JP2015107895A - Han/hnベースモノプロペラント - Google Patents
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Abstract
【課題】液体ロケット、小型スラスタ及びタービン用ガスジェネレータ等に用いる、燃焼特性や取扱性に優れたHAN/HNベース1液推進薬(モノプロペラント)の提供。【解決手段】ヒドロキシルアンモニウムナイトレート(HAN)とヒドラジウムナイトレート(HN)と水から成るHAN/HN系酸化剤成分と、水素原子含有率が高い液状燃料を含む燃料成分とを含有するHAN/HNベースモノプロペラント。水素原子含有率が高い液状燃料が、メタノール、エタノール、アンモニア、ニトロメタン、ニトロエタン及びターシャル亜硝酸ブチルより選ばれた少なくとも1種である。燃料成分が更にトリエタノールアンモニウムナイトレート(TEAN)を含む。HANとHNの合計含有量が30〜90質量%、水が5〜50質量%、燃料成分が5〜70質量%の割合、又は、TEANを1〜25質量%の割合で含むHAN/HNベースモノプロペラント。【選択図】なし
Description
本発明は、液体ロケット、小型スラスタ及びタービン用ガスジェネレータなどに用いられる1液推進薬(モノプロペラント)に関する。
従来、ヒドロキシルアンモニウムナイトレート(HAN)とヒドラジウムナイトレート(HN)と水を含む酸化剤と、燃料成分とから成るHAN/HNベースモノプロペラントが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
かかるモノプロペラントは、取扱い時に防護服等を着用する必要性を低減し、且つヒドラジンに匹敵する燃焼特性を有する優れたものである。
かかるモノプロペラントは、取扱い時に防護服等を着用する必要性を低減し、且つヒドラジンに匹敵する燃焼特性を有する優れたものである。
しかしながら、上述のような従来のモノプロペラントとはいえ、燃焼特性や取扱性に関し以下のような改善の余地があった。
即ち、このモノプロペラントは、良好な比推力を有するもののヒドラジンの237sよりは低く、断熱火炎温度もヒドラジン873Kよりは高い。
また、このモノプロペラントでは、比推力向上のため基本的には燃料成分としてトリエタノールアンモニウムナイトレート(TEAN)を用いるが、TEANは固形成分であり含有量を増大しようとすると、得られるモノプロペラントの粘度が上昇して配管や噴射器への供給や噴出が困難となる。
更に、単にTEAN含有量を増大させて高比推力化したのでは、断熱火炎温度が更に上昇するので、高温ガス発生に際し触媒や燃焼器、搭載機器への熱負荷が増加せざるを得ず、これらの設計自由度が抑制される。
また、このモノプロペラントでは、比推力向上のため基本的には燃料成分としてトリエタノールアンモニウムナイトレート(TEAN)を用いるが、TEANは固形成分であり含有量を増大しようとすると、得られるモノプロペラントの粘度が上昇して配管や噴射器への供給や噴出が困難となる。
更に、単にTEAN含有量を増大させて高比推力化したのでは、断熱火炎温度が更に上昇するので、高温ガス発生に際し触媒や燃焼器、搭載機器への熱負荷が増加せざるを得ず、これらの設計自由度が抑制される。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、燃焼特性や取扱性に優れたHAN/HNベースモノプロペラントを提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、所定の液状燃料を含む燃料成分を用いることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のHAN/HNベースモノプロペラントは、ヒドロキシルアンモニウムナイトレート(HAN)とヒドラジウムナイトレート(HN)と水から成るHAN/HN系酸化剤成分と、水素原子含有率が高い液状燃料を含む燃料成分とを含有することを特徴とする。
また、本発明のHAN/HNベースモノプロペラントの好適形態は、上記燃料成分が更にトリエタノールアンモニウムナイトレート(TEAN)を含むことを特徴とする。
更に、本発明のHAN/HNベースモノプロペラントの他の好適形態は、上記水素原子含有率が高い液状燃料が、メタノール、エタノール、アンモニア、ニトロメタン、ニトロエタン及びターシャル亜硝酸ブチルから成る群より選ばれた少なくとも1種のものであることを特徴とする。
更にまた、本発明のHAN/HNベースモノプロペラントの更に他の好適形態は、HANとHNの合計含有量が30〜90質量%、水が5〜50質量%、燃料成分が5〜70質量%の割合で含まれることを特徴とする。
また、本発明のHAN/HNベースモノプロペラントの他の好適形態は、TEANを1〜25質量%の割合で含むことを特徴とする。
更に、本発明のHAN/HNベースモノプロペラントの別の好適形態は、粘度が1〜30[mPa・s]であることを特徴とする。
更に、本発明のHAN/HNベースモノプロペラントの別の好適形態は、粘度が1〜30[mPa・s]であることを特徴とする。
本発明によれば、所定の液状燃料を含む燃料成分を用いることとしたため、燃焼特性や取扱性に優れたHAN/HNベースモノプロペラントを提供することができる。
以下、本発明のHAN/HNベースモノプロペラントについて説明する。
上述のように、本発明のHAN/HNベースモノプロペラントは、ヒドロキシルアンモニウムナイトレート(HAN)とヒドラジウムナイトレート(HN)と水から成るHAN/HN系酸化剤成分と、水素原子含有率が高い液状燃料を含む燃料成分とを含有する。
上述のように、本発明のHAN/HNベースモノプロペラントは、ヒドロキシルアンモニウムナイトレート(HAN)とヒドラジウムナイトレート(HN)と水から成るHAN/HN系酸化剤成分と、水素原子含有率が高い液状燃料を含む燃料成分とを含有する。
まず、酸化剤成分について説明する。
HAN−H2O混合薬については、HANが90質量%未満では爆轟が起こらないのでHANの一部をHNに置き換えることができ、本発明では、爆轟を起こすことなく、HANとHNの合計含有量を30〜90質量%とすることができる。
また、本発明では、水の含有量を5〜50質量%とすることができ、性能が良く爆轟を起こさないモノプロペラントを得ることができる。
このように、本発明では、水の含有量を10質量%未満にできるが、これは後述する所定の液状燃料を使用したことによるものである。
HAN−H2O混合薬については、HANが90質量%未満では爆轟が起こらないのでHANの一部をHNに置き換えることができ、本発明では、爆轟を起こすことなく、HANとHNの合計含有量を30〜90質量%とすることができる。
また、本発明では、水の含有量を5〜50質量%とすることができ、性能が良く爆轟を起こさないモノプロペラントを得ることができる。
このように、本発明では、水の含有量を10質量%未満にできるが、これは後述する所定の液状燃料を使用したことによるものである。
なお、本発明のモノプロペラントは、アンモニウムナイトレート(AN)を含んでいないが、ANを含むモノプロペラントと比較して安定性や応答性に優れるものである。
次に、燃料成分について説明すると、本発明において、燃料成分は水素原子含有率が高い液状燃料を含む。
ここで、水素原子含有率が高い液状燃料(以下、「高H燃料」と略すことがある。)としては、メタノール、エタノール、アンモニア、ニトロメタン、ニトロエタン及びターシャル亜硝酸ブチルから成る群より選ばれた少なくとも1種のものを挙げることができる。
ここで、水素原子含有率が高い液状燃料(以下、「高H燃料」と略すことがある。)としては、メタノール、エタノール、アンモニア、ニトロメタン、ニトロエタン及びターシャル亜硝酸ブチルから成る群より選ばれた少なくとも1種のものを挙げることができる。
かかる高H燃料を使用することにより、得られるプロペラントの粘度を低下させることができるので、高温ガス発生の際、プロペラントの配管への供給や噴射器からの噴出を容易にすることができる。
また、高H燃料は、燃焼ガスを低分子量化する機能を有するので、得られるプロペラントを高比推力化でき且つ燃焼温度も低下させることができる。
また、高H燃料は、燃焼ガスを低分子量化する機能を有するので、得られるプロペラントを高比推力化でき且つ燃焼温度も低下させることができる。
なお、本発明においては、燃料成分にトリエタノールアンモニウムナイトレート(TEAN)を含ませることができる。
一般に、TEANはモノプロペラントを高比推力化するのに有効な成分であるが、固形成分でありプロペラントの粘度上昇を招き、且つTEAN含有量を増大させると断熱火炎温度が上昇する。
これに対し、本発明では、上記の高H燃料を用いることによって、プロペラントの粘度上昇を抑制しつつ、断熱火炎温度の上昇を抑制している。
一般に、TEANはモノプロペラントを高比推力化するのに有効な成分であるが、固形成分でありプロペラントの粘度上昇を招き、且つTEAN含有量を増大させると断熱火炎温度が上昇する。
これに対し、本発明では、上記の高H燃料を用いることによって、プロペラントの粘度上昇を抑制しつつ、断熱火炎温度の上昇を抑制している。
本発明のプロペラントにおいて、燃料成分の含有量は5〜70質量%とすることが好ましい。燃料成分がこの範囲を逸脱すると、Ispがヒドラジンよりも低下することがある。
また、本発明においては、TEANを1〜25質量%の割合で含有させることができ、比較的多量のTEANを使用しつつ粘度等を良好に維持することができる。
また、本発明においては、TEANを1〜25質量%の割合で含有させることができ、比較的多量のTEANを使用しつつ粘度等を良好に維持することができる。
本発明のHAN/HNベースモノプロペラントは、特に限定されるものではないが、その粘度が1〜30[mPa・s]である。
粘度が30[mPa・s]を超えると、配管や噴射器への供給や噴出が困難となることがある。
粘度が30[mPa・s]を超えると、配管や噴射器への供給や噴出が困難となることがある。
次に、本発明のモノプロペラントを用いた高温ガス発生方法について説明する。
この高温ガス発生方法は、上述のようなHAN/HNベースモノプロペラントを、触媒に直接噴霧して高温ガスを発生させる方法である。
ここで、触媒はイリジウム系触媒が好適であるが、白金(Pt)系やパラジウム(Pd)系の触媒を用いこともできる。また、触媒は50〜300℃に加熱(予熱)しておき、これにモノプロペラントを直接噴霧することが好ましい。
この高温ガス発生方法は、上述のようなHAN/HNベースモノプロペラントを、触媒に直接噴霧して高温ガスを発生させる方法である。
ここで、触媒はイリジウム系触媒が好適であるが、白金(Pt)系やパラジウム(Pd)系の触媒を用いこともできる。また、触媒は50〜300℃に加熱(予熱)しておき、これにモノプロペラントを直接噴霧することが好ましい。
図1は、上記の高温ガス発生方法を実施するための試験装置の構成図である。
この図において、1は1液推進薬(モノプロペラント)、2は加圧ガスタンク、4は推進薬タンク、6aは第1電磁弁、6bは第2電磁弁、7a,7bは手動開閉弁、8はスラスタ、9aは第1ヒータ、9bは第2ヒータ、10は触媒、Pは圧力計測器、Tは温度計測器である。
この図において、1は1液推進薬(モノプロペラント)、2は加圧ガスタンク、4は推進薬タンク、6aは第1電磁弁、6bは第2電磁弁、7a,7bは手動開閉弁、8はスラスタ、9aは第1ヒータ、9bは第2ヒータ、10は触媒、Pは圧力計測器、Tは温度計測器である。
加圧ガスタンク2は、1液推進薬1と反応しない不活性ガス(例えば、N2,Ar,He)を例えば1〜3Mpaの圧力で内蔵し、手動開閉弁7aを介して推進薬タンク4内の1液推進薬1を加圧し、手動開閉弁7bを介して電磁弁6a,6bへ加圧状態の1液推進薬1を供給する。電磁弁6a,6bは、この例では直列に配置され、図示しない制御装置により、2つの電磁弁の連動により、周期的に短時間だけ両方を開くパルスモードを可能にしている。
ヒータ9aは、電磁弁6a,6b内の推進薬を予熱し、所定の温度に保持する。スラスタ8は、内蔵する触媒10により、1液推進薬1を反応/分解させ高温ガスを発生させる。ヒータ9bは、触媒10を予熱し、所定の温度に保持する。
ヒータ9aは、電磁弁6a,6b内の推進薬を予熱し、所定の温度に保持する。スラスタ8は、内蔵する触媒10により、1液推進薬1を反応/分解させ高温ガスを発生させる。ヒータ9bは、触媒10を予熱し、所定の温度に保持する。
本発明の1液推進薬(モノプロペラント)1は、上述のように、HAN/HN/水・混合系のHN系酸化剤成分と高H燃料とからなる。
触媒10は、イリジウム系触媒であるのが好ましいが、本発明はこれに限定されず、その他の周知の触媒、例えばPt,Pd等を用いることができる。
触媒10は、イリジウム系触媒であるのが好ましいが、本発明はこれに限定されず、その他の周知の触媒、例えばPt,Pd等を用いることができる。
上述した装置を用い、この高温ガス発生方法では、HAN/HNベースモノプロペラント1を、所定温度に予熱した触媒に直接噴霧して高温ガスを発生させる。
この方法により、微細な液滴状態の1液推進薬(モノプロペラント)1を触媒層で補足して蒸発させるとともに、1液推進薬1を反応/分解させ高温ガスを発生させることができる。
なお、この装置を用いた試験により得られる燃焼圧力履歴、燃焼温度履歴などから、実効Ispを推定することができる。
この方法により、微細な液滴状態の1液推進薬(モノプロペラント)1を触媒層で補足して蒸発させるとともに、1液推進薬1を反応/分解させ高温ガスを発生させることができる。
なお、この装置を用いた試験により得られる燃焼圧力履歴、燃焼温度履歴などから、実効Ispを推定することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1、比較例1〜3)
HAN、HN、TEANなどを用い、常法にしたがって表1に示す組成を有する各例のプロペラントを作成した。
HAN、HN、TEANなどを用い、常法にしたがって表1に示す組成を有する各例のプロペラントを作成した。
<性能評価>
各例のプロペラントにつき下記の性能評価を行い、得られた結果を表1に併記する。また、密度及び粘度も併記した。
[比推力(Isp)]
図1に示した装置で試験を行い、得られた燃焼圧力履歴、燃焼温度履歴などから比推力を算出した。
各例のプロペラントにつき下記の性能評価を行い、得られた結果を表1に併記する。また、密度及び粘度も併記した。
[比推力(Isp)]
図1に示した装置で試験を行い、得られた燃焼圧力履歴、燃焼温度履歴などから比推力を算出した。
[密度Isp(ρIsp)]
ρIsp=ρ×Ispにより算出する。ここで、ρ:推進薬密度[g/cc]、Isp:比推力[sec]は、図1の装置を用いた試験により取得する。
ρIsp=ρ×Ispにより算出する。ここで、ρ:推進薬密度[g/cc]、Isp:比推力[sec]は、図1の装置を用いた試験により取得する。
[断熱火炎温度]
上記同様に、図1の装置を用いた試験により取得した燃焼ガス温度などから推定する。
上記同様に、図1の装置を用いた試験により取得した燃焼ガス温度などから推定する。
表1において、比推力:Isp、密度比推力:ρIsp、断熱火炎温度Tad、は全て燃焼圧力=1[MPaA]、開口比=100における平衡計算結果である。
比較例1のプロペラントにおける組成と爆轟領域との関係を図2に、実施例1のプロペラントにおける組成と爆轟領域との関係を図3に、それぞれ示す。
比較例1のプロペラントにおける組成と比推力・断熱火炎温度との関係を図2に、実施例1のプロペラントにおける組成と比推力・断熱火炎温度との関係を図3に、それぞれ示す。
図2に示すように、従来技術によりTEANの含有率を増やすことで爆轟しない領域でIsp>240[s]以上となる組成を試作したが、粘度が30[mPa・s]以上となっており、使用することができなかった。また、図3に示すように、実施例1では燃料の一部を液状成分に置き換えることによって、Isp>240[s]かつ粘度が30[mPa・s]未満となる組成を得られた。
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
本発明のプロペラントは一液式推進装置の他に、二液式推進装置、ハイブリッド式推進装置、電気推進装置へ適用することも可能である。
1 1液推進薬(モノプロペラント)
2 加圧ガスタンク
4 推進薬タンク
6a、6b 電磁弁
7a、7b 手動開閉弁
8 スラスタ
9a、9b ヒータ
10 触媒
2 加圧ガスタンク
4 推進薬タンク
6a、6b 電磁弁
7a、7b 手動開閉弁
8 スラスタ
9a、9b ヒータ
10 触媒
Claims (6)
- ヒドロキシルアンモニウムナイトレート(HAN)とヒドラジウムナイトレート(HN)と水から成るHAN/HN系酸化剤成分と、水素原子含有率が高い液状燃料を含む燃料成分とを含有することを特徴とするHAN/HNベースモノプロペラント。
- 上記燃料成分が更にトリエタノールアンモニウムナイトレート(TEAN)を含むことを特徴とする請求項1に記載のHAN/HNベースモノプロペラント。
- 上記水素原子含有率が高い液状燃料が、メタノール、エタノール、アンモニア、ニトロメタン、ニトロエタン及びターシャル亜硝酸ブチルから成る群より選ばれた少なくとも1種のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のHAN/HNベースモノプロペラント。
- HANとHNの合計含有量が30〜90質量%、水が5〜50質量%、燃料成分が5〜70質量%の割合で含まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のHAN/HNベースモノプロペラント。
- TEANを1〜25質量%の割合で含むことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つの項に記載のHAN/HNベースモノプロペラント。
- 粘度が1〜30[mPa・s]であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載のHAN/HNベースモノプロペラント。
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