以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る無線通信装置について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
さて、前述のように、従来の無線LANでは、干渉回避及び無線帯域の公平性を重視するために、CSMA/CA方式によるアクセス制御が行われる。
これに対して、例えば通信範囲が広くて数10cm程度であるような近距離無線通信を使用する無線通信システムを仮定した場合、そのような近距離無線通信では、その通信範囲に入る無線通信装置同士のみが影響し合う。それゆえ、上記のような干渉回避及び無線帯域の公平性を重視する手法ではなく、例えば、ある一つの無線通信装置がアクセスポイントとしてブロードキャスト信号(例えばビーコン信号)を送信し、各無線通信装置が送信する度にランダムバックオフ制御を行うような手法ではなく、むしろ接続の簡易化且つ効率化を重視した手法が期待される。
上記の近距離通信を仮定した場合、近距離の無線通信装置同士のみが接続処理を行うように、キャリアセンスの感度点が高く設定される場合がある。この場合、或る無線通信装置が、相手の無線通信装置に接続要求信号を送信し、該相手の無線通信装置が、感度点の高いキャリアセンス閾値により検出及び受信処理を行って、接続応答信号を送信することによって、それら2台の無線通信装置の間で通信が開始される。
しかしながら、近距離通信を仮定した感度点の高いキャリアセンスを用いると、「キャリアセンス(CCA)がアイドルと判定されるが、実際には他の無線通信システム等の影響で所要SINR(所要信号対雑音干渉電力比)を満たさない状況」が発生し得る。このような場合、キャリアセンス閾値での判定結果がアイドルであるため、送受信の誤り発生時において、送受信の誤りの原因が、干渉によるものか又は他の要因(例えば、近距離通信を行う無線通信装置同士の状況)によるものかを判定することが難しくなる。
干渉による誤りか否かの判定方法として、「受信誤り発生」かつ「受信電力が干渉判定閾値以上」であるならば、干渉と判定し、そして、干渉と判定された場合には再送回数及び送信レートを制御する仕組みが考えられる。しかし、この干渉判定閾値として、キャリアセンス閾値を用いても、送受信の誤りの原因が、干渉にあるか否かを判定することはできない。
そこで、以下の各実施形態では、近距離無線通信において送受信での誤り発生時に干渉を回避するための処理を行うか否かの判定を可能とする。
ここで、「干渉を回避するための処理」とは、干渉を受けたときでも無線通信を継続できるようにするための処理であればどのようなものであっても良く、例えば、
・使用するチャネルを変更する
・送信レートを変更する
・ユーザへ通知する
・フレーム間隔を変更する
・それらの任意の組み合わせ
など様々な処理がある。
(第1の実施形態)
図1に、第1〜第17の実施形態に係る無線通信システムの例を示す。図1の例では、無線通信システムに3台の無線通信装置1〜3が含まれる状態を例示している。ただし、無線通信システムに含まれる無線通信装置の台数は3台に限定されない。
本実施形態の無線通信システムの具体例として、例えば通信範囲が高々数10cm程度であるような近距離無線通信を使用するものが想定される。無線通信システムでは、そのような短い通信範囲に入る無線通信装置のみが影響し合うため、1台の無線通信装置に接続する無線通信装置の数は、高々数台になると想定される。例えば、図1において、無線通信装置1が、無線通信装置2と、1対1の無線通信装置間通信を行い、或いは、無線通信装置3と、1対1の局間通信を行い、或いは、無線通信装置2,3と、複数局間通信を行う。
図1に示すような1対1無線通信装置間の近距離通信では、従来の無線LANのように干渉回避及び無線帯域の公平性を重視する手法よりも、むしろ接続の簡易化且つ効率化を重視した手法が期待される。その一つの手法として、フレーム送信を行う時には、例えば接続要求信号(Connect Request)及び接続応答信号(Connect Accept)のような接続を開始するための無線通信装置間の制御信号を送受信し、接続を確立する処理が終了した後は、送信信号の送信及びその応答信号(Ack、又は、BA(Block ACK))の受信を、例えばSIFS(short interframe space)のような短い一定時間を空けて繰り返すことが考えられる。また、このようなシステムを考えた場合、通信範囲以内に位置する無線通信装置からの接続要求のみに応答するという制限が必要である。例えば、信号検出のキャリアセンス閾値の感度点を高く設定することによって、上記制限を実現することが考えられる。
一方、同一周波数帯域を用いる他の無線通信システムが存在する場合、上記のようなキャリアセンス閾値の感度点を高く設定したキャリアセンスを行っていると、「キャリアセンスではアイドルとなるが、他の無線通信システムからの干渉存在時に、その影響で、所要SINRを満たさない領域」が生じる可能性が高い。そのため、そのような領域においては、フレーム送信する無線通信装置は、送信前のキャリアセンスがアイドルであることを確認した後に送信したにもかかわらず、送信フレームに対する応答がない、といった問題が生じる。また、フレーム受信する無線通信装置でも、キャリアセンスはアイドルであるのにもかかわらず、受信したフレームが受信誤りとなるといった問題が生じる。そして、それが干渉に起因しているか、或いは、それ以外の要因(例えば、送受信する無線通信装置間の距離などのような他の問題)に起因しているかの切り分けが難しい。
そこで、第1の実施形態では、フレーム受信時に、2レベルのキャリアセンスを行うことによって、受信誤りが、干渉に起因しているか否かを判定できるようにする。
まず、本実施形態における2種類(2レベル)のキャリアセンスを利用したアイドル/ビジー判定について説明する。
ここで、2レベルのキャリアセンスは、第1のキャリアセンス閾値による第1のキャリアセンス及び第2のキャリアセンス閾値による第2のキャリアセンスである。
図2に、第1の実施形態において使用する第1のキャリアセンス及び第2のキャリアセンスによるアイドル/ビジーと判定時刻との関係図を示す。
図2において、CCA_1は、第1のキャリアセンスを示すものであり、CCA_2は、第2のキャリアセンスを示すものである。横軸は、時刻を示す。縦軸は、ロー・レベルがアイドル判定を示し、ハイ・レベルがビジー判定を示すものとする。
判定は、例えば、常時行う方法と、例えば周期的に一定の期間だけ行う方法、指示されたときのみ一定の期間又は指示された期間だけ行う方法など、種々の方法が考えられ、いずれの方法を採ることも可能である。
第1のキャリアセンス閾値は、例えば、アイドル/ビジーを判定するための本来のキャリアセンスにおいて使用されるキャリアセンス閾値である。この場合、アイドル/ビジーの判定自体は、第1のキャリアセンスにより行うことができる。第2のキャリアセンス閾値は、例えば、第1のキャリアセンス閾値より感度点が低く設定されるキャリアセンス閾値である。すなわち、第2のキャリアセンスは、第1のキャリアセンスよりも感度点が低いキャリアセンスになる。第1及び第2のキャリアセンスを組み合わせて、受信誤りの原因が干渉にあるかどうか判定する。
図2において、ケース1は、第1のキャリアセンスCCA_1のビジー判定時刻Tcca1と第2のキャリアセンスCCA_2のビジー判定時刻Tcca2とが同時(或いは、ほぼ同時)の場合である。ケース1においては、受信処理で受信誤りが検出された場合には、その原因が、干渉ではなく、当該無線通信を行う一組の無線通信装置のみに関連する可能性が高い。
これに対してケース2は、第2のキャリアセンスCCA_2によるビジー判定時刻Tcca2が、第1のキャリアセンスCCA_1によるビジー判定時刻Tcca1よりも前になる場合である。ケース2においては、「第1のキャリアセンス閾値では検出されないレベルであるが、第2のキャリアセンス閾値ではビジー判定されるレベルである信号」が存在しており、それゆえ、受信処理を行っても所要SINRを満たさないようなレベルの干渉が存在していると推測できる。したがって、ケース2は、受信処理が誤る可能性が高く、そして、受信誤りが検出された場合には、その原因が干渉による可能性が高い。
なお、図2のケース2の例において、一定期間だけ判定を行った結果を想定して説明しているので、両キャリアセンスの結果が同時刻にアイドルになっているが、この後も判定を継続した場合には、第2のキャリアセンスの結果が、第1のキャリアセンスの結果よりも後にアイドルになること(例えば、後に干渉が解消した場合)、或いは、ビジーを継続すること(例えば、干渉が継続している場合)も有り得る。
なお、以下では、第1のキャリアセンスを、アイドル/ビジーを判定するための本来のキャリアセンスとして使用する場合を想定して説明する。すなわち、この場合には、第1のキャリアセンス閾値を超える受信電力が検出されて、第1のキャリアセンスの判定結果がビジーであることが、受信処理を開始する条件になる。
次に、図3に、本実施形態に係る無線通信システムにおける無線通信装置100(図1中の無線通信装置1〜3)の構成例を示すためのブロック図を概略的に示す。
図3に示されるように、無線通信装置100は、無線部20、変復調部30及びMAC処理部を含む。変復調部30は、変調部31と復調部32を含む。MAC処理部40は、送信部41、受信部42、通信状況判定部43及び干渉判定部44を含む。無線部20、変復調部30及びMAC処理部40の全体を含んで無線送受信部と呼ばれることもある。
また、無線送受信部には、上位層の処理を行う上位層処理部(図示せず)が接続される。
なお、図中、10はアンテナである。
まず、無線通信装置100の信号送信時の動作の概略を説明する。
送信部41は、上位層処理部(図示せず)から出力されたフレームを、内部の送信バッファに蓄積する。送信バッファは、バッファ内のフレームを、蓄積された順番に、例えばMACヘッダの付加等の処理を行った後に、変調部31へ出力する。
変調部31は、送信部41から受け取ったフレームに対して、例えば符号化処理、変調処理及び物理ヘッダの追加等の物理層関連の処理を行った後に、無線部20へフレームを出力する。
無線部20は、変調部31から受け取ったフレームに対して、D/A変換処理を行い、そして、無線通信の周波数帯への周波数変換を行った後に、アンテナ10を介してフレームを送信する。
上記では、送信バッファは、送信部41の内部に存在するものとして説明したが、それ以外の箇所に存在しても良いし、それらの組み合わせであっても良い。
次に、無線通信装置100の信号受信時の動作の概略を説明する。
アンテナ10を介して受信された信号は、無線部20に与えられる。
無線部20は、受信信号に対して、ベースバンドへの周波数変換、そして、A/D変換処理を行った後に、復調部32に該デジタイズされた信号を出力する。
復調部32は、デジタイズされた信号に対して、例えば復調処理及び物理ヘッダの解析等の処理を行い、MAC処理部40へ復調フレームを出力する。
MAC処理部40の受信部42は、復調フレームに対して例えばMACヘッダの解析等の処理を行い、該受信フレームが当該無線通信装置100の通信相手から送信されたフレームである場合には、上位層処理部へ該受信フレームを出力する。
ここで、本システムでは、2種類のキャリアセンス閾値を用いて干渉の有無を判定するために、干渉判定部44が、復調部32へ、第1のキャリアセンス閾値と、第2のキャリアセンス閾値と、第2のキャリアセンスによる判定の指示を与えるものとする。なお、ここでは、第1のキャリアセンスは常時行うものとしているが、干渉判定部44が、復調部32へ、第1のキャリアセンスによる判定の指示をも与えるようにしても良い。
復調部32は、与えられた指示に従って第1及び第2のキャリアセンスを行い、その結果を通信状況判定部43へ通知する。
なお、ここでは、例えば干渉判定部44が復調部32へ第1のキャリアセンス閾値と第2のキャリアセンス閾値を通知する場合を例にとって説明しているが、本実施形態はこれに制限されない。例えば、予め復調部32に第1のキャリアセンス閾値と第2のキャリアセンス閾値が設定されていても良い。この場合には、復調部32への第1のキャリアセンス閾値及び第2のキャリアセンス閾値の通知は不要である。また、例えば、予め復調部32に第1のキャリアセンス閾値のみが設定されていても良い。この場合には、復調部32への第1のキャリアセンス閾値の通知は不要である。
通信状況判定部43は、復調部32から上がってくる第1及び第2のキャリアセンス閾値による第1及び第2のキャリアセンス(CCA_1とCCA_2)の結果から、それぞれの判定結果(ビジー又はアイドル)と、更にビジー判定の場合にはそのビジー判定時刻(CCA_2がビジー判定の場合には、CCA_2のビジー判定時刻;更に、CCA_1がビジー判定の場合には、CCA_1のビジー判定時刻)とを、チェック及び保持し、また、それらを干渉判定部44に通知する。
干渉判定部44は、受信部42からの受信誤り情報と、通信状況判定部43からのキャリアセンス情報とから、受信誤り発生時における原因の判定、すなわち、干渉を回避するための処理を行うか否かの判定を行う(なお、干渉を回避するための処理を行うか否かの判定だけ行うようにしても構わない)。
例えば、受信誤り情報が「受信誤り、有り」を示し、かつ、キャリアセンス情報が「第2のキャリアセンスによるビジー判定時刻が、第1のキャリアセンスによるビジー判定時刻よりも前」を示す場合には、誤りの原因が干渉にあると判定する、すなわち、干渉を回避するための処理を行うと判定する(なお、干渉を回避するための処理を行うとの判定だけ行うようにしても構わない)。
また、例えば、受信誤り情報が「受信誤り、有り」を示し、かつ、キャリアセンス情報が「両キャリアセンスによるビジー判定時刻が同時(或いは、ほぼ同時)」を示す場合には、誤りの原因が、干渉ではなく、例えば当該無線通信を行う無線通信装置にあると判定する、すなわち、干渉を回避するための処理を行わないと判定する(なお、干渉を回避するための処理を行わないとだけ判定するようにしても構わない)。
なお、干渉を回避するための処理を行わないと判定することは、干渉以外の原因等を回避又は解消等するための処理を行うと判定することを含んでも良い。
干渉判定部44により干渉を回避するための処理を行うと判定された場合には、例えば、チャネル切替の指示を出すことが考えられる。図3の例では、干渉判定部44が無線部31へチャネル切替指示を出しても良い。
ここで、図4に、図3のMAC処理部40内部に、別途、MAC制御部48が存在する場合の例を示す。この場合には、干渉判定部44は判定結果をMAC制御部48に通知し、MAC制御部48が、チャネル切替を行うか、リンクアダプテーションを行うか、ユーザへの通知を行うか等の判断をしても良い。この場合には、MAC制御部48が、無線部20へのチャネル切替指示を行っても良い。なお、図4では、図3と比較して(CCA_1,CCA_2)の記載を一部省略してある(この点は、後掲の図9,11,13,14も同様である)。
また、図3又は図4において、チャネル切替指示はMAC処理部40から直接無線部20へ出されているが、その代わりに、MAC処理部40が変復調部30を介して無線部20へチャネル切替指示を行っても良い。
また、上記では、干渉を回避するための処理を行うと判定された場合には、チャネル切替指示を出し、チャネル切替を行う方法について説明した。その代わりに、チャネルを切り替えず、同一チャネルで干渉となっている他の無線機器間通信と共存する方法を採っても良い。
また、干渉を回避するための処理を行うと判定された場合に、チャネル切替を行うか又は共存を行うかについて、予め設定できるようにしても良いし、或いは、チャネル切替を行うか又は共存を行うかについて、その都度、何らかの基準に従って自動的に又はユーザが選択できるようにしても良い。
上記では、通信状況判定部43は、両キャリアセンス(CCA_1,CCA_2)に用いる第1及び第2のキャリアセンス閾値を指示する使用閾値情報を復調部32に通知し、復調部32により判定されたCCA_1及びCCA_2による判定結果(アイドル又はビジー)の通知を受ける場合について説明した。
その代わりに、復調部32からキャリアセンスした結果の数値の通知を受け、通信状況判定部43が、通知された数値と、第1のキャリアセンス閾値及び第2のキャリアセンス閾値のそれぞれとの比較を行っても良い。この場合、干渉判定部44から復調部32へ使用閾値情報を通知する代わりに、干渉判定部44から通信状況判定部43へ使用閾値情報を通知すれば良い。
図3又は図4においては、通信状況判定部43は、MAC処理部40内部に存在するが、その代わりに、変復調部30内部に存在しても良いし、更に通信状況判定部43が復調部32と一体化されていても良い。
次に、第1の実施形態における干渉判定部44の干渉判定処理について説明する。
図5に、第1の実施形態における干渉判定処理の一つの例を示し、図6に、干渉判定処理の他の例を示す。
図5は、干渉判定部44が、受信部42から受信処理結果の通知を受ける前に、第1及び第2のキャリアセンス閾値による各キャリアセンスの判定結果と、ビジー判定時刻情報とに基づいて干渉判定を行う(両キャリアセンスでビジー判定の場合にそれらのビジー判定時刻を比較して干渉原因を判定する)場合の例を示す。これに対して、図6は、干渉判定部44が、受信部42から受信処理結果の通知を受け、そして、該受信処理結果が受信誤りを示す場合に、両方のキャリアセンスによるビジー判定時刻を比較し、その結果により干渉原因を判定する場合の例を示す。
まず、図5に示される干渉判定処理例について説明する。
ステップS11において、初期状態として、アイドル状態にある。
ステップS12において、第1及び第2のキャリアセンス閾値による各キャリアセンスのビジー判定結果及びビジー判定時の判定時刻を確認する。
第2のキャリアセンスの判定結果がビジーでないならば(ステップS13)、より高い閾値をもつ第1のキャリアセンスの判定結果がビジーにならないことは明らかであり、それゆえ、受信処理開始条件が成立せず(受信処理は行われず)、アイドル状態に戻る(ステップS15)。
また、第2のキャリアセンスの判定結果がビジーであっても(ステップS13)、第1のキャリアセンスの判定結果がビジーでないならば(ステップS14)、同様に、受信処理は行われず、アイドル状態に戻る(ステップS15)。
両キャリアセンスの判定結果がいずれもビジーである場合に(ステップS13,S14)、受信部42は、受信処理を行う。受信部42は、受信処理が終了して、その受信処理で受信誤りがあった場合には、干渉判定部44へ受信誤りを通知する。
さて、両キャリアセンスの判定結果がビジーである場合に(ステップS13,S14)、第2のキャリアセンスにおけるビジー判定時刻Tcca2が、第1のキャリアセンスにおけるビジー判定時刻Tcca1と同時(或いは、ほぼ同時)であるときは(ステップS16)、干渉はなく、誤り要因になり得るのは、干渉以外の要因であるものと判定する、すなわち、干渉を回避するための処理を行わないと判定する(ステップS17)。
なお、ステップS17において、実際には、干渉以外が誤り要因であるとの判定がなされなくても良く、ステップS16でNoの場合に、干渉を回避するための処理を行わないとだけ判定されても良い。
これに対して、第2のキャリアセンスにおけるビジー判定時刻Tcca2が、第1のキャリアセンスにおけるビジー判定時刻Tcca1より前であるときは(ステップS16)、受信誤りの通知を受けたならば(ステップS18)、干渉が誤り要因であると判定する、すなわち、干渉を回避するための処理を行うと判定する(ステップS19)。
なお、ステップS19において、実際には、干渉が誤り要因であるとの判定がなされなくても良く、ステップS18でYesの場合に、干渉を回避するための処理を行うとだけ判定されても良い。
一方、受信誤りの通知を受けないならば(ステップS18)、干渉があり得るが、問題はないと判定する(ステップS20)。
図5の処理例は、受信処理遅延があるような場合であっても、干渉の判定時間を早くする効果がある。さらに、干渉判定部43の結果により、受信処理を途中でやめることも可能であり、誤りフレームの無駄な受信処理を削減することで、消費電力低減が見込まれる。
次に、図6に示される干渉判定処理例について説明する。
ステップS21において、初期状態として、アイドル状態にある。
受信部42から受信誤り通知がなければ(ステップS22)、アイドル状態に戻る(ステップS21)。
受信部42による受信処理が終了して、その受信処理で受信誤りがあった場合に、受信部42は、干渉判定部44へ受信誤りを通知する。なお、受信誤りが通知された場合には、受信処理開始条件の成立があったことになるので、両キャリアセンスの判定結果がビジーを示しているはずである。
受信部42から受信誤り通知があったならば(ステップS22)、ステップS23において、第1及び第2のキャリアセンス閾値による各キャリアセンスのビジー判定時の判定時刻を確認する。
第2のキャリアセンスのビジー判定時刻Tcca2が、第1のキャリアセンスのビジー判定時刻Tcca1と同時(或いは、ほぼ同時)であるならば(ステップS24)、干渉以外が誤り要因であると判定する、すなわち、干渉を回避するための処理を行わないと判定する(ステップS25)。
なお、ステップS25において、実際には、干渉以外が誤り要因であるとの判定がなされなくても良く、ステップS24でNoの場合に、干渉を回避するための処理を行わないとだけ判定されても良い。
これに対して、第2のキャリアセンスのビジー判定時刻Tcca2が、第1のキャリアセンスのビジー判定時刻Tcca1より前であるときは(ステップS24)、干渉が誤り要因であると判定する、すなわち、干渉を回避するための処理を行うと判定する(ステップS26)。
なお、ステップS26において、実際には、干渉が誤り要因であるとの判定がなされなくても良く、ステップS24でYesの場合に、干渉を回避するための処理を行うとだけ判定されても良い。
図6の処理例は、初めに受信処理が終了していることが前提であるため、受信処理開始条件である第1のキャリアセンスの結果と、より感度点の低い第2のキャリアセンスの結果とがいずれもビジーになっていることは明らかであるので、それらの判定処理を省略することができる。また、第1のキャリアセンスのビジー判定時刻Tcca1と第2のキャリアセンスのビジー判定時刻Tcca2とを比較する処理等も、受信誤りが発生した場合にのみ実行すれば良いという利点がある。
このように本実施形態の無線通信装置によれば、近距離無線通信において送受信での誤り発生時に、干渉を回避するための処理を行うか否か判定することが可能になる(或いは、その原因が干渉にあるか否か判定することが可能になる)。
また、本実施形態によれば、第1のキャリアセンス閾値と、第1のキャリアセンス閾値より感度点が低い第2のキャリアセンス閾値とを用いて、第1及び第2のキャリアセンスを行い、第2のキャリアセンスでビジーになった場合に、そのビジー判定時刻を用いて干渉判定を行うことができる。また、受信部からの誤り情報と、第1及び第2のキャリアセンスの判定時刻差情報から干渉を判定することができる。
例えば、受信誤り時に第2のキャリアセンス閾値のビジー判定時刻が第1のキャリアセンスのビジー判定時刻よりも前の場合に干渉を回避するための処理を行うと判定することができる。また、干渉を回避するための処理を行うと判定できれば、チャネル切り替えで干渉回避を行うことが可能になる。一方、干渉以外の原因等を回避又は解消等するための処理を行うと判定できれば、チャネル切り替えを行う前にリンクアダプテーションによりレートを下げて送受信を試してみること、又は、ユーザに対する例えば「位置ずれ注意」のようなメッセージの表示若しくはLEDでの表示などによってユーザに通知することで、状況改善を試みる等の選択が可能となる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、無線通信装置が送受信を行っていないアイドルの状態から、第1及び第2のキャリアセンス閾値を超える受信電力を検出し、受信処理を行うという流れの中での干渉推定方法について説明した。これに対して第2の本実施形態では、無線通信装置がデータフレームを送信した際における、それに対する応答フレーム待ち期間及び応答フレーム受信時の干渉推定方法について説明する。
図7に、第2の実施形態において使用する第1のキャリアセンス閾値による第1のキャリアセンス及び第2のキャリアセンス閾値による第2のキャリアセンスによるアイドル/ビジーと判定時刻との関係図を示す。
第1の実施形態で説明した図2と同様、ケース1は、第1及び第2のキャリアセンスのビジー判定時刻が同時(或いは、ほぼ同時)の場合である。この場合は、受信処理で受信誤りが検出されたとしても、その原因が当該無線通信を行う一組の無線通信装置のみに関連する可能性が高い。一方、ケース2も、図2と同様、第2のキャリアセンス閾値のビジー判定時刻が第1のキャリアセンス閾値がビジー判定された判定時刻よりも前の場合である。この場合は、第1のキャリアセンス閾値では検出しないレベルであるが、第2のキャリアセンス閾値はビジー判定しており、応答信号の所要SINRを満たさないレベルの干渉が存在していると想定できる。このため、受信処理が誤る可能性が高く、誤った場合には、その原因が干渉による可能性が高い。
なお、応答信号は、例えば、ACK応答でも良い。
第1の実施形態と異なり、無線通信装置は、第1のキャリアセンスがビジーになる前にデータフレーム送信を行った後に、送信処理から受信処理への切り替えを行う(図7中のTX→RX)。また、一般に、応答フレームは、例えばSIFSのような短い一定時間の経過後に送信するようにシステムで決まっている。これを応答フレームの期待時刻(図7中のTe)とすると、望ましくは、第1及び第2のキャリアセンス閾値を用いた判定時刻が応答フレームの期待時刻と一致する。
図7では、応答フレームはSIFS後に送信されるため、ケース1のように、送信処理が終了してからSIFS後の期待時刻Teから第1及び第2のキャリアセンス閾値がビジーになる状況(すなわち、ビジー判定時刻Tcca2がビジー判定時刻Tcca1と同時(或いは、ほぼ同時)になる状況)が所望信号受信時の動きとなる。なお、受信が完了した場合には、例えば、Ackを返した後に、受信処理から送信処理への切り替えを行い(図7中のRX→TX)、IFS後に送信を開始し得る。
一方、ケース2のように、送信処理が終了し、送受信切替を行い(図7中のTX→RX)、受信処理が起動してキャリアセンスをチェックすると、送信処理から受信処理への切替の直後(図7中のTs)から第2のキャリアセンス閾値を用いた結果がビジー判定されており、第1のキャリアセンスが応答フレームの期待時刻からビジー判定されている場合(すなわち、ビジー判定時刻Tcca2がビジー判定時刻Tcca1より前である場合)には、受信処理を行った応答フレームには誤りがある可能性が高い。
なお、図7の例では、一定期間だけ判定を行った結果を想定して説明しているので、両キャリアセンスの結果が同時刻にアイドルになっているが、例えば常時判定を行う場合には、ケース2の第2のキャリアセンスの結果が、図7の例よりもより長い時間にわたってビジーを継続することも有り得る。
次に、図8に、第2の実施形態において使用する両キャリアセンスのアイドル/ビジーと判定時刻との他の関係図を示す。
図8では、図7とは異なり、応答フレームの期待時刻(図8中のTe)において、第1のキャリアセンス閾値による第1のキャリアセンスでのビジー判定結果が、ビジーと判定されない場合の例を示す。この場合は、応答フレーム受信がないため、そもそも送信フレームが誤った可能性が高いと判定するが、本実施形態では、その誤りの原因が干渉であるかどうかの判定を行う。
ケース3では、第1のキャリアセンス閾値より感度点が低い第2のキャリアセンス閾値による第2のキャリアセンスでの判定は、応答フレームの期待時刻Teからビジーになる(判定時刻Tcca1が期待時刻Teになる)。一方、ケース4では、第2のキャリアセンスでの判定は、送信処理から受信処理への切替の直後(図8中のTs)からビジーになる(判定時刻Tcca2が応答フレームの期待時刻Teよりも前になる)。
このように、応答フレーム待ち状態で且つ応答フレーム受信時間の推定がタイマー等で可能な場合には、その時刻(期待時刻Te)を用いて、それよりも第2のキャリアセンスのビジー判定時刻が前の場合には、干渉と推定しても良い。
次に、図9に、本実施形態に係る無線通信システムにおける無線通信装置100(図1中の無線通信装置1〜3)の構成例を示すためのブロック図を概略的に示す。
図9の構成例は、基本的には図3の構成例と同様であるので、ここでは図3との相違点を中心に説明する。
図9の構成例では、図3の構成例に対して更にタイマー部45が設けられる。
本実施形態では、タイマー部45は、必要なタイマーを管理し、そして、応答フレームの期待時刻Teを計算するタイマーがタイムアウトした時点で、該タイマーのタイムアウトを干渉判定部44に通知する。干渉判定部44は、その通知されたタイミングを応答フレームの期待時刻として、これを用いて干渉の判定を行う。本実施形態では、フレーム送信後の応答フレーム待ち中であり、応答フレームの期待時刻を与えるSIFSを計るSIFSタイマーと、応答フレームの最大待ち時間を示すACKTO(Ack Timeout)を計るACKTOタイマーが起動している。
なお、図9では、タイマー部45はMAC処理部40の中に独立ブロックとして存在するが、その代わりに、図4のようにMAC処理部40内部に別途MAC制御部48が存在する場合には、MAC制御部の内部にタイマー部45が存在する構成でもよい。
また、第1の実施形態で説明したその他のバリエーションも、第2の実施形態にあてはまる。
次に、第2の実施形態における干渉判定部44の干渉判定処理について説明する。
図10に、第2の実施形態における干渉判定処理の一つの例を示す。
ステップS31において、初期状態として、アイドル状態にある。
送信処理においてフレーム送信をすると(ステップS32)、応答フレームを受信待ちする状態に入り(ステップS33)、第2のキャリアセンス閾値でのビジー判定の有無を確認する。
応答フレーム待ち期間(ACKTO)において、第2のキャリアセンス閾値でのビジー判定が無い場合(ステップS34でNo)、又は、第2のキャリアセンス閾値でのビジー判定が有っても、第1のキャリアセンス閾値でのビジー判定が無い場合(ステップS34でYes,S34でNo)、所定の時間後に(ステップS36)、次のフレームの送信を行う(ステップS32)。これが、適宜、繰り返される。
一方、第2のキャリアセンス閾値でのビジー判定が有り、更に、第1のキャリアセンス閾値でのビジー判定も有る場合(ステップS34でYes,S34でYes)、受信誤りの通知を受けたならば(ステップS37)、その判定時刻Tcca2と応答フレームの期待時刻Teとを比較し、判定時刻Tcca2が応答フレームの期待時刻よりも前の場合には、干渉が誤り要因になって送受信が上手くいかないと判定する、すなわち、干渉を回避するための処理を行うと判定する(ステップS39)。
なお、ステップS39において、実際には、干渉が誤り要因であるとの判定がなされなくても良く、ステップS38でYesの場合に、干渉を回避するための処理を行うとだけ判定されても良い。
これに対して、判定時刻Tcca2が応答期待時刻Teと同時(或いは、ほぼ同時)の場合には、干渉以外が誤り要因であると判定する、すなわち、干渉を回避するための処理を行わないと判定する(ステップS40)。
なお、ステップS40において、実際には、干渉以外が誤り要因であるとの判定がなされなくても良く、ステップS38でNoの場合に、干渉を回避するための処理を行わないとだけ判定されても良い。
なお、干渉を回避するための処理を行わないと判定することは、干渉以外の原因等を回避又は解消等するための処理を行うと判定することを含んでも良い。
一方、受信誤りの通知を受けないならば(ステップS37でNo)、干渉があり得るが、問題はないと判定する(ステップS41)。
本実施形態によれば、フレーム送信に対する応答信号受信待ち中の場合、タイマーから通知される応答信号がくると期待される時刻と、第2のキャリアセンスのビジー判定時刻を比較することで、第1のキャリアセンス結果にかかわらず、干渉の判定が可能となる。
このように本実施形態の無線通信装置によれば、近距離無線通信において送受信での誤り発生時に、干渉を回避するための処理を行うか否か判定することが可能になる(或いは、その原因が干渉にあるか否か判定することが可能になる)。
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、フレーム受信時、フレーム送信時それぞれでの干渉判定を行う方法を示した。一方、第3の実施形態では、第1及び第2の実施形態で説明した干渉判定を行う干渉判定部44が常に干渉判定を行うのではなく、必要な時のみ起動する。
第1及び第2の実施形態で説明したとおり、干渉に原因があるか否かの判定及び/又は干渉を回避するための処理を行うか否かの判定を行いたいのは、フレーム受信が誤った場合、又は、フレーム送信したにもかかわらず、応答フレームを応答フレームの期待時刻に受信しない若しくは受信した応答フレームの受信誤りがある若しくは所望のシーケンス番号の応答フレームでないといった場合である。
第3の実施形態では、通常は第1のキャリアセンス閾値のみを用いたキャリアセンスでビジー判定を行い、上記のような送受信誤りが発生するなどの問題があった場合にのみ、第2のキャリアセンス閾値をも用いて第1及び第2のキャリアセンスによるビジー判定を行う場合の処理について説明する。
次に、図11に、本実施形態に係る無線通信システムにおける無線通信装置100(図1中の無線通信装置1〜3)の構成例を示すためのブロック図を概略的に示す。
図11の構成例は、基本的には図3又は図9の構成例と同様であるので、ここでは図3又は図9との相違点を中心に説明する。なお、図11の構成例では、図3の構成例に対して更にタイマー部45が設けられる。
また、図9のようにタイマー部45がMAC処理部40の中に独立ブロックとして存在する代わりに、図4のようにMAC処理部40内部に別途MAC制御部48が存在する場合には、MAC制御部の内部にタイマー部45が存在する構成でもよい。
また、第1及び第2の実施形態で説明したその他のバリエーションも、第3の実施形態にあてはまる。
さて、通常、干渉判定部44は、復調部32にCCA使用閾値として第1のキャリアセンス閾値を通知する。また、干渉判定部44は、受信部42からの受信誤り情報又はタイマー45からの応答フレームの期待時刻の通知のどちらかが入力されると、復調部32にCCA使用閾値として第1及び第2のキャリアセンス閾値を通知する。その後の処理は、第1及び第2の実施形態と同一であるため、ここでは省略する。
このように本実施形態では、干渉判定部44は、受信誤り情報又は応答フレーム待ち期間タイムアウト情報のいずれかをトリガに起動すれば良く、常に起動しておく必要がない。このため、無線通信装置の干渉判定にかかる消費電力を抑える効果が期待できる。例えば、第1の実施形態で説明した図6の干渉判定処理では、受信処理誤りの通知を用いて、最初の処理フローで分岐する構成であるため、本実施形態のように、受信処理誤りの通知をトリガに干渉判定部44を起動させ、受信処理誤りがある場合のみ、第1と第2のキャリアセンス閾値との比較処理を開始するようにしても良い。
本実施形態の他の例として、干渉判定部44の起動を送受信誤り発生時とする以外にも、例えば、2台の無線通信装置間で送受信開始前に行う接続処理中には、第1のキャリアセンス閾値のみ用いてキャリアセンスを行い、接続処理後のデータフレーム送受信中に、本実施形態の干渉判定部44を起動し、第1及び第2のキャリアセンス閾値を用いて両キャリアセンスを行うようにしても良い。すなわち、接続処理中においては、2台の無線通信装置間の位置合わせの影響等が大きいこと、或いは、複数の使用周波数がある場合、周波数を変更しつつサーチを行うため、干渉の影響を受けにくいことなどから、接続処理中にはこのような干渉判定を省く方法も可能であるからである。
その他の例として、送受信誤り時に上記の干渉判定を行うことで、一度、他システムからの干渉があるとの判定或いは干渉を回避するための処理を行うとの判定がなされた場合には、その時の相手無線通信装置との接続が切れるまでは、常に第1及び第2の実施形態で説明したような第1及び第2のキャリアセンス閾値を用いた判定を行うことも考えられる。また、干渉が原因であるが、その後の処理でチャネル切替えを行わなかった場合に、そのような第1及び第2のキャリアセンス閾値を用いた判定を適用し、一方、チャネルを切替えた場合には、チャネル切替後は、第1のキャリアセンスのみを用いて送受信を開始しても良い。
このように本実施形態の無線通信装置によれば、近距離無線通信において送受信での誤り発生時に、干渉を回避するための処理を行うか否か判定することが可能になる(或いは、その原因が干渉にあるか否か判定することが可能になる)。
また、本実施形態によれば、干渉判定部を必要最小限に起動し、キャリアセンスも必要時のみ第2のキャリアセンスを用いるようにすることも可能であり、そのようにすることによって、干渉判定を行うことの処理負荷を低減しつつ、誤り時に即座にその原因を特定することが可能になる。
(第4の実施形態)
第1〜第3の実施形態では、第1及び第2のキャリアセンス閾値を用いて送受信誤りの原因が干渉によるものかの判定(及び/又は、干渉を回避するための処理を行うか否かの判定)を行う仕組みについて説明した。一方、第1〜第3の実施形態にて、干渉が誤りの原因であると特定した場合(或いは、干渉を回避するための処理を行うと判定された場合)の解決方法として、周波数チャネルを変更することがまず考えられるが、周波数チャネル数には限りがあり、複数の周波数チャネルで他システム又は自システムの他の無線通信装置同士のやりとりが行われている場合には、未使用の周波数チャネルを選択することができないことも考えられる。また、周波数チャネル毎の送受信特性が無線通信装置によっては異なる可能性もあり、その場合には、送受信特性の良い周波数チャネルをなるべく選択したいといったことが考えられる。本実施形態では、このように誤りの原因として干渉が考えられるが、同一周波数のまま送受信を行いたい場合の処理について考える。
干渉が存在するときは、第1のキャリアセンス閾値による第1のキャリアセンスでキャリアセンスがアイドルになっても、送受信に誤りが発生する可能性が高いため、その中で無駄に送信を試し続けることは、無線通信装置の消費電力等を考慮しても得策でない。そのため、本実施形態では、干渉が存在すると判定されたときに、本来のキャリアセンス(第1のキャリアセンス)のためのキャリアセンス閾値として、第1のキャリアセンス閾値の代わりに、第2のキャリアセンス閾値と同じ値を設定し、第2のキャリアセンス閾値のみを用いて送受信を行うようにしても良い。または、送信時のみ、第1のキャリアセンス閾値の代わりに、第2のキャリアセンス閾値と同じ値を設定しても良い。
また、前述のように、ここで想定する近距離システムでは、近距離の無線通信装置同士のみが接続処理を行うように第1のキャリアセンスの感度点を高く設定していることを考えると、接続処理中のキャリアセンス閾値としては、第1のキャリアセンス閾値を用いることが望ましい。しかし、接続処理後の接続中のデータフレーム送受信時には、第2のキャリアセンス閾値を用いても、上記の問題は生じない。そのため、接続処理後で、干渉が存在すると判定されたときのみ、第2のキャリアセンス閾値と同じ値を、通常の第1のキャリアセンス閾値として扱っても良い。
このように第1〜第3の実施形態での判定により、干渉が存在しそれが誤り原因となっている可能性が高い場合で、周波数チャネルの変更を行わない場合には、第2のキャリアセンス閾値を用いて少なくとも送信判定を行うことで、送信しても干渉の影響により誤りが発生する可能性が高い場合に、無駄に送信処理を行うことを避けることが可能となる。
このように本実施形態の無線通信装置によれば、近距離無線通信において送受信での誤り発生時に、干渉を回避するための処理を行うか否か判定することが可能になる(或いは、その原因が干渉にあるか否か判定することが可能になる)。
(第5の実施形態)
第1〜第4の実施形態では、第1及び第2のキャリアセンス閾値の使用方法の説明を行った。第5の実施形態では、第2のキャリアセンス閾値の決め方について説明する。
図12に、自システムの無線通信装置間距離を決めた場合の信号対雑音干渉電力比(SINR)及び受信信号強度(RSSI)の特性の例を示す。横軸を、送受信無線通信装置と他システムの無線通信装置との距離dとする。図12のようなSINR及びRSSIの特性は、自システム及び他システムの送信電力と、自無線通信装置のアンテナゲイン等の設定が分かれば、計算可能である。
なお、RSSIが第1のキャリアセンス閾値以上になる領域が、ビジー判定となる領域であり、RSSIが第1のキャリアセンス閾値未満になる領域が、アイドル判定となる領域である。また、SINRが所要SINR(所要信号対雑音干渉電力比)以上になる領域が、所要SINRを満たす領域であり、SINRが所要SINR未満になる領域が、所要SINRを満たさない領域である。
さて、上記の設定条件を用いて計算したSINR及びRSSIの特性図に、システムで決定される第1のキャリアセンス閾値(図12ではy)及び所要SINR(図12ではx)をあてはめると、RSSIがアイドルであるが、所要SINRを満たさない範囲(図12中の1000)が生じ、キャリアセンス閾値をさげると、当該範囲を低減又は除去できることが、図12からわかる。そこで、第2のキャリアセンス閾値は、例えば、図12に示すように、上記範囲が無くなる程度に、第1のキャリアセンス閾値の感度点を下げた設定とする。上記説明のように、図12に示す特性図はシステムの設定条件のみで決まるため、無線通信装置として予め計算可能であり、接続の度の再計算及び接続中の再計算等を必要としない。
このように予めSINR及びRSSIの特性から、RSSIがアイドルであるが、所要SINRを満たさない範囲を無くすように、第2のキャリアセンス閾値を設定し、第1〜第4の実施形態のように、第2のキャリアセンス閾値を用いることで、誤り原因の判定或いは干渉を回避するための処理を行うか否かの判定等が行える。
本実施形態によれば、所要信号対雑音干渉電力比以下の信号対雑音干渉電力比の時点で、必ずキャリアセンスがビジーになるように第2のキャリアセンス閾値を決めることで、少なくとも第2のキャリアセンス閾値を用いれば、キャリアセンスアイドルであるが、干渉の影響で送受信が誤る状況の原因を特定すること、そして、干渉を回避するための処理を行うか否かを判定することが可能になる。
以下では、これまでに説明した実施形態に対するバリエーションについて説明する。以下の任意の一つの実施形態又は以下の実施形態を任意に組み合わせたものは、これまでに説明した任意の実施形態と組み合わせて実施することが可能である。
(第6の実施形態)
第6の実施形態では、これまでの実施形態の無線通信装置の構成(例えば、図3、図4、図9又は図11の無線通信装置100参照)に加えて、バッファを備える構成について説明する。バッファは、送信部41及び受信部42それぞれと接続される。バッファは、上位層処理部(図示せず)の内部に存在しても良いし、送信部41/受信部42と上位層処理部との間に存在しても良いし、それらの組み合わせであっても良い。このように、バッファを無線通信装置に含める構成とすることによって、送受信データをバッファに保持することが可能となり、再送処理及び/又は外部出力処理を容易に行うことが可能となる。
(第7の実施形態)
第7の実施形態では、第6の実施形態の無線通信装置の構成に加えて、バス、プロセッサ部、外部インターフェースを備える構成について説明する。バスは第6の実施形態で示すバッファに接続され、プロセッサ部及び外部インターフェース部はそれぞれバスに接続される(すなわち、プロセッサ部及び外部インターフェース部はいずれもバスを介してバッファに接続される)。プロセッサ部では、ファームウエアが動作しても良い。また、これらのプロセッサ部、バス及び外部インターフェースは、上位層処理部(図示せず)に存在しても良いし、上位層処理部とは独立して存在しても良いし、それらの組み合わせであっても良い。このように、ファームウエアを無線通信装置に含める構成とすることにより、ファームウエアの書き換えによって無線通信装置の機能の変更を容易に行うことが可能となる。
(第8の実施形態)
第8の実施形態では、第7の実施形態の無線通信装置の構成に加えて、動画像圧縮/伸長部を備える構成について説明する。動画像圧縮/伸長部は、第7の実施形態で示したバスに接続される。このように、動画像圧縮/伸長部を無線通信装置に備える構成とすることによって、圧縮した動画像の伝送と受信した圧縮動画像の伸長とを容易に行うことが可能となる。
(第9の実施形態)
第9の実施形態では、これまでの実施形態の無線通信装置の構成に加えて、クロック生成部を備える構成について説明する。クロック生成部は、無線通信装置の無線送受信部に接続される。なお、無線送受信部は、例えば、図3、図4、図9又は図11における、無線部20と変復調部30とMAC処理部40の全体を含む部分に相当する。また、クロック生成部により生成されるクロックは、出力端子を介して外部に出力される。このように、無線通信装置の内部で生成されたクロックを外部に出力し、外部に出力されたクロックによってホスト側を動作させることにより、ホスト側と無線通信装置側とを同期させて動作させることが可能となる。
(第10の実施形態)
第10の実施形態では、これまでの実施形態の無線通信装置の構成に加えて、電源部、電源制御部及び無線電力給電部を備える構成について説明する。電源部、電源制御部及び無線電力給電部は、無線通信装置の無線送受信部に接続される。例として、図13に、電源部、電源制御部及び無線電力給電部を図3の無線通信装置100に追加した場合の構成例を示す。図13に例示された無線通信装置1300において、電源部1301、電源制御部1302及び無線電力給電部1303は、いずれも無線送受信部60に接続されている。このように、電源を無線通信装置に備える構成とすることにより、電源を制御した低消費電力化動作が可能となる。
(第11の実施形態)
第11の実施形態では、第10の実施形態の無線通信装置の構成に加えて、NFC(Near Field Communications)送受信部を備える構成を示す。NFC送受信部は、無線通信装置の電源制御部及びMAC処理部に接続される。例えば、図13の無線通信装置1100の場合には、NFC送受信部が、図13の電源制御部1302及び無線送受信部60内のMAC処理部40に接続される。NFC送受信部は、上位層処理部50の内部に存在しても良いし、上位層処理部50とは独立して存在しても良い。このように、NFC送受信部を無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となるとともに、NFC送受信部をトリガとして電源制御を行うことによって、待受け時の低消費電力化を図ることが可能となる。
(第12の実施形態)
第12の実施形態では、第10又は第11の実施形態の無線通信装置の構成に加えて、SIMカードを備える構成を示す。SIMカードは、MAC処理部(40)と接続される。SIMカードは、上位層処理部50の内部に存在しても良いし、上位層処理部50とは独立して存在しても良い。このように、SIMカードを無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となる。
(第13の実施形態)
第13の実施形態では、これまでの実施形態の無線通信装置の構成に加えて、LED部を備える構成について説明する。LED部は、無線通信装置の無線送受信部に接続される。このように、LEDを無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第14の実施形態)
第14の実施形態では、これまでの実施形態の無線通信装置の構成に加えて、バイブレータ部を備える構成について説明する。バイブレータ部は、無線通信装置の無線送受信部に接続される。このように、バイブレータを無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第15の実施形態)
第15の実施形態は、これまでの実施形態の無線通信装置の構成に加えて、アンテナ10が無線通信装置について説明する。アンテナ10を無線通信装置1に含める構成とすることによって、アンテナまで含めた一つの装置として無線通信装置を構成することが可能となり、実装面積を少なく抑えることが可能となる。また、例えば図3、図4、図9、図11又は図13でも示しているが、アンテナ10を送信処理と受信処理で共用している。
このように、一つのアンテナを送信処理及び受信処理で共用することによって、無線通信装置を小型化することが可能となる。
(第16の実施形態)
第16の実施形態では、これまでの実施形態の無線通信装置の構成に加えて、無線LAN部及び無線切替部を備える構成について説明する。例として、図14に、無線LAN部及び無線切替部を図9の無線通信装置100に追加した場合の構成例を示す。図14に例示された無線通信装置1400において、無線LAN部141は、上位層処理部50及び無線切替部142に接続され、無線切替部142は、無線送受信部60、上位層処理部50及び無線LAN部141に接続される。このように、無線LAN機能を無線通信装置に備える構成とすることによって、状況に応じて無線LANによる通信と無線送受信部60による通信とを切替えることが可能となる。特に前述したようにミリ波帯では複数チャネルの使用が可能であるが、例えば、当該無線通信システムにおいて、どのチャネルでも他の無線通信システムとの干渉が大きく、所望の送受信ができないような場合などには、無線LANによる通信に切り替えても良い。ここで、切り替える無線LANは、当該無線通信システムと異なる周波数帯域を使用する無線通信システム(例えば、IEEE 802.11a,b,g等)でも良いし、当該無線通信システムと同一の周波数帯域を使用する無線通信システム(例えば、802.11ad等)でも良い。また、無線LAN部にも独自の送受信アンテナがあっても良く、また、当該無線通信システムと同一の周波数帯域を使用する無線LANの場合にはアンテナを当該無線通信システムと共有しても良い。
(第17の実施形態)
第17の実施形態では、第16の実施形態の無線通信装置の構成に加えて、スイッチ(SW)を備える構成について説明する。スイッチは、無線送受信部、無線LAN部及び無線切替部にそれぞれ接続される。例えば、図14の無線通信装置1400の場合には、スイッチは、図14の無線送受信部60、無線LAN部141及び無線切替部142にそれぞれ接続される。このように、スイッチを無線通信装置に備える構成とすることによって、アンテナを共用しながら状況に応じて無線LANによる通信と無線送受信部60による通信とを切替えることが可能となる。
以上述べた少なくともひとつの実施形態の無線通信装置によれば、近距離無線通信において送受信での誤り発生時に、干渉を回避するための処理を行うか否か判定することが可能になる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。