞誘導培地に培地を交換し40日間培養した。培地は3〜4日毎に交換した。得られた細胞において、石灰物の検出のためアリザリンレッド染色を行なった。また、骨細胞マーカーであるRANKL、SOSTを抗RANKL抗体(Santa Cruz Biotechnology、1:100)、及び抗SOST抗体(Santa Cruz Biotechnology、1:50)を用いて蛍光免疫染色にて検出した。すると、アルカリフォスファターゼ陽性細胞由来の細胞でのみ、各マーカーが陽性であった。このように、本発明のアルカリフォスファターゼ陽性細胞は、骨芽細胞であり、かつ骨細胞への分化能を有する。
(4)電子顕微鏡での解析
(2)で得られたアルカリフォスファターゼ陽性細胞、及びアルカリフォスファターゼ陰性細胞をそれぞれカバーガラス上へ播種し、一昼夜培養して接着させた。翌日、骨芽細胞誘導培地に培地を交換し120日間培養した。得られた細胞をKarnovskyの固定液[2.5%グルタルアルデヒド、2%パラホルムアルデヒド、0.1Mカコジル酸ナトリウム溶液(pH7.4)]を用いて4℃で一昼夜固定した。0.1Mカコジル酸ナトリウム溶液(pH7.4)で洗浄しエタノールで脱水後、t−ブチルアルコールに浸漬し4℃で30分間インキュベートした。その後、Freeze Dryer ID-2(Eiko社)を用いて凍結乾燥し、続いてcool sputter coater SC500A(VG Microtech社)を用いて蒸着した。得られたサンプルを走査型電子顕微鏡(SU-6600、日立ハイテク)にて観察した(図5a)。透過型電子顕微鏡での観察は、上記Karnovskyの固定液にて同様に固定後、0.1Mカコジル酸ナトリウム溶液(pH7.4)で洗浄し1%オスミウム四酸化物を用いて室温で1時間後固定した。その後サンプルを脱水し、エポキシレジンに包埋した。厚切り切片はトルイジンブルーで染色し光学顕微鏡にて観察した(図5b)。超薄切片は酢酸ウラニルとクエン酸鉛で染色し、透過型電子顕微鏡(H-7650、日立ハイテク)にて観察した(図5c)。
図5に示すように、アルカリフォスファターゼ陽性細胞では、骨細胞特有の接着を生じ、細胞から細い突起が多数伸び、細胞間のネットワークを形成する。このように、アルカリフォスファターゼ陽性細胞から分化した細胞は、マーカーだけではなく、形態的にも骨細胞の構造を形成する。
(5)骨芽細胞の移植実験
(2)で得られたアルカリフォスファターゼ陽性細胞を、10cm培養ディッシュに播種し、10nM ビタミンD存在下で14日間培養した。その後、トリプシンEDTAを用いて細胞を剥離・回収し、細胞を10%スクロース溶液で懸濁した後、同量のPuramatrix(3D MATRIX MEDICAL TECHNOLOGY社)を加え混和した。続いて、PBSと混和することによりゲル化させた細胞とPuramatrixの混合物を、ラット頭蓋骨に歯科用ドリルを用いてあけた5ミリ大の小穴に5x105個/穴となるように移植した。10日後、4%ホルムアルデヒド溶液で灌流固定をした後、4%ホルムアルデヒド溶液で後固定し、脱灰後に、移植部分を含む組織切片を作成し、ヘマトキシレン・エオシン染色を行った。
(5)骨芽細胞の移植実験
(2)で得られたアルカリフォスファターゼ陽性細胞を、10cm培養ディッシュに播種し、10nM ビタミンD存在下で14日間培養した。その後、トリプシンEDTAを用いて細胞を剥離・回収し、細胞を10%スクロース溶液で懸濁した後、同量のPuramatrix(3D MATRIX MEDICAL TECHNOLOGY社)を加え混和した。続いて、PBSと混和することによりゲル化させた細胞とPuramatrixの混合物を、ラット頭蓋骨に歯科用ドリルを用いてあけた5ミリ大の小穴に5x105個/穴となるように移植した。10日後、4%ホルムアルデヒド溶液で灌流固定をした後、4%ホルムアルデヒド溶液で後固定し、脱灰後に、移植部分を含む組織切片を作成し、ヘマトキシレン・エオシン染色を行った。
図6に示すように、移植したアルカリフォスファターゼ陽性細胞由来と考えられる新生骨が観察された。このように、アルカリフォスファターゼ陽性細胞は、in vivoでも骨に分化することができる。
Claims (6)
- RUNX2陰性、OSX陽性である骨前駆細胞。
- COL1A1陰性である、請求項1に記載の骨前駆細胞。
- ALP陽性である、請求項1または2に記載の骨前駆細胞。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の骨前駆細胞を有効成分として含有する移植物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の骨前駆細胞の製造方法であって、
多能性幹細胞から形成された胚様体由来の単細胞をbFGF及びTGFの存在下で接着培養する、骨前駆細胞の製造方法。 - 請求項4に記載の骨前駆細胞の製造方法であって、
前記単細胞をbFGF、TGFおよびIGFの存在下で接着培養する、請求項4に記載の骨前駆細胞の製造方法。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020235319A1 (ja) * | 2019-05-20 | 2020-11-26 | 味の素株式会社 | 軟骨又は骨の前駆細胞の拡大培養方法 |
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- 2014-03-12 JP JP2014048801A patent/JP2015171345A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020235319A1 (ja) * | 2019-05-20 | 2020-11-26 | 味の素株式会社 | 軟骨又は骨の前駆細胞の拡大培養方法 |
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