JP2015105852A - ダイオード温度計 - Google Patents
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Abstract
【課題】任意単位系のゼロ点を基準にして、被測定温度Tに比例した所望の出力電圧Voが取り出せるようにした高速応答で簡易型のダイオード温度計を提供する。【解決手段】当該温度の単位系における前記ダイオードの前記所定の一定順電流での予め求めた温度係数αを用い、温度Tに対応するダイオード温度計の出力電圧Voが温度Tに比例し、所望の大きさになるに必要な差動増幅器の増幅率βを決定し、反転入力端子側の入力抵抗Rsを定めて、この増幅率βを用いて、帰還抵抗Rfの値を算出して、入力抵抗Rsと帰還抵抗Rfとを差動増幅器の反転入力端子側に設置する。また、非反転入力端子側の分担抵抗R2と入力抵抗R1とを、R2/R1=Rf/Rsになるように設定し、最後に、R1に入力する参照電圧Vrで、所望の温度Tに比例した所望の出力電圧Voが得られるように調整して、ダイオード温度計を製作する。【選択図】図2
Description
本発明は、ダイオード温度計に関し,絶対温度センサであるダイオードを用いて、絶対温度(K)、摂氏(℃)、華氏(F)などの任意単位系のゼロ(ゼロ点)を基準にして、当該温度単位系の温度Tの値に比例した出力電圧Voを高速に取り出せるようにした任意単位系に対応できる高速応答で小型である簡易型のダイオード温度計に関するものである。
従来、pn接合ダイオードなどの半導体ダイオードに一定電流を流し、その時のダイオードの順電圧Vdは、温度Tの上昇と共に、直線的に低下し、その電流値が1mA程度の時には、シリコンのpn接合ダイオードの場合は、ほぼー2.3mV/℃の温度係数αを有することが知られている。そして、この半導体ダイオードの(絶対)温度Tに対して直線的な出力応答性を利用して、差動増幅器を組み合わせると、差動増幅器の応答速度に対応する高速の絶対温度Tに比例する出力電圧又は温度表示が容易であることから、この原理を使用したダイオード温度計が従来多く使用されている。図1には、この従来のダイオード温度計の簡易温度計の回路図の例を示す。ここでは、本来、ダイオードDには、定電流源から被測定温度T(以降、温度Tと呼ぶ)に無関係に一定電流(例えば、1mA程度)を流すのであるが、定電圧源からの一定電圧をダイオードDに直列に接続してある大きな抵抗Ri(ここでは、15kΩ)を介して、ダイオードDにほぼ一定の電流(ほぼ1mA)を供給している。これは、ダイオードDの順電流が1mA程度では、その順電圧は、温度Tの大きさに係らず、ほぼ0.50Vから0.70V程度以内に収まってしまい、そのダイオードDの抵抗は、精々500Ωから700Ω程度の範囲であるから、これに対して十分大きい抵抗Riを選択しておけば、ダイオードDには、ほぼ一定の電流が流れ、定電流源と大きな抵抗Riの直列接続は、ダイオードDに対して、定電流源と同等となることによる。そして、差動増幅器A1の反転入力端子側の入力抵抗Rsも順電圧印加時のダイオードDの抵抗に対して、1桁以上大きな抵抗であれば、ダイオードDの抵抗はほぼ無視できるので、定電流源からのダイオードDへの流入電流Iも、ほぼ定電流源を流れる電流であるとみなすことができる。
しかしながら、図1に示す従来のダイオード温度計の回路構成では、例えば、摂氏(℃)の温度単位系で温度Tを計測しようとしたとき、可変抵抗である非反転入力端子側の可変抵抗Rvrと反転入力端子側の可変帰還抵抗Rfを用いて、OPアンプの差動増幅器A1の出力電圧Voを、摂氏(℃)の温度単位系のゼロ点である温度Tが0℃では0mV、20℃では200mV,100℃では1000mVというように、直線的な比例関係の出力電圧Voを得たいのであるが、例えば、任意の温度(例えば室温)20℃では200mVになるようにRvrとRfで調整して、次に、例えば、100℃では1000mVになるように、さらに調整することになる。この回路では、可変抵抗Rvrで、参照電圧Vrを調整し、可変帰還抵抗Rfで、差動増幅器A1の増幅率βを調整して、所定の温度Tとそれに対応する差動増幅器A1の出力電圧Voの大きさを調整するものである。しかしながら、次の100℃で1000mVになるように調整しようとすると、先の20℃で200mVに調整したRvrとRfの値を再度調整変更せざるを得なくなる。従って、これを何度も繰り返して、漸く、温度Tが0℃では0mV、20℃では200mV,100℃では1000mVに漸近するようになるのであって、所定の温度Tと差動増幅器A1の出力電圧Voの大きさとの比例関係を達成するのに、RvrとRfの調整の反復回数が多く手間がかかるものであった。もちろん、このことは、摂氏(℃)の温度単位系以外の単位系にする場合も同様である。なお、ダイオード温度計では、(被測定環境)温度Tの計測は、温度センサとして使用するダイオードの接合温度の温度Tに対応することになる。
摂氏(℃)の温度単位系の0℃(ゼロ点)は、丁度、氷の温度であり、前記の任意の温度として室温(例えば、20℃)ではなく、この摂氏(℃)の温度単位系の0℃(ゼロ点)で(被測定環境)温度T=0℃で、差動増幅器A1の出力電圧Vo=0mVとなるように主にRvrを用いて調整しておき、次に主に、Rfを用いて、T=100℃でVo=1000mVになるように調整するようにすると、ダイオード温度計を調整の反復回数が少なくて摂氏(℃)の温度単位系における温度表示とダイオード温度計の出力電圧Voとの対応関係に一致するように、すなわち、T=0℃でVo=0mV、T=100℃でVo=1000mVというように、ゼロ点を通る比例的な直線関係の出力電圧Voが得られるようにダイオード温度計を調整することができる。しかし、調整の反復回数がゼロではなく、また、他の単位系、例えば、絶対温度単位系(K)では、その単位系のゼロ点である絶対零度(0K)でのダイオード温度計の調整は不可能である。従って、その温度単位系における任意の温度で温度校正が可能であり、そして、その単位系のゼロ点で出力電圧Voがゼロで、任意の温度Tで所望の出力電圧Voの値が簡単に得られるように調整することができるダイオード温度計の回路構成が求められていた。
従来、上述のようにダイオード温度計の調整の反復が困難なこと、一定電流下では、ダイオードの順電圧Vdが、被測定温度Tの上昇に対して直線的に低下することを使用し、これらのダイオードの順電圧Vdの被測定温度Tに関するデータを読み込み、ソフト上で演算処理して、温度Tに関する出力電圧Voを取り出し、温度表示できるようにしていた(特許文献1及び特許文献2)。しかし、ソフト上で演算処理は、小型化が困難であり、更に処理時間がかかり、被測定温度Tに関する出力をマイクロ秒程度の高速に取り出すことは困難であった。
また、従来、数個のバイポーラトランジスタを組み合わせて温度表示できるIC温度センサがあるが、一般には、樹脂でモールドされており、例えば、IC基板内の温度計測のような10マイクロメートル(μm)程度の寸法の個所の温度計測などには使用できず、また、例えば、LEDの動作時の接合温度計測などにも使用できないものであった。このように任意の寸法と任意の個所の温度計測を高速温度計測できる温度計が求められていた。
本発明は、上述の問題点を解消するためになされたもので、絶対温度(K)、摂氏(℃)、華氏(F)などの任意単位系のゼロ点を出力電圧Vo=0Vの基準にして、ダイオードの所定の一定順電流での順電圧Vdの温度係数αが知られていれば、ゼロ点以外の任意の1点の(被測定環境)温度Tで、所望の出力電圧Voになるように簡単に調整できるようにし、その単位系の温度Tに比例した出力電圧Voが取り出せるようにした高速応答で小型かつ簡易型であり、しかも基板の温度検出用に基板に形成してあるような任意のダイオードも温度センサとして使用できるダイオード温度計を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係わるダイオード温度計は、ダイオードを温度センサとして用い、該ダイオードの所定の一定順電流下での順電圧Vdの変化から温度Tを計測し表示できるようにしたダイオード温度計において、任意の温度の単位系でのゼロ点で、前記ダイオード温度計の温度Tに比例させる出力電圧Voをゼロとさせるようにすると共に、
当該温度の単位系における前記ダイオードの前記所定の一定順電流での予め求めてある温度係数αを用いて、当該単位系における温度Tに対応するダイオード温度計の前記出力電圧Voが前記温度Tに比例すると共に所望の大きさにさせるに必要な差動増幅器の増幅率βを決定したこと、
前記差動増幅器の反転入力端子側の入力抵抗Rsを定めて、前記増幅率βを用いて、前記差動増幅器の帰還抵抗Rfの値を算出して、これらの入力抵抗Rsと帰還抵抗Rfとを前記差動増幅器の反転入力端子側に設置したこと、
前記差動増幅器の非反転入力端子側には、前記帰還抵抗Rfと反転入力端子の入力抵抗Rsとの比、Rf/Rs、に等しいか、もしくは略等しくなるようにしたR2/R1の抵抗R2とR1とを、それぞれ前記差動増幅器の非反転入力端子側の分担抵抗R2と入力抵抗R1として設置したこと、
前記差動増幅器の非反転入力端子側の入力抵抗R1に入力する参照電圧Vrを調整して、当該単位系におけるゼロ点以外の任意の所定の温度Tに対応する前記ダイオード温度計の前記出力電圧Voが、予定していた特定の出力電圧Voの値に一致するようにしたこと、
を特徴とするものである。
当該温度の単位系における前記ダイオードの前記所定の一定順電流での予め求めてある温度係数αを用いて、当該単位系における温度Tに対応するダイオード温度計の前記出力電圧Voが前記温度Tに比例すると共に所望の大きさにさせるに必要な差動増幅器の増幅率βを決定したこと、
前記差動増幅器の反転入力端子側の入力抵抗Rsを定めて、前記増幅率βを用いて、前記差動増幅器の帰還抵抗Rfの値を算出して、これらの入力抵抗Rsと帰還抵抗Rfとを前記差動増幅器の反転入力端子側に設置したこと、
前記差動増幅器の非反転入力端子側には、前記帰還抵抗Rfと反転入力端子の入力抵抗Rsとの比、Rf/Rs、に等しいか、もしくは略等しくなるようにしたR2/R1の抵抗R2とR1とを、それぞれ前記差動増幅器の非反転入力端子側の分担抵抗R2と入力抵抗R1として設置したこと、
前記差動増幅器の非反転入力端子側の入力抵抗R1に入力する参照電圧Vrを調整して、当該単位系におけるゼロ点以外の任意の所定の温度Tに対応する前記ダイオード温度計の前記出力電圧Voが、予定していた特定の出力電圧Voの値に一致するようにしたこと、
を特徴とするものである。
図2に示す本発明のダイオード温度計の実施例の構成回路図を用いて説明する。ここでは、ダイオードDに定電流源から所定の一定電流Iを流し、このダイオードDの順電圧Vdの被測定温度T(以後、温度Tとも表現する)に対する直線的な依存性から温度Tを計測するものである。この回路では、OPアンプの差動増幅器A1の反転側入力抵抗Rsと非反転側入力抵抗R1に対して、信号源となるダイオードDの順電圧Vdにおける内部抵抗と参照電源電圧Vrの内部抵抗とがそれぞれ無視できるように、それぞれバッファー回路101及びバッファー回路102を接続してある場合である。この場合、差動増幅器A1の増幅率βは、帰還抵抗Rfと反転側入力抵抗Rsとの比、Rf/Rs、で決定される。そして、非反転側入力抵抗R1とその分担抵抗R2との選択も、Rf/Rs=R2/R1となるように選択する。この場合、差動増幅器の性質から差動増幅器A1の出力電圧Voは、Vo=(Vd−Vr)Rf/Rsで表わされることが知られている。
ダイオードDの一定電流下での順電圧Vdは、温度Tに対して、図5に示すように、直線的に減少することが知られており、Vd=aT + bのような直線方程式で表わすことができる。本発明では、任意の温度の単位系の基準となるゼロ点で、差動増幅器A1の出力電圧Voが0(V)であり、そのゼロ点から温度Tに比例して所望の温度における出力電圧Voが所望の大きさになるように設定できるようにすることである。例えば、任意の温度の単位系を摂氏(℃)の単位系にすると、その単位系のゼロ点(0℃)でダイオード温度計を調整設定するのではなく、ゼロ点(0℃)以外の温度Tで所望のスパンの大きさになるように、例えば、図6に示すように、任意の温度T=T1=20℃の時にVo=Vo1=200mVであり、温度T=T2=100℃の時にVo=Vo2=1000mVになるように設定したい。請求項1における「ゼロ点以外の任意の所定の温度T」とは、温度T=T1=20℃や温度T=T2=100℃のことであり、「予定していた特定の出力電圧Voの値」とは、これらに対応するVo=Vo1=200mVやVo=Vo2=1000mVのことである。このようにすれば、出力電圧Voの数値を、区切りの良い数字である10で割り算すれば、そのまま、その単位系における温度Tの表示になるようにしているので温度換算に便利である。このときの温度Tと出力電圧Voとの関係は、図6に示す比例的な直線、Vo=cTのように表わされる。ここで、cは直線の傾きで、この場合は、c=10 mV/℃となる。予めダイオードDの所定の一定順電流での温度係数αを求めておけば、差動増幅器A1の増幅率βが一義的に決定されるはずである。つまり、増幅率β=c/αとすべきであり、差動増幅器A1の増幅率βは、β=Rf/Rsで表わされるから、反転側入力抵抗Rsを定めれば、一義的に帰還抵抗Rfが決定されることになる。すなわち、例えば、ダイオードDの所定の一定順電流での温度係数α=2.3mV/℃である場合は、Rs=10kΩに選択すると、上述のように、c=10mV/℃として、増幅率β=c/αから増幅率βは、4.35となり、帰還抵抗Rfは一義的に43.5kΩと算出決定される。従って、差動増幅器の非反転入力端子側においても、上述のように、R2/R1=Rf/Rsが要請されることから、R1を10kΩに選べば、R2=43.5kΩとなり、R1を50kΩに選べば、R2=217.5kΩに設定する必要がある。
本発明の請求項2に係わるダイオード温度計は、前記差動増幅器として、演算増幅器を用いた場合である。
IC化されたOPアンプは、同一の熱伝導性の良い半導体チップに、差動増幅回路が形成されているので、温度特性が良く、更にペアのOPアンプも同一の半導体チップに形成されているものもあり、小型化に最適で好都合である。
本発明の請求項3に係わるダイオード温度計は、前記ダイオードとして、pn接合ダイオードもしくはショットキ接合ダイオードとした場合である。
pn接合ダイオードも単に、個別のダイオードばかりでなく、例えば、バイポーラトランジスタのエミッターベース間やベースーコレクタ間のpn接合や、FETのソースと基板間のpn接合を利用することもできる。また、LEDのpn接合を用いて、発光時の接合の温度計測を高速に計測することもできる。もちろん、pn接合を有するダイオードであるフォトダイオードの動作時の接合の高速温度計測や、レーザダイオード(LD)の発光を計測するバックフォトダイオードを用いたLDのチップ温度計測もできる。その他、IC基板にあるトランジスタやダイオードのpn接合を利用して、そのIC基板の温度を計測することもできる。また、ショットキ接合も、前記pn接合の場合と同様である。これらのダイオードは、数μmサイズでも製作できるし、ICにも製作されているので、極めて微小領域の特定個所の温度を、ピンポイントで計測することもできる。
本発明の請求項4に係わるダイオード温度計は、当該単位系における前記ダイオードの所定の一定順電流下での温度係数αを、前記ダイオードの前記一定順電流下での所定の温度T1cにおける順電圧V1と、T1cとは異なる別の温度T2cにおける順電圧V2から、α=(V2−V1)/(T2c−T1c)として求めた場合である。
本発明での回路構成では、温度の当該単位系におけるダイオードの所定の一定順電流での温度係数αが重要である。所定の一定電流下でのダイオードの順電圧Vdは、上述のように被測定温度である温度Tに対して、直線的に減少することが知られている。従って、その温度係数αもその温度範囲においては、一定値である。もちろん、ダイオードに流す所定の一定順電流値が異なれば、温度係数αの値も異なることになるし、ダイオードが異なっても一般には温度係数αの値も異なることになる。しかし、同一の規格で製作されたダイオードは、ある狭い誤差範囲の中に温度係数αの値が収まっていると考えて良い。温度係数αの精度を考えたときに、可能な限り、所定の当該単位系における温度T1cと温度T2cとの間隔が大きい方が良い。
本発明の請求項5に係わるダイオード温度計は、請求項1における参照電圧Vrを調整する時のゼロ点以外の任意の所定の温度Tとして、前記参照電圧Vrの調整時の環境周囲温度である室温とした場合である。
絶対温度系(K)では、絶対温度系のゼロ点は、実際には得られないもので、その環境下(0K)で温度T=0Kとして調整設定することはできない。このように、ゼロ点でない任意の温度Tの環境下で、その温度Tに対する調整設定することが望ましい。予め温度センサとしてのダイオードの所定の一定電流下での順電圧Vdの温度係数αが、知られていれば、その計測環境雰囲気の温度Tであるその場の室温(例えば、20℃)の場合は、この温度係数αを利用して、差動増幅器の増幅率βを決定して、その後、この増幅率βを利用して、反転入力端子側の入力抵抗Rsと帰還抵抗Rfとを決定し、更に、上述のように非反転入力端子側の入力抵抗R1と分担抵抗R2を決定できるので、温度T=20℃に対応して、出力電圧Voが200mVになるように、参照電圧Vrを調整するだけの1回の調整だけで済み、新たな温度設定の必要が無くなる。温度係数αが知られていなければ、温度係数αの計測時には、所定の温度T1cと温度T2cとの2点の温度が必要で、温度係数αを求めておくのに、少なくともそのうちの一方の温度(例えば、温度T1c)を、ダイオード温度計の本調整時の計測環境雰囲気の温度であるその場の室温(例えば、20℃)にして、他方の温度T2cを氷の融点0℃や水の沸点100℃にすると便利である。
本発明のダイオード温度計は、任意の半導体ダイオードの一定電流Iの下での順電圧Vdの被測定温度T(温度T)の直線的な依存性を用いているので、簡単な差動増幅器を用いて達成できると共に、任意の温度単位系のゼロ点を基準にした温度校正としていることから、そのダイオードの前記所定の一定順電流下での予め求めてある温度係数αを用いて、予め差動増幅器の帰還抵抗Rfの値が決定できるので、所望で所定のスパンの大きさの出力電圧Voを得るのに、特定の任意の温度Tにおける参照電圧Vrの一回の調整設定で達成できる。従って、従来のような反復調整設定の必要がないという利点がある。
本発明のダイオード温度計は、OPアンプから成る1個の差動増幅器と数個の抵抗から成る回路構成のために、極めてコンパクトになるという利点がある。
本発明のダイオード温度計は、所定の一定順電流での温度係数αを決定するための2点の温度のうちの一方を、その場の環境温度である室温にすることができるので、温度係数αが予め知られていなくとも、他の一点の温度設定だけで、温度係数αを求めて、温度Tと出力電圧Voの比例的な関係になるように、一回の調整で容易に校正できるという利点がある。
本発明のダイオード温度計は、任意のpn接合ダイオードやショットキ接合ダイオードを使用できるので、IC基板に存在するダイオード、LEDやLDのダイオード、しかも、極めて小さな点状、例えば、10μm直径のポイント状の温度の計測などが、任意の温度単位系で、出力できるという利点がある。
本発明のダイオード温度計は、OPアンプを利用した差動増幅器と抵抗だけでその計測回路が構成されており、コンデンサへの充電やマイコンを利用するようなソフト上での演算処理がないので、高速にその単位系での温度Tに比例した出力電圧Voを取り出すようにできる。従って、小型で高速応答のダイオード温度計が提供できるという利点がある。
以下、本発明のダイオード温度計における温度計測用の回路構成は、半導体の任意のダイオードと差動増幅器としてのOPアンプおよび抵抗を用いて製作される。以下、図面を参照して、実施例に基づき詳細に説明する。
図2には、本発明のダイオード温度計における任意の温度単位系の温度計測をするための理想的な構成回路図を示している。ここでは、温度センサとしてのダイオード、例えば、シリコンのpn接合ダイオード(ダイオードD)を用い、これに所定の一定電流I(例えば、1mA)を流すための定電流源を備え、OPアンプである差動増幅器A1の反転入力側の入力抵抗Rsと非反転入力側の入力抵抗R1とに対して、それらの信号源であるダイオードDの順電圧Vdにおける内部抵抗と、入力抵抗R1に入力する参照電圧Vrの電源の内部抵抗とが、無視できるように、これらの信号源にバッファー回路101、102を接続してあり、理想的な差動増幅動作が達成できるようにしている。
このような差動増幅器A1の信号源の内部抵抗がゼロとみなせるような回路構成において、前記したが、反転入力側の帰還抵抗Rfと入力抵抗Rsとの比、Rf/Rsと、非反転入力側の分担抵抗R2とその入力抵抗R1との比、R2/R1、とが等しい、すなわち、Rf/Rs=R2/R1となるようにしてあると、差動増幅器A1の出力電圧Voは、Vo=(Vd−Vr)Rf/Rsで表現できることが知られている。
本実施例では、摂氏(℃)の単位系を用いた場合の例を示す。そして、被測定温度T(温度T)が、図6に示すように、T=0℃の時は、差動増幅器A1の出力電圧Vo=0mVであり、T=20℃の時は、出力電圧Vo=200mV、T=100℃の時は、出力電圧Vo=1000mVになるように、温度Tに対する出力電圧Voのスパンの大きさを定め、出力電圧Voが温度Tに対して直線的で比例関係になるように設定する。
所定の一定電流I(例えば、I=1mA)の下での予め計測してあるシリコンのダイオードDの順電圧Vdの温度係数α(例えば、α=ー2.3mV/℃)は、前記した図5におけるダイオードDの順電圧Vdの温度Tに対する直線的関係Vd=aT+bのaが温度係数αに対応することが分かる。上述の図6で示すように、T=0℃の時は、出力電圧Vo=0mVであり、T=20℃の時は、出力電圧Vo=200mV、T=100℃の時は、出力電圧Vo=1000mVになるような当該単位系における温度表示(温度T)とダイオード温度計の出力電圧Voとの対応関係にしたい。そのため差動増幅器A1の増幅率βは、前記したように、T=100℃がVo=1000mVに対応するので、c=10mV/℃となり、β=c/αで表わされるから、β=4.35と算出される。従って、Rs=10kΩとした時には、前述のように、帰還抵抗Rfの値は、Rf=β・Rs=43.5kΩと設定する必要がある。これは、一義的な決定である。
次に、差動増幅器A1では、上述のように、非反転側入力抵抗R1とその分担抵抗R2との選択を、Rf/Rs=R2/R1となるように選択すると、差動増幅器の性質から差動増幅器A1の出力電圧Voは、Vo=(Vd−Vr)Rf/Rsで表わされることが知られている。従って、R1に50kΩを用いると、R2として217.5kΩを用いることになる。
最後に、温度センサであるダイオードDの調整設定温度Tとして、1点だけの温度Tで良く、例えば、水の1気圧における沸騰点である100℃を用いて、定電流源からの電流I=1mAを流し、参照電圧Vrを調節して、差動増幅器A1の出力電圧Vo=1000mVになるように調整する。このようにすると、T=0℃の時は、差動増幅器A1の出力電圧Vo=0mVであり、T=20℃の時は、出力電圧Vo=200mV、T=100℃の時は、出力電圧Vo=1000mVになるような出力電圧Voが温度Tに対して、図6に示すような予想通りの直線的比例関係になる。
上述の実施例1では、図5に示すような所定の一定電流I(例えば、I=1mA)の下での予め計測してあるシリコンのダイオードDの順電圧Vdの温度係数α(例えば、α=ー2.3mV/℃で、図5に示すダイオードDの順電圧Vdの温度Tに対する直線の方程式の傾きaに相当する)を用いた場合であったが、ここでは、温度T=T1c=20℃である室温の場合と、温度T=T2c=100℃での温度を利用して、所定の一定電流I(例えば、I=1mA)の下でのシリコンのダイオードDの順電圧Vdの温度係数αを求める場合を示す。ここで、T1cとT2cとは、温度係数αを求めるための異なる設定温度である。
先ず、図2に示す回路で、温度T=T1c=20℃である室温において、所定の一定電流I(例えば、I=1mA)の下でのダイオードDの順電圧Vd=V1を計測する。次に、温度T=T2c=100℃に同一の一定電流Iの下での前記ダイオードDの順電圧Vd=V2を計測する。そして、前述のように、温度係数α=(V2−V1)/(T2c−T1c)の関係を利用して、温度係数αを算出する。更に、この温度係数αを利用して、前記実施例1の図6に示すように、出力電圧Vo=0mVであり、T=100℃の時は、出力電圧Vo=1000mVになるような当該単位系における温度表示(温度T)とダイオード温度計の出力電圧Voとの対応関係になるように、差動増幅器A1の増幅率βを求める。T=100℃がVo=1000mVに対応させるので、図6における直線の傾きc=10mV/℃となり、増幅率β=c/αとして求まり、実施例1と同様にして、Rsを定めれば、帰還抵抗Rfが決定され、非反転入力側の分担抵抗R2とその入力抵抗R1との比、R2/R1、とが、Rf/Rs=R2/R1の関係になるように選択するようにすると、後は、実施例1と同等になり、本発明のダイオード温度計が製作されるので、詳細な説明は、省略する。
実施例1および実施例2では、本発明のダイオード温度計における任意の温度単位系の温度計測をするための理想的な構成回路図である図2を示して、これに基づいて説明したが、ここでは、図2におけるバッファー回路101、102を除去して、もう少し単純化した回路構成にさせて、安価な簡易ダイオード温度計を提供するようにした場合の一実施例を示す。
図3には、図2におけるバッファー回路101、102を除去し、もう少し単純化した基本的な回路構成で、本発明のダイオード温度計における任意の温度単位系の温度計測をするための構成回路の概略図を示している。また、図4には、図3の基本的な回路構成で、定電流源として従来の図1に示したダイオード温度計で用いていた定電圧電源と大きな抵抗値の直列抵抗Riで代用させ、参照電圧Vrを、前記定電圧源と可変抵抗Rvrとで代用させると共に、一実施例として回路構成の各パーツに具体的な数値を入れて詳細に示した回路構成図を示す。
本実施例3における具体的な構成回路図である図4に基づいて説明する。ここでは、シリコンのダイオードDの1mA程度の順電流Iでの内部抵抗は、前記したように、せいぜい700Ω以下であるので、差動増幅器A1の反転入力端子側の入力抵抗Rs=10kΩに対して1桁以下の抵抗であるから、図2におけるバッファー回路101を除いた形にしている。また、参照電圧Vrは、ダイオードDの順電圧Vdと同程度(実際には、Vdより少し小さい値)であるからせいぜい0.6V程度である。R1での電圧降下は極めて小さいので、Vrも0.6V程度である。従って、可変抵抗Rvrでの参照電圧Vrの内部抵抗に相当する抵抗値も4kΩ以下となり、非反転側入力抵抗R1として50kΩを用いているので、同様に1桁以下の抵抗値であり、図2におけるバッファー回路102を除いた形にしても、差動増幅器A1の出力電圧Voと温度Tとの間の比例関係にそれほど大きな誤差を生じない。このようにバッファー回路101,102を図2における構成回路図から除くことにより、コンパクトで安価な簡易ダイオード温度計が提供できる。帰還抵抗Rfの求め方や、非反転入力側の分担抵抗R2とその入力抵抗R1の決定の仕方も上記の実施例1や実施例2と同様であるので、ここでは、その詳細の説明を省略する。なお、帰還抵抗Rfや分担抵抗R2などは、固定抵抗が得られ難い時は、可変抵抗を利用し、この抵抗値に設定した後、固定するようにすると良い。ただ、理想値から多少ずれても誤差はそれほど大きくないので、理想値に近い固定抵抗で代用させても良い。
本発明のダイオード温度計は、上述の各実施例に限定されることはなく、本発明の主旨、作用および効果が同一でありながら、当然、種々の変形がありうる。
101、102 バッファー回路
A1 差動増幅器
Rs 差動増幅器の反転端子側入力抵抗
Rf 差動増幅器の帰還抵抗
R1 差動増幅器の非反転端子側入力抵抗
R2 差動増幅器の非反転端子側分担抵抗
Rvr 参照電圧Vrの設定用可変抵抗
D ダイオード
Vd ダイオードの順電圧
Vo 差動増幅器の出力電圧
Vr 参照電圧
A1 差動増幅器
Rs 差動増幅器の反転端子側入力抵抗
Rf 差動増幅器の帰還抵抗
R1 差動増幅器の非反転端子側入力抵抗
R2 差動増幅器の非反転端子側分担抵抗
Rvr 参照電圧Vrの設定用可変抵抗
D ダイオード
Vd ダイオードの順電圧
Vo 差動増幅器の出力電圧
Vr 参照電圧
Claims (5)
- ダイオードを温度センサとして用い、該ダイオードの所定の一定順電流下での順電圧Vdの変化から温度Tを計測し表示できるようにしたダイオード温度計において、任意の温度の単位系でのゼロ点で、前記ダイオード温度計の温度Tに比例させる出力電圧Voをゼロとさせるようにすると共に、
当該温度の単位系における前記ダイオードの前記所定の一定順電流での予め求めてある温度係数αを用いて、当該単位系における温度Tに対応するダイオード温度計の前記出力電圧Voが前記温度Tに比例すると共に所望の大きさにさせるに必要な差動増幅器の増幅率βを決定したこと、
前記差動増幅器の反転入力端子側の入力抵抗Rsを定めて、前記増幅率βを用いて、前記差動増幅器の帰還抵抗Rfの値を算出して、これらの入力抵抗Rsと帰還抵抗Rfとを前記差動増幅器の反転入力端子側に設置したこと、
前記差動増幅器の非反転入力端子側には、前記帰還抵抗Rfと反転入力端子の入力抵抗Rsとの比、Rf/Rs、に等しいか、もしくは略等しくなるようにしたR2/R1の抵抗R2とR1とを、それぞれ前記差動増幅器の非反転入力端子側の分担抵抗R2と入力抵抗R1として設置したこと、
前記差動増幅器の非反転入力端子側の入力抵抗R1に入力する参照電圧Vrを調整して、当該単位系におけるゼロ点以外の任意の所定の温度Tに対応する前記ダイオード温度計の前記出力電圧Voが、予定していた特定の出力電圧Voの値に一致するようにしたこと、
を特徴とするダイオード温度計。 - 前記差動増幅器として、演算増幅器とした請求項1記載のダイオード温度計。
- 前記ダイオードとして、pn接合ダイオードもしくはショットキ接合ダイオードとした請求項1から2のいずれかに記載のダイオード温度計。
- 当該単位系における前記ダイオードの所定の一定順電流下での温度係数αを、前記ダイオードの前記一定順電流下での所定の温度T1cにおける順電圧V1と、T1cとは異なる別の温度T2cにおける順電圧V2から、α=(V2−V1)/(T2c−T1c)として求めた請求項1から3のいずれかに記載のダイオード温度計。
- 請求項1における参照電圧Vrを調整する時のゼロ点以外の任意の所定の温度Tとして、前記参照電圧Vrの調整時の環境周囲温度である室温とした請求項1から4のいずれかに記載のダイオード温度計。
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CN105973497A (zh) * | 2016-05-06 | 2016-09-28 | 武汉航空仪表有限责任公司 | 一种新型温度传感器处理电路 |
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-
2013
- 2013-11-29 JP JP2013247155A patent/JP2015105852A/ja active Pending
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