JP2015134865A - プライマー組成物及びそれを用いた積層体 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)と、接着性樹脂からなる粉体(Y)と、沸点が50〜200℃の含フッ素分散媒(Z)とを含有し、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)100質量部に対して、接着性樹脂からなる粉体(Y)の含有量が1〜30質量部であり、沸点が50〜200℃の含フッ素分散媒(Z)の含有量が20〜500質量である、プライマー組成物に関する。
本発明は、基材表面に、前記のプライマー組成物の熱処理物であるプライマー層と、フッ素樹脂からなるトップコート層とがこの順に積層された、積層体に関する。
本発明のプライマー組成物から形成されるプライマー層は、基材との接着性に優れ、特に基材との接着性と、プライマー層上に設けられるフッ素樹脂からなるトップコート層との接着性に優れる。またプライマー組成物は、保存安定性に優れる。更に塗布性に優れ、均一性の高い塗布層を容易に得ることができる。
反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)とは、含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位及び架橋反応を生じうる官能基(以下、「架橋性官能基」ともいう。)と重合性不飽和結合とを有するモノマー(以下、「架橋性モノマー」ともいう。)に基づく繰り返し単位を含有し、必要に応じて含フッ素モノマーと共重合し得るその他のモノマーに基づく繰り返し単位を含有する、反応性含フッ素重合体からなる粉体をいう。反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
含フッ素モノマーとしては、特に限定されないが、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」ともいう。)、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチエン等の不飽和基に水素原子を有しないフルオロオレフィン、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)等のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン等の不飽和基に水素原子を有するフルオロエチレンが挙げられる。含フッ素モノマーとして、TFE、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)等のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデンが好ましい。
含フッ素モノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
よって、反応性含フッ素重合体を構成する架橋性モノマー以外のモノマー及びその組合せとして、TFE、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)等のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、含フッ素モノマーと場合によりエチレンとの組合せとして、TFEとエチレンとの組合せ、TFEとペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)等のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)との組合せ、クロロトリフルオロエチレンとエチレンとの組合せが好ましい。前記の好ましい含フッ素モノマー等の組合せにより得られる重合体として、PTFE、PFA、FEP、ETFE、PCTFE、PVDF、ECTFE等が挙げられ、ETFE、PFA及びECTFEが好ましく、ETFEが特に好ましい。前記の好ましい重合体を構成する架橋性モノマー以外のモノマー及びその組合せであれば、プライマー層が、耐熱性や耐化学薬品性を有しつつ、プライマー組成物の熱処理がしやすい融点を有する傾向がある。
反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)は、少なくとも1種の架橋反応を生じうる官能基と重合性不飽和結合とを有するモノマーに基づく繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(C1)」ともいう)を含む。繰り返し単位(C1)は、架橋反応を生じうる官能基と重合性不飽和結合とを有するモノマーが、それ自体又は含フッ素モノマーと重合することで形成される。
架橋反応を生じうる官能基としては、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基(以下、「エステル基」ともいう。)、カルボニルフルオリド基(以下、「フルオロホルミル基」ともいう。)、アルコキシカルボニルオキシ基(以下、「カーボネート基」ともいう。)、酸無水物基、アミド基、エポキシ基、水酸基、アミノ基が挙げられ、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボニルフルオリド基、及び酸無水物基が好ましく、酸無水物基が特に好ましい。架橋性能基が、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボニルフルオリド基又は酸無水物基であると、より接着性に優れる傾向があり、更に架橋性官能基が、酸無水物基であると、より容易に反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)が得られる傾向がある。なお、酸無水物基は、モノマーに由来する酸無水物基をそのままの状態で有していてもよく、また、酸無水物基が加水分解した酸性官能基を有していてもよい。
架橋性官能基は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
反応性含フッ素重合体は、前記の含フッ素モノマーに基づく単位及び架橋性官能基と重合性不飽和結合とを有するモノマーに基づく単位以外の、その他のモノマーに基づく繰り返し単位(D)(以下、「繰り返し単位(D)」ともいう。)を含んでいてもよい。
その他のモノマーは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
反応性含フッ素重合体中の架橋性官能基の割合は、架橋性官能基と重合性不飽和結合とを有するモノマーに基づく繰り返し単位のモル数を(C1)とし、含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位のモル数を(P)とした場合、(C1)/(P)は1/10,000以上であり、1/10,000〜5/100が好ましく、3/2,000〜3/100がより好ましく、3/1,000〜3/100が特に好ましい。(C1)/(P)が、1/10,000以上であると、プライマー層を製造するための焼成工程で接着性樹脂からなる粉体(Y)との化学反応がより多くなり、基材へのより高い接着力を得ることができる。また、(C1)/(P)が、5/100以下であると、耐薬品性及び耐熱性が向上する傾向がある。
なお、含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位には、場合によりエチレンに基づく繰り返し単位を含む。
反応性含フッ素重合体の融点は、特に限定されないが、150〜350℃が好ましく、200〜330℃がより好ましく、220〜310℃が特に好ましい。反応性含フッ素重合体の融点が150〜350℃の範囲であれば、熱処理が容易であり、得られた塗膜の機械物性、耐熱性、及び耐化学薬品性が優れる傾向がある。
反応性含フッ素重合体は、反応性含フッ素重合体の後述するプライマー組成物層の熱処理温度の範囲内のいずれかでの、好ましくは300℃でのメルトフローレート値(以下、「MFR値」という)が、特に限定されないが、1〜1000g/10分間であることが好ましく、5〜200g/10分間がより好ましく、10〜100g/10分間が特に好ましい。
MFR値が、1g/10分間以上であれば、熱処理時に塗膜が平滑化しやすくなる傾向があり、1000g/10分間以下であれば、塗膜の機械的強度が向上する傾向があり、垂れ及び厚みむらの発生が抑制される傾向がある。MFR値は、ASTM−D3159に基づく測定方法により得られる。
なお、前記した反応性ETFE粉体における反応性含フッ素重合体である、反応性エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体(以下、「反応性ETFE」ともいう。)のMFRは、島津製作所製フローテスタを用いて、温度300℃、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときの反応性ETFEの押出し速度をいう。
反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)の平均粒径は、特に限定されないが、0.1〜100μmであることができ、1〜70μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)の平均粒径1μm以上であれば、より容易に安定な粉体を得ることができる傾向があり、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)の平均粒径100μm以下であれば、プライマー組成物中で粒子が短時間で沈降しないため保存安定性が向上する傾向がある。反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)の平均粒径は、レーザー回折散乱粒度分布装置を用いて測定した場合の体積基準のメジアン径である。
反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)の製造方法は、特に限定されないが、反応性含フッ素重合体を製造後粉砕処理する方法が挙げられる。反応性含フッ素重合体の製造方法は、特に限定されないが、公知の方法により製造される。例えば、反応性ETFEの製造方法は、特に限定されないが、特開2004−238405号公報に開示された方法が挙げられる。
接着性樹脂からなる粉体(Y)は、常温(例えば、25℃)で固体の接着性樹脂の粉体である。接着性樹脂とは、融点、ガラス転移温度、又は熱分解開始温度が、室温以上反応性含フッ素重合体の熱処理温度以下であり、プライマー組成物の熱処理工程で、接着性樹脂の架橋反応によって接着性を発揮する樹脂をいう。接着性樹脂は、接着性樹脂のみの架橋反応に加えて、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)と化学的に架橋反応を生じうるものが好ましい。この架橋反応により、プライマー組成物の熱処理物は、塗膜として基材に強硬な接着効果を発現する。ここで、融点、ガラス転移温度、及び熱分解開始温度は、それぞれ慣用の手段を用いて測定することができる。
(式中、mは1以上の整数であり、1〜30の整数が好ましい。)
フェノキシ樹脂は、具体的には、三菱化学社製のjER(登録商標)シリーズ(No.1256、No.4250、No.4275)、InChem製フェノキシ樹脂(No.PKHB、PKHC、PKHH、PKHJ、PKFE)、等が挙げられる。
ポリアミド樹脂は、具体的には、ダイセルエボニック社製のベストジント(登録商標)シリーズ(No.2070、No.2159、No.2158、MSP−100、MSP−S、MSP−B10)、等が挙げられる。
で表される基本化学構造をもつメラミンとイソシアヌル酸からなる有機塩粉体であり、具体的には、日産化学社製TEPIC(登録商標)シリーズ(TEPIC−S、TEPIC−SS)、堺化学社製STABIACE(登録商標)シリーズ(MC−5S)等が挙げられる。
(式中、pは、1以上の整数である。)
で表される基本化学構造をもつ高分子化合物である。ポリエーテルスルホン樹脂は、具体的には、住友化学社製スミカエクセル(登録商標)シリーズ(3600P、4100P、4800P、5003P)等が挙げられる。
(式中、qは、1以上の整数である。Arは、炭素数6〜20のアリーレン基(フェニレン、ナフチレン等)である。)
で表される基本化学構造をもつ高分子化合物である。ポリアミドイミド樹脂は、具体的には、ソルベイソレクシス社製TORLON(登録商標)シリーズ(4000T、4000TF)等が挙げられる。
(式中、rは、1以上の整数である。)
で表される基本化学構造をもつ高分子化合物である。ポリフェニレンスルフィド樹脂は、具体的には、東レ社製トレパール(登録商標)PPS等が挙げられる。
(式中、sは、1以上の整数である。)
で表される基本化学構造をもつ高分子化合物である。ポリエーテルイミド樹脂は、具体的には、SABICイノベーティブプラスチック社製Ultem(登録商標)1000P、1010P等が挙げられる。
接着性樹脂からなる粉体(Y)の平均粒径は、特に限定されないが、1〜1,000μmであることができ、1〜100μmであるのが好ましく、2〜70μmであるのがより好ましく、5〜50μmであるのが特に好ましい。接着性樹脂からなる粉体(Y)の平均粒径が1μm以上であれば、保存中に反応が生じにくくなり、保存安定性が向上する傾向があり、1,000μm以下であれば、接着力が向上する傾向がある。接着性樹脂からなる粉体(Y)の平均粒径は、レーザー回折散乱粒度分布装置を用いて測定した場合の体積基準のメジアン径である。
接着性樹脂からなる粉体(Y)の製造方法は、特に限定されないが、室温で(例えば、25℃)で固体である市販の接着性樹脂粒子を前記の好適な平均粒径になるよう粉砕する方法が挙げられる。粉砕方法としては、ハンマーミル、ターボミル、カッティングミル、ボールミル、ビーズミル、クラッシャー、ジェットミル、カウンタージェットミル等の粉砕機で粉砕する方法、あるいは低温で冷凍粉砕したものでもよい。また、市販の接着性樹脂からなる粉体が、前記の好適な平均粒径を有する場合は、そのまま使用することができる。
接着性樹脂からなる粉体(Y)の粒径は、篩や気流を用いて分級し、調整してもよい。
本発明において、プライマー組成物は、沸点が50〜200℃の含フッ素分散媒(Z)(以下、「含フッ素分散媒(Z)」ともいう。)を含有する。本発明で使用する含フッ素分散媒(Z)は、表面張力が低いために反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)への浸透性がよく、攪拌中の泡立ちも少ないためにプライマー組成物の混合が容易である。
プライマー組成物は、本発明の効果を奏する範囲内で更なる成分を含有することができる。このような成分として、非反応性含フッ素重合体からなる粉体、着色剤、補強剤、有機溶剤、熱安定剤等が挙げられる。更なる成分の含有量は、特に限定されないが、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)及び接着性樹脂からなる粉体(Y)及び含フッ素分散媒(Z)の合計100質量部に対して、100質量部以下とすることができ、0.1〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
プライマー組成物の表面張力は、特に限定されないが、30mN/m以下であることが好ましく、25mN/m以下がより好ましく、20mN/m以下が特に好ましい。表面張力が30mN/m以下であると、はじきやレベリング不良による厚みむらが抑制される傾向がある。プライマー組成物の表面張力の下限は、特に限定されないが、15mN/m以上であるのが好ましい。表面張力は、含フッ素分散媒(Z)の種類及び量を調整することにより、所望の範囲に制御できる。
プライマー組成物の粘度は、特に限定されないが、回転粘度計での60rpmでの測定値が10〜10,000mPa・sであるのが好ましく、20〜2,000mPa・sであるのがより好ましく、50〜800mPa・sであるのが特に好ましい。組成物の粘度が10mPa・s以上であると、塗布から乾燥までの間にたれが抑制され、10,000mPa・s以下であると、塗布作業性が良好であり、膜厚が均一になりやすい傾向がある。粘度は、25℃で測定した値である。回転粘度計として、ブルックフィールド型回転粘度計が挙げられる。また、高粘度のプライマー組成物を調製し、塗布方法に合わせて最適な粘度となるように含フッ素分散媒(Z)で希釈して使用することも可能である。
本発明において、積層体は、基材表面に、プライマー組成物の熱処理物であるプライマー層と、フッ素樹脂からなるトップコート層とがこの順に積層されたものである。積層体は、更に、トップコート層の表面に、トップコート層とは異なる材質である有機物又は無機物のコーティング層が積層されていてもよい。
積層体は、耐熱性、耐アルカリ性等の耐久性、及び接着性に優れる。
本発明における基材としては、特に限定されず、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、錫、チタン、クロム、ニッケル、亜鉛等の金属、ガラス、セラミックス等の耐熱材料が挙げられ、鉄、ステンレス鋼、アルミニウムが好ましい。
プライマー層は、プライマー組成物の熱処理物である。プライマー組成物については、好ましいものも含め、前記したとおりである。プライマー層の厚みは、1〜1,000μmが好ましく、5〜500μmがより好ましく、10〜200μmが特に好ましい。プライマー層の厚みが1μm以上であると、接着性が十分に発揮され、1,000μm以下であると、発泡やふくれが生じにくい傾向がある。
フッ素樹脂からなるトップコート層は、フッ素樹脂からなる粉体又はフッ素樹脂からなる粉体を含む粉体トップコート組成物を付与し、硬化させることにより得られる層である。ここで、トップコート組成物には、前記した接着性樹脂からなる粉体(Y)を含まない。
積層体が、トップコート層を有することで、耐熱基材表面に高い密着性を有しつつ、必要な膜厚を有する含フッ素重合体の塗膜を得ることができる。
フッ素樹脂からなる粉体は、常温(例えば、25℃)で固体のフッ素樹脂の粉体である。フッ素樹脂としては、特に限定されないが、含フッ素モノマーの単独又は共重合体が挙げられる。含フッ素モノマーは、前記した反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)で前記した含フッ素モノマーが挙げられる。また、フッ素樹脂は、前記した、架橋性モノマー及びその他のモノマー等のモノマーをコモノマー成分とした共重合体であってもよい。
フッ素樹脂からなる粉体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
トップコート層の厚みは、10〜5,000μmの範囲で最適な厚みを選ぶことができる。基材表面の溌水性向上、防汚性向上、光沢性向上などの目的では10〜100μmの厚みが好ましく、基材表面の潤滑性向上や表面保護の目的では50〜500μmの厚みが好ましく、有機薬品や無機薬品に対する基材の保護の目的では200〜1,000μmの厚みが好ましく、特に非常に長期の耐久性が必要とされる場合には1,000〜5,000μmの厚みが好ましい。薄すぎる場合には被覆効果が充分でなく、厚すぎる場合には塗装回数が増えるために不経済であるほか、基材との熱膨張係数の相違による応力ひずみを生じやすくなり好ましくない。
トップコート層とは異なる材質である有機物又は無機物のコーティング層(以下「更なるコーティング層」ともいう)は、着色層、ハードコート層、浸透防止層等が挙げられる。積層体が更なるコーティング層を含むことにより、積層体が、色づけ効果、ハードコート効果、浸透防止効果等の更なる効果を有する傾向がある。更なるコーティング層の厚みは、特に限定されないが、0〜1,000μmとすることができ、0〜500μmであるのが好ましい。更なるコーティング層の厚みは、更なるコーティング層により付与される特性に応じて調整することができる。
本発明の積層体において、トップコート層の基材に対する接着力は、90度剥離強度を測定することにより調べることができる。接着力は高いほどよいが、20N/cm以上の剥離強度であることが好ましく、40N/cm以上の剥離強度であることがより好ましく、50N/cm以上の剥離強度であることが特に好ましい。剥離強度が20N/cm未満である場合には接着の信頼性が低く、使用環境によっては塗膜の剥離やブリスターや基材の腐食劣化につながるため好ましくない。
本発明において、積層体は、基材表面にプライマー層を得る工程、及びプライマー層の表面にトップコート層を得る工程を含み、場合により、トップコート層の表面に更なるコーティング層を得る工程を含む製造方法により得られる。
プライマー層は、基材表面に本発明のプライマー組成物を付与してプライマー組成物層を形成する工程と、プライマー組成物層を熱処理してプライマー層を形成する工程とを含む製造方法により得られる。熱処理により、プライマー組成物層に含まれる含フッ素分散媒(Z)が除去されると共に、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)及び接着性樹脂からなる粉体(Y)が、それぞれ単独で、好ましくは反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)及び接着性樹脂からなる粉体(Y)が化学反応し、硬化して、プライマー層が形成される。
トップコート層は、基材表面に積層されたプライマー層の表面に、フッ素樹脂からなる粉体又はフッ素樹脂からなる粉体を含むトップコート組成物を付与して、フッ素樹脂からなる粉体層又はフッ素樹脂からなる粉体を含むトップコート組成物層を形成する工程と、フッ素樹脂からなる粉体層又はフッ素樹脂からなる粉体を含むトップコート組成物層を熱処理してトップコート層を形成する工程とを含む製造方法により得られる。
更なるコーティング層は、トップコート層の表面に、トップコートとは異なる材質である有機物又は無機物のコーティング層のための組成物を付与する工程と、更なるコーティング層を形成する工程を含む製造方法により得られる。トップコートとは異なる材質である有機物又は無機物のコーティング層の厚みは、特に限定されないが、前記した更なるコーティング層の厚みとなるような厚みが挙げられる。更なるコーティング層のための組成物及び更なるコーティング層の製造方法の条件は、特に限定されず、更なるコーティング層を形成するために通常用いられる条件が挙げられる。
[粘度]ブルックフィールド社製回転粘度計を用いて、25℃で粘度を測定した。
[表面張力]デュヌイ式表面張力計を用いて、25℃で表面張力を測定した。
[MFR]島津製作所製フローテスタを用いて、温度300℃、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときの反応性ETFEの押出し速度を測定して、MFRを測定した。
非常に均一な外観 : Aランク
概ね均一な外観 : Bランク
若干の異常がみられる : Cランク
著しい異常がみられる : Dランク
[散布作業性]プライマー組成物の塗装時の、ノズルへの粉体の付着やノズル閉塞などの異常の有無について、以下基準によりランク付けし、Dランクは不可とした。
異常なし : Aランク
若干ノズルへ粉体が付着 : Bランク
多量にノズルへ粉体が付着 : Cランク
ノズル閉塞し散布続行不可 : Dランク
剥離強度≧50.0N/cm : Aランク
40.0以上50.0N/cm未満 : Bランク
20.0以上40.0N/cm未満 : Cランク
<20.0N/cm : Dランク
[耐熱水性]塗装試験片を、プレッシャークッカー(高温蒸気圧力釜)により130℃24時間処理後、初期接着性評価と同様にトップコート層の剥離強度を測定した。得られた耐熱水性試験後の剥離強度について、初期剥離強度の評価と同様にランク付けを行なった。
[耐アルカリ性]塗装試験片を、80℃の10%水酸化ナトリウム水溶液中に300時間浸漬後、初期接着性評価と同様にトップコート層の剥離強度を測定した。得られた耐アルカリ性試験後の剥離強度について、初期剥離強度の評価と同様にランク付けを行なった。
[平均粒径]0.1%の界面活性剤水溶液中に各粉体を分散し、堀場製作所製レーザー散乱粒度分布計LA−920を使用して平均粒径を測定した。
[保存安定性]プライマー組成物を内容積100ccのガラス製サンプルビンに入れ、300時間、25℃で保管後、低部に発生した沈降物を再分散させるために上下反転を繰り返し、完全に再分散できた回数に基づいてランク付けを行なった。
50回以下で再分散 : Aランク
51〜100回 : Bランク
101〜200回 : Cランク
201回以上 : Dランク
<反応性含フッ素重合体からなる粉体(反応性FR−1)の製造>
反応性含フッ素重合体として、TFEに基づく繰り返し単位/エチレンに基づく繰り返し単位/IAHに基づく繰り返し単位/CH2=CH(CF2)4Fに基づく繰り返し単位がモル比で57.6/40.0/1.8/0.6(すなわち、(C2)/((A)+(B))は、モル比で1.84/100である)であり、融点が242℃であるETFEを溶液重合し、造粒処理することにより得られた粒子をアズワン社製冷凍粉砕機TPH−01により粉砕し、平均粒径が20μmである反応性ETFE粉末(反応性FR−1)を得た。MFR値は25g/10分であった。
三菱化学社製エポキシ樹脂1004K(軟化点97℃)をアズワン社製冷凍粉砕機TPH−01により粉砕し、エポキシ樹脂からなる粉体である平均粒径23μmの接着性樹脂からなる粉体(EP)を得た。
旭硝子社製アサヒクリン(登録商標)AC−6000(沸点114℃、KB値5)を分散媒−1として使用した。反応性FR−1を100質量部、EPを10質量部、分散媒−1を170質量部の比率で配合して攪拌し、プライマー組成物(P−1)を作製した。
このプライマー組成物は、300時間経過後に沈降物を生じていたが、上下反転させることにより容易に再分散し、保存安定性は良好であった。
縦100mm、横150mm、厚さ1mmのアルミニウム基板を試験用基材とした。この試験用基材の表面に、液体塗料用エアー式スプレーガン(明治機械製作所社製)を使用してプライマー組成物(P−1)を塗布し、オーブン中に吊り下げて300℃10分間焼成し、厚み33μmのプライマー層を形成し、プライマー層付き基材を得た。
ついで、その表面に、トップコート用の非反応性含フッ素重合体からなる粉体(旭硝子社製フルオン(登録商標)ETFE TL−081)(非反応性FR)を静電塗装し、300℃で10分間焼成し、この静電塗装及び焼成工程を4回繰り返すことにより、合計厚み510μmのトップコート層を形成し、塗装試験片を得た。トップコート層の初期剥離強度は78.7N/cmであり、耐熱水性試験後及び耐アルカリ性試験後にも充分な剥離強度を示した。
表1に示すように、反応性含フッ素重合体からなる粉体及び接着性樹脂からなる粉体の種類、配合、熱処理温度を変えて、プライマー組成物(P−2)〜プライマー組成物(P−6)を作製し、プライマー層付き基材及び塗装試験片を得た。例1と同様の評価を行なったところ、良好な結果が得られた。ここで、反応性含フッ素重合体からなる粉体(反応性FR−2)は、例1で作製した反応性含フッ素重合体からなる粉体(反応性FR−1)の粉砕条件を変えることにより得た。
表2中の例7として示す配合でプライマー組成物(P−7)を作製し、プライマー層付き基材及び塗装試験片を得た。例1と同様の評価を行なったところ、剥離強度が良好であった。
表2中の例8として示す配合でプライマー組成物(P−8)を作製し、プライマー層付き基材及び塗装試験片を得た。例1と同様の評価を行なったところ、接着性樹脂からなる粉体を使用しないと考えられるために、剥離強度が低かった。
表2中の例9として示す配合でプライマー組成物(P−9)を作製し、プライマー層付き基材及び塗装試験片を得た。例1と同様の評価を行なったところ、反応性含フッ素重合体からなる粉体を使用しないと考えられるために、剥離強度が低かった。
表2中の例10として示す配合で、沸点の低いCFC−113を使用してプライマー組成物(P−10)を作製し、プライマー層付き基材及び塗装試験片を得た。例1と同様の評価を行なったところ、プライマー組成物の保存安定性、散布作業性が不良であり、剥離強度、特に耐熱水性試験後及び耐アルカリ性試験後の剥離強度が低かった。
[例11(比較例)]
表2中の例11として示す配合で、水に界面活性剤(トライトンX−100)を溶解させたものを分散媒として使用し、プライマー組成物(P−11)を作製し、プライマー層付き基材及び塗装試験片を得た。例1と同様の評価を行なったところ、プライマー組成物の保存安定性が不良であった。また、プライマー層にはじきが生じ、外観が不良であった。また、プライマー組成物液は泡立ちやすく、作業性が低かった。
反応性FR−2:反応性ETFE粉体、平均粒径10μm、真比重=1.78、MFR=25g/10分
非反応性FR:旭硝子社製フルオンETFE TL−081、平均粒径76μm、真比重=1.74、MFR=22g/10分
EP:三菱化学社製ビスフェノール型エポキシ樹脂パウダー、jER(登録商標)1004k粉砕品、分子量1,650、エポキシ当量925、軟化点97℃、平均粒径23μm
PH:InChem社製フェノキシ樹脂パウダーPKHP−200、分子量52,000、ガラス転移温度92℃、平均粒径28μm
PES:住友化学社製ポリエーテルスルホンパウダー、スミカエクセル(登録商標)4100P粉砕品、ガラス転移温度225℃、平均粒径21μm
PA:ダイセルエボニック社製ナイロン12パウダー、ベストジント(登録商標)2070、融点175〜180℃、平均粒径5μm
PAI:ソルベイソレクシス社製ポリアミドイミドパウダー、TORLON(登録商標)400TF、融点300℃、平均粒径35μm
PPS:東レ社製ポリフェニレンスルフィドパウダー、トレパール(登録商標)PPS、融点280℃、平均粒径30μm
MC:日産化学社製メラミンシアヌレートパウダー、MC−6000、分解開始温度200℃、平均粒径3μm
界面活性剤:ダウケミカル社製トライトン(登録商標) X−100(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)
オゾン破壊係数 : CFC−11を1とした場合の相対比
地球温暖化係数 : 二酸化炭素を1とした場合の相対比、100年
Claims (6)
- 反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)と、接着性樹脂からなる粉体(Y)と、沸点が50〜200℃の含フッ素分散媒(Z)とを含有し、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)100質量部に対して、接着性樹脂からなる粉体(Y)の含有量が1〜30質量部であり、沸点が50〜200℃の含フッ素分散媒(Z)の含有量が20〜500質量である、プライマー組成物。
- 沸点が50〜200℃の含フッ素分散媒(Z)が、分子中に塩素原子を含まず、カウリブタノール値が30以下である、ヒドロフルオロカーボン又はヒドロフルオロエーテルである、請求項1記載のプライマー組成物。
- 接着性樹脂からなる粉体(Y)が、エポキシ樹脂からなる粉体、フェノキシ樹脂からなる粉体、メラミンシアヌレートからなる粉体、ポリエーテルスルホン樹脂からなる粉体、ポリアミド樹脂からなる粉体、ポリアミドイミド樹脂からなる粉体、ポリフェニレンスルフィド樹脂からなる粉体からなる群より選ばれる1種以上の粉体である、請求項1又は2記載のプライマー組成物。
- 反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)が、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(A)、エチレンに基づく繰り返し単位(B)及び酸無水物基と重合性不飽和結合とを有するモノマーに基づく繰り返し単位(C2)を含有し、(A)/(B)がモル比で20/80〜80/20であり、(C2)/((A)+(B))がモル比で1/10,000〜5/100の反応性エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体からなる粉体である、請求項1〜3いずれか1項記載のプライマー組成物。
- 基材表面に、請求項1〜4いずれか1項記載のプライマー組成物の熱処理物であるプライマー層と、フッ素樹脂からなるトップコート層とがこの順に積層された、積層体。
- 基材に対する、トップコート層の剥離強度が、40N/cm以上である、請求項5記載の積層体。
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