JP2015111384A - システムのパラメータ同定方法 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、工場等で使用されるモータや油圧ポンプなどの回転機器に目を向けると、少ないエネルギーで高い効率で稼働させることを目指し、例えば、回転機器の各種パラメータ(例えば、摩擦係数)などを正確に知る必要が生じている。
特許文献1は、油圧サーボ弁と、油圧サーボ弁により駆動される油圧シリンダと、油圧サーボ弁に制御信号を供給し油圧シリンダの変位を測定する制御部とを備えた油圧システムにおける油圧システムパラメータ同定方法において、油圧サーボ弁に制御信号を供給する入力チャンネルと、油圧サーボ弁のスプール変位又は油圧シリンダのピストン変位を検出する出力チャンネルと、油圧サーボ弁に印加される入力波形を設定する処理と、前記設定する処理により設定された入力波形を入力チャンネルにより油圧サーボ弁へ入力し、油圧サーボ弁のスプール変位又は油圧シリンダのピストン変位を出力チャンネルにより計測する処理と、前記計測する処理により計測された油圧サーボ弁のスプール変位又は油圧シリンダのピストン変位に基づいて、油圧サーボ弁のスプールの粘性減衰率又は油圧シリンダのピストンの摩擦特性又は油圧サーボ弁のゲイン等の油圧システムパラメータを同定する処理とを含む油圧システムパラメータ同定方法を開示する。
例えば、工場等で使用されるモータや油圧ポンプなどの回転機器を考えた場合、この回転機器の稼働中には、負荷側からの反力などに伴う負荷トルクが回転機器に作用し、外乱として働く。斯かる状況下において、回転機器の各種パラメータを同定することは、特許文献1の技術を用いても困難であると思われる。つまり、回転機器に対して負荷トルクが外乱として加わるようなシステムのパラメータを精度よく推定する技術は、未だ開発されるには至っていない。
本発明に係るシステムのパラメータ同定方法は、駆動モータによって構成され且つ負荷外力が付与される慣性系のシステムにおける応答を規定するパラメータを同定するパラメータ同定方法において、外乱と、パラメータの変化量とが分離可能である際には、パラメータが同定可能であることを特徴とする。
系のシステムを、入力が駆動モータに対する目標値uと外乱wであって、出力が前記駆動モータの回転に関する2つの情報量y1、y2となるような同定対象閉ループモデルで表現しておき、前記同定対象閉ループモデルは、パラメータα1を備える動特性を有すると共に、パラメータα1を備える動特性の出力側と外乱wが入力される点との間から、情報量y2が出力され、外乱wが入力される点とパラメータα1の動特性の入力側との間から、情報量y1が出力されるように構成しておいて、前記同定対象閉ループモデルを構成するパルス伝達関数が、前記応答を規定するパラメータα1で表現されるものとなっており、前記同定対象モデルへの入力値とパルス伝達関数とで構成される誤差関数が最小値を取るように、前記応答を規定するパラメータα1を同定することを特徴とする。
好ましくは、前記慣性系のシステムにコントローラの出力値が入力され、且つ前記コントローラの入力に目標値と慣性系のシステムの出力値がフィードバックされる制御系においては、次式を満たす際に、慣性系のシステムのパラメータが同定可能とされているとよい。
本願発明は、駆動モータによって構成され且つ負荷外力(外乱)が付与される慣性系のシステムにおける応答を規定するパラメータα1を同定するパラメータ同定方法である。このパラメータ同定方法は、慣性系のシステムを、入力が駆動モータに対する目標値uと外乱wであって、出力が前記駆動モータの回転に関する2つの情報量y1、y2となるような
同定対象閉ループモデルで表現しておくものである。この同定対象閉ループモデルは、パラメータα1を備える動特性を有すると共に、パラメータα1を備える動特性の出力側と外乱wが入力される点との間から、情報量y2が出力され、外乱wが入力される点とパラメータα1の動特性の入力側との間から、情報量y1が出力されるように構成してある。この同定対象閉ループモデルを構成するパルス伝達関数は、応答を規定するパラメータα1で表現されるものとなっており、本発明のパラメータ同定方法は同定対象閉ループモデルへの入力値とパルス伝達関数とで構成される誤差関数が最小値を取るように、応答を規定するパラメータα1を同定することを特徴としている。
以降では、「パラメータ同定手法の概略」、「実際のモータ制御系にパラメータ同定手法を適応した実施形態」の順で本実施形態の説明を行う。
[パラメータ同定手法の概要]
まず、初めに、本実施形態の核となるパラメータ同定手法の概要を説明しておく。
図1に示されるパラメータに依存する2入力2出力の閉ループの離散時間システム((1)式)を考える。
図1、(1)式より、予測出力 y(φ) は(2)式で記述される。
F(z;φ) を用いて信号vを、(4)式のように定める。
[モータ制御系におけるパラメータ同定]
次に、上述したパラメータ同定手法を、実際にモータ制御系に適応した実施形態、言い
換えればモータ制御系におけるパラメータ同定について説明する。
まず、モータ制御系におけるパラメータ同定の手法について述べることとする。
(同定実験の結果)
同定実験において、対象とする制御系はモータに対するPD制御系である(図2を参照)。なお、使用したモータ実験装置は、図3のように電流フィードバックで駆動される装置である。各パラメータのカタログ値を表1に示す。
同定実験は、Real-Time Workshop (Mathworks社のC言語のコード発生器、商標)を用いて、図4に示すSimulinkモデル(Mathworks社のモデリング、シミュレーション、及び解析のためのシステム、登録商標)を利用して行った。PD補償器を事前に離散化することは行わず、Simulinkの固定ステップシミュレーションで実験を行った。サンプル周期は4msecである。
ったところ、収束値が負の値となった。そこで、Rsをカタログ値のα倍に設定し、各α に対して評価関数Γ(αRs)の値を計算した。
図5の「●」のプロットはその結果である。図の横軸は、αの対数軸である。(1)式に基づいて理論的に検討する限りにおいては、評価関数はα=1の近傍で下に凸になるはずである。しかしながら、図5より、評価関数はα=1の近傍で下に凸にはなっていないことがわかる。また、離散化の方法を双一次変換、一次ホールド等価、インパルス不変法などに変更しても結果は改善されなかった(詳しくは、図5を参照)。
(シミュレーションでの原因調査)
上述したように、同定実験の結果は芳しいものとはなっていない。
そこで、シミュレーションに基づいて、その原因の究明を行った。考えられる原因はいくつかあるが、ここでは以下の2点について調べた。
・外乱周波数とサンプリング周波数の関係
図6は、外乱に白色外乱を与えて行ったシミュレーションの応答である。応答は閉ループ系を
・すべて連続時間のまま
・閉ループ系をゼロ次ホールド等価に離散化する
・対象は連続時間のままとし、コントローラのみ Tustin変換を用いて離散化する
の3通りで計算した。
に実装されている微分方程式の求解アルゴリズムを用いてシミュレーションを行うという意味である。また、白色外乱のサンプリング周期を 4msec、400msec とした。図6より、コントローラのみを離散化した場合には他の応答との間にわずかに誤差が生じていることがわかる。
図7より、すべて連続時間あるいはすべて離散時間の場合には、外乱の周波数によらず想定される評価関数になっていることが確認できる。一方、コントローラのみを離散化した場合には、真値の近傍で下に凸にならないような評価関数になっている。後者は同定実験で得られた結果と同様である。また、この場合にも外乱の周波数はほとんど影響を与えていない。
価関数の計算結果を図11に示す。
図11と図7を比較すると、図11では真値の近傍で評価関数値がやや減少していることが確認できる。また、評価関数の形状も純連続・純離散の場合のものに近づいている。ただし、評価関数の値が純連続・純離散の場合とは大きく異なっていることから、コントローラが厳密にプロパーか否かは問題の本質的原因ではないと考えられる。すなわち、離散化ではあっても、エイリアシングが根本的な原因とは考えられない。
(理論的解析)
以上のように、コントローラのみ離散化することで、パラメータ同定が失敗に終わることが再現された。しかしながら、同時に、その原因はエイリアシングなどの離散化特有の性質とは考えにくいことも示唆されている。そこで、コントローラのみ離散化した場合と全て連続時間・全て離散時間の場合との違いを改めて考えてみる。
図2のモータ制御系において、コントローラ、制御対象をそれぞれ個別に離散化すると、閉ループ系は図12のように表現できる。ただし、K(z)はコントローラ、α(z;φ)は制御入力からトルク、P(z;φ) はトルクから出力までの伝達関数である。α、P はいずれもパラメータに依存するものとする。前述のシミュレーションではφ=Rsであり、Pはφに依存しないものであった。ここではより一般的に、Pもφに依存する場合を考える。
このとき、入力u1、u2と出力y1 、y2は(10)式、(11)式の関係を満たすものとする。
(13)式より、与えられた外乱u1(図1におけるwに対応) 、外生入力u2(図1におけるuに対応)に対して、実際に測定される出力 y*は(14)式で記述される。
以上より、図12のシステムを考える限り、誤差 e、評価関数はφによらずゼロであるためにφの同定が不可能であることが明らかとなった。これは、K(z) が既知の伝達関数であるために、パラメータφに関して y1とy2は本質的に同じ情報しか持っていないことが原因であると考えられる。このことはさらに、2つ目の出力として、制御入力ではなくy1とは独立にφに依存する出力を得る必要があることも意味している。
(同定可能な出力)
前述したように、図12の構成ではφを同定することはできない。φを同定するには y1とは独立にφに依存する出力を新たにとる必要がある。そこで、ここでは図12のαを α2・α1に分割し、α1の出力をy2にとることを考える。これは、図2のモータ制御系では電流フィードバックに用いる電流センス抵抗の電圧値を測定すること、すなわち、モータの電機子電流を測定することに対応する。
実際、モータ制御系において電流センス抵抗電圧をy2にとり、シミュレーションに基づいて評価関数を求めたものが図14である。図14より、φが真値の近傍で評価関数値が下に凸な準凸関数になっており、評価関数の最小化によってφを同定可能であることが確認できる。
(Fのインナー化)
さて、図14の評価関数はφが小さくなると急激に大きくなる。これは、φが小さくな
るとFのゲインが大きくなるためである。仮にφ≠φ*のφで Fのゲインが小さくなるようなフィルタになっていると、評価関数はφ=φ*以外のφで下に凸になる可能性もある。評価関数の最小化によって同定を行うことを考えると、φによって Fのゲインが変化することは望ましくない。とくに、F のゲインは周波数に依存するため、F そのものを用いると設計者の意図とは無関係に周波数重み関数を導入していることになる。
Fi(ejθ) Fi(ejθ)*= 1を満足する安定なシステムである。一方、Foはアウタ因子、すなわち |Fo(jθ)|=|F(ejθ)| を満足する安定かつ最小位相なシステムである。
上記のアルゴリズムでインナアウタ分解を行うためには、F = [F1 F2] のF1、F2の少なくとも一方は双プロパーである必要がある。F1 、F2が厳密にプロパー、すなわち、F自体が厳密にプロパーな場合には、例えば F(z) zlを改めて F(z) とすればよい。ただし、lはF1 、F2それぞれの相対次数のうち、小さいほうの値である。F(z) zlは原点に l 個の零点を有するが、これらの零点はアウタ因子に含まれるため、Fiは zlには依存しない。
(作用効果)
以上述べたように、本発明のシステムのパラメータ同定方法を用いることで、負荷外力の存在するシステムのパラメータを精確に同定することが可能となる。
[外乱の推定]
前述した「パラメータ同定手法の概要」において、φが定まったとき、外乱 wを計算したが、その具体的な計算方法について、以下に述べる。
(推定手法)
まず、真値φ*に対して y*= y(φ*) となるはずなので、(2)式より、
G11(z;φ*)、G21 (z;φ*) の相対次数の小さいほうを r、両者に共通する不安定零点を
ζ1、・・・、ζm とすると、G11(z;φ*)、G21 (z;φ*)を以下のように分解することができる。
qからwを求める際、n(z) の相対次数と不安定零点が障害となる。このうち、相対次数は時間軸がシフトするだけなので大きな問題とはならない。一方、不安定零点については、単純にqに1/n(z)を作用させるとn(z)の不安定零点が不安定極となるために、得られる
信号は時間の増大に対して発散するものとなる。
(モータ制御系を用いた有効性検証)
前節の推定手法をモータ制御系に適用し、その有効性を検証する。出力はモータ角度と電機子電流である。また、φの真値が得られたものと仮定する。このとき、G11 、G21は、
2を以下のように定める。
図16は外乱を与えてシミュレーションを行った際の応答から q を求めた結果である。図17、図18はそれぞれq を1ステップ、2ステップシフトした結果である。図19は1ステップ、2ステップシフトした場合それぞれについて、印加されている外乱との誤差を求めたものである。q を2ステップシフトしたものは実際に印加されている外乱によく一致している。この結果から、提案手法の有効性が確認できる。
(可同定性の十分条件)
なお、本実施形態では、図12のシステムでは可同定性を満足せず、図13のシステムにすることで可同定性が満足することを示した。より理論的な式で十分条件を示すと、与えられたG(z;φ)に対し、次式が成り立てばφ*は可同定である。
(パラメータが同定可能となるための必要十分条件)
次に、図1に示すシステムでの可同定性、言い換えれば、図1に示すシステムにおいて、パラメータが同定可能となる(29)式が成り立つための必要十分条件を考える。
図20におけるy1、y2を
よって、図20に対応するG(z;φ) は次式で与えられる。
Ku(z)≠0 は目標信号uが制御入力vに反映されることを示しており、通常のフィードバック制御系では成り立っている。したがって、補償器(コントローラ)K(z)には関係しない制御対象P(z;φ)が(30)式を満たせば、ほとんど全ての任意の外乱に対してパラメータφが可同定であるための十分条件となる。
以上、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
Claims (4)
- 駆動モータによって構成され且つ負荷外力が付与される慣性系のシステムにおける応答を規定するパラメータを同定するパラメータ同定方法において、
外乱と、パラメータの変化量とが分離可能である際には、パラメータが同定可能であることを特徴とするシステムのパラメータ同定方法。 - 前記慣性系のシステムは、パラメータα1を有するものとされ、
前記慣性系のシステムを、入力が駆動モータに対する目標値uと外乱wであって、出力が前記駆動モータの回転に関する2つの情報量y1、y2となるような同定対象閉ループモデルで表現しておき、
前記同定対象閉ループモデルは、パラメータα1を備える動特性を有すると共に、パラメータα1を備える動特性の出力側と外乱wが入力される点との間から、情報量y2が出力され、外乱wが入力される点とパラメータα1の動特性の入力側との間から、情報量y1が出力されるように構成しておいて、
前記同定対象閉ループモデルを構成するパルス伝達関数が、前記応答を規定するパラメータα1で表現されるものとなっており、
前記同定対象モデルへの入力値とパルス伝達関数とで構成される誤差関数が最小値を取るように、前記応答を規定するパラメータα1を同定することを特徴とする請求項1に記載のシステムのパラメータ同定方法。 - 前記応答を規定するパラメータα1は、駆動モータに取り付けられた電流計測センサのゲイン特性であることを特徴とする請求項2に記載のシステムのパラメータ同定方法。
- 前記慣性系のシステムにコントローラの出力値が入力され、且つ前記コントローラの入力に目標値と慣性系のシステムの出力値がフィードバックされる制御系においては、次式を満たす際に、慣性系のシステムのパラメータが同定可能とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシステムのパラメータ同定方法。
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