以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を上下と表現することがある。
図1は、実施形態に係る車両用空調装置の冷凍サイクルを表すシステム図である。
本実施形態の空調装置は、高圧で作動する二酸化炭素を冷媒とするいわゆる超臨界冷凍サイクルを備える。この空調装置は、冷凍サイクルを循環する気相状態の冷媒を圧縮する可変容量圧縮機(単に「圧縮機」という)101、圧縮された高温高圧の気相状態の冷媒を冷却する外部熱交換器としてのガスクーラ102、冷却された冷媒を断熱膨張させて減圧する膨張装置103、膨張された冷媒を蒸発させて蒸発潜熱を奪って車室内の空気を冷却する蒸発器104、蒸発された冷媒を気液分離し、分離された気相状態の二酸化炭素を圧縮機101に戻す受液器105を備える。
圧縮機101は、クランク室116内に回転自在に支持された図示しない回転軸を有する。この回転軸には揺動板が傾斜角可変に設けられており、その回転軸の一端はクランク室116の外部に延出してプーリを介してエンジンの出力軸と接続されている。この回転軸の周りには複数のシリンダ112が配設され、各シリンダ112には揺動板の回転運動により往復運動を行うピストンが配置されている。各シリンダ112は、吸入弁を介して吸入室110に接続され、吐出弁を介して吐出室114に接続されている。圧縮機101は、吸入室110を介してシリンダ112に導入された冷媒を圧縮し、吐出室114を介して吐出する。
圧縮機101の揺動板の角度は、クランク室116内で揺動板を付勢するスプリングの荷重や、揺動板につながるピストンの両面にかかる圧力による荷重等がバランスした位置に保持される。この揺動板の角度は、クランク室116に吐出冷媒の一部を導入してクランク圧力Pcを変化させ、ピストンの両面にかかる圧力の釣り合いを変化させることによって連続的に変えられる。この揺動板の角度の変化によってピストンのストロークを変えることにより、冷媒の吐出容量が調整される。クランク圧力Pcは、圧縮機101の吐出室114とクランク室116との間に設けられた制御弁1により制御される。
すなわち、圧縮機101の吐出冷媒の一部は、制御弁1を介してクランク室116内に導入され、圧縮機101の容量制御に供される。制御弁1は、ソレノイド駆動の電磁弁として構成され、制御部120により通電制御される。本実施形態では、制御部120が駆動回路122に所定のデューティ比に設定されたパルス信号を出力し、駆動回路122からそのデューティ比に対応した電流パルスを出力させてソレノイドを駆動する。制御弁1は、圧縮機101の吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)が制御目標値である設定差圧に近づくように吐出室114からクランク室116に導入する冷媒流量を調整する。これにより、圧縮機101の吐出容量が変化する。すなわち、制御弁1は、いわゆるPd−Ps差圧弁として機能する。
クランク室116と吸入室110とを連通する冷媒通路118にはオリフィス119が設けられ、クランク室116内の冷媒を吸入室110側へ漏洩させ、クランク圧力Pcが過度に高まらないようにされている。また、圧縮機101における吐出室114と冷媒出口との間の冷媒通路には、逆止弁130が設けられている。
制御部120は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース等を備える。制御部120は、指定したデューティ比のパルス信号を出力するPWM出力部を有するが、その構成自体には公知のものが採用されるため、詳細な説明を省略する。制御部120は、エンジン回転数、車室内外の温度、蒸発器104の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて上記設定差圧を決定し、その設定差圧を維持するためのソレノイド力が得られるよう制御弁1への通電制御を行う。車両の加速時や登坂走行時などのエンジンの高負荷状態において圧縮機101の負荷トルク低減を目的とする加速カット要求があると、制御部120は、その通電を遮断又は所定の下限値に抑制して、可変容量圧縮機を最小容量運転に移行させたりする。
膨張装置103は、いわゆる温度式膨張弁として構成されており、蒸発器104の出口側の冷媒温度をフィードバックしてその弁開度を調整し、熱負荷に応じた液冷媒を蒸発器104へ供給する。蒸発器104を通過した冷媒は受液器105を経由して圧縮機101に戻され、再び圧縮される。
逆止弁130は、圧縮機101の吐出容量がある程度大きく、吐出室114の吐出圧力Pdと冷媒出口の出口圧力Pdlとの差圧(Pd−Pdl)がその開弁差圧を上回る限り、開弁状態を維持する。この開弁差圧は、逆止弁130が内蔵するスプリングの荷重により設定されている。これに対し、例えば最小容量運転時など、圧縮機101の吐出容量が小さくなって吐出圧力Pdが充分に高まらない場合には、スプリングの付勢力により逆止弁130が閉弁状態となり、ガスクーラ102側から吐出室114への冷媒の逆流を阻止する。なお、圧縮機101の最小容量運転時には逆止弁130が閉じてしまうが、吐出室114からの吐出冷媒が制御弁1およびクランク室116を介して吸入室110に戻されるため、圧縮機101内での冷媒ガスの内部循環が確保される。
図2は、実施形態に係る制御弁1の構成を示す断面図である。
制御弁1は、弁本体2とソレノイド3とを一体に組み付けて構成される。弁本体2は、段付円筒状のボディ5を有する。ボディ5は、本実施形態では真鍮からなるが、アルミニウム合金からなるものとしてもよい。ボディ5には、その上端側からポート10,12,14が設けられている。このうち、ポート10はボディ5の上端部に設けられ、ポート12,14はボディ5の側部に設けられている。ポート10は吐出室114に連通する「吐出室連通ポート」として機能し、ポート12はクランク室に116連通する「クランク室連通ポート」として機能し、ポート14は吸入室110に連通する「吸入室連通ポート」として機能する。
ボディ5においてポート10とポート12とを連通させる通路には、段付円筒状の弁座形成部材16が配設されている。弁座形成部材16は、ステンレス鋼(例えばSUS420)を焼き入れして形成され、ボディ5よりも硬度が高い。弁座形成部材16は、ボディ5の上部に同軸状に挿通され、ボディ5の上部を内方に加締めることにより固定されている。弁座形成部材16には軸線に沿った貫通孔が設けられており、その下半部により弁孔18が形成されている。ボディ5における弁座形成部材16の下方には、ポート12に連通する弁室20が形成されている。弁座形成部材16の下半部は、下方に向けて外径が小さくなるテーパ状をなし、弁室20内に延在している。弁座形成部材16の下端面に弁座22が形成されている。弁室20には、弁座22に下方から対向するように弁体24が配設されている。弁体24が弁座22に接離することにより弁部の開度が調整される。
ボディ5の内部空間を上下に区画するように隔壁26が設けられている。隔壁26の上方には弁室20が形成され、下方には作動室28が形成されている。弁室20は、ポート12を介してクランク室116に連通する。作動室28は、ポート14を介して吸入室110に連通する。隔壁26の中央には軸線方向に延在するガイド部30が設けられている。そのガイド部30を軸線に沿って貫通するようにガイド孔32が形成され、そのガイド孔32には長尺状の作動ロッド34が軸線方向に摺動可能に挿通されている。弁体24は、作動ロッド34の上端に同軸状に設けられている。弁体24と作動ロッド34とは、ステンレス鋼を切削加工することにより一体成形されている。
ガイド部30は、隔壁26の上面側に小さく突出し、下面側に大きく突出している。ガイド部は、下方に向けて外径が小さくなるテーパ状をなし、作動室28内に延在している。それによりガイド孔32の長さが十分に確保され、作動ロッド34が安定に支持されている。弁体24は、作動ロッド34と一体に動作し、その上端面にて弁座22に着脱して弁部を開閉する。弁座形成部材16の硬度が十分に高いため、弁体24が繰り返し着座しても弁座22は変形し難く、弁部の耐久性が確保されている。
作動ロッド34の下部には止輪36(Eリング)が嵌合され、その止輪36によって下方への移動が規制されるように円板状のばね受け38が設けられている。ばね受け38と隔壁26との間には、作動ロッド34を下方(閉弁方向)に付勢するスプリング40(「第1スプリング」として機能する)が介装されている。スプリング40は、隔壁26の下面から下方のばね受け38に向けて小径化するテーパスプリングとされている。上述のようにガイド部30をテーパ状としたことで、このようなテーパ状のスプリング40が配置可能となっている。ボディ5の下部は小径部42とされ、ソレノイド3との連結部を構成する。
ボディ5の上端開口部には、ポート10への異物の侵入を抑制するストレーナ44が嵌着されている。圧縮機101の吐出冷媒には金属粉等の異物が含まれることがあるため、ストレーナ44は、その異物が制御弁1の内部に侵入することを防止又は抑制する。ストレーナ44は、有底筒状のフィルタ46を有し、そのフィルタ46の開口端部をリング状の金属プレート48にて補強して構成される。フィルタ46は金属メッシュからなる。ストレーナ44は、その底部を上にした状態で金属プレート48をボディ5に圧入することにより固定される。ストレーナ44は、図示のようにボディ5の内側に装着されることにより、外部構造物との接触による変形が防止されている。
一方、ソレノイド3は、円筒状のコア50と、コア50に外挿された有底円筒状のスリーブ52と、スリーブ52に収容され、コア50と軸線方向に対向配置されたプランジャ54と、スリーブ52に外挿された円筒状のボビン56と、ボビン56に巻回された電磁コイル58と、電磁コイル58を外方から覆うように設けられた円筒状のケース60と、ボビン56の上方にてコア50とケース60との間に組み付けられた段付円筒状の接続部材62と、ケース60の下端開口部を封止するように設けられた端部材64とを備える。
スリーブ52は非磁性材料からなり、その下半部にプランジャ54を収容している。端部材64には、環状のカラー66が埋設されている。カラー66は、ボビン56の下方にてスリーブ52とケース60との間に介装されている。ケース60、接続部材62およびカラー66は磁性材料からなり、ソレノイド3のヨークを形成する。弁本体2とソレノイド3とは、ボディ5の小径部42(下端部)が接続部材62の上端開口部に圧入されることにより固定されている。なお、本実施形態においては、ボディ5、弁座形成部材16、接続部材62、ケース60および端部材64が制御弁1全体のボディを形成している。
コア50の中央を軸線方向に貫通するように挿通孔67が形成され、その挿通孔67を貫通するようにシャフト68が挿通されている。シャフト68は、作動ロッド34と同軸状に設けられ、作動ロッド34を下方から支持する。シャフト68の径は作動ロッド34のそれよりも大きい。そのシャフト68の下半部にプランジャ54が組み付けられている。本実施形態において、シャフト68と作動ロッド34とが、ソレノイド力を弁体24に伝達する「伝達ロッド」を構成する。
プランジャ54は、その上部にてシャフト68に同軸状に支持されている。シャフト68の軸線方向中間部の所定位置には止輪70(Eリング)が嵌合され、その止輪70によってプランジャ54の上方への移動が規制されている。プランジャ54の側面には軸線に平行な複数の連通溝71が設けられており、プランジャ54とスリーブ52との間に冷媒を通過させる連通路が形成される。
コア50の上端部にはリング状の軸支部材72が圧入されており、シャフト68の上端部がその軸支部材72によって軸線方向に摺動可能に支持されている。軸支部材72の外周の一部が切り欠かれることにより、コア50と軸支部材72との間に連通路が形成されている。この連通路を介して作動室28の吸入圧力Psがソレノイド3の内部にも導びかれる。
また、スリーブ52の下端部がやや縮径されており、その縮径部74にリング状の軸支部材76(「支持部材」として機能する)が圧入されている。この軸支部材76は、シャフト68の下端部を摺動可能に軸支している。すなわち、シャフト68が上方の軸支部材72と下方の軸支部材76とにより2点支持されることにより、プランジャ54を軸線方向に安定に動作することができる。軸支部材76の外周の一部が切り欠かれることにより、スリーブ52と軸支部材76との間に連通路が形成されている。ソレノイド3に導入された吸入圧力Psは、コア50とシャフト68との間の連通路、プランジャ54とスリーブ52との間の連通路、軸支部材76とスリーブ52との間の連通路を介してスリーブ52内に満たされる。
軸支部材76とプランジャ54との間には、プランジャ54を上方、つまり閉弁方向に付勢するスプリング78(「第2スプリング」として機能する)が介装されている。すなわち、弁体24は、ばね荷重として、スプリング40による開弁方向の力とスプリング78による閉弁方向の力との合力を受ける。ただし、スプリング40の荷重がスプリング78のそれよりも大きいため、スプリング40,78によるばね荷重は、開弁方向に作用するようになる。このばね荷重は、スリーブ52における軸支部材76の圧入位置を調整することにより設定できる。この圧入位置は、スリーブ52への軸支部材76への仮圧入を行った後、所定の工具を用いてスリーブ52の底部中央を軸線方向に変形させることにより微調整することができる。
ボビン56からは電磁コイル58につながる一対の接続端子80が延出し、それぞれ端部材64を貫通して外部に引き出されている。同図には説明の便宜上、その一対の片方のみが表示されている。端部材64は、ケース60に内包されるソレノイド3内の構造物全体を下方から封止するように取り付けられている。端部材64からは接続端子80の先端部が引き出されており、図示しない外部電源に接続される。端部材64は、接続端子80を露出させるコネクタ部としても機能する。
以上のように構成された制御弁1は、圧縮機101に設けられた図示しない取付孔にワッシャを介して固定される。制御弁1の外周面には、その取付孔との間に介装されてシール機能を発揮する複数のOリングが嵌着されている。すなわち、ボディ5におけるポート12の上方および下方にそれぞれ環状溝が周設され、Oリング82,84が嵌着されている。また、接続部材62におけるポート14の下方にも環状溝が周設され、Oリング86が嵌着されている。さらに、ケース60と端部材64との接続部にもOリング88が嵌着されている。
図3は、図2の上半部に対応する部分拡大断面図である。
弁座形成部材16の中央に設けられた貫通孔90は、その下半部が縮径されて弁孔18を形成している。すなわち、貫通孔90の上半部が大径部92、下半部が小径部94となっており、小径部94が弁孔18を形成する。大径部92と小径部94との接続部は、下方に向けて内径が縮径するテーパ面とされている。貫通孔90は、上流側から下流側に向けて段階的に縮径されている。
また、弁座形成部材16における貫通孔90の半径方向外側には、貫通孔90と平行なブリード孔96が設けられている。ブリード孔96は、閉弁時にもクランク室116へ最低限の冷媒を流入させることにより、圧縮機101におけるオイル循環を確保するためのものである。圧縮機101の安定した作動を確保するために、冷媒には潤滑用のオイルが含まれており、ブリード孔96は、クランク室116の内外でのオイル循環を確保するものである。
ブリード孔96は、その上部のリーク通路98とそれより下方の連通路99とを接続して構成されている。リーク通路98の内径は、冷媒を漏洩させる程度の大きさとされ、弁孔18の内径よりも相当小さい。連通路99の内径は、貫通孔90の大径部92よりも小さく、小径部94よりも大きくされている。変形例においては、連通路99の内径を、貫通孔90の大径部92の内径以上としてもよいし、小径部94の内径以下としてもよい。
リーク通路98と連通路99との接続部は、下方に向けて内径が拡径するテーパ面とされている。ブリード孔96は、上流側から下流側に向けて段階的に拡径されている。弁座形成部材16の上面は、貫通孔90を囲むように環状の突部150が設けられており、その突部150の半径方向内側と外側とが一段低くなる段差形状とされている。突部150の幅は十分に小さく、本実施形態では弁孔18の幅以下とされている。リーク通路98は、その突部150の位置にて上方に開口している。
このように、ブリード孔96については冷媒の入口を小径とし、その入口を段差形状の上面に開口させることで、ブリード孔96を介した異物の侵入を防止又は抑制している。すなわち、仮にストレーナ44のメッシュ幅よりも小さな異物がポート10に侵入したとしても、突部150の幅が十分に小さく、ブリード孔96の入口はさらに小さいため、その異物がブリード孔96を介して侵入する可能性は極めて低い。異物は突部150に突き当たったとしても、その内外の低位置に落ちる可能性が高い。特に閉弁時にはブリード孔96を介した冷媒の流れができるものの、冷媒に含まれる異物がブリード孔96に導かれる可能性は低い。なお、開弁時においては、仮に異物がポート10に侵入したとしても、そのほとんどは弁孔18を通過してポート12から排出される。
また、弁室20においては、隔壁26の上面中央部にガイド部30が突出することにより、その周囲に環状溝152が形成されている。また、弁体24の外径が直下の作動ロッド34よりもやや大きくされている。このため、仮に異物が弁孔18を介して弁室20に侵入したとしても、その異物が作動ロッド34とガイド孔32との摺動部に侵入する可能性は極めて低い。弁孔18を通過した異物は、そのほとんどがポート12から排出されるか、弁室20に残留するとしても環状溝152に溜まるようになり、作動ロッド34とガイド孔32との間隙に侵入する可能性は低い。すなわち、環状溝152は、異物トラップとして機能することができる。このため、作動ロッド34とガイド孔32との摺動部に異物が噛み込むことによる弁体24の作動ロックが防止される。
なお、本実施形態では、弁体24の弁部における有効受圧径a(弁孔18の内径)を、作動ロッド34の摺動部径bよりも微少量大きくし(a>b)、弁体24の圧力感度を最適に設定している。すなわち、このような設定により開弁時におけるクランク圧力Pcの閉弁方向への寄与分を大きくすることで、弁部を少し開き難くしている。それにより、差圧(Pd−Ps)が緩やかに立ち上がるようになり、両者の径が同じ場合に比べてクランク圧力Pcの影響を大きくし、圧縮機101の斜板の作動応答性を下げ、開弁時における制御ハンチングを防止又は抑制している。なお、この圧力感度の調整については、例えば特開2006−57506号公報に記載の技術を用いることができる。
また、本実施形態では上述のように、ガイド部30が弁室20よりも作動室28側に大きく突出する構成とし、それにより、作動ロッド34の下端部がボディ5の下端位置(つまり小径部42の下端開口部)から突出できる構成とした。これは、作動ロッド34への止輪36の装着を容易にするものである。すなわち、作動ロッド34に止輪36を嵌合させるためには、まず作動ロッド34を弁室20の側から挿入しなければならない。弁体24の外径がガイド孔32よりも大きいためである。一方、止輪36を作動ロッド34に嵌合させるためには、作業性を考慮して、作動ロッド34に形成された嵌合部をボディ5の開口端部から露出させるか、少なくともその開口端部近傍に位置させる必要がある。このため、仮にガイド部30が隔壁26の上下に均等に延在しているとすると、作動ロッド34を無用に長くする必要があり、好ましくない。そこで、本実施形態ではガイド部30を下方に寄せることにより、ガイド部30による安定したガイド機能を確保しつつ、止輪36を装着する際の良好な作業性も維持している。また、作動ロッド34を無用に長くしないことで、ボディ5ひいては制御弁1のコンパクト化を実現している。
さらに、本実施形態では上述のように、ガイド部30およびスプリング40を下方に向けて外径が小さくなるテーパ形状としている。これにより、スプリング40の下半部がコア50の上端開口部に収まるようにし、小径部42の外径を極力小さくしている。これにより、接続部材62の外径を小さくし、Oリング86として外径の小さいものを選定することを可能にしている。これにより、制御弁1が圧縮機101の取付孔に取り付けられた際に、その取付方向とは逆向きに作用する冷媒圧力の影響を小さくしている。すなわち、Oリング86よりも下方部分は大気圧となるため、仮にOリング86が大きい場合、制御弁1の抜け落ちを防止するために耐圧性の高い固定構造が必要となる。この点、本実施形態ではOリング86を小さくすることができるため、ワッシャ等の簡易な固定構造で足りる。
図4および図5は、制御弁1の部分拡大図である。図4(A)は図2のA部拡大図であり、図4(B)は図2のB部拡大図である。図5(A)は図3のC−C矢視断面図であり、図5(B)は図4(B)のD−D矢視断面図である。
図4(A)に示すように、コア50とプランジャ54の互いの対向面は、概ね相補形状とされており、各対向面の外周縁部がテーパ状に構成されている。すなわち、コア50の下端面は、中央部の平坦面160と外周縁部のテーパ面162とを有する。平坦面160はコア50の軸線L1に対して直角をなし、テーパ面162は下方に向かって内径を大きくし、コア50の軸線L1に対して角度θ1をなす。一方、プランジャ54の上端面は、中央部の平坦面164と外周縁部のテーパ面166とを有する。平坦面164はプランジャ54の軸線L2に対して直角をなし、テーパ面166は下方に向かって内径を大きくし、プランジャ54の軸線L2に対して角度θ2をなす。本実施形態では、θ1=θ2=45度としている。このテーパ面の設定によりソレノイド3の特性が調整されているが、その詳細については後述する。
プランジャ54の平坦面164の中央には、所定深さの凹部168が形成されており、止輪70が収容されている。すなわち、止輪70とコア50との干渉が防止されている。
図4(B)に示すように、スリーブ52における縮径部74の下面中央には、凹状の押圧調整部170が形成されている。この押圧調整部170に工具の先端を突き当てて押圧することにより、スリーブ52の底面を軸線方向上方(スリーブ52の内方)に変形させつつ、軸支部材76の圧入位置をずらすことができ、スプリング40,78による設定荷重を微調整することができる。
また、このように軸支部材76をスリーブ52に対して圧入したことにより、仮にその設定荷重の調整後にスリーブ52の底部が変形したとしても、その設定荷重を変化させることなく維持することができる。すなわち、本実施形態では上述のように、高圧で作動する二酸化炭素を冷媒とするため、吸入圧力Psであっても高い圧力が作用する。このため、押圧調整部170により変形させたスリーブ52の底部が、その吸入圧力Psにより元に戻る方向に変形する可能性がある。仮にそのようなことがあったとしても、軸支部材76がスリーブ52の内壁に対してしっかりと圧入されているため、その底部の変形による影響を受けることはない。すなわち、本実施形態によれば、軸支部材76の圧入位置を調整する構造としたことにより、高圧環境下においてもスプリングによる設定荷重を安定に維持することができる。
図示のように、端部材64とスリーブ52との間には空間が形成されている。そして、端部材64の底部には、その空間と外部とを連通させる連通孔172が設けられている。この連通孔172は、スリーブ52と端部材64とを組み付ける際に、その空間の空気を外部に逃がすための空気孔であり、その組み付け時にその空間に発生する圧力を逃がす圧力逃がし通路として機能する。
図5(A)に示すように、軸支部材72は、円板状の本体の外周にいわゆるDカットがなされており、一対の平坦面180が形成されている。その平坦面180とコア50の内周面との間に連通路182が形成される。また、図5(B)に示すように、軸支部材76も、円板状の本体の外周にいわゆるDカットがなされており、一対の平坦面184が形成されている。その平坦面184とスリーブ52との間に連通路186が形成される。作動室28の吸入圧力Psは、これらの連通路182,186を通ってスリーブ52の内部に満たされる。
以上の構成において、作動ロッド34の径が弁孔18の内径よりやや小さいものの、ほぼ同じ大きさを有するため、弁室20において弁体24に作用するクランク圧力Pcの影響はほぼキャンセル(相殺)される。このため、弁体24には、ほぼ弁孔18の大きさの受圧面積に対して吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)が実質的に作用する。弁体24は、差圧(Pd−Ps)がソレノイド3に供給された制御電流にて設定された設定差圧に保持されるように動作する。
次に、可変容量圧縮機用制御弁の基本的動作について説明する。
制御弁1において、ソレノイド3が非通電のときには、スプリング40,78の合力による開弁方向の荷重により弁体24が弁座22から離間して弁部が全開状態に保持される。このとき、圧縮機101の吐出室114からポート10に導入された吐出圧力Pdの高圧冷媒は、全開状態の弁部を通過し、ポート12からクランク室116へと流れることになる。その結果、クランク圧力Pcが高められ、圧縮機101は吐出容量が最小となる最小容量運転を行うことになる。
一方、自動車用空調装置の起動時または冷房負荷が最大のときには、ソレノイド3への供給電流値が最大になり、プランジャ54は、コア50に最大の吸引力で吸引される。このとき、弁体24を含む作動ロッド34、シャフト68およびプランジャ54が、一体になって閉弁方向に動作し、弁体24が弁座22に着座する。この閉弁動作によってクランク圧力Pcが低下するため、圧縮機101は吐出容量が最大となる最大容量運転を行うことになる。
ここで、容量制御時においてソレノイド3に供給される電流値が所定値に設定されているときには、弁体24を含む作動ロッド34、シャフト68およびプランジャ54が一体動作する。このとき、弁体24は、作動ロッド34を開弁方向に付勢するスプリング40のばね荷重と、プランジャ54を開弁方向に付勢するスプリング78のばね荷重と、プランジャ54を閉弁方向に付勢しているソレノイド3の荷重と、弁体24が開弁方向に受圧する吐出圧力Pdによる力と、弁体24が閉弁方向に受圧する吸入圧力Psによる力とがバランスした弁リフト位置にて停止する。
このバランスが取れた状態で、エンジンの回転数とともに圧縮機101の回転数が上がって吐出容量が増えると、差圧(Pd−Ps)が大きくなって弁体24に開弁方向の力が作用し、弁体24は、さらにリフトして吐出室114からクランク室116へ流す冷媒の流量を増やす。これにより、クランク圧力Pcが上昇し、圧縮機101は、その吐出容量を減少させる方向に動作し、差圧(Pd−Ps)が設定差圧になるように制御される。エンジンの回転数が低下した場合には、その逆の動作が行われ、差圧(Pd−Ps)が設定差圧になるように制御される。
図6は、ソレノイド3の制御特性を示す図である。同図の横軸はソレノイド3への供給電流値Isol(A)を示し、縦軸は制御目標値としての設定差圧(Pd−Ps)(Mpa)を示している。本実施形態では、上述のようにコア50とプランジャ54との対向面をテーパ形状とすることにより、制御電流の範囲(「制御電流値範囲」ともいう)において、高電流側の分解能を向上させている。
すなわち、上述のようにコア50側およびプランジャ54側のテーパ面の角度を45度(図4(A)におけるθ1=θ2=45度)としたことで、図中実線にて示すように、制御電流値範囲の中間値以降の特性を変化させている。すなわち、ソレノイド3の制御特性として、供給電流値Isolに対する設定差圧(Pd−Ps)の傾き(変化量)が、その中間値よりも高電流側において小さくなるようにされている。具体的には、制御電流値範囲を0.2A〜0.68Aとし、その中間値である0.45Aを境界に制御特性を変化させている。これにより、高電流側の分解能が向上する。このことは、設定差圧(Pd−Ps)を大きくするときにその設定差圧についてより細かい調整が可能となることを意味する。言い換えれば、高電流側ほどソレノイド3の電磁力の変化量を小さくできることを意味する。本実施形態では高圧で作動する二酸化炭素を冷媒とするため、このように差圧が大きくなる範囲で制御の精度を高められることは非常に都合がよい。
なお、図中の一点鎖線はテーパ面の角度を30度(θ1=θ2=30度)とした場合を示し、破線はテーパ面の角度を20度(θ1=θ2=20度)とした場合を示している。このように、テーパ角度を大きくすることで中間値前後の特性変化を大きくすることができ、逆にテーパ角度を小さくすることで、中間値前後の特性変化を小さくすることができる。このため、仕様に応じてテーパ角度を変更することにより、最適な制御特性を得ることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
上記実施形態では、軸支部材76のスリーブ52への圧入調整構造をいわゆるPd−Ps差圧弁に適用する例を示した。変形例においては、例えばクランク圧力Pcと吸入圧力Psとの差圧(Pc−Ps)を制御目標値である設定差圧に近づけるいわゆるPc−Ps差圧弁に適用してもよい。すなわち、吸入室に導入される冷媒を圧縮して吐出室から吐出する可変容量圧縮機の吐出容量を、クランク室から吸入室へ導出する冷媒の流量を調整することにより変化させる制御弁に対し、上記圧入調整構造を適用してもよい。あるいは、吸入圧力Psを制御目標値である設定圧力に近づけるいわゆるPs制御弁に適用してもよい。特に二酸化炭素等を冷媒とする超臨界冷凍サイクルにそれらの制御弁が適用される場合、上記圧入調整構造の機能が有効に発揮される。
上記実施形態では、軸支部材76がスプリング78を支持するばね受けとして機能するとともに、シャフト68を軸支する軸受けとしても機能する例を示した。変形例においては、スプリング78を支持するばね受けと、シャフト68を軸支する軸受けとを個別に設け、そのばね受けについて上記圧入調整構造を適用してもよい。
上記実施形態では、上記圧入調整構造を有する制御弁を、二酸化炭素を冷媒とする超臨界冷凍サイクルに適用する例を示した。変形例においては、同様の制御弁を二酸化炭素以外を冷媒とする超臨界冷凍サイクルに適用してもよい。あるいは、超臨界域での動作はしないものの、冷媒の圧力が高圧となる冷凍サイクルに適用してもよい。
上記実施形態では、作動ロッド34とシャフト68とを別体にて作製した後、両者を軸線方向に同軸状に当接させる形で連結し、ソレノイド力を弁体24に伝達する伝達ロッドとして構成する例を示した。変形例においては、作動ロッド34とシャフト68とを単一の部材により一体成形してもよい。
上記実施形態では、弁座形成部材16において、ブリード孔96の冷媒入口を小径とし、その入口を段差形状の上面に開口させる構成を示した(図3参照)。この構成は、上記実施形態のように冷媒圧力が高圧となる冷凍サイクルにおいてその異物侵入抑制機能を顕著に発揮する。すなわち、吐出圧力Pdが高圧であるほど、異物がストレーナ44を通過してポート10に侵入し易くなるという問題があるところ、上記異物侵入抑制機能により少なくとも異物がブリード孔96を介して弁室20にまで到達する可能性を低くすることができる。そのことが、結果的に制御弁1の高圧環境下における制御特性を良好に維持することにつながる。
なお、上記実施形態では、弁座形成部材16の上面に突部150を環状に形成する例を示したが、それ以外の形状を採用してもよいことは言うまでもない。例えば、ブリード孔96の冷媒入口周辺のみを突部としてもよい。また、上記実施形態では、ブリード孔96を一箇所のみ設ける例を示したが、複数箇所に設けてもよい。その場合も、各ブリード孔96の冷媒入口を突部(段差形状)の上面に設けるとよい。
上記実施形態では、隔壁26の周縁部を一段低くして環状溝152を形成する例を示した(図3参照)。この構成も、上記実施形態のように冷媒圧力が高圧となる冷凍サイクルにおいてその異物トラップ機能を顕著に発揮する。すなわち、吐出圧力Pdが高圧であるほど、異物がストレーナ44を通過してポート10ひいては弁室20に侵入し易くなるという問題があるところ、上記異物トラップ機能により少なくとも異物が作動ロッド34とガイド孔32との間隙まで到達する可能性を低くすることができる。そのことが、結果的に制御弁1の高圧環境下における制御特性を良好に維持することにつながる。
なお、上記実施形態では、異物トラップ構造として環状溝を一つ形成する例を示したが、それ以外の構造を採用してもよい。例えば、環状溝を同心状に複数形成してもよい。あるいは、ガイド部30の上面中央の小さな領域のみを凸形状とし、その凸部の上面にガイド孔32を開口させてもよい。例えば、その凸部の径を弁室20の内径の1/3以下にするなど十分に小さくしてもよい。その凸部の径を弁体24と同程度としてもよい。すなわち、隔壁26の外周縁部に溝を設けるというよりも、ガイド部30の上端位置をその周囲よりも高くするように構成してもよい。
上記実施形態では述べなかったが、図4(B)に示した連通孔172を押圧調整部170の直下に位置させることで、工具の挿入孔としても機能させるようにしてもよい。
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。