JP2015164796A - 熱放射制御素子、及びその製造方法 - Google Patents

熱放射制御素子、及びその製造方法 Download PDF

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昭夫 高田
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雄介 松野
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Abstract

【課題】優れた熱放射特性を有する熱放射制御素子、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】熱放射制御素子11は、表面に2次元配列された開孔部を有する無機層21と、反射膜22とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、人工衛星等の宇宙機器に使用される熱放射制御素子、及びその製造方法に関する。
人工衛星等の宇宙用機器には、オプティカルソーラーリフレクター(OSR:Optical Solar Reflector)と呼ばれる熱放射制御素子が使用されている(例えば、特許文献1参照。)。OSRは、宇宙用機器に照射される太陽光線を反射し、宇宙用機器の自己発熱を宇宙空間に放射し、宇宙用機器の発熱を抑える役割を担う。
図36は、従来の熱放射制御素子の構成例を示す概略断面図である。図36に示すように、衛星表面103に設置されたOSRは、一般に石英基板101の裏面にAgなどの反射膜102がコートされた構造をしている。入射した太陽光は、石英基板101を透過し、反射膜102でほとんどが反射され、再び石英基板101を透過して外部に放射される。また、赤外光領域の熱放射は、石英基板101によって効率よく行われる。よって、OSRの特性としては、低い太陽光吸収係数と高い放射係数とを有することが望まれる。
放射係数の理想値は、1に近いほどよいが、従来のOSR構造では、300°Kでの垂直放射係数(ε)は、およそ0.845である。石英は、赤外光領域では比較的放射率が高いものの、300°Kの黒体放射のピーク波長領域では、放射率が低い。これは、石英基材固有の特性に起因するためであり、放射係数をさらに高くするのが困難であった。
特開平5−77799号公報
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、優れた熱放射特性を有する熱放射制御素子、及びその製造方法を提供する。
上述した課題を解決するために、本発明に係る熱放射制御素子は、表面に2次元配列された開孔部を有する無機層と、反射膜とを備え、前記無機層が、石英層及びガラス層のいずれかであることを特徴とする。
また、本発明に係る熱放射制御素子の製造方法は、石英基板及びガラス基板のいずれかである無機基板の表面に所定形状が2次元配列されたレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとし、エッチングにより前記無機基板の表面に2次元配列された開孔部を形成する工程と、前記無機基板の開孔部が形成された面とは反対の面側に、蒸着法又はスパッタ法により反射膜を成膜する工程とを有することを特徴とする。
また、本発明に係る熱放射制御素子の製造方法は、石英基板及びガラス基板のいずれかである無機基板の一方の面に、誘電体膜と、反射膜と、保護膜とをこの順に積層する工程と、前記無機基板の他方の面に、透明導電膜を成膜する工程と、前記透明導電膜表面に所定形状が2次元配列されたレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとし、エッチングにより前記無機基板の表面に2次元配列された開孔部を形成する工程とを有することを特徴とする。
本発明によれば、石英又はガラス表面に2次元配列された開孔部により、石英基材又はガラス基材固有の特性に起因する特定波長領域の放射率を向上させることができ、優れた熱放射特性を得ることができる。
熱放射制御素子の第1の構成例を示す概略断面図である。 開孔部の開口形状を正方形としたときの熱放射制御素子の構成例を示す概略斜視図である。 熱放射制御素子の第2の構成例を示す概略断面図である。 熱放射制御素子の第3の構成例を示す概略断面図である。 熱放射制御素子の第4の構成例を示す概略断面図である。 石英の放射率及び黒体放射スペクトルを示すグラフである。 石英の屈折率を示すグラフである。 分散がないと仮定した場合の放射率を示すグラフである。 石英表面にキャビティを形成した場合の放射率を示すグラフである。 ガラス表面にキャビティを形成したサンプルの放射率を示すグラフである。 開口形状が円形である開孔部を示す平面写真である。 開口形状が円形である開孔部を示す斜め45度写真である。 石英表面にキャビティ幅が2.5μm、3.0μm、4.5μm、6.0μm、8.0μm、及び11.0μmの場合の放射率を示すグラフである。 石英表面のキャビティ幅に対する垂直放射係数(300°K)を示すグラフである。 石英表面のキャビティ深さが0μm(平面)、0.7μm、1.75μm、及び3.5μmの場合の放射率を示すグラフである。 石英表面のキャビティ深さに対する垂直放射係数(300°K)を示すグラフである。 虚数部が無限大の場合のキャビティ内の電場を模式的に示す断面図である。 虚数部が有限の場合のキャビティ内の電場を模式的に示す断面図である。 開口形状が方形の場合のキャビティを示す平面図である。 開口形状が円形の場合のキャビティを示す平面図である。 格子配列の場合のキャビティを示す平面図である。 千鳥格子配列の場合のキャビティを示す平面図である。 開口形状が円形の場合において、キャビティ深さが0μm(平面)、0.5μm、2.0μm、及び3.0μmの場合の放射率を示すグラフである。 サンプルNo.11(ピッチ4.5μm、キャビティ径3.0μm、キャビティ深さ3.5μm)の実サンプルの平面写真である。 サンプルNo.13(ピッチ4.5μm、キャビティ径4.0μm、キャビティ深さ3.5μm)の実サンプルの平面写真である。 サンプルNo.14(ピッチ9.0μm、キャビティ径6.0μm、キャビティ深さ6.5μm)の実サンプルの平面写真である。 サンプルNo.16(ピッチ9.0μm、キャビティ径8.0μm、キャビティ深さ6.5μm)の実サンプルの平面写真である。 石英表面にキャビティを形成したサンプルの放射率を示すグラフである。 第1の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その1)。 第1の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その2)。 第1の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その3)。 第1の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その4)。 第1の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その5)。 第1の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その6)。 他の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その1)。 他の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その2)。 他の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その3)。 他の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その4)。 他の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その5)。 他の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その6)。 他の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その7)。 他の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その8)。 ピッチ4.6μm、直径3.2μm、及び深さ2.1μmの開口形状が円形である開孔部を示す平面写真である。 ピッチ4.6μm、直径3.2μm、及び深さ2.1μmの開口形状が円形である開孔部を示す斜め45度写真である。 ピッチ4.6μm、直径3.2μm、及び深さ2.1μmの開口形状が円形である開孔部を示す斜め45度拡大写真である。 ピッチ4.6μm、直径3.2μm、及び深さ2.1μmの開口形状が円形である開孔部を示す断面写真である。 ピッチ4.6μm、直径3.9μm、及び深さ3.5μmの開口形状が円形である開孔部を示す平面写真である。 ピッチ4.6μm、直径3.9μm、及び深さ3.5μmの開口形状が円形である開孔部を示す斜め45度写真である。 ピッチ4.6μm、直径3.9μm、及び深さ3.5μmの開口形状が円形である開孔部を示す斜め45度拡大写真である。 第2の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その1)。 第2の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その2)。 第2の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その3)。 第2の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その4)。 第2の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その5)。 第2の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その6)。 第2の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その7)。 第2の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その8)。 第2の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の工程を説明するための断面図である(その9)。 従来の熱放射制御素子の構成例を示す概略断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、下記順序にて詳細に説明する。
1.熱放射制御素子
1−1.本技術の概要
1−2.無機(石英及びガラス)基材固有の放射特性
1−3.金属表面でのキャビティ共鳴
1−4.無機(石英及びガラス)表面でのキャビティ共鳴
1−5.キャビティの幅について
1−6.キャビティの深さについて
1−7.キャビティのピッチについて
1−8.キャビティの形状について
2.熱放射制御素子の製造方法
2−1.第1の実施の形態
2−2.第2の実施の形態
2−3.他の実施の形態
<1.熱放射制御素子>
1−1.本技術の概要
図1は、熱放射制御素子の第1の構成例を示す概略断面図である。この熱放射制御素子11は、表面に2次元配列された開孔部を有する無機層21と、反射膜22とを備える。入射した太陽光は、無機層21を透過し、反射膜22でほとんどが反射され、再び無機層21を透過して外部に放射される。また、赤外光領域の熱放射は、無機層21によって効率よく行われる。
無機層21は、石英層及びガラス層のいずれかである。
石英層は、SiOからなる溶融石英や合成石英であり、広い波長範囲において高い透過率を有する。
ガラス層は、例えば、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラスなどであり、広い波長範囲において高い透過率を有する。
開孔部21aは、キャビティ(cavity)と呼ばれる穴であり、無機層21の表面に二次元配列されている。二次元配列は、規則配列でも不規則配列でもよいが、高い平面充填率が得られる格子配列又は千鳥格子配列であることが好ましい。
開孔部21aの開口形状は、対称性が高い形状であることが望まれ、円形又は正多角形のからなることが好ましい。開口形状が、楕円、長方形、平行四辺形などの形状では、偏光に対する選択性が現れ、放射の偏光が波長によって偏ってしまうため、放射率の波長選択性が悪化してしまう。
図2は、開孔部の開口形状を正方形としたときの熱放射制御素子の構成例を示す概略斜視図である。この開孔部は、矩形であり、周期的かつ左右対称にx軸方向及びy軸方向に対して配置される。図2中、Λは構造上の周期、aは開口サイズ、及び、dは深さである。
開孔部の開口径aは、3μm以上11μm以下であることが好ましい。開口径がこの範囲であることにより、0.9以上の放射係数を得ることが可能となる。ここで、開孔部の開口径aは、正方形の場合一辺の幅Wとしたが、円形の場合は直径Dとする。すなわち、開孔部の開口径は、開口形状が円形の場合は、その直径とし、開口形状が正多角形の場合は、内接円の直径とする。
また、開孔部の深さdは、0.7μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましい。開孔部の深さdを大きくすることにより、放射率を向上させることができる。
また、開孔部のアスペクト比(d/a)は、0.2以上であることが好ましく。0.5以上3.0以下であることがより好ましい。アスペクト比が小さすぎると、開孔部がない場合と同じとなってしまい、アスペクト比が大きすぎると、深い開孔部の形成が困難となる。また、ある深さ以上で熱放射特性は一定となるため、あまり深い開孔部は必要ではない。
反射膜22は、無機層21の開孔部を有する面とは反対の面側に配置される。反射膜22が無機層21の開孔部を有する面側に配置されると、開孔部の共鳴による効果が低下し、優れた熱放射特性を得ることができない。
反射膜22の材料としては、太陽光に対して高い反射率を有する材料であれば特に制限されず、例えばAg、Cu、Al、Mo、Cr、Ti、Ni、W、Feなどの金属単体若しくはこれらを含む合金、又はSi、Ge、Teなどの半導体材料を用いることができる。
図3は、熱放射制御素子の第2の構成例を示す概略断面図である。この熱放射制御素子12は、第1の構成例の熱放射制御素子11において、無機層21と反射膜22との間に、屈折率の異なる複数の誘電体膜が積層された誘電体反射膜23をさらに備え、また、反射膜22の無機層21が配置された面とは反対の面側に、保護膜24をさらに備えるものである。
誘電体反射膜23は、屈折率の異なる複数の誘電体膜が積層されている。例えば、反射膜22の反射率が低い所定の波長帯域について、反射率を高く設計することにより、熱放射制御素子の太陽光吸収率を低減させることができる。
保護膜24は、Cr、Niなどの金属やSiO、Alなどの酸化物からなり、反射膜22を保護する。これにより、反射膜22が傷つき、太陽光が透過するのを防止することができる。
図4は、熱放射制御素子の第3の構成例を示す概略断面図であり、図5は、熱放射制御素子の第4の構成例を示す概略断面図である。この熱放射制御素子13,14は、第2の構成例の熱放射制御素子12において、無機層21の開孔部21aを有する面側に、透明導電膜25,26をさらに備えるものである。
透明導電膜25,26は、第3の構成例のように開孔部の側面部及び底部に成膜されていなくてもよいし、第4の構成例のように開孔部の側面部及び底部に成膜されていてもよい。透明導電膜25,26としては、酸化亜鉛系透明導電膜、酸化インジウム系透明導電膜、酸化スズ系透明導電膜などを用いることができる。透明導電膜25,26は、可視光線を透過し、近赤外線及び中赤外線を反射するため、優れた熱放射特性を得ることができる。
このような構成からなる熱放射制御素子は、石英又はガラス表面に2次元配列された開孔部により、石英基材又はガラス基材固有の特性に起因する特定波長領域の放射率を向上させることができ、優れた熱放射特性を得ることができる。よって、例えば人工衛星へ適用した場合、人工衛星内部の電子機器から発せられる熱と、熱放射制御素子により放射される熱との熱収支の関係から、人工衛星内部に搭載できる電子機器の数を増加させることができる。この結果、1台の人工衛星により多くの機能を搭載することができる。また、放射率が向上した分の熱放射制御素子の搭載数を削減することができるため、小型化・軽量化を図ることができる。
1−2.無機(石英及びガラス)基材固有の放射特性
図6は、石英の放射率及び黒体放射スペクトルを示すグラフである。図6に示すように、石英は赤外光領域で比較的放射率が高いが、300°Kの黒体放射のピーク波長領域では、放射率が低下している。この原因は石英の屈折率によるものである。ガラスにおいても同様の傾向が見られる。
図7は、石英の屈折率を示すグラフである。石英の屈折率は、波長9μm付近及び23μm付近で分子振動による吸収のため、虚数部が増大している。このため石英自身がこの波長領域の光を吸収し、放射率を低下させてしまう。ガラスにおいても同様の傾向が見られる。
分子振動のスペクトルは、金属の自由電子のような広くなだらかなスペクトルではなく、複雑である。これまで透明材料では、キャビティ共鳴が起こらないとされていたが、分子振動の狭い波長域に関してだけ言えば、金属と同じような共鳴が起こるものと考えられる。
1−3.金属表面でのキャビティ共鳴
金属のような強い吸収を持つ物質の表面にキャビティを付加することで、放射率を制御することはすでに知られている。
キャビティ内部には、そこに局在する電磁波のモードが存在する。金属の場合、内部の自由電子の熱的なエネルギー(熱振動)によってその局在モードが励起されている。また、局在モードは、特定の波長で伝播光と共鳴を起こし、その局在モードから伝播光にエネルギーが渡されるという過程が存在する。これにより、金属表面にキャビティが形成された場合、放射が増大することの説明が可能である。
共鳴は、特定の波長のみ起きるため、放射の波長選択性が発現することになる。おおよそ、キャビティの大きさが波長の半分よりも大きいときに共鳴が起こると言える。実際には、共鳴の起こる波長とその強さは、材料の屈折率やキャビティ形状に依存するため、厳密に数値計算を行う必要がある。
放射に寄与するためには、特に材料の屈折率の虚数部(消衰係数k)の存在が重要である。金属の場合、自由電子の熱的な振動は、プラズマ振動数ωに対応する波長よりも長波長の光と結合状態にある。これは、熱的なエネルギーと金属内部光との間でエネルギーのやりとりが起こるということである。これは、光学的には屈折率の虚数部が0ではないことと対応する。
詳細に説明すると、次のような過程1〜5により、放射が増大する。
1.金属内部の熱によって自由電子が振動する。
2.自由電子の振動により金属内部に光が励起される。
3.その光によってキャビティ内部の局在モードが励起される。
4.局在モードは特定の波長で伝播光と共鳴を起こす。
5.最終的に伝播光は内部の熱エネルギーを金属外部に放射する。
物質には、必ず分散、すなわち屈折率の波長依存性があり、放射のスペクトルは、キャビティの共鳴とその波長での屈折率の値によって大きく変化する。キャビティ単体でどの波長で共鳴が起こるかを定性的に知るため、ここでは分散がないと仮定する。
図8は、分散がないと仮定した場合の放射率を示すグラフである。このグラフは、屈折率の実数部を2.6764、屈折率の虚数部を1.5567、キャビティの幅を3.5μm、キャビティの深さを3.5μm、及びピッチを4.5μmとしたときの放射率を計算したものである。
図8に示すように、放射のスペクトルは、非常に複雑なプロファイルになる。図8は、前記パラメータの場合の計算結果であるが、放射のスペクトルは、平坦なプロファイルになるということはない。
1−4.無機(石英及びガラス)表面でのキャビティ共鳴
金属表面のキャビティによる放射の増大は、金属内部の自由電子の存在が重要である。そして、光学的には、自由電子の存在によって屈折率の虚数部が0ではないことが重要である。
石英及びガラスのような透明材料(屈折率の虚数部が0)では、熱による振動(ほとんどが格子振動)が内部の光と結合しない。よって、光は、熱振動に変わることがないので内部を伝播することができる。つまり、透明であるということである。したがって、キャビティの局在モードが励起されることはなく、そのためキャビティの有無が放射の大きさに影響することはない。つまり、前述の過程1から過程2が存在しない。
しかしながら、石英及びガラスは、赤外光領域において、屈折率の虚数部が0でない波長域が存在する。これは、金属のような自由電子の振動によるものではなく、分子振動によるものである。分子振動の波長領域は限定されており、その波長領域が図7に示す屈折率の波長9μm付近及び23μm付近である。
波長9μm付近及び23μm付近では、石英内部の分子振動が光と結合している。仮に、石英表面にキャビティがある場合、その局在モードは励起され、それがうまく共鳴の起こる波長であれば、伝播光にエネルギーがわたると考えられる。ガラスにおいても同様の傾向が考えられる。
つまり、キャビティを石英又はガラス表面に付加すれば、平面の場合において特に放射率の低下している波長領域での放射率を向上させることが可能であるということになる。また、逆に言えば、それ以外の波長領域では、キャビティを付加したことによる放射率の変化はないということになる。
図9は、石英表面にキャビティを形成した場合の放射率を示すグラフである。このグラフは、図2に示す格子状配列のキャビティにおいて、幅aを3.5μm、ピッチΛを4.5μm、及び深さを3.5μmとしたときの放射率をRCWA法により計算したものである。
分子振動による放射率の低下した波長域(特に9μm付近)で、キャビティ共鳴によって放射率が上昇していることがわかる。この放射率の300°Kでの垂直放射係数εはおよそ0.962となり、キャビティによって10%以上向上していることがわかる。
表1に、200°K、300°K、及び400°Kのときの垂直放射係数εを示す。
表1に示すように、キャビティなしの場合、200°K、300°K、及び400°Kのときの垂直放射係数εは、それぞれ0.846、0.846、及び0.846であった。一方、キャビティ付きの場合、200°K、300°K、及び400°Kのときの垂直放射係数εは、それぞれ0.956、0.962、及び0.967であった。
このように、キャビティを付加することにより、放射率を向上させることができた。これは、キャビティよって分子振動のエネルギーを放射モードの光(伝播光)と結合させ、石英基材固有の特性に起因する特定波長領域の放射率を向上させたからであると考えられる。ガラス基材においても同様の傾向が見られる。以下に、ガラス(テンパックス、SCHOTT社製)基板表面にキャビティを形成したサンプルの実施例と実測値を示す。
図10は、ガラス(テンパックス、SCHOTT社製)表面にキャビティを形成したサンプル(No.1及びNo.2)の放射率を示すグラフである。
このグラフにおけるNo.1及びNo.2は、図11A及び図11Bに示す千鳥格子状配列のキャビティにおいて、幅aを3.2μm、ピッチΛを4.5μm、及び深さを3.5μmの実サンプルを2つ作製し実際に測定した放射率を示したものである。即ち、再現性を確認するため、同じ条件のサンプルを2つ作製して評価を行った。
このグラフにおけるNo.3及びNo.4は、ガラス(テンパックス、SCHOTT社製)にキャビティを形成していない平面構造の実サンプルを2つ作製し実際に測定した放射率を示したものである。即ち、再現性を確認するため、同じ条件のサンプルを2つ作製して評価を行った。
なお、No.3及びNo.4は、同一の放射挙動を示しため、放射曲線が重なっている。
分子振動による放射率の低下した波長域(特に9μm付近)で、キャビティ共鳴によって放射率が上昇していることがわかる。No.1のサンプルの300°Kでの垂直放射係数εはおよそ0.968となり、No.2のサンプルの300°Kでの垂直放射係数εはおよそ0.956となり、キャビティによって10%以上向上していることがわかる。
表2に、図10のNo.1〜4の300°Kのときの垂直放射係数εを示す。
金属表面のキャビティは、自由電子による広い放射スペクトルを、キャビティの持つ波長選択性で狭めるものであるが、石英又はガラス表面のキャビティは、分子振動のエネルギーをキャビティによって放射モードの光(伝播光)と結合させるものである。これまで透明材料ではキャビティ共鳴は起こらないとされていたが、分子振動に着目して分子振動の狭い波長域に関してだけ言えば、金属と同じような共鳴は起こって似た振る舞いをするということは新しい知見である。
1−5.キャビティの幅について
図12は、石英表面のキャビティ幅が2.5μm、3.0μm、4.5μm、6.0μm、8.0μm、及び11.0μmの場合の放射率を示すグラフである。これは、図2に示す格子状配列のキャビティにおいて、各キャビティの深さを幅と同じ(アスペクト比(d/a)=1)とし、ピッチを幅の1.28倍(幅a:3.5μm、ピッチΛ:4.5μm)としたときの放射率をRCWA法により計算したものである。したがって、幅aの大きなキャビティの場合、深さdも大きく、キャビティでない壁に相当する部分も厚くなる。なお、図12において、各キャビティによる放射率は、縦方向にずらして示している。また、0.1の放射率は左のスケールであり、1.0の放射率のラインは点線で示している。
また、図13は、石英表面のキャビティ幅に対する垂直放射係数(300°K)を示すグラフである。これは、図12に示す各放射率スペクトルから300°Kでの垂直放射係数を計算し、キャビティ幅ごとにプロットしたものである。図13に示すように、キャビティ幅が6μmのところで最大値を示している。これは、キャビティ幅が6μmのときに共鳴する波長と、石英の分散のピークとが偶然一致し、特異的に値が高くなったものであり、キャビティ深さをもっと詳細に検討すれば、この近傍でも放射係数の高いところや低いところがあると思われる。
図13に示すグラフより、おおよそ3μm以上11μm以下の範囲では、垂直放射係数が0.96以上であり、キャビティの効果が高いことがわかる。キャビティの幅がさらに大きな領域では、垂直放射係数が低下してしまい、また、深さが大きいキャビティの形成も困難となる。
1−6.キャビティの深さについて
図14は、石英表面のキャビティ深さが0μm(平面a)、0.7μm(b)、1.75μm(c)、及び3.5μm(d)の場合の放射率を示すグラフである。これは、図2に示す格子状配列のキャビティにおいて、キャビティの幅aを3.5μm、ピッチΛを4.5μmとし、深さdを0μm(平面)、0.7μm(アスペクト比:0.2)、1.75μm(アスペクト比:0.5)、及び3.5μm(アスペクト比:1.0)としたときの放射率をRCWA法により計算したものである。
また、図15は、石英表面のキャビティ深さに対する垂直放射係数(300°K)を示すグラフである。これは、図14に示す各放射率スペクトルから300°Kでの垂直放射係数を計算し、キャビティ深さごとにプロットしたものである。
また、表3に、キャビティ深さと、アスペクト比と、垂直放射係数とを示す。
図14、図15、及び表3より、キャビティ深さが小さいほど放射率及び垂直放射係数が低下し、平面の場合(平面の場合)に収束することが分かる。一方、キャビティ深さが大きくなると、ある深さ以上で垂直放射係数が一定となることがわかる。
また、開孔部の深さが0.7μm以上であることにより、平面に比べ垂直放射係数が大きく改善されることがわかる。また、アスペクト比が0.2以上であることにより、平面に比べ垂直放射係数が大きく改善されることがわかる。
1−7.キャビティのピッチについて
キャビティのピッチは、幅に対して最適値があるものと思われる。ここでは、キャビティ内部の電場を考える。
図16は、虚数部が無限大の場合のキャビティ内の電場を模式的に示す断面図であり、図17は、虚数部が有限の場合のキャビティ内の電場を模式的に示す断面図である。
図16に示すにように、キャビティをなす材料の屈折率の虚数部が無限大、つまり完全導体などのような物質のときの場合、キャビティ内部で電場Eの振幅は大きくなるが、物質の内部には電場Eは入り込めないため、キャビティの側壁でちょうど節になるような振動しか存在することができない。
この場合は、キャビティの幅が波長のN/2倍(Nは整数)の場合に共鳴が起こると考えられ、キャビティが密な配列(側壁の厚さが0)であってもそれぞれのキャビティの内部の電場Eは独立であり、全てが放射に寄与する。
しかし、一般の物質では虚数部は有限の値のため、図17に示すように電場Eの一部は物質の中に入り込み、電場Eは隣のキャビティの電場Eと結合してしまう。
こうなると隣のキャビティの電場Eの状態の影響を受けるため、勝手な状態がとれなくなり(大きな振幅になるための条件がより厳しくなり)、放射率は低下してしまう。例えば、キャビティ幅が波長のちょうど1/2の場合、隣り合うキャビティは、逆の位相で振動しなければならなくなり、放射が0(逆位相が足し合わされるため)となってしまう。
このような場合、壁をある程度厚くし、隣の電場からの入り込みを十分小さくすると、屈折率の虚数部が無限大の場合と同じように、キャビティ同志が独立となって放射率が上昇する。しかし、壁の厚みの分だけキャビティの表面密度は下がるので、屈折率の虚数部が無限大の場合よりは放射が低いと考えられる。
このような定性的な考察から、キャビティの幅と、物質の持つ屈折率の虚数部の値と、キャビティのピッチ(側壁の厚さ)とは関係すると考えられ、幅と材料とで決まる最適のピッチが存在することがわかる。具体的な最適ピッチの値は、数値計算によって得ることができる。
1−8.キャビティの形状について
これまでは、開口形状が正方形である立方体のキャビティに対して計算を行ってきた。これは、対称性が高く縦と横の方向が独立になるため、RCWA法での計算量が少ないといった理由から採用したが、実際にはこのような形状を簡単な方法で作製することは困難である。
機械加工に頼らず、エッチングなどで作製する場合は円形の開口形状(キャビティは円筒形)であることが望ましい。円形の場合には計算量がかなり多くなるが、定性的な考察は可能である。
図18Aは、開口形状が方形の場合、のキャビティを示す平面図である。
図18Bは、開口形状が円形の場合のキャビティを示す平面図である。
図19Aは、格子配列の場合のキャビティを示す平面図である。
図19Bは、千鳥格子配列の場合のキャビティを示す平面図である。
前述した「1−7.キャビティのピッチ」の定性的な考察(キャビティ内部の電場)を考えれば、キャビティの開口形状が図18Aに示す方形の場合と、図18Bに示す円形の場合とでは、同様な放射率のプロファイルを示すと考えられる。このとき、方形のキャビティの幅Wは、円形キャビティの直径Dに対応すると考えられる。つまり、前述した「1−5.キャビティの幅について」における数値範囲は、円形キャビティでは直径の範囲であると考えてよい。ただし、方形キャビティの場合よりも円形キャビティの場合の方が平面上でのキャビティの充填率が低くなってしまうため、放射率は、方形キャビティの場合よりも円形キャビティの場合の方が小さいものと考えられる。
円形キャビティの場合は、図19Aに示す格子配列よりも、図19Bに示す千鳥格子配列とすることにより、キャビティの充填率を高くすることができ、放射率を向上させることが可能となる。
図20は、開口形状が円形の場合において、石英表面のキャビティ深さが0μm(平面)、0.5μm、2.0μm、及び3.0μmの場合の放射率を示すグラフである。これは、図19Bに示す千鳥格子状配列の円形キャビティにおいて、石英表面のキャビティの直径Dを3.2μm、ピッチを4.5μmとし、深さdを0μm(平面)、0.5μm(アスペクト比:0.16)、2.0μm(アスペクト比:0.63)、及び3.0μm(アスペクト比:0.94)とした各サンプルを後述する第1の実施の形態の製造方法で作製し、各サンプルをそれぞれ測定したものである。各サンプルは、石英基板上に円形キャビティを形成して作製した。また、放射率は、FT−IRによる積分球を用いて測定した。
図20に示すように、RCWA法により計算した放射率と同様に、波長9μm付近の放射率を向上させることができることがわかった。また、開口形状が円形の場合も、正方形の場合と同様に、キャビティ深さを大きくすることにより、波長9μm付近の放射率を向上させることができることがわかった。
なお、これ以外の他の形状、例えば長方形、平行四辺形、楕円なども考えられるが、このような非対称な形状は偏光に対する選択性が現れてしまう。つまり、放射の偏光が波長によって偏るということになって、波長選択性を低下させてしまう。波長選択性の低下は、具体的に説明すると、図8に示す放射率のスペクトルの波がなだらかになることである。本技術は、石英又はガラスの複雑な放射特性をキャビティの共鳴波長と合わせることで、全体として放射係数を向上させるものである。波長選択性が低下すると特定波長における石英又はガラスの鋭い放射率の落ち込みを十分持ち上げることができない。以上の考察から、キャビティ形状は対称な形が望ましいことがわかる。
また、実サンプルを作製して測定したデータを紹介する。
紹介する実サンプルは、石英表面にキャビティを形成したサンプルである。サンプルのキャビティの形状は、下記表4に示すとおりである。
図21は、サンプルNo.11(ピッチ4.5μm、キャビティ径3.0μm、キャビティ深さ3.5μm)の実サンプルの平面写真である。
図22は、サンプルNo.13(ピッチ4.5μm、キャビティ径4.0μm、キャビティ深さ3.5μm)の実サンプルの平面写真である。
図23は、サンプルNo.14(ピッチ9.0μm、キャビティ径6.0μm、キャビティ深さ6.5μm)の実サンプルの平面写真である。
図24は、サンプルNo.16(ピッチ9.0μm、キャビティ径8.0μm、キャビティ深さ6.5μm)の実サンプルの平面写真である。
平板状の石英基板(No.10)、及び実サンプルNo.11〜16について、Emittance特性を調べた。結果を図25に示した。キャビティ構造を形成することで波長9μm付近のEmittance特性が向上していることが確認できた。また、波長5μm〜15μm帯域の赤外放射率特性を表4に示した。Flatサンプル(No.10)の赤外放射率が0.847であるのに対し、キャビティサンプル(No.11〜No.16)の赤外放射率は0.926以上の結果が得られており、キャビティサンプルにおいて赤外放射率特性が向上していることが確認できた。
また、ピッチに対しキャビティ径を比で0.7/0.8/0.9とした時の赤外放射率特性を見ると、ピッチ4.5μm、9.0μm共に、キャビティ径が大きい方(比:0.9)が赤外放射率が高いことが確認できた。
以上、説明したように、本実施の形態に係る熱放射制御素子によれば、石英基材又はガラス基材固有の特性に起因する特定波長領域の放射率を向上させ、優れた熱放射特性を得ることができる。
<2.熱放射制御素子の製造方法>
2−1.第1の実施の形態
第1の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法は、石英基板及びガラス基板のいずれかである無機基板の表面に所定形状が2次元配列されたレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンをマスクとし、エッチングにより無機基板の表面に2次元配列された開孔部を形成する工程と、無機基板の開孔部が形成された面とは反対の面側に、蒸着法又はスパッタ法により反射膜を形成する工程とを有する。
図26A〜図26Fは、第1の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の各工程を説明するための断面図である。以下、各工程について説明する。
[レジストパターンを形成する工程]
先ず、無機基板31としての石英基板を洗浄し、図26Aに示すように無機基板31を準備し、図26Bに示すように無機基板31の表面にレジスト30を塗布する。そして、フォトリソグラフィーやナノインプリントを用いて露光、現像を行い、図26Cに示すように所定形状が二次元配列された細密レジストパターンを形成する。
[開孔部を形成する工程]
次に、図26Dに示すようにレジストパターンをマスクとし、エッチングにて無機基板31の表面に所定の開孔部を形成する。その後、図26Eに示すようにマスクとして使用したレジストパターンをアッシングなどで除去する。
[反射膜を成膜する工程]
最後に、図26Fに示すように開孔部が形成された無機基板31の裏面に蒸着法又はスパッタ法を用いて反射膜32を成膜する。これにより、熱放射制御素子が得られる。
この第1の実施の形態によれば、図1に示す第1の構成例の熱放射制御素子を製造することが可能となる。
図27A〜図27Hは、第1の実施の形態に類似する熱放射制御素子の製造方法の各工程を説明するための断面図である。以下、各工程について説明する。
[エッチングマスクを形成する工程]
先ず、無機基板31としてのガラス基板を洗浄し、図27Aに示すように無機基板31を準備し、図27Bに示すように無機基板31の表面に金属層29を形成する。続いて、図27Cに示すように金属層29の表面にレジスト30を形成する。そして、フォトリソグラフィーやナノインプリントを用いて露光、現像を行い、図27Dに示すように所定形状が二次元配列された細密レジストパターンを形成する。更に、細密レジストパターンをマスクとして、金属層29のエッチングを行い、所定形状が二次元配列された細密レジストパターンを有する金属層29(エッチングマスク)を得る(図27E)。そして、レジストパターンを除去する。
金属層29の材質としては、例えば、Ni、Cr、Al、Ti、Ta、Cu、Au等やこれらの複合材などが挙げられる。
[開孔部を形成する工程]
次に、図27Fに示すようにエッチングマスクを介して、エッチングにて無機基板31の表面に所定の開孔部を形成する。その後、図27Gに示すようにエッチングマスクとして使用した金属層29をウェットエッチングなどで除去する。
開孔部の形成は、例えば、ドライエッチングで行う。ドライエッチングに用いるガスは、Arをメインガスとし、C、CFなどのラジカル反応ガスを混合して得られる。
[反射膜を成膜する工程]
最後に、図27Hに示すように開孔部が形成された無機基板31の裏面に蒸着法又はスパッタ法を用いて反射膜32を成膜する。これにより、熱放射制御素子が得られる。
この実施の形態によれば、図1に示す第1の構成例の熱放射制御素子を製造することが可能となる。
図28〜図31は、それぞれ、ピッチ4.6μm、直径3.2μm、及び深さ2.1μmの開口形状が円形である開孔部を示す平面写真、斜め45度写真、斜め45度拡大写真、及び断面写真である。
また、図32〜図34は、それぞれ、ピッチ4.6μm、直径3.9μm、及び深さ3.5μmの開口形状が円形である開孔部を示す平面写真、斜め45度写真、及び斜め45度拡大写真である。
2−2.第2の実施の形態
第2の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法は、石英基板及びガラス基板のいずれかである無機基板の一方の面に、誘電体膜と、反射膜と、保護膜とをこの順に積層する工程と、無機基板の他方の面に、透明導電膜を成膜する工程と、透明導電膜表面に所定形状が2次元配列されたレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンをマスクとし、エッチングにより無機基板の表面に2次元配列された開孔部を形成する工程とを有する。
図35A〜図35Iは、第2の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法の各工程を説明するための断面図である。以下、各工程について説明する。
[積層する工程]
先ず、無機基板41としての石英基板を洗浄し、図35Aに示すように無機基板41を準備し、図35Bに示すように無機基板41の一方の面に例えばSiOからなる厚み10nm以上の誘電体反射膜43をスパッタ法にて成膜する。また、図35Cに示すように誘電体反射膜43上に例えばAgからなる厚み75nm以上の反射膜42を蒸着法にて成膜する。また、図35Dに示すように反射膜42上に例えばCrからなる5nm以上の保護膜44を成膜する。
[透明導電膜を成膜する工程]
次に、図35Eに示すように無機基板41の他方の面に例えばITOからなる厚み5nm以上の透明導電膜45をスパッタ法や蒸着法にて成膜する。
[レジストパターンを形成する工程]
次に、図35Fに示すように透明導電膜45上にレジスト40を塗布する。そして、フォトリソグラフィーやナノインプリントを用いて露光、現像を行い、図35Gに示すように所定形状が2次元配列された細密レジストパターンを形成する。
[開孔部を形成する工程]
次に、図35Hに示すように、レジストパターンをマスクとし、エッチングにて無機基板41の表面に所定の開孔部を形成する。その後、図35Iに示すように、マスクとして使用したレジストパターンをアッシングなどで除去する。これにより、熱放射制御素子が得られる。
第2の実施の形態に係る熱放射制御素子の製造方法によれば、図4に示す第3の構成例の熱放射制御素子を製造することが可能となる。
2−3.他の実施の形態
前述した第1及び第2の実施の形態の開孔部を形成する工程において、N段目(Nは自然数)の開孔部の側壁にイオンエッチングにより、ウエットエッチングに対して耐性を有する側面保護膜を形成するパッシベーションモードと、側面保護膜が形成されたN段目の開孔部の底面をウエットエッチングによりエッチングし、N+1段目の開孔部を形成するエッチングモードとを交互に繰り返してもよい。これにより、アスペクト比の大きい形状を得ることができる。
パッシベーションモードでは、N段目(Nは自然数)の開孔部及びレジストパターン上にウエットエッチングに対して耐性を有する表面保護膜を形成した後、イオンエッチングによりN段目の開孔部の底面を露出させるとともに、N段目の開孔部の側壁に側面保護膜を形成することが好ましい。
ここで、ウエットエッチングは、電解エッチング法又は化学エッチング法のどちらを用いてもよいが、基板が耐腐食性の高い金属又は合金の場合や、開口径(幅)が20μm以下の開孔部を形成する場合、電解エッチング法を用いることが好ましい。
また、イオンエッチングは、Arイオンなどを用いて、真空装置を使用して真空雰囲気下で行ってもよく、大気圧プラズマ装置を使用して大気圧雰囲気下で行ってもよい。イオンエッチングにより、ウエットエッチングにて形成されたN段目(Nは自然数)の開孔部の側壁に側壁保護膜を形成することができる。側壁保護膜は、レジスト材、開孔部底面の基材などの物質が反応してできた生成物(エッチング残渣)を含むため、ウエットエッチングに対して耐性を有する。
このように初期エッチングモード後にパッシベーションモードとエッチングモードとを交互に繰り返し行うことにより、サイドエッチングを抑えながら深さ方向にのみエッチングを進めることができ、所望の開孔形状(高アスペクト形状)を得ることができる。
11,12,13,14 熱放射制御素子、21 無機層、21a 開孔部、22 反射膜、23 誘電体反射膜、24 保護膜、25,26 透明導電膜、29 金属層30 レジスト、31 無機層、32 反射膜、40 レジスト、41 無機層、42 反射膜、43 誘電体反射膜、44 保護膜、45 透明導電膜、101 石英基板、102 反射膜、103 衛星表面

Claims (12)

  1. 表面に2次元配列された開孔部を有する無機層と、反射膜とを備え、前記無機層が、石英層及びガラス層のいずれかである熱放射制御素子。
  2. 前記開孔部の開口形状が、円形又は正多角形からなる請求項1記載の熱放射制御素子。
  3. 前記開孔部の開口径が、3μm以上11μm以下である請求項1又は2記載の熱放射制御素子。
  4. 前記開孔部の深さが0.7μm以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱放射制御素子。
  5. 前記開孔部のアスペクト比が、0.2以上である請求項3記載の熱放射制御素子。
  6. 前記2次元配列が、格子配列又は千鳥格子配列である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱放射制御素子。
  7. 前記反射膜が、前記無機層の開孔部を有する面とは反対の面側に配置されてなる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱放射制御素子。
  8. 前記無機層と前記反射膜との間に、誘電体反射膜をさらに備え、
    前記誘電体反射膜が、単層の誘電体膜、及び屈折率の異なる複数の誘電体膜の積層体のいずれかである請求項7記載の熱放射制御素子。
  9. 前記反射膜の前記無機層が配置された面とは反対の面側に、保護膜をさらに備える請求項7又は8記載の熱放射制御素子。
  10. 前記無機層の開孔部を有する面側に、透明導電膜をさらに備える請求項7乃至9のいずれか1項に記載の熱放射制御素子。
  11. 石英基板及びガラス基板のいずれかである無機基板の表面に所定形状が2次元配列されたレジストパターンを形成する工程と、
    前記レジストパターンをマスクとし、エッチングにより前記無機基板の表面に2次元配列された開孔部を形成する工程と、
    前記無機基板の開孔部が形成された面とは反対の面側に、蒸着法又はスパッタ法により反射膜を成膜する工程と
    を有する熱放射制御素子の製造方法。
  12. 石英基板及びガラス基板のいずれかである無機基板の一方の面に、誘電体膜と、反射膜と、保護膜とをこの順に積層する工程と、
    前記無機基板の他方の面に、透明導電膜を成膜する工程と、
    前記透明導電膜表面に所定形状が2次元配列されたレジストパターンを形成する工程と、
    前記レジストパターンをマスクとし、エッチングにより前記無機基板の表面に2次元配列された開孔部を形成する工程と
    を有する熱放射制御素子の製造方法。
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