JP2015133784A - 誘導モータ - Google Patents

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Abstract

【課題】高効率、高信頼性、低振動及び低騒音を達成できる誘導モータを提供する。【解決手段】この誘導モータはロータコアと複数のロータ導体30とを具備する。ロータコアはシャフト孔と複数のスロットとを備えている。複数のスロットはシャフト孔及び側面のそれぞれから離間しており、シャフト孔を囲むように配置されている。ロータ導体30はスロットの中に配置されている。ロータ導体は芯材としての多孔質部分を含んでいる第1部材31とこれよりも電気抵抗が高い第2部材32とを含む。第2部材32は第1部材31の多孔質部分に含浸しており且つスロットの内側面に接している。ロータ導体30の第1部分30Aにおける第2部材32の体積割合は、第1部分30Aよりもロータコア10のシャフト孔側に位置しているロータ導体30の第2部分30Bにおける第2部材32の体積割合よりも高い。【選択図】図5

Description

本発明の実施形態は誘導モータに関する。
一般に、誘導モータは、電磁鋼板から打ち抜かれて成形されたコアの積層体からなる筒状のロータコアと、ロータコアのそれぞれの底面に対向する2つのエンドリングと、ロータコアの一方の底面から他方の底面へと貫通して2つのエンドリングを電気的に接続する複数のロータ導体とから構成されている。ロータコアは、一般に、誘導モータの回転軸となるシャフトが挿入されるシャフト孔を備える。ロータ導体は、一般に、シャフト孔から離間し且つシャフト孔を囲むように設けられた複数のスロットのそれぞれの中に配置される。2つのエンドリングとロータ導体とは、例えばアルミニウム製であり、低圧鋳造法又はダイキャストなどの方法により一体成形されている。
近年、誘導モータの効率向上のため、アルミニウムよりも電気抵抗が低い銅がロータ導体としての材料として使用されるようになっている。しかしながら、銅の融点は、純銅で1083℃であり、例えば純アルミニウムでは660℃であるアルミニウムの融点よりも高いため、アルミニウム用の製造設備では製造できない。また、鉄系材料からなる金型を用いて銅系材料を低圧鋳造やダイキャストで用いて成形しようとすると、金型の消耗が激しくなる。すなわち、銅をロータ導体として使用すると、製造設備や金型費を含めた製造コストが急増するという課題があった。
銅の高い融点を原因とした問題を解決するために、一体成形によらずエンドリングとロータ導体とを接合する方法も開発されている。しかしながら、一体成形によらない方法では、ロータコアのスロットとロータ導体との間のクリアランスをなくすには限界がある。ロータコアのスロットとロータ導体との間にクリアランスが存在すると、モータの高速回転において、振動や騒音が発生するという問題がある。また、銅の標準電極電位は25℃で+0.34Vであり、アルミニウムの標準電極電位は25℃で−1.66Vであり、両者の標準電極電位の差が大きい。そのため、ロータコアのスロットとロータ導体との間にクリアランスが存在し、吸湿等の影響でこのクリアランスに水分が存在すると、ガルバニック腐食が進行し、アルミニウム部材の腐食による損傷が懸念される。そのため、ロータコアのスロットとロータ導体との間にはクリアランスがないことが望ましい。
アルミニウム材料と銅材料とを一体成形により接合するためのろう材として、低融点のスズを用いる技術も開発されている。しかしながら、アルミニウム材と銅材との間に錫が存在すると、錫の電気伝導率は純錫で15%IACSであり低いため、銅材料とアルミニウム材料との接合界面の電気抵抗が増加し、モータ効率が低下するという問題があった。
特開2012−191789号公報 特開2002−335659号公報
(社)日本銅センター、銅モータロータ分解結果、2012年10月
本発明が解決しようとする課題は、高効率、高信頼性、低製造コスト、低振動及び低騒音を達成できる誘導モータを提供することにある。
実施形態によると、誘導モータが提供される。この誘導モータは、ロータコアと、複数のロータ導体とを具備する。ロータコアは、第1の底面と、第2の底面と、第1の底面及び第2の底面の間に位置する側面とを有する筒型形状を有する。ロータコアは、シャフト孔と、複数のスロットとを備えている。シャフト孔は、第1の底面から第2の底面まで貫通している。複数のスロットは、シャフト孔及びロータ導体側面のそれぞれから離間しており、シャフト孔を囲むように配置されている。複数のスロットは、それぞれ、第1の底面から第2の底面まで貫通しており、内側面を有している。複数のロータ導体は、それぞれ、複数のスロットのそれぞれの中に配置されている。ロータ導体は、芯材としての第1の部材と、第2の部材とを含む。第1の部材は、少なくとも表面に多孔質部分を含んでいる。第2の部材は、第1の部材の多孔質部分に含浸している。第2の部材は、ロータコアのスロットの内側面に接している。第2の部材の融点は、第1の部材の融点よりも低い。第2の部材の電気抵抗は、第1の部材の電気抵抗よりも高い。ロータ導体は、第2の部材の一部分を含む第1の部分と、第2の部材の他の部分を含む第2の部分とを含む。ロータ導体の第2部分は、第1の部分よりもロータコアのシャフト孔側に位置している。第1の部分における第2の部材の体積割合は、第2の部分における第2の部材の体積割合よりも高い。
図1は、実施形態に係る一例の誘導モータの概略斜視図である。 図2は、図1に示す誘導モータが具備するロータコアの概略斜視図である。 図3は、図1に示す誘導モータの一平面における概略断面図である。 図4は、図1に示す誘導モータの他の平面における概略断面図である。 図5は、実施形態に係る誘導モータが具備することができる複数の例のロータ導体の概略断面図である。 図6は、図5に示すそれぞれの例のロータ導体の第1の部材の概略断面図である。 図7は、実施形態に係る誘導モータが具備することができる他の複数の例のロータ導体の概略断面図である。 図8は、図7に示すそれぞれの例のロータ導体の第1の部材の概略断面図である。 図9は、実施例1の誘導モータが具備するロータ導体の第1の部材及び第2の部材の存在状態を示した図である。 図10は、実施例2の誘導モータが具備するロータ導体の第1の部材及び第2の部材の存在状態を示した図である。 図11は、実施例3の誘導モータが具備するロータ導体の第1の部材及び第2の部材の存在状態を示した図である。 図12は、実施例4の誘導モータが具備するロータ導体の第1の部材及び第2の部材の存在状態を示した図である。
以下に、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
(実施形態)
実施形態によると、誘導モータが提供される。この誘導モータは、ロータコアと、複数のロータ導体とを具備する。ロータコアは、第1の底面と、第2の底面と、第1の底面及び第2の底面の間に位置する側面とを有する筒型形状を有する。ロータコアは、シャフト孔と、複数のスロットとを備えている。シャフト孔は、第1の底面から第2の底面まで貫通している。複数のスロットは、シャフト孔及び側面のそれぞれから離間しており、シャフト孔を囲むように配置されている。複数のスロットは、それぞれ、第1の底面から第2の底面まで貫通しており、内側面を有している。複数のロータ導体は、それぞれ、複数のスロットのそれぞれの中に配置されている。ロータ導体は、芯材としての第1の部材と、第2の部材とを含む。第1の部材は、少なくとも表面に多孔質部分を含んでいる。第2の部材は、第1の部材の多孔質部分に含浸している。第2の部材は、ロータコアのスロットの内側面に接している。第2の部材の融点は、第1の部材の融点よりも低い。第2の部材の電気抵抗は、第1の部材の電気抵抗よりも高い。ロータ導体は、第2の部材の一部分を含む第1の部分と、第2の部材の他の部分を含む第2の部分とを含む。ロータ導体の第2部分は、第1の部分よりもロータコアのシャフト孔側に位置している。第1の部分における第2の部材の体積割合は、第2の部分における第2の部材の体積割合よりも高い。
実施形態に係る誘導モータが具備するロータ導体は、第2の部材がロータコアのスロットの内側面に接している。また、第1の部材の多孔質部分及びそれに含浸した第2の部材は、アンカー効果を発揮することができ、そのおかげで、製造過程及び使用過程における熱応力による第1の部材と第2の部材との間の剥離を防ぐことができる。これらの結果、実施形態に係る誘導モータは、ロータコアとロータ導体との間のクリアランスが生じるのを防ぐことができる。
更に、実施形態に係る誘導モータが具備するロータ導体は、芯材としての第1の部材が第2の部材よりも電気抵抗が低い。また、ロータ導体は、第1の部分における第2の部材の体積割合が、第1の部分よりもロータコアのシャフト孔側に位置する第2の部分における第2の部材の体積割合よりも高い。そのため、ロータ導体は、誘導モータの回転軸から離れた第1の部分の電気抵抗が誘導モータの回転軸に近い第2の部分の電気抵抗よりも高い。このようなロータ導体を具備する実施形態に係る誘導モータは、始動時トルクを高めることができる。
このように、実施形態に係る誘導モータは、ロータ導体とロータコアとの間のクリアランスの発生を抑制でき、優れた効率を示すことができる。よって、実施形態に係る誘導モータは、高効率、高信頼性、低振動及び低騒音を達成することができる。
加えて、実施形態に係る誘導モータは、第2部材の融点が第1部材の融点より低いため、ロータ導体を製造する設備、例えば金型の寿命を延伸することができる。そのため、実施形態に係る誘導モータは、低製造コストを実現することができる。
次に、実施形態に係る誘導モータをより詳細に説明する。
ロータコアとしては、例えば、電磁鋼を含むものを用いることができる。ロータコアは、電磁鋼板の積層体でもよいし、又は電磁鋼帯でもよい。電磁鋼板は、無方向性電磁鋼板でもよいし、又は方向性電磁鋼板でもよい。電磁鋼帯は、無方向性電磁鋼帯でもよいし、又は方向性電磁鋼帯でもよい。無方向性の電磁鋼では鋼材の全ての方向にほぼ均一な磁気特性が得られるため、電磁鋼は無方向性であることが好ましい。
実施形態に係る誘導モータは、ロータコアの第1の底面と第2の底面とにそれぞれ対向した2つのエンドリングを更に具備することができる。2つのエンドリングは、複数のロータ導体を介して電気的に接続され得る。2つのエンドリングは、ロータ導体の第2の部材と一体成形されていることが好ましい。このようなロータ導体及び2つのエンドリングは、例えば、鋳造などにより容易に一体成形することができる。
ロータ導体の芯材としての第1の部材は、例えば、バルク部分と、このバルク部分の表面に形成された多孔質部分とを含むことができる。ここで、バルク部分とは、鋳造材料、又は、塑性加工をした展伸材料であり、不可避な空孔欠陥以外ほぼ100%の中実な部分である。
第1の部材のバルク部分としては、展伸材、又は鋳造材を用いることができる。
多孔質部分の材料は、バルク部分と同質又は異質材料から選定しても良いが、少なくとも第2の部材より融点が高く、電気伝導率が第2部材と同等以上のものが望ましい。
多孔質部分の空間率と比例する表面積は、特に制限すべきでないが、少なくとも平面の場合と比較して2倍以上、空間率として30〜70vol%であることが望ましい。空間率がこの範囲内にあると、第2の部材の含浸がより容易であると共に、多孔質部分の強度を十分に確保することできる。多孔質部分の厚さおよび平均孔径は、特に制限すべきでないが、第1の部材と第2の部材の界面強度と電気伝導率のバランス及び第2部材の多孔質部分への含浸の難易度によって適宜に選定する。一般に、多孔質部分は、厚さが数十μm〜数mmであることが望ましく、平均孔径が数十μm〜数mmであることが望ましい。
或いは、ロータ導体の第1の部材は、全体が多孔質であってもよい。例えば、このような第1の部材は、多孔質粉末焼結体であり得る。
ロータ導体の第1の部材に含まれる材料としては、例えば、銅、電気伝導率が80%IACS以上の銅合金及びセラミックス粒子分散強化銅を挙げることができる。具体例としては、C1020無酸素銅材、C1100タフピッチ銅材、アルミナ粒子が分散したC1020無酸素銅材が挙げられる。C1020無酸素銅材は、電気伝導率が約100%IACSであり、融点が1083℃である。C1100タフピッチ銅材は、電気伝導率は約97%IACSであり、融点が1083℃である。0.5重量%のアルミナ粒子が分散した強化C1020無酸素銅材に0.5重量%のアルミナ粒子が分散した強化銅は、電気伝導率が約97%IACSであり、融点が1083℃である。C1020無酸素銅材にアルミナ(Al23)粒子が分散した強化銅は、C1020無酸素銅材に比べて、室温強度及び高温強度に優れる。
ロータ導体の第1の部材のバルク部分は、上記材料を2種類以上含むこともできる。上記材料を2種類以上含むバルク部分は、例えば、クラッド材であってもよい。クラッド材とは、上記材料を2種類以上貼り合わせたものである。
なお、本願明細書において、電気伝導率(単位:%IACS)は、国際標準軟銅線の電気伝導率を100%IACSとした際の、各材料の相対電気伝導率である。国際標準軟銅線の電気伝導率は、20℃の温度で、1.72μΩ・cmである。
ロータ導体の第2の部材に含まれる材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金及びセラミックス粒子分散強化アルミニウムを挙げることができる。具体例としては、A1050アルミニウム材、A1080アルミニウム材、A1100アルミニウム材などの純アルミニウム材及びA6061アルミニウム材、A4032アルミニウム材などのアルミニウム合金材を用いることができる。A1050アルミニウム材は、電気伝導率が約60%IACSであり、融点が657℃である。A1080アルミニウム材は、電気伝導率が約61%IACSであり、融点が657℃である。A1100アルミニウム材は、電気伝導率が約59%IACSであり、融点が657℃である。A6061アルニミウム材は、電気伝導率が約47%IACSであり、融点が652℃であり、A4032アルミニウム材は、電気伝導率が約40%IACSであり、融点が571℃である。この中で、A4032アルミニウム合金材は、融点が低く、溶湯流動性が高いため、ダイキャスト鋳造に特に適している。
先に説明したように、ロータ導体のうち第1の部分における第2の部材の体積割合は、ロータ導体のうち第1の部分よりもシャフト孔側に位置する第2の部分における第2の部材の体積割合よりも高い。第1及び第2の部分における第2の部材の体積割合の差が大きいほど、始動時トルクが大きくなる。更に、ロータ導体がロータコアのシャフト孔側からロータコアの側面側に向かって増加する第2の部材の体積割合の傾斜を有していると、始動時トルクを更に大きくすることができる。例えば、ロータ導体が、先に説明した全体が多孔質である第1の部材を含み、この第1の部材がその一端から他端に向けて減少する空隙率の傾斜を有しているものを用いると、第2の部材の体積割合がこのように傾斜したロータ導体を得ることができる。
なお、一般に、アルミニウムの低圧鋳造、ダイキャスト法、溶湯鋳造などは、大気中でアルミニウムを溶融し、金型のキャビティ内に高速で溶湯を充填し、加圧して、鋳造を行っている。これらの鋳造では、キャビティ内に流入したアルミニウム溶湯表面に酸化被膜が形成し、この酸化被膜は製品内部に一部残存することがある。そのため、金型方案は、一般に、エアー抜き部、押し湯部などに酸化被膜を排出できるように設計されている。しかしながら、キャビティ内に銅材料のような挿入部材が存在すると、流入したアルミニウム溶湯が挿入部材の表面に接触すると同時に凝固が進行し、アルミニウム溶湯の表面の酸化被膜が界面に滞留してしまう。滞留した酸化被膜は、アルミニウムと銅との拡散反応を障止する。ここで、アルミニウムの熱膨張係数は、純アルミニウムで23×10-6/℃であり、純銅16.6×10-6/℃である銅の熱膨張係数との差が大きい。そのため、アルミニウムと銅との拡散が十分に進行していないアルミニウムと銅との接合界面では、製造過程及び使用過程において熱応力により剥離が生じやすい。その結果、上記クリアランスが生じて、振動、騒音及びガルバニック腐食の問題が懸念される。
実施形態に係る誘導モータは、銅を含み得る芯材としての第1の部材と、アルミニウムを含み得る第2の部材とを含むロータ導体を具備している。しかしながら、実施形態に係る誘導モータは、先に説明したように、第1の部材の多孔質部分及びそれに含浸した第2の部材が、アンカー効果を発揮することができ、そのおかげで、製造過程及び使用過程における熱応力による第1の部材と第2の部材との間の剥離を防ぐことができる。そのおかげで、実施形態に係る誘導モータは、ロータ導体とロータコアとの間のクリアランスの発生を抑えることができ、ひいてはクリアランスを原因とする振動、騒音及びガルバニック腐食を抑えることができる。
誘導モータが具備するロータ導体の各部分における第1の部材及び第2の部材の存在は、以下の手順で確認することができる。
まず、各部分における断面の顕微鏡写真を撮る。撮った顕微鏡写真を画像解析することにより、その視野における第2の部材が占める面積率を算出することができる。この面積率を体積率に変換することで、ロータ導体の各部分における第2の部材の体積割合を求めることができる。
誘導モータが具備するロータ導体が含む第1の部材の電気抵抗と、ロータ導体及びエンドリングが含む第2の部材の電気抵抗とは、以下の手順で測定することができる。
まず、ロータ導体の第1の部材及び第2の部材からそれぞれ棒状の試験片を採取する。試験片の両端に電流端子を接続して、一定の電流を流した際の電圧降下量を電流端子間に接続した電圧端子にて計測する。これらの結果をオームの法則に適用することで、ロータ導体の第1の部材及び第2の部材の電気抵抗を算出することができる。このような方法は、四端子法と呼ばれる。
ロータ導体の第1の部材は、例えば以下の手順で製造することができる。
<全体が多孔質である第1の部材の製造方法の例>
全体が多孔質であるロータ導体の第1の部材は、例えば以下に説明するように、粉末冶金法によって製造することができる。
まず、先に説明した第1の部材の材料を含む複数の平均粒径を持った金属粉末を準備する。準備した金属粉末を平均粒径の小さい(又は大きい)順に金型に入れ、圧縮成形を行った後、金属粉末の溶融温度以下の温度(例えば:溶融温度Tm×0.8)で真空または不活性ガス雰囲気下で加熱して焼結することにより、多孔質体であるロータ導体の第1の部材を得ることができる。なお、圧縮成型時、成形体の形状を維持するため、金属粉末にバインダ、例えばPVA(ポリビニルアルコール)を添加しても良い。
ここで、製造しようとする第1の部材の形状に合わせて金型を選択することにより、様々な形状のロータ導体の第1の部材を製造することができる。また、図6に示すように、所定形状の金型のキャビティ内にロータ導体のシャフト孔側からロータコアの側面側に向かって複数の金属粉末を平均粒径の小さい方から大きい方へ順に充填し、圧縮成形を行った後、焼結することによって、ロータ導体のロータコアのシャフト孔側からロータコアの側面側に向かって平均粉末粒径の小さい方から大きい方へ順に変化させた多孔質焼結体、すなわち、空間率が小さい方から大きい方へ順に傾斜した多孔質焼結体を得ることができる。
<バルク部分とその表面に形成された多孔質部分とを含む第1の部材の製造方法の例>
バルク部分とその表面に形成された多孔質部分とを含む第1の部材は、例えば以下の手順で製造することができる。
まず、先に説明した第1の部材の材料を含むバルク部品を準備する。このバルク部品が、ロータ導体の第1の部材のバルク部分となる。
次いで、このバルク部品の一部の表面に、第1の部材の材料を含む多孔質層を設ける。この多孔質層が、ロータ導体の第1の部材の多孔質部分となる。
多孔質層は、例えば、第1の部材の材料の粉末をバルク部品の表面に配置し、かくして得られた部品を例えば真空又は不活性ガス雰囲気中で加熱して焼結させることによって設けることができる。
第1の部材の材料の粉末は、例えば、バインダと混合させて得られた塗料をバルク部品の表面に塗布する又は吹付けることによって、バルク部品の表面に配置することができる。第1の部材の材料の粉末とバインダとを交互に吹付けることもできる。焼結は、バインダを硬化させた後に行っても良い。
或いは、多孔質層は、バルク部品の少なくとも一部の表面に、三次元プリンターにより、第1の部材の材料の粉末とバインダとをインクジェット方式で印刷し、レーザービームなどにより直接焼結させることによって設けることもできる。
或いは、多孔質層は、バルク部品の少なくとも一部の表面に、第1の部材の材料の粉末を熱間又は冷間で高速溶射し、かくして得られた部品を焼結させることによって設けることもできる。
なお、第1部材の表面積を増やす方法は、バルク部品をブラスト加工、ローレット、ダブテイル加工などが挙げられる。しかしながら、このような加工は、表面積2倍以上を得ることが難しく、経済的な観点から見て非現実的である。
次に、図面を参照しながら、実施形態に係る誘導モータの具体例を詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る一例の誘導モータの概略斜視図である。図2は、図1に示す誘導モータが具備するロータコアの概略斜視図である。図3は、図1に示す誘導モータの、図1に示したA−A’方向に平行であり且つB−B’方向に垂直な一平面における概略断面図である。図4は、図1に示す誘導モータの、図1に示したA−A’方向及びB−B’方向に平行な一平面における概略断面図である。図5(b)は、図3のV部の拡大図である。図6(b)は、図5(b)に示すロータ導体の第1部材の断面図である。
図1、図3及び図4に示す誘導モータ100は、筒型形状を有するロータコア10と、2つのエンドリング20と、複数のロータ導体30とを具備している。
筒型形状を有するロータコア10は、斜視図を図2に示したように、第1の底面11と、第2の底面12と、第1の底面11と第2の底面12との間に位置する側面13とを有している。
ロータコア10は、図2、図3及び図4に示すように、第1の底面11から第2の底面12まで貫通したシャフト孔14を備えている。シャフト孔14は、誘導モータ100が回転するための回転軸となるシャフト(図示しない)が挿入されるように構成されている。
ロータコア10は、図2及び図3に示すように、それぞれ第1の底面11から第2の底面12まで貫通した、複数のスロット15を更に備えている。複数のスロット15のそれぞれは、図2及び図3に示すように、ロータコア10の側面13及びシャフト孔14のそれぞれから離間している。そして、複数のスロット15は、図2及び図3に示すように、シャフト孔14を中心とした環状に並んでいる。それにより、複数のスロット15は、シャフト孔14を囲んで配置されている。なお、図2では、ロータコア10のスロット15の一部の図示を省略している。そのため、図2と図3とでは、ロータコア10のスロット15の数が異なることに留意されたい。
図4に示すように、このようなロータコア10の第1の底面11に、1つのエンドリング20が対向している。また、ロータコア10の第2の底面12に、もう1つのエンドリング20が対向している。
エンドリング20のそれぞれは、図1及び図4に示すように、ロータコア10に対向していない面に、放熱用の3つのフィン21を備えている。
図4に示すように、2つのエンドリング20は、複数のロータ導体30により、互いに電気的に接続されている。
複数のロータ導体30は、それぞれ、ロータコア10の複数のスロット15のそれぞれの中に配置されている。
複数のロータ導体30は、図3、図4、及び図5(b)に示すように、第1の部材31と第2の部材32とを含んでいる。第2の部材32は、第1の部材31よりも電気抵抗が高い。
図5(b)及び図6(b)に示すように、第1の部材31は、複数の粒子31aが凝集して形成されている。そのため、第1の部材31は、全体が多孔質となっている。また、複数の粒子31aは、図6(b)の上方に示す1つの端部33から下方に示すもう1つの端部34にかけてより密に凝集している。そのため、第1の部材31は、一方の端部33から下方に示す端部34にかけて減少する、空隙率の勾配を有している。
図3、図4及び図5(b)に示すように、第2の部材32は、全体が多孔質体である第1の部材31の空隙に含浸されている。また、第2の部材32は、図4に示すように、ロータコア10のスロット15を充填しており、スロット15の内側面15aに接している。
図5(b)に示すように、ロータ導体30の第1の部材31の空隙率が大きい方の端部33は、方位Dを向いている。また、第1の部材31の空隙率が小さい方の端部34は、方位D’を向いている。図5(b)において、方位Dは、図1、図3及び図4に示すロータコア10の側面13に向いた方位である。一方、方位D’は、図1、図3及び図4に示すロータコア10のシャフト孔14に向いた方位である。
図5(b)に示すように第2の部材32は第1の部材31に含浸しているので、ロータ導体30は、第1の部材31の一方の端部33を境とした、第2の部材32の一部分を含む第1の部分30Aと、第2の部材32の他の部分を含む第2の部分30Bとを含んでいる。ここで、図5(b)に示すように、ロータ導体30の第2の部分30Bは、第1の部分30Aよりも方位D’側、つまりロータコア10のシャフト孔14側に位置している。図5(b)からも視覚的に明らかなように、ロータ導体30の第1の部分30Aにおける第2の部材32の体積割合は、第2の部分30Bにおける第2の部材32の体積割合より高い。
また、図5(b)に示すように、ロータ導体30の第1の部材31は、D−D’方向において、ロータコア10の側面13側からロータコア10のシャフト孔14側にかけて減少する空隙率の傾斜を有している。そのため、ロータ導体30は、ロータコア10の側面13側からロータコア10のシャフト孔14側にかけて減少する、第2の部材32の体積割合の傾斜を有している。
図1、図3及び図4に示す誘導モータ100は、ロータ導体30の第2の部材32と2つのエンドリング20とが一体成形されている。
図5(a)及び図5(c)は、ロータ導体30の他の例の断面図を示している。図6(a)及び図6(c)は、図5(a)及び図5(c)に示すロータ導体30のそれぞれが含む第1の部材31の断面図を示している。図5(a)及び図5(c)に示す例のロータ導体30は、第1の部材31の1つの端部33の形態を除き、図5(b)に示した例のロータ導体30と同様である。図5に示したように、図5(a)に示した例のロータ導体30は、第1の部材31の占める体積割合が図5(b)の例よりも小さい。また、図5に示したように、図5(c)に示した例のロータ導体30は、第1の部材31の占める体積割合が図5(b)の例よりも大きい。
図7(b)は、ロータ導体30の更に他の例の断面図を示している。図8(b)は、図7(b)に示すロータ導体30が含む第1の部材31の断面図を示している。
図7(b)に示すロータ導体30は、第1の部材31が、バルク部分35と、その表面に形成された多孔質部分36とから構成されている点で、図5(b)に示した例のロータ導体30と大きく異なる。
図7(b)及び図8(b)に示す第1の部材31はその表面のみが多孔質部分36であるため、図7(b)に示すように、第2の部材32の一部は、第1の部材31の多孔質部分36のみに含浸されている。図8(b)に示すロータ導体30は、バルク部分35と第2の部材32との界面を含むバルク部分35の1つの端部33’を境として、第2の部材32の一部分を含む第1の部分30Aと、第2の部材32の他の部分を含む第2の部分30Bとを含んでいる。ここで、図7(b)に示すように、ロータ導体30の第2の部分30Bは、第1の部分30Aよりも方位D’側、つまりロータコア10のシャフト孔14側に位置している。また、第2の部分30Bは、方位D’を向いた、バルク部分35と第2の部材32との界面を含むバルク部分35の1つの端部34’を含む。図7(b)からも視覚的に明らかなように、ロータ導体30の第1の部分30Aにおける第2の部材32の体積割合は、第2の部分30Bにおける第2の部材32の体積割合より高い。
図7(a)及び図7(c)は、ロータ導体30の更に他の例の断面図を示している。図8(a)及び図8(c)は、図7(a)及び図7(c)に示すロータ導体30のそれぞれが含む第1の部材31の断面図を示している。図7(a)及び図7(c)に示す例のロータ導体30は、第1の部材31のバルク部分35の1つの端部33’の形態を除き、図7(b)に示した例のロータ導体30と同様である。図7に示したように、図7(a)に示した例のロータ導体30は、第1の部材31の占める体積割合が図7(b)の例よりも小さい。また、図5に示したように、図7(c)に示した例のロータ導体30は、第1の部材31の占める体積割合が図7(b)の例よりも大きい。
実施形態に係る誘導モータは、ロータ導体の第2の部材がロータ導体の第1の部材の多孔質部分に含浸しており且つロータコアのスロットの内側面に接している。また、ロータ導体の第1の部分における第2の部材の体積割合が、第1の部分よりもロータコアのシャフト孔側に位置するロータ導体の第2の部分における第2の部材の体積割合よりも高い。これらのおかげで、実施形態に係る誘導モータは、ロータ導体とロータコアとの間のクリアランスの発生を抑制でき、優れた効率を示すことができる。加えて、実施形態に係る誘導モータは、第2の部材の融点が第1の部材の融点よりも低い。これらのおかげで、実施形態に係る誘導モータは、高効率、高信頼性、低製造コスト、低振動及び低騒音を達成することができる。
(実施例)
以下、実施例についてさらに詳細に説明する。以下の実施例及び比較例では、モータ規格を200V、4極、出力2kWとした誘導モータをそれぞれ製造した。
(実施例1)
実施例1では、以下の手順により、図1〜図4に示す誘導モータ100と同様の構造を有する誘導モータを製造した。
まず、図2に示すロータコア10を準備した。
次に、図8(c)に示す第1の部材31を作製した。バルク部品35としては、電気伝導率が100%IACSであり、融点が1083℃であるC1020無酸素銅材を用いた。
このバルク部品35の表面に、樹脂系バインダであるPVAを塗布した。次いで、平均粒径が75μmの純Cu粉末をバルク部品35の表面に付着させた。次いで、Cu粉末付着層を有するバルク部品35を、水素雰囲気中で950℃で1時間にわたり焼結させた。かくして、バルク部分35とバルク部分35の表面に形成された多孔質部分36とを含んだ第1の部材31が得られた。第1の部材31は32個製造した。
次に、第2の部材32及びエンドリング20の材料として、A1050アルミニウム材を溶融して、700℃で溶融状態にあるアルミニウムを準備した。
次に、上記のようにして得られた第1の部材31をロータコア10のスロット15のそれぞれに挿入した。この際、第1の部材31を、スロット15のうちロータコア10のシャフト孔14側に偏らせた。
第1の部材31が挿入されたロータコア10を金型に移した。この金型は、図1及び図4に示すエンドリング20の形状に対応するキャビティを有していた。このような金型において、先に準備した溶融状態のアルミニウムをプランジャー圧力70MPaで低圧鋳造して、第1の部材31の多孔質部分36に含浸し且つロータコア10のスロット15の内側面15aに接する第2の部材32を得た。
かくして、図7(c)に示す構造のロータ導体30を具備する実施例1の誘導モータ100を作製した。
(実施例2)
実施例2では、図8(b)に示す第1の部材31を作製したこと以外は実施例1と同様にして、誘導モータ100を作製した。実施例2の誘導モータ100は、図7(b)に示す構造のロータ導体30を具備していた。
(実施例3)
実施例3では、図6(c)に示す第1の部材31を作製したこと及び低圧鋳造におけるプランジャー圧力を70MPaにしたこと以外は実施例1と同様にして、誘導モータ100を作製した。
第1の部材31は、以下の手順で作製した。
まず、所定形状の分割金型と、平均粒径がそれぞれ10μm、25μm、50μm及び100μmである4種類の純Cu粉末とを準備した。純Cu粉末は、それぞれ、PVAを3重量%含有していた。このキャビティ内に、一端から他端に向かって平均粒径の傾斜が形成するように、4種類の純Cu粉末を順に充填した。この際、各々の平均粒径の金属粉末の充填高さが等しくなるように粉末の充填量を調整した。充填後、2MPaの圧力で圧縮成形を行い、図6(c)に示す第1の部材31の形状に成形した。
かくして得られた成形体を、水素雰囲気中で950℃で1時間にわたり焼結した。かくして、図6(c)に示す多孔質である第1の部材31が得られた。
実施例3の誘導モータ100は、図5(c)に示す構造のロータ導体30を具備していた。
(実施例4)
実施例4では、図6(b)に示す第1の部材31を作製したこと以外は実施例1と同様にして、誘導モータ100を作製した。実施例4の誘導モータ100は、図7(c)に示す構造のロータ導体30を具備していた。
(実施例5)
実施例5では、バルク部品35として、電気伝導率が97%IACSであり、融点が1083℃である0.5重量%のAl23粒子が分散したC1020無酸素銅材を用いたこと以外は実施例1と同様にして、誘導モータ100を作製した。実施例5の誘導モータ100は、図7(c)に示す構造のロータ導体30を具備していた。
(実施例6)
実施例6では、第2の部材32の材料として、電気伝導率が40%IACSであり、融点が571℃であるA4032アルミニウム合金材を用いたこと以外は実施例1と同様にして、誘導モータ100を製造した。実施例6の誘導モータ100は、図7(c)に示す構造のロータ導体30を具備していた。
(比較例1)
比較例1では、第1の部材31を用いずに、ロータ導体及びエンドリングをA1050アルミニウム材を用いたダイキャスト一体化鋳造によって形成した以外は実施例1と同様にして、誘導モータを製造した。
(比較例2)
比較例2では、第2の部材32を用いずに、ロータ導体及びエンドリングをC1020無酸素銅材を用いたダイキャスト一体化鋳造によって形成し、誘導モータを製造した。
(比較例3)
比較例3では、低圧鋳造を行わずに、A1050アルミニウム材製のエンドリングと、C1020無酸素銅材の第1部材とを融点198℃のSn−9重量%Znはんだを用いて接合し、誘導モータを製造した。
[評価]
(第1の部材及び第2の部材の体積割合)
実施例1〜6のそれぞれの誘導モータ100が具備するロータ導体30における第1の部材31及び第2の部材32の体積割合を、先に説明した方法により測定した。
実施例1〜6のそれぞれの誘導モータ100が具備するロータ導体30の全体における第1の部材31及び第2の部材32の体積割合を表1に示す。また、実施例1の誘導モータ100が具備するロータ導体30の図7(c)に示したD−D’方向における第1の部材31及び第2の部材32の体積割合の変化を、図9に示す。同様に、実施例2〜4のロータ導体30の第1の部材31及び第2の部材32の体積割合の変化を、それぞれ、図10〜図12に示す。実施例5及び実施例6のロータ導体30における第1の部材31及び第2の部材32の体積割合の変化は、実施例1と同様であった。
図9及び図10に示すように、実施例1、2、5及び6の誘導モータ100は、ロータ導体30の第1の部分30Aにおける第2の部材32の体積割合が、第1の部材31の端部31’を境として第1の部分30Aよりもロータコア10のシャフト孔14側に位置する第2の部分30Bにおけるそれよりも高かった。同様に、図11及び図12から、実施例3及び4の誘導モータ100は、ロータ導体30の第1の部分30Aにおける第2の部材32の体積割合が、第1の部材31の端部31を境として第1の部分30Aよりもロータコア10のシャフト孔14側に位置する第2の部分30Bにおけるそれよりも高いことが分かる。
また、図10及び図11に示すように、実施例3及び4の誘導モータ100は、第1の部材31の端部33から端部34にかけて減少する第2部分の体積割合の傾斜を有していることが分かる。
(一次銅損、始動時トルク、耐食性及び騒音)
実施例1〜6のそれぞれの誘導モータ100、及び比較例1〜3の誘導モータの一次銅損、始動時トルク、耐食性及び騒音を、JIS C4210「一般用低圧三相かご型誘導電動機」に従って評価した。その結果を以下の表1及び表2に示す。
表1及び表2では、各実施例及び比較例の誘導モータ100の一次銅損、始動時トルク、耐食性及び騒音を、比較例1の誘導モータのそれらを100とした相対値を示している。
Figure 2015133784
Figure 2015133784
[結果]
表1及び表2に示したように、実施例1〜6の誘導モータ100は、一次銅損が、比較例2のC1020無酸素銅のダイキャスト一体化鋳造の誘導モータに比べて僅かに増加したものの、比較例1のA1050アルミニウムのダイキャスト一体化鋳造の誘導モータに比べて遥かに低くかった。また、実施例1〜6の誘導モータでは、始動時のトルクを高く確保することができた。特に、実施例2〜4及び実施例6の誘導モータ100は、実施例1及び実施例5の誘導モータ100に比べて、一次銅損が高かったが、始動時トルクを高くすることができた。すなわち、実施例1〜6の誘導モータは、低い一次銅損と始動時の高いトルクとを両立することができた。その結果、実施例1〜6の誘導モータ100は、比較例1の誘導モータに比べて高いモータ効率を示すことができた。
加えて、実施例1〜6の誘導モータ100は、耐食性試験において隙間腐食を示さなかった。更に、実施例1〜6の誘導モータ100は、アルミニウム材のダイキャスト一体化鋳造により得られたエンドリング及びロータ導体を具備する比較例1と同様の騒音試験の結果を示した。すなわち、実施例1〜6の誘導モータ100は、高信頼性、低振動及び低騒音を達成することができた。
また、実施例5では、先に説明したように、バルク部品35として電気伝導率が97%IACSである0.5重量%のAl23粒子が分散したC1020無酸素銅材を用いた。このように、実施例5ではバルク部品35としてC1020無酸素銅材以外の銅材を用いたが、表1に示したように、実施例5の誘導モータ100は、実施例1〜4と同様に、比較例1の誘導モータに比べて高いモータ効率を示すことができた。
なお、実施例5で用いた0.5重量%のAl23粒子が分散したC1020無酸素銅材は、アルミナ粒子を分散させていないC1020無酸素銅材よりも室温及び高温強度が高いものである。そのため、実施例5の誘導モータ100は、優れた信頼性を達成することができる。
実施例6では、先に説明したように、第2の部材32の材料として電気伝導率が40%IACSであるA4032アルミニウム合金材を用いた。このように、実施例6では第2の部材32の材料としてA1050アルミニウム材以外のアルミニウム合金材を用いたが、表1に示したように、実施例6の誘導モータ100は、実施例1〜4の誘導モータ100と同様に、比較例1の誘導モータに比べて高いモータ効率を示すことができた。
なお、A4032アルミニウム合金材は、ケイ素を含むアルミニウム合金材であり、溶湯流動性が高く、ダイキャスト鋳造性が良好なものである。よって、実施例6の誘導モータ100は、低温鋳造により、より容易に製造することができる。
更に、実施例1〜6では、低圧鋳造における金型の損傷を防ぐことができた。具体的には、実施例1〜6では、金型寿命は2万〜4万ショットであった。
一方、比較例2の誘導モータは、実施例1〜6の誘導モータ100に比べて、始動時トルクが低かった。そのため、比較例2の誘導モータは、実施例1〜6の誘導モータ100に比べてモータ効率に劣っていた。更に、比較例2では、高融点のC1020無酸素銅材をダイキャスト一体化鋳造したため、金型にダメージが加わり、金型寿命が5000ショットであった。
また、比較例3の誘導モータでは、耐食性試験において、第1の部材とエンドリングとの間に腐食が発生した。そのため、比較例3の誘導モータは、実施例1〜6に比べて、信頼性が低く、騒音が大きかった。
すなわち、以上に説明した少なくとも一つの実施形態および実施例によれば、誘導モータが提供される。この誘導モータは、ロータ導体の第2の部材がロータ導体の第1の部材の多孔質部分に含浸しており且つロータコアのスロットの内側面に接している。また、ロータ導体の第1の部分における第2の部材の体積割合が、第1の部分よりもロータコアのシャフト孔側に位置するロータ導体の第2の部分における第2の部材の体積割合よりも高い。これらのおかげで、この誘導モータは、ロータ導体とロータコアとの間のクリアランスの発生を抑制でき、優れた効率を示すことができる。よって、この誘導モータは、高効率、高信頼性、低振動及び低騒音を達成することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
100…誘導モータ、10…ロータコア、11…第1の底面、12…第2の底面、13…側面、14…シャフト孔、15…スロット、15a…スロットの内側面、20…エンドリング、21…フィン、30…ロータ導体、30A…ロータ導体の第1の部分、30B…ロータ導体の第2の部分、31…ロータ導体の第1の部材、31a…粒子、32…ロータ導体の第2の部材、33…第1の部材の1つの端部、33’…第2の部材との界面を含んだバルク部分の1つの端部、34…第1の部材の1つの端部、34’…第2の部材との界面を含んだバルク部分の1つの端部、35…第1の部材のバルク部分、36…第1の部材の多孔質部分。

Claims (7)

  1. 第1の底面と第2の底面と前記第1の底面及び前記第2の底面の間に位置する側面とを有する筒型形状を有し、前記第1の底面から前記第2の底面まで貫通したシャフト孔と、前記シャフト孔及び前記側面のそれぞれから離間し且つ前記シャフト孔を囲むように配置された複数のスロットとを備え、前記複数のスロットが、それぞれ、前記第1の底面から前記第2の底面まで貫通しており且つ内側面を有しているロータコアと、
    前記複数のスロットのそれぞれの中にそれぞれ配置された複数のロータ導体と、
    を具備し、
    前記ロータ導体は、少なくとも表面に多孔質部分を含んだ芯材としての第1の部材と、前記第1の部材の前記多孔質部分に含浸し且つ前記スロットの前記内側面に接している第2の部材とを含み、
    第2の部材の融点は第1の部材の融点より低く、且つ、第2の部材の電気抵抗は第1の部材の電気抵抗より高く、
    前記ロータ導体は、前記第2の部材の一部分を含む第1の部分と、前記第1の部分よりも前記ロータコアの前記シャフト孔側に位置し、前記第2の部材の他の部分を含む第2の部分とを含み、
    前記第1の部分における前記第2の部材の体積割合は、前記第2の部分における前記第2の部材の体積割合よりも高いことを特徴とする誘導モータ。
  2. 前記ロータコアの前記第1の底面と前記第2の底面とにそれぞれ対向した2つのエンドリングを更に具備し、
    前記2つのエンドリングは、前記複数のロータ導体を介して電気的に接続されており、
    前記ロータ導体の前記第2の部材は、前記2つのエンドリングと一体成形されていることを特徴とする請求項1に記載の誘導モータ。
  3. 前記第2の部材は、アルミニウム、アルミニウム合金及びセラミックス粒子分散強化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種の材料を含むことを特徴とする請求項2に記載の誘導モータ。
  4. 前記第1の部材は、銅、電気伝導率が80%IACS以上の銅合金及びセラミックス粒子分散強化銅からなる群より選択される少なくとも1種の材料を含むことを特徴とする請求項2に記載の誘導モータ。
  5. 前記ロータ導体は、前記ロータコアの前記シャフト孔側から前記ロータコアの前記側面側に向かって減少する、前記第2の部材の体積割合の傾斜を有していることを特徴とする請求項2に記載の誘導モータ。
  6. 前記第1の部材は多孔質粉末焼結体であることを特徴とする請求項5に記載の誘導モータ。
  7. 前記第1の部材はバルク部分を含み、前記多孔質部分は前記バルク部分の表面に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の誘導モータ。
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