JP2015148022A - 繊維布帛基材、繊維布帛積層基材およびプリフォームの製造方法 - Google Patents

繊維布帛基材、繊維布帛積層基材およびプリフォームの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】複雑形状であっても、最終製品面に切込のない、高品位、高精度なプリフォームを安定して製造することができる繊維布帛基材を提供する。【解決手段】本発明の繊維布帛基材は、軸方向の変形性に対して面内のせん断変形性が高い繊維布帛基材であって、二次曲面に賦形する際、面内のせん断変形を抑制する目止めをしわが発生しやすい部位にのみ配置することで、その周辺が優先的に面内のせん断変形が起き形状追従するため、しわが抑制される。【選択図】図3

Description

本発明は、複雑形状であっても、最終製品面に切込のない、高品位、高精度なプリフォームを安定して製造できる繊維布帛基材、繊維布帛積層基材およびプリフォームの製造方法に関する。さらに詳しくは、例えば樹脂注入成形に用いられる織物基材やプレス成形に用いられるプリプレグ基材などの繊維布帛基材および繊維布帛積層基材ならびにそれらを用いたプリフォームの製造方法に関する。
強化繊維とマトリックス樹脂からなる繊維強化プラスチックは、比強度、比弾性率が高く、力学特性に優れること、耐候性、耐薬品性などの高機能特性を有することなどから産業用途においても注目され、その需要は年々高まりつつある。
金属加工と比較して、繊維強化プラスチックの成形の歴史は浅く、一般的に複雑形状、特に二次曲面への繊維布帛基材の賦形技術は開発途上にある。多くの場合で繊維布帛基材は連続繊維から形成されており、繊維強化プラスチックとした際に高強度、高剛性が期待できる一方、賦形時には繊維が突っ張る箇所、しわが発生する箇所が発生するため形状追従性が低いという問題がある。
そこで、プリプレグ等のシート基材に切込を挿入し、繊維を切断することで形状追従性を高める試みが知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、連続繊維ゆえに獲得しえた繊維強化プラスチックとしての高強度特性を失うことになるため、できるだけ繊維を切断しない手法で形状追従性を向上させたい。一方、繊維布帛基材の中でも、織物や繊維束をステッチングにより一体化したステッチ基材などは、繊維方向の変形性に比べ圧倒的に面内のせん断変形性が高く、材料を改良することでさらに面内のせん断変形性を高めることで複雑形状への賦形性を上げるという検討もなされている(例えば、特許文献2)。しかしながら、賦形性は向上させることはできるものの、大きくせん断変形した部位は、局所的に密度が高くなるため、外観品位や力学特性が低下するという問題、あらゆる部位が容易にせん断変形できるため、得られるプリフォームのひずみ分布が毎回異なるというコンシステンシーの問題がある。
特開2002−240068号公報 特開2007−162151号公報
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、複雑形状であっても、最終製品面に切込のない、高品位、高精度なプリフォームを安定して製造することができる繊維布帛基材、繊維布帛積層基材およびプリフォームの製造方法を提供することにある。
本発明の繊維布帛基材は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、面内剛性の最も高い方向1と最も低い方向2について、方向2の弾性率が方向1の弾性率の1/2以下で方向2の伸度が方向1の伸度よりも大きい繊維布帛基材であって、局所的に目止めが施されている、繊維布帛基材である。
また、本発明の繊維布帛積層基材は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、前記した繊維布帛基材を多方向に積層した繊維布帛積層基材であって、繊維布帛積層基材を二次曲面に押し当てる際、局所的に目止めが施されている部位において、繊維布帛基材同士が固着していない繊維布帛積層基材である。
また、本発明のプリフォームの製造方法は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、前記した繊維布帛基材を用い、その目止めされている部位を二次曲面に押し当てて賦形を行う、プリフォームの製造方法、または、前記した繊維布帛基材を含む複数のシート基材を積層し、繊維布帛基材の目止めされている部位を二次曲面に押し当てて賦形を行う、プリフォームの製造方法である。
本発明によれば、繊維強化プラスチックの成形に用いる高品位、高精度なプリフォームを製造するにあたり、三次元形状に賦形し易い繊維布帛基材および繊維布帛積層基材を得ることができ、前記したプリフォームを効率的に製造できる。
本発明の繊維布帛基材の力学特性の一例を示す図である。 従来の繊維布帛基材をコーナー部へ賦形した一例を示す図である。 本発明の局所的に目止めされた繊維布帛基材をコーナー部へ賦形した一例を示す図である。 従来の繊維布帛基材をタンク形状へ賦形した一例を示す図である。 本発明の局所的に目止めされた繊維布帛基材をコーナー部へ賦形した一例を示す図である。
本発明者らは、繊維強化プラスチックとした際に複雑形状でありながら高品位で高力学特性を発現する、高品位、高精度なプリフォームを安定して製造するため、鋭意検討し、高力学特性に寄与する連続繊維や長繊維を含み、軸方向の変形能に対して面内のせん断変形性が高い繊維布帛基材という特定の基材に、しわの発生が起こりにくい特定の処理を施すことにより、かかる課題を一挙に解決することを究明したのである。
二次曲面に対しては、紙のように軸方向の変形能も面内のせん断変形性も低い基材では切込無しに原理的に形状追従できない。ここで二次曲面とは、例えば半球状などの形状を指し、一次曲面のように、単純に曲線を一方向に押し出したような形状ではない複雑形状を指す。一方、本発明に用いる軸方向の変形能に対して面内のせん断変形性が高い繊維布帛基材の代表としては織物が挙げられる。賦形時に繊維が引き揃えられた方向にはほとんど伸びることが出来ないが、目ズレにより容易に面内のせん断変形が可能であり、それ故複雑形状への形状追従性が発現する。このような特性を持つ繊維布帛基材としては他にも、組物、編物、繊維束を二方向に引き揃えてステッチ糸で一体化した積層ステッチ基材、二方向に積層した一方向配向プリプレグ基材などが該当する。なお、本文において、単純に基材と記す場合、繊維布帛基材を指すこととする。
本発明で用いられる繊維布帛基材は、面内に一方向に引き揃えられた(面外方向のうねりは無視し、面内で実質的に真っ直ぐに配向した)連続繊維または長繊維が複数方向、好ましくは2方向へ配向しており、この面内剛性の最も高い方向1と最も低い方向2について、方向2の弾性率が方向1の弾性率の1/2以下で方向2の伸度が方向1の伸度よりも大きい必要がある。剛性と伸度の評価に際して、面内剛性の最も高い方向1は連続繊維または長繊維が配向した方向から選ばれ、面内剛性の最も低い方向2は複数の連続繊維または長繊維が配向した中間方向から選ばれる。連続繊維や長繊維から形成された繊維布帛基材は繊維の配向方向には伸度が低く弾性率が高い一方、面内のせん断変形は容易に行われなければ、二次曲面への形状追従性は発現しない。面内のせん断変形性が高いということは、面内のある特定の方向への引張荷重に対して、弾性率が低く、伸度が高いと言い換えることができる。典型的には平織物において、縦糸もしくは横糸の繊維方向への弾性率は高く、伸度は繊維伸度に支配されるため低くなる一方、縦糸と横糸の中間、繊維方向に対して±45°の方向へ引張荷重を加えた場合には、弾性率は非常に低く、伸度も繊維伸度に比べるとはるかに高くなる。二次曲面への形状追従性を追求すると、繊維がひき揃えられた面内剛性の最も高い方向1の弾性率に対して、引き揃えられた繊維が存在しない最も面内剛性の低い方向2の弾性率は1/2以下である必要がある。好ましくは方向2の弾性率が方向1の弾性率の1/10以下であることが良い。また、面内剛性の最も高い方向1の伸度に比べ、最も面内剛性の低い方向2には伸度も高い必要がある。好ましくは方向2の伸度が方向1の伸度の10倍以上であることがよい。
弾性率および伸度は次の手順で取得して比較する。基材を弾性率、伸度を測定したい長手方向に100mm、幅25mmのスパン間を確保できるようカットし(基材の掴み部は両端に長手方向に+50mm程度準備)、カットした基材の試験片を引張試験機にすべりのないようチャックで両端を把持し、クロスヘッドの移動量からひずみ量1%における荷重を基材幅で割り返した応力(N/mm)をひずみ量1%で割ったものを基材のその方向における弾性率と定義する。引張試験中に1%以上のひずみ量で10%以上荷重低下が起きた際のクロスヘッドの移動量から計算されるひずみ量を伸度として定義する。図1に典型的な方向1と方向2の基材の引張試験における荷重−変位線図を示し、弾性率、伸度の比較方法を説明した。
上記のような繊維布帛基材は二次曲面に賦形される場合、繊維の配向方向の伸びよりも面内のせん断変形が優先的に起こるため、面内のせん断変形の限界が形状追従性の限界について支配的である。繊維方向に伸びがないとすると、幾何学的に繊維配置が決定し、賦形する形状に応じて各部位の面内のせん断変形量が決定する。せん断変形が大きすぎると面外方向に繊維が座屈を起こし、しわが発生する。
本発明の特徴は、二次曲面を含む三次元形状へ賦形される繊維布帛基材であって、局所的に目止めされていることにある。なお、本発明において「局所的に目止めされている」とは、面内のせん断変形の単位に比べ十分大きい距離感覚で目止めされている部位が点在することを指し、典型的にはcmオーダーで目止めされている部位同士が離れていることを意味する。目止めが施されている部位は面内のせん断変形が抑制されるため、目止めされている周辺が優先してせん断変形を引き起こすことができ、目止めの位置によって面内のせん断変形を制御することができる。すなわち目止めされた部位はしわが発生しにくくなる。幾何学的に賦形が困難な部位に目止めをすることで周囲が優先して形状追従することができるため、最もしわの入りやすい複雑形状部のしわを抑制することができる。目止めを施すのは賦形前であれば、カットパターンに切り出す前に長尺の繊維布帛基材の状態でもよいし、カットパターンに切り出した後でもよい。
本発明においては、局所的な目止めが、樹脂材料が固着していることで施されているのがよい。本発明において、樹脂材料が固着しているとは、繊維布帛基材を構成する強化繊維束の表面が樹脂材料と接触している部分において、樹脂材料が強化繊維束を構成する複数本の単糸間に浸透し、強化繊維織物と樹脂材料とが結合されている状態をいう。表面に固着している樹脂材料としては、基材中の繊維同士のずれを抑制することができるものであればとくに限定されない。樹脂材料の形態としては、繊維やフィルム、不織布、テープや粒状が考えられる。熱硬化性樹脂および/ または熱可塑性樹脂を適宜選択して使用することができ、中でも、熱可塑性樹脂を主成分とするものであることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミドなどがあるが、特に限定するものではない。樹脂材料が熱可塑性樹脂を主成分とするものであると、強化繊維織物表面に散布し固着させる場合、さらには強化繊維織物を積層、立体形状へと変形させた後に層間を接着させる場合の取り扱い性が向上し、生産性が向上する。なお、主成分とは樹脂材料を構成する成分の中で、その割合が最も多い成分のことをいう。
本発明の繊維布帛基材は、繊維を分断する切込がないのが好ましい。面内のせん断変形代を広げることでしわ発生を抑制することができるので、力学特性や表面品位の低下を伴う繊維を分断する切込なしでも形状に追従可能となる。
好ましくは、目止めは、繊維布帛基材を二次曲面へ押し当てる際、面内のせん断変形により繊維布帛基材の密度が高くなる部位で施されているのがよい。図2に示すように、繊維布帛基材3をコーナー部に賦形する際、コーナー部で面内のせん断変形が大きくなり、基材の密度が高くなってしわ5が発生する。そこで、図3に示すように、コーナー部に賦形される部位に局所的な目止め6を形成することによって、コーナー部に賦形した際にはコーナー部の基材の密度は低くなり、面内のせん断変形は緩和され、しわ発生が抑制される。コーナー部はしわが発生しなくても、基材が集まってきて、繊維強化プラスチックとなった際、繊維含有率が高くなったり、肉厚が大きくなったりする傾向があるが、本発明によれば、コーナー部の基材を周辺に広げる効果もあるため、繊維含有率や肉厚は全体として平準化する方向であり、高品位、高品質の繊維強化プラスチックの製造に寄与する。
好ましくは、繊維布帛基材を二次曲面に賦形中に、繊維布帛基材のしわの発生が予想される部位に、図3に示すように局所的に目止めを施し、実際に賦形時にはしわの発生を抑制するのがよい。しわの発生位置は、繊維方向に伸びないとして幾何学的に繊維配置を決定するシミュレーションソフトウェア(例えばCATIA CPD(登録商標)やFiberSIM(登録商標)など)、荷重の釣り合いを厳密に解く有限要素法を用いたシミュレーションソフトウェア(例えばPamForm(登録商標)など)や経験から、予め予測することが可能である。
プリフォームによっては異なる繊維配向の繊維布帛基材を複数枚積層して繊維布帛積層基材とすることもある。一般的に積層基材の取り扱い性を向上するため、各基材の層間をタッキファイヤやステッチングにより固着するが、積層された基材の繊維配向が異なれば、せん断変形の発生位置、せん断変形の方向性が異なる可能性があり、積層基材に面内のせん断変形を加えても、層間の摩擦で互いに拘束されるため、互いのせん断変形の方向が平均化された、何れの層にも好ましくないせん断変形が加えられる。そのため積層基材を二次曲面に押し当てる際、局所的に目止めが施されている部位、すなわちしわの発生しやすい部位において、繊維布帛基材同士が固着していないのがよい。
また、最終製品である繊維強化プラスチックの最表面の品位に重点を置く場合には、最終製品の表面を形成する繊維布帛基材のみ、局所的に目止めを施していてもよい。表面以外の層については、マット基材を用いたり切込を入れた繊維布帛基材などを用いることで、形状追従性を出し、表面層だけは繊維切断なく形成することで、プロセスの煩雑さ排除やコスト低減をさせながら高い表面品位を確保することができる。
このような繊維布帛基材を用い、その目止めされている部位を二次曲面に押し当てて賦形を行うことにより、しわの発生を抑制して、プリフォームを製造できる。また、繊維布帛基材を含む複数のシート基材を積層し、繊維布帛基材の目止めされている部位を二次曲面に押し当てて賦形を行ってもよい。
こうしたプリフォームの製造方法により製造されたプリフォームは、最終製品に含まれる部位に切込がなく、繊維強化プラスチックとした時に高力学特性、高品位とすることができる。
本発明に係る繊維布帛基材に用いられる強化繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維などの有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維などの無機繊維、ステンレス繊維やスチール繊維などの金属繊維、その他、ボロン繊維、天然繊維、変性した天然繊維などを繊維として用いた強化繊維などが挙げられる。その中でも特に炭素繊維は、これら強化繊維の中でも軽量であり、しかも比強度および比弾性率において特に優れた性質を有しており、さらに耐熱性や耐薬品性にも優れていることから、軽量化が望まれる自動車パネルなどの部材に好適である。なかでも、高強度の炭素繊維が得られやすいPAN系炭素繊維が好ましい。炭素繊維を用いた織物はデザイン性が高く、最終製品の表面に配されることが多い。切込がなく、自然科学に従って目ズレにより複雑形状に追従する様はプリント品にはない高級感を与える。
本発明に係る繊維布帛基材はプリプレグを積層したものであってもよい。その際に用いられるマトリックス樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリアミド、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリスルフォン、ABS、ポリエステル、アクリル、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、液晶ポリマー、塩ビ、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、シリコーンなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。その中でも特に熱硬化性樹脂を用いるのが好ましい。マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂であることにより、切込プリプレグ基材は室温においてタック性を有しているため、該基材を積層した際に上下の該基材と粘着により一体化され、意図したとおりの積層構成を保ったままで成形することができる。プリプレグを本発明により賦形してプリフォームとしたものは賦形に用いた型内でそのまま固化、成形して繊維強化プラスチックとしてもよいし、プリフォームを製造した後、成形型に別途配置して成形してもよい。また熱可塑性樹脂を用いた場合には、3次元形状を付与しプリフォームを製造した段階で最終製品の繊維強化プラスチックが完成するものもある。
また、本発明に係る繊維布帛基材はマトリックスが未含浸の“ドライ”基材でもよい。上記に例示したマトリックス樹脂は本発明によりプリフォームとした後に、型内に配置され樹脂を注入、固化させることによって繊維強化プラスチックとしてもよい。繊維強化プラスチックが比強度、比剛性の面で優れているが、マトリックスとして金属やセラミックスなどを用いて耐熱性や導電性などの機能を付与してもよい。
なお、本発明により製造された繊維強化プラスチックの用途としては、強度、剛性、軽量性が要求される、スキン、スパー、ストリンガーなど胴体、翼の一次構造材やウィンドウフレームやフラップなど二次構造の航空機部材、ファンブレードなど航空機エンジン部材、自動車部材のフロアや外板パネル、自転車用品、ゴルフなどのスポーツ部材などがある。中でも、強度、軽量に加え、部材形状が複雑で、かつ外観品位が要求される自動車部材の外板パネルに好ましく適用できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例に記載の発明に限定されるというものではない。
(実施例)
賦形には繊維布帛基材としてCO6343B(繊維はT300−3K)を用いた。面内剛性の最も高い方向1を決めるため、面内に繊維が一方向に引き揃えられた縦糸の方向と横糸の方向の弾性率および伸度を計測した。基材を縦糸の方向に200mm、横糸の方向に25mmとなる試験片、および横糸の方向に200mm、縦糸の方向に25mmとなる試験片を切り出し、試験片長手方向に両端50mmずつを万能試験機のチャックにつかみ、100mmのスパン間距離として、クロスヘッドスピード10mm/分で引張試験を行った。同様に、面内剛性の最も低い方向2を決めるため、面内に繊維が一方向に引き揃えられた縦糸と横糸の中間方向、すなわち縦糸の方向から45度傾いた方向に200mm、その直交方向に25mmとなる試験片、および縦糸の方向から−45度傾いた方向に200mm、その直交方向に25mmとなる試験片を切り出し、同様に試験片の長手方向の両端を50mmずつ掴んで引張試験を行った。いずれの試験も試験開始時に試験片にしわがなく、かつ張力が加わっていない状態を0%ひずみ、荷重0とした。弾性率はクロスヘッドの移動量換算(変位量をスパン間距離100mmで割って算出)で1%ひずみとなったところ(すなわち1mmの移動量)における荷重値を試験片幅と1%ひずみで割り返したものである。伸度は1%ひずみ以上で10%以上荷重低下が起きたひずみを採用した。縦糸および横糸方向の引張に際しては、繊維破断は起こらずチャック付近で引張方向と直交する繊維の目ずれに起因する荷重低下がおき、その際のひずみ量を伸度とした。また、縦糸の方向から45度および−45度傾いた方向に引張った際には、チャック付近で幅方向の自由端から繊維がほつれてす抜けることで荷重低下がおき、その際のひずみ量を伸度とした。3本ずつの試験を実施し、平均値はそれぞれ以下の通りとなった。縦糸方向の弾性率は1160N/mm、伸度は1.4%、横糸方向の弾性率は1650N/mm、伸度は1.6%であった一方、縦糸からの傾きが45度方向の弾性率は0.6N/mm、伸度は32%であり、−45度方向の弾性率は0.5N/mm、伸度は35%であった。その結果、面内剛性の最も高い方向1は横糸方向、最も低い方向2は縦糸から傾きが−45度方向となり、方向2の弾性率は方向1の弾性率の1/3360、伸度は21倍であった。
このような繊維布帛基材を縦糸の方向に350mm、横糸の方向に350mmとなるように切り出し、図5に示すように、2箇所に円状に、ポリビニルフォルマール樹脂を主成分とする粒子状の樹脂材料を、単位面積あたりの質量が5g/m付与した後、200℃ にセットしたアイロンを5秒間押し当て樹脂材料を基材上に固着させ目止めした後、CO6343Bをタンクの半分の形状の雄型7への賦形を行った。タンク両端のRは半径60mm、タンクの幅が120mm、長さがR部を含め300mm、高さが60mmとした。
基材の縦糸、横糸がタンクの長手方向に対して45度方向とし、目止めした部位がR部にあたるよう賦形したところ、面内のせん断変形によりR部に基材が集まったものの、目止めによりせん断変形が抑制され基材の密度が緩和され、しわが発生せず、高品位のプリフォームを得ることができた。また、目止め部位がR部に押し当てられるため、基材の位置決めが容易であった。
(比較例)
実施例と同様の炭素繊維平織物3を目止めせずに図4のように同様の雄型7に押し付けて賦形を実施したところ、R部でしわが発生した。
1:面内剛性の最も高い方向に引張荷重を加えられる繊維布帛基材
2:面内剛性の最も低い方向に引張荷重を加えられる繊維布帛基材
3:従来の繊維布帛基材
4:コーナー部へ賦形された繊維布帛基材
5:しわ
6:目止め
7:賦形型

Claims (8)

  1. 面内剛性の最も高い方向1と最も低い方向2について、方向2の弾性率が方向1の弾性率の1/2以下で方向2の伸度が方向1の伸度よりも大きい繊維布帛基材であって、局所的に目止めが施されている、繊維布帛基材。
  2. 二次曲面を含む三次元形状への賦形に用いる、請求項1に記載の繊維布帛基材。
  3. 目止めは、樹脂材料が固着することで施されている、請求項1または2に記載の繊維布帛基材。
  4. 繊維を分断する切込のない、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維布帛基材。
  5. 目止めは、繊維布帛基材を二次曲面へ押し当てる際、面内のせん断変形により繊維布帛基材の密度が高くなる部位で施されている、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維布帛基材。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の繊維布帛基材を多方向に積層した繊維布帛積層基材であって、繊維布帛積層基材を二次曲面に押し当てる際、局所的に目止めが施されている部位において、繊維布帛基材同士が固着していない、繊維布帛積層基材。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の繊維布帛基材を用い、その目止めされている部位を二次曲面に押し当てて賦形を行う、プリフォームの製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の繊維布帛基材を含む複数のシート基材を積層し、繊維布帛基材の目止めされている部位を二次曲面に押し当てて賦形を行う、プリフォームの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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