JP2015159629A - 回転電機 - Google Patents

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Toru Wakimoto
亨 脇本
芳光 高橋
Yoshimitsu Takahashi
芳光 高橋
新一 仁野
Shinichi Nino
仁野  新一
香田 請司
Seiji Koda
請司 香田
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Abstract

【課題】インバータの高速スイッチング時における相巻線間の最大電圧を低減して、インバータの高効率化と絶縁信頼性の確保を両立し得るようにした回転電機を提供する。【解決手段】回転電機1は、周方向に複数の磁極を有する回転子14と、周方向に複数のスロット31を有する固定子鉄心30、及びスロット31に挿入されて固定子鉄心30に巻装された複数の相巻線41よりなる固定子巻線40を有する固定子20とを備える。固定子鉄心30は、同一相の相巻線41が収容される同相スロットを磁極毎に周方向に連続してn個(n=2で2個)ずつ有する。各相巻線41は、一端から他端までを2n個(4個)に分割されて、一端側から順に配置された第1部分巻線a、第2部分巻線b、第3部分巻線c、第4部分巻線dにより構成される。第1及び第3部分巻線a,cを一方の同相スロットU1に収容し、第2及び第4部分巻線b,dを他方の同相スロットU2に収容する。【選択図】図5

Description

本発明は、例えば車両用の電動機や発電機として使用される回転電機に関する。
従来の回転電機として、周方向に配列された複数対の磁極を有する回転子と、周方向に配列された複数のスロットを有し回転子と径方向に対向して配置された固定子鉄心、及び、スロットに挿入されて固定子鉄心に巻装された複数の相巻線よりなる固定子巻線を有する固定子と、を備えた回転電機が知られている。このような回転電機においては、高出力化の要請から、固定子鉄心は、同一相の相巻線が収容される同相スロットを磁極ごとに周方向に連続してn(nは2以上の自然数)個ずつ有するように構成されている。
そして、特許文献1には、図11に示すように、各相巻線41は、延伸方向一端(各相出力端子43)から他端(中性点44)までを2n個(n=2で4個)に分割されて、第1部分巻線aと第4部分巻線dが固定子鉄心の異なる同相スロットに収容されていることが開示されている。これにより、固定子巻線の相巻線41間における共振を低減させて、相巻線41間の最大電圧を小さくすることができるので、絶縁のために必要な相間距離を短くすることが可能となる。
特開2013−81356号公報
ところで、例えばモータ(電動機)をインバータによって駆動するためにはPWM制御など、高速でスイッチングを繰り返す必要がある。この時、スイッチングの度にモータ入力部やモータ内の相間に駆動電圧を超えるサージ電圧が発生する。そして、相間電圧がある一定値を超えると、相巻線表面間で部分放電と呼ばれる微少な放電が発生し、これが継続するとやがては絶縁破壊に至るため、絶縁を確保するためにはこの部分放電を発生させないことが必要である。
部分放電を発生させないためには、巻線表面の絶縁皮膜を厚くすることが必要であるが、絶縁皮膜を厚くするとスロットに収容された巻線の占積率低下によってモータ効率が低下し、体格の増大を招いてしまう。また、電動機内のコイル間電圧は、電動機内の共振現象によって上昇するが、その最大値はインバータスイッチング速度と電動機内の共振周波数・ゲインピーク値から決まり、スイッチング速度が上昇するほど上昇する。このため、インバータの効率向上のため、スイッチング速度を上昇すると、モータの絶縁を確保できなくなる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、インバータの高速スイッチング時における相巻線間の最大電圧を低減することにより、インバータの高効率化(高速スイッチング化)と絶縁信頼性の確保を両立し得るようにした回転電機を提供することを解決すべき課題とするものである。
上記課題を解決するためになされた本発明は、周方向に配列された複数対の磁極を有する回転子(14)と、周方向に配列された複数のスロット(31)を有し前記回転子と径方向に対向して配置された固定子鉄心(30)、及び前記スロットに挿入されて前記固定子鉄心に巻装された複数の相巻線(41)よりなる固定子巻線(40)を有する固定子(20)と、を備えた回転電機において、前記固定子鉄心は、同一相の前記相巻線が収容される同相スロット(U1,U2)を前記磁極毎に周方向に連続してn(nは2以上の自然数)個ずつ有し、各前記相巻線は、延伸方向一端から他端までを2n個に分割されて、前記延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線(a)、第2部分巻線(b)、・・・、第2n部分巻線(d)により構成され、前記第1部分巻線と前記第2n部分巻線が前記固定子鉄心の異なる前記同相スロットに収容されているとともに、前記延伸方向一端側から偶数番目に位置する第2m(mは1≦m≦nを満たす全ての自然数)部分巻線と第(2m−1)部分巻線が前記固定子鉄心の異なる前記同相スロットに収容されていることを特徴とする。
本発明によれば、第1部分巻線と第2n部分巻線が固定子鉄心の異なる同相スロットに収容されているとともに、延伸方向一端側から偶数番目に位置する第2m(mは1≦m≦nを満たす全ての自然数)部分巻線と第(2m−1)部分巻線が固定子鉄心の異なる同相スロットに収容されている。このように、各相巻線の部分巻線がそれぞれ収容される同相スロットを上記のように変更することで、回転電機内の共振ゲインのピーク値を下げることができる。これにより、インバータが高速でスイッチングした際の相巻線間の最大電圧を低く抑制することができるので、インバータの高効率化(高速スイッチング化)と絶縁信頼性の確保を両立することができる。
なお、各相巻線の部分巻線が収容されるスロットの変更は、固定子鉄心の軸方向両端面からそれぞれ外方に突出した固定子巻線のコイルエンド部にある渡り線の結線を僅かに変更するだけでよいため、モータ性能の低下を回避しつつ簡易に実現することができる。
また、インバータのスイッチング速度は、パワー素子の性能に依存するが、次世代素子として開発が続けられている炭化ケイ素(SiC)素子や窒化ガリウム(GaN)素子等で更なる高速化が見込まれるため、本発明は、このような素子でモータ駆動を行う際に特に有効となる。
実施形態1に係る回転電機の軸方向断面図である。 実施形態1に係る固定子の全体斜視図である。 実施形態1において固定子鉄心のスロットに導体セグメントを挿入する状態を示す説明図である。 実施形態1における各相巻線の巻線方式を示す説明図であって、(a)は斜め上方から見た斜視図であり、(b)は軸方向から見た平面図であり、(c)は周方向に展開した展開図である。 (a)は実施形態1に係る固定子巻線を構成する各相巻線の結線図であり、(b)は実施形態1に係る固定子鉄心のU相の2個の同相スロット内に収容されたU相部分巻線の収容位置を示す模式図である。 試験1における電圧測定結果を示すグラフであって、(a)はインバータ出口における電圧波形を示し、(b)は実施形態1及び従来例1の固定子巻線における相巻線間の電位差を示す。 試験1における固定子巻線の電圧測定位置を示す説明図である。 試験2における実施形態1及び従来例1の測定結果を示すグラフである。 試験3における実施形態1及び従来例1の周波数と共振ゲインとの関係を示すグラフである。 試験3においてモータ内に発生する2つの共振経路を示す説明図である。 (a)は従来の回転電機における固定子巻線を構成する各相巻線の結線図であり、(b)は従来の回転電機における固定子鉄心のU相の2個の同相スロット内に収容されたU相部分巻線の収容位置を示す模式図である。
以下、本発明に係る回転電機の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。
〔実施形態1〕
本実施形態に係る回転電機1は、車両用モータ(電動機)として使用されるものであって、図1に示すように、有底筒状の一対のハウジング部材10a,10bが開口部同士で接合されてなるハウジング10と、ハウジング10に軸受け11,12を介して回転自在に支承される回転軸13に固定された回転子14と、ハウジング10内の回転子14を包囲する位置でハウジング10に固定された固定子20と、を備えている。
回転子14は、固定子20の内周側と径方向に向き合う外周側に、周方向に所定距離を隔てて極性が交互に異なるように配置された複数対の磁極を有する。これらの磁極は、回転子14の所定位置に埋設された複数の永久磁石により形成されている。回転子14の磁極の数は、回転電機により異なるため限定されるものではない。本実施形態においては、8極(N極:4、S極:4)の回転子が用いられている。
次に、図2〜図5を参照して固定子20について説明する。固定子20は、図2に示すように、周方向に配列された複数のスロット31を有し回転子14と径方向に対向して配置された円環状の固定子鉄心30と、スロット31に挿通配置されたU字形状の複数の導体セグメント50の開放端部の端末部同士が固定子鉄心30の軸方向一方側で溶接により接続されて固定子鉄心30に巻装された三相(U相、V相、W相)の固定子巻線40と、を備えている。
固定子鉄心30は、複数枚のコアシート(鋼板)を軸方向に積層して構成されている。固定子鉄心30の内周面には、固定子巻線40を収容できるように、固定子鉄心30を軸方向に貫通し断面矩形状の複数のスロット31が周方向に等ピッチに、且つ径方向に放射状に設けられている。固定子鉄心30に形成されたスロット31の数は、回転子14の磁極数(8磁極)に対し、固定子巻線40の1相あたり2個の割合で形成されており、スロット倍数n(nは2以上の自然数)が2とされている。即ち、固定子鉄心30には、同一相の相巻線41を収容する同相スロットが前記磁極毎に周方向に連続して2個ずつ設けられている。よって、本実施形態では、8×3×2=48より、スロット数は48個とされている。
固定子鉄心30のスロット31に巻装された固定子巻線40は、U字形状をなす複数の導体セグメント50の開放端側の端部同士を溶接で互いに接合することにより構成されている。この導体セグメント50は、導体の外周に絶縁皮膜(図示せず)が被覆された平角導体線をU字形状に折り曲げることにより形成されている。なお、導体セグメント50両端部の溶接で接合される接合部56には、絶縁皮膜が剥離されることにより導体露出部(図示せず)が形成されている。
U字形状に形成された導体セグメント50は、図3に示すように、互いに平行な一対の直線部51、51と、一対の直線部51、51の一端を互いに連結するターン部52とからなる。ターン部52の中央部には、固定子鉄心30の端面30aに沿って端面30aと平行に延びる頭頂段部53が設けられており、頭頂段部53の両側には、固定子鉄心30の端面30aに対して所定の角度で傾斜した傾斜部54が設けられている。なお、符号24は、固定子鉄心30と固定子巻線40との間を電気絶縁するインシュレータである。
図3には、同一相の隣接する2個のスロット31A、31Bに挿入配置される2個で一組の導体セグメント50A、50Bが示されている。この場合、2個の導体セグメント50A、50Bは、それらの一対の直線部51、51が、同一のスロット31ではなく、隣接した2個のスロット31A、31Bに別々に軸方向一端側から挿入される。即ち、図3の右側にある2個の導体セグメント50A、50Bにおいて、一方の導体セグメント50Aは、一方の直線部51が一のスロット31Aの最外層(第6層)に挿入され、他方の直線部51が固定子鉄心30の反時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット(図示せず)の第5層に挿入される。
そして、他方の導体セグメント50Bは、一方の直線部51がスロット31Aと隣接したスロット31Bの最外層(第6層)に挿入され、他方の直線部51が固定子鉄心30の反時計回り方向に向けて1磁極ピッチ(NS磁極ピッチ)離れた他のスロット(図示せず)の第5層に挿入される。即ち、2個の導体セグメント50A、50Bは、周方向に1スロットピッチずれた状態に配置される。このようにして、全スロット31に対して偶数本の導体セグメント50の直線部51が挿入配置される。本実施形態の場合には、各スロット31内に、合計6本の直線部51が径方向1列に積層配置されている。
スロット31から軸方向他端側へ延出した一対の直線部51、51の開放端部は、固定子鉄心30の端面30aに対して所定の角度をもって斜めに斜行するように互いに周方向反対側へ捻られて、概ね半磁極ピッチ分の長さの斜行部55(図2及び図4参照)が形成されている。そして、固定子鉄心30の軸方向他端側において、導体セグメント50の所定の斜行部55の先端部同士が溶接により接合される(図4の接合部56)ことにより、所定のパターンで電気的に接続される。即ち、所定の導体セグメント50が直列に接続されることにより、固定子鉄心30のスロット31に沿って周方向に渦巻き状に波巻きで巻回された3本の相巻線(U相、V相、W相)41を有する固定子巻線40が形成される。
なお、固定子巻線40の各相について、基本となるU字形状の導体セグメント50により、固定子鉄心30の周りを6周する巻線(コイル)が形成される。しかし、固定子巻線40の各相について、出力用引き出し線及び中性点用引き出し線を一体に有するセグメント、並びに1周目と2周目とを接続するターン部を有するセグメントは、基本となる導体セグメント50とは異なる異形セグメント(図示せず)で構成される。これら異形セグメントを用いて、図5(a)に示すように、固定子巻線40の各相の巻線端が星型結線により結線される。
図2に示すように、上記のように構成された固定子巻線40の軸方向一端側(図2の下側)には、固定子鉄心30の一端面から突出した導体セグメント50の複数のターン部52が固定子鉄心30の径方向に積層されてなる第1コイルエンド部47が形成されている。また、固定子巻線40の軸方向他端側(図2の上側)には、固定子鉄心30の他端面から突出した導体セグメント50の複数の斜行部55及び接合部56(図4参照)が固定子鉄心30の径方向に積層されてなる第2コイルエンド部48が形成されている。
固定子巻線40を構成する3本の相巻線(U相、V相、W相)41は、図5(a)に示すように、延伸方向一端側の出力端子43から他端側の中性点44までを2n個(本実施形態ではn=2から4個)に分割されて、延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線a、第2部分巻線b、第3部分巻線c、第4部分巻線dにより構成されている。これら第1〜第4部分巻線a〜dの巻線方式は、全て波巻きである。
本実施形態では、各相巻線41は、図5(b)に示すように、第1部分巻線aと第4部分巻線dが固定子鉄心30の異なる同相スロットに収容されている。即ち、第1部分巻線aは、連続する2個の同相スロットU1,U2のうちの一方の同相スロットU1に収容され、第4部分巻線dは他方の同相スロットU2に収容されている。なお、図5(b)には、代表としてU相の2個の同相スロットU1、U2が示されており、V相及びW相の場合も、U相と同様である。
また、各相巻線41は、出力端子側から偶数番目に位置する第2m(mは1≦m≦nを満たす全ての自然数)部分巻線と、第2m部分巻線の1つ前の奇数番目に位置する第(2m−1)部分巻線が、固定子鉄心30の異なる同相スロットに収容されている。具体的には、図5(b)に示すように、U相の相巻線41の第2部分巻線bと第1部分巻線aが異なる同相スロットに収容され、第4部分巻線dと第3部分巻線cが異なる同相スロットに収容されている。即ち、本実施形態では、第1部分巻線aと第3部分巻線cが連続する2個の同相スロットU1,U2のうちの一方の同相スロットU1に収容され、第2部分巻線bと第4部分巻線dが他方の同相スロットU2に収容されている。
なお、各相巻線41の第1〜第4部分巻線a〜dが収容される同相スロットの変更は、固定子鉄心30の軸方向他端面から外方に突出した固定子巻線40の第2コイルエンド部48にある渡り線の結線を僅かに変更するだけでよいため、モータ性能の低下を回避しつつ簡易に実現することができる。
以上のように構成された本実施形態の回転電機1によれば、固定子巻線40を構成する各相巻線41は、2n個(n=2で4個)に分割されて、第1〜第4部分巻線a〜dにより構成され、第1部分巻線aと第4部分巻線dが異なる同相スロットU1,U2に収容されているとともに、延伸方向一端側から偶数番目に位置する第2m部分巻線と第(2m−1)部分巻線が異なる同相スロットU1,U2に収容されている。そのため、回転電機1内の共振ゲインのピーク値を下げることができるので、インバータが高速でスイッチングした際の相巻線間の最大電圧を低く抑制することができる。これにより、インバータの高効率化(高速スイッチング化)と絶縁信頼性の確保を両立することができる。
また、本実施形態では、スロット倍数nが2とされ、各相巻線41は、延伸方向一端から他端までを4個(2n個)に分割されて、第1及び第3部分巻線a,cが一方の同相スロットU1に収容され、第2及び第4部分巻線b,dが他方の同相スロットU2に収容されている。これにより、スロット倍数nが2に設定された回転電機において、上記の作用及び効果を確実に得ることができる。
また、本実施形態では、各相巻線41の第1〜第4部分巻線a〜dの巻線方式が全て波巻きにされているため、固定子巻線40を容易に形成することできる。また、固定子巻線40の相巻線間における共振の低減効果を確実に得ることができる。
また、本実施形態の固定子巻線40は、スロット31に軸方向に挿入配置された複数の導体セグメント50が直列に接続されて固定子鉄心30に巻装された複数の相巻線41により構成されているセグメントタイプのものである。そのため、固定子巻線40を連続線で形成する場合に比べて、導体セグメント50単体は、長さが非常に短く、ハンドリングが容易であるため、固定子巻線40を容易に作製することができる。
〔試験1〕
実施形態1の巻線手法と従来例1の巻線手法でそれぞれ作製したモータ(電動機)において、インバータのスイッチング時における相巻線間の最大電位差を比較する試験1を行った。従来例1は、特許文献1に開示されたものであり、図11に示すように、第1及び第2部分巻線a,bが連続する2個のうちの一方の同相スロットU1に収容され、第3及び第4部分巻線c,dが連続する2個のうちの他方の同相スロットU2に収容されている。比較した実施形態1及び従来例1のモータは、同相スロット内に収容される各分割巻線a〜dの配置方法が異なるものであり、その他の構成やモータ性能(出力、効率等)は同等である。
実施形態1及び従来例1の固定子巻線における相巻線間の電位差の測定は、図7に示すように、インバータのスイッチング時に最も電圧が高くなる箇所である、一方の相巻線(U相)における入り口側の端部と、他方の相巻線(V相)における第1部分巻線aと第2部分巻線bの接続部との間で行った。その結果は、図6(b)に示す通りである。なお、図6(a)は、インバータの出口における電圧波形を示す。図6(b)から明らかなように、実施形態1の相巻線間の最大電位差は、従来例1に比べ低下していることが解る。
〔試験2〕
試験1の実施形態1及び従来例1のモータを用いて、インバータの出力波形の立ち上り速度を変化させた際の相巻線間の最大電位差について比較する試験2を行ったところ、図8に示す結果が得られた。
図8から明らかなように、点Aまでの立ち上り速度が遅い領域では、実施形態1と従来例1の最大電圧は殆ど同じであるが、点Aから点Bまでの中間領域では、実施形態1の最大電圧の方が従来例1よりも大きくなっている。そして、点B以降の立ち上り速度が速い領域では、逆転して従来例1の最大電圧の方が実施形態1よりも大きくなっている。これにより、インバータの高速スイッチング時においては、従来例1よりも実施形態1の方が相巻線間の最大電圧を低減できることが解る。
〔試験3〕
試験1,2で用いた実施形態1及び従来例1のモータに関して、インバータ出力端とモータ入力端との間の伝達特性を調べる試験3を行ったところ、図9に示す結果が得られた。図9において、共振ゲインの0dB以上の領域が増幅域となり、モータ入力端に増幅域の周波数とゲインに応じたサージ電圧が発生する。
具体的には、伝達特性の最大ゲインが大きいほどサージ電圧がより増幅され、モータ入力端の最大サージ電圧は上昇する。また、この上昇量は、インバータのスイッチング速度が速くなるほど高周波域のゲイン特性によってサージ電圧が上昇する。つまり、伝達特性の高周波域にゲインが高い特性を有するモータは、インバータのスイッチング速度(電圧の上昇速度)が速い領域でサージ電圧が増幅され、モータ入力端の最大電圧も上昇する。
図9に示す従来例1と実施形態1の巻線手法の伝達特性を比較すると、周波数全域において、実施形態1の巻線手法におけるゲインピーク値は従来例1よりも低く、スイッチング速度が速い場合には、実施形態1の巻線手法の方がサージ電圧を抑制することができる。これは、図10に示すように、スイッチングの瞬間にモータ内で経路1と経路2の2つの経路の共振が発生し、これがモータ内の相巻線間の電位差を上昇させる原因となるからである。
実施形態1の巻線手法は、結線順を変えることにより、同一の同相スロットに収容された2つの部分巻線(aとc、bとd)の間で共振電流が逆向きに流れることで相互インダクタンスがキャンセルされ、これによって共振経路のインダクタンスが下がり、共振Q値が下がることで共振ゲインが低下するものと考えられる。
〔他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
例えば、実施形態1では、固定子巻線40を構成する基本となる導体セグメント50として、U字形状のものが採用されているが、U字形状のものに代えてI字形状の導体セグメントを用いてもよい。
また、実施形態1では、n(nは2以上の自然数)の値がn=2とされていたが、nの値は、任意に設定することができる。
また、実施形態1は、本発明に係る回転電機をモータ(電動機)に適用した例であるが、本発明は、車両に搭載される回転電機として、電動機あるいは発電機、さらには両者を選択的に使用しうる回転電機にも適用することができる。
1…回転電機、 14…回転子、 20…固定子、 30…固定子鉄心、 31…スロット、 U1,U2…同相スロット、 40…固定子巻線、 41…相巻線、 a…第1部分巻線、 b…第2部分巻線、 c…第3部分巻線、 d…第4部分巻線。

Claims (3)

  1. 周方向に配列された複数対の磁極を有する回転子(14)と、周方向に配列された複数のスロット(31)を有し前記回転子と径方向に対向して配置された固定子鉄心(30)、及び前記スロットに挿入されて前記固定子鉄心に巻装された複数の相巻線(41)よりなる固定子巻線(40)を有する固定子(20)と、を備えた回転電機において、
    前記固定子鉄心は、同一相の前記相巻線が収容される同相スロット(U1,U2)を前記磁極毎に周方向に連続してn(nは2以上の自然数)個ずつ有し、
    各前記相巻線は、延伸方向一端から他端までを2n個に分割されて、前記延伸方向一端側から順に配置された第1部分巻線(a)、第2部分巻線(b)、・・・、第2n部分巻線(d)により構成され、
    前記第1部分巻線と前記第2n部分巻線が前記固定子鉄心の異なる前記同相スロットに収容されているとともに、
    前記延伸方向一端側から偶数番目に位置する第2m(mは1≦m≦nを満たす全ての自然数)部分巻線と第(2m−1)部分巻線が前記固定子鉄心の異なる前記同相スロットに収容されていることを特徴とする回転電機。
  2. 請求項1に記載の回転電機において、
    前記固定子鉄心は、前記同相スロットを前記磁極毎に周方向に連続して2個ずつ有し、
    各前記相巻線は、延伸方向一端から他端までを4個に分割されて、前記延伸方向一端側から順に配置された前記第1部分巻線、前記第2部分巻線、第3部分巻線(c)、第4部分巻線(d)により構成され、
    前記第1及び第3部分巻線が連続する2個のうちの一方の同相スロット(U1)に収容され、前記第2及び第4部分巻線が連続する2個のうちの他方の同相スロット(U2)に収容されていることを特徴とする回転電機。
  3. 請求項1又は2に記載の回転電機において、
    前記第1〜第2n部分巻線(a〜d)の巻線方式は全て波巻きであることを特徴とする回転電機。
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