JP2015118344A - 光学部材駆動装置および光学機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】カムフォロアと2つのカム溝部との間のギャップをなくしつつ小型化を図る。【解決手段】光学部材駆動装置は、2つの第1のカム面121,122を有する第1のカム溝部12Aが設けられた第1のカム部材12と、2つの第2のカム面131,132を有する第2のカム溝部13Aが設けられ、第1のカム部材に対して回転可能な第2のカム部材13と、可動部材11に取り付けられ、第1および第2のカム溝部に係合するカムフォロア10とを有する。カムフォロアは、可動部材に取り付けられ、2つの第1のカム面および2つの第2のカム面のそれぞれの一方のカム面に接触する第1の接触部材14と、第1の接触部材に対して2つの第1のカム面および2つの第2のカム面のそれぞれにおける他方のカム面に向かう特定方向に移動が可能第2の接触部材15と、第2の接触部材を、第1の接触部材に対して特定方向に付勢する付勢手段16,14b,15bとを有する。【選択図】図2
Description
本発明は、レンズ等の光学部材をカム機構を用いて移動させる光学部材駆動装置およびこれを含む光学機器に関する。
光学部材の1つであるレンズをその光軸方向に移動させて変倍や焦点調節を行うレンズ鏡筒には、カム機構が用いられることが多い。レンズ鏡筒のカム機構は、レンズを保持する可動枠に取り付けられたカムフォロアと、光軸方向に延びる直進カム溝部(以下、直進溝部という)を有する固定筒と、光軸方向に対して傾きを有するカム溝部を有し固定筒に対して光軸回りで回転するカム筒とを有する。カムフォロアは、直進溝部とカム溝部とが交差する部分にてこれら直進溝部とカム溝部の双方に係合している。このため、カム筒が回転すると、直進溝部により光軸回りでの回転を阻止された、すなわち光軸方向にガイドされたカムフォロアがカム溝部の光軸方向へのリフトによって光軸方向に移動する。これにより、カムフォロアが取り付けられた可動枠およびこれに保持されているレンズが光軸方向に移動する。
このようなカム機構においては、カムフォロアが直進溝部およびカム溝部内でスムーズに移動できるように、カムフォロアと直進溝部との間およびカムフォロアとカム溝部との間のそれぞれにギャップを必要とする。ただし、このギャップがあることで、レンズ鏡筒の姿勢(重力方向に対する向き)が変化するとカムフォロアが直進溝部とカム溝部の内側で変位し(がたが発生し)、その結果、可動枠およびレンズの位置が変化して光学性能に影響する。
このような問題を解消するため、カムフォロアの寸法精度を上げて、がたをできるだけ小さくしたりカムフォロアを直進溝部およびカム溝部に対して圧入することでがたをなくしたりする構成が採用される場合がある。ただし、カムフォロアの寸法精度を上げると製造コストの増加を招く。また、圧入によってがたをなくしても、長期間の使用では摩耗やクリープによってがたが生じてしまう可能性がある。
特許文献1,2には、弾性部材による弾性力を利用して、カムフォロアを直進溝部またはカム溝部に圧接させるよう付勢するレンズ鏡筒が開示されている。
しかしながら、特許文献1,2に開示されたレンズ鏡筒では、カムフォロアとカム溝部との間のがたおよびカムフォロアと直進溝部の間のがたの双方をなくするために、それぞれに対して弾性部材や付勢機構を必要とする。小型化が求められるレンズ鏡筒内に、これら弾性部材や付勢部材を直進溝部用とカム溝部用とに分けて配置することは困難である。
本発明は、小型の構成でありながらもカムフォロアとこれに係合する2つのカム溝部との間のがたを除去することができる光学部材駆動装置を提供する。
本発明の一側面としての光学部材駆動装置は、光学部材を保持する可動部材と、互いに対向する2つの第1のカム面を有して可動部材の移動方向に延びる第1のカム溝部を有する第1のカム部材と、互いに対向する2つの第2のカム面を有して可動部材の移動方向に対して傾いた方向に延びる第2のカム溝部を有し、第1のカム部材に対して可動部材の移動方向に延びる軸回りで回転可能な第2のカム部材と、可動部材に取り付けられ、第1および第2のカム溝部に係合するカムフォロアとを有する。そして、カムフォロアは、可動部材に取り付けられ、2つの第1のカム面および2つの第2のカム面のそれぞれにおける一方のカム面に接触が可能な第1の接触部材と、第1の接触部材に対して2つの第1のカム面および2つの第2のカム面のそれぞれにおける他方のカム面に向かう特定方向に移動が可能であり、これら他方のカム面に接触が可能な第2の接触部材と、第2の接触部材を、第1の接触部材に対して特定方向に付勢する付勢手段とを有することを特徴とする。
なお、上記光学部材駆動装置と、該光学部材駆動装置を収容する本体とを有する光学機器も、本発明の他の一側面を構成する。
本発明によれば、第1および第2の接触部材が共通の1つの付勢手段により付勢されて第1のカム溝部と第2のカム溝部の双方のカム面に圧接する。これにより、小型の構成でありながらもカムフォロアと第1および第2のカム溝部との間のがたを除去して光学部材の位置を高精度に制御可能な光学部材駆動装置を実現することができる。そして、この光学部材駆動装置を用いることで、小型で高い光学性能を有する光学機器を実現することができる。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の実施例1である光学部材駆動装置としてのレンズ鏡筒の構成を示している。Lは光学部材としてのレンズであり、11は該レンズLを保持する可動部材としての可動枠である。なお、本実施例では光学部材がレンズである場合について説明するが、本実施例および後述する他の実施例にて説明する構成は、絞り、フィルタ、回折格子、光学防振ユニット、撮像素子等、レンズ以外の光学部材を移動させる場合にも用いることができる。
12は第1のカム部材としての案内筒(固定筒)であり、その周壁における周方向3箇所にはレンズ鏡筒およびレンズLの光軸方向に延びる第1のカム溝部としての直進カム溝部(以下、直進溝部という)12Aが設けられている。案内筒12は、後述するカメラのシャーシに固定されたり、該シャーシに固定された他の固定筒に対して光軸方向に移動されたりする。
13は第2のカム部材としてのカム筒であり、その周壁における3領域には、光軸方向(可動枠11の移動方向)に対して傾きを有する第2のカム溝部としての駆動カム溝部(以下、単にカム溝部という)が設けられている。カム筒13は、案内筒12の外周に配置され、案内筒12に対して光軸回り(可動枠11の移動方向に延びる軸回り)で回転が可能である。
10はカムフォロアであり、可動枠11の外周面上の周方向3箇所に配置され、可動枠11に対してビスによって取り付けられる。カムフォロア10は、直進溝部12Aとカム溝部13Aとが交差する部分にて、これら直進溝部12Aとカム溝部13Aと双方に係合する。
このため、カム筒13が案内筒12に対して回転すると、直進溝部12Aによって光軸回りでの回転を阻止された、すなわち光軸方向にガイドされたカムフォロア10がカム溝部13Aの光軸方向へのリフトによって光軸方向に移動する。これにより、カムフォロア10が取り付けられた可動枠11およびこれに保持されているレンズLが光軸方向に移動する。レンズLの光軸方向への移動により、変倍や焦点調節を行うことができる。3つのカムフォロア10が周方向3箇所において直進溝部12Aとカム溝部13Aに係合することで、レンズ鏡筒の光軸に対するレンズLの大きな傾きを生じさせることなくレンズLを光軸方向に移動させることができる。
本実施例では、カムフォロア10と直進溝部12Aおよびカム溝部13Aとの間の係合がた(ギャップ)によるレンズLおよび可動枠11のわずかな変位や傾きが発生することを防止するために、カムフォロア10を以下のように構成している。
図2には、可動枠11、案内筒12およびカム筒13の一部を平面に展開して示すとともに、カムフォロア10を分解して示している。また、図3には、これらを光軸に対して直交する方向(カムフォロア10の中心軸が延びる方向)において見た構成を示している。
案内筒12の直進溝部12Aには、互いに対向する2つの第1のカム面としての2つの直進面121,122が形成されている。これら2つの直進面121,122は、互いに平行に光軸方向に延びている。カム筒13のカム溝部13Aには、互いに対向する2つの第2のカム面としての2つのカム面131,132が形成されている。これら2つのカム面131,132は、光軸方向に対して傾いた方向に向かって互いに平行に延びており、その傾きの角度は該カム面が延びる方向での各位置にて同じであってもよいし変化してもよい。
カムフォロア10は、第1の接触部材としての固定フォロア14と、第2の接触部材としての可動フォロア15と、付勢力発生部材(弾性部材)としての付勢ばね16と、段付きビス17とにより構成されている。段付きビス17の中心軸はカムフォロア10の中心軸に一致し、以下の説明において、カムフォロア10の中心軸をフォロア中心軸といい、該フォロア中心軸が延びる方向をフォロア中心軸方向という。
固定フォロア14は、フォロア中心軸回りに配置される円筒面(第1の円筒面)14aと、該円筒面14aにおける可動フォロア15側の端部にフォロア中心軸に対して傾きを有するように形成された傾斜面(第1の傾斜面)14bとを有する。また、可動フォロア15は、フォロア中心軸回りに配置される円筒面(第2の円筒面)15aと、該円筒面15aにおける固定フォロア14側の端部にフォロア中心軸に対して傾きを有するように形成された傾斜面(第2の傾斜面)15bとを有する。固定フォロア14の傾斜面14bと可動フォロア15の傾斜面15bのフォロア中心軸に対する傾き角度は同じであり、これら傾斜面14a,15bは互いに当接して変換部を構成する。
固定フォロア14および可動フォロア15は、金属を粉末冶金や切削加工して製造することができる。これにより、摩耗、衝撃および経年変化に対して強い固定フォロア14および可動フォロア15を使用することができ、長期間の使用において光学性能の劣化が少ないレンズ鏡筒を実現することができる。
固定フォロア14の概ね円形の底面部に形成された穴には、段付きビス17の小径部が挿入される。段付きビス17の雄ネジ部が可動枠11の雌ネジ部に締め込まれると、固定フォロア14の底面部は、段付きビス17の小径部よりも頭部側に設けられた大径部との段差面によって可動枠11に押し付けられる。これにより、固定フォロア14が可動枠11に取り付けられる。ただし、固定フォロア14の底面部の一部は直線形状部を有する。この直線形状部を利用することで、固定フォロア14をフォロア中心軸回りにて光軸方向に対して特定の角度をなす向きで固定することができる。以下の説明において、この光軸方向に対して特定の角度をなす方向を特定方向としての拡張方向(突っ張り方向)という。
付勢ばね16は、可動フォロア15の天井部と段付きビス17の頭部との間に弾性変形した状態(チャージ状態)で挟み込まれる。付勢ばね16が発生する弾性力により、可動フォロア15をフォロア中心軸方向における固定フォロア14側に付勢することができる。本実施例では、付勢ばね16として2つの皿ばねを直列に重ねて使うことにより、高さ方向の寸法の増加を抑えつつ、大きな弾性力(付勢力)を発生させる。
次に、このように構成されたカムフォロア10のガタ(ギャップ)除去の仕組みについて、図4および図5を用いて説明する。図4(A)には、カムフォロア10、可動枠11、案内筒12およびカム筒13のフォロア中心軸を含み拡張方向に平行な断面(図3におけるA−A断面)を示している。図4(B)は、同断面において固定フォロア14と可動フォロア15(可動枠11、案内筒12およびカム筒13)のみを示している。
上述したように、可動フォロア15は、付勢ばね16から図4(A)中の下向き(フォロア中心軸方向における固定フォロア14側)への付勢力を受ける。可動フォロア15は、その傾斜面15bが固定フォロア14の傾斜面14bに対して移動(スライド)することができる。このため、可動フォロア15は、その内径部が段付きビス17と接触しない範囲で、フォロア中心軸に対して直交する方向のうち拡張方向に固定フォロア14に対して移動可能である。そして、可動フォロア15は、固定フォロア14の傾斜面14bから受ける反力のうち拡張方向への分力により、該拡張方向、すなわち第2の直進面122および第2のカム面132(第1および第2のカム溝部のそれぞれの他方のカム面)に向かう方向に付勢される。
なお、固定フォロア14および可動フォロア15の傾斜面14b,15bの間および可動フォロア15の天井部とここに接触する付勢ばね16との間には、大きな摩擦が発生しないように十分な潤滑をしておくことが望ましい。
また、付勢ばね16のチャージ量は、可動フォロア15が図4(A)における下方向に移動するほど小さくなる。可動フォロア15は、固定フォロア14の傾斜面14bに沿ってスライドするため、可動フォロア15の中心軸が拡張方向において固定フォロア14の中心軸(フォロア中心軸)から最も離れた状態が安定状態となる。
図5には、固定フォロア14、該固定フォロア14から付勢ばね16による付勢力の反力(拡張方向の分力であり、以下、付勢分力という)を受ける可動フォロア15、2つの直進面121,122および2つのカム面131,132の関係を模式的に示している。図5は、これらをフォロア中心軸方向から見て示しており、上記付勢分力を付勢ばね16として表している。
固定フォロア14と可動フォロア15は、2つ直進面121,122と2つのカム面131,132によって囲まれた平行四辺形の空間内に配置される。可動フォロア15は、付勢ばね16からの付勢分力によって、その中心軸が固定フォロア14の中心軸に対して離れる拡張方向に付勢される。そして、付勢された可動フォロア15の円筒面15aは、直進面122とカム面132に押し付けられて接触する(圧接する)。可動フォロア15の円筒面15aが直進面122とカム面132に圧接することで、その反力(以下、付勢反力という)によって固定フォロア24および可動枠11が可動フォロア15の付勢方向とは反対方向に押される。この結果、固定フォロア14の円筒面14aは、直進面121とカム面131に圧接する。このようにして、カムフォロア10を、2つ直進面121,122と2つのカム面131,132に対してギャップを生じさせることなく接触させることができ、カムフォロア10と直進溝部12Aおよびカム溝部13Aとの間のがたをなくすることができる。
付勢ばね16が発生する弾性力を重力や慣性力に対して十分大きく設定することで、レンズ鏡筒の重力方向に対する姿勢によらず、カム筒13の回転中と静止状態の双方において、カムフォロア10と直進溝部12Aおよびカム溝部13Aとの間のがたを除去できる。すなわち、カム筒13の回転位置と可動枠11の光軸方向での位置との変動要因である上記がたを排除することができるので、レンズLを高精度に位置決め(位置制御)することができる。
図6には、実際のカムフォロア10と直進溝部12Aおよびカム溝部13Aとの間のがたが除去されている状態を示す。図6(A)は、直進溝部12Aが延びる方向(光軸方向)に対して直交する断面(図3中のB−B断面)を示している。図6(B)は、カム溝部13Aが延びる方向に対して直交する断面(図3中のC−C断面)を示している。
図6(A)において、固定フォロア14の円筒面14aが直進溝部12Aの一方の直進面121にギャップなく接触し、可動フォロア15の円筒面15aが直進溝部12Aの他方の直進面122にギャップなく接触している。また、図6(B)において、固定フォロア14の円筒面14aがカム溝部13Aの一方のカム面131にギャップなく接触し、可動フォロア15の円筒面15aがカム溝部13Aの他方のカム面132にギャップなく接触している。
レンズ鏡筒に外部から衝撃力等の外力が作用したとき又は可動枠11に強く加速されて過度の慣性力が働いたときには、可動フォロア15が固定フォロア14に対して拡張方向とは反対方向に押し込まれて付勢ばね16が圧縮される。この結果、固定フォロア14および可動フォロア15の直進溝部12Aおよびカム溝部13Aとの間にがたが発生し、可動枠11が変位する。しかし、それらの外力や慣性力がなくなれば、付勢ばね16による付勢力によって可動フォロア15が固定フォロア14に対して拡張方向に移動し、再びがたが除去され、可動枠11も元の位置に戻る。
付勢ばね16が発生する付勢力は、通常のレンズ鏡筒の使用において可動枠11に働く最大の慣性力を下回らないことが望ましい。付勢力が小さすぎると、カム筒13の回転中と静止状態とで可動枠11の位置が変わるおそれがある。一方、付勢力が大きすぎると、固定および可動フォロア14,15の接触面(傾斜面14b,15b)で大きな摩擦が発生し、カム筒13の回転に必要な駆動力が大きくなる。このため、付勢ばね16の付勢力は、想定した最大の慣性力を大きく上回らないことが望ましい。
次に、望ましい拡張方向について、図7を用いて説明する。図6に示したようにがたを除去した状態を実現するためには、拡張方向に作用する上記付勢分力が直進溝部12Aおよびカム溝部13Aが延びる方向に対して直交しない必要がある。これは以下の理由による。付勢分力が直進溝部12Aが延びる方向およびカム溝部13Aが延びる方向のうち一方に対して直交する方向に作用すると、直進溝部12Aとカム溝部13Aのうち一方に対するカムフォロア10のがたが除去された状態で安定してしまう。このため、直進溝部12Aとカム溝部13Aのうち他方に対するカムフォロア10のがたを除去する方向の付勢力がほとんど得られない。
このため、本実施例では、拡張方向を、図5に示した平行四辺形の対角線方向に設定している。これにより、上記付勢分力のうち可動フォロア15を直進溝部12Aの直進面122に押し付ける分力とカム溝部13Aのカム面132に押し付ける分力とが等しくなる。同様に、上記付勢反力のうち固定フォロア14を直進溝部12Aの直進面121に押し付ける分力とカム溝部13Aのカム面132に押し付ける分力も等しくなる。なお、図5に示した平行四辺形には2本の対角線があるが、そのどちらが延びる方向を拡張方向としてもよい。
また、カム溝部13Aの光軸方向に対する傾きがカム溝部13Aが延びる方向において変化する場合、カム溝部13Aと直進溝12Aに対する交角がカム筒13の回転とともに変化する。また、レンズLをその可動範囲の一部では光軸方向に単純に直進させ、他の一部では螺旋運動させるような場合には、直進溝部12Aが延びる方向も光軸方向に対して傾きを有するようになる。
このように、直進溝部12Aおよびカム溝部13Aのうち少なくとも一方の光軸方向に対する傾きが変化する場合は、その変化の幅のすべてにおいて、拡張方向が直進溝部12Aおよびカム溝部13Aが延びる方向に対して直交しないことが必要である。理由は前述した通りである。
図7には、このときの拡張方向の選択可能な範囲を示している。光軸方向に対して±90°の領域のうち直進溝部12Aが延びる方向がφminからφmaxまで変化しているとする。また、カム溝部13Aが延びる方向がθminからθmaxまで変化しているとする。この場合、拡張方向は、これらの角度の方向に対して直交する方向を除いた方向に設定する必要がある。図7において、Aは直進溝部12Aが延びる方向に対して直交する方向の範囲であり、Bはカム溝部13Aが延びる方向に対して直交する方向の範囲である。この場合は、拡張方向を、−90+φmax以上90+θmin以下または90+θmax以上90+φmin以下に設定すればよい。これにより、直進溝部12Aとカム溝部13Aのうち一方に対するカムフォロア10のがたを除去する付勢力は得られるが、他方に対するがたを除去するための付勢力ほとんど得られない状況を回避することができる。
拡張方向に対して直進溝部12Aやカム溝部13Aが延びる方向が変化していくと、付勢分力や付勢反力のうち直進面121,122およびカム面131,132に向かって作用する分力も変化する。このため、その変化を見込んで、各分力が適正となるように付勢ばね16が発生する付勢力の大きさと拡張方向を決定する必要がある。
なお、本実施例では、固定フォロア14の底面部の一部に直線形状部を設けることで固定フォロア14および可動フォロア15の向きを拡張方向に固定している。しかし、固定フォロア14および可動フォロア15の向きを固定することができれば、どのような方法を用いてもよい。
以上説明したように、本実施例によれば、単一の付勢機構(付勢ばね16と固定および可動フォロア14,15の傾斜面14b,15b)によってカムフォロア10の直進溝部12Aとカム溝部13Bとの双方に対するがたをなくすることができる。このため、小型の構成でありながらも、カム筒13の回転による可動枠11(レンズL)の高精度な位置制御を行えるレンズ鏡筒を実現することができる。これにより、レンズ鏡筒を搭載した撮像装置全体の小型化と高い光学性能の確保とを実現することができる。
また、本実施例では、付勢ばね16の弾性変形によってがたを除去する構成を採用している。このため、仮にレンズ鏡筒に作用した衝撃により固定および可動フォロア14,15の円筒面14a,15aに打痕ができたり熱クリープや摩耗等で円筒面14a,15aが変形したりした場合でも、付勢ばね16のチャージ量の変化によってこれらを吸収できる。したがって、それらの場合でも、がたが除去された状態を維持することができ、耐衝撃性や耐久性に優れたレンズ鏡筒を実現することができる。
次に、本発明の実施例2について、図8および図9を用いて説明する。なお、本実施例において実施例1と同じまたは類似する構成要素については、実施例1と同符号を付して詳しい説明は省略する。また、実施例1にて用いた呼称は、本実施例でも共通して用いる。
図8には、可動枠11、案内筒12およびカム筒13の一部を平面に展開して示すとともに、カムフォロア20を分解して示している。本実施例におけるカムフォロア20は、第1の接触部材としての固定フォロア24と、第2の接触部材としての可動フォロア25と、付勢力発生部材(弾性部材)としての付勢ばね26と、段付きビス27とにより構成されている。
図9(A)には、カムフォロア20、可動枠11、案内筒12およびカム筒13のフォロア中心軸を含み拡張方向に平行な断面を示している。図9(B)は、カムフォロア20を構成する固定フォロア24と可動フォロア25(および可動枠11)のみを側面から見て示している。
固定フォロア24は、フォロア中心軸回りに配置される半円筒面(第1の円筒面)24aと、該半円筒面24aの周方向の端部にフォロア中心軸に対して傾きを有するように形成された傾斜面(第1の傾斜面)24bとを有する。また、可動フォロア25は、フォロア中心軸回りに配置される半円筒面(第2の円筒面)25aと、該半円筒面25aにおける周方向端部にフォロア中心軸に対して傾きを有するように形成された傾斜面(第2の傾斜面)25bとを有する。また、可動フォロア25には、傾斜面25bよりも径方向内側に形成された半円筒部25cを有する。可動フォロア15は、その半円筒部25cが固定フォロア24の内側に収容されるように固定フォロア24と組み合わされる。固定フォロア24の傾斜面24bと可動フォロア25の傾斜面25bのフォロア中心軸に対する傾き角度は同じであり、これら傾斜面24a,25bは互いに当接して変換部を構成する。
付勢ばね26は、コイルばねにより構成され、可動フォロア25の内側の円筒空間内にその軸方向(チャージ方向)がフォロア軸方向に一致する向きで配置される。
固定フォロア24の概ね円形の底面部に形成された穴には、段付きビス27の小径部が挿入される。段付きビス27の雄ネジ部が可動枠11の雌ネジ部に締め込まれると、固定フォロア24の底面部は段付きビス27の小径部よりも頭部側に設けられた大径部との段差面によって可動枠11に押し付けられる。これにより、固定フォロア24が可動枠11に取り付けられる。ただし、固定フォロア24の底面部の一部は直線形状部を有する。この直線形状部を利用することで、固定フォロア24をフォロア中心軸回りにて光軸方向に対して特定の角度をなす方向、すなわち拡張方向にて固定することができる。
付勢ばね26は、可動フォロア25の底面部(ここに形成された穴には段付きビス27の大径部が挿入される)と段付きビス27の頭部との間に弾性変形した状態(チャージ状態)で挟み込まれる。付勢ばね26が発生する弾性力により、可動フォロア25をフォロア中心軸方向における固定フォロア24の底面部側(図9(A)中の下側)に付勢することができる。可動フォロア25は、その傾斜面25bが固定フォロア24の傾斜面24bに対して移動(スライド)することができる。このため、可動フォロア25は、その内径部が段付きビス27と接触しない範囲で、フォロア中心軸に対して直交する方向のうち拡張方向に固定フォロア24に対して移動可能である。そして、可動フォロア25は、固定フォロア24の傾斜面24bから受ける反力のうち拡張方向への分力である付勢分力により、該拡張方向、すなわち直進溝部12Aのカム面122とカム溝部13Aのカム面132に向かう方向に付勢される。
付勢された可動フォロア25の半円筒面25aは、直進面122とカム面132に押し付けられて接触する(圧接する)。可動フォロア25の半円筒面25aが直進面122とカム面132に圧接することで、その付勢反力によって固定フォロア24および可動枠11が可動フォロア25の付勢方向とは反対方向に押される。この結果、固定フォロア24の半円筒面24aは、直進溝部12Aの直進面121とカム溝部13Aのカム面131に圧接する。このようにして、カムフォロア20を、2つ直進面121,122と2つのカム面131,132に対してギャップを生じさせることなく接触させることができ、カムフォロア20と直進溝部12Aおよびカム溝部13Aとの間のがたをなくすることができる。
また、付勢ばね26のチャージ量は、可動フォロア25が図9(A)における下方向に移動するほど小さくなる。可動フォロア25は、固定フォロア24の傾斜面24bに沿ってスライドするため、可動フォロア25の中心軸が拡張方向において固定フォロア24の中心軸(フォロア中心軸)から最も離れた状態が安定状態となる。
実施例1のカムフォロア10では、固定フォロア14、可動フォロア15、付勢ばね16および段付きビス17の頭部が光軸に直交する方向に配置されるため、固定フォロア14および可動フォロア15を小径化することができる。しかし、カムフォロア10の高さ方向の寸法は大きくなる。これに対し、本実施例では、段付きビス27を、可動フォロア25の内側に配置したため、可動フォロア25および固定フォロア24の径が増加するものの、カムフォロア20としての高さ方向の寸法を小さくすることができる。
実施例1,2では、付勢ばねがフォロア中心軸方向に発生した付勢力を、固定および可動カムフォロアに形成した傾斜面(変換部)によりフォロア中心軸に直交する方向に作用する付勢力に変換することで、カムフォロアと直進溝部およびカム溝部とがたを除去する。このような構成によれば、付勢ばねをフォロア中心軸方向、すなわち光軸に対して直交する方向に配置することができ、光軸方向でのカムフォロアの寸法を小さくすることができる。また、付勢ばねをチャージする方向は、段付きビスによりばねを固定する方向と一致しているため、ビス締めによってばねをチャージさせることができ、組み立て作業性を向上させることができる。
さらに、実施例1,2の構成では、付勢ばねとして、皿ばね、波座金、コイルばね等、汎用ばねを利用することができる。このため、ばねの寿命や特性を予測しやすく、付勢ばねのコストを低減させる等のメリットがある。
次に、本発明の実施例3について、図10および図11を用いて説明する。なお、本実施例において実施例1と同じまたは類似する構成要素については、実施例1と同符号を付して詳しい説明は省略する。また、実施例1にて用いた呼称は、本実施例でも共通して用いる。
図10には、可動枠11、案内筒12およびカム筒13の一部を平面に展開して示すとともに、カムフォロア30を分解して示している。本実施例におけるカムフォロア30は、第1の接触部材としての固定フォロア34と、第2の接触部材としての可動フォロア35と、付勢力発生部材(弾性部材)としての付勢ばね36と、段付きビス37とにより構成されている。図11には、組み立て状態でのカムフォロア30を側面から見て示している。
固定フォロア34は、フォロア中心軸回りに配置される半円筒面(第1の円筒面)34aと、該半円筒面34aの周方向の端部にフォロア中心軸方向に延びるばね押さえ面34bと、半円筒面34aにおける可動枠11側の端部に設けられた底面部34cとを有する。可動フォロア35は、フォロア中心軸回りに配置される半円筒面(第2の円筒面)35aと、半円筒面35aにおける周方向端部にフォロア中心軸方向に延びるばね押さえ面35bとを有する。さらに、可動フォロア35は、半円筒面35aにおける段付きビス37の頭部側の端部に設けられた天井面部35cを有する。
固定フォロア34の概ね円形の底面部に形成された穴には、段付きビス37の小径部が挿入される。段付きビス37の雄ネジ部が可動枠11の雌ネジ部に締め込まれると、固定フォロア34の底面部は段付きビス37の小径部よりも頭部側に設けられた大径部との段差面によって可動枠11に押し付けられる。これにより、固定フォロア34が可動枠11に取り付けられる。ただし、固定フォロア34の底面部の一部は直線形状部を有し、この直線形状部を利用することで、固定フォロア34をフォロア中心軸回りにて光軸方向に対して特定の角度をなす拡張方向にて固定することができる。
可動フォロア35は、この固定フォロア34に対して、ばね押さえ面35cが固定フォロア34のばね押さえ面34cに対向するように配置される。そして、以下に説明する付勢ばね36が組み込まれた状態で段付きビス27の頭部により天井面部35cが押さえられて固定フォロア34からの抜けが阻止される。可動フォロア35は、その内径部が段付きビス37と接触しない範囲で、フォロア中心軸に対して直交する方向のうち拡張方向に固定フォロア34に対して移動可能である。
付勢ばね36は、板ばねであり、固定フォロア34のばね押さえ面34cおよび可動フォロア35のばね押さえ面35cとの間に、固定フォロア34と可動フォロア35の半円筒面34a,35aの径方向にチャージされた状態で挟み込まれている。付勢ばね36の中央には段付きビス27が挿入される穴が形成されている。この付勢ばね36が発生した弾性力(付勢力)により、可動フォロア35は、その中心軸が固定フォロア34の中心軸に対して離れる方向、すなわち直進溝部12Aのカム面122とカム溝部13Aのカム面132に向かう拡張方向に付勢される。
付勢された可動フォロア35の半円筒面35aは、直進面122とカム面132に押し付けられて接触する(圧接する)。また、実施例1,2と同様の付勢反力によって、固定フォロア34の半円筒面34aは、直進溝部12Aの直進面121とカム溝部13Aのカム面131に圧接する。このようにして、カムフォロア30を、2つ直進面121,122と2つのカム面131,132に対してギャップを生じさせることなく接触させることができ、カムフォロア30と直進溝部12Aおよびカム溝部13Aとの間のがたをなくすることができる。
上述した実施例1,2では、付勢ばねが付勢力を発生する方向はフォロア中心軸方向(光軸に対して直交する方向)であるが、本実施例のように、付勢ばねが付勢力を発生する方向はフォロア中心軸に直交する方向(拡張方向)であってもよい。このような構成によれば、付勢ばねが発生した付勢力が直接がた除去の方向に作用するため、実施例1,2のような傾斜面を用いた付勢力の方向変換は不要である。このため、傾斜面での摩擦力の発生がなく、付勢ばねが発生する付勢力を効率良く利用することができ、付勢ばねの小型化を図ることができる。
また、本実施例では、付勢ばね36の弾性力をがた除去用の付勢力として用いたが、付勢力を発生させる方法はこれに限らない。例えば、固定フォロア34の面34bと可動フォロア35の面35bをS極とN極のうち同極に着磁することで、磁力による反発を付勢力として利用することができる。また、固定フォロア34と可動フォロア35と正と負のうち同符号の電荷を帯電させることで、静電力による反発を付勢力として利用してもよい。
さらに、本実施例では、段付きビス37は固定フォロア34と可動フォロア35との連結に用いられているだけであるので、段付きビス37を固定フォロア34と一体の部品として製作してもよい。この場合、その部品を弾性変形させたりバヨネット方式を用いたりして固定フォロアを直進溝部やカム溝部に組み込めばよい。
図12には、上記実施例1〜3にて説明したレンズ鏡筒のいずれかを備えた光学機器としてのデジタルスチルカメラを示している。図12において、120はカメラ本体、121は実施例1〜3にて説明したレンズ鏡筒のいずれかを用いて構成された撮影レンズ部である。122はカメラ本体20に内蔵され、撮影レンズ部21によって形成された被写体像を受光するCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)である。
123は撮像素子122によって光電変換された被写体像に対応する情報を記録するメモリ、124は液晶ディスプレイパネル等によって構成され、固体撮像素子122上に形成された被写体像を観察するためのファインダである。
このように各実施例のレンズ鏡筒を光学機器に適用することにより、小型で高い光学性能を有する光学機器を実現することができる。なお、記実施例1〜3にて説明したレンズ鏡筒は、光学機器としての交換レンズにも使用することができる。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
がたが除去されたカム機構により高精度に光学部材の位置を制御可能なレンズ鏡筒や光学機器を提供できる。
11 レンズ枠(可動部材)
12 案内筒(第1のカム部材)
13 カム筒(第2のカム部材)
14,24,34固定フォロア(第1の接触部材)
15,25,35可動フォロア(第2の接触部材)
16,26,36付勢ばね(付勢手段)
12 案内筒(第1のカム部材)
13 カム筒(第2のカム部材)
14,24,34固定フォロア(第1の接触部材)
15,25,35可動フォロア(第2の接触部材)
16,26,36付勢ばね(付勢手段)
Claims (7)
- 光学部材を保持する可動部材と、
互いに対向する2つの第1のカム面を有して前記可動部材の移動方向に延びる第1のカム溝部を有する第1のカム部材と、
互いに対向する2つの第2のカム面を有して前記可動部材の移動方向に対して傾いた方向に延びる第2のカム溝部を有し、前記第1のカム部材に対して前記可動部材の移動方向に延びる軸回りで回転が可能な第2のカム部材と、
前記可動部材に取り付けられ、前記第1および第2のカム溝部に係合するカムフォロアとを有し、
前記カムフォロアは、
前記可動部材に取り付けられ、前記2つの第1のカム面および前記2つの第2のカム面のそれぞれにおける一方のカム面に接触が可能な第1の接触部材と、
前記第1の接触部材に対して前記2つの第1のカム面および前記2つの第2のカム面のそれぞれにおける他方のカム面に向かう特定方向に移動が可能であり、これら他方のカム面に接触が可能な第2の接触部材と、
前記第2の接触部材を前記第1の接触部材に対して前記特定方向に付勢する付勢手段とを有することを特徴とする光学部材駆動装置。 - 前記特定方向は、前記第1および第2のカム溝部が延びる方向に対して直交しない方向であることを特徴とする請求項1に記載の光学部材駆動装置。
- 前記付勢手段は、
前記第2の接触部材に対して前記特定方向とは異なる方向に付勢力を発生する付勢力発生部材と、
該付勢力発生部材からの前記付勢力を前記第2の接触部材を前記第1の接触部材に対して前記特定方向に付勢する付勢力に変換する変換部とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学部材駆動装置。 - 前記付勢力発生部材は、弾性部材であり、
前記第1の接触部材は前記可動部材にビスを用いて取り付けられており、
前記弾性部材が前記弾性力を発生する方向が前記ビスの軸方向であることを特徴とする請求項3に記載の光学部材駆動装置。 - 前記第1の接触部材は、前記2つの一方のカム面に接触する第1の円筒面と、前記ビスの軸方向に対して傾きを有する第1の傾斜面とを有し、
前記第2の接触部材は、前記2つの他方のカム面に接触する第2の円筒面と、前記付勢力発生部材が付勢力を発生する方向に対して傾きを有し、前記第1の傾斜面と当接して前記変換部を構成する第2の傾斜面とを有することを特徴とする請求項3または4に記載の光学部材駆動装置。 - 前記付勢手段は、前記特定方向に付勢力を発生することを特徴とする請求項1または2に記載の光学部材駆動装置。
- 請求項1から6のいずれか一項に記載の光学部材駆動装置を有することを特徴とする光学機器。
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JP2013263220A JP2015118344A (ja) | 2013-12-20 | 2013-12-20 | 光学部材駆動装置および光学機器 |
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JP2013263220A Pending JP2015118344A (ja) | 2013-12-20 | 2013-12-20 | 光学部材駆動装置および光学機器 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2017049466A (ja) * | 2015-09-03 | 2017-03-09 | リコーイメージング株式会社 | カム装置 |
JP2021081693A (ja) * | 2019-11-14 | 2021-05-27 | 株式会社ニコン | レンズ鏡筒 |
-
2013
- 2013-12-20 JP JP2013263220A patent/JP2015118344A/ja active Pending
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JP7371471B2 (ja) | 2019-11-14 | 2023-10-31 | 株式会社ニコン | レンズ鏡筒 |
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