JP2015121410A - 油分濃度測定方法および油分濃度測定装置 - Google Patents

油分濃度測定方法および油分濃度測定装置 Download PDF

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Hiroaki Mitsuoka
宏明 光岡
寿夫 三木
Toshio Miki
寿夫 三木
津崎 真彰
Masaaki Tsuzaki
真彰 津崎
花田 毅
Takeshi Hanada
毅 花田
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Abstract

【課題】検体に含まれる油分の濃度を、油分抽出溶媒を用いて測定する方法および装置において、用いる溶媒の油分抽出能力が高く、各種油分分析手段、特に赤外線吸収法への適応性に優れるとともに、地球環境への影響が非常に小さい油分濃度測定方法および油分濃度測定装置の提供。
【解決手段】検体に含まれる油分の濃度を測定する方法であって、(A)検体から溶媒を用いて前記油分を抽出する油分抽出工程((A)工程)、および、(B)(A)工程で得られる前記油分と前記溶媒を含む抽出組成物の油分量を分析する油分量分析工程((B)工程)を有し、溶媒として、CCl(kは3〜5の整数、pは0〜2の整数、nは1〜3の整数であり、かつ(p+m+n)=2kである。)で表わされるハロゲン化オレフィンを用いる油分濃度測定方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、油分を含んだ水などの液体に含まれる油分濃度や、油分が付着した工業製品や土壌等の固体に残留している油分濃度を測定するための、油分濃度測定方法および油分濃度測定装置に関する。
水など液体中の油分濃度測定や、金属製品や樹脂部品など工業製品の清浄度検査方法、土壌に含まれる油分濃度の測定等において、検体中の油分を溶媒に抽出させ得られる油分を含む溶媒の油分量を分析することで検体の油分濃度を求める方法が広く用いられている。
油分抽出した溶媒に含まれる油分量または濃度を測定する方法としては、溶媒抽出−赤外線吸収法、濁度法、紫外線吸収法、蛍光光度法、n−ヘキサン質量測定法等が挙げられる。低濃度の油分を精度よく測定できるという利点から、溶媒抽出−赤外線吸収法を使用した測定装置が広く用いられている。
一般に、この赤外線吸収法におけるに油分濃度測定は、波長が3.4μm(2941cm−1)〜3.5μm(2857cm−1)付近におけるC−H基の吸収を用いて測定を行う。そのため、溶媒としてはC−H基を含まない、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、ポリクロロフルオロカーボン(以下、「S−316」ともいう。)、1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン(CFC−113)等が用いられてきた。
しかしながら、例えばCFC−113やS−316は、クロロフルオロカーボン類(以下、「CFC類」ともいう。)のためオゾン層破壊係数が高い。四塩化炭素もS−316と同様にオゾン破壊係数が高い。また、テトラクロロエチレンは油分の溶解性が高いが、土壌汚染など環境への影響が大きい溶媒である。
そこで、新たな抽出溶剤として、油分への溶解力が高く、環境影響の小さい化合物が開発されている。例えば、特許文献1では油分抽出溶媒としてジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−225)が使用されている。HCFC−225は、C−H結合を有し、赤外線吸収法においては油分によるC−H基の吸収より高波数側の約3.3μm(3030cm−1)付近に吸収を有するが、特許文献1ではこれらの吸収が重なるまでの波数領域に赤外線が透過するように光学フィルタを設けることで、精度の高い分析を行っている。
しかしながら、近年ではHCFC−225よりもさらに環境影響の小さな代替化合物が求められている。
なお、本明細書において、ハロゲン化炭化水素については化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記すが、本明細書では必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いることもある。
特許第4459791号公報
本発明は、上記観点からなされたものであり、検体に含まれる油分の濃度を、油分抽出溶媒を用いて測定する方法および装置において、用いる溶媒の油分抽出能力が高く、各種油分分析手段、特に赤外線吸収法への適応性に優れるとともに、地球環境への影響が非常に小さい油分濃度測定方法および油分濃度測定装置の提供を目的とする。
本発明の油分濃度測定方法は、検体に含まれる油分の濃度を測定する方法であって、
(A)検体から溶媒を用いて前記油分を抽出する油分抽出工程((A)工程)、および、
(B)(A)工程で得られる前記油分と前記溶媒を含む抽出組成物の油分量を分析する油分量分析工程((B)工程)を有し、
前記溶媒として、下記一般式(1)で表わされるハロゲン化オレフィンを用いることを特徴とする。
Cl…(1)
(ただし、式(1)中、kは3〜5の整数、pは0〜2の整数、nは1〜3の整数であり、かつ(p+m+n)=2kである。)
本発明の油分濃度測定装置は、油分を含む検体から溶媒を用いて前記油分を抽出し、前記油分が前記溶媒に溶解した抽出組成物を得る手段と、前記抽出組成物中の油分量を分析する油分量分析手段とを有する油分濃度を測定する装置であって、前記溶媒として、上記一般式(1)で表わされるハロゲン化オレフィンを用いることを特徴とする。
本発明によれば、検体に含まれる油分の濃度を、油分抽出溶媒を用いて測定する方法および装置において、用いる溶媒の油分抽出能力が高く、各種油分分析手段、特に赤外線吸収法への適応性に優れるとともに、地球環境への影響が非常に小さい油分濃度測定方法および油分濃度測定装置が提供できる。
以下に本発明の実施の形態を説明する。
[油分濃度測定方法]
本発明の油分濃度測定方法は、
(A)油分を含む検体から溶媒を用いて前記油分を抽出する油分抽出工程((A)工程ともいう。)、および
(B)(A)工程で得られる前記油分と前記溶媒を含む抽出組成物の油分量を分析する油分量分析工程((B)工程ともいう。)を有し、
上記油分を抽出するための溶媒として、上記一般式(1)で表わされるハロゲン化オレフィン(以下、ハロゲン化オレフィン(1)ともいう。)を用いる。
以下、本発明の油分濃度測定方法の各工程を説明する。
(A)油分抽出工程
(A)工程は、油分を含む検体から、溶媒としてハロゲン化オレフィン(1)を用いて検体に含まれる油分を溶媒内に抽出する工程である。この(A)工程により、検体中に含まれていた油分と溶媒とを含む抽出組成物が得られる。
(検体)
本発明の油分濃度測定方法において油分濃度測定の対象となる検体は、油分を含むものであれば、液体であっても固体であってもよい。液体としては、例えば、自然水や工場や下水処理場等からの排水が挙げられる。固体としては、金属製品や樹脂部品などの工業製品や土壌等が挙げられる。
金属製品や樹脂部品などの工業製品は、加工時に加工油や防錆油などの油分を使用するため、最終製品とする仕上げ工程において表面から油分を除去する必要がある。このために洗浄を行い、物品の清浄度評価が行われる。該評価に本発明の油分濃度測定方法が適用可能である。さらに、土壌や汚泥における油分濃度の測定に本発明の方法が適用できる。
また、本発明において油分濃度測定の対象となる油分とは、ハロゲン化オレフィン(1)に溶解し得る物質を集合的に指す。油分として具体的には、液状または固体状の植物油、石油系炭化水素、石炭系炭化水素、合成油の単独あるいはこれらの混合物が挙げられる。さらに、これらが人為的あるいは自然界において酸化分解、重合、生物により分解された物質、中間代謝物等を挙げることができる。
なお、JIS K 0102の「工場排水試験方法」においては、油分濃度を「n−ヘキサン抽出物」や「四塩化炭素抽出物」として測定している。言い換えれば、n−ヘキサンや四塩化炭素により抽出される化合物を油分としている。本発明の油分濃度測定方法に用いるハロゲン化オレフィン(1)は、後述のとおり四塩化炭素と同等の油分抽出能力を有する。
(溶媒)
(A)工程においては、検体から油分を抽出するために、下記一般式(1)で示されるハロゲン化オレフィン(1)を溶媒として用いる。後述のとおり溶媒にはハロゲン化オレフィン(1)以外の化合物が含まれていてもよい。すなわち、本明細書において、「ハロゲン化オレフィン(1)を溶媒として用いる。」とは、ハロゲン化オレフィン(1)を他の化合物と共に溶媒として用いる場合も含まれる。このような、本発明の油分濃度測定方法に用いるハロゲン化オレフィン(1)を含む溶媒を以下、溶媒(S)ともいう。
Cl…(1)
(ただし、式(1)中、kは3〜5の整数、pは0〜2の整数、nは1〜3の整数であり、かつ(p+m+n)=2kである。)
ハロゲン化オレフィン(1)は、炭素原子数(k)が3〜5であり、炭素原子−炭素原子間に二重結合を有するオレフィンであるため、大気中での寿命が短く、オゾン破壊係数や地球温暖化係数が小さい。
ハロゲン化オレフィン(1)が有する水素原子、フッ素原子および塩素原子の数はそれぞれ、p、mおよびnで示される。ハロゲン化オレフィン(1)は分子内に1〜3個の塩素原子を有することから、溶解力が高く、抽出溶媒として優れている。式(1)におけるnの数、すなわちハロゲン化オレフィン(1)中の塩素原子数は2または3が好ましい。
式(1)におけるpの数、すなわちハロゲン化オレフィン(1)が有する水素原子数は0〜2である。なお、水素原子が存在することで、赤外線吸収法においてC−H基の吸収が油分によるC−H基の吸収に影響を及ぼすことがある。その場合、ハロゲン化オレフィン(1)が有するC−H基の吸収と油分によるC−H基の吸収とのずれを利用して、上記特許文献1に記載のHCFC−225と同様に光学フィルタを用いることで油分濃度測定の精度を確保することも可能である。
しかしながら、光学フィルタの配設に係る手間や費用を考慮すると、ハロゲン化オレフィン(1)は水素原子を含まない、すなわち、式(1)におけるpの数が0であることが好ましい。水素原子を有しないハロゲン化オレフィン(1)を用いることで、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、S−316、CFC−113等と同等の赤外吸収分析が可能となる。
ハロゲン化オレフィン(1)は、分子内に上記式を満足するm個のフッ素原子を有する。ハロゲン化オレフィン(1)は、フッ素原子を有することで、引火性が低く安全に取り扱うことができる。ハロゲン化オレフィン(1)におけるフッ素原子の数、すなわち、式(1)におけるmの数は、好ましくは3〜6である。
ハロゲン化オレフィン(1)の炭素原子数は3、4または5であり、3が特に好ましい。また、ハロゲン化オレフィン(1)は油分抽出溶媒として室温で液体であることが好ましい。したがって、ハロゲン化オレフィン(1)の沸点は30℃以上であることが好ましく、取扱性の容易さを考慮すると40℃以上がより好ましい。本発明の方法において、ハロゲン化オレフィン(1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
炭素原子数3のハロゲン化オレフィン(1)としては、クロロペンタフルオロプロペン、クロロテトラフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペン、ジクロロテトラフルオロプロペン、ジクロロトリフルオロプロペン、ジクロロジフルオロプロペン、トリクロロトリフルオロプロペン、トリクロロジフルオロプロペン、トリクロロモノフルオロプロペンが挙げられる。
炭素原子数4のハロゲン化オレフィン(1)としては、クロロヘプタフルオロブテン、クロロヘキサフルオロブテン、クロロペンタフルオロブテン、ジクロロヘキサフルオロブテン、ジクロロペンタフルオロブテン、ジクロロテトラフルオロブテン、トリクロロペンタフルオロブテン、トリクロロテトラフルオロブテン、トリクロロトリフルオロブテンが挙げられる。
炭素原子数5のハロゲン化オレフィン(1)としては、クロロノナフルオロペンテン、クロロオクタフルオロペンテン、クロロヘプタフルオロペンテン、ジクロロオクタフルオロペンテン、ジクロロヘプタフルオロペンテン、ジクロロヘキサフルオロペンテン、トリクロロヘプタフルオロペンテン、トリクロロヘキサフルオロペンテン、トリクロロペンタフルオロペンテンが挙げられる。
これらのハロゲン化オレフィン(1)には構造異性体や立体異性体が存在するが、いずれも分子内に塩素原子とフッ素原子を有することから、油分に対して十分な溶解能を有することで油分抽出溶媒として適するとともに、引火性が低く取り扱いが容易である。
さらに、これらのハロゲン化オレフィン(1)のなかでも、油分抽出のための溶媒を用いた油分濃度の測定方法の一つである赤外線吸収法において、C−H結合を含まない溶媒が適することから、水素原子を有しない以下のハロゲン化オレフィン(1)が好ましい。
水素原子を有しないハロゲン化オレフィン(1)としては、クロロペンタフルオロプロペン、ジクロロテトラフルオロプロペン、トリクロロトリフルオロプロペン、クロロヘプタフルオロブテン、ジクロロヘキサフルオロブテン、トリクロロペンタフルオロブテン、クロロノナフルオロペンテン、ジクロロオクタフルオロペンテン、トリクロロヘプタフルオロペンテンの構造異性体、立体異性体が挙げられる。
さらに、これらのうちでも常温での取り扱い性が容易な沸点を有するハロゲン化オレフィン(1)として、炭素原子3個、塩素原子2個、フッ素原子4個を有する沸点が46℃のジクロロテトラフルオロプロペンが好ましい。ジクロロテトラフルオロプロペンのいずれの構造異性体、立体異性体を使用しても同様である。ジクロロテトラフルオロプロペンのうちでも、さらに入手の容易性から1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CFO−1214ya)または、1,3−ジクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(CFO−1214yb)が特に好ましい。以下、CFO−1214yaとCFO−1214ybを合わせて「CFO−1214」と示す。
CFO−1214は油分の溶解性が高く、引火点を持たず、表面張力や粘度も低い等、油分抽出用の溶媒として優れた性能を有する。このような特徴から、CFO−1214は、水等の液体から油分を抽出する溶媒や、物品表面や、油分を含んだ土壌等から油分を抽出する溶媒として優れている。さらにCFO−1214は、沸点が46℃のため、抽出時の常温付近の温度条件での取り扱いに適しており好ましい。また、CFO−1214は、上記のとおりオゾン破壊係数や地球温暖化係数が小さく、環境負荷が小さい。
CFO−1214は、従来公知の方法で製造できる。例えば、CFO−1214yaは、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225ca)を原料として、相間移動触媒存在下にアルカリ水溶液中で脱フッ化水素化させる(方法(1))、またはHCFC−225caを原料として、クロム、鉄、銅、活性炭等の触媒存在下に気相で脱フッ化水素化させる(方法(2))等の方法で製造できる。また、HCFC−225caを1,3−ジクロロ−1,2,2,3,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225cb)に変更することでCFO−1214ybが同様に製造できる(特許第3778298号公報参照)。
また、CFO−1214yaについては、上記方法(1)および方法(2)において、HCFC−225caとHCFC−225cbの異性体混合物を原料として使用し、HCFC−225caを選択的に脱フッ化水素化させる方法でも製造できる(国際公開第2010/074254号参照)。なお、上記異性体混合物を使用する方法は、簡便で経済的である点で有利である。
CFO−1214が有する油分の溶解能力は、四塩化炭素やCFC−113、S−316と同等である。したがって、CFO−1214は、検体から溶媒を用いて油分を抽出して油分濃度を測定する従来の方法において、環境負荷の比較的高い四塩化炭素やCFC−113、S−316等に代わる環境負荷の低い溶媒として使用できる。また、CFO−1214は、揮発性が高いことから、溶媒を揮発させて油分量を測定する質量測定法においても四塩化炭素等と比較して短時間で測定できるという利点がある。
さらに、CFO−1214は、分子内にC−H基を有しないため、四塩化炭素やCFC−113、S−316と同様に赤外線吸収法による油分濃度測定のための抽出溶媒として特に適している。CFO−1214yaの赤外吸光分析結果からは、CFO−1214yaには、油分によるC−H基特有の吸収である3.4μm(2941cm−1)〜3.5μm(2857cm−1)付近での赤外吸収が見られなかった(図示せず)。同様に、CFO−1214ybを赤外吸収分析した結果にもC−H基の吸収は見られない。このことから、CFO−1214yaやCFO−1214ybを抽出溶媒として使用することで、赤外線吸収法による油分濃度測定が容易といえる。
(A)工程において、検体から油分を抽出するための溶媒(S)としては、ハロゲン化オレフィン(1)の1種を用いてもよく、2種以上の混合物を用いてもよい。さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、ハロゲン化オレフィン(1)以外の化合物が含まれていてもよい。
例えば、CFO−1214を製造する際に原料として用いられる上記HCFC−225caやHCFC−225cb、反応時に副生する副生物等をハロゲン化オレフィン(1)に対して1質量%以下の範囲で含んでいてもよい。
この場合、HCFC−225caやHCFC−225cb等はC−H結合を有する化合物であることから、これらを微量であってもCFO−1214とともに油分抽出のための溶媒(S)として用いれば、赤外線吸収法による油分濃度測定に影響を及ぼす場合がある。しかし、本発明においても、溶媒(S)にハロゲン化オレフィン(1)以外の化合物として、C−H結合を有する化合物が含まれている場合でも、光学フィルタを使用する等の測定装置の工夫により、赤外線吸収法による油分濃度の測定が十分に可能である。たとえば、上記特許文献1において、HCFC−225により油分を抽出して得られた抽出液においても、適当な光学フィルタを組み合わせて用いることにより赤外線吸収法による油分量の分析が可能とされている。
溶媒(S)による油分抽出((A)工程)
溶媒(S)を用いて、油分を含む検体から該油分を溶媒(S)内に抽出する方法としては、検体に含まれる油分が十分に溶媒(S)に抽出される方法であれば、特に制限されない。この抽出によって、検体中の油分が溶媒(S)に溶解して得られる抽出組成物が次の油分量分析工程((B)工程)に供される。なお、このようして得られる抽出組成物を、以下、抽出組成物(C)ともいう。
例えば、検体が液体である場合、油分を含んだ液体と、溶媒(S)を接触させて、液体中の油分を溶媒(S)中に抽出する。このとき、検体(液体)は溶媒(S)、特にはハロゲン化オレフィン(1)に溶解しない水や海水等であることが好ましい。
なお、油分を含む水や海水等の検体(液体)からの油分抽出効率を高めるために、検体(液体)と溶媒(S)との接触の前に、検体(液体)に酸を加えることが好ましい。その後、酸が添加された検体(液体)に溶媒(S)を加えて溶媒(S)と検体(液体)とを接触させる。このとき、検体(液体)に溶媒(S)を加えたものは、静置しても構わないが、検体(液体)と溶媒(S)、特にはハロゲン化オレフィン(1)との接触効率を高めて、検体(液体)に含まれる油分を効率よく溶媒(S)、特にはハロゲン化オレフィン(1)に抽出させるために、混合することが好ましい。混合方法としては、振り混ぜる、撹拌翼などをもちいて撹拌混合する、超音波を照射する、超臨界状態で接触させる等が挙げられる。
このとき、溶媒(S)、特にはハロゲン化オレフィン(1)が、例えばCFO−1214(沸点、46℃)のように揮発しやすい化合物である場合には、検体(液体)との混合時にハロゲン化オレフィン(1)が揮発して油分が濃縮する場合がある。適切に濃度測定するためには、混合時に揮発した溶媒量を計測し濃縮度を求め、その濃縮度から濃度を得ることが好ましい。別の方法としては、溶媒(S)、特にはハロゲン化オレフィン(1)が揮発しないように、混合を密閉容器中で行う、冷却により揮発を抑制する方法が好ましい。
検体(液体)と溶媒(S)を接触させる際の両者の割合、温度、接触時間等は、油分の種類、液体の種類や検体量、さらには検体に含まれる油分量により適宜調整可能である。
なお、検体(液体)と溶媒(S)を接触させる際、用いる検体(液体)の量および溶媒(S)の量は所定の方法で計測され、最終的に、(B)工程で得られる抽出組成物(C)の油分量分析結果から検体中の油分濃度を算定する際に用いられる。
このような抽出方法により検体(液体)と溶媒(S)を接触させて、油分を溶媒(S)中に抽出した後は、検体(液体)と溶媒(S)の混合物を静置して、油分が除かれた検体(液体)層と、油分が溶媒(S)に溶解した抽出組成物(抽出組成物(C))層の2層に分離させる。
ついで、次の(B)の油分量分析工程に供するために、上記のように分離された2層から、抽出組成物(C)を採取する。抽出組成物(C)を採取する方法としては、抽出組成物(C)のみの一定量を採取する等、抽出組成物(C)に水などの油分が除かれた検体(液体)が混入しないように適切な方法により採取することが好ましい。
なお、抽出組成物(C)には、(B)の油分量分析工程に供される前に、必要に応じて、分析の妨げとなる物質を除去する前処理が施されてもよい。例えば、抽出組成物(C)が懸濁物といった不溶成分を含む場合には、これを除去する濾過等の処理を施してもよい。さらに、抽出組成物(C)に水等の水性成分が分散し、白濁している場合には、抽出組成物(C)に無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウムを添加しこれらに水分を吸収させた後これらを除去する脱水処理を施してもよい。
また、検体が固体である場合、油分が付着した物品や油分を含んだ土壌などの検体(固体)を溶媒(S)に浸漬等の方法で接触させ、検体(固体)に含まれる油分を溶媒(S)に溶解させる方法が挙げられる。
抽出方法は、検体(固体)を溶媒(S)に浸漬する方法が好ましく、超音波の照射や、撹拌や超臨界状態での接触などで接触効率を高めてもよい。検体(固体)と溶媒(S)、特にはハロゲン化オレフィン(1)との接触時には、検体(固体)と溶媒(S)の混合物に、検体(固体)に含まれる水分を除去するための、無水硫酸ナトリウム、無水水酸化ナトリウムやシリカゲル等を加えてもよい。
検体(固体)と溶媒(S)を接触させる際の両者の割合、温度、接触時間等は、油分の種類、固体の種類や検体量、さらには検体(固体)に含まれる油分量により適宜調整可能である。上記検体が液体の場合と同様、検体(固体)と溶媒(S)を接触させる際、用いる検体(固体)の量および溶媒の量(S)は所定の方法で計測され、最終的に、(B)工程で得られる抽出組成物(C)の油分量分析結果から検体中の油分濃度を算定する際に用いられる。
上記抽出操作後、次の(B)の油分量分析工程に供するために、油分が除かれた検体(固体)と油分が溶媒(S)に溶解した抽出組成物(抽出組成物(C))との混合物から抽出組成物(C)の採取を行う。抽出組成物(C)を採取する方法としては、濾過により抽出組成物(C)を分離する方法、抽出組成物(C)のみを吸出す方法等が挙げられる。
以上のようにして検体中の油分を溶媒(S)中に抽出し、得られた油分が溶媒(S)に溶解した抽出組成物、すなわち抽出組成物(C)を採取する。この抽出組成物(C)を使用して以下の(B)工程で抽出組成物(C)の油分量を分析する。
油分量分析工程((B)工程)
(B)工程は、上記(A)工程で得られた抽出組成物(C)の油分量を分析する油分量分析工程である。本発明の油分濃度測定方法においては、(B)工程で、抽出組成物(C)の油分量を分析することで(A)工程で用いた検体量、溶媒(S)量との関係から、検体における油分濃度が算定される。
抽出組成物(C)に含まれる油分量を分析する方法としては、一般に抽出溶媒に油分を抽出して油分量を分析するのに用いられている方法が特に制限なく使用可能である。具体的には、赤外線吸収法、濁度法、紫外線吸収法、蛍光光度法、質量測定法等が挙げられる。
赤外線吸収法、濁度法、紫外線吸収法、蛍光光度法は、抽出組成物(C)を、各分析法において通常用いられる分析手段にかけることで、抽出組成物(C)中の油分量を得る方法である。これらの分析法を用いる場合には、各分析手段にかける前に、油分量が検出可能な濃度となるように、抽出組成物(C)から溶媒(S)の一部を揮発させた、濃縮抽出組成物(C)を調製し、これを分析に用いることが好ましい。この場合、濃縮度を求めておき、最終的に検体の油分濃度を算出する際に係数として用いる。
なお、赤外線吸収法においては、上記のとおり、溶媒(S)中にC−H基含有成分が含まれる場合には、溶媒(S)のC−H基含有成分によるC−H基の吸収と油分によるC−H基の吸収とのずれを利用して、上記特許文献1に記載のHCFC−225と同様に光学フィルタを用いることで油分濃度測定の精度を確保することが可能である。光学フィルタの具体的な設計については、以下の測定装置において詳述する。
質量測定法は、抽出組成物(C)から溶媒(S)を揮発させたあとに残る不揮発分を油分量として定量する方法である。質量測定法としては、電子天秤で不揮発分の質量を直接的に定量する方法や、特許第3178926号公報に開示されたマイクロバランス法と呼ばれる水晶振動子の固有振動数の変化を利用した質量測定法を挙げることができる。
以上説明した本発明の油分濃度測定方法は、検体に含まれる油分の濃度を、油分抽出溶媒を用いて測定する方法において、溶媒としてハロゲン化オレフィン(1)を用いることで、溶媒の油分抽出能力が高く、各種油分分析手段、特に赤外線吸収法への適応性に優れるとともに、地球環境への影響が非常に小さい油分濃度測定方法である。
本発明の油分濃度測定方法による油分濃度の測定は、例えば、以下に説明する本発明の油分濃度測定装置により実行できる。
[油分濃度測定装置]
本発明の油分濃度測定装置は、油分を含む検体から溶媒を用いて前記油分を抽出して得られる前記油分と前記溶媒を含む抽出組成物について油分量を分析し前記検体に含まれる油分濃度を測定する装置であって、前記溶媒として、ハロゲン化オレフィン(1)を用いる装置である。本発明の油分濃度測定装置に用いる溶媒としては、上記本発明の油分濃度測定方法に用いる溶媒(S)と同様のものが挙げられる。
本発明の実施形態の油分濃度測定装置は、例えば、油分を含む検体から溶媒(S)を用いて前記油分を抽出し、前記油分が前記溶媒(S)に溶解した抽出組成物(抽出組成物(C))を得る抽出組成物(C)調製手段(M1)と、抽出組成物(C)中の油分量を分析する油分量分析手段(M2)を有する。
抽出組成物(C)調製手段(M1)は、検体に含まれる油分を溶媒に抽出して、抽出溶媒の油分量を分析することで検体の油分濃度測定を行う通常の測定装置において、溶媒を溶媒(S)に置換したものが、特に制限なく使用可能である。
抽出組成物(C)中の油分量を分析する油分量分析手段(M2)としては、赤外線吸収法、濁度法、紫外線吸収法、蛍光光度法、質量測定法等の各種分析手法に応じた分析手段が挙げられる。
油分量分析手段(M2)の種類に応じて、抽出組成物(C)調製手段(M1)の次に抽出組成物(C)濃縮手段(M1’)等を設けてもよい。
以下、油分量分析手段(M2)として、赤外線吸収法、蛍光光度法、質量測定法の1種であるマイクロバランス法を用いた場合の油分量分析手段(M2)について説明する。
(赤外線吸収法)
赤外線吸収法には、フーリエ変換赤外線吸収法(FTIR)、非分散型赤外線吸収法(NDIR)の2種の方法がある。このうち、FTIRは、マイケルソン干渉計を採用しており波長ごとの吸収を精度よく測定することができ、さらに複数成分を測定できるという特徴がある。一方のNDIRは、光学フィルタを使用して特定波長を利用して特定成分を測定するため、構造が比較的単純であり、さらに測定セル長を長くできることから、微量分析に適している。
抽出組成物(C)調製手段(M1)で調製された抽出組成物(C)は、一定量が採取され、測定装置の油分量分析手段(M2)に導入される。油分量分析手段(M2)に導入する抽出組成物(C)の量は装置に応じて適切な量が導入される。
その後、光源より赤外線を照射して抽出組成物(C)に含まれる油分量を測定する。たとえばNDIRの原理を利用した測定装置では、油分量分析手段(M2)は測定セル、光源、検出器および、干渉フィルタなどの光学フィルタから主に構成される。
検出器と測定セルはバックグラウンドの補正をより正確にするために測定用と比較用があってもよい。測定用と比較用の検出器を有することで、より精密な測定が可能になる。たとえば、抽出組成物(C)に不純物成分等の油分以外の成分がわずかに含まれている場合、比較用検出器と比較用セルでのバックグラウンド測定により、不純物成分由来の影響を取り除くことができる。
ここで、検出器は焦電型赤外線検出器、半導体検出器、コンデンサマイクロホン型検出器、フローセンサ型検出器、ニューマチック型検出器、AS検出器等から選定することができ、測定装置に応じて適切な検出器を使用することができる。
NDIRにおける光学フィルタは、赤外線の波長のうち、選択的に特定の波長を透過することができる光学特性を有する。この赤外線吸収による測定では、検出器で検出する波長を、光学フィルタを用いて選択的に透過させる必要がある。例えば、油分測定においてC−H結合を検出する場合には3.4〜3.5μmにある波長を選択的に透過する光学フィルタが使用される。光学フィルタは単独で使用してもよいし、抽出組成物(C)中の油分をより高精度に測定するために複数設置してもよい。光学フィルタを複数設置することで、複数種類含まれる油分を選択的に測定したり、油分濃度測定に不要な吸収を取り除いたりすることができる。
光学フィルタを使用しなくても、溶媒(S)特有の赤外吸収特性を利用して、波長を選択することも可能であり、この場合には溶媒(S)の吸収を光学フィルタの代わりに使用することもでき、光学フィルタと溶媒(S)の吸収による波長選択を組み合わせた方法も可能である。
ここで、油分濃度測定には、前述のように主に油分のC−H結合に由来する3.4〜3.5μm付近にある吸収を測定することが好ましいが、この範囲をすべて含む必要はなく、油分測定が可能な測定波長を絞り込んでも構わないし、3.4〜3.5μmの他にも特長的な波長があり溶媒(S)の吸収に影響を受けずに油分濃度の定量ができれば、測定する波長は3.4〜3.5μm付近での測定に限定されない。
溶媒(S)に含まれる成分の影響により、油分中のC−H結合特有の吸収帯3.4〜3.5μmの高波長側または低波長側に吸収が見られる場合、油分濃度の定量に影響を与えない波長範囲を光学フィルタで選択し、その吸収と測定対象の油分の吸収が重なるまでの波長領域を赤外項の透過範囲として含むことで測定波長の範囲を定めることも可能である。
また、検出器は高精度を維持するために、冷却しても構わない。冷却方法はペルチェ素子による冷却、ヒートポンプなどの熱移動媒体を用いた冷却、2次冷媒による冷却方法を利用した冷却等が挙げられる。さらに、検出器の断熱性を高めるために不活性ガスで封入しても構わない。
上記の測定原理を利用した具体的な油分測定装置は、特開昭53−71683号公報や特許第3078983号公報、特許第3301050号公報に例示されており、溶媒(S)を使用した場合でも、上記原理を利用または応用した装置を用いて油分濃度を測定することができる。
(蛍光光度法)
蛍光光度法とは、物質がある波長を照射されると励起状態となり、その励起した状態から基底状態に戻る際の発光状態が長寿命のものを蛍光と呼ぶことから、この蛍光強度を利用した測定方法を蛍光光度法という。
抽出組成物(C)調製手段(M1)で調製された抽出組成物(C)は、ロータリーエバポレーターやホットプレートによる加熱により揮発させて油分を濃縮する。その後、溶媒(S)により一定容量にした試料を油分量分析手段(M2)に導入する。
油分量分析手段(M2)に導入した試料に、光源より310nmの励起光を照射して、試料から発せられる330nmの蛍光の強度を測定する。ここで、油分測定では標準物質として使われることの多いクリセンの励起光が310nmのため、励起光が310nmであることが多いが、標準物質の種類と、測定対象の励起光波長に応じて適切な波長を使用することができる。そして、標準物質から得られる検量線より油分濃度を求める。
蛍光の強度は次の原理で測定される。放射エネルギー強度の強いキセノンランプを光源として光を回折格子で分光する。そして、分光して得られた各波長の光をスリットに通すことで特定波長の光を取り出す。さらに、この分光された光をビームスプリッタで、それぞれ試料に照射する光と励起光強度を測定する光に分ける。そして、励起光強度を測定する光は直ちに検出器に入り、信号処理される。一方、光が試料に照射されると試料から蛍光が発生する。発生した蛍光を検出するために、試料を透過した光を除き、照射方向に対して90度の光を得る。さらに、90度方向の光は再び回折格子で分光され、得られた蛍光スペクトルから、蛍光強度を得ることができる。回折格子やビームスプリッタは、検出する波長や検出装置の構造に応じて複数使用してもよく、適宜適切に組み合わせることができる。
(マイクロバランス法)
マイクロバランス法の測定原理は次のとおりである。水晶振動子の表面に何かの物質が付着すると水晶振動子の共振周波数が変化することを利用して、付着した物質の質量と周波数の変化量の相関から、付着した物質の質量を測定する方法である。水晶振動子に付着した物質の質量と周波数の相関には、sauerbreyの式と呼ばれる関係があることが知られている。この式から導かれる感度は非常に高く、例えば9MHzの水晶振動子では1Hzあたり約1ナノグラム、50MHzの水晶振動子では約1/100ナノグラムの変化量に相当する。この原理を利用して、抽出組成物(C)調製手段(M1)で調製された抽出組成物(C)に含まれる油分の質量を定量することができる。
マイクロバランス法での濃度測定では、抽出組成物(C)調製手段(M1)で調製された抽出組成物(C)は、一定量採取され、測定装置の油分量分析手段(M2)に導入される。油分量分析手段(M2)に導入する抽出組成物(C)の量は装置に応じて適切な量を導入すればよい。
マイクロバランス法での測定装置に使用される水晶振動子の水晶には様々な種類のものが挙げられる。たとえばATカット水晶、BTカット水晶、CTカット水晶、DTカット水晶、GTカット水晶、SCカット水晶等を用いた水平方向の厚み滑り振動による測定方法や、圧電体上に2対のくし型電極をもち、発振用のくし型電極で超音波を発生させ、圧電体を伝わった音波を受信用電極で電気信号に変換するSAWデバイスを用いた方法が挙げられ、測定感度や使用条件を考慮して適切なものを使用することが好ましい。この水晶振動子を使用した測定方法では、測定セルにある水晶振動子上に抽出組成物(C)を導入し、これに含まれる溶媒(S)を揮発させることが必要である。
残留した不揮発成分を水晶振動子の固有振動数から得るために、水晶振動子の表面への付着場所によって振動数変化の感度が異なることが知られており、均一に不揮発分を付着させることが好ましい。この点においても、表面張力の小さなハロゲン化オレフィン(1)を使用すると、水晶振動子の測定部位表面に均一に不揮発分を付着させることができ好ましい。
ハロゲン化オレフィン(1)は、その小さな表面張力から表面に対する濡れ性が非常に高い。この性質を利用して、抽出溶媒として利用することで、水晶振動子表面へ均一に分布することから、揮発時にも水晶振動子表面に不揮発分が均一に付着することができる。不揮発分を感知する部分は、平滑であってもよいが、凹凸を有しより残留物が均一に付着するようにしても構わない。
以上、本発明の油分濃度測定装置の実施形態について例を挙げて説明したが、本発明の油分濃度測定装置はこれに限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない限度において、また必要に応じてその構成を適宜変更できる。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は以下に限定されるものではない。
<CFO−1214yaおよびCFO−1214ybの油分との溶解性>
(CFO−1214yaの合成)
国際公開第2010/074254号の実施例1の方法によりCFO−1214yaを得た。
具体的には、0℃に冷却したジムロートを設置した内容積1Lのガラス反応器に、相間移動触媒としてテトラブチルアンモニウムブロマイド3gと、水酸化カリウムの83g(1.485モル)と、水の180gと、製品名「アサヒクリンAK−225」(旭硝子株式会社製、HCFC−225caの48モル%とHCFC−225cbの52モル%の混合物)の609g(3モル)を仕込んだ後、撹拌しながら徐々に昇温し、45℃で1時間反応を行った。反応後、有機相と水相の2相に分離している反応粗液から有機相を分離し、釜容積1L、理論段数10段の能力を持つ蒸留塔により該有機相を蒸留してCFO−1214yaを得た。
得られたCFO−1214yaの純度は99.5質量%、水分含有量は70質量ppmであった。
(CFO−1214ybの合成)
特許第3778298号公報の実施例2の方法によりCFO−1214ybを得た。具体的にはコンデンサーを備えた200mlガラス製反応容器に、HCFC−225cbの40.7g、メチルトリオクチルアンモニウムクロライドの0.5g、水酸化カリウムの16.8gを水50mlに溶解させた水溶液を仕込んだ。攪拌しながら反応を55℃で行い、10時間反応させて、粗CFO−1214ybを得た。これを蒸留して純度99.5質量%のCFO−1214ybを得た。
(溶解性試験)
溶解性試験は、上記で得られた純度99.5質量%のCFO−1214yaおよび純度99.5質量%のCFO−1214ybを用いて次のように実施した。10gの各溶媒に対し、各油類を0.1gずつ添加し、溶解しなくなった濃度を飽和溶解度とした。
各油分は10gを上限として添加し、溶媒に対して10g溶解する場合には、任意に混和するとして評価した。試験に用いた各油分は次の通りである。鉱物油(G−955(圧延油):日本工作油株式会社製品)、B重油(市販品:JIS K2205 2種)、軽油(市販品:JIS K 2204−2007 特1号)、ごま油(市販品:食用植物油脂の日本農林規格に従う)。
各油分の溶解度を、以下の基準で評価した。
「◎(優良)」:50質量%以上(任意に溶解する)。
「○(良好)」:10〜50質量%。
「△(やや不良)」:1〜10質量%。
「×(不良)」:1質量%未満(溶解しない)。
また、比較のために、従来用いられている油分抽出溶媒である、テトラクロロエチレン(和光純薬工業、試薬特級)および四塩化炭素(和光純薬工業、試薬特級)について同様の油分溶解試験を行った。表1に各溶媒の各種油分への溶解性試験結果を示した。
Figure 2015121410
表1に示すとおり、CFO−1214yaやCFO−1214ybの油分溶解性は、テトラクロロエチレンや四塩化炭素の油分溶解性と同等であり、従来品と同様に油分抽出溶媒として使用できることが明らかである。したがって、CFO−1214yaおよびCFO−1214ybは、油分を含む固体や液体等の検体からの油分抽出に優れた性能を示すことが期待できる。
[実施例1:CFO−1214yaによる検体の油分濃度測定]
(検体の調製)
1Lの水道水に30μLのn−ヘキサデカン(和光純薬工業、試薬特級)を加え、撹拌翼を使用して十分に分散して、試験用の検体1として、油分(n−ヘキサデカン)を含有する水道水(油分濃度:23質量ppm)を得た。
(油分濃度測定)
上記で得られた検体1の100mL(100g)を200mlのガラス製ねじ口耐熱瓶内に秤量し、これに溶媒(S1)として上記で得られた純度99.5質量%のCFO−1214yaの10gを加えて、1分間手で強く振りまぜて撹拌した。その後、静置して2層分離したことを確認し、CFO−1214yaによる抽出組成物(C1)層を抜き出した。
フーリエ変換赤外吸収測定装置(FT/IR−610、日本分光株式会社製)にて3.4μm付近の赤外吸収スペクトルの強度から抽出組成物(C1)に含まれる油分濃度を測定した。検量線は溶媒(S1)にn−ヘキサデカンの所定量を溶解することで作成した。この検量線から得られる濃度と吸光度の関係から抽出組成物(C1)に含まれる油分濃度を求めた。結果を表2に示す。
[比較例1:四塩化炭素による検体の油分濃度測定]
比較例として、上記実施例1において、溶媒(S1)の代わりに四塩化炭素(和光純薬工業、試薬特級)を用いた以外は、上記同様にして検体1の油分濃度測定試験を行った。結果を表2に示す。
Figure 2015121410
本発明にしたがう実施例1によれば、抽出溶媒として従来技術の四塩化炭素を用いた場合と同様に、水に溶解した油分を抽出できることが明らかである。

Claims (10)

  1. 検体に含まれる油分の濃度を測定する方法であって、
    (A)検体から溶媒を用いて前記油分を抽出する油分抽出工程((A)工程)、および、
    (B)(A)工程で得られる前記油分と前記溶媒を含む抽出組成物の油分量を分析する油分量分析工程((B)工程)を有し、
    前記溶媒として、下記一般式(1)で表わされるハロゲン化オレフィンを用いる油分濃度測定方法。
    Cl…(1)
    (ただし、式(1)中、kは3〜5の整数、pは0〜2の整数、nは1〜3の整数であり、かつ(p+m+n)=2kである。)
  2. 前記抽出組成物の油分量を赤外線吸収法により分析する請求項1記載の油分濃度測定方法。
  3. 前記一般式(1)におけるpが0である請求項1または2記載の油分濃度測定方法。
  4. 前記ハロゲン化オレフィンが、ジクロロテトラフルオロプロペンである請求項1または2記載の油分濃度測定方法。
  5. 前記ジクロロテトラフルオロプロペンが、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび1,3−ジクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種である請求項4記載の油分濃度測定方法。
  6. 油分を含む検体から溶媒を用いて前記油分を抽出し、前記油分が前記溶媒に溶解した抽出組成物を得る手段と、前記抽出組成物中の油分量を分析する油分量分析手段とを有する油分濃度測定装置であって、
    前記溶媒として、下記一般式(1)で表わされるハロゲン化オレフィンを用いる油分濃度測定装置。
    Cl…(1)
    (ただし、式(1)中、kは3〜5の整数、pは0〜2の整数、nは1〜3の整数であり、かつ(p+m+n)=2kである。)
  7. 前記抽出組成物の油分量を赤外線吸収法により分析する請求項6記載の油分濃度測定装置。
  8. 前記一般式(1)におけるpが0である請求項6または7記載の油分濃度測定装置。
  9. 前記ハロゲン化オレフィンが、ジクロロテトラフルオロプロペンである請求項6または7記載の油分濃度測定装置。
  10. 前記ジクロロテトラフルオロプロペンが、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび1,3−ジクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種である請求項9記載の油分濃度測定装置。
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