JP2015151300A - 赤外線センサー用光学ガラス - Google Patents

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Tomoko Enomoto
朋子 榎本
佐藤 史雄
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Abstract

【課題】環境に有害な化合物を含有させずにガラス化することができ、かつ、可視域から波長4〜6μm程度の中赤外域まで高い光透過性を示す新規な赤外線センサー用光学ガラスを提供する。【解決手段】モル%で、TeO270%以上(ただし70%を含まない)、ZnO 0〜30%(ただし0%及び30%を含まない)、及びMgO 0〜30%(ただし0%及び30%を含まない)を含有することを特徴とする赤外線センサー用光学ガラス。【選択図】図1

Description

本発明はCOセンサーや人感センサー等の赤外線センサーのカバー部材等として好適な光学ガラスに関する。
COセンサーや人感センサー等の赤外線センサーには、波長4〜6μmの中赤外域の光が利用される。当該赤外線センサーのカバー部材として、中赤外域で高い光透過性を示す光学ガラスが用いられる。具体的には、当該光学ガラスとしては、フッ化物ガラスやカルコゲナイドガラスが挙げられる。
しかしながら、フッ化物ガラス及びカルコゲナイドガラスはいずれも溶融工程で有毒ガスが発生するため、有毒ガス処理設備等を準備する必要があり高コストとなる傾向がある。また組成ズレも発生しやすい。さらに、耐候性が低いという問題もある。なお、カルコゲナイドガラスは可視域での光透過性が低いため、例えば意匠性等の観点から可視域の光透過性が要求される用途においては使用できない。
可視域での光透過性に優れた酸化物ガラスとしてアルミン酸ガラスが知られているが、当該ガラスは特に波長5μm以上の赤外域での光透過性が非常に低い。波長5μm以上においても良好な光透過性を示す酸化物ガラスとして、特許文献1にBi−PbO−BaO−ZnO系ガラスが、特許文献2にはBi−PbO−ZnO−CdF系ガラスが記載されている。
米国特許3723141号 特開平8−188445号公報
特許文献1及び2に記載のガラスは、ガラス化を安定にするため、環境に有害なPbOやCdFを大量に含有している。近年、環境に対する負荷軽減のニーズが高まりつつあるため、これらのガラスを使用することが困難になってきている。
以上に鑑み、本発明は、環境に有害な化合物を含有させずにガラス化することができ、かつ、可視域から波長4〜6μm程度の中赤外域まで高い光透過性を示す新規な赤外線センサー用光学ガラスを提供することを目的とする。
本発明の赤外線センサー用光学ガラスは、モル%で、TeO 70%以上(ただし70%を含まない)、ZnO 0〜30%(ただし0%及び30%を含まない)、及びMgO 0〜30%(ただし0%及び30%を含まない)を含有することを特徴とする。
上記組成範囲であれば、ガラス化の安定に有用なPbOやCdF等の有害な化合物を含有しない場合であっても、可視域から中赤外域まで高い光透過性を有するガラスを得ることができる。
本発明の赤外線センサー用光学ガラスは、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Ho、Er、Tm、Cr、Mn、Fe、Co、Cu及びVを実質的に含有しないことが好ましい。
上記元素は波長約400〜800nmの可視域における吸収が大きい成分である。従って、これらの元素を実質的に含有しないことにより、可視域の広い範囲にわたり高い光透過性を有するガラスが得られやすくなる。
本発明の赤外線センサー用光学ガラスは、Pb及びCdを実質的に含有しないことが好ましい。
このようにすれば、近年の環境的要請を満たすことができる。本明細書において、「実質的に含有しない」とは、原料として意図的に含有させないことを意味し、不可避的不純物の混入までをも排除するものではない。具体的には、ガラス組成中の含有量が、モル%で0.1%未満であることを指す。
本発明の赤外線センサー用カバー部材は、前記赤外線センサー用光学ガラスからなることを特徴とする。
本発明の赤外線センサーは、前記赤外線センサー用カバー部材を備えることを特徴とする。
本発明によれば、環境に有害な化合物を含有させずにガラス化することができ、かつ、可視域から波長4〜6μm程度の中赤外域まで高い光透過性を示す新規な赤外線センサー用光学ガラスを提供することが可能となる。
実施例におけるNo.1のガラスの中赤外域における光透過率曲線を示すグラフである。 実施例におけるNo.1及びNo.10のガラスの可視域における光透過率曲線を示すグラフである。
本発明の赤外線センサー用光学ガラスは、モル%で、TeO 70%以上(ただし70%を含まない)、ZnO 0〜30%(ただし0%及び30%を含まない)、及びMgO 0〜30%(ただし0%及び30%を含まない)を含有することを特徴とする。ガラス組成範囲をこのように限定した理由を以下に説明する。なお、以下の各成分の含有量の説明において、特に断りがない限り「%」は「モル%」を示す。
TeOはガラス骨格を形成する成分である。TeOの含有量は70%以上(ただし70%を含まない)であり、75%以上であることが好ましく、80%以上(ただし80%を含まない)であることがより好ましい。TeOの含有量が少なすぎると、ガラス化しにくくなる。一方、TeOの含有量の上限は特に限定されないが、他の成分の含有量を考慮し、100%未満であり、99%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましく、90%以下であることがさらに好ましい。
ZnOは熱的安定性を高める成分である。ZnOの含有量は0〜30%(ただし0%及び30%を含まない)であり、5〜25%であることが好ましく、10〜25%であることがより好ましい。ZnOを含有しない場合、あるいはZnOの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなる。
MgOもZnOと同様に熱的安定性を高める成分である。MgOの含有量は0〜30%(ただし0%及び30%を含まない)であり、5〜25%であることが好ましく、10〜25%(ただし10%を含まない)であることがより好ましい。MgOを含有しない場合、あるいはMgOの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなる。
本発明の赤外線センサー用光学ガラスは、上記成分以外にもガラス化を安定にするために、La、Nb、CaO、SrO、BaO、LiO、NaOまたはKOを各々5%まで含有させることができる。また、ガラス化を安定にし、かつ中赤外域における光透過性を向上させるために、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、BaまたはZnの塩化物、フッ化物または臭化物を合量で5%まで含有させることができる。
なお、SiO、B、P、GeO及びAlは赤外域における光透過性を低下させるため、その含有量は各々1%未満とすることが好ましく、実質的に含有しないことがより好ましい。
Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Ho、Er、Tm、Cr、Mn、Fe、Co、Cu及びVは、約400〜800nmの可視域における吸収が大きい。よって、これらの成分を実質的に含有しないことにより、可視域の広い範囲にわたり高い光透過性を有するガラスが得られやすくなる。
Pb及びCdは環境に有害な化合物であるため、実質的に含有しないことが好ましい。
本発明の赤外線センサー用光学ガラスは中赤外域(波長約4〜6μm)における光透過性に優れる。中赤外域における光透過性を評価するための指標として、波長5〜7μmにおける50%光透過波長、及び赤外吸収端波長が挙げられる。波長5〜7μmにおける50%光透過波長、及び赤外吸収端波長が大きいほど、中赤外域における光透過性に優れると言える。本発明の赤外線センサー用光学ガラスの波長5〜7μmにおける50%光透過波長(厚み1mm)は5.5μm以上であることが好ましく、5.7μm以上であることがより好ましい。また、本発明の赤外線センサー用光学ガラスの赤外吸収端波長(厚み1mm)は7μm以上であることが好ましく、7.5μm以上であることがより好ましい。
本発明の赤外線センサー用光学ガラスは可視域における光透過性に優れる。よって、意匠性等の観点から可視域の光透過性が要求される用途において好適である。可視域における透過率を評価するための指標として、可視吸収端波長が挙げられる。可視吸収端波長(厚み1mm)は380nm以下であることが好ましく、360nm以下であることがより好ましい。
本発明の赤外線センサー用光学ガラスは、上記のように赤外線センサーのセンサー部を保護するためのカバー部材と用いられる他、例えばセンサー部に赤外光を集光させるためのレンズ等の光学素子として使用することもできる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1及び2は本発明の実施例(No.1〜11)及び比較例(No.12)をそれぞれ示している。
各試料は次のようにして調製した。まず表に示すガラス組成になるように調合した原料を、800〜1000℃で30分〜2時間撹拌しながら溶融し、溶融ガラスをカーボン板上に流し出すことにより板状に成形した。得られた試料について、可視域及び赤外域の光透過率を測定した。結果を表1及び2、図1及び2に示す。また、各試料の色調を目視にて確認した。
光透過率の測定には、厚さ1mmの両面に鏡面研磨加工を施した試料を用いた。可視域は300〜800nm、赤外域は2〜10μmの範囲で測定した。「可視吸収端波長」は、波長300〜400nm付近において光透過率が0.5%となる波長を読み取った。「赤外50%光透過波長」は、光透過率曲線の波長5〜7μmにおいて光透過率が50%となる波長を読み取った。「赤外吸収端波長」は、波長7〜9μm付近において光透過率が0.5%となる波長を読み取った。
表1及び2に示すように実施例であるNo.1〜11のガラスは、赤外50%光透過波長が5.75〜6.23μm、赤外吸収端波長が7.85〜8.09μmと、波長約4〜6μmの中赤外域で良好な光透過性を示した。また、可視吸収端波長は344〜351nmと、可視域において良好な光透過性を示した。特に、No.1〜9のガラスは可視域全体において光透過性に優れており、色調が淡黄色と無色透明に近かった。一方、比較例であるNo.12のガラスはガラス化しなかった。

Claims (5)

  1. モル%で、TeO 70%以上(ただし70%を含まない)、ZnO 0〜30%(ただし0%及び30%を含まない)、及びMgO 0〜30%(ただし0%及び30%を含まない)を含有することを特徴とする赤外線センサー用光学ガラス。
  2. 前記ガラスが、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Ho、Er、Tm、Cr、Mn、Fe、Co、Cu及びVを実質的に含有しないことを特徴とする請求項1に記載の赤外線センサー用光学ガラス。
  3. Pb及びCdを実質的に含有しないことを特徴とする請求項1または2に記載の赤外線センサー用光学ガラス。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の赤外線センサー用光学ガラスからなることを特徴とする赤外線センサー用カバー部材。
  5. 請求項4に記載の赤外線センサー用カバー部材を備えることを特徴とする赤外線センサー。
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