以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
(第1の実施形態)
まず、図3を参照して、本発明の第1の実施形態における撮像装置について説明する。図3は、本実施形態における撮像装置300のブロック図である。撮像装置300は、光学系301、撮像素子302、画像処理部303(画像処理装置)、および、CPU304を有する。光学系301は、被写体100から放射された光を撮像素子302上に結像(集光)させる。光学系301は、例えば、複数のレンズ、ミラー、絞り機構、および、フォーカスやズームのための駆動機構を備えて構成される。
撮像素子302は、1つのマイクロレンズ(以下、「ML」)に対応する(すなわち、1つのMLを共有する)複数の光電変換部(以下、「PD」)を有する。図4は、1つのMLを共有する複数の光電変換部を備えた撮像素子302の単位画素セル401の概略図である。図4(a)は、単位画素セル401の断面図を示し、図4(b)、(c)は、それぞれ、1つのMLを共有するPDを2分割、4分割した場合の正面図を示している。図4(a)に示されるように、1つのMLに対応する画素群により構成される単位画素セル401は、1つ目の分割PD402、2つ目の分割PD403、ML404、カラーフィルタ405、および、配線層406により構成される。図4(b)、(c)は、単位画素セル401におけるML404を共有する2分割PD402、403、および、4分割PD402、403、404、405の配置例を示している。図4(b)、(c)において、入射光は、ML404を通り、カラーフィルタ405によって分光特性を持ち、各分割PDへ照射される。カラーフィルタ405は、一定周期の繰り返しで単位画素セル毎に配列される。
なお、以下の説明において、図4(b)に示されるように1つのMLを共有する2つのPDを含む撮像素子を用いる場合、これらの2つのPDをそれぞれ第1の光電変換部(PD1)および第2の光電変換部(PD2)という。また、図4(c)に示されるように1つのMLを共有する4つのPDを含む撮像素子を用いる場合、4つのPDのうち少なくとも一つを第1の光電変換部(PD1)、4つのPDのうち他の(残りの)少なくとも一つを第2の光電変換部(PD2)という。
図5は、本実施形態におけるカラーフィルタの配列図であり、2分割PD402、403の例を示す。図5において、カラーフィルタ405は、R、G、G、Bのセット(縦2×横2の単位画素セル)が周期的に配列された、一般的なベイヤー配列の場合を例示している。本実施形態の撮像素子302の構造および特徴は、単位画素セルが分割構造であることを除いて、一般的な撮像素子と同様である。
ML404は、光学系301により構成される主光学系(主レンズ)に対して視野レンズの役割を果たす。このため、分割PDに到達する射出瞳からの光束は制限され、各分割PD上には、射出瞳の互いに異なる領域を通過した光束が到達する。すなわち第1の光電変換部および第2の光電変換部は、撮影光学系の射出瞳のうち互いに異なる領域を通過する光束を受光するように構成されている。このため、単位画素セルにおいて同一配列の画素、例えば、PD402のみの画素を、受光領域の全体から集めて構成した画像と、PD403のみの画素を集めて構成した画像との間には、視差が生じる。このような画像間の視差を利用することにより、焦点検出やステレオ画像処理が可能となる。画素間で視差を有する画像は、視差画像と呼ばれる。
また、一般的な太陽光などのコヒーレンスの低い光を照明とする撮影照明条件、および民生光学素子を利用する条件下では、分割瞳間の空間コヒーレンシーは低いとみなすことが可能である。このため、単位画素セル401中の各PD、例えば2分割402、403間、または、4分割402、403、404、405間の画素値の加算で得られる画像は、従来の非瞳分割光学系で撮影した像と略等価な値として得られる。この加算画像に対して、後述の画像処理部303に搭載の前処理および後処理からなる画像処理、または、一般的な画像処理を実行することにより、従来の撮像素子を用いた場合と同様の画像を得ることができる。
また、撮像素子302からは、一つのMLを共有する各PDに対応する分割数分の視差画像信号が出力される。多くの場合、読み出し回路が共有され、例えばスイッチング回路の切り替えによる順次読み出しにより各視差画像信号が順次出力される。撮像素子によっては占有伝送帯域節約のため、2つ以上の視差画像間で四則演算、例えば2つ以上の視差画像を画素毎で加算した信号と非加算画像をセットで出力する。加算画像出力デバイスの場合、後述の画像処理部にて分離処理を行い、各視差画像に復元することにより、視差画像信号毎に出力した場合と等価な画像信号を得ることができる。
画像処理部303は、大きく分類すると、前処理部3031と後処理部3032とに分けることができる。前処理部3031は、撮像素子302で光電変換されたアナログ画像信号に対して相二重サンプリング(CDS)によるノイズ除去、オートゲインコントロール(AGC) によるゲインアップ、黒レベル補正、A/D変換、キズ補正などの基礎的な処理を行う。そして前処理部3031は、各種処理後の信号をデジタル信号に変換した画像信号を得る。前処理部3031は、アナログ信号に対する前処理が主であるため、主要部はAFE(アナログフロントエンド)とも呼ばれる。デジタル出力センサと対で使われるものは、DFE(デジタルフロントエンド)と呼ばれる。
一方、後処理部3032は、前処理部3031にてデジタル信号に変換された画像信号に対して絵作りに関する画像処理や記録・伝送のための符号化圧縮処理を行う。後処理部3032は、例えば、ベイヤー配列補間、線形化マトリクス処理、ホワイトバランス調整、YCC変換、色差・階調・コントラスト補正、エッジ強調などの処理を行う。近年では、複数枚合成により広ダイナミックレンジ画像を生成するダイナミックレンジ拡張処理や超解像処理などの付加価値向上処理も後処理の一つとして分類される。これらの処理により、一枚または動画に形成された出力像の情報が生成される。またこれらの後処理は、前処理部3031のAFE処理に対してDBE(デジタルバックエンド)処理と呼ばれる。
そして、画像処理部303で生成された画像情報は、不図示のDRAMなどから構成されるワークメモリに一旦保存され、または、想定される後段の処理部に直接伝送される。後段の処理部としては、例えば、半導体メモリなどからなる記録部、液晶などのディスプレイから構成される表示部、無線LANやUSBなどの有線ケーブルを接続可能なI/F(インターフェース)から構成される外部入出力I/Fが挙げられる。
CPU304は、撮像装置全体の動作を制御する制御手段である。CPU304は、例えば、光学系301のフォーカス、ズーム、絞りなどを制御する。CPU304からの命令に基づいて、光学系301のコンポーネントに含まれるレンズ群や絞りが駆動される。すなわちCPU304は、フォーカス距離、焦点距離、絞り値などのカメラパラメータの状態情報を常に管理している。
一つのMLに対して複数のPDを含む撮像素子302を有する場合、または、その映像信号を入力とする画像処理装置において、画像処理部303、主に前処理部3031が本実施形態の主要要素である画素値のシェーディング補正処理を実施する。また後処理部3032は、付加価値的な処理である視差画像を用いた測距処理および画素加算に基づく観賞用画像生成を行う。画像処理部303にて得られた測距情報は、CPU304に伝送され、CPU304はこの情報に基づいて、光学系301のフォーカシング(フォーカス制御)を行う。フォーカシング後の被写体距離やその際の絞り値、ズーム状態などのカメラパラメータは、CPU304に保持される。より高精度なカメラパラメータを制御に用いる場合、光学系301のユニットに搭載される不図示のエンコーダを用いてカメラパラメータの状態を測定し、測定された状態をCPU304に記録する。
前述の装置の構成における前処理および後処理の定義付け、各処理部に含まれる画像処理の分類およびグループ分けや順番は、近年の急速な画像処理の発展およびデバイスの進化の影響を受け、曖昧なものとなっている。例えば、シェーディング補正処理を、測距や観賞用画像生成処理等の後半の後処理の一部として実施することもありうる。また逆に、視差画像間の画素加算を基礎的な画像処理と位置付け、前半の前処理として実施することもありうる。加えて、従来主流であったAFEでは、シェーディング補正のような複雑な処理は苦手のため、DBEで実施されていた。しかし、DFEが主流となりつつある現在、処理の共通性から前処理として実施されるなどの影響がある。また、撮像素子302が画像処理回路をオンチップで含む場合、前処理および後処理、一つのMLを共有する複数PDを持つ撮像素子302に特有のシェーディング補正、測距処理、観賞用画像生成のための画素加算の全てを撮像素子302内で実施してもよい。また、画素加算した視差画像と非加算画像のセットを出力とする撮像素子302の場合、本実施形態のシェーディング補正および測距処理前に加算画像と非加算画像の間で分離処理、例えば画素単位レベルの四則演算を行い、各視差画像に分離する処理が追加される。
このように、本実施形態に適用可能な装置および処理の構成は様々であり、以下説明する画素値のシェーディング補正処理は、前述の装置や処理構成、およびその順番に制限されるものではない。このため、以下、撮像素子302の出力の前述した些細な組み合わせなどの条件の違い、処理順の違いを省いた条件下で、本実施形態の主要要素である画素値のシェーディング補正処理について説明する。
次に、図1を参照して、本実施形態におけるシェーディング補正を行う画像処理部303(画像処理装置)について説明する。図1は、本実施形態における画像処理部303のブロック図である。画像処理部303は、シェーディング補正手段3033、画像処理手段3034、および、測距手段3035(焦点検出手段)を有し、シェーディング補正を実行可能に構成されている。
図1に示されるように、画像処理部303には、1つのMLに対して複数のPDを有する撮像素子302で撮影した複数の視差画像(画像信号)が入力される。撮像素子302から出力された画像信号に対するA/D変換などの前処理、および、画像信号の一部が加算画像の場合の分離処理は実施済みであるとする。シェーディング補正手段3033は、瞳分割系を考慮したシェーディング補正を実施し、飽和の影響を補正した複数枚からなる一群の視差画像を出力する。画像処理手段3034は、画素加算処理により得られた加算画像に基づいて、観賞用画像を生成する。観賞用画像への変換を行う画像処理手段3034は、ベイヤー配列補間や符号化圧縮などを行う後処理部3032に対応する。測距手段3035は、補正済みの複数の視差画像(補正後の第1の信号および第2の信号)に基づいて、測距処理(焦点検出処理)を行う。また、複数の視差画像は、密な奥行情報の取得に利用し、不図示の記録部に保存し、または、外部入出力I/Fから出力して外部の画像処理手段の入力として利用してもよい。
シェーディングは、大きく分けて二種類の影響により生じる。図2は、シェーディングの影響を説明する図である。図2(a)は、通常の非瞳分割光学系においても不可避の周辺光量低下を主とするシェーディングを示している。図2(b)、(c)は、本実施形態の対象である瞳分割光学系に特有のシェーディング(左右2分割の場合、上下左右4分割の場合)をそれぞれ示している。シェーディング補正は、両方の影響を低減するように行う。実際の処理の実行においては、2つの影響を合算して考慮した補正を実施することが効率的である。
前述のように、光学系301と、撮像素子302の単位画素セル401内のMLおよび1つのMLに対して複数の光電変換部を有する撮像素子302とを組み合わせることにより、瞳分割光学系を構成することができる。図2(b)の傾向から観察可能なように、瞳分割に伴うシェーディングは、複数の視差画像間で瞳分割方向に偏ったシェーディングを生じる。以下、最初にMLを共有する複数のPDを持つ撮像素子302を用いることにより生じる特有のシェーディング要因について説明する。
図6は、分割瞳(射出瞳を分割した部分領域)と1つのマイクロレンズ(ML)を共有する複数の光電変換部PDへの入射主光線との関係を示す図である。図6(a)は全瞳に対応する画像中心近傍の単位画素セルへの入射主光線の説明図、図6(b)は画像周辺部の単位画素セルへの入射主光線の説明図である。ここで、画像中心とは、光学系301の光軸と撮像素子302上に形成される画像面との交点である。
図6(a)においては、各分割瞳から入射する主光線の角度は略等しい。一方、画像周辺部の単位画素セルに入射する各分割瞳からの主光線の角度は、図6(b)に示されるように、単純な幾何学的関係に基づき相対的に大きく異なる。この結果、一般的なシェーディング要因であるCOS4乗測の影響により、1つのMLを共有する対となる画素間で、被写体の同一点からの等しい輝度または照度の光束を投影しても、画素値には差が生じる。これが、分割瞳光学系に生じる特有のシェーディングの主要な原因である。COS4乗測の影響は、主レンズからPDまでの距離が1つのMLを共有する対となる画素間で著しく異なる場合、主光学系の瞳サイズが同様に異なる場合、画像中心からの当該単位画素セル401の距離が同様に著しく大きい場合には顕著となる。ここで、主レンズからPDまでの距離とは、物理的な距離ではなく主レンズを構成するレンズ群を1つの合成レンズに換算した際の仮想距離を指す。
COS4乗測は、ケラレのない理想状態、例えば長焦点距離のレンズの場合、瞳分割特有のシェーディング現象を忠実にモデリングする。一方、短焦点距離のレンズでは、鏡筒やレンズ保持部によるケラレに起因するシェーディングが生じやすく、主要な要素となる場合が多い。また、ズームやフォーカス制御により射出瞳が移動するのに対し、絞り位置が移動しない場合にはケラレによるシェーディングがさらに生じ易くなる。
図7は射出瞳と絞り700の位置(絞り位置)のずれにより生じる偏りを持ったケラレの様子を説明する図である。図7(a)は、射出瞳と絞り位置とが互いに一致する場合を示す図である。通常、光学系301における絞り位置は、画角変動に対し、周辺光線の経路の変動が一番小さくなる射出瞳の位置に設定される。このため、画像中心近傍の画角に対するケラレと、画像周辺部に対するケラレの間には大差がない。図7(a)において、左側の円は画像周辺部から見た射出瞳701、右側の円は画像中心部から見た射出瞳702である。射出瞳701、702は、略同じ形状および大きさを有する。
しかしながら、ズームやフォーカス制御状態によっては、光学系301に含まれる絞り位置に対し、射出瞳が光軸方向にずれを生じる場合がある。図7(b)は、撮像素子302の周辺部に到達する光束に対しては、ずれた位置に移動した絞りにより、射出瞳が偏心した形でケラレが生じる状態を表す。この場合、画像中心近傍の画角と周辺部の画角の間で特有のシェーディングを生じる。図7(b)において、左側の円は画像周辺部から見た射出瞳703、右側の円は画像中心部から見た射出瞳704である。射出瞳からずれた位置に設置された絞り700による遮蔽を受け、周辺画角から見た瞳(射出瞳703)は小さくなる。加えて、光学系301の合成主点が撮像素子302の近くに位置する場合、周辺部に近づくにつれて単位画素セルにおいて光学系301の主レンズとMLを結ぶ光軸が大きく傾く可能性がある。
図8は、マイクロレンズMLと光電変換部PDとのアライメントの影響を説明する図である。図8(a)に示されるような画像周辺部の画角の単位画素セルについて説明する。MLとPDとのアライメントが適切な場合、図8(b)に示されるように、射出瞳EPからの光束を効率良く各PDで受光することが可能である。一方、MLとPDとのアライメントが適切になされていない場合、図8(c)に示されるようになる。ここで、撮像素子302側が光学系301の高いテレセントリック性を想定し、MLとPDとのアライメントは略等ピッチである。一方、光学系301のテレセントリック性が低い場合、別の分割画素に入射すべき光束が隣接PCに入射してクロストークが発生、または、図8(c)に示されるように光束の一部が画素構造や配線層406によってケラレを生じ、相対的な光量低下を引き起こす。これは、前述の鏡筒やレンズ保持部により生じるケラレと同様に、各PDの断面積から見える射出瞳サイズの縮小として影響が現れ、画像周辺部の画角ほど影響が大きくなるためである。
図9は、1つのマイクロレンズMLを共有する複数の光電変換部PDの射出瞳の大きさおよび形状の説明図であり、2分割(2divided)の場合および4分割(4divided)の場合のそれぞれを示している。図9に示されるように、前述の複合的要因により、PDの射出瞳の大きさおよび形状は、単位画素セルにおける位置に応じて変化する。図9中の左下は、画像中心近傍の画角の単位画素セルから見た射出瞳の模式図である。画像中心近傍の場合、1つのMLを共有する複数のPD毎に見込む射出瞳形状は略同一となる。被写体が均一な輝度または照度面であって、合焦して同一物点を投影している場合には画素値は略同一となる。
一方、図9中の右上は、撮像素子302の周辺部の画角の画素セルから見た射出瞳の模式図である。各PD間でケラレ量が異なるため、射出瞳の形状および大きさには差が生じ、得られる画素値に差が生じる。ただし、鏡筒やレンズ保持部により生じるケラレ形状は鏡筒形状などに依存して複雑な形状となる。また、光学系301と撮像素子302との間での想定するテレセントリック特性のずれに起因するケラレ形状は、相対的な特性のずれにより影響の大小が変化して方向反転が生じる。よって、図9に示される形状は模式的なものにすぎず、画素値の光量差に影響する相対サイズの変化を表す近似的なものである。
前述のように、COS4乗則による影響、および各分割瞳から見た射出瞳の大きさの違いの影響により、シェーディングが発生して1つのMLを共有する各PD間での受光量に差が生じる。その結果、均一な輝度または照度の平面を撮影しても、2分割の場合は図2(b)、4分割の場合は図2(c)に示されるように方向性を有する、空間的に不均一な諧調差を持ったシェーディングが発生する。
図10は、画角または画像座標の変化に応じたシェーディングによる諧調変化(シェーディング特性)の説明図である。図10は、被写体が均一な輝度または照度面の場合の像のプロファイルに相当する。図10において、横軸は、画像中心を通る瞳分割方向に対する画像座標(画像の画素位置)である。図10の縦軸は、撮像素子302の各単位画素セルの瞳分割PDから得られる諧調値(または係数)である。図10(a)は、瞳分割を行わない撮像素子、または、画素加算後に対応する非瞳分割時の光学系起因の減光特性を示している。一般的なシェーディング影響により、周辺画角に行くほどに諧調値に減光作用が生じる。
図10(b)は、瞳分割時の瞳分割起因のシェーディングによる諧調変化の分布図である。ここでは、1つのMLを共有する2つのPD(2分割PD)における等輝度光を入射した場合の諧調値の分布の違いを示している。対となる一方の視差画像を視差画像1、他方を視差画像2とする。単位画素セル画素構造における左右のいずれが視差画像1または視差画像2であるかは、前述のシェーディング要因の条件により変化する。このため、図10(b)の関係は厳密ではない。横軸の同じ2曲線上のサンプリング値は、同一の画像座標の諧調差、撮像素子302の観点で言い換えれば、1つのMLを共有するPDの諧調差、または感度差を表す。PDは画像の周辺部に行くほどシェーディングの影響を受ける。このため、1つのMLを共有する複数のPDに対して等輝度光を入射した場合であっても大きな諧調差を生じる。
図10(c)は、シェーディングの影響による図10(a)、(b)を合成し、同時に考慮した場合のシェーディング特性である。図10(a)の非瞳分割時の光学系起因のシェーディングおよび図10(b)の瞳分割起因のシェーディングの影響は、画像中心を基準とする、少なくとも瞳分割方向の座標位置を変数とする補正係数を用いたゲイン補正により補正される。画像中心を基準とする瞳分割方向の座標位置の変数とは、具体的には、水平方向の2分割の瞳分割の場合には水平座標、水平垂直方向の4分割の瞳分割の場合には水平および垂直方向の画像座標を表す変数である。図10(d)は、図10(c)の合成シェーディング特性に対するシェーディング補正パラメータの一例である。補正パラメータを変数である画像座標の対応する諧調値に乗算することにより、シェーディング補正が実施される。シェーディング補正パラメータが図10(d)のように1以上の拡張方向に係数を持つ場合、係数によるゲイン補正と同時にスケーリングまたはビット深度の拡張を実施することが好ましい。図10(e)は、その補正結果である。視差画像間、各視差画像内でシェーディングの影響が補正され、均一な感度、言い換えれば等しい諧調特性が得られる。
前述の瞳分割に関するシェーディング補正パラメータ、例えば、水平座標を変数とする補正係数や水平垂直座標を変数とする補正係数は、撮像装置設計時の設計パラメータまたは撮像装置を用いた計測により作成する。補正係数は、前述の非瞳分割時の光学系起因のシェーディング特性を含んだ形でも作成可能である。
具体的には、補正係数は、光学系301(撮影光学系)、撮像素子302、および、絞りなどを含む鏡筒構造、および、ズーム、焦点距離、絞り値などの撮影時のカメラパラメータに基づく光学計算、例えば幾何光学演算による計算により求められる。実際には、光学設計CADの機能を利用する場合が多い。まず、光学系301を設計した光学系設計CADを利用し、等照度面を撮影した場合の諧調分布からなるシェーディングデータを分割瞳毎に光線追跡により計算する。その際、鏡筒やレンズ保持部のデータも用いて、鏡筒やレンズ保持部によるケラレも考慮したシェーディングの影響を演算する。図10(c)に示されるように、図10(a)の非瞳分割時の光学系起因のシェーディングおよび図10(b)の瞳分割起因のシェーディング特性を同時に考慮したシェーディング特性が得られ、補正時に効率的な計算が実現可能である。そしてこの諧調分布を、画像中心座標を基準に等諧調となるような補正係数を水平座標または水平垂直座標を変数として分割瞳毎に算出する。前述のように、図10(d)は合成補正パラメータであり、図10(c)のシェーディング特性を補正するパラメータとして計算される。
前述の光学系設計CADとしては、Synopsys Inc.(ORA)社開発のCODEVおよびLightTools、Radiant ZEMAX LLC.社開発のZEMAX等の製品が代表的なものとして挙げられる。これら設計CADは撮像面におけるシェーディングの影響を光線追跡に基づき計算する専用コマンドを備える。また、配線層406に起因する、より詳細なケラレ効果を考慮したシェーディング特性を計算する場合であって、特に基本機能が不足する場合、各設計ソフトに備えられたマクロ機能を利用して画素セルの構造モデルを計算に含めることにより、実現可能である。マクロにより、図4(a)に示される単位画素セル401の構造を光線追跡時に考慮できるように入力する。画素セル構造の波動光学的影響を厳密に計算する場合、連携機能を用いて有限要素法などによる構造解析可能なソフトによる計算出力を用いてシェーディングによる影響を計算する。また、補正パラメータは、撮像装置を用いた計測により作成してもよい。等照度面を撮影した際の各単位画素セルの分割瞳毎の諧調値からシェーディングデータを計測し、この諧調分布を、画像中心座標を基準に等諧調となるような補正係数を水平座標または水平垂直座標を変数として分割瞳毎に算出してもよい。
事前に設計CADによる計算、または測定により得られた補正パラメータは、画像処理部303に含まれる不図示のROMなどの記録部に保存される。補正パラメータは、カメラパラメータに対して代表的な組み合わせに対してのみ用意してもよく、または、全てのパラメータ変数の定義域範囲をカバーするような多次元テーブル形式で用意してもよい。
撮像素子302のダイナミックレンジが十分広く、瞳分割数が少なく、シーンの輝度範囲が狭く、かつ撮像装置300の露出条件が適切な場合、撮影画像の諧調値はほぼ飽和することなく諧調値が得られる。このため、本実施形態のシェーディング補正により、視差画像間の諧調差が適切に補正され、視差画像間の位相差測距等が十分精度良く実現可能である。一方、撮像素子302のダイナミックレンジが狭い場合、瞳分割数が多い場合、シーンの輝度範囲が広い場合、または、撮像装置300の露出条件が低輝度部分に不適切に適応され撮影が行われた場合、画像内の高諧調部分に飽和が発生する。飽和画素に本実施形態のシェーディング補正を実施すると、視差画像の対応する画素間で逆に疑似的な諧調差を生じてしまう。
図11は、シェーディング補正の際の飽和画素値の説明図であり、2分割PDの場合を例として示している。図11(a)は、本実施形態の飽和対策を行わない場合において、光電変換ユニットに含まれる2つの光電変換素子PD1、PD2の出力特性、およびPD1とPD2の出力の合成出力特性を示す。合成出力は、少なくとも光電変換素子の信号を加算することで得られる。合成出力は平均化によって取得してもよい。また、増幅などの追加処理を実施してもよい。図11は、説明のため、PD1のほうがPD2より感度が高い場合、すなわちPD1のほうがPD2よりも光が多く入力している場合を示している。
光電変換素子PD1、PD2への入射光が範囲1101内の場合、PD1のほうがPD2よりも発生電荷が多い。PD1は未飽和のため、PD1とPD2を合成した出力は適切な出力が得られる。ところが、入射光が範囲1102内の場合、PD1が飽和してPD2が未飽和である。この場合、PD2のみが、入射光に応じて線形性を有した信号が出力される。このため、範囲1102内でシェーディング補正した信号には諧調差が生じる。このような問題に対しては、特許文献2(特開昭63−276010号公報)などにおいて、1つのMLを共有する複数のPDのうち少なくとも一つの画素が飽和画素の場合、その画素間の演算を相関演算の対象から外すという対策が提案されている。
図12は、相関演算における飽和画素の影響の説明図である。図12(a)は、飽和領域を含む相関におけるプロファイルを示す。例えば、視差画像1(1201)および視差画像2(1202)をシフトさせつつ差分の絶対値総和演算を行い、相関を計算する。図12(a)は、シェーディング補正を行わない場合の相関演算の例である。飽和諧調画素の境界近傍の特徴が相関において良い影響を与える。しかしながら実際には、非飽和領域においてはシェーディングの影響により合焦の位相位置でも画素値に差が生じ、相関演算精度は低下する。
図12(b)は、シェーディング補正後の画素置換で相関演算を行う例である。逆に、非飽和領域においてはシェーディング補正の効果により相関演算精度は向上する。一方、飽和諧調画素の部分では、画像周辺部でシェーディング特性が異なると、等輝度または等照度物点を射影した画素の対であってもその諧調はシェーディング補正の弊害を受け、異なってしまう。
図12(c)は、1つのMLを共有する複数のPDのうち少なくとも一つの画素が飽和画素の場合、その画素間の演算を相関演算の対象から外す場合を示している。点線部で囲まれた領域が少なくとも一方の画素が飽和している領域となる。図示されたプロファイル特性のようなテクスチャ性の低い場合、飽和領域を除くと、図12(c)のプロファイルの飽和の右側にあるような微小な特徴のみを用いて相関演算せざるを得ない状況が多くなり易い。このため、相関演算の信頼度が低下する。微小特徴は、照明変化やノイズで生じた偽対応特徴である可能性も高い。
また飽和は、1つのMLを共有する複数のPDの諧調値の総和による観賞用画像生成にも影響する。図11(a)の合成出力は、PD1が飽和する範囲1102では、PD2の出力のみに依存して諧調が変化する。結果として、合成出力は、PD2が飽和したところから、ニー特性と呼ばれる入力に対する非線形な感度特性を有する。このようなニー特性を持って取得した諧調値は、特に図5に示されるようなカラーフィルタ配列を有する撮像素子302で撮影し、後段の画像処理部でカラー画像として処理する際、色ずれ、色曲がり、色シェーディングなどと呼ばれる目立つ現象として現れる。
そこで本実施形態は、飽和画素に対し、1つのMLを共有する少なくとも一つの非飽和画素がある場合、1つのMLを共有する非飽和の画素の諧調値により、シェーディング特性値または補正値を用いて、飽和画素値が非飽和な場合の諧調値を推定する。飽和画素とは、シェーディング補正前の諧調値について、ある閾値を超える諧調値を持つ画素である。閾値は、撮像素子に固有のノイズや信号の揺らぎ等を考慮して決定される。換言すると、1つのMLを共有するいずれかのPDが所定のレベル以上の場合、すなわち飽和とみなせる場合、所定レベルに未達の画素レベルに基づいて、飽和画素に飽和が生じない時のレベルを推定し、感度差を補正する。つまり、シェーディング補正手段は、同一の単一画素セルに含まれる分割瞳画像に対応する複数の光電変換部から得られる撮像信号のうち、少なくとも1つ以上が所定レベル以上の場合、所定レベル以上の画素を飽和とみなす。そして、所定レベルに未達の画素のレベルに基づいて、飽和画素に飽和が生じないときのレベルを推定して感度差を補正する。
図11(b)は、本実施形態の飽和対策の処理方法を示す図である。非飽和の低輝度の信号PD2に基づいて、飽和しているPD1の本来の諧調を推定する。等輝度または等照度の同じ被写体を投影していると想定して推定を行う。推定にはシェーディング特性情報または補正情報を用いる。一方から他方を算出可能である。同一座標の視差画像1と視差画像2のシェーディング特性データ、および、PD2の諧調値を用いて、以下の式(1)により、シェーディング補正前の諧調値を推定することができる。
ただし、実際にはシェーディング補正後の諧調値が得られればよい。このため、式(1)は以下の式(2)で表されるようにより簡単に記述される。
このような補正を実施することにより、図11(a)に示されるようにすぐに飽和するPD1の諧調を、より広ダイナミックレンジで計測可能となる。各視差画像を補正するため、範囲1102の入力諧調領域において、合成出力画像においても推定が反映され、図11(b)に示されるような線形特性を維持した推定合成特性が実現可能である。図中の太線が補正により得られる特性直線である。
しかしながら、1つのMLを共有する一部の分割瞳画素が飽和画素であるのに対し、残りの非飽和画素の信号レベルが飽和画素の信号レベルに対応する最低値に満たない場合、視差により対応しない別の物体点が投影されている可能性が高い。このため、上記方法では正しく推定することができない。図11(c)は、その場合(2分割の場合)の例を示している。高輝度側信号レベル1104が既に飽和しているのに対し、未飽和の低輝度側信号レベル1105が、シェーディング特性から推定される飽和に対応する最低諧調閾値1103に満たない場合を考える。この場合、通常シーンにおいては、該当画素は非合焦部分の異なる被写体の写像、すなわち視差が発生している可能性が高い。このため、視差が発生している画素で、分割瞳画素の一方が飽和画素である場合、上記方法で推定した値は本来の信号値とは異なる。このため、合成出力信号おいて、本来の色とは異なる色づきが発生してしまう。
そこで本実施形態の撮像装置300は、分割瞳画素の一部の画素が飽和している場合、当該画素に発生している視差量に基づいて、後段の彩度抑圧手段を用いて色づきを抑える処理を行う。続いて、図17および図18を参照して、彩度抑圧手段(ゲイン設定手段)による色づきを抑える処理について説明する。
図17は、本実施形態の画像処理装置の一部を構成するシェーディング補正手段および画像処理手段のブロック図である。図17において、シェーディング補正手段1700および画像処理手段1710は、それぞれ、図1中のシェーディング補正手段3033および画像処理手段3034に相当する。図18(a)は瞳分割撮像系の感度差特性の関係、図18(b)は抑圧ゲインの決定に関する説明図であり、2分割の場合を例にとり説明する。
図17において、1701は飽和判定手段(判定手段)である。飽和判定手段1701は、第1の光電変換部(PD1)から得られる信号(第1の信号)および第2の光電変換部(PD2)から得られる信号(第2の信号)のそれぞれが所定のレベル(飽和レベル)に達しているか否かを判定する。すなわち飽和判定手段1701は、図1に示される瞳分割撮像系(撮像素子302)から得られる画像信号(瞳分割信号)の信号レベルが飽和しているか否かを判定する。そして飽和判定手段1701は、その判定結果(飽和判定情報)を後述する飽和補正値生成手段へ送る。1702は飽和補正値生成手段である。飽和補正値生成手段1702は、飽和判定手段1701から得られる判定結果(飽和判定情報)に基づいて、画像信号を補正するための飽和補正値を生成する。
1703は飽和補正手段(補正手段)である。飽和補正手段1703は、飽和判定手段1701からの情報に基づいて第1の信号または第2の信号を補正する。すなわち飽和補正手段1703は、飽和補正値生成手段1702により生成された飽和補正値を用いて、画像信号(瞳分割信号)を補正する。1704はデータベースである。データベース1704は、飽和補正値を生成するために必要な、瞳分割して読み出された視差画像の同一画素部を構成する各々のPDの瞳分割撮像系に起因した感度差に関する情報が記録されている。この情報は、飽和補正値生成手段1702が飽和補正値を生成する際に利用される。
1711は画像加算手段である。画像加算手段1711は、シェーディング補正手段1700から出力された瞳分割信号(補正後の瞳分割信号)を加算して、1つの画素信号を出力する。1712は画像信号処理手段である。画像信号処理手段1712は、例えば、ベイヤー配列補間、線形化マトリクス処理、ホワイトバランス調整、YUV変換、色差・階調・コントラスト補正、エッジ強調などの各種処理を行い、YUV信号を出力する(Y:輝度信号、UV:色差信号)。
1713は視差量算出手段(算出手段)である。視差量算出手段1713は、第1の光電変換部(PD1)と第2の光電変換部(PD2)との視差量を算出する。すなわち視差量算出手段1713は、瞳分割撮像系(撮像素子302)から得られる信号レベルの情報(瞳分割信号)に基づいて、視差量を算出する。1714は抑圧ゲイン算出手段である。抑圧ゲイン算出手段1714は、視差量算出手段1713により算出された視差量に基づいてゲイン(抑圧ゲイン)を算出する。
1715は彩度抑圧手段(ゲイン設定手段)である。彩度抑圧手段1715は、飽和判定手段1701からの情報および視差量算出手段1713からの情報に基づいて、補正後の第1の信号および第2の信号から得られた信号(UV信号などの色情報を含む信号)のレベルを低減させる。すなわち彩度抑圧手段1715は、画像信号処理手段1712から出力されたYUV信号に対して、視差量に応じて抑圧ゲイン算出手段1714により算出された抑圧ゲインをUV信号(色差信号または色信号)に乗算して出力する。
続いて、飽和判定手段1701、視差量算出手段1713、抑圧ゲイン算出手段1714、および、彩度抑圧手段1715について詳述する。まず、飽和判定手段1701について説明する。図18(a)は、2分割の感度差特性を示したものであり、PD1、PD2の出力をそれぞれVal1、Val2とする。図18(a)はPD1の感度がPD2の感度よりも高い例を示しており、視差量が0であるならば、PD1がPD2よりも先に飽和し、そのときのVal1の値をTh1とする。また、視差量が0である場合に、Val1の値がTh1にちょうど達したときの、Val2の値をTh2とする。すなわち、このTh1とTh2の違いがPD1とPD2の感度差特性を示す。Val1がTh1に達し、かつ、Val2がTh2以上である場合、分割瞳画素の一部の画素が飽和していることになる。なお、感度差特性は像高位置に応じて変化するため、PD2の感度がPD1より高い場合がある。この場合、PD2がPD1よりも先に飽和し、そのときのVal2の値をTh2、Val1の値をTh1とすると、Val2がTh2に達し、かつ、Val1がTh1以上であるとき、分割瞳画素の一部の画素が飽和していることになる。
続いて、視差量算出手段1713について説明する。図18(a)において、PD1の出力がTh1と同じ値であるため、PD1は飽和しており、入力信号は範囲1802内にある。この場合、PD2の出力は、感度差特性の直線上のいずれかとなるため、Th2からTh1の間の値を持つはずである。しかしながら、PD2の出力がTh2未満の場合、感度差特性に沿わない信号がPD1とPD2に入射されている、すなわち視差が発生している可能性が高いと判定することができる。また、どれだけ視差が発生しているかを示す視差量は、飽和レベルからどれだけ離れているかということ、すなわち差分量(Th2−Val2)と定義することができる。この値が正で大きいほど視差が大きく発生していることを示し、負の値であれば視差が発生していないこととなる。なお、PD2の出力がTh2からTh1の間の値である場合、視差が発生している可能性が全くないとはいえないが、ここでは、確実に視差が発生していると判定できるものを視差が発生していると定義する。ただし本実施形態はこれに限定されるものではなく、その可能性を考慮して判定するように構成ことも可能である。
続いて、抑圧ゲイン算出手段1714について説明する。図18(b)は、横軸に視差量(Th2−Val2)、縦軸に抑圧ゲイン(gain)の関係を示す図である。Th2は、PD2の飽和レベルであり、像高位置に応じて決定される。PD2の出力(Val2)がTh2より小さい場合、すなわち(Th2−Val2)が正の場合、視差が発生している可能性が高いため、抑圧を行うように制御する。具体的には、視差量が大きいほど色づきが大きいと仮定し、(Th2−Val2)が大きくなるにつれて、抑圧ゲインを0に近づけるように制御する。一方、(Th2−Val2)が負の場合、視差が発生している可能性が低いため、抑圧ゲインを1にする。すなわち、この場合には何も処理を行わないように制御する。また、前述のように、Th2は像高位置に応じて変化する。このため、Val2が同じでも像高位置によって、抑圧ゲインは変化する。また、視差が発生している状況では必ず誤推定による色づきが発生すると考え、視差量に応じて抑圧ゲインを変化させることのほか、(Th2−Val2)が正の場合、ゲインを0にして強制的に彩度を抑圧するようにしてもよい。
続いて、彩度抑圧手段1715について説明する。彩度抑圧手段1715は、画像信号処理手段1712から出力されるYUV信号に対して、抑圧ゲイン算出手段1714にて算出された抑圧ゲイン(gain)に基づき、色差信号であるUV信号に対して抑圧ゲインを乗算して出力する。
なお、前述の各処理は画素単位で行っているが、抑圧処理を行う画素と行わない画素が連続する場合、不自然な画像となる可能性もある。このため、周辺画素を考慮して抑圧処理を行うようにしてもよい。図14は、周辺画素を考慮した抑圧の説明図である。図14のN×Nの領域内において、片方画素が飽和して視差が発生している画素が1画素でも存在する場合、N×N領域内の画素全てに対して抑圧処理を行うようにしてもよい。その際、抑圧ゲインはN×N領域内の各画素で算出したゲイン値の最小値、最大値、または平均値などを用いる。このように彩度抑圧手段1715は、第1の信号(PD1)および第2の信号(PD2)のいずれも所定のレベルに達していなくても、周囲の複数の光電変換部に視差が生じている場合、色情報を含む信号のレベルを低減させるようにすることができる。
次に、図15を参照して、本実施形態における撮像装置の制御方法について説明する。図15は、撮像装置の制御方法を示すフローチャートである。ここでは、図17と同様に、2分割PDの場合を例として説明する。図15の各ステップは、主に、画像処理部303のシェーディング補正手段3033や画像処理手段3034の各要素により実施される。
まずステップS1501において、飽和判定手段1701は、光電変換素子PD1、PD2の飽和判定を行う。そしてステップS1502において、飽和判定手段1701は、PD1、PD2の画素値(Val1、Val2)が両方とも飽和しているか否かを判定する。両方とも飽和している場合、ステップS1504へ移行し、飽和補正手段1703は瞳分割信号に対して補正を行わない。そしてステップS1508へ移行する。一方、ステップS1502にてPD1、PD2の少なくとも一方が飽和していない場合、ステップS1503へ移行する。
ステップS1503において、飽和判定手段1701は、PD1、PD2の画素値(Val1,Val2)が両方とも飽和していないか否かを判定する。両方とも飽和していない場合、ステップS1505へ移行し、飽和補正手段1703は通常のシェーディング補正を行い、ステップS1508へ移行する。一方、ステップS1503にてPD1、PD2のいずれか一方のみが飽和している場合、ステップS1506へ移行する。
ステップS1506において、PD1が飽和している場合、飽和補正手段1703は、飽和しているPD1の画素値を、飽和していないPD2の画素値から推定する。そしてステップS1507において、視差量算出手段1713は、視差量(Th2−Val2)を算出し、ステップS1508へ移行する。
ステップS1508において、画像加算手段1711および画像信号処理手段1712は、各分岐の出力に対して、瞳分割画素の加算やYCC変換などの各種の画像処理を行う。続いてステップS1509において、抑圧ゲイン算出手段1714は、視差量に応じて抑圧ゲインを決定(算出)する。ここで、PD1、PD2が両方とも飽和している、または、両方とも飽和していない場合、抑圧ゲインは1.0(すなわち抑圧しない)に設定される。一方の画素が飽和している場合(本実施形態では、PD1のみ飽和している場合)、抑圧ゲイン算出手段1714は、ステップS1507にて算出された視差量に応じて抑圧ゲインを算出する。続いてステップS1510において、彩度抑圧手段1715は、ステップS1509にて決定された抑圧ゲインを用いて、画像信号処理手段1712の出力信号(UV信号)に対して、彩度を抑圧する処理を行う。
このように本実施形態において、彩度抑圧手段1715(ゲイン設定手段)は、飽和判定手段1701からの情報および視差量算出手段1713からの情報に基づいて、補正後の第1の信号および第2の信号から得られた色情報を含む信号のレベルを低減させる。好ましくは、彩度抑圧手段1715は、第1の信号および第2の信号の一方が所定のレベルに達している場合、視差量に基づいて、色情報を含む信号のレベルを低減させる。また好ましくは、色情報を含む信号は、補正後の第1の信号と第2の信号との加算信号(画像加算手段1711の出力信号)から得られた色信号または色差信号(UV信号)である。より好ましくは、彩度抑圧手段1715は、視差量が大きいほど色情報を含む信号のレベルが小さくなるように、この信号に対してゲインを乗算する。
好ましくは、飽和補正手段1703は、第1の光電変換部および第2の光電変換部に入射する光束の主光線の入射角度に起因して生じる、第1の信号と第2の信号との感度差を補正する。より好ましくは、飽和補正手段1703は、第1の信号および第2の信号の一方が所定のレベルに達している場合、第1の信号および第2の信号の他方に基づいて第1の信号および第2の信号の一方の本来のレベルを推定し、感度差を補正する。
好ましくは、視差量算出手段1713は、第1の信号および第2の信号の他方のレベルが、感度差に基づいて決定される第2のレベル(Th2)よりも小さい場合、視差が発生していると判定する。より好ましくは、視差量は、第1の信号および第2の信号の他方のレベルと、第2のレベルとの差(Th2−Val2)である。また好ましくは、飽和判定手段1701は、第1の信号または第2の信号が所定のレベルに達している場合、第1の信号または第の2の信号は飽和レベルに達していると判定する。
本実施形態によれば、瞳分割画素のいずれか一方が飽和している場合、飽和していない画素から推定する際に、視差が発生していることで生じる色づきを抑圧(低減)することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態の視差量算出手段1713は、測距情報を用いて視差量を算出する。図13は、多点位相差測距における相関演算を説明する図である。図13(a)は、視差画像群に含まれる一つの視差画像に写る被写体を示す。それぞれ画像の下側の被写体Aが遠景被写体、中央の被写体Bがピント位置の被写体、上側の被写体Cが近景の被写体であるとする。図13(b)は、測距点、測距領域、測距の相関に利用する画素の関係を示す図である。相対的に大きい黒丸が測距点である。測距点は、測距情報の基準となる点であり、画素値ベースの相関演算の特性から測距領域の略中心に位置する。測距領域(多点測距領域)は、測距点の測距に関わる画素のグループ領域であり、太線の四角で囲まれたエリアである。そして、測距領域内の小黒丸が相関演算に用いられる画素を表している。測距に用いる画素は、計算効率向上のため、例えば、加算または間引取得してもよい。また、近傍の異なるカラーフィルタの同一瞳に対応する画素値を重み付け加算して、輝度画素情報として取得してもよい。
このようにして、測距領域毎に左目画像と右目画像の相関演算を行い、図13(c)に示されるような画素のずれ量を算出することができる。ずれ量が所定の閾値より大きい領域に含まれる画素は、視差が発生している可能性が高いと判定することができる。そこで、このずれ量を視差量として、視差量に応じた抑圧ゲインを決定することも可能である。なお、ずれ量は画像の撮像が終了した時点で確定するため、次に撮像される画像に対して抑圧ゲインをかけることになる。
このように本実施形態において、視差量算出手段1713は、第1の光電変換部(PD1)および第2の光電変換部(PD2)から得られた測距情報に基づいて視差量を算出する。好ましくは、測距情報は、第1の信号および第2の信号に基づいて算出されたデフォーカス量(ずれ量)である。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図16は、本実施形態における撮像装置300aのブロック図である。本実施形態の撮像装置300aは、データベース部305を備えている点で、第1の実施形態の撮像装置300とは異なる。データベース部305は、飽和補正手段1703により利用される情報(シェーディング特性、補正値、補正パラメータなどの補正に関する情報)を保持する。
第1の実施形態では、シェーディング特性または補正パラメータを、画像処理部303に含まれる不図示のROMなどの記録部に保存する。しかし、例えば高精度化を目的として、フォーカス距離、ズーム、絞り設定値などのカメラパラメータに対して細かいサンプリングで記録しようとすると、特性および補正パラメータの記録量は線形的に増大する性質がある。これは、シェーディング特性や射出瞳の見た目の大きさは、MLを共有する複数のPDへの光束の入射角度、すなわち画素部に対する光学系の主点位置の幾何学的位置関係や射出瞳の大きさ(焦点距離や絞りなどのカメラパラメータの状態)に依存するためである。
また、特性および補正パラメータは、ズーム範囲が広い場合には非常大きくなる。また光学系301が交換レンズの場合、交換レンズに対応する特性および補正パラメータを予め記録しておく、後から更新する、または、ネットワークなどから必要時に取得するなどの対応が必要となる。データベース部305は、このような対策を行う処理部である。このため、データベース部305は、ROMまたはRAMにより構成される。またデータベース部305は、不図示の外部I/F、例えばSDカードスロット経由でデータを更新し、または、無線LANなどのネットワークにより必要なデータを取得可能な手段である。CPU304は、データベース部305に、撮像装置300aのその時点のカメラパラメータを入力し、撮影状態に合致したシェーディング特性または補正値を取得する。そしてCPU304は、取得したシェーディング特性または補正値データを画像処理部303に伝送する。画像処理部303は、CPU304から受け取ったシェーディング特性または補正値データを、シェーディング補正に利用する。
本実施形態によれば、より高精度な補正を低リソースで実現することができる。また、交換レンズの対応を容易にすることが可能となる。
(その他の実施形態)
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。すなわち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウエア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。この場合、撮像装置の制御方法の手順が記述されたコンピュータで実行可能なプログラムおよびそのプログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成する。
各実施形態によれば、焦点検出精度の向上および高画質画像の取得が可能な画像処理装置、撮像装置、画像処理方法、プログラム、および、記憶媒体を提供することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
例えば、各実施形態では、1つのマイクロレンズを共有する複数の光電変換部として、2つの光電変換部(2分割PD)または4つの光電変換部(4分割PD)の場合について説明しているが、これらに限定されるものではない。他の分割数であってもよい。