以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本明細書における用語「固定部材」は、被固定部材を固定するために用いる部材を意味する。被固定部材は任意の物品であってよく、その種類、形状、寸法、個数などは何ら限定されない。したがって、固定部材の使用目的も限定されない。
一例として、固定部材は、丸めたり折り曲げたり巻いたりすることで小さくまとめられた被固定部材の形状を保持するために用いられてもよい。例えば、固定部材は、小さくまとめられた吸収性物品(例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の衛生用品)の状態を保持するために用いることができる。別の例として、固定部材は同種または異種の被固定部材同士を固定するために用いられてもよい。例えば、固定部材は、吸収性物品を衣類に取り付けるまたは固定させるために用いられてもよいし、複数の物品を束ねるために用いられてもよい。さらに別の例として、固定部材は被固定部材における第1領域と第2領域とを固定するために用いられてもよい。例えば、固定部材は、食品の袋に取り付けられて、その食品の保存のために用いられる封止テープとして用いられてもよい。
固定部材は帯状基材とその帯状基材上に設けられた固着部とを備える。本明細書における用語「帯状基材」は細長い板状、棒状、または紐状の部材を意味する。本明細書では、帯状基材の長手方向Lと直交する方向を幅方向Wと定義する。長手方向は、固定部材の巻付け方向と言い換えることができる。帯状基材は長手方向Lに沿って直線状に延びていてもよいし、長手方向Lに沿ってうねりながら延びていてもよい。ある態様において、帯状基材の長手方向Lの長さは10〜200mmであり、また、30〜140mm、50〜80mmとすることもでき、幅方向Wの長さは2〜100mmであり、また、5〜50mm、10〜20mmとすることができる。具体的には、長手方向L:30〜200mm×幅方向W:30〜100mm(板状)、長手方向L:50〜80mm×幅方向W:10〜20mm(棒状)、長手方向L:50〜150mm×幅方向W:1〜3mm(紐状)の寸法を有する帯状基材が挙げられる。
帯状基材は伸張性(外力を加えることで伸びて広がる性質)を有する。帯状基材は伸張性に加えて、伸縮性、弾性、あるいは塑性を有してもよい。帯状基材における伸張性は伸長率で表すことができる。伸張前の部材の長さをA(mm)とし、伸長後に破断した時の部材の長さをB(mm)とすると、伸張率E(%)はE=(B−A)/A×100で表される。ここで、帯状基材の伸長率は、引張試験機又はこれと同等の性能を持つ装置を用いて測定することが可能であり、その伸張率は伸長速度300mm/minの条件下で評価される。帯状基材の伸張率は好ましくは30〜1000%、より好ましくは50〜700%、最も好ましくは100〜500%である。伸長率が低すぎると、被固定部材の固定時に固定部材の長手方向(固定)長さが十分でなく、一方、伸長率が高すぎると、固定部材の単位面積当たりの固定力が低下する可能性がある。
本明細書における用語「固着部」は、被固定部材の面に付着可能な構造を意味する。固着部は面ファスナでもよいし粘着層でもよいし他の構造でもよい。
固定部材では、帯状基材の長手方向において固着部が該帯状基材の伸びに追随して広がる。ここで、「固着部が帯状基材の伸びに追随して広がる」とは、帯状基材の長手方向における固着部全体の範囲が帯状基材の伸びに伴って広がることを意味し、言い換えると、当該長手方向における固着部全体の両端の間の距離が帯状基材の伸びに伴って大きくなることを意味する。
帯状基材の長手方向において固着部が完全に途切れることなく続く場合、すなわち、該帯状基材に一つの固着部が設けられている場合には、「帯状基材の長手方向における固着部全体の両端」とは、その長手方向における当該一つの固着部の両端を意味する。このとき、「固着部全体の範囲」とは、当該一つの固着部の両端に挟まれた領域を意味する。ここで、「固着部が完全に途切れることなく続く」とは、後述するスリット状の貫通部または開口部(すなわち、切れ目)が長手方向Lと交差する方向に沿って帯状基材の幅全体に亘って延びておらず、そのため、長手方向Lに沿って見た場合に固着部の少なくとも一部が途切れることなく続くことを意味する。
一方、帯状基材の長手方向において固着部が完全に途切れている場合、すなわち、該帯状基材に複数の固着部が設けられている場合には、「帯状基材の長手方向における固着部全体の両端」とは、それら複数の固着部を一組の固着部と見た上で、長手方向における当該一組の固着部において最も外側にある二つの端部(最外端)を意味する。このとき、「固着部全体の範囲」とは、当該一組の固着部の二つの最外端に挟まれた領域を意味する。ここで、「固着部が完全に途切れる」とは、後述するスリット状の貫通部または開口部(すなわち、切れ目)が長手方向Lと交差する方向に沿って帯状基材の幅全体に亘って延びたために、長手方向Lに沿って見た場合に固着部が複数に分離することを意味する。帯状基材上に3個の固着部が最初(伸張前の時点)から所定の間隔をもって設けられる場合には、「帯状基材の長手方向における固着部全体の両端」とは、1番目の固着部の一端(3番目の固着部の側とは反対側の端部)と、3番目の固着部の一端(1番目の固着部の側とは反対側の端部)とを意味する。このとき、「固着部全体の範囲」は、それら3個の固着部をすべて網羅する範囲を意味する。
(第1実施形態)
図1〜7を用いて、第1実施形態に係る固定部材10の構造を説明する。本実施形態では固着部は面ファスナである。本明細書における用語「面ファスナ」はフック材およびループ材の双方を意味するが、本実施形態では面ファスナはフック材であるとする。図1に示すように、本実施形態では、固着部(複数のフック)12が帯状基材11と一体的に成形されており、各フック12が帯状基材11上に直接設けられた構造になっている。また、帯状基材11を面ファスナのベースシートと見なしたならば、固定部材10は面ファスナそのものであるとも言える。
固定部材10の全体の厚さは、一般に60〜550μmである。被固定部材の固定や被固定部材の面への付着などの観点から、その厚さについて下限を90μmまたは115μmとし上限を500μmまたは450μmとすることができる。固定部材10の全体の厚さが60〜380μmである「薄型面ファスナ(low-profile fastener)」ともいわれる固定部材(面ファスナ)も使用可能である。薄型面ファスナについては、厚さの下限を90μmまたは115μmとし上限を350μmまたは320μmとしてもよい。
図2に示すように、本実施形態のフック12は、帯状基材11から延びる茎部12aと、その茎部12aの先端に形成された傘部12bとを備えており、全体として茸状を呈する。もっとも、フック12の形状はこれに限定されず、固定部材の寸法(長さ、幅)や伸長性の程度に基づき適宜設定すればよい。係合力を満足するものであれば、フックは鉤状、T字状、またはJ字状でもよい。なお、図3以降では、図2に示すフック12を簡略化して表す。
伸張性を有する固定部材10の材料は熱可塑性樹脂であり、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)とポリエチレン樹脂(PE)との混合物や、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)樹脂が例として挙げられる。PPとPEの混合物を用いる場合には、PPとPEとを約95:5〜30:70の重量比で混合してもよい。PPの量がこの上限を上回ると、PPの特性が支配的になり、フックが硬くなる傾向がある。反対に、PPの量がその下限を下回ると、フックの係合力が弱くなる。特に、フックの係合力が0.2N/25mm以下となってしまうと、フックの実用性が乏しくなってしまう。PPは単独重合体または共重合体のいずれであってもよい。PEの例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などが挙げられる。
本実施形態に係る面ファスナの製造方法に関する二つの例を示す。一つは、特表2005−514976号公報に記載の手法である。この手法ではまず、電子放電機械加工により切断された開口部を有する押し抜き機(die)から熱可塑性樹脂を押し出すことで、フックの断面形状を有する複数のレール状のリブ(rib)がベースシート上に並んだストリップ(strip)を形成する。続いて、水などの冷却液体を充填した冷却タンク内でそのストリップをローラで引っ張る。続いて、リブの長手方向に沿って互いに離間した複数の位置で、各リブに幅方向の切り込みを入れることで、それぞれのリブについて、フックの厚さに対応する複数の部分を形成する。リブを切断した後、ストリップのベースシートを所定の伸張比で伸ばす。具体的には、互いに異なる表面速度で駆動されるニップローラの第1の対とニップローラの第2の対と間でリブの長手方向に沿ってベースシートを伸張する。この工程では、上流に位置する第1の対のニップローラの一つを加熱することでベースシートを加熱する一方で、下流に位置する第2の対のニップローラの一つを冷却してベースシートを安定化させてもよい。この伸張によって、リブの複数の部分間に空間が生じ、その部分がフックとなる。
もう一つの例は、特表2008−532699号公報に記載の手法である。この手法ではまず、多数の貫通孔を有する型板または押し出し機を用いた押出成形により、複数のフックの原形をなす複数の柱状体が表面に並んだ帯状基材を形成する。次に、各柱状体の先端部を加熱しながらカレンダーロールでその先端部を潰すことで、傘部を有する各フックを形成する。この工程により固定部材10が得られる。
製造される固定部材10の厚さおよび高さは、被固定部材の固定や被固定部材の面への付着などの観点から、例えば以下のように設定することができる。
帯状基材11の厚さtの下限は20μm、30μm、または35μmでもよく、その厚さtの上限は100μm、80μm、または60μmでもよい。
フック12の高さhの下限は40μm、60μm、または80μmでもよく、その高さhの上限は450μm、400μm、または350μmでもよい。
茎部12aの底の最大幅waおよび茎部12aの先端の幅wcは、所望の係合力が得られるのであれば特に限定されない。図2に示すフック12を例にとると、茎部12aの底の最大幅waの下限は70μmまたは100μmであってもよく、その最大幅waの上限は300μm、250μm、または200μmであってもよい。茎部12aの先端の幅wcの下限は50μmまたは80μmであってもよく、その幅wcの上限は250μm、195μm、または185μmであってもよい。
また、傘部12bの最大幅wbについても係合力の観点から定めることができる。図2に示すように、傘部12bの最大幅wbは茎部12aの底の幅waよりも大きいことが好ましく、傘部12bの最大幅wbと茎部12aの底の幅waとの比の上限は1.01:1、2:1、または3:1であってもよい。その最大幅wbの下限は70μmまたは100μmであってもよく、最大幅wbの上限は500μmまたは450μmであってもよい。茎部12aの先端からの傘部12bの張出し量pの下限は5μmでも10μmでもよく、その張出し量pの上限は200μm、190μm、180μm、または170μmであってもよい。
上記の帯状基材11の厚さおよびフック12の高さに基づくと、固定部材10全体の厚さの下限は60μm、90μm、または115μmでもよく、その厚さの上限は550μm、500μm、または450μmでもよい。この固定部材10全体の厚さは、その固定部材10の伸張性または柔軟性を考慮して設定されてもよい。
固着部(面ファスナ)がループ材である場合には、例えば、経糸及び緯糸、並びに少なくとも一方の表面から突出するループ糸を有する構造を作製できる。ある態様において、経糸および緯糸は帯状基材を構成し、ループ糸は固着部を構成する。経糸及び緯糸は間隔をおいて配置され得る。経糸、緯糸、およびループ糸のそれぞれは1本のフィラメントであっても複数のフィラメントの束であってもよい。ループ糸は、雄材との係合確率を高めるという点からは、モノフィラメントよりマルチフィラメントのものを使用することが好ましい場合がある。この場合、ループ糸のフィラメントが過度に細いと雄材との係合中に切れたりする場合があるので、面ファスナの形状等に基づいて適度な太さのフィラメントが選択される。一般的には、経糸、緯糸及びループ糸のフィラメントの総繊度は、約20〜約220dtex、または約20〜約100dtexであり得る。経糸、緯糸、ループ糸等の各々の糸を構成する繊維の種類も1種または2種以上であり得る。繊維層の材質としては、例えば、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、EVA(エチレン・ビニルアセテート)、ポリ乳酸、レーヨン、これらのコポリマー及び混合物、並びに天然繊維等が挙げられる。なお、ループ材は経糸、緯糸、およびループ糸以外の糸を含んでもよく、例えば経糸および緯糸の双方と交差する糸を含んでいてもよい。ループ糸は、少なくとも一方の表面から突出していればよく、繊維層の両表面において突出していてもよい。ループ糸は経糸および緯糸のいずれか一方に編みこまれていればよいが、経糸及び緯糸の両方に編みこまれていてもよい。ベースシート上に形成されるループ体の高さは、フックの場合と同様に定めることができる。
フック材およびループ材の両方が固着部として帯状基材上に設けられた固定部材を用いてもよい。例えば、フック材を有する面に不織布またはニットが貼り合わされた構造を有する固定部材が挙げられる。
ここで、図1では、帯状基材11の全面に面ファスナ12(固着部。図1ではフック材)が取り付けられているが、面ファスナ12は帯状基材11上の一部にのみ設けられてもよい。例えば、長手方向Lに沿って複数の面ファスナ12が所定の間隔ごとに設けられてもよい。帯状基材11上の一部にのみ面ファスナ12を取り付ける場合において、当該面ファスナ12の形状は矩形に限定されるものではなく、円、楕円、星形、任意の多角形、あるいはこれらのような複数種類の形状を組み合わせたより複雑な形状であってもよい。帯状基材11の面積に対する面ファスナ12の面積の比(面ファスナの面積/帯状基材の面積)は10%以上、15%以上、20%以上とすることができ、また100%以下、90%以下、80%以下とすることができる。
帯状基材11にはスリット状の溝、スリット状の貫通部、または開口部が形成されてもよい。本明細書では、隣り合う溝、貫通部、または開口部で挟まれた細長い領域を「ストランド」という。
本明細書における用語「溝」は、帯状基材の少なくとも一つの面または面ファスナのベースシートの少なくとも一つの面に形成された、その面とは反対側の面までは貫通しない切込みまたは凹部を意味する。なお、フック材またはループ材は、面ファスナのベースシート表面に形成される。本明細書における用語「スリット状(線状)」は、直線、任意の曲線、任意の波形(正弦波、矩形波、三角波、のこぎり波)、山形などの任意の形状を含む概念である。本明細書における用語「貫通部」は、帯状基材の一方の面または面ファスナのベースシートの一方の面から反対側の面まで貫通した孔を意味する。貫通部は点状でもよいし、スリット状(上記のとおり、それは直線、任意の曲線、任意の波形、山形などの任意の形状であり得る)でもよいし、二次元状に広がっていてもよい。本明細書では、二次元状に広がった貫通部を特に「開口部」ともいう。開口部の形状は限定されないが、例えば菱形、六角形、円形、楕円形、矩形、星形、波形、あるいは他の多角形であり得る。本明細書では、「スリット状の溝」と「スリット状の貫通部」とを包括して単に「スリット」ということもある。
スリットは従来から用いられている任意の手法により形成することができる。例えば、スリット状の溝は、帯状基材またはベースシートの一表面から当該帯状基材またはベースシートの一定の厚さまで刃やレーザなどで切断することで形成される。帯状基材またはベースシートの厚さに対する溝の深さの比の下限は0.4でもよく、その比の上限は0.9でもよい。スリット状の貫通部は、帯状基材またはベースシートの一方の面から反対の面に亘って刃やレーザなどで切断することで形成される。スリットは、固定部材10の長手方向Lと交差する方向(例えば幅方向W)に形成される。
開口部は、例えば、スリット状の貫通部が形成された固定部材10をスリット列と直交する方向に広げることで形成され得る。固定部材10を広げる手段として、幅出し機(tenter)やローラなどの機械や、手作業などが挙げられる。ただし、固定部材10は使用時に伸ばされるので、固定部材10を広げることで開口部を形成する際には固定部材10の伸張率に配慮する必要がある。あるいは、開口部は、固定部材10を所望の形にくり抜くことで形成されてもよく、この場合には固定部材10を広げる必要がない。
図3〜6にスリットの例を示す。帯状基材11上でのスリットの配置、または、スリットの延び方向におけるスリットの間隔(切込みが入っていない領域)である中継部の配置は任意に定めてよい。例えば、図3に示すようにスリット13あるいは中継部16が千鳥状に並ぶ配置でもよい。あるいは図4に示すように、長手方向Lに沿ってスリット13が並ぶような配置でもよい。あるいは図5に示すように、各スリット13が幅方向Wに沿って途切れることなく延びてもよい。図5の例では中継部は帯状基材11上に存在しないことになる。図5の例ではスリットは溝である。
ストランド15の幅は限定されない。例えば、ストランド15の幅はフック12の1個分(正確には、フック12の1個分およびフック12から続く一定長さの帯状基材11の部分)であってもよいし、フック12の2個分であってもよいし、3個以上のフック12に相当してもよい。図3,5ではストランドの幅はフック2個分であり、図4ではストランドの幅はフック1個分である。ストランド15の幅は不均一でもよい。例えば、フック1個分のストランドとフック2個分のストランドとが混在してもよいし、フック5個分のストランドとフック10個分のストランドとが混在してもよい。あるいは、固定部材10の先端付近におけるストランドの幅が固定部材10の中央付近におけるストランドの幅より大きくてもよいし、その逆に、当該先端付近のストランドの幅が当該中央付近のストランドの幅より小さくてもよい。
長手方向Lにおけるスリット13の間隔はストランド幅ではなく単位距離当たりの本数で規定してもよい。例えば、長手方向Lにおいて1cm当たりのスリット13の個数の下限は1でもよく、その個数の上限は10でもよい。
スリット13の長さは任意に設定してよい。例えば、各スリット13の長さの下限は8mm、10mmまたは12mmであってもよい。あるいは、固定部材10の幅に対する、スリット13の長さの合計の比(該合計値/固定部材の幅)でスリット13を規定することができる。例えば、その比は40%以上または50%以上とすることができる。
スリット13の延び方向におけるスリット13の間隔(切込みが入っていない領域)である中継部16の長さも任意に設定してよい。例えば、中継部16の長さの下限は0.25mm、0.5mm、または0.75mmでもよく、その長さの上限は10mm、15mm、または20mmでもよい。
図6は図3のVI−VI断面図であり、スリット13のいくつかの態様を示している。図6(a)はスリット状の貫通部13aを示し、図6(b)はスリット状の溝13bを示し、図6(c)は当該貫通部13aおよび溝13bが混在する例を示している。
図3〜6の例ではスリット13が幅方向Wに沿って延びているが、その延び方向は長手方向Lと直交しなくてもよい。スリット13は長手方向Lおよび幅方向Wの双方と交差する方向、すなわち、斜めに延びてもよい。
図7は、開口部14が形成された固定部材10を示している。開口部14の大きさ、設置場所、および設置間隔は限定されない。例えば、図7の例では開口部14の形状および大きさが均一であるが、1枚の固定部材10において開口部14の大きさが不均一であってもよいし、様々な形状の開口部14が混在してもよい。また、図7の例では開口部14が長手方向Lに沿って並んでいるが、開口部14は千鳥状に配されてもよい。
1枚の固定部材10にスリット状の溝、スリット状の貫通部、および開口部という3要素のうちの少なくとも2要素が混在してもよい。図6(c)はその態様の一例である。別の例として、スリット状の貫通部と開口部との双方が存在する固定部材10もあり得る。これら3要素のうちの二つあるいは三つが混在する場合における各要素の配置は任意に定めてよい。
スリットまたは開口部が形成された固定部材10におけるフック12の密度は、「固定部材におけるフック総本数/固定部材における帯状基材(ベースシート)および開口部の総面積」で求められる。この密度の下限は、例えば約31個/cm2、約39個/cm2とすることができる。また、その密度の上限は、例えば約1550個/cm2、約1240個/cm2であってもよい。例えば、その密度は約465個/cm2でもよい。
スリット状の貫通部を広げることで開口部14を形成し、その形成された開口部14の形状が維持される固定部材10の場合には、広げる前の固定部材10におけるフックの初期密度を設定してもよい。この初期密度は、「固定部材におけるフック総本数/拡げる前の固定部材における固定部材の総面積」で求められる。その初期密度の下限は例えば155個/cm2、186個/cm2、または248個/cm2であってもよく、その初期密度の上限は例えば1550個/cm2でもよい。
上記の通り固定部材10の用途は限定されないが、一例として、不織布等で作製された使い捨ておむつ20に固定部材10を適用する態様を図8,9に示す。なお、この使い捨ておむつ20はパンツ型であるが、おむつの種類は何ら限定されるものではなく、オープン型(フラット型)などの様々なおむつに固定部材10を適用することができる。
固定部材10は、その一端が使い捨ておむつ20の背面または前面に接着、縫い付け、ステープラなどにより取り付けられることで、当該おむつ20に採用される。使い捨ておむつ20への固定部材10の取付方法は任意であるが、固定部材10の伸張によって固定部材10自体が使い捨ておむつ20から取れないようにする必要がある。図8の例では、固定部材10をつかみ易くするためのタブ19が固定部材10の一端に設けられている。タブ19は、固定部材10の一端を固くしたり厚くしたりすることで形成することができ、あるいは固定部材10の一端に孔を開けることで形成してもよい。固定部材10のうち、使い捨ておむつ20に接着する部分とタブ19とにはフック12は設けられない。すなわち、固定部材10の一部の領域が固着部を有さなくてもよい。固着部は面ファスナなので、貼付材を用いなくても使い捨ておむつ20の外面(おむつ20の着用者側の面とは反対の面)に固定部材10のほぼ全体を予め貼り付けておくことができる。
使い捨ておむつ20を廃棄する際には、使用者は図9に示すようにそのおむつ20を丸めた上で、タブ19を持って固定部材10を引っ張りながらその固定部材10をおむつ20に巻く。すると、固定部材10の長手方向Lにおいて固着部がその伸びに追随して広がり、そのままおむつ20の外面に付く。図9の例では、固着部が使い捨ておむつ20を約2周回るほどに伸びて該おむつ20に付いている。固着部は面ファスナなので剥離により固着力はほとんど低下せず、したがって、使い捨ておむつ20を確実に小さくまとめることができる。
(第2実施形態)
図10〜12を用いて、第2実施形態に係る固定部材30について説明する。固定部材30は、伸張性を有する帯状基材31上に面ファスナ32を接着や溶着などにより取り付けることで得られる2層構造である。この固定部材30も第1実施形態における固定部材10と同様に様々な用途に適用でき、例えば上記の使い捨ておむつ20にも適用可能である。
図10では帯状基材31の全面に面ファスナ32が取り付けられているが、面ファスナ32は帯状基材31上の一部にのみ設けられてもよい。例えば、帯状基材31上の一部に一つの面ファスナ32のみが設けられてもよいし、長手方向Lに沿って複数の面ファスナ32が所定の間隔ごとに設けられてもよい。帯状基材31上の一部にのみ面ファスナ32を取り付ける場合において、当該面ファスナ32の形状は矩形に限定されるものではなく、円、楕円、星形、任意の多角形、あるいはこれらのような複数種類の形状を組み合わせたより複雑な形状であってもよい。
帯状基材31の面積に対する面ファスナ32の総面積の比(面ファスナの総面積/帯状基材の面積)は10%以上、15%以上、20%以上とすることができ、また100%以下、90%以下、80%以下とすることができる。ここで、面ファスナ32の総面積とは、面ファスナ32におけるベースシート33の面積と開口部の面積との和を意味し、複数の面ファスナ32が間隔をあけて設置されている場合、その間隔の面積は含まない。
伸張性を有する帯状基材31は、第1実施形態における固定部材10と同じ材料を用いて作製される。すなわち、帯状基材31の材料は熱可塑性樹脂であり、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)とポリエチレン樹脂(PE)との混合物や、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)樹脂が例として挙げられる。PPとPEとの混合比や、PPおよびPEの例は第1実施形態と同様である。帯状基材31の厚さは第1実施形態の帯状基材11の厚さtと同様に定めてよい。すなわち、帯状基材31の厚さの下限は20μm、30μm、または35μmでもよく、その厚さtの上限は100μm、80μm、または60μmでもよい。
本実施形態における面ファスナ32はフック材でもループ材でもよいが、図10,11の例では面ファスナ32はフック材である。この面ファスナ32は、帯状基材31に固着されたベースシート33と、そのベースシート33に設けられた複数のフック34とを備える。面ファスナ32は長手方向Lにおいて該帯状基材31の伸びに追随して広がる必要があるが、この要件を満たすのであれば面ファスナ32の伸張率は帯状基材31の伸張率より低くてもよい。
したがって、その要件を満たす範囲で面ファスナ32の材料を柔軟に決めることができる。面ファスナ32は例えば熱可塑性樹脂によって形成される。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のポリアミド、ポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、可塑化塩化ビニル、ポリエステル等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂の1種のみを用いてもよいし、2種以上の熱可塑性樹脂を混合したポリマーブレンドを用いてもよい。また、ポリエチレンとポリプロピレンとのコポリマーを用いてもよい。
面ファスナ32の製造方法は第1実施形態と同様であり、したがって、特表2005−514976号公報あるいは特表2008−532699号公報に記載の手法を採用することができる。また、面ファスナ32、ベースシート33、およびフック34に関する各種寸法も第1実施形態と同様に設定することができる。フック34の形状についても第1実施形態と同様に様々な態様があり得る。面ファスナがループ材である場合には、ベースシート上に形成されるループ体(係合部)の高さをフック34と同様に定めることができる。
ベースシート33にはスリット状の溝、スリット状の貫通部、または開口部が形成される。これらの要素の製造方法、形状、寸法、配置は第1実施形態と同様であり、例えば図3〜5,7に示す態様を採用し得る。図11は、スリットが図3の例と同様であると仮定した場合における図10のXI−XI線断面図であり、スリット35のいくつかの態様を示している。図11(a)はスリット状の貫通部35aを示し、図11(b)はスリット状の溝35bを示し、図11(c)は当該貫通部35aおよび溝35bが混在する例を示している。図6との差異は、帯状基材31と面ファスナ32との2層構造であるという点である。なお、図11でもフックを簡略化して表している。
スリット状の貫通部を広げることで開口部を形成し、その形成された開口部の形状が維持される固定部材30の場合には、広げる前の面ファスナ32におけるフック34の初期密度を設定してもよい。この初期密度は、「フック材におけるフック総本数/拡げる前のフック材におけるベースシートの総面積」で求められる。その初期密度の下限は例えば155個/cm2、186個/cm2、または248個/cm2であってもよく、その初期密度の上限は例えば1550個/cm2でもよい。複数の面ファスナ32を帯状基材31上に間隔をあけて設置した場合には、各面ファスナ32についての初期密度を上記の範囲に設定できる。
ある態様においては、例えば、帯状基材31の厚さに対する面ファスナ32の厚さの比(面ファスナの厚さ/帯状基材の厚さ)の下限を0.12、0.225、または0.383とすることができ、その比の上限を7.6、5、または3.2とすることができる。
固定部材30を伸ばす一態様を図12に示す。この図において、面ファスナ32にはスリット35と中継部36とが千鳥状に並ぶように配置されており(図3と同様)、スリット35はすべて貫通部35aである。固定部材30を長手方向Lに沿って伸ばすと、貫通部35aをきっかけにして幅方向Wの全体において面ファスナ32に切れ目が形成され、各ストランドが分離し、ストランド同士の間隔が広がる。この結果、図12に示すように、長手方向Lにおける面ファスナ32の全体の範囲が広がる。このとき、ストランドの間には帯状基材31が現れる。このように、伸張前の固定部材30が小さくても、伸張により固着部を広い範囲に行き渡らせることができる。
(第3実施形態)
図13を用いて、第3実施形態に係る固定部材40について説明する。固定部材40は、伸張性を有する帯状基材41上に粘着層42が設けられた2層構造である。すなわち、本実施形態における固着部は粘着剤である。伸張性を有する帯状基材上に粘着層が設けられた構造である固定部材では、伸長した場合でも粘着層の粘着力を維持するため、部分的に伸びない部分を帯状基材に配置してもよい。この固定部材40も第1実施形態における固定部材10と同様に様々な用途に適用でき、例えば上記の使い捨ておむつ20にも適用可能である。固定部材40を採用する際には、使用前の粘着層42を保護するための剥離シートを導入してもよい。
図13では帯状基材41の全面に粘着層42が設けられているが、粘着層42は帯状基材41上の一部にのみ設けられてもよい。例えば、帯状基材41上の一部に粘着層42が一箇所のみ設けられてもよいし、長手方向Lに沿って複数の粘着層42が所定の間隔ごとに設けられてもよい。帯状基材41上の一部にのみ粘着層42を取り付ける場合において、当該粘着層42の形状は矩形に限定されるものではなく、円、楕円、星形、任意の多角形、ストライプ状、格子状、破線状、波形、あるいはこれらのような複数種類の形状を組み合わせたより複雑な形状であってもよい。
伸張性を有する帯状基材41の各種属性(材料や寸法など)は第2実施形態と同様であるので説明を省略する。
粘着層42の材料として例えばゴム系粘着剤またはアクリル系粘着剤を使用することができる。ゴム系の粘着剤の例としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、あるいは水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体の合成ゴムや、このような合成ゴムと樹脂とのブレンドなどが挙げられる。例えば、30重量部のスチレン−ブタジエン−スチレンの3元ブロック重合体(スチレン−イソプレン−スチレン3元ブロック重合体であって、クレイトンポリマー社製、製品名:クレイトンD1119(商標))、42重量部のC−5炭化水素樹脂(CrayValley社製、製品名:WingtackPLUS(商標))、および28重量部のC−5炭化水素樹脂(CrayValley社製、製品名:Wingtack10(商標))の合成ゴム/樹脂のブレンドが用いられる。
粘着層42の粘着力(垂直方向に剥離する場合の剥離力)は、好ましくは1〜800N/25mmであり、より好ましくは8〜400N/25mm、最も好ましくは20〜200N/mmである。また、粘着層42における接着剤の厚さは、好ましくは10〜200g/m2、より好ましくは20〜120g/m2、最も好ましくは30〜80g/m2である。
上記の各実施形態で示したように、本発明の一側面に係る固定部材は、伸張性を有する帯状基材と、帯状基材上に設けられた固着部とを備え、帯状基材の長手方向において固着部が該帯状基材の伸びに追随して広がる。
また、本発明の一側面に係る固定部材は、物品を小さくまとめるために用いられる。
また、本発明の一側面に係る吸収性物品は上記の固定部材を備える。
このような側面によれば、固着部が帯状基材の伸びに追随して広がるので、帯状基材の長手方向に沿った広い範囲にわたって固着部が被固定部材(例えば吸収性物品)に付くことになる。このように使用時に固着部が広がることで、その広い範囲において被固定部材の動きを抑えることができるので、その被固定部材に対する固定部材の固定力が高まる。図9の例では、フック12の集合である固着部が、丸められた使い捨ておむつ20の約2周分にわたる程に広がりその範囲においておむつ20の面に付くので、おむつ20の丸まった状態を確実に維持することができる。
別の側面では、固着部が面ファスナであってもよい。粘着層を採用する場合には一般にその粘着層を保護するために剥離シートを導入する必要があるが、面ファスナの場合はそのような保護が不要なので、固定部材の取り扱いが容易になる。また、貼付および剥離を繰り返しても面ファスナの固着力はほとんど低下しないので、物品そのものの利用の邪魔にならないように当該物品の面に予め固定部材を貼っておくことができる。
別の側面では、面ファスナが複数のフックを備え、複数のフックが帯状基材に直接設けられてもよい。この場合には、帯状基材が面ファスナのベースシートの役割を果たすので、固定部材の厚みを抑えることができる。その結果、例えば物品に予め固定部材を取り付けていたとしてもその固定部材が物品そのものの利用において邪魔にならない。
別の側面では、帯状基材に溝、スリット状の貫通部、または開口部が形成されてもよい。この場合には、帯状基材をより簡単に伸ばすことができる。
別の側面では、面ファスナが、帯状基材に固着されたベースシートと、該ベースシートに設けられた複数のフックとを備え、ベースシートにスリット状の貫通部、または開口部が形成されてもよい。この場合には、ベースシートを有する面ファスナを帯状基材に設けた場合にも、帯状基材を簡単に伸ばすことができ、かつ固着部を帯状基材の伸びに追随させて広げることができる。また、この場合には帯状基材にフックを直接設ける必要がないので、帯状基材の設計の自由度が高まり、伸張性に優れた帯状基材を準備することができる。伸長性に優れた帯状基材を従来の面ファスナと組み合わせることで、たとえ面ファスナそのものが伸長しなくても、広い範囲にわたって固着部を被固定部材に付けることができる。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。