JP2015125835A - 粉末状チタン酸リチウム、その製造方法およびそれを用いたリチウムイオン電池。 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、稀ではあるが、使用中でのリチウムイオン電池の破損が見られ、安全性の見地から、まだ検討の余地が残されている。
リチウムイオン電池の破損の原因の一つとして、リチウムイオン電池の内部で正極と電解質との界面で副反応がおこり、電解質の分解に伴いガスが発生し、これが継続するとリチウムイオン電池の筐体が膨れを伴い、その結果、リチウムイオン電池の破損を招くことが挙げられ、これを防ぐために、正極活物質の表面部に、被覆層を形成したリチウムイオン電池用正極が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、リチウムイオン電池内部におけるガス発生については、満充電状態での高温下での放置や過充電、あるいは電池内部に残留する水分と電極とが反応して、炭酸ガス等のガスが発生すると考えられ、その原因は定かになっていないのが現状である。
リチウムイオン電池は、使用を重ねるうちに、次第に内部で発生したガスが蓄積される傾向にあり、リチウムイオン電池の内圧が高まり、最終的には、リチウムイオン電池の破損を招く場合があり、リチウムイオン電池の使用中においてもガス発生のないリチウムイオン電池が望まれている。
また、高いリチウムイオン伝導性を示すLi4-XTi5O12(但し、xは0.001〜0.006)で表されるチタン酸リチウムが提案されているが、これにもガス発生の抑制効果は示唆されていない(特許文献4)。
(1)単位表面積当りの強熱減量が6.5×10-4g/m2以上であるリチウムイオン電池負極用粉末状チタン酸リチウム。
(2)上記粉末状チタン酸リチウムをLixTi5O12と表現した場合に、xが3.5以下、4.0未満である上記(1)に記載のリチウムイオン電池負極用粉末状チタン酸リチウム。
(3)上記粉末状チタン酸リチウムは、一次粒子が凝集した二次粒子で構成され、一次粒子の平均粒径が0.5μm〜1.0μm、二次粒子の平均粒径が1.0μm〜10μmである上記(1)または(2)に記載のリチウムイオン電池負極用粉末状チタン酸リチウム。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の粉末状チタン酸リチウムの製造方法であって、当該チタン酸リチウムをLixTi5O12と表現した場合に、化学量論組成でxが3.5以上、4.0未満に原料を配合することを特徴とする粉末状チタン酸リチウムの製造方法。
(5)上記原料が、酸化チタン、炭酸リチウムおよび水酸化リチウムを含むものである上記(4)に記載の粉末状チタン酸リチウムの製造方法。
(6)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の粉末状チタン酸リチウムを負極に用いたリチウムイオン電池。
本発明の粉末状チタン酸リチウムは、単位表面積当りの強熱減量が6.5×10-4g/m2以上のものであり、好ましくは、9.5×10-4g/m2以下である。
単位表面積当りの強熱減量とは、セラミック粉末に含まれる不純物(揮発性物質)を指標するために用いられるもので、サンプル5gを坩堝にいれ、湿度45%、温度30℃の恒温槽に一昼夜保管したのち、900℃で1時間熱処理を行った際のチタン酸リチウムの重量減量を、サンプルの二次粒子の表面積の合計量で割って、単位表面積当りで表したものである。
また、xが4.0を超える場合には、強熱減量が6.5×10-4g/m2未満になり易く、リチウムイオン電池の使用中におけるガス発生が顕在化する傾向にあり、その結果、リチウムイオン電池の寿命短縮を招く恐れが生じるため、あまり好ましくない。
なお、このxは、3.92以下がより好ましい。
本発明の粉末状チタン酸リチウムは、スピネル型結晶構造を形成しており、Liが欠損したものである。
なお、このxの値は、例えばICP(誘導結合プラズマ発光分光分析)法で測定することができる。
本発明において、一次粒子の平均粒径及び二次粒子の平均粒径は、レーザー回折法により測定することができる。
一次粒子径が0.5μm以下の場合には、付着性が強く架橋構造をとりやすく、負極を形成する際に膜密度を上げ難くなり、あまり好ましくない。
一方、一次粒子径が1.0μm以上の場合には不定形になり易く、粒子間の隙間が大きくなり、膜密度を上げ難くなり、あまり好ましくない。
このような粒子構造のチタン酸リチウムを選択することにより、発電性能にすぐれたリチウムイオン電池用の負極を構成することができる。
このチタン酸リチウムの製造においては、リチウム原料として、例えば、水酸化リチウム及び炭酸リチウム、チタン原料として、酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
このリチウム原料及びチタン原料として、一次粒子が、0.5〜1.0μmのものを用いることにより、チタン酸リチウムとした時に、その二次粒子を1.0〜10μmにすることができる。
原料として用いるこれらの水酸化リチウム及び炭酸リチウムは高純度のものが好ましく、通常、純度99.0質量%以上ものが好ましい。また、水酸化リチウム及び炭酸リチウムに含まれる水分については十分除去した、水分含有量が0.1質量%以下のものが好ましい。
本発明の製造方法においては、水酸化リチウムと炭酸リチウムの両方を用いることが好ましく、その混合比は、通常必要とするLi量を100とした場合、Liのモル比で、水酸化リチウム:炭酸リチウム=10:90〜95:5とすることが好ましく、より好ましくは、50:50〜95:5、さらに好ましくは、70:30〜95:5の範囲で調整するとよい。
なお、チタン原料として酸化チタンを用いる場合、その比表面積が、好ましくは、10m2/g以上、より好ましくは、20〜250m2/g、より好ましくは30〜250m2/gである。この比表面積は、BET法により測定することができる。
この混合粉は、バルク状のまま、或いは0.5t/cm2程度の圧力で圧縮、成形して焼成するか、あるいは、混合粉を水あるいは水系媒体等の媒液で10〜50重量%のスラリーにして十分混合した後、加熱あるいは噴霧乾燥によって乾燥させ、焼成することが好ましい。
前記スラリーに用いる媒液は、特に制限は無いが、工業的には、水純を用いるのが好ましい。前記媒液として純水を使用することにより円滑に混合粉を分散することができるのみならず、排水処理の際にも経済的に処理することができる。
また、噴霧乾燥に供されるスラリーには、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチンなどのバインダーや、ノニオン系、アニオン系、両性、非イオン系などの界面活性剤など各種の添加剤を添加してもよい。前記添加剤は、有機物系で金属成分を含有しないものを使用することが好ましい。このような特性を有する添加剤は、加熱焼成工程中に分解・揮散し、原料中に残留しないため乾燥により生成されたチタン酸リチウムの品質汚染を効果的に回避することができる。さらに、界面活性剤を適宜添加することで、噴霧乾燥により得られたチタン酸リチウムの二次粒子の粒径を効率よく制御することができる。
噴霧乾燥で製造される二次粒子の粒径は、例えば上記のディスク式ならディスクの回転数を、圧力ノズル式や二流体ノズル式、四流体ノズル式などならば噴霧圧やノズル径を調整して、噴霧される液滴の大きさを制御することにより制御することができる。
前記噴霧乾燥後に製造された二次粒子の平均粒径は、0.5μm〜20μm、好ましくは1μm〜15μm、さらに好ましくは1μm〜10μmとすることが好ましい。
例えば、第1段階では温度600〜700℃とやや低い温度で30分〜5時間程度仮焼し、次いで第2段階として温度を高めの700〜950℃、より好ましくは720〜950℃の温度で焼成しても良い。
また、チタン酸リチウムの製造原料として酸化チタンを用いる場合には、当該酸化チタンの比表面積に応じて焼成温度を適切な範囲に選択すると、強熱減量を調整し易くなるのでよい。例えば、酸化チタンの比表面積が20〜250m2/gの場合には、焼成温度は700〜850℃、酸化チタンの比表面積が10〜20m2/gの場合は、焼成温度は800〜950℃の範囲で行うことが好ましい。
このような温度範囲で焼成を行うことにより、強熱減量を6.5×10-4以上に容易に調整でき、目的物であるチタン酸リチウムの一次粒子径や純度ひいては電池特性あるいはキャパシタ特性面に対して優れた効果を生起せしめることができる。
さらに、焼成時の昇温速度は、1℃/min以下が好ましく、更には0.5℃/min以下が、より好ましい。このような昇温速度を選択することにより焼結が進行し、結晶性を高めることができる、という効果を奏するものである。
以上述べた製造方法により、本発明のリチウムイオン電池の負極用の粉末状チタン酸リチウムを効率よく製造することができる。
この正極活物質としては、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物、又はポリアニオン系化合物を用いることができる。具体的には、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(Li(1-n)CoO2など(0<n<1、以下同じ))、リチウムニッケル複合酸化物(Li(1-n)NiO2など)、リチウムマンガン複合酸化物(Li(1-n)MnO2、Li(1-n)Mn2O4など)、リチウム鉄複合リン酸化物(LiFePO4など)、リチウムバナジウム複合酸化物(LiV2O3など)などが挙げられる。
前記バインダーには、活物質粒子及び導電材粒子をつなぎ止める役割を果たすものである。例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素ゴムなどの含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂などを用いることができる。
また、前記極活物質、導電材、バインダーを分散させる溶剤としては、例えばN‐メチル‐2‐ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
なお、リチウムイオン電池の負極に用いられる導電材、結着材、溶剤などは、それぞれ正極で例示したものを用いることができる。
ゲル電解質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリフッ化ビニリデンやポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリルなどの高分子類またはアミノ酸誘導体やソルビトール誘導体などの糖類に、支持塩を含む電解液を含ませてなるゲル電解質が挙げられる。
更に、有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリホスファゼン、ポリエチレンスルフィド、ポリヘキサフルオロプロピレンなどやこれらの誘導体が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
このセパレータとしては、リチウムイオン二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
このリチウムイオン電池に使用する正極電極体及び負極電極体には、必要に応じてセパレータを介して積層又は捲回積層され、金属缶又はラミネートフィルムから形成された外装体内に挿入しておくことが好ましい。
このセパレータとしては、ポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜又は電気二重層コンデンサで用いられるセルロース製の不織紙などを用いることができる。
前記外層樹脂フィルムは接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロンやポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分やガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内装樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、ヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンが好適に使用できる。
本実施例に用いた原料の種類、および粉末状チタン酸リチウム並びにリチウムイオン電池の調製方法を次に記載する。
1)酸化チタン(TiO2)
[1]純度:99.9質量%(Fe、Al、Si、Na;それぞれ10ppm未満、Cl;50ppm未満)
[2]一次粒子の平均粒径:0.5μm
[3]二次粒子の平均粒径:5μm
2)炭酸リチウム(Li2CO3)
[1]純度:99.5質量%(水分;0.1質量%以下)
[2]一次粒子の平均粒径:0.5μm
[3]二次粒子の平均粒径:6μm
3)水酸化リチウム(LiOH)
[1]純度:99.0質量%(水分;0.1質量%以下)
[2]一次粒子の平均粒径:0.5μm
[3]二次粒子の平均粒径:6μm
上記原料を、表1に示した割合で配合し、振動ミルで十分に混合した。これに市水を加えて、原料粉濃度20質量%のスラリーとし、これに、添加剤として、ポイズ532A(花王株式会社)を1.2質量%添加した。
このスラリーを、スプレードライヤー(ヤマト科学(株)製、GB210‐B)を用いて220℃の熱風により噴霧造粒し、平均粒径10μm程度の球状の造粒混合粉を得た。
この造粒混合粉を大気中にて、600〜700℃で240分間焼成し、次いで、720℃〜800℃の温度で、加熱・焼成して、LiXTi5O12で表現される粉末状チタン酸リチウム中のLi組成xを変化させた試料を得た。
上記方法で作成されたチタン酸リチウムに対して、5%のポリフッ化ビニリデンを加え、N‐メチル‐2‐ピロリドンを溶媒として混合し、スラリー状にした。
その後、ドクターブレードを用いて、銅箔上にそのスラリーを塗布した。得られた積層体を乾燥後、プレスを行ない、その後の厚みが40μmの電極を作製し、これを110℃で6時間真空乾燥し、負極とした。
得られた負極の他に、正極としてコバルト酸リチウム(LCO)を、電解液としてエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒(体積比1:2)にLiPF6を1mol/Lの濃度で溶解した溶解液を、また、セパレータとしてポリプロピレン不織布を用いて、ラミネートセルを作製した。
30℃の恒温槽内に設置したホルダーに、上記で作成したラミネートセルをセットし、充放電装置(北斗電工社製、HJ1001SD)を用いて、充放電特性を測定した。初めに、負極中のチタン酸リチウム1g当たり17.5mAの電流(0.1C)を流して、電圧1.9Vとなるまで放電させて、さらに1.9Vで6時間保持して充分に放電した(初期放電)。
次に、0.1Cの電流で2.9Vまで充電した後、再び0.1Cで1.9Vまで放電させた。このとき、放電時に流れた電流量を積算し、チタン酸リチウム1g当たりの電気量に換算した値を電気容量とした。この結果を表2に示した。
充放電サイクルを計100回行った後、満充電状態のまま60℃に設定した恒温槽内で一昼夜保存し、ラミネートセルの厚みを測定して、その厚みの増加により(ラミネートセル作製時の厚さを100とした時の厚さを表記)、ガス発生の有無を確認した。この結果を表2に示した。
Claims (6)
- 単位表面積あたりの強熱減量が6.5×10-4g/m2以上であるリチウムイオン電池負極用粉末状チタン酸リチウム。
- 前記粉末状チタン酸リチウムをLixTi5O12と表現した場合に、前記xが3.5以上、4.0未満である請求項1に記載のリチウムイオン電池負極用粉末状チタン酸リチウム。
- 前記粉末状チタン酸リチウムは、一次粒子が凝集した二次粒子で構成され、前記一次粒子の平均粒径が0.5μm〜1.0μm、前記二次粒子の平均粒径が1.0μm〜10μmである請求項1または2に記載のリチウムイオン電池負極用粉末状チタン酸リチウム。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の粉末状チタン酸リチウムの製造方法であって、当該チタン酸リチウムをLixTi5O12と表現した場合に、化学量論組成でxが3.5以上、4.0未満に原料を配合することを特徴とする粉末状チタン酸リチウムの製造方法。
- 前記原料が、酸化チタン、炭酸リチウムおよび水酸化リチウムを含むものである請求項4に記載の粉末状チタン酸リチウムの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の粉末状チタン酸リチウムを負極に用いたリチウムイオン電池。
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