JP2015134723A - アセチル化酵素競合阻害因子Gm16515の新規用途 - Google Patents

アセチル化酵素競合阻害因子Gm16515の新規用途 Download PDF

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Abstract

【課題】Gm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物について、従来知られていない機能に基づいて新たな用途を提供することを目的とする。【解決手段】Gm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物を、グロビン合成制御剤、特に異常ヘモグロビン症の治療用医薬組成物の有効成分として用いる。また、 Gm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物を、メラニン合成抑制剤、特に美白用組成物として用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、Gm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物の新規用途に関する。具体的には、グロビン合成制御剤およびメラニン合成抑制剤としての用途に関する。また本発明は、グロビン合成またはメラニン合成を制御(亢進または抑制)する作用を有する物質をスクリーニングする方法に関する。
ヘモグロビンはα様グロビン鎖と非α様グロビン鎖の各2分子からなる4量体で構成されており、赤血球の酸素運搬を司る。ヘモグロビンの量的・質的異常は異常ヘモグロビン症と呼ばれ、貧血状態を惹起する。中でもサラセミアは東アジアに多発する常染色体優性遺伝性の異常ヘモグロビン症である。サラセミアではα様あるいは非α様グロビン鎖のどちらか一方の合成が抑制されてグロビン合成の不均衡が生じ、貧血状態を惹起する。この貧血の病態は、(1)正常なヘモグロビン合成低下による小球性低色素性貧血、(2)合成障害を受けていないグロビン鎖の産生過剰が引き起こす溶血性貧血、この両者が混合したものであり、骨髄において効率良く赤血球が産生されない無効赤血球造血を生じる。
しかしながら、その発症機序の解明は発展途上であり、サラセミア治療の現状は対症療法である輸血に依存している。
サラセミアは地中海沿岸及び東南アジアに多く、非α様グロビン鎖に異常を呈するβサラセミアだけで6〜8千万人が保因者と考えられている。同様に遺伝性異常ヘモグロビン症である鎌状赤血球貧血は、ナイジェリアだけで15万人が罹患している。この鎌状赤血球貧血も、サラセミアと同様に発症機構の解明は発展途上であり、根治療法は骨髄移植だけである。
また近年国際交流が盛んになり、本邦においてもβサラセミアの保因者は700-1000人に1人の割合で存在することが報告されている。“輸入遺伝病”としてのサラセミア、鎌状赤血球貧血は今後更に増加することが予測出来るため、骨髄移植に依存しない新しい治療薬の開発が急務とされる。
さらに、厚生労働省が指定する特定疾患である不応性貧血の一部は、α様グロビン鎖に異常を呈するαサラセミアに起因することが明らかになっている(非特許文献1)。本邦において不応性貧血患者数は7000人と言われているが、高齢者に多い疾患であり、今後増加することが予測出来る。また、高齢者であるがゆえに骨髄移植の対象から外れることが多く、本疾患においても骨髄移植に依存しない新しい治療薬の開発が必要である。
また、シミやソバカスなどの色素沈着を抑えることは、若さと美しさを保つうえで重要な要素であり、特に女性にとっては重大な関心事である一方、環境汚染等によるオゾン層の破壊により表皮に届く紫外線量は年々増加する傾向にあり、紫外線による肌のシミ、ソバカス、色黒などの肌の悩みは依然として多い。
シミやソバカスなどの色素沈着は、例えばホルモン分泌異常や紫外線照射等を受けて、活性化した色素細胞(メラノサイト)中でチロシナーゼなどの作用によりチロシンからメラニンが生成し、これが皮膚組織に沈着するために生じる。メラニンの生成は、チロシンがチロシナーゼの作用を受けることが引き金となり、酵素的または非酵素的酸化作用を受けて段階的な反応を経てメラニンに変化することによって生じる。このため、美白のアプローチとして、従来からチロシナーゼの活性を直接的に阻害することによってメラニンの合成を抑制する方法が用いられている。またその他の方法として、メラノサイト刺激物質(情報伝達物質)を阻害し、メラノサイトの活性化を遮断することにより、結果的にメラニン生成を抑制する方法や、メラニンの排泄を促進する方法(ターンオーバー促進)等もある。
Higgs et al.,Ann NY Acad Sci, 2005 Kasem Kulkeaw et al., Biochemical and Biophysical Research Communications (2010) 394, 4, 859-864 Kasem Kulkeaw et al., Genes to Cells (2011) 16, 358-367 Rawls, J.F. & Johnson, S.L., Development (2000) 127, 3715-3724 Rawls, J.F. & Johnson, S.L., Development (2001) 128, 1943-1949 White, R.M.& Zon, L.I., Cell Stem (2008) 3, 242-252 Lister, J.A., et al., Development (1999) 126, 3757-3767 Parichy, D.M., et al., Development (2000) 127, 3715-3724 Kejsh, R.N. & Eisen, J.S., Development (2000) 127, 515-525 Drissen R, et al., Mol Cell Biol. 2005 Jun;25(12):5205-14 Whitelaw E, et al., Mol Cell Biol. 1990 Dec;10(12):6596-606 Tsiftsoglou AS, et al., IUBMB Life. 2009 Aug;61(8):800-30.
本発明は、Gm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物について、従来知られていない機能に基づいて新たな用途を提供することを目的とする。具体的には、Gm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物について、グロビン合成制御剤としての用途、及びメラニン合成抑制剤としての用途を提供する。
さらに本発明は、今回新たに見出されたGm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物の機能を利用して、グロビン合成またはメラニン合成を制御(亢進または抑制)する作用を有する物質をスクリーニングし取得する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、既にゼブラフィッシュを17℃の低温で飼育することにより、貧血状態を呈したゼブラフィッシュが得られることを確認しているが(非特許文献2)、この貧血ゼブラフィッシュについて遺伝子解析をしていたところ、造血組織である腎臓において有意に発現が低下している遺伝子を見出し、当該遺伝子が、既にマウスで同定されているGm16515のホモログであることを確認した(実験例1、図2)。
そこで、本発明者らは、マウスGm16515について、マウス造血幹細胞の分化成熟過程におけるGm16515発現レベルを調べたところ、グロビン合成が盛んな時期に一致してGm16515の発現レベルが亢進することを確認し(実験例2、図3)、Gm16515の発現とグロビン合成との間に何らかの関係があると考えた。この考えのもと、更なる実験により、マウスのフレンド白血病細胞株にGm16515を過剰発現させると、ヒストンH4蛋白質のアセチル化が阻害されると共に、グロビン遺伝子であるβ major globin遺伝子mRNAの発現が抑制されること(実験例3、図4):ゼブラフィッシュの胚を利用して、逆にGm16515のスプライシングを阻害すると、グロビン遺伝子(hbb1遺伝子)mRNAの発現が亢進することを確認し(実験例4、図5)、Gm16515またはその遺伝子産物がグロビン合成を負に制御していることを見出した。当該Gm16515またはその遺伝子産物の作用は、Gm16515タンパクが、アセチル化酵素と競合して、アセチルCoAを捕捉することで、グロビン蛋白質のアセチル化を阻害することによるものであり(実験例5〜6、図8〜10)、その意味からGm16515タンパクは、従来アセチル化の阻害を担うと考えられてきた“脱アセチル化酵素”とは異なる作用を保持する、新たなアセチル化酵素競合因子と位置づけることができる。
さらに、本発明者らは、既にゼブラフィッシュを17℃の低温で飼育することで、ゼブラフィッシュの皮膚への色素沈着が変わることを確認しているが(非特許文献3)、Gm16515は上記するヘモグロビン合成を抑制するだけではなく、黒色色素であるメラニンの合成をも抑制する作用を有することを確認した(実験例4、図6〜7)。
本発明は、これらの知見に基づいて完成したものであり、下記の実施形態を有するものである。
(I)グロビン合成制御剤、及びそれを含む医薬組成物
(I-1)Gm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物を有効成分とするグロビン合成制御剤。
(I-2)グロビン合成を負に制御するものである、(I-1)記載のグロビン合成制御剤。
(I-3)Gm16515若しくはそのホモログの遺伝子産物の造血細胞における機能発現を抑制する物質を有効成分とするグロビン合成制御剤。
(I-4)上記機能発現が、造血細胞におけるGm16515若しくはそのホモログが有するアセチルCoA捕捉機能である、(I-3)記載のグロビン合成制御剤。
(I-5)上記機能発現が、造血細胞におけるGm16515もしくはそのホモログの遺伝子発現抑制に基づくものである、(I-3)記載のグロビン合成制御剤。
(I-6)グロビン合成を正に制御するものである、(I-3)乃至(I-5)のいずれかに記載するグロビン合成制御剤。
(I-7)(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載するグロビン合成制御剤、及び薬学的に許容される担体または添加剤を含有する、異常ヘモグロビン症の治療用医薬組成物。
(I-3)異常ヘモグロビン症が、サラセミア、鎌状赤血球貧血、または不応性貧血である(I-7)記載の医薬組成物。
(II)メラニン合成抑制剤
(II-1)Gm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物を有効成分とするメラニン合成抑制剤。
(II-2)(II-1)記載のメラニン合成抑制剤を含有する、美白用組成物。
(III)グロビン合成またはメラニン合成を負に制御する物質のスクリーニング方法
(III-1)下記の工程を有する、グロビン合成またはメラニン合成を負に制御する物質をスクリーニングする方法:
(1)Gm16515またはそのホモログを発現しえる細胞と被験物質を接触させる工程、
(2)上記細胞のGm16515またはそのホモログの発現量(被験測定値)と、被験物質を接触させない対照のGm16515またはそのホモログを発現しえる細胞のGm16515またはそのホモログ発現量(対照測定値)を測定する工程、
(3)上記被験測定値が対照測定値よりも高い場合に、当該被験物質を、上記グロビン合成またはメラニン合成を負に制御する物質として選択する工程。
(III-2)グロビン合成を負に制御する物質(グロビン合成抑制物質)をスクリーニングする方法であって、Gm16515またはそのホモログを発現しえる細胞として、末梢血,骨髄細胞、EEB,F-36P、K562、KU-812-F、胚性幹細胞に由来するヒト赤血球細胞、人工多能性細胞(以上、ヒト由来細胞)、末梢血,骨髄細胞、F5-5,fl、フレンド赤白血病細胞株、TSA8、32D、C-8052 & C-8049、赤白血病細胞、胚性幹細胞、人工多能性細胞(以上、マウス由来細胞)、末梢血,腎髄細胞(以上、ゼブラフィッシュ由来細胞)を用いることを特徴とする(III-1)記載の方法。
(III-3)メラニン合成を負に制御する物質(メラニン合成抑制物質)をスクリーニングする方法であって、Gm16515またはそのホモログを発現しえる細胞として、胚または成体の皮膚から採取したメラノブラスト及びメラノサイト、B16メラノーマ、B16メラノーマ4A5、胚性幹細胞、人工多能性細胞(以上、マウス由来細胞)、HWV-I & HWV-II、G-361、HOMM、胚性幹細胞、人工多能性細胞(以上、ヒト由来細胞)、胚または成体のゼブラフィッシュに由来するメラノブラスト及びメラノサイト、GEM-81、GEM-199 & GEM-218(以上、金魚由来細胞)を用いることを特徴とする(III-1)記載の方法。
(IV)グロビン合成またはメラニン合成を正に制御する物質のスクリーニング方法
(IV-1)下記の工程を有する、グロビン合成またはメラニン合成を正に制御する物質をスクリーニングする方法:
(1)Gm16515またはそのホモログを発現しえる細胞と被験物質を接触させる工程、
(2)上記細胞のGm16515またはそのホモログの発現量(被験測定値)と、被験物質を接触させない対照のGm16515またはそのホモログを発現しえる細胞のGm16515またはそのホモログ発現量(対照測定値)を測定する工程、
(3)上記被験測定値が対照測定値よりも低い場合に、当該被験物質を、上記グロビン合成またはメラニン合成を正に制御する物質として選択する工程。
(IV-2)グロビン合成を正に亢進する物質(グロビン合成亢進物質)をスクリーニングする方法であって、Gm16515またはそのホモログを発現しえる細胞として、EEB,F-36P、K562、KU-812-F、胚性幹細胞に由来するヒト赤血球細胞、人工多能性細胞(以上、ヒト由来細胞)、末梢血,骨髄細胞、F5-5,fl、フレンド赤白血病細胞株、TSA8、32D、C-8052 & C-8049、赤白血病細胞、胚性幹細胞、人工多能性細胞(以上、マウス由来細胞)、末梢血,腎髄細胞(以上、ゼブラフィッシュ由来細胞)を用いることを特徴とする(IV-1)記載の方法。(IV-3)メラニン合成を正に制御する物質(メラニン合成亢進物質)をスクリーニングする方法であって、Gm16515またはそのホモログを発現しえる細胞として、胎児または成体の皮膚から採取したメラノブラスト及びメラノサイト、B16メラノーマ、B16メラノーマ4A5、胚性幹細胞、人工多能性細胞(以上、マウス由来細胞)、HWV-I & HWV-II、G-361、HOMM、胚性幹細胞、人工多能性細胞(以上、ヒト由来細胞)、胚または成体のゼブラフィッシュに由来するメラノブラスト及びメラノサイト、GEM-81、GEM-199 & GEM-218(以上、金魚由来細胞)を用いることを特徴とする(IV-1)記載の方法。
本発明によれば、上記するように、Gm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物について、グロビン合成制御剤、特にグロビン合成を負に制御する薬剤、好ましくはグロビン合成を負に制御することによりαグロビンとβグロビンの比率を調節することが可能な薬剤としての新たな用途を提供することができる。当該グロビン合成制御剤によれば、前述するサラセミア等の異常ヘモグロビン症の治療用医薬組成物として応用することができる。
また、本発明によれば、上記するように、Gm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物について、メラニン合成抑制剤としての新たな用途を提供することができる。当該メラニン合成抑制剤によれば、メラニンの合成を抑制することにより、肌への色素沈着、例えばシミやソバカスの発生を抑制し、美白効果を期待することができる。
さらに本発明のスクリーニング方法によれば、Gm16515またはそのホモログの発現の増減を指標とすることで、新規なグロビン合成抑制剤またはメラニン合成抑制剤の有効成分(候補物質)、ならびにグロビン合成亢進剤またはメラニン合成亢進剤の有効成分(候補物質)を取得することができる。
グロビン合成抑制剤及びグロビン合成亢進剤は、単独または組み合わせてグロビン合成制御剤として、グロビン合成異常に起因する疾患、例えば異常ヘモグロビン症の治療薬として有用である。またメラニン合成抑制剤は、肌への色素沈着、例えばシミやソバカスの発生を抑制し、美白効果を発揮する経口または外用組成物(医薬品、医薬部外品、化粧品)として有用である。またメラニン合成亢進剤は、メラニンの欠如あるいは減少に起因する白髪、皮膚の白斑などの予防、緩和または改善する経口または外用組成物(医薬品、医薬部外品、化粧品)として有用である。
Gm16515タンパク(マウス)、及びそのホモログ(ヒト、ゼブラフィッシュ)のアミノ酸配列とそのアセチルCoA結合部位(下線部)を示す。 実験例1において、低温飼育したゼブラフィッシュ(図中、coldとして示す)と常温飼育した健常なゼブラフィッシュ(図中、Normalとして示す)とで、腎髄組織におけるGm16515の発現量を対比した結果を示す。縦軸のRQは、低温飼育したゼブラフィッシュの腎髄組織でのGm16515の発現量を1とした相対量(Relative Quantity)を意味する。 造血幹細胞の分化及び成熟過程において、Gm16515の発現レベルが、CFU-E前駆細胞が赤芽球を経て赤血球に分化し成熟するにつれて、グロビン遺伝子の発現増加(ヘモグロビンの合成)とともに、増大することを示す(実験例2)。縦軸のRQは、Gm16515の発現レベルの相対量(Relative Quantity)を意味する。 (A)実験例3において、マウスのフレンド白血病細胞株にGm16515を過剰発現させた細胞(Gm16515)と、Gm16515を過剰発現させない同細胞株(Control)について、免疫細胞染色法により、ヒストン4のアセチル化レベルを測定した結果を示す。(B)実験例3において、マウスのフレンド白血病細胞株にGm16515を過剰発現させた細胞(Gm16515)と、Gm16515を過剰発現させない同細胞株(Control)について、αグロビン遺伝子とβグロビン遺伝子の発現量を測定した結果を示す。縦軸のRQは、Gm16515の発現レベルの相対量(Relative Quantity)を意味する。 (A)実験例4において、Gm16515の発現を抑制したゼブラフィッシュ(Morpholino[MO])と正常のゼブラフィッシュ(Control)について、ヘモグロビン染色を行った結果を示す。(B)実験例4において、Gm16515の発現を抑制したゼブラフィッシュ(Morpholino[MO])と正常のゼブラフィッシュ(Control)について、αグロビン遺伝子とβグロビン遺伝子の発現量を測定した結果を示す。縦軸のRQは、各グロビン遺伝子の発現レベルの相対量(Relative Quantity)を意味する。 メラニン細胞の分化過程とそれに関連する遺伝子との関係、及びメラノサイド中の色素の凝集と分散に関する遺伝子の関係を示す模式図である。 実験例4において、Gm16515の発現を抑制したゼブラフィッシュ(Morpholino[MO])と正常のゼブラフィッシュ(Control)について、メラニン合成関連遺伝子(メラニン細胞の分化に関係する遺伝子:kita, kitlga, mitfa、メラニン合成遺伝子:tyr, dct、メラノソーム分布に関係する遺伝子:pomca)の発現を比較した結果を示す。縦軸のRQは、各遺伝子の発現レベルの相対量(Relative Quantity)を意味する。 実験例5において、Gm16515タンパクのアセチルCoAに対する結合能を評価した結果を示す。横軸は、アセチルCoAの濃度(pmol)、縦軸は蛍光強度(Ex/Em=535nm/589nm)を示す。 実験例6において、Gm16515タンパク(―◇―)またはHAT(Histon Acetyl-Transferase)(―△―)を、それぞれヒストンおよびアセチルCoAとともにインキュベーションして、遊離したフリーのCoAの量を測定した結果を示す。横軸は反応時間(hour)、縦軸は遊離したCoAの量を示す。 実験例3〜6の結果から得られた知見を模式図にて纏めたものである。つまり、Gm16515タンパクは、アセチル化酵素と競合してアセチルCoAを結合補足する。その結果、ヒストンのアセチル化が抑制されて、グロビン合成が低下する(グロビン合成を負に制御する)。この点、アセチルCoAを結合補足し、それをヒストンに転移することでヒストンをアセチル化し、グロビン合成を正に制御するHATと作用が相違する。
(I)用語の説明
本明細書において、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号による表示は、IUPAC-IUBの規定〔IUPAC-IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)および当該分野における慣用記号に従う。
本明細書において「遺伝子」または「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖という各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。従って、本明細書において遺伝子またはDNAとは、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNAおよびcDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)並びに該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、およびこれらの断片のいずれもが含まれる。
また、当該「遺伝子」または「DNA」には、特定の塩基配列で示される「遺伝子」(例えばマウスGm16515)または「DNA」だけでなく、これらによりコードされる蛋白質(遺伝子産物)と生物学的機能が同等である蛋白質(例えば、同族体、変異体、誘導体など)をコードする「遺伝子」または「DNA」が包含される(本明細書においては、これらを総括して上記特定の塩基配列で示される「遺伝子」(マウスGm16515)または「DNA」の「ホモログ」ともいう。)。かかるホモログとしては、具体的には、後述する(1-1)項に記載のストリンジェントな条件で、特定塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」とハイブリダイズするものを挙げることができる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNAおよび合成DNAのいずれもが含まれる。
例えば同族体をコードする遺伝子(ホモログ)としては、マウス遺伝子(Gm16515)に対応するラットやヒトなどの哺乳類、またはゼブラフィッシュ等の魚類などといった他生物種の遺伝子が例示できる。これらの遺伝子(ホモログ)は、HomoloGene (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定することができる。具体的には、特定塩基配列をBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci.USA., 90: 5873-5877, 1993、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)にかけて一致する(Scoreが最も高く、E-valueが0でかつIdentityが100%を示す)配列のアクセッション番号を取得する。そのアクセッション番号をUniGene (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/)に入力して得られたUniGene Cluster ID(Hs.で示す番号)をHomoloGeneに入力する。
結果として得られた他生物種遺伝子とマウス遺伝子(Gm16515)との遺伝子ホモログの相関を示したリストから、マウス遺伝子(Gm16515)に相当するラットやヒト、またはゼブラフィッシュなどの他生物種の遺伝子を選抜することができる。なお、遺伝子またはDNAは機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソンまたはイントロンを含むことができる。
本明細書において、「核酸」または「ポリヌクレオチド」とは、遺伝子、RNAおよびDNAのいずれをも包含する趣旨で用いられる。なお、上記RNAには、total RNA、mRNA、rRNAおよび合成のRNAのいずれもが含まれる。
本明細書において「遺伝子産物」には、「遺伝子転写産物」であるmRNA 及びmRNAの派生物(例えば、mRNAの塩基配列をDNA配列に置き換えたDNA(cDNA))、並びに「遺伝子翻訳産物」である蛋白質(タンパク)または(ポリ)ペプチドが含まれる。
本明細書において、遺伝子産物に含まれる「蛋白質(タンパク)」または「(ポリ)ペプチド」には、特定のアミノ酸配列で示される「蛋白質(タンパク)」または「(ポリ)ペプチド」だけでなく、これらと生物学的機能が同等である「蛋白質(タンパク)」または「(ポリ)ペプチド」(例えば、同族体、変異体、誘導体など)が包含される。なお、本明細書において、これらを上記特定のアミノ酸配列で示される蛋白質(タンパク)または(ポリ)ペプチドの「ホモログ」と総称する。例えば、同族体としては、マウスの蛋白質(Gm16515タンパク)に相当するラットやヒト、またはゼブラフィッシュなどの他生物種の蛋白質(オルソログ)が例示でき、これらはHomoloGene (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定された遺伝子の塩基配列から演繹的に同定することができる。また、上記変異体には、天然に存在するアレル変異体、天然に存在しない変異体および人為的に欠失、置換、付加および挿入されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が包含される。なお、かかる変異体としては、変異のない蛋白質(タンパク)または(ポリ)ペプチドと、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、特に好ましくは95%、さらにより好ましくは97%相同なものを挙げることができる。
(II)グロビン合成制御剤、及びそれを含む医薬組成物
(II-1)グロビン合成を負に制御する薬剤
本発明のグロビン合成制御剤は、Gm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物を有効成分とする。これらの成分は、特にα-グロビン及び/またはβ-グロビンの合成を負に制御する作用を有している。従って、これらの成分を有効成分とするグロビン合成制御剤は、好ましくはグロビン合成を負に制御することにより、αグロビンとβグロビンの比率を調節する薬剤として使用することができる。
Gm16515(Official Full Name: Gm16515 predicted gene)(Gene ID:24083, MGI ID:1344388)は、マウス(Mus musculus)の体内の多くの組織で発現しているタンパクコーディング遺伝子であり、別名「F3-2」、「Gtlf3b」、「Al256713」とも称される。第11染色体(NC_000077.6)の60902246..60913792bpに位置する。
Gm16515の遺伝子産物のうち、遺伝子転写産物に相当するmRNA(NCBI Reference Sequence: NM_025294.5、GI:254028190)の塩基配列を配列番号1に示す(但し、ここではmRNAの塩基配列をDNAの塩基配列として示す。以下、mRNAの塩基配列について同じ)。全長4159bpからなる塩基配列のうち、68〜400番目の領域がコード領域である。また、Gm16515の遺伝子産物のうち、遺伝子翻訳産物に相当する蛋白質(NCBI Reference Sequence: NP_079570.1、GI:13384646)のアミノ酸配列(110 aa)を配列番号2に示す。当該蛋白質は正式には「protein GTLF3B」と称されるが、本明細書では便宜上「Gm16515タンパク」と称する。
Gm16515のホモログ及びその遺伝子産物の一例を表1に示す。
Figure 2015134723
Gm16515のホモログとしては、上記表1に示すように、Gm16515に相当するヒト遺伝子、チンパンジー遺伝子、ウシ遺伝子、及びラット遺伝子等の哺乳類遺伝子のほか、トリ遺伝子等の鳥類遺伝子、カエル遺伝子等のは虫類遺伝子、ゼブラフィッシュ等の魚類遺伝子を挙げることができる。これらはそれぞれ表1に示す個別の名称を有しているが、本明細書では便宜上「Gm16515のホモログ」と総称する。
またGm16515のホモログの遺伝子産物としては、上記表1に示すように、Gm16515に相当するヒト遺伝子、チンパンジー遺伝子、ウシ遺伝子、及びラット遺伝子等の哺乳類遺伝子のほか、トリ遺伝子等の鳥類の遺伝子、カエル遺伝子等のは虫類遺伝子、ゼブラフィッシュ等の魚類遺伝子の遺伝子産物(遺伝子転写産物、遺伝子翻訳産物)を挙げることができる。これらもそれぞれ表1に示す個別の名称を有しているが、本明細書では便宜上「Gm16515ホモログの遺伝子産物」または「Gm16515タンパクのホモログ」と総称する。
なお、Gm16515のホモログに相当するヒト遺伝子(C17orf103)の遺伝子産物のうち、遺伝子転写産物に相当するmRNA(NM_152914.2、GI:116325984)の塩基配列を配列番号3に示す。全長4787bpからなる塩基配列のうち、3〜344番目の領域がコード領域である。また、ヒト遺伝子(C17orf103)の遺伝子産物のうち、遺伝子翻訳産物に相当する蛋白質(NP_690878.2、GI:116325985)のアミノ酸配列(113 aa)を配列番号4に示す。
さらにGm16515のホモログに相当するゼブラフィッシュ遺伝子(Gtlf3b、zgc:110779)の遺伝子産物のうち、遺伝子転写産物に相当するmRNA(NM_001013318.1)の塩基配列を配列番号5に示す。全長1260bpからなる塩基配列のうち、45〜377番目の領域がコード領域である。また、ゼブラフィッシュ遺伝子(Gtlf3b、zgc:110779)の遺伝子産物のうち、遺伝子翻訳産物に相当する蛋白質(NP_001013336.1、GI:61651794)のアミノ酸配列(110 aa)を配列番号6に示す
なお、Gm16515のホモログ、及び当該ホモログの遺伝子産物(=Gm16515タンパクのホモログ)は、上記表1に記載するものに限定されない。例えば、Gm16515タンパクのホモログとしては、Gm16515タンパクのアミノ酸配列と好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上同一であり、Gm16515タンパクと同様の機能(Coenzyme A(CoA)結合機能を有する、アセチルCoA転移作用を有しない)を有するものを挙げることができる。またGm16515のホモログとしては、上記Gm16515タンパクのホモログをコードする遺伝子を挙げることができる。この限りにおいて、将来見出されるGm16515のホモログ、及び当該ホモログの遺伝子産物も、本発明の対象に包含される。
本発明のグロビン合成制御剤は、これらのGm16515、Gm16515ホモログ、Gm16515遺伝子産物、及びGm16515ホモログの遺伝子産物からなる群から選択される少なくとも1種を有効成分として含有するものであればよく、1種のみならず、2種以上を任意に組み合わせて含有するものであってもよい。
なお、Gm16515、及びGm16515ホモログ、並びにそれらの遺伝子転写産物等の核酸は、被験者、好ましくはヒトを含む哺乳動物への投与に適した形態を備えていることが好ましい。
かかる形態としては、遺伝子治療用の発現ベクターを挙げることができる。当該遺伝子治療に用いられる発現ベクターは、所望の投与経路に応じて当業界で公知の方法で処方することができる。また、発現ベクターが標的器官(造血組織、造血細胞)に到達するまで、当該発現ベクターから目的核酸の放出あるいは吸収を防止するための方法も当業界で公知であり、同様に本発明に適用することができる。また、当該発現ベクターは、他のベヒクル(vehicle)(例えば、リポソームのような脂質ベースの分子、凝集タンパク質、またはトランスポーター分子)などと複合体を形成した状態で使用することもできる。これらの発現ベクターは、血管内直截注入(つまり、通常の静脈内注射と動脈内注射)、または骨髄直截注入により造血組織に送達することができる。
発現ベクターには、プラスミドベクターおよびウイルスベクターが含まれる。ウイルスベクターの場合、Gm16515タンパクまたはそのホモログをコードする核酸は、造血細胞における発現に必要な機能性DNA配列を作動可能に結合した状態で、ウイルス粒子内に封入された状態で使用される。かかるウイルスベクターとしても当業界で公知のものを任意に使用することができ、例えばアデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、及びポリオーマウイルス等を挙げることができる。
また、上記ウイルスベクターに代えて、粒子形成能を有する物質に造血組織若しくは造血細胞を特異的に認識できる生体認識分子が導入されてなる中空ナノ粒子を用いることもできる。当該中空ナノ粒子は、標的とする細胞及び組織に所望の物質を導入するための運搬体として当業界で公知のものである。当該中空ナノ粒子の詳細は、例えば特開2001−316298号公報に記載されており、その内容は本明細書に援用されて本発明の内容に組み込まれる。
また、本発明のグロビン合成制御剤が、有効成分としてGm16515若しくはそのホモログの遺伝子翻訳産物等の蛋白質を含む場合、タンパク製剤として被験者、好ましくはヒトを含む哺乳動物への投与に適した形態を備えていることが好ましい。
なお、本発明のグロビン合成制御剤は、Gm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物だけからなるものであってもよいし、またこれらの有効成分が有するグロビン合成制御作用を妨げない限り、他の成分を含んでいても良い。かかる他の成分としては、薬学的に許容される担体や添加剤を挙げることができる。この場合のグロビン合成制御剤中のGm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物の配合量は、上記を満たす限り制限はされないが、通常10〜99重量%の範囲のなかから適宜選択をすることができる。
(II-2)グロビン合成を正に制御する薬剤
また別の態様として、本発明のグロビン合成制御剤は、Gm16515若しくはそのホモログの遺伝子産物の造血細胞における機能発現を抑制する物質を有効成分とする。これらの成分は、特にα-グロビン及び/またはβ-グロビンの合成を正に制御する作用を有している。従って、これらの成分を有効成分とするグロビン合成制御剤は、好ましくはグロビン合成を正に制御することにより、αグロビンとβグロビンの比率を調節する薬剤として使用することができる。
ここで「機能発現」の一つとして、Gm16515若しくはそのホモログの遺伝子産物、言い換えればGm16515タンパクまたはそのホモログが有するアセチルCoA捕捉機能を挙げることができる。当該アセチルCoA捕捉機能は、クロマチンのアセチル化に際して、アセチル化酵素と競合してアセチルCoAを捕捉し、クロマチンのアセチル化を阻害する機能であり、特にβグロビンの合成を制御する機能として作用する。なお、「抑制」とは、Gm16515タンパクまたはそのホモログの機能発現を100%抑制(阻止)する場合と、100%抑制(阻止)しなくても本来Gm16515タンパクまたはそのホモログが有する機能を低下させる場合の両方を含む。
例えば、造血細胞におけるGm16515またはそのホモログの発現または産生を抑制する物質としては、造血細胞におけるGm16515またはそのホモログの発現または産生において、Gm16515またはそのホモログの転写、RNAプロセッシング、輸送、翻訳、及び/又は安定性を抑制する物質を挙げることできる。こうした物質として具体的には、Gm16515またはそのホモログの塩基配列にハイブリダイズし、その転写、RNAプロセッシング、輸送、翻訳、及び/又は安定性を抑制し得るアンチセンス分子、リボザイム、及びRNAiエフェクターを例示することができる。
本発明で用いられるアンチセンス分子は、Gm16515またはそのホモログのプロモーターまたはその他の制御領域、エキソン、イントロンあるいはエキソン−イントロン境界に結合するように設計される。多くの効果的なアンチセンス分子は、イントロン/エキソン・スプライス接合部とハイブリダイズし得るように設計されている。よって、本発明におけるアンチセンス分子も、Gm16515またはそのホモログのイントロン/エキソン・スプライス接合部の50〜200塩基内の領域にハイブリダイズするように、当該領域に対して実質的に相補的な塩基配列を有するものであることが好ましい。
リボザイムは、RNA-タンパク質複合体であり、対象の遺伝子(mRNA)に部位特異的に結合してそれを切断することで、タンパク質への翻訳を阻害し、遺伝子機能の発現を抑制する機能を発揮する物質である。本発明で用いられるリボザイムは、Gm16515またはそのホモログから転写されたmRNAの任意領域とハイブリダイズするように当該領域に対して実質的に相補的な塩基配列を有し、そして結合した対象のオリゴヌクレオチド領域内のリン酸エステルを切断して、Gm16515タンパクまたはそのホモログへの翻訳を阻害するように設計される。
RNAiエフェクターは、RNAi(RNA干渉)の機能を発揮することによって、Gm16515またはそのホモログのDNAもしくはmRNAの上流域にハイブリダイズし、Gm16515またはそのホモログの発現を特異的に抑制するものである。RNAiエフェクターとしては、si RNA(small interfering RNA)、stRNA(small temporally regulated RNA)及びshRNA(short hairpin RNA)等を挙げることができる。なお、RNAiエフェクターを利用したRNAi技術並びにその方法は、多比良和誠ら編,「RNAi実験プロトコール」,羊土社発行,2003年等に詳細に記載されており、その内容は援用により本発明の内容に組み込まれる。
また造血細胞におけるGm16515タンパクまたはそのホモログの機能を抑制する物質としては、具体的には、Gm16515タンパクまたはそのホモログとアセチルCoAとの結合を阻害する物質、例えばGm16515タンパクまたはそのホモログのアセチルCoA結合部位に選択的に結合して、Gm16515タンパクまたはそのホモログとアセチルCoAとの結合を抑制する物質を挙げることができる。なお、Gm16515タンパク及びそのホモログのアセチルCoA結合部位は公知である。例えばGm16515タンパク(配列番号2)のアセチルCoA結合部位は、配列番号2に示すアミノ酸配列中、アミノ酸番号62〜67の領域である。またGm16515タンパクのヒトホモログ(配列番号4)のアセチルCoA結合部位は、配列番号4に示すアミノ酸配列中、アミノ酸番号65〜70の領域であり、Gm16515タンパクのゼブラフィッシュホモログ(配列番号6)のアセチルCoA結合部位は、配列番号6に示すアミノ酸配列中、アミノ酸番号62〜67の領域である(図1参照)。
かかる物質として、具体的には、Gm16515タンパクまたはそのホモログに対する抗体、特にアセチルCoA結合部位に結合する抗体を挙げることができる。抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれであってもよい。好ましくはモノクローナル抗体である。ポリクローナル抗体並びにモノクローナル抗体の調製方法は、当業界で周知であり、本発明の抗体もこれに準じて調製することができる(例えば、Harlow and Lane, Antibodies; A Laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratry, 1988;米国特許第4,196,265号公報等参照、これらの文献の内容は援用により本発明の内容に組み込まれる)。本発明で好適に用いられる抗体としては、具体的には、抗−Gm16515タンパク[またはそのホモログ]抗体(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の両方を意味する)、Gm16515タンパクまたはそのホモログのアセチルCoA結合部位に対する抗体などを挙げることができる。
(II-3)医薬組成物
上記のグロビン合成制御剤(グロビン合成を負に制御する薬剤[グロビン合成抑制剤ともいう]、およびグロビン合成を正に制御する薬剤[グロビン合成亢進剤ともいう])は、グロビン合成の亢進または低下により、またはαグロビン合成やβグロビン合成のアンバランスにより、正常にグロビンが合成されないことに起因して発生及び増悪する疾患の治療及び症状の改善に有効に使用することができる。
従って、上記のグロビン合成制御剤を有効成分とする本発明の医薬組成物は、当該疾患の治療薬または症状の改善薬として有効に使用することができる。
ここで、グロビン合成の亢進または低下により、またはαグロビン合成やβグロビン合成のアンバランスにより、正常にグロビンが合成されないことに起因して発生及び増悪する疾患としては、異常ヘモグロビン症を挙げることができる。好ましくはサラセミア、鎌状赤血球貧血、及び不応性貧血を挙げることができる。サラセミアは、前述するように、(1)正常なヘモグロビン合成低下による小球性低色素性貧血、(2)合成障害を受けていないグロビン鎖の産生過剰が引き起こす溶血性貧血、この両者が混合したものである。このため、本発明のグロビン合成制御剤のうち、グロビン合成を負に制御する作用を有するGm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物を有効成分とするものを用いることで、αグロビン合成やβグロビン合成のバランスを調節して、上記(1)また(2)を治療ないし改善することができる。また、本発明のグロビン合成制御剤のうち、グロビン合成を正に制御する作用を有するGm16515若しくはそのホモログの遺伝子産物の造血細胞における機能発現を抑制する物質を有効成分とするものを用いることで、αグロビン合成やβグロビン合成のバランスを調節して、上記(1)また(2)を治療ないし改善することができる。
本発明の医薬組成物は、上記有効成分とともに、その種類や投与経路に応じて、自体公知の薬学的に許容される担体や添加剤を含んでいてもよい。当該医薬組成物は、所望の投与方法、例えば経口投与、非経口投与(例えば静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経肺投与、経鼻投与、経腸投与、腹腔内投与、または冠動脈もしくは冠状静脈洞投与)などによって投与することができ、その投与経路に応じて、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、凍結乾燥製剤、及びカプセル剤などの固形剤形態;溶液、懸濁剤、乳剤、シロップ、リポソーム製剤、注射剤、静注剤、点滴剤及びエリキシルなどの液剤与形態に、調合、成形乃至調製することができる。
これらの医薬組成物(医薬製剤)の調製に利用される担体としては、製剤の投与形態に応じて通常使用される賦形剤、希釈剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、滑沢剤、溶解補助剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤などが例示できる。また添加剤としては、製剤の投与形態に応じて通常使用される安定化剤、保存剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、着色剤、香料、風味剤、甘味剤などが例示できる。
上記医薬組成物中に含有されるべき有効成分の量およびその投与量は、特に限定されず、所望の治療効果、投与法、治療期間、患者の年齢、性別その他の条件などに応じて広範囲より適宜選択される。投与量は、投与経路によっても異なるが、通常、1回投与あたりの有効成分の量に換算して、0.1pg〜100mg/kgの範囲で投与することができる。
(III)メラニン合成抑制剤
本発明のメラニン合成抑制剤もまた、前述するGm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物を有効成分とすることを特徴とする。
ここで使用するGm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物は、前述(II-1)の通りであり、上記記載をここでも援用することができる。
本発明のメラニン合成抑制剤は、これらのGm16515、Gm16515のホモログ、Gm16515の遺伝子産物(Gm16515タンパク)、及びGm16515ホモログの遺伝子産物(Gm16515タンパクのホモログ)からなる群から選択される少なくとも1種を有効成分として含有するものであればよく、1種のみならず、2種以上を任意に組み合わせて含有するものであってもよい。
なお、Gm16515、及びGm16515ホモログ、並びにそれらの遺伝子転写産物等の核酸は、被験者、好ましくはヒトを含む哺乳動物への投与に適した形態を備えていることが好ましい。
かかる形態としては、遺伝子治療用の発現ベクターを挙げることができる。発現ベクターは、前述(II-1)の通りであり、上記記載をここでも援用することができる。
また、本発明のメラニン合成抑制剤が、有効成分としてGm16515若しくはそのホモログの遺伝子翻訳産物等の蛋白質を含む場合、タンパク製剤として被験者、好ましくはヒトを含む哺乳動物への投与に適した形態を備えていることが好ましい。
なお、本発明のメラニン合成抑制剤は、Gm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物だけからなるものであってもよいし、またこれらの有効成分が有するメラニン合成抑制作用を妨げない限り、他の成分を含んでいても良い。かかる他の成分としては、薬学的に許容される担体や添加剤、または食用できる成分を挙げることができる。この場合のメラニン合成抑制剤中のGm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物の配合量は、上記を満たす限り制限はされないが、通常10〜99重量%の範囲のなかから適宜選択をすることができる。
当該メラニン合成抑制剤は、皮膚内でのメラニンの合成を抑制することにより、皮膚への色素沈着を抑制し、シミやソバカスを予防または改善するうえで有用であり、美白用組成物として応用することができる。
本発明の美白用組成物は、上記有効成分とともに、その種類や投与経路に応じて、自体公知の薬学的に許容される担体や添加剤を含んでいてもよい。当該美白用組成物は、所望の投与方法、例えば経口投与、非経口投与(例えば皮内投与、皮下投与、経皮投与)などによって投与することができ、その投与経路に応じて、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、凍結乾燥製剤、及びカプセル剤などの固形剤形態;溶液、懸濁剤、乳剤、シロップ、リポソーム製剤、注射剤などの液剤与形態に、調合、成形乃至調製することができる。
これらの美白用組成物(例えば医薬品または医薬部外品)の調製に利用される担体としては、製剤の投与形態に応じて通常使用される賦形剤、希釈剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、滑沢剤、溶解補助剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤などが例示できる。また添加剤としては、製剤の投与形態に応じて通常使用される安定化剤、保存剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、着色剤、香料、風味剤、甘味剤などが例示できる。さらに上記成分以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、他の美白成分、抗酸化剤。アミノ酸、ビタミン類、無機酸塩などを配合することもできる。
なお、美白用組成物がGm16515、及びGm16515ホモログ、並びにそれらの遺伝子転写産物等の核酸を有効成分とする場合は、被験者、好ましくはヒトを含む哺乳動物への投与に適した形態を備えていることが好ましい。
かかる形態としては、(II-1)にて前述した遺伝子治療用の発現ベクターを挙げることができる。当該遺伝子治療に用いられる発現ベクターは、所望の投与経路に応じて当業界で公知の方法で処方することができる。また、当該発現ベクターは、他のベヒクル(例えば、リポソームのような脂質ベースの分子、凝集タンパク質、またはトランスポーター分子)などと複合体を形成した状態で使用することもできる。これらの発現ベクターは、目的とする皮膚部位に、注射針を用いて注入することにより所望の皮膚細胞に送達することができる。ここで使用される発現ベクターも前述の通りであり、(II-1)の記載が援用される。
上記美白用組成物中に含有されるべき有効成分の量およびその投与量は、特に限定されず、所望の治療効果、投与法、治療期間、患者の年齢、性別その他の条件などに応じて広範囲より適宜選択される。投与量は、投与経路によっても異なるが、通常、1回投与あたりの有効成分の量に換算して、0.1pg〜100mg/kgの範囲で投与することができる。
本発明の美白用組成物には、外用組成物(外用医薬組成物、外用医薬部外品、及び化粧料組成物)の形態に製造することもできる。
外用組成物の剤型は、特に制限されないが、例えば、液剤、乳剤、懸濁剤等の液状製剤;軟膏剤、ゲル剤、クリーム等の半固形製剤が挙げられる。このような剤型を有する製剤は、当業界の慣用法に従って調製することができる。外用組成物は、上述の外用投与形態に製剤化するため、また、その安定化のために、薬学上外用投与に許容される各種の担体並びに添加剤を配合することもできる(例えば、日本薬局方、「医薬品添加物事典」(薬事日報社発行)等が参照できる。)。
外用を化粧料組成物とする場合、化粧料の分野において許容される担体や添加剤と共に様々な剤型に調製してもよい。化粧料組成物の形状については特に制限されないが、例えば、ペースト状、ローション状、ムース状、ジェル状、ゼリー状、液状、乳液状、懸濁液状、クリーム状、軟膏状、シート状、エアゾール状、スプレー状等が挙げられる。また、当該化粧料組成物の形態についても、制限されるものではないが、例えば、ファンデーション、頬紅、白粉等のメイクアップ化粧料;化粧水、乳液、クリーム、ローション、オイル及びパック等の基礎化粧料;洗顔料、クレンジング、ボディ洗浄料等の皮膚洗浄料;マッサージ剤、清拭剤;清浄剤;入浴剤等が挙げられる。
(IV)グロビン合成またはメラニン合成を負に制御する有効成分のスクリーニング方法
本発明は、グロビン合成を負に制御することのできる物質、言い換えればグロビン合成抑制剤の有効成分となり得る物質(候補物質)をスクリーニングする方法を提供する。当該物質は、グロビン合成の亢進に起因して発生または増悪する疾患を治療する医薬組成物の有効成分として使用できると期待される。
また、本発明は、メラニン合成を負に制御することのできる物質、言い換えればメラニン合成抑制剤の有効成分となり得る物質(候補物質)をスクリーニングする方法を提供する。当該物質は、メラニン合成の亢進に起因して発生または増悪する状態、例えば肌にシミやソバカス等の色素沈着が生じるのを予防したり、またその状態を改善するために使用される内服用または外用組成物の有効成分として使用できると期待される。
本発明のスクリーニング方法は、少なくとも下記(1)〜(3)の工程を有する:
(1)Gm16515またはそのホモログを発現しえる細胞と被験物質を接触させる工程、
(2)上記細胞のGm16515またはそのホモログの発現量(被験測定値)と、被験物質を接触させない対照のGm16515またはそのホモログを発現しえる細胞のGm16515またはそのホモログ発現量(対照測定値)を測定する工程、
(3)上記被験測定値が対照測定値よりも高い場合に、当該被験物質を、上記グロビン合成またはメラニン合成を負に制御する物質として選択する工程。
かかる工程により、グロビン合成を負に制御する作用を有する物質(グロビン合成抑制物質)またはメラニン合成を負に制御する作用を有する物質(メラニン合成抑制物質)を取得することができる。
ここで使用される細胞は、内来性及び外来性を問わず、Gm16515またはそのホモログを発現可能な状態で有するものであり、その由来は特に制限されない。好ましくは、Gm16515またはそのホモログを発現可能な状態で有する、ヒト由来またはヒト以外の哺乳動物由来の細胞である。
具体的には、グロビン合成抑制物質のスクリーニング系においては、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物に由来する細胞を挙げることができる。なお、これらは培養細胞株であってもよい。かかるものとしては、制限されないが、一例として下記のものを例示することができる。
<ヒト由来細胞>
・末梢血細胞
・骨髄細胞
・EEB: 赤芽球性白血病に由来するヒト細胞株(human cell line derived from erythroblastic leukemia)
・F-36P: ヒト赤白血病細胞
・K562
・KU-812-F: ヒトヒト好塩基球性白血病細胞株(glycophorin A+)
・胚性幹細胞由来のヒト赤血球細胞
・人工多能幹細胞。
<マウス由来細胞>
・末梢血液細胞
・骨髄細胞
・F5-5.fl:フレンド赤白血病細胞
・K-1.fl、T-3-CI-2-0.fl、またはTSFAT-3.flに由来するフレンド赤白血病細胞株
・707.fl, GM86.fl & FVTCT.fl
・TSA8:フレンド白血病ウイルスで形質転換された赤白血病細胞に由来するマウス細胞株
・32D: フレンド白血病ウイルス感染マウス骨髄に由来するIL-3依存性細胞
・C-8052 & C-8049: mouse C3H/Heに由来するTer119+ 赤白血病細胞株
・マウス赤白血病細胞(MEL)
・マウス胚性幹細胞
・人工多能幹細胞。
<魚由来細胞>
・ゼブラフィッシュの末梢血液細胞、または腎髄細胞
またヒト由来またはヒト以外の哺乳動物に由来するGm16515またはそのホモログを発現可能な状態で有する原核細胞または真核細胞(昆虫細胞を含む)を用いることもできる。
また、メラニン合成抑制物質のスクリーニング系においては、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物に由来する細胞を挙げることができる。なお、これらは培養細胞株であってもよい。かかるものとしては、制限されないが、一例として下記のものを例示することができる。
<マウス由来細胞>
・マウス胚(embryo)または成体に由来するメラノブラストまたはメラノサイト
・B16 melanoma & B16 melanoma 4A5: マウスのメラニン産生メラノーマ細胞
・マウス胚性幹細胞
・人工多能幹細胞。
<ヒト由来細胞>
・HMV-I & HMV-II: ヒトのメラニン産生細胞株
・G-361: ヒトのメラニン産生メラノーマ細胞
・HOMM:メラニン顆粒を含む ヒトのメラノーマ細胞
・ヒト胚性幹細胞
・人工多能幹細胞。
<魚由来細胞>
・ゼブラフィッシュの胚(embryo)または成体に由来するメラノブラストまたはメラノサイト
・GEM-81, GEM-199 & GEM-218: Gold fish 赤血球色素細胞に由来する腫瘍細胞
また細胞の集合体である組織も当該範疇に含まれる。さらに生物個体そのものも当該範疇に含まれ、かかる例としては、特にゼブラフィッシュなどの小生物を好適に挙げることができる。さらにまた、さらにヒト由来またはヒト以外の哺乳動物やその他の生物に由来するGm16515またはそのホモログを発現可能な状態で有する原核細胞または真核細胞(昆虫細胞を含む)を用いることもできる。
被験物質としては、制限はされないが、核酸、ペプチド、タンパク質、有機化合物、または無機化合物などであり、スクリーニングは、具体的には、これらの被験物質またはこれらを含む組成物(例えば、細胞抽出物、遺伝子ライブラリーの発現産物等を含む)を対象の細胞と接触させることにより行うことができる。また、スクリーニングに際して採用される被験物質と細胞との接触条件は、特に制限されないが、細胞が死滅せず所望の遺伝子を発現できる培養条件を選択することが好ましい(以下のスクリーニング方法においても同じ)。
Gm16515またはそのホモログの発現レベルは、Gm16515またはそのホモログの塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはその相補的なポリヌクレオチドをプライマーまたはプローブとして用いて、ノーザンブロット法、RT-PCR法、in situハイブリダーゼイション解析法、デファレンシャル・ハイブリダーゼーション法、DNAチップ法、RNase保護アッセイなどの公知の方法を行うことにより測定することができる。また、Gm16515またはそのホモログの発現レベルは、発現産生されたGm16515タンパクまたはそのホモログの量を測定することによっても評価することができる。この場合は、Gm16515タンパクまたはそのホモログを認識する抗体をマーカーとして用いて、ウエスタンブロット法などの公知の方法で、産生されたGm16515タンパクまたはそのホモログを検出し、定量する。
かかるスクリーニング方法によるグロビン合成を負に制御する作用を有する物質の選別は、被験物質を接触させた細胞におけるGm16515またはそのホモログの発現レベルが、被験物質を接触させない細胞におけるGm16515またはそのホモログの発現レベルに比して、高くなることを指標として行うことができる。
実験例3に示すように、Gm16515またはそのホモログを過剰発現させるとα及びβ-グロビンの合成量が低下する。このことから、上記スクリーニングで選別されるGm16515またはそのホモログの発現、及びGm16515タンパクまたはそのホモログの産生を亢進する物質は、αまたはβ-グロビンの合成を負に制御することができ、ゆえにグロビン合成制御剤、特にグロビン合成を負に制御することでグロビン合成を調節する薬剤の有効成分の候補物質として、例えばグロビン合成異常、特にグロビン合成亢進に起因する疾患(例えば、前述する異常ヘモグロビン症)の治療剤または症状改善剤の有効成分の候補物質として用いることができる。かくして選別される候補物質は、さらに異常ヘモグロビン症を模した病態非ヒト動物を用いた薬効試験、安全性試験、さらに異常ヘモグロビン症に罹患した患者(ヒト)への臨床試験に供してもよく、これらの試験を実施することによって、より実用的なグロビン合成抑制剤またはグロビン合成異常に起因する疾患の予防または治療剤の有効成分として調製することができる。
このようにして選別された物質は、必要に応じて構造解析を行った後、その物質の種類に応じて、化学的合成、生物学的合成(発酵を含む)または遺伝子学的操作によって、工業的に製造することができ、グロビン合成抑制剤またはグロビン合成異常、特に合成亢進に起因する疾患の予防または治療用医薬組成物の調製に使用することができる。
また実験例4に示すように、Gm16515またはそのホモログの発現を抑制するとメラニンの合成量が増加する。このことから、上記スクリーニングで選別されるGm16515またはそのホモログの発現、及びGm16515タンパクまたはそのホモログの産生を亢進する物質は、メラニンの合成を負に制御することができ、ゆえにメラニン合成抑制剤の有効成分の候補物質として、また、メラニン合成亢進に起因する症状(皮膚への色素沈着、シミ、ソバカスなど)の予防、治療または症状改善のための有効成分の候補物質として、用いることができる。かくして選別される候補物質は、さらにメラニン合成亢進に起因する症状を有する非ヒト動物を用いた薬効試験、安全性試験、さらにメラニン合成亢進に起因する症状を有する患者(ヒト)への臨床試験に供してもよく、これらの試験を実施することによって、より実用的なメラニン合成抑制剤またはメラニン合成亢進に起因する症状の予防または改善のための有効成分、例えば美白成分を選別取得することができる。
このようにして選別された物質は、必要に応じて構造解析を行った後、その物質の種類に応じて、化学的合成、生物学的合成(発酵を含む)または遺伝子学的操作によって、工業的に製造することができ、メラニン合成抑制剤またはメラニン合成亢進に起因する症状の予防または改善用組成物(美白用組成物)の調製に使用することができる。
(V)グロビン合成またはメラニン合成を正に制御する物質のスクリーニング方法
本発明は、グロビン合成を正に制御することのできる物質、言い換えればグロビン合成亢進剤の有効成分となり得る物質(候補物質)をスクリーニングする方法を提供する。当該物質は、グロビン合成の抑制に起因して発生または増悪する疾患を治療する医薬組成物の有効成分として使用できると期待される。
また、本発明は、メラニン合成を正に制御することのできる物質、言い換えればメラニン合成亢進剤の有効成分となり得る物質(候補物質)をスクリーニングする方法を提供する。当該物質は、メラニン合成の減少に起因して発生または増悪する状態、例えば、白髪や皮膚の白斑などの状態を予防、緩和または改善するために使用される内服用または外用組成物(医薬品、医薬部外品、化粧品)の有効成分として使用できると期待される。
本発明のスクリーニング方法は、少なくとも下記(1)〜(3)の工程を有する:
(1)Gm16515またはそのホモログを発現しえる細胞と被験物質を接触させる工程、
(2)上記細胞のGm16515またはそのホモログの発現量(被験測定値)と、被験物質を接触させない対照のGm16515またはそのホモログを発現しえる細胞のGm16515またはそのホモログ発現量(対照測定値)を測定する工程、
(3)上記被験測定値が対照測定値よりも低い場合に、当該被験物質を、上記グロビン合成またはメラニン合成を正に制御する物質として選択する工程。
かかる工程により、グロビン合成を正に制御する作用を有する物質(グロビン合成亢進物質)またはメラニン合成を正に制御する作用を有する物質(メラニン合成亢進物質)を取得することができる。
ここで使用される細胞は、(IV)において前述した通りであり、内来性及び外来性を問わず、Gm16515またはそのホモログを発現可能な状態で有するものであり、その由来は特に制限されない。好ましくは、Gm16515またはそのホモログを発現可能な状態で有する、ヒト由来またはヒト以外の哺乳動物由来の細胞である。また培養細胞株を用いることもできるし、さらにヒト由来またはヒト以外の哺乳動物やその他の生物に由来するGm16515またはそのホモログを発現可能な状態で有する原核細胞または真核細胞(昆虫細胞を含む)を用いることもできる。
被験物質、及びGm16515またはそのホモログの発現レベルの測定方法についても、前述(IV)の通りであり、当該記載をここに援用することができる。
本発明のスクリーニング方法によるグロビン合成またはメラニン合成を正に制御する作用を有する物質の選別は、被験物質を接触させた細胞におけるGm16515またはそのホモログの発現レベルが、被験物質を接触させない細胞におけるGm16515またはそのホモログの発現レベルに比して、低くなることを指標として行うことができる。
実験例4に示すように、Gm16515またはそのホモログの発現を抑制すると、α及びβ-グロビンの合成量が増大する。このことから、上記スクリーニングで選別されるGm16515またはそのホモログの発現、及びGm16515タンパクまたはそのホモログの産生を低下させる物質は、α及びβ-グロビンの合成を正に制御することができ、ゆえにグロビン合成制御剤、特にグロビン合成を正に制御することでグロビン合成を調節する薬剤の有効成分の候補物質として、また、グロビン合成異常、特にグロビン合成抑制に起因する疾患(例えば、前述する異常ヘモグロビン症)の治療剤または症状改善剤の有効成分の候補物質として用いることができる。かくして選別される候補物質は、さらに異常ヘモグロビン症を模した病態非ヒト動物を用いた薬効試験、安全性試験、さらに異常ヘモグロビン症に罹患した患者(ヒト)への臨床試験に供してもよく、これらの試験を実施することによって、より実用的なグロビン合成亢進剤またはグロビン合成異常に起因する疾患の予防または治療剤の有効成分として調製することができる。
このようにして選別された物質は、必要に応じて構造解析を行った後、その物質の種類に応じて、化学的合成、生物学的合成(発酵を含む)または遺伝子学的操作によって、工業的に製造することができ、グロビン合成亢進剤またはグロビン合成異常、特に合成抑制に起因する疾患の予防または治療用医薬組成物の調製に使用することができる。
また実験例4に示すように、Gm16515またはそのホモログの発現を抑制するとメラニンの合成量が増加する。このことから、上記スクリーニングで選別されるGm16515またはそのホモログの発現、及びGm16515タンパクまたはそのホモログの産生を抑制する物質は、メラニンの合成を亢進することができ、ゆえにメラニン合成亢進剤の有効成分の候補物質として、また、メラニン合成低下に起因する症状(白髪、白斑症など)の予防、治療または症状改善のための有効成分の候補物質として、用いることができる。かくして選別される候補物質は、さらにメラニン合成低下に起因する症状を有する非ヒト動物を用いた薬効試験、安全性試験、さらにメラニン合成低下に起因する症状を有する患者(ヒト)への臨床試験に供してもよく、これらの試験を実施することによって、より実用的なメラニン合成亢進剤またはメラニン合成低下に起因する症状の予防または改善のための有効成分、例えば美白成分を選別取得することができる。
このようにして選別された物質は、必要に応じて構造解析を行った後、その物質の種類に応じて、化学的合成、生物学的合成(発酵を含む)または遺伝子学的操作によって、工業的に製造することができ、メラニン合成亢進剤またはメラニン合成低下に起因する症状の予防または改善用組成物(美白用組成物)の調製に使用することができる。
以下、本発明の構成及び効果を、下記の実験例を例として説明する。但し、本発明はかかる実験例等によって何等制限されるものではない。
なお、前述するように、「Gm16515」は本来マウスに由来する遺伝子の名称であるが、以下の実験例では、Gm16515のホモログであるゼブラフィッシュ由来の遺伝子も総称して「Gm16515」と称し、その遺伝子産物(タンパク質)を「Gm16515タンパク」と総称する。
実験例1 Gm16515遺伝子の発現挙動
低温飼育したゼブラフィッシュ(貧血モデル・ゼブラフィッシュ)の腎髄組織におけるGm16515の発現量を、常温飼育した健常なゼブラフィッシュのGm16515の発現量と比較した。
ゼブラフィッシュのGm16515(正式名称は、表1に示すようにGtlf3blまたはzgc:110779)の遺伝子転写産物(mRNA)の塩基配列を配列番号5に、遺伝子翻訳産物(蛋白質)(ここでは「Gm16515タンパク」という。正式名称は表1に示すようにprotein GTLF3B)のアミノ酸配列を配列番号6に示す。なお、マウスGm16515タンパクのアミノ酸配列とゼブラフィッシュのGm16515タンパクのアミノ酸配列との同一性は、77%である。
(1)方法
一般に、成体のゼブラフィッシュは、水温26.5℃の条件で飼育されるが、水温17℃の条件で低温飼育すると貧血状態を惹起することが知られている(非特許文献2)。
本実験例では、生後1ヵ月のゼブラフィッシュを水温17℃の条件で、一週間低温飼育して、貧血モデルのゼブラフィッシュを作製した。
常温飼育した健常ゼブラフィッシュと低温飼育した貧血モデル・ゼブラフィッシュのそれぞれから造血組織である腎髄を取り出し、そこからtotal RNAを抽出し、cDNAを調製した。各ゼブラフィッシュの腎髄組織での遺伝子発現の変化を、DNAマイクロアレイ分析およびリアルタイムPCRによって測定し、発現量が相違する遺伝子を探索した。
(2)結果
その結果を図2に示す。図に示すように、貧血モデル・ゼブラフィッシュ(cold)では、健常ゼブラフィッシュ(Normal)と比べて、腎髄組織におけるGm16515の発現が約2.5倍低下していることが判明した。このことから、貧血の発症にかかわる過程、例えば造血幹細胞の分化・成熟過程やグロビン合成過程に、Gm16515またはその遺伝子産物が関わっている可能性が示唆された。
実験例2 造血幹細胞の分化・成熟過程におけるGm16515の発現挙動
上記実験例1の結果を受けて、造血幹細胞の分化及び成熟過程において、Gm16515の発現がどのように変化するかを、マウスを用いて調べた。
(1)方法
マウスの胎児の肝臓から、フローサイトメトリーによるセルソーティングを用いて、造血幹細胞(HSC)および様々なステージの赤血球系細胞(BFU-E前駆細胞、CFU-E前駆細胞、赤芽球および赤血球)を単離した。各細胞画分からtotal RNAを抽出し、cDNAを調製し、マウスGm16515の発現をリアルタイムPCRによって測定した。
(2)結果
結果を図3に示す。図3に示すように、Gm16515の発現レベルは、赤血球の前駆細胞であるCFU-E前駆細胞が赤芽球を経て赤血球に分化し成熟するにつれて、グロビン合成の亢進に伴い(非特許文献10〜12参照)、増大することが判明した。この結果から、赤血球産生の造血幹細胞の分化及び成熟過程において、Gm16515またはその遺伝子産物はグロビン遺伝子の発現を制御していることが示唆された。
実験例3 グロビン合成におけるGm16515の機能評価(in vitro試験)
上記実験例2の結果を受けて、マウスのフレンド白血病細胞株にGm16515を過剰発現させて、グロビン合成におけるGm16515またはその遺伝子産物の機能を評価した。
(1)方法
マウスGm16515を、GFP(Green fluorescence protein)発現プラスミド(pIRES2-AcGFP1:Clontech Laboratories, Inc.,)にクローンし、次いで得られたGm16515を含むプラスミドをエレクトロポレーションによりマウスのフレンド白血病細胞株にトランスフェクトした(Gm16515細胞)。コントロールとして、Gm16515を含まないGFP発現プラスミド(上記と同じ)を、同様にエレクトロポレーションによりマウスのフレンド白血病細胞株にトランスフェクトした(コントロール細胞)。なお、トランスフェクトによりGFP発現プラスミドが導入された細胞は、GFPが発現することにより緑色を呈する(GFP陽性細胞)。そこで、この発色を指標として、GFP陽性の細胞をフローサイトメトリーによるセルソーティングによって集めた。
次いで、回収したGFP陽性細胞(Gm16515細胞、コントロール細胞)を、1-2%パラフォルムアルデヒドと0.1%Triton X-100を含む緩衝液で固定化し、1%BSA(Bovine Serum Albumin, Sigma-Aldrich)を含むPBSによってブロッキングした後、一次抗体としてAnti-acetyl-Histone H3 (rabbit polyclonal)(MILLIPORE社製)、二次抗体としてAlexa Fluor 488 goat anti-rabbit IgG (Invitrogen社製)を用いて免疫細胞染色を行った。二次抗体を洗浄した後、包埋緩衝液を用いて細胞をスライドガラスに固定した後、コンフォーカルレーザ顕微鏡にて観察し、染色度合からヒストンH4のアセチル化を測定した。
また回収したGFP陽性細胞(Gm16515細胞、コントロール細胞)について、リアルタイムPCR法により、αグロビン遺伝子及びβグロビン遺伝子の発現をそれぞれ調べた。
(2)結果
免疫細胞染色の結果を図4(A)に、α及びβグロビン遺伝子の発現を調べた結果を図4(B)に示す。上記の免疫細胞染色によれば、アセチル化されたヒストンH4が選択的に染色されるため、ヒストンのアセチル化のレベルを評価することができる。
図4(A)に示すように、Gm16515細胞の核内(図中、青で示す)におけるヒストンH4のアセチル化レベルは、コントロール細胞と比較して、顕著に低いことが確認された。また図4(B)に示すように、Gm16515細胞のαグロビン遺伝子及びβグロビン遺伝子の発現はいずれも、コントロール細胞と比較して、顕著に低いことが確認された。つまり、これらの結果から、フレンド白血病細胞株にGm16515を過剰発現させると、ヒストンH4のアセチル化が阻害されるとともに、α及びβグロビン遺伝子の発現も抑制されることがわかる。
これらの結果は、Gm16515またはその遺伝子産物は、αグロビン遺伝子座またはβグロビン遺伝子座におけるヒストンのアセチル化を抑制し、主としてβグロビンの合成を阻害するように作用することを示唆している。
実験例4 グロビン合成及びメラニン合成におけるGm16515の機能評価(in vivo試験)
ゼブラフィッシュについて、Gm16515の発現を抑制して、グロビン合成及びメラニン合成におけるGm16515の機能を評価した。
(1)方法
1-2細胞期のゼブラフィッシュ胚に、Gm16515に対するMorpholino anti-sense oligonucleotide (MO)(Gene Tool, LLC)を注射し、Gm16515のスプライシングを抑制した。当該ゼブラフィッシュの胚(MO処理胚)、及びコントロールとしてMO処理しない通常のゼブラフィッシュの胚(コントロール胚)のそれぞれについて授精させ、授精から48時間めのゼブラフィッシュの幼体(MO、コントロール)を、ヘモグロビン染色および遺伝子発現解析のために用いた。なお、ヘモグロビン染色は、o-dianisidine染料を用いて行い、染色後、各ゼブラフィッシュの幼体(MO、コントロール)を立体顕微鏡で観察した。
遺伝子発現解析は、グロビン遺伝子(αグロビン遺伝子、βグロビン遺伝子)、及びメラニン合成関連遺伝子(kita, kitlga, mitfa, tyr, dct, pomca)を対象として行い、リアルタイムPCRによって測定した。
なお、kita及びそのリガンドであるkitlga(kit ligand a)は、メラノブラストの分化に重要な役割を担っている遺伝子であり(非特許文献4:Rawls, J.F. & Johnson, S.L., Development (2000) 127, 3715-3724; 非特許文献5:Rawls, J.F. & Johnson, S.L., Development (2001) 128, 1943-1949)、mitfa(Microphthalmia-associated transcription factor a)もまた、メラニン合成酵素であるチロシナーゼやドーパクロム・トートメラーゼをコードする遺伝子(チロシナーゼ遺伝子 [tyr]、ドーパクロム・トートメラーゼ遺伝子 [dct])の発現をコントロールする重要な役割を果たしている(非特許文献6:White, R.M.& Zon, L.I., Cell Stem (2008) 3, 242-252)。Mitfaは、メラノブラスト分化の初期のマーカーであり、それに引き続いてkitaおよびdctが発現することが知られている(非特許文献7:Lister, J.A., et al., Development (1999) 126, 3757-3767;非特許文献8:Parichy, D.M., et al., Development (2000) 127, 3715-3724; 非特許文献9:Kejsh, R.N. & Eisen, J.S., Development (2000) 127, 515-525)(図5参照)。メラニンの生合成は、メラノソームの中で行われるが、プロメラニン濃縮ホルモン(pmch:melanin-concentration hormone)から誘導されるメラニン濃縮ホルモン(MCH:melanin-concentration hormone)がメラノソームの凝集を引き起こし、プロオピオメラノコルチン(pomca:proopio-melanocortin a)から誘導されるメラノサイト刺激ホルモン(MSH:melanocyte-stimulating hormone)がメラノソームの分散に引き起こすことが知られている。
(2)結果
(2-1)ヘモグロビン合成
ヘモグロビン染色の結果を図5(A)に、α及びβグロビン遺伝子の発現結果を図5(B)に示す。図5(A)に示すように、ヘモグロビン発現細胞(図中、赤茶色で示す)のレベルは、MO処理しなかったコントロールのゼブラフィッシュに比べて、MO処理したゼブラフィッシュにおいて有意に増加していた。また図5(B)に示すように、α及びβグロビン遺伝子の発現はいずれも、MO処理しなかったコントロールに比べて、MO処理したゼブラフィッシュにおいて顕著に増加していた。つまり、これらの結果から、ゼブラフィッシュについてGm16515の発現を抑制すると、α及びβグロビン遺伝子の発現が増加し、グロビン合成(ヘモグロビン産生)が亢進することが判明した。
この実験結果と前述する実験例3の結果から、Gm16515またはその遺伝子産物はグロビン遺伝子の発現を制御する機能を有すると考えられる。具体的には、Gm16515の発現増加(Gm16515遺伝子産物の増加)は、グロビン合成(ヘモグロビン産生)を負に制御するように作用し(dawn-regulation)、逆にGm16515の発現低下(Gm16515遺伝子産物の低下)は、グロビン合成(ヘモグロビン産生)を正に制御するように作用する(up-regulation)と考えられる。つまり、このことから、Gm16515若しくはその遺伝子産物、並びにGm16515の発現やGm16515タンパクの産生を亢進する作用を有する物質は、グロビン合成(ヘモグロビン産生)亢進によって発症または悪化する疾患の治療または改善剤として有効であると考えられる。
(2-2)メラニン合成
上記ヘモグロビン染色の結果(図5(A))から、MO処理しなかったコントロールのゼブラフィッシュに比べて、MO処理したゼブラフィッシュの目は黒く、また黒い縞模様を呈していることが判明した。目の黒色化及び黒の縞模様は、黒色色素メラニン(ユーメラニン)の合成及び沈殿によって生じることから、Gm16515の発現を抑制することでメラニン合成が促進されると考えられる。つまり、Gm16515またはその遺伝子産物にはメラニン合成を抑制する作用があると考えられる。
メラニン合成関連遺伝子(kita, kitlga, mitfa, tyr, dct, pomca)の発現結果を図7に示す。図7に示すように、MO処理しなかったコントロールのゼブラフィッシュに比べて、MO処理したゼブラフィッシュにおいて、kitlgaを除く全てのメラニン合成関連遺伝子の発現が増加していた。このことは、上記ゼブラフィッシュの観察結果と一致しており、Gm16515の発現を抑制することでメラニン合成が促進されること、つまり、Gm16515にはメラニン合成を抑制する作用があると考えられる。
実験例5 Gm16515タンパクのアセチルCoA結合能の評価
下記方法により、Gm16515タンパクのアセチルCoA(AcCoA)に対する結合能を評価した。
(1)方法
マウスGm16515タンパクを、6ヒスタグ(6xHis)で標識化した。かかる標識化Gm16515タンパク(15μg)を室温条件(25℃)で、アセチルCoAとともに1時間インキュベートした。6ヒスタグに結合性を有する樹脂(ProBondTM Resin: Invitrogen)を用いて、6ヒスタグ(6xHis)で標識化したGm16515タンパク(6xHis-labeled Gm16515)を結合させた後、当該樹脂を3回洗浄して、非結合のアセチルCoAを除去した。次いで、イミダゾールを用いてアセチルCoAを結合した標識化Gm16515タンパク(Gm16515結合アセチルCoA)を樹脂から脱離させて、脱離したGm16515結合アセチルCoAの量を、PicoProbeアセチルCoA分析キット(BioVision社製)を用いて、そのマニュアルに従って測定した(蛍光検出:Ex/Em=535nm/589nm)。
(2)結果
図8に、PicoProbeアセチルCoA分析キットに附属のアセチルCoA標準品を用いて作成した検量線(図中、―◆―で示す)と、上記測定値(図中、■で示す)を示す。
図において、測定値が検量線よりも下の領域内にあるということは、Gm 16515タンパクがアセチルCoAに結合していることを意味する。図に示すように、15μgのGm16515タンパクあたり28pmolのアセチル CoAが結合することが確認された。
実験例6 Gm16515タンパクのヒストンアセチル化能の評価
下記方法により、Gm16515タンパクのヒストンに対するアセチル化能を評価した。
(1)方法
マウスGm16515タンパクを、ヒストンおよびアセチルCoAとともにインキュベーションした。
ポジティブコントロールとして、ヒストンをアセチル化する酵素(HAT:Histon Acetyl-Transferase)を使用した。当該酵素は、ヒストン結合領域とともにCoA結合領域を有し、アセチルCoAをヒストンに運搬してアセチル基を転移する作用を有する。つまり、HATとの反応において、アセチルCoAのアセチル基はヒストンに転移され、フリーのCoAが遊離する。このため、反応により遊離したフリーのCoAの量を、ヒストン・アセチル化分析キット(Histon acetylation Assay Kit: BioVision)を用いて測定した。
(2)結果
結果を図9に示す。横軸は反応時間(hour)、縦軸は遊離したCoAの量を示す。Gm16515タンパク(―◇―)は、HAT(―△―)と比べて、遊離するフリーのCoA量は顕著に少なく、これからGm16515タンパクにはヒストンにアセチル基を転移する能力、すなわちヒストンをアセチル化する能力が極めて低いか、欠けていると判断された。
HATは、アセチルCoAと結合してヒストンにアセチル基を転移することで(ヒストンアセチル化)、グロビン合成を正に制御する。これに対して、Gm16515タンパクは、HATと同様にCoA結合領域を有しアセチルCoAと結合する能力を有するものの、上記結果で示すように、ヒストンにアセチル基を転移する能力(ヒストンアセチル化能力)を有しない。この結果は、実験例3におけるマウスのフレンド白血病細胞株を用いた実験結果と一致する(図4(A))。また、Gm16515タンパクは、HATとは異なり、グロビン合成を正に制御する作用を有しないどころか、実験例3に示すように、グロビン合成を負に制御する作用を有する。
またこの実験例に示す結果から、実験例3及び4で確認されたGm16515タンパクによるヒストンのアセチル化抑制作用、及びグロビン遺伝子の発現制御作用は、Gm16515タンパクの直接的な作用ではなく、Gm16515またはその遺伝子産物が主として間接的にヒストンのアセチル化を抑制し、またグロビン遺伝子の発現を制御しているものと考えられる。但し、本発明はこの理論に拘束されるものではない。
以上のin silico分析、アセチルCoA結合およびヒストンアセチル化能力に関する、Gm16515タンパクの機能性評価の結果から、Gm16515タンパクは、Gm16515タンパクは従来アセチル化の阻害を担うと考えられて来た“脱アセチル化酵素”とは異なる作用を有し、ヒストンのアセチル化酵素と競合して、アセチルCoAを捕捉することにより、ヒストンのアセチル化を抑制するアセチル化酵素競合阻害因子として機能すると考えられる。すなわち、Gm16515タンパクのグロビン合成を負に制御する作用は、アセチル化酵素と競合してアセチルCoAを捕捉し、ヒストンのアセチル化を抑制する作用に基づいている(図10参照)。

Claims (6)

  1. Gm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物を有効成分とするグロビン合成制御剤。
  2. 請求項1記載のグロビン合成制御剤、及び薬学的に許容される担体または添加剤を含有する、異常ヘモグロビン症の治療用医薬組成物。
  3. Gm16515若しくはそのホモログ、またはこれらの遺伝子産物を有効成分とするメラニン合成抑制剤。
  4. 請求項3記載のメラニン合成抑制剤を含有する、美白用組成物。
  5. 下記の工程を有する、グロビン合成またはメラニン合成を抑制する物質をスクリーニングする方法:
    (1)Gm16515またはそのホモログを発現しえる細胞と被験物質を接触させる工程、
    (2)上記細胞のGm16515またはそのホモログの発現量(被験測定値)と、被験物質を接触させない対照のGm16515またはそのホモログを発現しえる細胞のGm16515またはそのホモログの発現量(対照測定値)を測定する工程、
    (3)上記被験測定値が対照測定値よりも高い場合に、当該被験物質を、上記グロビン合成またはメラニン合成を抑制する物質として選択する工程。
  6. 下記の工程を有する、グロビン合成またはメラニン合成を亢進する物質をスクリーニングする方法:
    (1)Gm16515またはそのホモログを発現しえる細胞と被験物質を接触させる工程、
    (2)上記細胞のGm16515またはそのホモログの発現量(被験測定値)と、被験物質を接触させない対照のGm16515またはそのホモログを発現しえる細胞のGm16515またはそのホモログ発現量(対照測定値)を測定する工程、
    (3)上記被験測定値が対照測定値よりも低い場合に、当該被験物質を、上記グロビン合成またはメラニン合成を亢進する物質として選択する工程。
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