JP2015134865A - プライマー組成物及びそれを用いた積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】基材との接着性に優れ、分散安定性に優れるプライマー組成物及びそれを用いて得られた積層体を提供すること。【解決手段】反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)と、接着性樹脂からなる粉体(Y)と、沸点が50〜200℃の含フッ素分散媒(Z)とを含有し、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)100質量部に対して、接着性樹脂からなる粉体(Y)の含有量が1〜30質量部であり、沸点が50〜200℃の含フッ素分散媒(Z)の含有量が20〜500質量部である、プライマー組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、プライマー組成物及びそれを用いて得られた積層体に関する。
ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」ともいう。)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体(以下、「PFA」ともいう。)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体(以下、「FEP」ともいう。)、ポリクロロトリフルオロエチレン(以下、「PCTFE」ともいう。)、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体(以下、「ETFE」ともいう。)、ポリフッ化ビニリデン(以下、「PVDF」ともいう。)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン系共重合体(以下、「ECTFE」ともいう。)等の含フッ素重合体は、耐熱性、耐薬品性、非粘着性、潤滑性、耐候性、ガスバリア性等に優れ、半導体産業や自動車産業や化学産業など種々の分野で使用されている。特に、粒子径が100μm以下の含フッ素重合体からなる粉体は、耐熱基材表面の非粘着性改良や潤滑性向上や耐薬品性向上のためにコーティング加工され、厨房用器具、容器、タンク、配管、継ぎ手等の表面加工に利用される。
一般に、含フッ素重合体は、基材表面にサンドブラストなどの表面粗化処理を行なったのちに塗装されるが、基材との接着性が低いため、含フッ素重合体塗装用のプライマー組成物が提案されている。このような状況下、含フッ素重合体の分子中に反応基を有する反応性含フッ素重合体を用いた粉体プライマー組成物が知られている(例えば、特許文献1)。また、シランカップリング剤を用いたプライマー組成物が知られている(例えば、特許文献2)。更に、水、有機溶剤、接着性樹脂前駆体、含フッ素重合体を含有するプライマー組成物が知られている(例えば、特許文献3)。また、含フッ素分散媒を使用して含フッ素重合体粒子を分散して塗布することが知られている(例えば、特許文献4)。
特開2006−206637号公報 特開2006−167689号公報 特公平4−28032号公報 特公昭57−15607号公報
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載されたプライマー組成物よりも更に優れた、含フッ素重合体塗膜と基材との接着性が求められている。また、一般に、含フッ素重合体の比重は約1.5〜2.2であり、水の比重よりもかなり大きいために、特許文献3のプライマー組成物において、含フッ素重合体は沈降しやすく、使用しやすいものではない。特許文献4には、プライマー組成物に関する記載はない。特許文献4に例示された低沸点の含フッ素分散媒であるトリクロロトリフルオロエタン(以下、「CFC−113」ともいう。)は、沸点が低く、乾燥しやすいため、アルミ板上に流す塗布方法しか例示されていない。また、本発明者らの研究によれば、CFC−113及び接着性樹脂からなる粉体を含むプライマー組成物は、接着性樹脂がCFC−113に膨潤するため、分散状態が不安定となり、使用しやすいものではないことを発見した。更に、特許文献4に例示された界面活性剤を含む水を分散媒として使用するプライマー組成物も、含フッ素重合体からなる粉体が沈降しやすく、使用しやすいものではないことを発見した。
本発明は、上記のような従来の課題を解消し、基材との接着性に優れ、分散安定性に優れるプライマー組成物及びそれを用いて得られた積層体を提供することを課題とする。
本発明は以下を構成とする。
本発明は、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)と、接着性樹脂からなる粉体(Y)と、沸点が50〜200℃の含フッ素分散媒(Z)とを含有し、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)100質量部に対して、接着性樹脂からなる粉体(Y)の含有量が1〜30質量部であり、沸点が50〜200℃の含フッ素分散媒(Z)の含有量が20〜500質量である、プライマー組成物に関する。
本発明は、基材表面に、前記のプライマー組成物の熱処理物であるプライマー層と、フッ素樹脂からなるトップコート層とがこの順に積層された、積層体に関する。
本発明により、基材との接着性に優れ、分散安定性に優れるプライマー組成物及びそれを用いて得られた積層体を提供することができる。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。更に組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
(プライマー組成物)
本発明のプライマー組成物から形成されるプライマー層は、基材との接着性に優れ、特に基材との接着性と、プライマー層上に設けられるフッ素樹脂からなるトップコート層との接着性に優れる。またプライマー組成物は、保存安定性に優れる。更に塗布性に優れ、均一性の高い塗布層を容易に得ることができる。
基材表面にプライマー組成物を付与した後、熱処理により得られるプライマー層は、基材表面に強固に固着しており、その上に付与される、含フッ素樹脂との充分な接着力を有する。したがって、プライマー組成物の熱処理物であるプライマー層の表面に、含フッ素樹脂からなる粉体又は含フッ素樹脂からなる粉体を含有するトップコート組成物を塗り重ねることにより、基材表面に高い密着性を有しつつ、必要な膜厚を有する含フッ素樹脂の塗膜であるトップコート層を得ることができる。
[反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)]
反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)とは、含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位及び架橋反応を生じうる官能基(以下、「架橋性官能基」ともいう。)と重合性不飽和結合とを有するモノマー(以下、「架橋性モノマー」ともいう。)に基づく繰り返し単位を含有し、必要に応じて含フッ素モノマーと共重合し得るその他のモノマーに基づく繰り返し単位を含有する、反応性含フッ素重合体からなる粉体をいう。反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
<含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位>
含フッ素モノマーとしては、特に限定されないが、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」ともいう。)、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチエン等の不飽和基に水素原子を有しないフルオロオレフィン、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)等のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン等の不飽和基に水素原子を有するフルオロエチレンが挙げられる。含フッ素モノマーとして、TFE、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)等のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデンが好ましい。
含フッ素モノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
含フッ素モノマーはエチレンと組合せて用いることもまた好ましい。
よって、反応性含フッ素重合体を構成する架橋性モノマー以外のモノマー及びその組合せとして、TFE、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)等のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、含フッ素モノマーと場合によりエチレンとの組合せとして、TFEとエチレンとの組合せ、TFEとペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)等のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)との組合せ、クロロトリフルオロエチレンとエチレンとの組合せが好ましい。前記の好ましい含フッ素モノマー等の組合せにより得られる重合体として、PTFE、PFA、FEP、ETFE、PCTFE、PVDF、ECTFE等が挙げられ、ETFE、PFA及びECTFEが好ましく、ETFEが特に好ましい。前記の好ましい重合体を構成する架橋性モノマー以外のモノマー及びその組合せであれば、プライマー層が、耐熱性や耐化学薬品性を有しつつ、プライマー組成物の熱処理がしやすい融点を有する傾向がある。
<架橋反応を生じうる官能基と重合性不飽和結合とを有するモノマーに基づく繰り返し単位>
反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)は、少なくとも1種の架橋反応を生じうる官能基と重合性不飽和結合とを有するモノマーに基づく繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(C1)」ともいう)を含む。繰り返し単位(C1)は、架橋反応を生じうる官能基と重合性不飽和結合とを有するモノマーが、それ自体又は含フッ素モノマーと重合することで形成される。
<<架橋反応を生じうる官能基>>
架橋反応を生じうる官能基としては、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基(以下、「エステル基」ともいう。)、カルボニルフルオリド基(以下、「フルオロホルミル基」ともいう。)、アルコキシカルボニルオキシ基(以下、「カーボネート基」ともいう。)、酸無水物基、アミド基、エポキシ基、水酸基、アミノ基が挙げられ、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボニルフルオリド基、及び酸無水物基が好ましく、酸無水物基が特に好ましい。架橋性能基が、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボニルフルオリド基又は酸無水物基であると、より接着性に優れる傾向があり、更に架橋性官能基が、酸無水物基であると、より容易に反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)が得られる傾向がある。なお、酸無水物基は、モノマーに由来する酸無水物基をそのままの状態で有していてもよく、また、酸無水物基が加水分解した酸性官能基を有していてもよい。
架橋性官能基が酸無水物基である、架橋性官能基と重合性不飽和結合とを有するモノマーは、無水マレイン酸、無水イタコン酸(以下、「IAH」ともいう。)、無水シトラコン酸(以下、「CAH」ともいう。)、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。IAH及びCAHが好ましく、IAHが特に好ましい。IAH又はCAHを用いると、より接着性に優れたプライマー組成物が得られる傾向がある。
架橋性官能基は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
<その他のモノマーに基づく繰り返し単位>
反応性含フッ素重合体は、前記の含フッ素モノマーに基づく単位及び架橋性官能基と重合性不飽和結合とを有するモノマーに基づく単位以外の、その他のモノマーに基づく繰り返し単位(D)(以下、「繰り返し単位(D)」ともいう。)を含んでいてもよい。
繰り返し単位(D)を構成する、エチレン以外のその他のモノマーとしては、プロピレン、ブテン等の炭素数3以上の炭化水素系オレフィン、アルキルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、メチルビニロキシブチルカーボネート等のビニルエーテル(ただしペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)を除く。)、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、ブタン酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、クロトン酸ビニル等のビニルエステル、CH=CX(CFY(式中、X及びYは、互いに独立して、水素又はフッ素原子であり、nは1〜8の整数である。)で表される化合物、(ポリフルオロアルキル)アクリレート、(ポリフルオロアルキル)メタクリレート等のポリフルオロアルキル(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
CH=CX(CFYで表される化合物は、n=2〜4であるものがより好ましい。n=2〜4であるCH=CX(CFYで表される化合物の具体例としては、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH等が挙げられる。更に、CH=CF(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFH又はCH=CF(CFHがより好ましく、CH=CH(CFFが特に好ましい。
その他のモノマーは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
<各単位の好ましい含有量>
反応性含フッ素重合体中の架橋性官能基の割合は、架橋性官能基と重合性不飽和結合とを有するモノマーに基づく繰り返し単位のモル数を(C1)とし、含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位のモル数を(P)とした場合、(C1)/(P)は1/10,000以上であり、1/10,000〜5/100が好ましく、3/2,000〜3/100がより好ましく、3/1,000〜3/100が特に好ましい。(C1)/(P)が、1/10,000以上であると、プライマー層を製造するための焼成工程で接着性樹脂からなる粉体(Y)との化学反応がより多くなり、基材へのより高い接着力を得ることができる。また、(C1)/(P)が、5/100以下であると、耐薬品性及び耐熱性が向上する傾向がある。
なお、含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位には、場合によりエチレンに基づく繰り返し単位を含む。
架橋性官能基と重合性不飽和結合とを有するモノマーが、酸無水物基と重合性不飽和結合とを有するモノマーである場合、酸無水物基と重合性不飽和結合とを有するモノマーに基づく繰り返し単位のモル数を(C2)とし、含フッ素モノマーに基づく単位のモル数を(P)とした場合、(C2)/(P)は1/10,000以上であり、1/10,000〜5/100が好ましく、3/2,000〜3/100がより好ましく、3/1,000〜3/100が特に好ましい。(C2)/(P)が、1/10,000以上であると、プライマー層を製造するための焼成工程で接着性樹脂からなる粉体(Y)との化学反応がより多くなり、基材へのより高い接着力を得ることができる。また、(C2)/(P)が、5/100以下であると、耐薬品性及び耐熱性が向上する傾向がある。
よって、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)として、TFEに基づく繰り返し単位(A)(以下、「繰り返し単位(A)」ともいう。)、エチレンに基づく繰り返し単位(B)(以下、「繰り返し単位(B)」ともいう。)及び酸無水物基と重合性不飽和結合とを有するモノマーに基づく繰り返し単位(C2)を含有し、(A)/(B)がモル比で20/80〜80/20であり、(C2)/((A)+(B))がモル比で1/10,000〜5/100である、反応性エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体からなる粉体(以下、「反応性ETFE粉体」ともいう。)であるのが特に好ましい。また、反応性ETFE粉体において、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)との比率はモル比で20/80〜80/20であり、50/50〜70/30が好ましい。(A)/(B)が20/80以上であると、耐熱性、耐候性、耐薬品性、ガスバリア性がより向上する傾向があり、(A)/(B)が80/20以下であると、機械的強度、溶融性がより向上する傾向がある。
繰り返し単位(D)の含有量は、反応性含フッ素重合体中の全繰り返し単位に対して0〜20モル%が好ましく、0〜15モル%がより好ましく、0〜10モル%が特に好ましい。
本発明において、繰り返し単位(C1)、(C2)、(P)、(A)、(B)及び(D)の含有量は、各繰り返し単位を構成するモノマーの仕込み量とほぼ一致する。
<融点>
反応性含フッ素重合体の融点は、特に限定されないが、150〜350℃が好ましく、200〜330℃がより好ましく、220〜310℃が特に好ましい。反応性含フッ素重合体の融点が150〜350℃の範囲であれば、熱処理が容易であり、得られた塗膜の機械物性、耐熱性、及び耐化学薬品性が優れる傾向がある。
<メルトフローレート値>
反応性含フッ素重合体は、反応性含フッ素重合体の後述するプライマー組成物層の熱処理温度の範囲内のいずれかでの、好ましくは300℃でのメルトフローレート値(以下、「MFR値」という)が、特に限定されないが、1〜1000g/10分間であることが好ましく、5〜200g/10分間がより好ましく、10〜100g/10分間が特に好ましい。
MFR値が、1g/10分間以上であれば、熱処理時に塗膜が平滑化しやすくなる傾向があり、1000g/10分間以下であれば、塗膜の機械的強度が向上する傾向があり、垂れ及び厚みむらの発生が抑制される傾向がある。MFR値は、ASTM−D3159に基づく測定方法により得られる。
なお、前記した反応性ETFE粉体における反応性含フッ素重合体である、反応性エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体(以下、「反応性ETFE」ともいう。)のMFRは、島津製作所製フローテスタを用いて、温度300℃、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときの反応性ETFEの押出し速度をいう。
MFR値を測定することにより、分子量の目安とすることができる。高温流動性であるMFRが大きいと分子量が低いことを意味し、MFRが小さいと分子量が高いことを示す。なお、反応性含フッ素重合体の質量平均分子量は、一般に10,000〜10,000,000であることができると考えられるが、含フッ素重合体は溶剤に溶解しないため、分子量の直接測定は困難である。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、PMMA(ポリメチルメタクリレート)換算分子量である。
<平均粒径>
反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)の平均粒径は、特に限定されないが、0.1〜100μmであることができ、1〜70μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)の平均粒径1μm以上であれば、より容易に安定な粉体を得ることができる傾向があり、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)の平均粒径100μm以下であれば、プライマー組成物中で粒子が短時間で沈降しないため保存安定性が向上する傾向がある。反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)の平均粒径は、レーザー回折散乱粒度分布装置を用いて測定した場合の体積基準のメジアン径である。
<調製方法>
反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)の製造方法は、特に限定されないが、反応性含フッ素重合体を製造後粉砕処理する方法が挙げられる。反応性含フッ素重合体の製造方法は、特に限定されないが、公知の方法により製造される。例えば、反応性ETFEの製造方法は、特に限定されないが、特開2004−238405号公報に開示された方法が挙げられる。
粉砕処理としては、重合後に反応性含フッ素重合体を含む分散液を噴霧乾燥させる方法、あるいは含フッ素重合体を凝集し乾燥して得られた粒子をハンマーミル、ターボミル、カッティングミル、クラッシャー、ジェットミル、カウンタージェットミル等の粉砕機で粉砕する方法、反応性含フッ素重合体が脆化する室温未満の低温で機械的に粉砕する方法(以下、「冷凍粉砕」ともいう。)が挙げられ、冷凍粉砕が好ましい。
冷凍粉砕は、含フッ素重合体の軟化温度の影響を受けずに粉砕加工できる傾向がある。冷凍粉砕の場合、液化炭酸ガスや液体窒素等の冷却媒体で冷却しながら粉砕する。冷凍粉砕装置としては、アズワン社製凍結粉砕機、ホソカワミクロン社製リンレックスミルなどを用いることができ、粉砕時の温度は、−200〜20℃が好ましく、−180〜−20℃がより好ましく、−150〜−50℃が特に好ましい。
反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)の粒径は、篩や気流を用いて分級し、調整してもよい。
[接着性樹脂からなる粉体(Y)]
接着性樹脂からなる粉体(Y)は、常温(例えば、25℃)で固体の接着性樹脂の粉体である。接着性樹脂とは、融点、ガラス転移温度、又は熱分解開始温度が、室温以上反応性含フッ素重合体の熱処理温度以下であり、プライマー組成物の熱処理工程で、接着性樹脂の架橋反応によって接着性を発揮する樹脂をいう。接着性樹脂は、接着性樹脂のみの架橋反応に加えて、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)と化学的に架橋反応を生じうるものが好ましい。この架橋反応により、プライマー組成物の熱処理物は、塗膜として基材に強硬な接着効果を発現する。ここで、融点、ガラス転移温度、及び熱分解開始温度は、それぞれ慣用の手段を用いて測定することができる。
接着性樹脂からなる粉体(Y)の具体例として、エポキシ樹脂からなる粉体、フェノキシ樹脂からなる粉体、メラミンシアヌレート粉体、ポリエーテルスルホン樹脂からなる粉体、ポリアミド樹脂からなる粉体、ポリアミドイミド樹脂からなる粉体、ポリフェニレンスルフィド樹脂からなる粉体、ポリエーテルイミド樹脂からなる粉体、ポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる粉体、ポリスルホン樹脂からなる粉体、ポリウレタン樹脂からなる粉体、ポリビニルアルコール樹脂からなる粉体、ポリエチレンオキシド樹脂からなる粉体、シリコーン樹脂からなる粉体等が挙げられ、エポキシ樹脂からなる粉体、フェノキシ樹脂からなる粉体、メラミンシアヌレートからなる粉体、ポリエーテルスルホン樹脂からなる粉体、ポリアミド樹脂からなる粉体、ポリアミドイミド樹脂からなる粉体、ポリフェニレンスルフィド樹脂からなる粉体、ポリエーテルイミド樹脂からなる粉体等が好ましい。プライマー組成物が前記好ましい接着性樹脂からなる粉体を含有すると、高い接着力が得られる傾向がある。
エポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合反応により得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂、その他の変性エポキシ樹脂が挙げられる。
このうち、基本化学構造が以下に示されるビスフェノールA型エポキシ樹脂が接着力及び耐熱性に優れており、軟化点が室温以上のものがプライマー組成物中で分散状態が安定するため好ましい。

(式中、mは1以上の整数であり、1〜30の整数が好ましい。)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、具体的には、三菱化学社製のjER(登録商標)シリーズのうち(No.1001、No.1003、No.1004、No.1009、No.1010)、DICコーポレーション社製のEPICLON(登録商標)シリーズのうち軟化点が室温以上のもの(No.1050、No.2050、No.3050、No.4050、No.7050,HM−091,HM−101)等が挙げられる。
本発明において、フェノキシ樹脂は、基本化学構造はビスフェノールA型エポキシ樹脂と同じであるが、分子量が特に高いもの(例えば、分子量が10,000以上のもの)がフェノキシ樹脂として区別される。
フェノキシ樹脂は、具体的には、三菱化学社製のjER(登録商標)シリーズ(No.1256、No.4250、No.4275)、InChem製フェノキシ樹脂(No.PKHB、PKHC、PKHH、PKHJ、PKFE)、等が挙げられる。
ポリアミド樹脂は、アミド結合の繰り返し単位が主鎖を構成する結晶性の線状高分子であり、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、などのほか、脂肪族ポリアミド樹脂のほか、アラミドなどの芳香族ポリアミド樹脂も利用できる。
ポリアミド樹脂は、具体的には、ダイセルエボニック社製のベストジント(登録商標)シリーズ(No.2070、No.2159、No.2158、MSP−100、MSP−S、MSP−B10)、等が挙げられる。
メラミンシアヌレート粉体は、

で表される基本化学構造をもつメラミンとイソシアヌル酸からなる有機塩粉体であり、具体的には、日産化学社製TEPIC(登録商標)シリーズ(TEPIC−S、TEPIC−SS)、堺化学社製STABIACE(登録商標)シリーズ(MC−5S)等が挙げられる。
ポリエーテルスルホン樹脂は、

(式中、pは、1以上の整数である。)
で表される基本化学構造をもつ高分子化合物である。ポリエーテルスルホン樹脂は、具体的には、住友化学社製スミカエクセル(登録商標)シリーズ(3600P、4100P、4800P、5003P)等が挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂は、

(式中、qは、1以上の整数である。Arは、炭素数6〜20のアリーレン基(フェニレン、ナフチレン等)である。)
で表される基本化学構造をもつ高分子化合物である。ポリアミドイミド樹脂は、具体的には、ソルベイソレクシス社製TORLON(登録商標)シリーズ(4000T、4000TF)等が挙げられる。
ポリフェニレンスルフィド樹脂は、

(式中、rは、1以上の整数である。)
で表される基本化学構造をもつ高分子化合物である。ポリフェニレンスルフィド樹脂は、具体的には、東レ社製トレパール(登録商標)PPS等が挙げられる。
ポリエーテルイミド樹脂は、

(式中、sは、1以上の整数である。)
で表される基本化学構造をもつ高分子化合物である。ポリエーテルイミド樹脂は、具体的には、SABICイノベーティブプラスチック社製Ultem(登録商標)1000P、1010P等が挙げられる。
<平均粒径>
接着性樹脂からなる粉体(Y)の平均粒径は、特に限定されないが、1〜1,000μmであることができ、1〜100μmであるのが好ましく、2〜70μmであるのがより好ましく、5〜50μmであるのが特に好ましい。接着性樹脂からなる粉体(Y)の平均粒径が1μm以上であれば、保存中に反応が生じにくくなり、保存安定性が向上する傾向があり、1,000μm以下であれば、接着力が向上する傾向がある。接着性樹脂からなる粉体(Y)の平均粒径は、レーザー回折散乱粒度分布装置を用いて測定した場合の体積基準のメジアン径である。
<調製方法>
接着性樹脂からなる粉体(Y)の製造方法は、特に限定されないが、室温で(例えば、25℃)で固体である市販の接着性樹脂粒子を前記の好適な平均粒径になるよう粉砕する方法が挙げられる。粉砕方法としては、ハンマーミル、ターボミル、カッティングミル、ボールミル、ビーズミル、クラッシャー、ジェットミル、カウンタージェットミル等の粉砕機で粉砕する方法、あるいは低温で冷凍粉砕したものでもよい。また、市販の接着性樹脂からなる粉体が、前記の好適な平均粒径を有する場合は、そのまま使用することができる。
接着性樹脂からなる粉体(Y)の粒径は、篩や気流を用いて分級し、調整してもよい。
接着性樹脂からなる粉体(Y)の含有量は、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)100質量部に対して1〜30質量部であり、2〜25質量部が好ましく、3〜20質量部が特に好ましい。反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)100質量部に対する接着性樹脂からなる粉体(Y)の含有量が1質量部未満であると接着力が低下し、30質量部超であると接着性樹脂の熱分解により、プライマー層の発泡や変色が生じやすくなる。
[沸点が50〜200℃の含フッ素分散媒(Z)]
本発明において、プライマー組成物は、沸点が50〜200℃の含フッ素分散媒(Z)(以下、「含フッ素分散媒(Z)」ともいう。)を含有する。本発明で使用する含フッ素分散媒(Z)は、表面張力が低いために反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)への浸透性がよく、攪拌中の泡立ちも少ないためにプライマー組成物の混合が容易である。
含フッ素分散媒(Z)は、分子中に炭素原子及びフッ素原子を有し、場合により、酸素原子及び塩素原子を有する。含フッ素分散媒(Z)として、特に限定されないが、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロエーテル、及び塩素原子を含む含フッ素分散媒が挙げられる。本発明において、ヒドロフルオロカーボン及びヒドロフルオロエーテルは、分子中に塩素原子を含まない。
ヒドロフルオロカーボンは、特に限定されないが、CHFCFCFCFCFCF、CFCFCFCFCHCH、CFCFCFCFCFCFCHCH、CFCFCHFCHFCF、CFCHCFCH、CFCFCFCFHCHが挙げられる。なかでも、CHFCFCFCFCFCF及びCFCFCFCFCFCFCHCHが好適な乾燥速度を有しており、特に好ましい。
ヒドロフルオロエーテルは、特に限定されないが、CFCHOCFCFH、CFCHOCFCFHCF、(CFCHOCFCFH、CFCHOCHFCHF、CF(CFOCH、CF(CFOCH、CF(CFOCHCH、CF(CFOCHCH、(CFCFCFOCHCHが挙げられるが、CFCHOCFCFHが好ましい。
塩素原子を含む含フッ素分散媒は、特に限定されないが、CFCFCHCl、CClFCFCHClF、CFCHCl、CFClCH等が挙げられ、CFCFCHCl及びCClFCFCHClFが好ましい。
含フッ素分散媒(Z)は、分子中に塩素原子を含まないのが好ましく、ヒドロフルオロカーボン及びヒドロフルオロエーテルがより好ましい。分子中に塩素原子を含まない含フッ素分散媒は、オゾン破壊係数がゼロであり、地球温暖化係数も比較的小さいため環境面で好ましい傾向がある。また、ヒドロフルオロカーボン及びヒドロフルオロエーテルは、比重が約1.4以上と大きいために反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)が沈降しにくく、保存安定性により優れたプライマー組成物を得ることができる傾向がある。また、ヒドロフルオロカーボン及びヒドロフルオロエーテルは不燃性であり、安全性に優れている。一般に、含フッ素重合体の比重は1.5〜2.2と大きいため、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)を、水及びフッ素原子を有さない有機溶剤に分散させた場合に、短時間で沈降してしまい、プライマー組成物として取り扱いにくくなる。
含フッ素分散媒(Z)の沸点は、50〜200℃であり、55〜180℃が好ましく、65〜150℃が特に好ましい。含フッ素分散媒の沸点が50℃未満であると、乾燥が速すぎるために、例えばスプレー法により塗布する場合に、ノズルへの付着やノズルの閉塞を生じやすい。また、含フッ素分散媒の沸点が200℃超であると、乾燥が遅すぎるために、塗布後の塗膜が乾きにくくなる。
含フッ素分散媒(Z)のカウリブタノール値(以下、「KB値」ともいう。)は、特に限定されないが、30以下であることができ、20以下が好ましく、10以下が特に好ましい。含フッ素分散媒(Z)のKB値が30超であると、含フッ素分散媒(Z)により接着性樹脂からなる粉体(Y)の膨潤及び軟化が生じ、接着性樹脂の分散液中で分散安定性が低下する傾向がある。KB値は、25℃においてカウリ樹脂のブタノール溶液20gを三角フラスコに入れ、標準活字用紙の上に置き、分散媒を加え、カウリ樹脂の析出による濁りによって活字が読めなくなった時のml数を示す溶解性の指標である。
以上より、含フッ素分散媒(Z)は、KB値が30以下である、ヒドロフルオロカーボン又はヒドロフルオロエーテルがより好ましい。
含フッ素分散媒(Z)の含有量は、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)100質量部に対して、20〜500質量部であり、50〜400質量部が好ましく、100〜300質量部が特に好ましい。含フッ素分散媒(Z)の含有量が、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)100質量部に対して、20質量部未満であると、プライマー組成物の粘度がより高くなるために塗布しにくく、膜厚が不均一になりやすい。また、含フッ素分散媒(Z)の含有量が、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)100質量部に対して、500質量部超であると、プライマー組成物の粘度がより低くなるために塗布から乾燥までの間にたれ易く塗布むらを生じる。なお、含フッ素分散媒(Z)の含有量は、塗布方法に合わせてプライマー組成物が最適な粘度となるように選ぶことができる。
[更なる成分]
プライマー組成物は、本発明の効果を奏する範囲内で更なる成分を含有することができる。このような成分として、非反応性含フッ素重合体からなる粉体、着色剤、補強剤、有機溶剤、熱安定剤等が挙げられる。更なる成分の含有量は、特に限定されないが、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)及び接着性樹脂からなる粉体(Y)及び含フッ素分散媒(Z)の合計100質量部に対して、100質量部以下とすることができ、0.1〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
プライマー組成物は、非反応性含フッ素重合体からなる粉体を含有してもよい。ここで、非反応性含フッ素重合体からなる粉体は、前記の反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)の定義における(C1)/(P)がモル比で1/10,000未満の含フッ素重合体からなる粉体を意味する。(C1)/(P)がモル比で1/10,000未満であることを除き、非反応性含フッ素重合体からなる粉体は、好ましいものを含み反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)において前記したとおりである。非反応性含フッ素重合体からなる粉体の具体例として、旭硝子社製フルオン(登録商標)TL−081、Z−8820X、LM−2150(いずれも、架橋性官能基と重合性不飽和結合とを有するモノマーに基づく繰り返し単位(C1)を有しない)などが挙げられる。
非反応性含フッ素重合体からなる粉体の平均粒径は、1〜1,000μmであるのが好ましく、5〜300μmであるのがより好ましく、10〜200μmであるのが特に好ましい。非反応性含フッ素重合体からなる粉体の平均粒径が1μm以上であると、付着量が少なすぎず所定厚みに加工するための重ね塗り回数が少なくなり、1,000μm以下であると、表面の平滑性が保たれる傾向がある。非反応性含フッ素重合体からなる粉体の平均粒径は、レーザー回折散乱粒度分布装置を用いて測定した場合の体積基準のメジアン径である。
非反応性含フッ素重合体からなる粉体の含有量は、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)及び接着性樹脂からなる粉体(Y)の合計100質量部に対して、50質量部以下とすることができ、0.1〜10質量部であるのが好ましく、0.1〜3質量部であるのが特に好ましい。
プライマー組成物は、着色剤であるカーボンブラック、グラファイト、コバルトブルー、群青、酸化チタン等の顔料、補強材であるガラス繊維、カーボン繊維、カーボンナノチューブ、導電性カーボンブラック、他の合成樹脂粉体、防腐剤等を含有してもよい。これらの成分の含有量は、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)及び接着性樹脂からなる粉体(Y)の合計100質量部に対して、10質量部以下とすることができ、0.1〜5質量部であるのが好ましく、0.1〜3質量部であるのが特に好ましい。
また、銅化合物、錫化合物、鉄化合物、鉛化合物、チタン化合物及びアルミニウム化合物などの熱安定剤は、プライマー組成物の接着効果を阻害しない範囲で含有させてもよい。熱安定剤の比表面積は、0.1〜100m/gであることが好ましく、1〜70m/gであることがより好ましく、5〜50m/gであることが特に好ましい。比表面積は、BET法による。熱安定剤の含有量は、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)及び接着性樹脂からなる粉体(Y)の合計100質量部に対して、1質量部未満とすることができ、0.1質量部未満であるのが好ましく、実質的に含有しないのがより好ましい。
プライマー組成物は、乾燥速度の調整のためにエタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチルセロソルブ、エチルカルビトール、トルエン、キシレン等の有機溶剤を、液の安定性を損ねない範囲で少量含有してもよい。有機溶剤の含有量は、特に限定されないが、含フッ素分散媒(Z)100質量部に対して0〜20質量部とすることができ、0〜10質量部であるのが好ましい。
[表面張力]
プライマー組成物の表面張力は、特に限定されないが、30mN/m以下であることが好ましく、25mN/m以下がより好ましく、20mN/m以下が特に好ましい。表面張力が30mN/m以下であると、はじきやレベリング不良による厚みむらが抑制される傾向がある。プライマー組成物の表面張力の下限は、特に限定されないが、15mN/m以上であるのが好ましい。表面張力は、含フッ素分散媒(Z)の種類及び量を調整することにより、所望の範囲に制御できる。
[粘度]
プライマー組成物の粘度は、特に限定されないが、回転粘度計での60rpmでの測定値が10〜10,000mPa・sであるのが好ましく、20〜2,000mPa・sであるのがより好ましく、50〜800mPa・sであるのが特に好ましい。組成物の粘度が10mPa・s以上であると、塗布から乾燥までの間にたれが抑制され、10,000mPa・s以下であると、塗布作業性が良好であり、膜厚が均一になりやすい傾向がある。粘度は、25℃で測定した値である。回転粘度計として、ブルックフィールド型回転粘度計が挙げられる。また、高粘度のプライマー組成物を調製し、塗布方法に合わせて最適な粘度となるように含フッ素分散媒(Z)で希釈して使用することも可能である。
プライマー組成物のチクソトロピーインデックス値(以下、TI値という)は、特に限定されないが、2〜10の範囲にあるものが好ましい。TI値とは、回転粘度計で6rpmの測定値を60rpmの測定値で除して算出された数値をいい、配合剤や増粘剤の濃度調整により好適な範囲とすることができる。TI値は3〜8の範囲のものがよりに好ましく、3〜7のものが特に好ましい。TI値が2以上であると、塗布から乾燥までの間にたれが生じにくく、組成物中の成分等が沈降しにくく、保存安定性が向上し、10以下であると、塗布むらがあった場合でもレベリングによる平滑化がされやすく、泡が消えやすくなり、膜厚むらを生じにくい傾向がある。更に、TI値が2〜10であると、好適な塗装ができるほか、組成物中の成分が沈降しにくくなり、保存安定性が向上する傾向がある。
本発明において、プライマー組成物は、各成分を混合することにより製造することができる。各成分を混合する順序は任意であるが、含フッ素分散媒(Z)、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)、接着性樹脂からなる粉体(Y)、その他成分をこの順で容器に入れ、羽根付き攪拌機で1分間から60分間程度攪拌して混合することができる。
(積層体)
本発明において、積層体は、基材表面に、プライマー組成物の熱処理物であるプライマー層と、フッ素樹脂からなるトップコート層とがこの順に積層されたものである。積層体は、更に、トップコート層の表面に、トップコート層とは異なる材質である有機物又は無機物のコーティング層が積層されていてもよい。
積層体は、耐熱性、耐アルカリ性等の耐久性、及び接着性に優れる。
[基材]
本発明における基材としては、特に限定されず、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、錫、チタン、クロム、ニッケル、亜鉛等の金属、ガラス、セラミックス等の耐熱材料が挙げられ、鉄、ステンレス鋼、アルミニウムが好ましい。
本発明における基材の形状としては、特に限定されず、パイプ、チューブ、フィルム、板、タンク、ロール、ベッセル、バルブ、エルボー等が挙げられ、各種の容器、パイプ、チューブ、タンク、配管、継ぎ手、ロール、オートクレーブ、熱交換器、蒸留塔、治具類、バルブ、撹拌翼、タンクローリ、ポンプ、ブロワのケーシング、遠心分離機、調理機器等に使用できる。
[プライマー層]
プライマー層は、プライマー組成物の熱処理物である。プライマー組成物については、好ましいものも含め、前記したとおりである。プライマー層の厚みは、1〜1,000μmが好ましく、5〜500μmがより好ましく、10〜200μmが特に好ましい。プライマー層の厚みが1μm以上であると、接着性が十分に発揮され、1,000μm以下であると、発泡やふくれが生じにくい傾向がある。
[トップコート層]
フッ素樹脂からなるトップコート層は、フッ素樹脂からなる粉体又はフッ素樹脂からなる粉体を含む粉体トップコート組成物を付与し、硬化させることにより得られる層である。ここで、トップコート組成物には、前記した接着性樹脂からなる粉体(Y)を含まない。
積層体が、トップコート層を有することで、耐熱基材表面に高い密着性を有しつつ、必要な膜厚を有する含フッ素重合体の塗膜を得ることができる。
<フッ素樹脂からなる粉体又はフッ素樹脂からなる粉体を含む粉体トップコート組成物>
フッ素樹脂からなる粉体は、常温(例えば、25℃)で固体のフッ素樹脂の粉体である。フッ素樹脂としては、特に限定されないが、含フッ素モノマーの単独又は共重合体が挙げられる。含フッ素モノマーは、前記した反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)で前記した含フッ素モノマーが挙げられる。また、フッ素樹脂は、前記した、架橋性モノマー及びその他のモノマー等のモノマーをコモノマー成分とした共重合体であってもよい。
フッ素樹脂として、上記の反応性含フッ素重合体及び非反応性含フッ素重合体が挙げられ、非反応性フッ素重合体が好ましく、非反応性エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体(以下、「非反応性ETFE」ともいう。)がより好ましい。非反応性フッ素重合体は安定であるため、トップコート層がより安定性に優れる傾向がある。すなわち、本発明において、フッ素樹脂からなるトップコート層は、非反応性フッ素樹脂からなる粉体又は非反応性フッ素樹脂からなる粉体を含有する粉体トップコート組成物を用いて得られるのが好ましい。
フッ素樹脂からなる粉体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素樹脂の平均粒径及びMFR値等は、好ましいものも含め、反応性含フッ素重合体及び非反応性含フッ素重合体で前記したとおりである。
フッ素樹脂からなる粉体を含む粉体トップコート組成物は、前記した熱安定剤を含有することが好ましい。熱安定剤の含有率は、粉体トップコート組成物100質量部に対して、1×10−8〜5質量部が好ましく、1×10−7〜1質量部がより好ましく、5×10−7〜0.1質量部が特に好ましい。
<トップコート層の厚み>
トップコート層の厚みは、10〜5,000μmの範囲で最適な厚みを選ぶことができる。基材表面の溌水性向上、防汚性向上、光沢性向上などの目的では10〜100μmの厚みが好ましく、基材表面の潤滑性向上や表面保護の目的では50〜500μmの厚みが好ましく、有機薬品や無機薬品に対する基材の保護の目的では200〜1,000μmの厚みが好ましく、特に非常に長期の耐久性が必要とされる場合には1,000〜5,000μmの厚みが好ましい。薄すぎる場合には被覆効果が充分でなく、厚すぎる場合には塗装回数が増えるために不経済であるほか、基材との熱膨張係数の相違による応力ひずみを生じやすくなり好ましくない。
[トップコート層とは異なる材質である有機物又は無機物のコーティング層]
トップコート層とは異なる材質である有機物又は無機物のコーティング層(以下「更なるコーティング層」ともいう)は、着色層、ハードコート層、浸透防止層等が挙げられる。積層体が更なるコーティング層を含むことにより、積層体が、色づけ効果、ハードコート効果、浸透防止効果等の更なる効果を有する傾向がある。更なるコーティング層の厚みは、特に限定されないが、0〜1,000μmとすることができ、0〜500μmであるのが好ましい。更なるコーティング層の厚みは、更なるコーティング層により付与される特性に応じて調整することができる。
[剥離強度]
本発明の積層体において、トップコート層の基材に対する接着力は、90度剥離強度を測定することにより調べることができる。接着力は高いほどよいが、20N/cm以上の剥離強度であることが好ましく、40N/cm以上の剥離強度であることがより好ましく、50N/cm以上の剥離強度であることが特に好ましい。剥離強度が20N/cm未満である場合には接着の信頼性が低く、使用環境によっては塗膜の剥離やブリスターや基材の腐食劣化につながるため好ましくない。
(積層体の製造方法)
本発明において、積層体は、基材表面にプライマー層を得る工程、及びプライマー層の表面にトップコート層を得る工程を含み、場合により、トップコート層の表面に更なるコーティング層を得る工程を含む製造方法により得られる。
[プライマー層の製造方法]
プライマー層は、基材表面に本発明のプライマー組成物を付与してプライマー組成物層を形成する工程と、プライマー組成物層を熱処理してプライマー層を形成する工程とを含む製造方法により得られる。熱処理により、プライマー組成物層に含まれる含フッ素分散媒(Z)が除去されると共に、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)及び接着性樹脂からなる粉体(Y)が、それぞれ単独で、好ましくは反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)及び接着性樹脂からなる粉体(Y)が化学反応し、硬化して、プライマー層が形成される。
プライマー組成物の付与方法としては、特に限定されないが、エアー式スプレー塗装法、エアレススプレー塗装法、浸漬塗装法、刷毛塗り法、静電塗装法等の公知の液体塗装方法が適用できる。中でも、エアー式スプレー塗装法又はエアレススプレー塗装法が簡便であり大面積を均一な厚みで塗布することができるため好ましい。
基材表面に形成されるプライマー組成物層の厚みは、好ましいものも含み、前記したプライマー層の厚みとなるような厚みが挙げられる。また、プライマー組成物の厚みが前記の範囲にあれば、プライマー組成物を1回付与することで十分な接着性を発現するが、プライマー組成物を複数回付与してもよい。なお、プライマー組成物の厚みは、熱処理後のプライマー層の厚みに応じて調整することができる。
基材表面に付与されるプライマー組成物の付与量は、前記したプライマー組成物層の厚みとなる量であれば特に限定されず、固形分として1.6〜1,600g/mとすることが好ましく、8.0〜800g/mとすることがより好ましい。
プライマー組成物層の熱処理は、所定温度に設定した電気炉やガス炉や赤外加熱炉などの任意の加熱手段により行なうことができる。熱処理温度は、260〜340℃が好ましく、280〜320℃がより好ましく、290〜310℃が特に好ましい。熱処理温度が260℃以上であると、焼成不足による接着力低下や気泡残りが生じず、340℃以下であると、変色や発泡の生成が抑制される傾向がある。熱処理時間は、熱処理温度により異なるが、1〜180分の間での熱処理が好ましく、より好ましくは5〜120分であり、特に好ましくは10〜60分である。熱処理時間が、1分以上であると、焼成不足による接着力低下や気泡残りが生じず、180分以下であると、変色や発泡の生成が抑制される傾向がある。
プライマー組成物の付与に先だって、200℃以下の温度で基材を予熱しておいてもよい。また、プライマー組成物の付与前に基材表面をサンドブラスト処理やエッチング処理や金属溶射処理等により粗面化してもよく、表面に付着した異物を除去するために溶剤洗浄を行ってもよい。これにより、接着性が向上する傾向がある。ここで、サンドブラスト処理の場合、表面粗さRaは接着性や用途に応じて1〜100μmの範囲で加工できる。また、本発明のプライマー組成物の付与後、熱処理に先だって室温(例えば、25℃)〜200℃程度の温度で前処理を行い、プライマー組成物層に含まれる含フッ素分散媒(Z)を除去しておいてもよい。
[トップコート層の製造方法]
トップコート層は、基材表面に積層されたプライマー層の表面に、フッ素樹脂からなる粉体又はフッ素樹脂からなる粉体を含むトップコート組成物を付与して、フッ素樹脂からなる粉体層又はフッ素樹脂からなる粉体を含むトップコート組成物層を形成する工程と、フッ素樹脂からなる粉体層又はフッ素樹脂からなる粉体を含むトップコート組成物層を熱処理してトップコート層を形成する工程とを含む製造方法により得られる。
フッ素樹脂からなる粉体又はフッ素樹脂からなる粉体を含むトップコート組成物の付与方法としては、特に限定されないが、静電塗装法、流動浸漬法、回転成型法など公知の粉体塗装方法が適用できるが、静電塗装法が簡便に均一な厚みで塗布することができるため好ましい。
プライマー層の表面に形成されるフッ素樹脂からなる粉体層又はフッ素樹脂からなる粉体を含むトップコート組成物層の厚みは、好ましいものも含み、前記したトップコート層の厚みとなるような厚みが挙げられる。また、フッ素樹脂からなる粉体層又はフッ素樹脂からなる粉体を含むトップコート組成物層の厚みが前記の範囲にあれば、フッ素樹脂からなる粉体又はフッ素樹脂からなる粉体を含むトップコート組成物を1回付与することで十分であるが、フッ素樹脂からなる粉体又はフッ素樹脂からなる粉体を含むトップコート組成物を複数回付与してもよい。なお、フッ素樹脂からなる粉体層又はフッ素樹脂からなる粉体を含むトップコート組成物層の厚みは、焼成後の厚みに応じて調整することができる。また、複数回トップコート層を形成した場合、この複数回形成したトップコート層をまとめてトップコート層とする。
プライマー層の表面に付与されるフッ素樹脂からなる粉体又はフッ素樹脂からなる粉体を含むトップコート組成物の付与量は、前記したトップコート層の厚みとなる量であれば特に限定されない。
フッ素樹脂からなる粉体層又はフッ素樹脂からなる粉体を含むトップコート組成物層の熱処理は、プライマー層の表面にトップコート層が形成される条件であれば特に限定されないが、所定温度に設定した電気炉やガス炉や赤外加熱炉などの任意の加熱手段により行なうことができる。熱処理温度は、260〜340℃であるのが好ましく、280〜320℃であるのがより好ましく、290〜310℃であるのが特に好ましい。熱処理温度が260℃以上であると、焼成不足によるボイドや気泡残りが生じにくく、340℃以下であると、変色や発泡が生じにくい傾向がある。熱処理時間は、熱処理温度により異なるが、1〜180分の間での熱処理が好ましく、より好ましくは5〜120分であり、特に好ましくは10〜60分である。熱処理時間が1分以上であると、焼成不足による気泡残りが生じにくく、180分以下であると変色やタレが生じにくい傾向がある。
[トップコートとは異なる材質である有機物又は無機物のコーティング層の製造方法]
更なるコーティング層は、トップコート層の表面に、トップコートとは異なる材質である有機物又は無機物のコーティング層のための組成物を付与する工程と、更なるコーティング層を形成する工程を含む製造方法により得られる。トップコートとは異なる材質である有機物又は無機物のコーティング層の厚みは、特に限定されないが、前記した更なるコーティング層の厚みとなるような厚みが挙げられる。更なるコーティング層のための組成物及び更なるコーティング層の製造方法の条件は、特に限定されず、更なるコーティング層を形成するために通常用いられる条件が挙げられる。
以下に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。例1〜7が実施例であり、例8〜11が比較例である。なお、各例の塗布や評価は、以下に記載の方法にしたがった。
[塗布厚]電磁式膜厚計により5点測定し平均値を求めた。
[粘度]ブルックフィールド社製回転粘度計を用いて、25℃で粘度を測定した。
[表面張力]デュヌイ式表面張力計を用いて、25℃で表面張力を測定した。
[MFR]島津製作所製フローテスタを用いて、温度300℃、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときの反応性ETFEの押出し速度を測定して、MFRを測定した。
[外観の判定]プライマー層付き基材や塗装試験片の塗膜外観に異常がみられない場合にはAランクとし、たれや厚みむら生ずる場合や、塗膜の厚みむらや気泡やふくれ等の異常が確認された場合には以下基準によりランク付けし、Dランクは不可とした。
非常に均一な外観 : Aランク
概ね均一な外観 : Bランク
若干の異常がみられる : Cランク
著しい異常がみられる : Dランク
[散布作業性]プライマー組成物の塗装時の、ノズルへの粉体の付着やノズル閉塞などの異常の有無について、以下基準によりランク付けし、Dランクは不可とした。
異常なし : Aランク
若干ノズルへ粉体が付着 : Bランク
多量にノズルへ粉体が付着 : Cランク
ノズル閉塞し散布続行不可 : Dランク
[初期接着性評価]塗装試験片表面にカッターナイフを用いて10mm間隔の切り込みを入れ、塗膜の一部を剥離した後、引張り試験機のチャックに固定し、引張り速度50mm/分で90度剥離強度を測定した。以下基準によりランク付けし、Dランクは不可とした。
剥離強度≧50.0N/cm : Aランク
40.0以上50.0N/cm未満 : Bランク
20.0以上40.0N/cm未満 : Cランク
<20.0N/cm : Dランク
[耐熱水性]塗装試験片を、プレッシャークッカー(高温蒸気圧力釜)により130℃24時間処理後、初期接着性評価と同様にトップコート層の剥離強度を測定した。得られた耐熱水性試験後の剥離強度について、初期剥離強度の評価と同様にランク付けを行なった。
[耐アルカリ性]塗装試験片を、80℃の10%水酸化ナトリウム水溶液中に300時間浸漬後、初期接着性評価と同様にトップコート層の剥離強度を測定した。得られた耐アルカリ性試験後の剥離強度について、初期剥離強度の評価と同様にランク付けを行なった。
[平均粒径]0.1%の界面活性剤水溶液中に各粉体を分散し、堀場製作所製レーザー散乱粒度分布計LA−920を使用して平均粒径を測定した。
[保存安定性]プライマー組成物を内容積100ccのガラス製サンプルビンに入れ、300時間、25℃で保管後、低部に発生した沈降物を再分散させるために上下反転を繰り返し、完全に再分散できた回数に基づいてランク付けを行なった。
50回以下で再分散 : Aランク
51〜100回 : Bランク
101〜200回 : Cランク
201回以上 : Dランク
[例1]
<反応性含フッ素重合体からなる粉体(反応性FR−1)の製造>
反応性含フッ素重合体として、TFEに基づく繰り返し単位/エチレンに基づく繰り返し単位/IAHに基づく繰り返し単位/CH=CH(CFFに基づく繰り返し単位がモル比で57.6/40.0/1.8/0.6(すなわち、(C2)/((A)+(B))は、モル比で1.84/100である)であり、融点が242℃であるETFEを溶液重合し、造粒処理することにより得られた粒子をアズワン社製冷凍粉砕機TPH−01により粉砕し、平均粒径が20μmである反応性ETFE粉末(反応性FR−1)を得た。MFR値は25g/10分であった。
<接着性樹脂からなる粉体(EP)の製造>
三菱化学社製エポキシ樹脂1004K(軟化点97℃)をアズワン社製冷凍粉砕機TPH−01により粉砕し、エポキシ樹脂からなる粉体である平均粒径23μmの接着性樹脂からなる粉体(EP)を得た。
<プライマー組成物(P−1)の製造>
旭硝子社製アサヒクリン(登録商標)AC−6000(沸点114℃、KB値5)を分散媒−1として使用した。反応性FR−1を100質量部、EPを10質量部、分散媒−1を170質量部の比率で配合して攪拌し、プライマー組成物(P−1)を作製した。
このプライマー組成物は、300時間経過後に沈降物を生じていたが、上下反転させることにより容易に再分散し、保存安定性は良好であった。
<積層体の製造>
縦100mm、横150mm、厚さ1mmのアルミニウム基板を試験用基材とした。この試験用基材の表面に、液体塗料用エアー式スプレーガン(明治機械製作所社製)を使用してプライマー組成物(P−1)を塗布し、オーブン中に吊り下げて300℃10分間焼成し、厚み33μmのプライマー層を形成し、プライマー層付き基材を得た。
ついで、その表面に、トップコート用の非反応性含フッ素重合体からなる粉体(旭硝子社製フルオン(登録商標)ETFE TL−081)(非反応性FR)を静電塗装し、300℃で10分間焼成し、この静電塗装及び焼成工程を4回繰り返すことにより、合計厚み510μmのトップコート層を形成し、塗装試験片を得た。トップコート層の初期剥離強度は78.7N/cmであり、耐熱水性試験後及び耐アルカリ性試験後にも充分な剥離強度を示した。
[例2]〜[例6]
表1に示すように、反応性含フッ素重合体からなる粉体及び接着性樹脂からなる粉体の種類、配合、熱処理温度を変えて、プライマー組成物(P−2)〜プライマー組成物(P−6)を作製し、プライマー層付き基材及び塗装試験片を得た。例1と同様の評価を行なったところ、良好な結果が得られた。ここで、反応性含フッ素重合体からなる粉体(反応性FR−2)は、例1で作製した反応性含フッ素重合体からなる粉体(反応性FR−1)の粉砕条件を変えることにより得た。
[例7]
表2中の例7として示す配合でプライマー組成物(P−7)を作製し、プライマー層付き基材及び塗装試験片を得た。例1と同様の評価を行なったところ、剥離強度が良好であった。
[例8(比較例)]
表2中の例8として示す配合でプライマー組成物(P−8)を作製し、プライマー層付き基材及び塗装試験片を得た。例1と同様の評価を行なったところ、接着性樹脂からなる粉体を使用しないと考えられるために、剥離強度が低かった。
[例9(比較例)]
表2中の例9として示す配合でプライマー組成物(P−9)を作製し、プライマー層付き基材及び塗装試験片を得た。例1と同様の評価を行なったところ、反応性含フッ素重合体からなる粉体を使用しないと考えられるために、剥離強度が低かった。
[例10(比較例)]
表2中の例10として示す配合で、沸点の低いCFC−113を使用してプライマー組成物(P−10)を作製し、プライマー層付き基材及び塗装試験片を得た。例1と同様の評価を行なったところ、プライマー組成物の保存安定性、散布作業性が不良であり、剥離強度、特に耐熱水性試験後及び耐アルカリ性試験後の剥離強度が低かった。
[例11(比較例)]
表2中の例11として示す配合で、水に界面活性剤(トライトンX−100)を溶解させたものを分散媒として使用し、プライマー組成物(P−11)を作製し、プライマー層付き基材及び塗装試験片を得た。例1と同様の評価を行なったところ、プライマー組成物の保存安定性が不良であった。また、プライマー層にはじきが生じ、外観が不良であった。また、プライマー組成物液は泡立ちやすく、作業性が低かった。
反応性FR−1:反応性ETFE粉体、平均粒径20μm、真比重=1.78、MFR=25g/10分
反応性FR−2:反応性ETFE粉体、平均粒径10μm、真比重=1.78、MFR=25g/10分
非反応性FR:旭硝子社製フルオンETFE TL−081、平均粒径76μm、真比重=1.74、MFR=22g/10分
EP:三菱化学社製ビスフェノール型エポキシ樹脂パウダー、jER(登録商標)1004k粉砕品、分子量1,650、エポキシ当量925、軟化点97℃、平均粒径23μm
PH:InChem社製フェノキシ樹脂パウダーPKHP−200、分子量52,000、ガラス転移温度92℃、平均粒径28μm
PES:住友化学社製ポリエーテルスルホンパウダー、スミカエクセル(登録商標)4100P粉砕品、ガラス転移温度225℃、平均粒径21μm
PA:ダイセルエボニック社製ナイロン12パウダー、ベストジント(登録商標)2070、融点175〜180℃、平均粒径5μm
PAI:ソルベイソレクシス社製ポリアミドイミドパウダー、TORLON(登録商標)400TF、融点300℃、平均粒径35μm
PPS:東レ社製ポリフェニレンスルフィドパウダー、トレパール(登録商標)PPS、融点280℃、平均粒径30μm
MC:日産化学社製メラミンシアヌレートパウダー、MC−6000、分解開始温度200℃、平均粒径3μm
界面活性剤:ダウケミカル社製トライトン(登録商標) X−100(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)

オゾン破壊係数 : CFC−11を1とした場合の相対比
地球温暖化係数 : 二酸化炭素を1とした場合の相対比、100年
本発明のプライマー組成物は、従来のプライマー組成物と比較して基材への接着性に優れ、保存安定性に優れ、均一塗装性や耐久性に優れる。本発明のプライマー組成物は、金属、ガラス、セラミックス等の耐熱基板表面に塗装でき、含フッ素重合体によるコーティング、ライニング、表面処理のプライマーとして有用である。本発明のプライマー組成物及び塗装物品は、各種の容器、パイプ、チューブ、タンク、配管、継ぎ手、ロール、オートクレーブ、熱交換器、蒸留塔、治具類、バルブ、撹拌翼、タンクローリ、ポンプ、ブロワのケーシング、遠心分離機、調理機器等に使用できる。

Claims (6)

  1. 反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)と、接着性樹脂からなる粉体(Y)と、沸点が50〜200℃の含フッ素分散媒(Z)とを含有し、反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)100質量部に対して、接着性樹脂からなる粉体(Y)の含有量が1〜30質量部であり、沸点が50〜200℃の含フッ素分散媒(Z)の含有量が20〜500質量である、プライマー組成物。
  2. 沸点が50〜200℃の含フッ素分散媒(Z)が、分子中に塩素原子を含まず、カウリブタノール値が30以下である、ヒドロフルオロカーボン又はヒドロフルオロエーテルである、請求項1記載のプライマー組成物。
  3. 接着性樹脂からなる粉体(Y)が、エポキシ樹脂からなる粉体、フェノキシ樹脂からなる粉体、メラミンシアヌレートからなる粉体、ポリエーテルスルホン樹脂からなる粉体、ポリアミド樹脂からなる粉体、ポリアミドイミド樹脂からなる粉体、ポリフェニレンスルフィド樹脂からなる粉体からなる群より選ばれる1種以上の粉体である、請求項1又は2記載のプライマー組成物。
  4. 反応性含フッ素重合体からなる粉体(X)が、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(A)、エチレンに基づく繰り返し単位(B)及び酸無水物基と重合性不飽和結合とを有するモノマーに基づく繰り返し単位(C2)を含有し、(A)/(B)がモル比で20/80〜80/20であり、(C2)/((A)+(B))がモル比で1/10,000〜5/100の反応性エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体からなる粉体である、請求項1〜3いずれか1項記載のプライマー組成物。
  5. 基材表面に、請求項1〜4いずれか1項記載のプライマー組成物の熱処理物であるプライマー層と、フッ素樹脂からなるトップコート層とがこの順に積層された、積層体。
  6. 基材に対する、トップコート層の剥離強度が、40N/cm以上である、請求項5記載の積層体。
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