JP2015124759A - 保持シール材及び保持シール材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 無機繊維からなるマットから構成されるとともに、排ガス処理体を保持するための保持シール材であって、上記マットの表面には、光学読み取りコード及び/又は文字情報からなる識別情報が、UV硬化インク又は熱溶融インクにより印刷されていることを特徴とする保持シール材。
【選択図】図1
Description
従来のインクを用いて識別情報を印刷すると、保持シール材を構成する無機繊維の平均繊維径が小さくなるほどインクが滲みやすくなる。これに対して、本発明の保持シール材では、UV硬化インク又は熱溶融インクを用いることにより、保持シール材表面でインクが硬化して留まるため、平均繊維径が小さい無機繊維からなるマットの表面にも鮮明な識別情報が付与されることとなる。
上述のとおり、本発明の保持シール材では、UV硬化インク又は熱溶融性インクがマットの内部に染み込みにくいため、インクがマットに染み込む範囲は、マットの表面から0.1〜0.7mmの位置までの範囲となる傾向にある。
本発明の保持シール材では、2cm2程度と印刷範囲が小さい場合であっても、充分に読み取りが可能な光学読み取りコードが付与されることとなる。
アクリレート系紫外線硬化樹脂は、硬化速度が速いため、瞬時に硬化しやすくなる。
上記被膜は無機粒子を含むために、引っ張り強度に優れている。また、上記無機粒子は有機バインダ成分によって凝集が抑制されているため、広い範囲にわたって被膜の強度が高くなる。したがって、このような被膜で無機繊維の表面が覆われていると、通常はバインダ被膜の強度が弱いと考えられる、有機バインダの付着量が少ない場合であっても、有機バインダ(有機バインダ溶液)を乾燥して保持シール材を得る際に原料マットが圧縮乾燥されるため、表面が平坦なマットに成形できる。そして、マットの表面が平坦であると、識別情報を容易に印刷することができる。
有機バインダ成分が含有されていない場合、無機繊維表面に被膜を形成することができない。一方、有機バインダ成分の含有量が無機繊維100重量部に対して12重量部を超える場合、排ガスの熱によって発生する分解ガスの量が多くなり、周囲の環境に悪影響を与える可能性がある。
ニードルパンチング処理によって無機繊維を交絡させることで、無機繊維同士の絡み合いを強固にし、強度を向上させやすくなる。
上記の方法を用いると、保持シール材ごとに異なる識別情報を鮮明かつ効率良く印刷することができる。したがって、保持シール材の製造の自動化を容易に行うことができる。
上記の方法では、2回の圧縮によってマット表面を平坦化している。1回目の圧縮では、可塑性のある無機繊維前駆体の状態のシート状物を圧縮することにより、厚みを小さくし、表面を比較的平坦にすることができる。2回目の圧縮では、バインダを含む原料マットを圧縮することにより、マット表面のうねりだけでなく、マット表面の繊維の毛羽立ちを抑制することもできる。したがって、マット表面を、識別情報の印刷に適した平坦な状態にすることができる。
以下、本発明について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
本発明の保持シール材は、無機繊維からなるマットから構成されるとともに、排ガス処理体を保持するための保持シール材であって、上記マットの表面には、光学読み取りコード及び/又は文字情報からなる識別情報が、UV硬化インク又は熱溶融インクにより印刷されていることを特徴とする。
図1(a)及び図1(b)に示す保持シール材10は、所定の長手方向の長さ(図1(a)中、矢印Lで示す)、幅(図1(a)中、矢印Wで示す)及び厚さ(図1(a)中、矢印Tで示す)を有する平面視略矩形の平板形状のマットから構成されている。
また、マットの長手方向の長さLとは、マットの端部に形成される凸部又は凹部の寸法を考慮しない長さである。
マットの厚さが20mmを超えると、保持シール材の柔軟性が失われるので、保持シール材を排ガス処理体に巻き付ける際に扱いづらくなる。また、保持シール材に巻きじわや割れが生じやすくなる。
一方、マットの厚さが2.0mm未満であると、保持シール材の面圧が排ガス処理体を保持するのに充分でなくなる。そのため、排ガス処理体が抜け落ちやすくなる。また、高温の排気ガスにより排ガス処理体を収容する金属容器(ケーシング)が熱膨張により内径が膨張した際には、排ガス処理体とケーシングとの間隙が大きく変化する。マットの厚さが2.0mm未満であると、この間隙の変化に追従ができない。
図1(a)及び図1(b)に示す保持シール材10では、光学読み取りコード13からなる識別情報がマットの表面に印刷されている例を示している。
バーコードとしては、例えば、JAN、ITF、CODE39、CODE128等が挙げられる。
二次元コードとしては、例えば、QRコード(登録商標)、データマトリックス、PDF417、Maxi Code、Veri Code等が挙げられる。
識別情報は、無機繊維集合体(あるいは有機バインダを含む無機繊維集合体)の表面に直接印刷されてもよく、あるいは、有機繊維等を含む不織布等のシートを少なくとも一部に配置した該シートの表面に直接印刷されてもよい。
本発明の保持シール材では、2cm2程度と印刷範囲が小さい場合であっても、充分に読み取りが可能な光学読み取りコードが付与されることとなる。
また、複数の光学読み取りコードが印刷されている場合、少なくとも1つはUV硬化インクにより印刷されていることが望ましく、UV硬化インクにより印刷されているものと熱溶融インクにより印刷されているものが混在していてもよい。
本発明の保持シール材において、UV硬化インクは、アクリレート系、メタクリレート系又は不飽和ポリエステル系の紫外線硬化樹脂を含有することが望ましく、アクリレート系の紫外線硬化樹脂を含有することがより望ましい。アクリレート系紫外線硬化樹脂は、硬化速度が速いため、瞬時に硬化しやすくなるためである。
したがって、本発明の保持シール材において、マットに染み込んだUV硬化インク又は熱溶融性インクの先端部は、マットの表面から内側へ0.1〜0.7mmの位置にあることが望ましい。
マットを構成する無機繊維は、例えば、無機塩法により紡糸原液を調製した後、紡糸工程による無機繊維前駆体の作製工程、焼成工程を経て作製することができる。
無機繊維の平均繊維径が2μm未満であると、繊維自体の強度が小さくなり、保持シール材の面圧が排ガス処理体を保持するのに充分でなくなる。一方、無機繊維の平均繊維径が20μmを超えると、保持シール材表面の緻密性が低下し、保持シール材の表面が平坦でなくなり、識別情報として印刷により付与したインクが擦れやすくなるため、目視又は装置による読み取り不良に繋がるおそれがある。
なお、無機繊維の平均繊維径とは、ランダムに採取した300本の無機繊維の直径を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した画像から測定し、これらの直径を平均した値をいう。
上記被膜は無機粒子を含むために、引っ張り強度に優れている。また、上記無機粒子は有機バインダ成分によって凝集が抑制されているため、広い範囲にわたって被膜の強度が高くなる。したがって、このような被膜で無機繊維の表面が覆われていると、通常はバインダ被膜の強度が弱いと考えられる、有機バインダの付着量が少ない場合であっても、有機バインダ(有機バインダ溶液)を乾燥して保持シール材を得る際に原料マットが圧縮乾燥されるため、表面が平坦なマットに成形できる。そして、マットの表面が平坦であると、識別情報を容易に印刷することができる。
なお、無機繊維の表面の全てが有機バインダ被膜で覆われている必要はなく、本発明の効果を奏する限りにおいて、無機繊維の一部に有機バインダ被膜が形成されていない部位があってもよい。
有機バインダとしては特に限定されず、アクリル系樹脂、アクリレート系ラテックス、ゴム系ラテックス、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
有機バインダ成分が含有されていない場合、無機繊維表面に被膜を形成することができない。一方、有機バインダ成分の含有量が無機繊維100重量部に対して12重量部を超える場合、排ガスの熱によって発生する分解ガスの量が多くなり、周囲の環境に悪影響を与える可能性がある。
有機バインダのガラス転移温度が−5℃以下であると、被膜の強度を高くしつつ、被膜伸度が高くて可撓性に優れた保持シール材とすることができる。そのため、保持シール材を排ガス処理体に巻き付ける際等に保持シール材が折れて、割れにくくなる。
上記無機バインダとしては特に限定されず、アルミナゾル、シリカゾル等が挙げられる。
上記無機粒子としては、アルミナゾルに由来するアルミナ粒子、シリカゾルに由来するシリカ粒子が望ましい。
無機粒子の含有量が無機繊維100重量部に対して0.1重量部未満の場合、無機粒子の含有量が不足するためバインダ被膜の強度の向上効果が小さくなりやすい。一方、無機粒子の含有量が無機繊維100重量部に対して10重量部を超える場合、強度の向上という効果はほとんど変わらないが、被膜が硬くなりすぎることがある。
なお、無機粒子の粒子径は、以下の方法により計測することができる。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、無機繊維の表面の画像を撮影する。撮影した画像上で、凹凸状態となっている無機繊維の表面において、粒子状に観察される形状物を無機粒子と認定する。上記粒子状に観察される形状物の径を無機粒子の粒子径として計測する。
これらの中では、親水性合成高分子物質が望ましく、アニオン性高分子系分散剤がより望ましい。例えば、無機粒子としてアルミナゾル由来のアルミナ粒子を使用した場合、上記アルミナ粒子の表面は分散溶液中でカチオン性となる。そのため、アニオン性高分子系分散剤は静電引力によりアルミナ粒子に吸着しやすい。さらに、高分子系分散剤が極性を有する場合は、有機バインダも例えばアクリル系樹脂のように極性を有するものが好ましい。これは被膜中で有機バインダと高分子系分散剤の相溶性が高まることで、アンカー効果により被膜の強度が向上するためである。
また、これらの高分子系分散剤は、1種類のみ用いられていてもよく、複数種類が併用されていてもよい。また、アニオン性高分子系分散剤としての性質を示す構造とノニオン性高分子系分散剤としての性質を示す構造を共に有する高分子系分散剤であってもよい。
高分子系分散剤の含有量が無機繊維の重量に対して50ppm未満である場合、有機バインダ溶液中で無機粒子と有機バインダの凝集を抑制させにくくなる。一方、高分子系分散剤の含有量が無機繊維の重量に対して1000ppmを超える場合、無機粒子を有機バインダ成分中に分散させる効果は変わらないため、過剰な添加は好ましくない。
ニードルパンチング処理によって無機繊維を交絡させることで、無機繊維同士の絡み合いを強固にし、強度を向上させやすくなる。
なお、無機繊維の平均繊維長とは、ピンセットにて繊維が破断しないように慎重にランダムに採取した300本の無機繊維の全長を平均した値をいう。有機バインダを使用している保持シール材では、オーブン等を使用して600℃以上の雰囲気温度1時間以上で有機バインダを脱脂焼失処理後に繊維を採取すると、繊維が破断する可能性は低くなり、繊維が採取しやすくなる。
また、保持シール材の嵩密度が0.30g/m3を超えると、保持シール材が硬くなり、排ガス処理体への巻き付け性が低下し、保持シール材が割れやすくなる。
保持シール材に膨張材が含有されていると、400〜800℃の範囲で保持シール材が膨張するようになるため、ガラス繊維の強度が低下する700℃を超えるような高温域においても、保持シール材として使用する際の保持力を向上させることができる。
膨張材の添加量は、特に限定されないが、保持シール材の全重量に対して10〜50重量%であることが望ましく、20〜30重量%であることが望ましい。
本発明の保持シール材の製造方法は、上述した保持シール材の製造方法であって、無機繊維からなるマットを準備するマット準備工程と、上記マットの表面に、光学読み取りコード及び/又は文字情報からなる識別情報を付与する識別情報付与工程とを含み、上記識別情報付与工程では、UV硬化インク又は熱溶融インクにより上記識別情報を印刷し、上記UV硬化インク又は上記熱溶融インクを硬化させることを特徴とする。
まず、無機繊維からなるマットを準備する。
保持シール材を構成するマットは、種々の方法により作製することができるが、例えば、抄造法又はニードリング法により作製することができる。
まず、無機繊維及び有機バインダを含むスラリーを調製した後、このスラリーを抄造することにより原料マットを作製する。続いて、原料マットを圧縮乾燥することにより、マットの準備が完了する。
上記の方法では、2回の圧縮を行っている。1回目の圧縮では、可塑性のある無機繊維前駆体の状態のシート状物を圧縮することにより、厚みを小さくして効率良く焼成炉に搬入することができる。2回目の圧縮では、スラリーを抄造して得られた、バインダを含む原料マットを圧縮することにより、マット表面を平坦にしている。そして、マット表面のうねりだけでなく、マット表面の繊維の毛羽立ちを抑制することもできる。したがって、マット表面を、識別情報の印刷に適した平坦な状態にすることができる。
まず、例えば、塩基性塩化アルミニウム水溶液とシリカゾル等とを原料とする紡糸用原液を調製した後、この原液を用いた紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して3〜10μmの平均繊維経を有する無機繊維前駆体を作製する。続いて、上記無機繊維前駆体を圧縮して所定の大きさの連続したシート状物を作製し、これにニードルパンチング処理を施し、その後、焼成処理を施すことによりマットの準備が完了する。
上記の方法では、ニードルパンチング処理の際及び圧縮乾燥の際の2回の圧縮によってマット表面を平坦化することができる。したがって、マット表面を、識別情報の印刷に適した平坦な状態にすることができる。
まず、無機粒子と高分子系分散剤を混合した溶液を調製することで、無機粒子の表面を高分子系分散剤によって被覆する。続いて、有機バインダ溶液と混合することによって、水中に高分子系分散剤によって被覆された無機粒子と有機バインダを分散させることができる。
次に、準備したマットの表面に、光学読み取りコード及び/又は文字情報からなる識別情報を付与する。
この工程では、UV硬化インク又は熱溶融インクにより識別情報を印刷し、UV硬化インク又は熱溶融インクを硬化させる。
上記の方法を用いると、保持シール材ごとに異なる識別情報を鮮明かつ効率良く印刷することができる。したがって、保持シール材の製造の自動化を容易に行うことができる。
また、本発明の保持シール材の製造方法によれば、例えば、(a)マットを所定の形状に切断する、(b)マットの重量や厚み等の特性項目を測定する、(c)規格範囲の判定、測定情報、製品情報等を、光学読み取りコードからなる識別情報として印刷する、(d)光学読み取りコードからなる識別情報を読み取り、基準値と比較して良品か否かを判断する、(e)良品でないと判断されたマットを廃棄する、といった工程を自動で行うことができる。
このように、金属ケーシングと、上記金属ケーシングに収容された排ガス処理体と、上記排ガス処理体の周囲に巻き付けられ、上記排ガス処理体及び上記金属ケーシングの間に配設された保持シール材とを備える排ガス浄化装置であって、上記保持シール材は、本発明の保持シール材、又は、本発明の保持シール材の製造方法により製造された保持シール材であることを特徴とする排ガス浄化装置もまた、本発明の好適な実施形態である。
図2に示す排ガス浄化装置100は、金属ケーシング130と、金属ケーシング130に収容された排ガス処理体120と、排ガス処理体120及び金属ケーシング130の間に配設された保持シール材110とを備えている。
排ガス処理体120は、多数のセル125がセル壁126を隔てて長手方向に並設された柱状のものである。なお、金属ケーシング130の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と、排ガス浄化装置を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続されることとなる。
図3は、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
これらの多孔質焼成体は、脆性材料であるので、機械的な衝撃等により破壊されやすい。しかし、図2に示す排ガス処理装置100では、排ガス処理体120の側面の周囲に保持シール材110が介在し、衝撃を吸収するので、機械的な衝撃や熱衝撃により排ガス処理体120にクラック等が発生するのを防止することができる。
図2に示すように、内燃機関から排出され、排ガス処理装置100に流入した排ガス(図2中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体(ハニカムフィルタ)120の排ガス流入側端面120aに開口した一のセル125に流入し、セル125を隔てるセル壁126を通過する。この際、排ガス中のPMがセル壁126で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス処理側端面120bに開口した他のセル125から流出し、外部に排出される。
図4は、排ガス浄化装置の製造方法の一例を模式的に示した斜視図である。
圧入方式によって巻付体を金属ケーシングに収容する場合、金属ケーシングの内径(排ガス処理体を収容する部分の内径)は、上記巻付体の外径より若干小さくなっていることが好ましい。
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(a)マット準備工程
まず、以下の手順により無機繊維からなるマットを準備した。
Al含有量が70g/lであり、Al:Cl=1:1.8(原子比)となるように調製した塩基性塩化アルミニウム水溶液に対して、焼成後の無機繊維における組成比が、Al2O3:SiO2=72:28(重量比)となるようにシリカゾルを配合し、さらに、有機重合体(ポリビニルアルコール)を適量添加して混合液を調製した。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して平均繊維径が5.6μmである無機繊維前駆体を作製した。
上記工程(a−1)で得られた無機繊維前駆体を圧縮して、連続したシート状物を作製した。
上記工程(a−2)で得られたシート状物に対して、以下に示す条件を用いて連続的にニードルパンチング処理を行ってニードルパンチング処理体を作製した。
まず、ニードルが21個/cm2の密度で取り付けられたニードルボードを準備した。次に、このニードルボードをシート状物の一方の表面の上方に配設し、ニードルボードをシート状物の厚さ方向に沿って一回上下させることによりニードルパンチング処理を行い、ニードルパンチング処理体を作製した。この際、ニードルの先端部分に形成されたバーブがシート状物の反対側の表面に完全に貫出するまでニードルを貫通させた。
上記工程(a−3)で得られたニードルパンチング処理体を最高温度1250℃で連続して焼成し、アルミナとシリカとを72重量部:28重量部で含む無機繊維からなる焼成シート状物を製造した。無機繊維の平均繊維径は、5.6μmである。また、このようにして得られた焼成シート状物は、嵩密度が0.15g/cm3であり、目付量が1500g/m2である。
上記工程(a−4)で得られた焼成シート状物を切断して、無機繊維からなるマットを作製した。マットの長さは980mm、幅は150mm、厚さは10mmである。
ガラス転移温度が−10℃であるアクリルゴムを水に分散させたアクリレート系ラテックス(日本ゼオン社製 Nipol LX854E(固形分濃度:45wt%))を用い、水で希釈することにより、固形分濃度が10重量%の有機バインダ溶液を調製した。
上記工程(a−6)で調製した有機バインダ溶液中に、上記工程(a−5)で得られたマットを浸漬した後、引き上げた。
上記工程(a−7)後のマットを、厚さが7.5mmになるまで圧縮し、温度130℃、風速2m/sの熱風を吹き付けることにより熱風通気乾燥した。以上の工程により、マットを準備した。
次に、準備したマットの表面に、インクジェット印刷装置を用いてUV硬化インク(アクリレート系UV硬化インク、黒色)を噴射し、紫外線を照射することにより、縦1.5cm×横1.5cm(面積2.25cm2)のデータマトリックス(二次元コード)を印刷した。
以上の工程により、保持シール材を作製した。
以下の点を除いて、実施例1と同様にして保持シール材を作製した。
工程(a−6)では、固形分濃度が1重量%の有機バインダ溶液を調製した。
工程(b)では、準備したマットの表面に、インクジェット印刷装置を用いて熱溶融インク(黒色)を噴射し、急冷することにより、縦3.0cm×横3.0cm(面積9.0cm2)のデータマトリックスを印刷した。
以下の点を除いて、実施例1と同様にして保持シール材を作製した。
工程(a−6)では、固形分濃度が2重量%の有機バインダ溶液を調製した。
工程(a−6)及び(a−7)の間に、以下の工程(a−6−2)及び(a−6−3)を行った。
工程(a−7)では、工程(a−6−3)で調製したバインダ溶液中に、工程(a−5)で得られたマットを浸漬した後、引き上げた。
アルミナコロイド溶液(アルミナゾル)(日産化学工業社製 アルミナゾル550(固形分濃度:15wt%))を水で希釈し、無機粒子の固形分濃度が2重量%の無機バインダ溶液を調製した。
上記工程(a−6−2)で得られた無機バインダ溶液に上記工程(a−6)で得られた有機バインダ溶液を、無機バインダ溶液:有機バインダ溶液=1:1の重量比になるよう加え充分攪拌し、有機バインダが固形分濃度で1重量%、無機粒子が固形分濃度で1重量%であるバインダ溶液を調製した。
以下の点を除いて、実施例1と同様にして保持シール材を作製した。
工程(b)では、準備したマットの表面に、インクジェット印刷装置を用いてオイルインク(黒色)を噴射し、インクを自然乾燥させることにより、縦1.5cm×横1.5cm(面積2.25cm2)のデータマトリックスを印刷した。
以下の点を除いて、実施例1と同様にして保持シール材を作製した。
工程(a−6)では、固形分濃度が1重量%の有機バインダ溶液を調製した。
工程(b)では、準備したマットの表面に、インクジェット印刷装置を用いてオイルインク(黒色)を噴射し、インクを自然乾燥させることにより、縦3.0cm×横3.0cm(面積9.0cm2)のデータマトリックスを印刷した。
実施例1〜3及び比較例1〜2の保持シール材について、目視にて、印刷されたデータマトリックスが擦れていないかを確認し、印刷擦れの有無を評価した。その結果を表1に示す。
自動読み取り装置を用いて、実施例1〜3及び比較例1〜2の保持シール材に印刷されたデータマトリックスを読み取ることが可能であるかを評価した。その結果を表1に示す。
実施例1〜3及び比較例1〜2の保持シール材について、データマトリックスが印刷されている面に対して垂直な方向に切断し、インクの先端部がマットの表面から内側へどの程度の位置にあるかを測定し、これをインクの染み込み深さ(mm)とした。その結果を表1に示す。具体的な測定方法は以下のとおりである。まず、データマトリックスが印刷されている面に対して垂直な方向に切断した端面が観察面になるように、板状に試料片を切り出す。実体顕微鏡(ニコン社製SMZ)の観察倍率を30倍にして、ステージ上にて試料片の横にステンレス製直尺(シンワ測定社製、長さ15cm、目盛0.5mm)を配置し、インクの先端部がマットの表面から内側へどの程度の位置にあるかを読み取る。ただし、ニードルパンチング処理が施されたマットでは、ニードル針が通った跡であるニードル痕の部分は、マット表面が穴状のため測定箇所から除く。
さらに、表1及び図6(a)に示すように、実施例1〜3では、インクの染み込み深さも0.1〜0.7mmの範囲内であり、インクがマットの内部にまで染み込んでいないことが確認された。
さらに、表1及び図6(b)に示すように、比較例1〜2では、インクの染み込み深さが0.9〜1.2mmと大きく、インクがマットの内部の深くにまで染み込んでいることが確認された。
係る必須の構成要件に、本発明の詳細な説明で詳述した種々の構成(例えば、保持シール材の構成、識別情報の種類、マットの作製条件、識別情報の印刷条件)を適宜組み合わせることにより所望の効果を得ることができる。
11 凸部
12 凹部
13 光学読み取りコード(識別情報)
100 排ガス浄化装置
120 排ガス処理体
120a 排ガス流入側端面
120b 排ガス処理側端面
125 セル
126 セル壁
127 外周コート層
128 封止材
130 金属ケーシング
140 巻付体
G 排ガス
Claims (12)
- 無機繊維からなるマットから構成されるとともに、排ガス処理体を保持するための保持シール材であって、
前記マットの表面には、光学読み取りコード及び/又は文字情報からなる識別情報が、UV硬化インク又は熱溶融インクにより印刷されていることを特徴とする保持シール材。 - 前記無機繊維の平均繊維径は、2μm以上20μm未満である請求項1に記載の保持シール材。
- 前記マットに染み込んだ前記UV硬化インク又は前記熱溶融性インクの先端部は、前記マットの表面から内側へ0.1〜0.7mmの位置にある請求項1又は2に記載の保持シール材。
- 前記識別情報は、光学読み取りコードであり、
前記光学読み取りコードが印刷されている面積は、2cm2以上である請求項1〜3のいずれかに記載の保持シール材。 - 前記識別情報は、UV硬化インクにより印刷されており、
前記UV硬化インクは、アクリレート系紫外線硬化樹脂を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の保持シール材。 - 前記無機繊維の表面は、有機バインダ成分中に無機粒子が分散されてなる被膜で覆われている請求項1〜5のいずれかに記載の保持シール材。
- 前記保持シール材中、前記有機バインダ成分は、前記無機繊維100重量部に対して0重量部より多く12重量部以下含有されている請求項6に記載の保持シール材。
- 前記マットには、ニードルパンチング処理が施されている請求項1〜7のいずれかに記載の保持シール材。
- 前記識別情報は、製品名、製品番号、製造番号、坪量、嵩密度、品種、重量、厚み、製品サイズ、適用車種及び裏表の区別から選ばれる少なくとも1つの情報である請求項1〜8のいずれかに記載の保持シール材。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の保持シール材の製造方法であって、
無機繊維からなるマットを準備するマット準備工程と、
前記マットの表面に、光学読み取りコード及び/又は文字情報からなる識別情報を付与する識別情報付与工程とを含み、
前記識別情報付与工程では、UV硬化インク又は熱溶融インクにより前記識別情報を印刷し、前記UV硬化インク又は前記熱溶融インクを硬化させることを特徴とする保持シール材の製造方法。 - 前記識別情報は、マットの坪量、嵩密度、重量、厚み及び製品サイズから選ばれる少なくとも1つの情報であり、
前記識別情報付与工程の前に、準備した前記マットの前記識別情報を測定し、
前記識別情報付与工程では、測定結果に基づいて前記識別情報を前記マットの表面に付与し、
前記識別情報付与工程の後、前記マット表面上の前記識別情報を読み取り、前記識別情報を基準値と比較して良品か否かを判断する請求項10に記載の保持シール材の製造方法。 - 前記マット準備工程は、
前記無機繊維となる無機繊維前駆体を作製する工程と、
前記無機繊維前駆体を堆積又は積層することにより、シート状物を作製する工程と、
前記シート状物を圧縮する工程と、
圧縮した前記シート状物を焼成する工程と、
焼成した前記シート状物を解繊し、無機繊維を得る工程と、
解繊した前記無機繊維及び有機バインダを含むスラリーを調製する工程と、
前記スラリーを抄造することにより、原料マットを作製する工程と、
前記原料マットを圧縮乾燥することにより、マットを作製する工程とを含む請求項10又は11に記載の保持シール材の製造方法。
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