JP2015151349A - 蛍光標識用プローブ - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、標的細胞への特異性及び集積性が高く、かつ非標的細胞からの蛍光シグナルが十分に抑制された蛍光標識用プローブを提供することを課題とする。【解決手段】生体内の標的細胞に蓄積して蛍光を発する蛍光標識用プローブであって、2以上の蛍光物質が互いにリンカーにより連結された分子が内包されたリポソームからなり、前記リンカーが、前記標的細胞内に発現している酵素による切断部位を有するペプチドであり、前記蛍光物質は、自己消光性を有しており、前記リポソームは、ホスファチジルセリンを含有する、又は表面が前記標的細胞の細胞表面に存在する受容体のリガンドにより修飾されていることを特徴とする、蛍光標識用プローブ。【選択図】なし
Description
本発明は、生体内の標的細胞に蓄積して蛍光を発する蛍光標識用プローブであって、標的細胞への特異性及び集積性が高く、かつ非標的細胞からの蛍光シグナルが十分に抑制された蛍光標識用プローブに関する。
動脈硬化病変に生じるプラーク(粥状硬化巣)のうち、不安定プラークは、破綻し脳梗塞・心筋梗塞などを引き起こす。したがって、不安定プラークを早期に検出し適切な治療を行うことが重要である。不安定プラークを検出する方法としては、これまでに、超音波検査、CT、MRIなどによる形態学的検出が試みられている。しかしながら、プラークの破綻には、形態的には検出されない分子レベルでの変化が直接的な原因となり得ることから、形態に依存せずに検出できる方法が望まれている。本発明者らはこれまでに、不安定プラークにはマクロファージが多く浸潤していることに着目し、核医学分子イメージング法である[18F]FDG−PETにより、不安定プラークを画像化することに成功した(非特許文献1参照。)。しかし、PETは大がかりな設備を要し、イメージング薬剤を用事合成しなければならない上に、放射線被曝の問題があることなどから、検診などのスクリーニングに用いることは難しい。これに対して、蛍光イメージングは、簡便で低侵襲であるため、リスク患者のスクリーニングに有用である。
また、癌は依然、我が国における死因第一位であり、その対策が急務である。近年、PETやMRI、CTなどによる画像診断技術の進歩に伴い、癌の早期発見が可能になってきた。一方で、早期発見により手術適用になった場合であっても、数年後に再発する症例も少なくない。これは、術中の病巣の取り残しが原因の一つであると考えられる。そこで、取り残しを無くすべく、肉眼では発見が困難な微小癌や周囲正常組織との判別が困難な癌を術中に高感度で描出可能な、蛍光分子イメージングプローブの開発も望まれている。
不安定プラーク中のマクロファージを標識する方法としては、例えば、CTイメージング用試薬であるヨウ素を内包させたポリエチレングリコール(PEG)化リポソームを不安定プラークのマクロファージに取り込ませる方法が報告されている(非特許文献2参照。)。また、システインプロテアーゼのカテプシンBによる切断部位を有するタンパク質(基質)に複数の自己消光性蛍光物質を結合させた標識用分子は、そのままでは自己消光により蛍光を発しないが、マクロファージに取り込まれると、マクロファージ内に存在するカテプシンBにより当該基質が切断されると蛍光を発すること(アクチベータブル)、及び当該標識用分子を用いてマクロファージが集積したプラークを蛍光標識し得ることが報告されている(非特許文献3参照。)。
Ogawa,et al.,Journal of Nuclear Medicine,2004,vol.45(7),p.1245−1250.
Bhavane,et al.,Circulation: Cardiovascular Imaging,2013,vol.6,p.285−294.
Jaffer,et al.,Circulation,2008,vol.118,p.1802−1809.
非特許文献2に記載の方法では、マクロファージへの特異性が低く、マクロファージ以外の組織にも集積しやすいことに加えて、マクロファージに取り込まれていないヨウ素含有PEG化リポソームと、マクロファージに取り込まれたヨウ素含有PEG化リポソームとが区別できず、正常組織からのバックグラウンドシグナルが大きい、という問題がある。また、そもそもCTイメージング自体、感度がかなり低く、臨床応用には適さない。一方で、非特許文献3に記載の標識用分子は、カテプシンBにより基質が切断されない限り蛍光を発しないという利点はあるものの、生体に投与された場合に、マクロファージに選択的に取り込ませることができない上に、生体内における安定性が低いため、基質が切断された蛍光物質が血中に拡散してしまう、という問題がある。
本発明は、標的細胞への特異性及び集積性が高く、かつ非標的細胞からの蛍光シグナルが十分に抑制された蛍光標識用プローブを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、自己消光性を有する蛍光物質同士を標的細胞内に発現している酵素による切断部位を有するペプチドで連結したアクチベータブル蛍光分子(標的細胞内でのみ蛍光を発する分子)を、標的細胞へ特異的に取り込まれるように表面を修飾したリポソームで内包させることにより、安定して標的細胞へ特異的に取り込ませることができるため、標的部位特異的に蛍光イメージング可能であることを見出し、本発明を完成させた。
(1) 本発明の第一の態様は、生体内の標的細胞に蓄積して蛍光を発する蛍光標識用プローブであって、2以上の蛍光物質が互いにリンカーにより連結された分子が内包されたリポソームからなり、前記リンカーが、前記標的細胞内に発現している酵素による切断部位を有するペプチドであり、前記蛍光物質は、自己消光性を有しており、前記リポソームは、ホスファチジルセリンを含有する、又は表面が前記標的細胞の細胞表面に存在する受容体のリガンドにより修飾されていることを特徴とする、蛍光標識用プローブである。
(2) 前記(1)の蛍光標識用プローブにおいては、前記リンカーが、6〜20アミノ酸からなるペプチドであることが好ましい。
(3) 前記(1)又は(2)の蛍光標識用プローブにおいては、前記PEG化リポソームが、PEG化リポソームであることが好ましい。
(4) 前記(1)〜(3)のいずれかの蛍光標識用プローブにおいては、前記標的細胞が、マクロファージ又は腫瘍細胞であり、前記酵素が、カテプシンB又はマトリックスメタロプロテアーゼであることが好ましい。
(5) 前記(1)〜(6)のいずれかの蛍光標識用プローブにおいては、前記リガンドが、マンノース又はガラクトースであることが好ましい。
(6) 前記(3)〜(5)のいずれかの蛍光標識用プローブにおいては、前記PEG化リポソームが、ホスファチジルセリンを含有し、かつ表面がマンノースにより修飾されていることが好ましい。
(7) 前記(3)〜(6)のいずれかの蛍光標識用プローブにおいては、前記PEG化リポソームが、数平均分子量1500〜2500g/molのPEGが、リポソームを構成する脂質とPEGの総量当たり3〜7mol%付加されており、かつ平均粒子径が200〜300nmであることが好ましい。
(8) 前記(1)〜(7)のいずれかの蛍光標識用プローブにおいては、前記蛍光物質が近赤外蛍光を発することが好ましい。
(9) 前記(1)〜(8)のいずれかの蛍光標識用プローブにおいては、前記蛍光物質がインドシアニングリーンであることが好ましい。
(10) 前記(1)〜(9)のいずれかの蛍光標識用プローブは、動脈硬化不安定プラークの標識に用いられることが好ましい。
(2) 前記(1)の蛍光標識用プローブにおいては、前記リンカーが、6〜20アミノ酸からなるペプチドであることが好ましい。
(3) 前記(1)又は(2)の蛍光標識用プローブにおいては、前記PEG化リポソームが、PEG化リポソームであることが好ましい。
(4) 前記(1)〜(3)のいずれかの蛍光標識用プローブにおいては、前記標的細胞が、マクロファージ又は腫瘍細胞であり、前記酵素が、カテプシンB又はマトリックスメタロプロテアーゼであることが好ましい。
(5) 前記(1)〜(6)のいずれかの蛍光標識用プローブにおいては、前記リガンドが、マンノース又はガラクトースであることが好ましい。
(6) 前記(3)〜(5)のいずれかの蛍光標識用プローブにおいては、前記PEG化リポソームが、ホスファチジルセリンを含有し、かつ表面がマンノースにより修飾されていることが好ましい。
(7) 前記(3)〜(6)のいずれかの蛍光標識用プローブにおいては、前記PEG化リポソームが、数平均分子量1500〜2500g/molのPEGが、リポソームを構成する脂質とPEGの総量当たり3〜7mol%付加されており、かつ平均粒子径が200〜300nmであることが好ましい。
(8) 前記(1)〜(7)のいずれかの蛍光標識用プローブにおいては、前記蛍光物質が近赤外蛍光を発することが好ましい。
(9) 前記(1)〜(8)のいずれかの蛍光標識用プローブにおいては、前記蛍光物質がインドシアニングリーンであることが好ましい。
(10) 前記(1)〜(9)のいずれかの蛍光標識用プローブは、動脈硬化不安定プラークの標識に用いられることが好ましい。
本発明に係る蛍光標識用プローブは、生体内での安定性が高く、かつ標的細胞への指向性に優れた、アクチベータブルな蛍光プローブである。このため、当該蛍光標識用プローブを用いることにより、生体内の標的細胞を、比較的安全に、特異的に蛍光標識することができる。本発明に係る蛍光標識用プローブは、特に、動脈硬化不安定プラークや腫瘍組織等の蛍光バイオイメージングに好適に用いられる。
本発明に係る蛍光標識用プローブは、標的細胞では蛍光を発するが、非標的細胞では蛍光を発しないアクチベータブル蛍光分子を、リポソームに内包させたものである。リポソームに内包させることにより、アクチベータブル蛍光分子の生体内における意図せぬ分解を抑制し、標的細胞へより安定的に移行させることができる。
本発明において用いられるアクチベータブル蛍光分子は、自己消光性(2以上の同種の蛍光分子が近接している状態では消光する性質)を有する2以上の蛍光物質が互いに、標的細胞内において切断されるリンカーにより連結された分子である。当該アクチベータブル蛍光分子は、自己消光性によりこのままでは蛍光を発しないが、標的細胞内でリンカーが切断されることにより、蛍光物質同士の距離が広がり、蛍光を発するようになる。
自己消光性蛍光物質をそのままリポソームに内包させた場合でも、自己消光は生じるが、複数の自己消光性蛍光物質をリンカーで連結させた場合に比べて消光効果(濃度消光)は低い。また、自己消光性蛍光物質がリポソームから漏出しやすいため、生体内に投与したとしても、バックグラウンドの蛍光が大きく、標的細胞の特異性が低いという問題もある。本発明に係る蛍光標識用プローブは、自己消光性蛍光物質を標的細胞内において切断されるリンカーで連結させた状態で内包させるため、消光効果が高く、かつリポソームからの漏出もほとんどない。
本発明において用いられるアクチベータブル蛍光分子を構成する蛍光物質としては、自己消光性を有するものであればよい。自己消光性蛍光物質としては、TAMRA(カルボキシテトラメチルローダミン)、TMR(テトラメチルローダミン)、R6G(ローダミン−6G)等のローダミン類、ICG(インドシアニングリーン)(CAS番号:3599−32−4)、Cy5.5(登録商標)等のシアニン類等が挙げられる。本発明において用いられる自己消光性蛍光物質としては、皮膚などの生体透過性が高いことから、極大蛍光波長が赤色〜近赤外であるものが好ましく、近赤外蛍光物質であることがより好ましく、生体に対する安全性の点からICGが特に好ましい。
本発明において用いられるアクチベータブル蛍光分子を構成するリンカーとしては、標的細胞内において切断されるものであればよく、標的細胞内に発現している酵素による切断部位を有するペプチド(ペプチドリンカー)が好ましい。当該酵素としては、標的細胞内に発現している酵素であればよいが。標的細胞への特異性が高められるため、標的細胞に特異的に発現している酵素や、生体を構成する他の多くの細胞よりも標的細胞において発現量が多い酵素であることが好ましい。例えば、標的細胞がマクロファージの場合、ペプチドリンカーとしては、カテプシンBによる切断部位(GFLG配列)を備えることが好ましい。また、標的細胞が腫瘍細胞の場合には、ペプチドリンカーとしては、カテプシンBによる切断部位、及び/又はマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)による切断部位を備えることが好ましい。また、ペプチドリンカー中の酵素による切断部位以外を構成するアミノ酸としては、ペプチドリンカーの可動性が高く、自己消化性蛍光物質に対する影響が小さいことから、グリシンやアラニンであることが好ましい。
本発明において用いられるアクチベータブル蛍光分子を構成するペプチドリンカーの長さ(ペプチド鎖長)(蛍光物質が結合しているアミノ酸を1番目とし、隣接する蛍光物質が結合しているアミノ酸を最終番目として算出したアミノ酸数)は、酵素による切断部位を備えることができ、かつ当該ペプチドリンカーにより連結された状態で自己消光性蛍光物質同士による自己消化が生じ得る距離となる長さであればよく、用いる自己消光性蛍光物質の種類等を考慮して適宜決定することができる。また、アクチベータブル蛍光分子一分子当たりに結合している自己消化性蛍光物質の数が3以上の場合、各自己消化性蛍光物質を連結するペプチドリンカーの長さやアミノ酸配列は、全て同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
例えば、ICGは2分子が2量体を形成することにより自己消化が生じる。このため、アクチベータブル蛍光分子一分子当たり、偶数個のICGが連結されていることが好ましく、2分子のICGがペプチドリンカーにより連結されていることがより好ましい。特に、自己消化性蛍光物質としてICGを用い、カテプシンBによる切断部位(GFLG配列)を備える場合には、アクチベータブル蛍光分子としては、2分子のICGが6〜20アミノ酸長のペプチドリンカーにより連結されたものが好ましく、2分子のICGが6〜10アミノ酸長のペプチドリンカーにより連結されたものがより好ましく、アミノ酸配列がKGFLGK、KGGFLGK、KGFLGGK、KGGGFLGK、KGFLGGGK、KGGFLGGK、KGGGGFLGK、KGFLGGGGK、KGGGGGFLGK、KGFLGGGGGK、又はKGGGFLGGGKからなるペプチドリンカーの両末端のリジン残基にICGが結合したものがさらに好ましい。
本発明において、アクチベータブル蛍光分子を内包するリポソームは、グリセロリン脂質やスフィンゴリン脂質等のリン脂質を主たる構成成分として製造することができる。グリセロリン脂質としては、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)等が挙げられる。スフィンゴリン脂質としては、スフィンゴミエリンが挙げられる。また、リン脂質に加えて、コレステロールを構成成分としてもよい。リポソームを構成する脂質(リン脂質に加えて、コレステロール等の他の脂質を含む。)の組成は、標的細胞への特異性や集積性を高められるように、標的細胞が取込みやすい組成に適宜調節することが好ましい。例えば、標的細胞がマクロファージの場合、本発明に係る蛍光標識用プローブとしては、アクチベータブル蛍光分子を内包するリポソームとしては、PSを含有しているものが好ましく、リポソームを構成する脂質(リン脂質のみならず、コレステロールも含む。)当たり10mol%以上のPSを含有するものがより好ましく、リポソームを構成する脂質当たり20mol%以上のPSを含有するものがさらに好ましく、リポソームを構成する脂質当たり30〜40mol%のPSを含有するものがよりさらに好ましい。
本発明において、アクチベータブル蛍光分子を内包するリポソームは、少なくとも表面の一部にPEGが付加されているPEG化リポソームが好ましい。PEG化により、標的細胞への取り込み自体は抑制される傾向にあるが、血中滞留性が向上する結果、生体内に投与された場合に標的細胞への集積性を向上させることができる。
PEG化リポソームにおいて、リポソーム表面に付加されたPEGの鎖長が長いほど、またリポソーム表面に付加されたPEGの量が多くなるほど、標的細胞への取り込みやすさが低くなるが、血中滞留性は高くなる。そこで、本発明において、アクチベータブル蛍光分子を内包するリポソームの表面に付加されるPEGの鎖長や付加量は、標的細胞への取り込みやすさに対する低下効果と血中滞留性改善効果とのバランスで適宜調節されることが好ましい。例えば、リポソームの表面に付加されるPEGの鎖長としては、1000〜7000g/molの範囲内が好ましく、1500〜6000g/molの範囲内がより好ましく、1500〜5000g/molの範囲内がさらに好ましく、1500〜3000g/molの範囲内がよりさらに好ましく、1500〜2500g/molの範囲内が特に好ましい。また、リポソームの表面に付加されるPEGの量としては、リポソームを構成する脂質とPEGの総量当たり、0.5〜10mol%の範囲内が好ましく、0.5〜7.5mol%の範囲内がより好ましく、1.0〜7.0mol%の範囲内がさらに好ましく、3.0〜7.0mol%の範囲内がよりさらに好ましい。
本発明において、アクチベータブル蛍光分子を内包するリポソームの大きさとしては、標的細胞への取り込まれやすさの点から、平均粒子径が500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、血中滞留性の点から100〜300nmがさらに好ましく、200〜300nmがよりさらに好ましい。なお、リポソームの平均粒子径は、DLS(動的光散乱法)により測定することができる。
標的細胞への特異性を高めることができるため、本発明において、アクチベータブル蛍光分子を内包するリポソームとしては、表面が標的細胞の細胞表面に存在する受容体のリガンドにより修飾されていることが好ましい。当該リガンドとしては、リポソームを構成するリン脂質等と結合可能な物質であればよく、糖鎖、核酸鎖、抗体、アビジン等の低分子化合物等が挙げられる。例えば、標的細胞がマクロファージの場合、アクチベータブル蛍光分子を内包するリポソームの表面は、マンノース(末端がマンノースである糖鎖を含む。)により修飾されていることが好ましい。また、標的細胞が腫瘍細胞の場合、アクチベータブル蛍光分子を内包するリポソームの表面は、ガラクトース(末端がガラクトースである糖鎖を含む。)やトラスツズマブ等の抗体医薬等により修飾されていることが好ましい。
アクチベータブル蛍光分子を内包させたリポソームは、水溶性成分を内包するリポソームを製造する際に用いられる各種の方法により製造することができる。当該製造方法としては、例えば、薄膜法、リモートローディング(pH勾配)法等が挙げられる。アクチベータブル蛍光分子の封入効率が高いことから、酢酸カルシウムでpH勾配をつけたリモートローディング法によりリポソームを製造した後にアクチベータブル蛍光分子を内包させる方法が好ましい。
PEG化リポソームは、リポソームを構成する脂質として、予めPEGを結合させたリン脂質やコレステロールを用いることにより製造できる。また、表面がリガンドで修飾されているリポソームを製造する場合には、予めリガンドをエーテル結合やエステル結合等により結合させたリン脂質やコレステロール、炭化水素、脂肪酸をリポソームを構成する脂質として用いることにより製造できる。
マクロファージを標的細胞とする本発明に係る蛍光標識用プローブを、静脈注射等により生体に投与することによって、マクロファージを、ひいてはマクロファージが多く集積する動脈硬化不安定プラークを蛍光標識することができる。これにより、形態にとらわれず、動脈硬化不安定プラークを高感度に検出することが可能になる。
また、腫瘍細胞を標的細胞とする本発明に係る蛍光標識用プローブを生体に投与することによって、ごく小さな腫瘍細胞も蛍光標識することができる。例えば、腫瘍部の切除手術前に当該蛍光標識用プローブを投与しておくことにより、開腹手術や内視鏡手術において腫瘍部を取り残すことなく切除することが期待できる。特に、自己消光性蛍光物質として、近赤外蛍光で励起可能な近赤外蛍光物質を使用した蛍光標識用プローブは、術野の色に影響を及ぼさずに腫瘍組織を蛍光標識できる。
本発明に係る蛍光標識用プローブは、PEGリポソームに、アクチベータブル蛍光分子以外の他の蛍光物質を内包していてもよい。例えば、フォトダイナミックセラピー(PDT)効果を有する物質を共に内包させておくことができる。例えば、腫瘍細胞を標的細胞とし、PDT効果を有する物質を共に内包させた蛍光標識用プローブを生体に投与した場合、蛍光により標識された腫瘍細胞に適当な光を照射することにより、腫瘍細胞特異的にPDT効果を奏させることができる。PDT効果を有する物質としては、例えば、近赤外蛍光化合物であるIR700(Mitsunaga,et al.,Nature Medicine,2011,vol.17(12),p.1685−1691.)等が挙げられる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[参考例1]
PSを構成成分とするリポソームとPSを含有しないリポソームの、マウス腹腔マクロファージへの取り込まれやすさを調べた。
PSを構成成分とするリポソームとPSを含有しないリポソームの、マウス腹腔マクロファージへの取り込まれやすさを調べた。
<111In標識リポソームの作製>
まず、DSPC(ジステアロイルホスファチジルコリン): D−DSPS(ジステアロイルホスファチジルDセリン): chol(コレステロール)=1:1:1(モル比)にて脂質を混合し、クロロホルムに溶解させた。このクロロホルム溶液を丸底フラスコにいれて減圧乾固し、フラスコに内壁に薄膜を作製した(D−PSリポソーム膜)。なお、D−DSPSに代えてL−DSPS(ジステアロイルホスファチジルLセリン)を用いたもの(PSリポソーム膜)と、D−DSPSに代えてDSPCを用いたもの(DSPC:chol=2:1)(PCリポソーム膜)も、対照として作製した。
まず、DSPC(ジステアロイルホスファチジルコリン): D−DSPS(ジステアロイルホスファチジルDセリン): chol(コレステロール)=1:1:1(モル比)にて脂質を混合し、クロロホルムに溶解させた。このクロロホルム溶液を丸底フラスコにいれて減圧乾固し、フラスコに内壁に薄膜を作製した(D−PSリポソーム膜)。なお、D−DSPSに代えてL−DSPS(ジステアロイルホスファチジルLセリン)を用いたもの(PSリポソーム膜)と、D−DSPSに代えてDSPCを用いたもの(DSPC:chol=2:1)(PCリポソーム膜)も、対照として作製した。
作製した薄膜は、10mM NTA(ニトリロ三酢酸)が入った30mM HEPES/5% マンニトールバッファーを用いて水浴中60℃にてゆっくり膨潤させた。膨潤後に得られた溶液を、エクストルーダを用いて孔径が100nm又は200nmのポリカーボネートメンブレンフィルターに通すことにより、サイジングを行った。得られたリポソーム溶液は、ゲル濾過(Sephadex G−50)し、内包されなかったNTAを除いた。以降、D−PSリポソーム膜から調製され、孔径100nmフィルターに通されたリポソームを「D−PS100」、孔径200nmフィルターに通されたリポソームを「D−PS200」という。PSリポソーム膜とPCリポソーム膜から調製されたリポソームも同様である。
作製されたNTAを内包したD−PSリポソーム、PSリポソーム、及びPCリポソームに、111InCl3、51mM Oxine(エタノール溶液)、2M 酢酸ナトリウムバッファー混合溶液を加え、キレート剤OxineとNTAの交換反応により、リポソームを111In標識した。得られた111In標識リポソームは、超遠心分離処理後、生理食塩水で再懸濁することにより回収し、リポソーム画分と上清の放射能を測定することにより、放射化学的収率を求めた。この結果、[111In]D−PS100、[111In]PS100、[111In]PC100、[111In]D−PS200、[111In]PS200、[111In]PC200の全てにおいて、放射化学的収率95%以上にて目的物を得ることに成功した。
<マウス腹腔マクロファージを用いたin vitroにおける取り込み量の測定>
マウス(ddY、8週齢、メス)の腹腔にチオグリコレート培地を2mL投与した。3日後に、氷冷PBS(リン酸生理食塩水)8mLにより腹腔マクロファージを回収し、30mmディッシュに播種し、D−MEM培地中、5体積%CO2雰囲気下で24時間培養した。採取したマウス腹腔マクロファージの培地を交換して浮遊細胞を除いた後、1時間のプレインキュベーションを行った後、[111In]D−PS100、[111In]PS100、[111In]PC100、[111In]D−PS200、[111In]PS200、又は[111In]PC200を37kBqずつそれぞれのディッシュに添加し、37℃で2時間、5体積%CO2雰囲気下にて静置した。2時間後に培地を回収し、細胞をPBSにて洗浄し、回収した培地と洗浄したPBSを合わせたものを上清とした。
マウス(ddY、8週齢、メス)の腹腔にチオグリコレート培地を2mL投与した。3日後に、氷冷PBS(リン酸生理食塩水)8mLにより腹腔マクロファージを回収し、30mmディッシュに播種し、D−MEM培地中、5体積%CO2雰囲気下で24時間培養した。採取したマウス腹腔マクロファージの培地を交換して浮遊細胞を除いた後、1時間のプレインキュベーションを行った後、[111In]D−PS100、[111In]PS100、[111In]PC100、[111In]D−PS200、[111In]PS200、又は[111In]PC200を37kBqずつそれぞれのディッシュに添加し、37℃で2時間、5体積%CO2雰囲気下にて静置した。2時間後に培地を回収し、細胞をPBSにて洗浄し、回収した培地と洗浄したPBSを合わせたものを上清とした。
PBSで洗浄された後の細胞は、0.35mLのPBSを加えた状態でディッシュの底から掻き取り回収する操作を2回繰り返すことにより回収し、これを細胞液とした。ガンマカウンタを用いて上清と細胞液の放射能を測定し、細胞への各リポソームの取り込み量を求めた。なお、カウント測定後、細胞液のタンパク濃度を測定し、タンパク量当たりのリポソーム取り込み量を算出した。また、対照として、111In標識リポソームに代えて[111In]Cl3を用いて同様に検討を行った。
図1に、各111In標識リポソームのマウス腹腔マクロファージへのタンパク量当たりの取り込み量の測定結果を示す。PSリポソームでは、PCリポソームに比べて高い取り込みが認められただけでなく、D−DSPSを用いたD−PSリポソームはL−DSPSを用いたPSリポソームに比べてマクロファージへの取り込みは低かった。これらの結果から、PSリポソームのマクロファージへの取り込みが、PSを特異的にマクロファージが認識したことによるものであることが示された。
[参考例2]
PEG化リポソームのマウス腹腔マクロファージへの取り込まれやすさを調べた。PEGとして、PEG2000(数平均分子量2000g/molのPEG)又はPEG5000(数平均分子量5000g/molのPEG)を用いた。
PEG化リポソームのマウス腹腔マクロファージへの取り込まれやすさを調べた。PEGとして、PEG2000(数平均分子量2000g/molのPEG)又はPEG5000(数平均分子量5000g/molのPEG)を用いた。
<111In標識PEG化リポソームの作製>
まず、DSPC:DPPS(ジパルミトイルホスファチジルセリン):chol:PEG=32:32:31:5(モル比)にて脂質を混合し、クロロホルムに溶解させたクロロホルム溶液を丸底フラスコにいれて減圧乾固し、フラスコに内壁に薄膜を作製した(5mol%PEG化リポソーム膜)。また、DSPC:DPPS:chol:PEG=33:33:32:1(モル比)にて脂質を混合し、クロロホルムに溶解させたクロロホルム溶液を丸底フラスコにいれて減圧乾固し、フラスコに内壁に薄膜を作製した(1mol%PEG化リポソーム膜)。PEGとして、鎖長の異なる2種類のPEG(PEG2000又はPEG5000)を用いた。なお、PEGを用いなかったもの(DSPC:DPPS:chol=34:34:32(モル比))(0mol%PEG化リポソーム膜)も、対照として作製した。
まず、DSPC:DPPS(ジパルミトイルホスファチジルセリン):chol:PEG=32:32:31:5(モル比)にて脂質を混合し、クロロホルムに溶解させたクロロホルム溶液を丸底フラスコにいれて減圧乾固し、フラスコに内壁に薄膜を作製した(5mol%PEG化リポソーム膜)。また、DSPC:DPPS:chol:PEG=33:33:32:1(モル比)にて脂質を混合し、クロロホルムに溶解させたクロロホルム溶液を丸底フラスコにいれて減圧乾固し、フラスコに内壁に薄膜を作製した(1mol%PEG化リポソーム膜)。PEGとして、鎖長の異なる2種類のPEG(PEG2000又はPEG5000)を用いた。なお、PEGを用いなかったもの(DSPC:DPPS:chol=34:34:32(モル比))(0mol%PEG化リポソーム膜)も、対照として作製した。
参考例1と同様にして、作製した薄膜から、NTAを内包したリポソームを調製し、111In標識リポソームを得た。PEG2000を用いた5mol%PEG化リポソーム膜から調製され、孔径100nmフィルターに通された111In標識リポソームを「[111In]PS100−5%PEG2000」、PEG2000を用いた5mol%PEG化リポソーム膜から調製され、孔径200nmフィルターに通された111In標識リポソームを「[111In]PS200−5%PEG2000」、PEG2000を用いた1mol%PEG化リポソーム膜から調製され、孔径100nmフィルターに通された111In標識リポソームを「[111In]PS100−1%PEG2000」、PEG2000を用いた1mol%PEG化リポソーム膜から調製され、孔径200nmフィルターに通された111In標識リポソームを「[111In]PS200−1%PEG2000」という。PEG5000を用いた111In標識PEG化リポソーム膜から調製されたリポソームも同様である。0mol%PEG化リポソーム膜から調製され、孔径100nmフィルターに通された111In標識リポソームを「[111In]PS100」、0mol%PEG化リポソーム膜から調製され、孔径200nmフィルターに通された111In標識リポソームを「[111In]PS200」という。これら全ての111In標識リポソームにおいて、放射化学的収率は95%以上であった。
<マウス腹腔マクロファージを用いたin vitroにおける取り込み量の測定>
調製された111In標識リポソームについて、参考例1と同様にして、マウス腹腔マクロファージへの取り込み量を定量的評価した。結果を図2に示す。図中、「PS100」は孔径100nmフィルターに通された111In標識リポソームの結果を、「PS200」は孔径200nmフィルターに通された111In標識リポソームの結果を、それぞれ示す。また、図中、「PEG length」が「2000」の欄はPEG2000を用いた111In標識リポソームの結果を、「5000」の欄はPEG5000を用いた111In標識リポソームの結果を、「−」はPEG化していない111In標識リポソーム(0mol%PEG化リポソーム)の結果を、それぞれ示す。また、「1mol%」は1mol%PEG化リポソームの結果を、「5mol%」は5mol%PEG化リポソームの結果を、それぞれ示す。この結果、リポソームをPEG化することにより、マクロファージへの取り込み量は減少した。また、PEGの鎖長が短く、また、PEGの量が少ない方がマクロファージへ取り込まれやすい傾向が観察された。ただし、PEG5000を5mol%含有するPEG化リポソーム以外においては、取り込み量の低下はそれほど大きなものではなかった。
調製された111In標識リポソームについて、参考例1と同様にして、マウス腹腔マクロファージへの取り込み量を定量的評価した。結果を図2に示す。図中、「PS100」は孔径100nmフィルターに通された111In標識リポソームの結果を、「PS200」は孔径200nmフィルターに通された111In標識リポソームの結果を、それぞれ示す。また、図中、「PEG length」が「2000」の欄はPEG2000を用いた111In標識リポソームの結果を、「5000」の欄はPEG5000を用いた111In標識リポソームの結果を、「−」はPEG化していない111In標識リポソーム(0mol%PEG化リポソーム)の結果を、それぞれ示す。また、「1mol%」は1mol%PEG化リポソームの結果を、「5mol%」は5mol%PEG化リポソームの結果を、それぞれ示す。この結果、リポソームをPEG化することにより、マクロファージへの取り込み量は減少した。また、PEGの鎖長が短く、また、PEGの量が少ない方がマクロファージへ取り込まれやすい傾向が観察された。ただし、PEG5000を5mol%含有するPEG化リポソーム以外においては、取り込み量の低下はそれほど大きなものではなかった。
[参考例3]
参考例2で調製した111In標識PEG化リポソームの動脈硬化モデル動物apoEノックアウトマウスにおける動態を調べた。
参考例2で調製した111In標識PEG化リポソームの動脈硬化モデル動物apoEノックアウトマウスにおける動態を調べた。
具体的には、apoEノックアウトマウスに参考例2で調製した各111In標識リポソームを尾静脈内投与し、2時間後に屠殺し、大動脈を摘出した。摘出した大動脈は、縦方向に切開した後、Oil−Red−O染色を施した。この後、イメージングプレートに暴露し、イメージャーにてex vivo ARG画像を得た。
この結果、PEG化していない[111In]PS100、[111In]PS200と同様に、PEG化した111In標識リポソームは、いずれもOil−Red−O染色により得られた動脈硬化病巣とほぼ一致した画像を得ることができた。
この結果、PEG化していない[111In]PS100、[111In]PS200と同様に、PEG化した111In標識リポソームは、いずれもOil−Red−O染色により得られた動脈硬化病巣とほぼ一致した画像を得ることができた。
また、画像解析により、非標的組織(Oil−Red−Oで染色されなかった部分)における111In標識リポソームの集積量に対する、標的組織(Oil−Red−Oで染色された部分)における111In標識リポソームの集積量の割合(Target-to-non target ratio(TNR))を調べた。結果を図3(A)に示す。この結果、TNRに関しては、PEG化の有無やPEGの鎖長や含有量により大きな変化はなかった。
同様に、画像解析により、111In標識リポソームのプラーク(病変)への取り込み量(相対値)を調べた。結果を図3(B)に示す。この結果、プラーク(病変)への取り込みは[111In]PS200−5%PEG2000で最も高いものとなった。なお、図3(A)及び(B)中、「PS100」、「PS200」、「PEG length」の欄は、図2と同じ意味である。
[製造例1]
カテプシンB切断配列(GFLG配列)を含んだAc−KGGGFLGK−OHの両末端のリジン残基をICGにより標識し、蛍光のON/OFFが可能であるアクチベータブル近赤外蛍光標識ペプチド(ICG2標識GFLG含有ペプチド)を製造した。
具体的には、10mMのICG−Sulfo−OSu(DMSOに溶解させたもの。Dojindo社製)と500μMのAc−KGGGFLGK−OHを含有する150μLのNa2HPO4溶液(100mM)を反応溶液として調製した。当該反応溶液を室温で30分間反応させた後、ICGの吸収極大波長である795nmにおいてモニターしながら、HPLCにより、ICGとペプチドの結合物を分取した。凍結乾燥の後、質量分析をした結果、当該結合物は、ペプチド1分子当たり2分子のICGが結合していることがわかり、目的のICG2標識GFLG含有ペプチドであることが確認された(図示せず。)。得られたICG2標識GFLG含有ペプチドは、ほとんど蛍光を発していなかった(蛍光OFF)。
カテプシンB切断配列(GFLG配列)を含んだAc−KGGGFLGK−OHの両末端のリジン残基をICGにより標識し、蛍光のON/OFFが可能であるアクチベータブル近赤外蛍光標識ペプチド(ICG2標識GFLG含有ペプチド)を製造した。
具体的には、10mMのICG−Sulfo−OSu(DMSOに溶解させたもの。Dojindo社製)と500μMのAc−KGGGFLGK−OHを含有する150μLのNa2HPO4溶液(100mM)を反応溶液として調製した。当該反応溶液を室温で30分間反応させた後、ICGの吸収極大波長である795nmにおいてモニターしながら、HPLCにより、ICGとペプチドの結合物を分取した。凍結乾燥の後、質量分析をした結果、当該結合物は、ペプチド1分子当たり2分子のICGが結合していることがわかり、目的のICG2標識GFLG含有ペプチドであることが確認された(図示せず。)。得られたICG2標識GFLG含有ペプチドは、ほとんど蛍光を発していなかった(蛍光OFF)。
ペプチドとして、アミノ酸配列をランダム化したAc−KGFGGGLK−OHを用いて同様にして、当該ペプチドの両末端のリジン残基をICGにより標識したペプチド(ICG2標識GFLG非含有ペプチド)を製造した。この結果、ICG2標識GFLG非含有ペプチドも、ほとんど蛍光を発していなかった(蛍光OFF)。
カテプシンBによるペプチド鎖の切断と、切断による消光していた蛍光の回復(ON)について調べた。具体的には、酵素反応バッファーに、ICG2標識GFLG含有ペプチド又はICG2標識GFLG非含有ペプチド(250μM)とカテプシンB(5U/mL)を含有させた反応溶液を調製し、当該反応溶液を37℃で24時間反応を行い、反応溶液の795nmの蛍光強度を経時的に測定した。測定結果を図4に示す。図中、「−」は酵素反応バッファーのみの対照溶液、「カテプシンB」はカテプシンBのみを含有させた溶液、「KGGGFLGK」はICG2標識GFLG含有ペプチドのみを含有させた溶液、「KGGGFLGK/カテプシンB」はICG2標識GFLG含有ペプチドとカテプシンBを含有させた溶液、「KGFGGGLK」はICG2標識GFLG非含有ペプチドのみを含有させた溶液、「KGFGGGLK/カテプシンB」はICG2標識GFLG非含有ペプチドとカテプシンBを含有させた溶液の結果である。この結果、ICG2標識GFLG含有ペプチドとカテプシンBを含有させた溶液では、カテプシンBによって鎖が切断され経時的に蛍光強度が増加した。カテプシンBを含有させず、ICG2標識GFLG含有ペプチドのみを含有する溶液では、蛍光強度は増加しなかった。また、ICG2標識GFLG非含有ペプチドを含む溶液では、蛍光強度は増加しなかった。すなわち、ICG2分子をカテプシンBで切断されるアミノ酸配列を含有するペプチドで連結することにより、カテプシンB存在下では蛍光を発する(蛍光ON)が、それ以外では蛍光を発しない(蛍光OFF)アクチベータブル蛍光分子が製造できた。
[参考例4]
<ICG2標識GFLG含有ペプチドを内包させたリポソームの作製>
製造例1で製造したICG2標識GFLG含有ペプチドを、酢酸カルシウムでpH勾配をつけたリモートローディング法によりリポソームに内包させた。
まず、DPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン): chol=2:1(モル比)にて脂質を混合し、クロロホルムに溶解させた後、t−ブタノールを用いて凍結乾燥した。得られた凍結乾燥物に120mMの酢酸カルシウム溶液を最終DPPC濃度が10mMとなるように加えて水和した後、液体窒素を用いて凍結融解を3回行った。次いで、バス型ソニケーターを用いて超音波処理を行い、その後エクストルーダを用いて孔径が100nmのポリカーボネートメンブレンフィルターに通すことにより、サイジングを行った。得られたリポソーム溶液は、超純水中で透析処理(2時間、2回)を行った後、超遠心分離処理(4℃、100,000rpm、15分間)し、得られた沈殿(リポソーム)を120mM クエン酸バッファー(pH5.0)で再懸濁させた溶液に、エタノールに溶解させたICG2標識GFLG含有ペプチド(1.25nmol)を加え、60℃で1時間インキュベートした後、氷冷した。氷冷後の反応溶液を、Sepharose(登録商標)4 Fast Flowを用いてゲル濾過を行い、リポソーム画分を回収し、さらに超遠心分離処理(4℃、100,000rpm、15分間)することにより、未封入のICG2標識GFLG含有ペプチドを除去した。
<ICG2標識GFLG含有ペプチドを内包させたリポソームの作製>
製造例1で製造したICG2標識GFLG含有ペプチドを、酢酸カルシウムでpH勾配をつけたリモートローディング法によりリポソームに内包させた。
まず、DPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン): chol=2:1(モル比)にて脂質を混合し、クロロホルムに溶解させた後、t−ブタノールを用いて凍結乾燥した。得られた凍結乾燥物に120mMの酢酸カルシウム溶液を最終DPPC濃度が10mMとなるように加えて水和した後、液体窒素を用いて凍結融解を3回行った。次いで、バス型ソニケーターを用いて超音波処理を行い、その後エクストルーダを用いて孔径が100nmのポリカーボネートメンブレンフィルターに通すことにより、サイジングを行った。得られたリポソーム溶液は、超純水中で透析処理(2時間、2回)を行った後、超遠心分離処理(4℃、100,000rpm、15分間)し、得られた沈殿(リポソーム)を120mM クエン酸バッファー(pH5.0)で再懸濁させた溶液に、エタノールに溶解させたICG2標識GFLG含有ペプチド(1.25nmol)を加え、60℃で1時間インキュベートした後、氷冷した。氷冷後の反応溶液を、Sepharose(登録商標)4 Fast Flowを用いてゲル濾過を行い、リポソーム画分を回収し、さらに超遠心分離処理(4℃、100,000rpm、15分間)することにより、未封入のICG2標識GFLG含有ペプチドを除去した。
最終的に得られたリポソーム(ICG2標識GFLG含有ペプチド内包リポソーム)中のICG2標識GFLG含有ペプチドを定量し、封入率を算出したところ、封入ICG2標識GFLG含有ペプチド量は0.86nmolであり、封入率は68.8%であった。また、当該リポソームについて、DLSにより平均粒子径を測定したところ、121.7nmであった。さらに、当該リポソームの800nmの蛍光強度について、TritonX−100を添加する前と添加した後(リポソームを崩壊させた後)の蛍光強度比を調べたところ、24.3であり、TritonX−100添加により蛍光強度が大幅に増加した。
<血清中での安定性>
ICG2標識GFLG含有ペプチド内包リポソームの血清存在下での安定性を評価した。
具体的には、90容量%FBS溶液中に、ICG2標識GFLG含有ペプチド又はICG2標識GFLG含有ペプチド内包リポソームを添加し、37℃で24時間インキュベートし、各溶液の800nmの蛍光強度を経時的に測定した。測定結果を図5に示す。この結果、むき出しのICG2標識GFLG含有ペプチドは、インキュベート開始から速やかに蛍光強度が上昇し、その後徐々に低下した。この低下傾向は、生成したICGの蛍光の減弱が進んだためと考えられる。これに対して、リポソームに内包させたICG2標識GFLG含有ペプチドは、24時間インキュベートしても蛍光強度はほとんど高くならなかった。これらの結果から、リポソームに内包させることにより、血清中においてもICG2標識GFLG含有ペプチドは蛍光OFFの状態で安定に存在できることが確認された。
ICG2標識GFLG含有ペプチド内包リポソームの血清存在下での安定性を評価した。
具体的には、90容量%FBS溶液中に、ICG2標識GFLG含有ペプチド又はICG2標識GFLG含有ペプチド内包リポソームを添加し、37℃で24時間インキュベートし、各溶液の800nmの蛍光強度を経時的に測定した。測定結果を図5に示す。この結果、むき出しのICG2標識GFLG含有ペプチドは、インキュベート開始から速やかに蛍光強度が上昇し、その後徐々に低下した。この低下傾向は、生成したICGの蛍光の減弱が進んだためと考えられる。これに対して、リポソームに内包させたICG2標識GFLG含有ペプチドは、24時間インキュベートしても蛍光強度はほとんど高くならなかった。これらの結果から、リポソームに内包させることにより、血清中においてもICG2標識GFLG含有ペプチドは蛍光OFFの状態で安定に存在できることが確認された。
<マクロファージ様細胞における蛍光アクチベーションの検討>
作製したICG2標識GFLG含有ペプチド内包リポソームを用いて、マクロファージ様細胞(RAW264細胞)存在下で、蛍光を発するかを検討した。
具体的には、細胞培養用96穴黒色プレートにRAW264細胞を播種し、10容量%FBS含有D−MEM(High Glucose)中で5体積%CO2雰囲気下、37℃で一晩培養した。培養後の細胞は、PBSにより3回洗浄した後、無血清D−MEMで希釈したICG2標識GFLG含有ペプチド内包リポソームを添加し、37℃で24時間インキュベートし、各溶液の800nmの蛍光強度を経時的に測定した。測定結果を図6に示す。この結果、細胞非存在下では、ICG2標識GFLG含有ペプチド内包リポソームの蛍光強度はほとんど変化しなかったのに対して(図中、「Cell free」)、RAW264細胞存在下では、経時的に蛍光強度が増加し、添加後3時間経過時点までで蛍光強度がプラトーに達していることが確認できた(図中、「RAW264」)。
作製したICG2標識GFLG含有ペプチド内包リポソームを用いて、マクロファージ様細胞(RAW264細胞)存在下で、蛍光を発するかを検討した。
具体的には、細胞培養用96穴黒色プレートにRAW264細胞を播種し、10容量%FBS含有D−MEM(High Glucose)中で5体積%CO2雰囲気下、37℃で一晩培養した。培養後の細胞は、PBSにより3回洗浄した後、無血清D−MEMで希釈したICG2標識GFLG含有ペプチド内包リポソームを添加し、37℃で24時間インキュベートし、各溶液の800nmの蛍光強度を経時的に測定した。測定結果を図6に示す。この結果、細胞非存在下では、ICG2標識GFLG含有ペプチド内包リポソームの蛍光強度はほとんど変化しなかったのに対して(図中、「Cell free」)、RAW264細胞存在下では、経時的に蛍光強度が増加し、添加後3時間経過時点までで蛍光強度がプラトーに達していることが確認できた(図中、「RAW264」)。
[実施例1]
ICG2標識GFLG含有ペプチドをPSリポソームに内包させ、マウス腹腔マクロファージへの取り込まれやすさを調べた。
ICG2標識GFLG含有ペプチドをPSリポソームに内包させ、マウス腹腔マクロファージへの取り込まれやすさを調べた。
<ICG2標識GFLG含有ペプチドを内包させたPSリポソームの作製>
製造例1で製造したICG2標識GFLG含有ペプチドを、酢酸カルシウムでpH勾配をつけたリモートローディング法によりリポソームに内包させた。具体的には、脂質としてDPPC:chol=2:1(モル比)に代えてDPPC:DPPS:chol=1:1:1(モル比)を用いた以外は、参考例4と同様にして、ICG2標識GFLG含有ペプチド内包PSリポソームを得た。
製造例1で製造したICG2標識GFLG含有ペプチドを、酢酸カルシウムでpH勾配をつけたリモートローディング法によりリポソームに内包させた。具体的には、脂質としてDPPC:chol=2:1(モル比)に代えてDPPC:DPPS:chol=1:1:1(モル比)を用いた以外は、参考例4と同様にして、ICG2標識GFLG含有ペプチド内包PSリポソームを得た。
<マウス腹腔マクロファージへの取り込み>
参考例1と同様にして調製したマウス腹腔マクロファージの培養液中に、調製したICG2標識GFLG含有ペプチド内包PSリポソームを添加し、24時間培養した。培養後の細胞について、培地を洗浄した後に蛍光顕微鏡により観察した。図7に、ICG2標識GFLG含有ペプチド内包PSリポソーム添加培地で培養後の細胞の透過光画像(左図)と795nmの蛍光画像(右図)を示す。この結果、マクロファージ内において、ICGからの蛍光が発されていることが確認できた。
参考例1と同様にして調製したマウス腹腔マクロファージの培養液中に、調製したICG2標識GFLG含有ペプチド内包PSリポソームを添加し、24時間培養した。培養後の細胞について、培地を洗浄した後に蛍光顕微鏡により観察した。図7に、ICG2標識GFLG含有ペプチド内包PSリポソーム添加培地で培養後の細胞の透過光画像(左図)と795nmの蛍光画像(右図)を示す。この結果、マクロファージ内において、ICGからの蛍光が発されていることが確認できた。
また、ICG2標識GFLG含有ペプチド内包PSリポソーム添加後のマウス腹腔マクロファージを蛍光顕微鏡で経時的に観察したところ、時間の経過とともにマクロファージが蛍光を発する様子を捉えることができた(図示せず。)。これは、ICG2標識GFLG含有ペプチド内包PSリポソームがアクチベータブルプローブとして機能し、マクロファージの中でのみ蛍光信号がONになったことを示すものである。
[実施例2]
ICG2標識GFLG含有ペプチド内包PSリポソームについて、動脈硬化モデル動物WHHLウサギにおける動態を調べた。
ICG2標識GFLG含有ペプチド内包PSリポソームについて、動脈硬化モデル動物WHHLウサギにおける動態を調べた。
WHHLウサギ(17ヶ月齢、3.3〜3.5kg)を用いた。ウサギは、ペントバルビタール(30mg/kg、i.v.)により導入麻酔後、プロポフォール(10mg/kg/h、i.v.)の持続麻酔を行った。
実施例1で製造したICG2標識GFLG含有ペプチド内包PSリポソームを耳静脈から投与し、投与から22時間後にウサギをペントバルビタールの過量投与により屠殺し、大動脈を摘出した。摘出前後の大動脈を、ハンドヘルド型蛍光カメラを用いて撮像した。図8(A)は、摘出される前の大動脈の画像であり、図8(B)は、摘出後の大動脈の画像である(左:透過光画像、右:795nmの蛍光画像)。図8(A)に示すように、血管は蛍光を発しているものの、血液が蛍光を発しておらず、ICG2標識GFLG含有ペプチド内包PSリポソームがアクチベータブルプローブとして機能していることが示された。また、図8(B)に示すように、病変の進行が強度である大動脈弓部においてより強い蛍光が観察されたことから、ICG2標識GFLG含有ペプチド内包PSリポソームは動脈硬化病変を特異的に蛍光標識可能であることが示された。
実施例1で製造したICG2標識GFLG含有ペプチド内包PSリポソームを耳静脈から投与し、投与から22時間後にウサギをペントバルビタールの過量投与により屠殺し、大動脈を摘出した。摘出前後の大動脈を、ハンドヘルド型蛍光カメラを用いて撮像した。図8(A)は、摘出される前の大動脈の画像であり、図8(B)は、摘出後の大動脈の画像である(左:透過光画像、右:795nmの蛍光画像)。図8(A)に示すように、血管は蛍光を発しているものの、血液が蛍光を発しておらず、ICG2標識GFLG含有ペプチド内包PSリポソームがアクチベータブルプローブとして機能していることが示された。また、図8(B)に示すように、病変の進行が強度である大動脈弓部においてより強い蛍光が観察されたことから、ICG2標識GFLG含有ペプチド内包PSリポソームは動脈硬化病変を特異的に蛍光標識可能であることが示された。
Claims (10)
- 生体内の標的細胞に蓄積して蛍光を発する蛍光標識用プローブであって、
2以上の蛍光物質が互いにリンカーにより連結された分子が内包されたリポソームからなり、
前記リンカーが、前記標的細胞内に発現している酵素による切断部位を有するペプチドであり、
前記蛍光物質は、自己消光性を有しており、
前記リポソームは、ホスファチジルセリンを含有する、又は表面が前記標的細胞の細胞表面に存在する受容体のリガンドにより修飾されていることを特徴とする、蛍光標識用プローブ。 - 前記リンカーが、6〜20アミノ酸からなるペプチドである、請求項1に記載の蛍光標識用プローブ。
- 前記リポソームが、PEG化リポソームである、請求項1又は2に記載の蛍光標識用プローブ。
- 前記標的細胞が、マクロファージ又は腫瘍細胞であり、
前記酵素が、カテプシンB又はマトリックスメタロプロテアーゼである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光標識用プローブ。 - 前記リガンドが、マンノース又はガラクトースである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光標識用プローブ。
- 前記PEG化リポソームが、ホスファチジルセリンを含有し、かつ表面がマンノースにより修飾されている、請求項3〜5のいずれか一項に記載の蛍光標識用プローブ。
- 前記PEG化リポソームが、数平均分子量1500〜2500g/molのPEGが、リポソームを構成する脂質とPEGの総量当たり3〜7mol%付加されており、かつ平均粒子径が200〜300nmである、請求項3〜6のいずれか一項に記載の蛍光標識用プローブ。
- 前記蛍光物質が近赤外蛍光を発する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の蛍光標識用プローブ。
- 前記蛍光物質がインドシアニングリーンである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の蛍光標識用プローブ。
- 動脈硬化不安定プラークの標識に用いられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の蛍光標識用プローブ。
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---|---|---|---|
JP2014024424A JP2015151349A (ja) | 2014-02-12 | 2014-02-12 | 蛍光標識用プローブ |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN115154602A (zh) * | 2022-07-10 | 2022-10-11 | 西南大学 | 一种超稳定的吲哚箐绿前药纳米胶束的制备和应用 |
-
2014
- 2014-02-12 JP JP2014024424A patent/JP2015151349A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN115154602A (zh) * | 2022-07-10 | 2022-10-11 | 西南大学 | 一种超稳定的吲哚箐绿前药纳米胶束的制备和应用 |
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