JP2015093866A - 静菌または抗菌剤及びその製造方法 - Google Patents

静菌または抗菌剤及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2015093866A
JP2015093866A JP2013236175A JP2013236175A JP2015093866A JP 2015093866 A JP2015093866 A JP 2015093866A JP 2013236175 A JP2013236175 A JP 2013236175A JP 2013236175 A JP2013236175 A JP 2013236175A JP 2015093866 A JP2015093866 A JP 2015093866A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
bacteriostatic
whey
milk
antibacterial agent
antibacterial
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2013236175A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6282446B2 (ja
Inventor
寛司 上西
Kanji Uenishi
寛司 上西
洋 副島
Hiroshi Soejima
洋 副島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Snow Brand Seed Co Ltd
Snow Brand Milk Products Co Ltd
Original Assignee
Snow Brand Seed Co Ltd
Snow Brand Milk Products Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Snow Brand Seed Co Ltd, Snow Brand Milk Products Co Ltd filed Critical Snow Brand Seed Co Ltd
Priority to JP2013236175A priority Critical patent/JP6282446B2/ja
Publication of JP2015093866A publication Critical patent/JP2015093866A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6282446B2 publication Critical patent/JP6282446B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P60/00Technologies relating to agriculture, livestock or agroalimentary industries
    • Y02P60/80Food processing, e.g. use of renewable energies or variable speed drives in handling, conveying or stacking
    • Y02P60/87Re-use of by-products of food processing for fodder production

Landscapes

  • Fodder In General (AREA)
  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)

Abstract

【課題】乳またはホエーより静菌または抗菌性物質を分離する方法を提供する。
【解決手段】乳またはホエーより得られる成分を有効成分とする静菌または抗菌剤の有効成分は以下の(1)〜(5)の性質を有すること特徴とする静菌または抗菌剤である。(1)分画分子量20,000Da未満の限外ろ過膜を通過する性質。(2)乳糖含量が10%以下である。(3)脂肪含量が1%以下である。(4)遊離アミノ酸含量が1%以下である。(5)有機酸含量が1%以下である。このような成分の取得方法としては、乳またはホエーより脂肪及びタンパク質を除去した後、合成吸着剤樹脂に吸着させ、含水有機溶媒で抽出する方法であって、前記タンパク質の除去方法は、例えば分画分子量20,000Da未満の限外ろ過膜などを用いることによって取得することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、乳またはホエーに含まれる低分子の静菌または抗菌剤及びその製造方法に関する。また、当該静菌または抗菌剤を含有することを特徴とする植物病原菌防除剤、飲食品、栄養組成物または、飼料等に関する。
チーズ製造において副産物として生成するホエーには、良質な水溶性のタンパク質のほか、乳糖やミネラルなど様々な栄養素が豊富に含まれているが、近年はその有効利用のため、様々な処理工程を経て多様なホエー加工品が生産されている。特に、ホエーより乳糖及びミネラルを限外ろ過膜などにより除去した後、噴霧乾燥し、非タンパク質物質を最小化するように加工したホエータンパク質コンセントレート(WPC)またはホエータンパク質アイソレート(WPI)などは世界的に製造量・流通量の多い製品であり、ホエーをそのまま粉末化したホエー粉よりもタンパク質含量が多く、良好な溶解性、泡だち性、ゲル化能といった機能的な特性を備えているものもある。
ホエーの限外ろ過膜処理の際に副産物として生成する膜通過画分、ホエーの限外ろ過パーミエイトは乳糖が主要な成分であり、この乳糖もまた濃縮・結晶化の工程を経て回収され、そのまままたは精製された後、製品化されている。しかしながら、ホエーの限外ろ過パーミエイトから乳糖を除いた溶液については全く活用されることなく、廃液として処理されているのが現状である。
一方、野菜等の植物に発生する病気には、多種多様な病原性菌が関与していることが知られている。例えば真菌であれば、マメ類、ムギ類、樹木類、果樹類に被害をもたらす担子菌類の銹病菌は世界で約5,000種、わが国では約870種が知られている。また、多くの植物体に感染する子嚢菌類のうどんこ病菌には7属の病原かびがあり、野菜類や果樹類に病気をおこす不完全菌類の黒かび病菌(Aspergillus niger)等も昔から知られている。わが国の農業で最も重要なイネの真菌病として、いもち病菌(Pyricularia oryzae)や紋枯病菌(Rhizoctonia solani)がある。また、シュードモナス属、キサントモナス属、エルビニア属、アグロバクテリウム属、コリネバクテリウム属、ストレプトマイセス属、スピロプラスマ属のほかマイコプラスマ様細菌など多くの病原性細菌も知られている。特に我が国で問題となるイネの細菌病には、褐条病菌(Pseudomonas syringae)、籾枯病菌(Pseudomonas glumae)、葉鞘褐変病菌(Pseudomonas marginalis)及び白葉枯病菌(Xanthomonas campestris pv.orizae)がある。これらを防除するための農薬はあるが、たとえば収穫直前のブロッコリーの花蕾のように化学合成農薬を散布すると残留が問題となる場合などについては依然として防除する手立てが無い。よって、これらの病原菌を抑制する食品由来の静菌または抗菌性物質があれば、散布後もそのまま摂食することが可能であり、残留による健康への影響も無いため、有機農業にも活用することができる。
また、これらの病原菌は土壌伝染性であるため、事前に土壌中のこれらの病原菌を抑制することで、野菜などの病害予防が可能になると考えられる。
畜産分野において、家畜の感染症予防・治療に用いられる抗生物質量はヒトへの使用量の2倍以上と言われており、多薬耐性菌の出現等の問題が深刻化している。そのため、抗生物質を可能な限り使用せずに飼育することが強く望まれている。そこで、病原性菌に対して抑制効果のある食品副産物があれば、飼料に加えて投与することにより感染症を予防し、安心、安全かつ経済的な家畜の飼育が可能となる。
乳中には多数のタンパク性抗菌物質が含まれていることが知られており、例えば、乳清ホエータンパク質と水溶性銀化合物を混和した繊維の抗菌加工方法(特許文献1)、病原菌に対する抗体を含む乳を用いた感染症予防食品添加用組成物(特許文献2)、動物の血液及び乳汁中のグロブリン含有物を抗菌剤として利用した豚用飼料(特許文献3)等が開示されている。また、ニューロキノン系抗菌剤と乳由来ラクトフェリン類の加水分解物またはラクトフェリン類の加水分解物由来の抗菌性ペプチドを有効成分として含有する抗菌剤(特許文献4)、水不溶性銀含有乳清蛋白質加水分解物の製造法(特許文献5)等も開示されている。更に、乳タンパク質以外の抗菌成分として、ホエー由来の遊離脂肪酸、主に酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸の一つ又は複数から選ばれる遊離脂肪酸で構成される抗菌性組成物(特許文献6)も開示されている。
特開2007−46208号公報 特開2008−22704号公報 特開昭61−132143号公報 特開平11−92375号公報 特開2005−269925号公報 特表2011−505415号公報
ANTIMICROBIAL AGENTS AND CHEMOTHERAPY,Jan.1997,p.54-59
上述したように、乳タンパク質、脂肪酸の抗菌性については報告があるものの、特許文献1〜6については、用いる原料や製造工程が煩雑であったり、十分な効果が得られない等の様々な問題が認められる。
また、特許文献5では、乳タンパク質の加水分解物を抗菌剤として用いているが、乳成分単独の効果ではなく、さらに乳成分を加水分解する工程を有するため製造工程が煩雑である等の問題が認められる。
さらに、特許文献6の遊離脂肪酸の抗菌剤は、乳化剤として乳タンパク等が必要なこと、遊離脂肪酸の乳化組成物はそれらの合同融点未満の温度ではほとんどまたは全く抗菌効力を持たないことが開示されており、これらの点から実用化においては問題点が多い。
一方で、乳タンパク質、脂肪酸以外の低分子物質の静菌または抗菌性については全く報告がされていない。また、乳やホエーの限外ろ過パーミエイトについて静菌または抗菌性の効果を有する報告はなされていない。
したがって、本発明は、乳またはホエーに含まれる低分子画分の有効利用を目的とし、乳またはホエーより静菌または抗菌性物質を分離する方法を提供すること、及び当該静菌または抗菌物質による植物病原菌除去、腸内環境改善等を課題とする。特に、農薬を使用できない野菜の病原菌防除や、抗生物質の使用を控えたい家畜の感染症予防等を課題とする。
上記課題を解決するため鋭意検討した所、本発明者らは、ホエーの限外ろ過パーミエイトを更に分画し、その有効利用を目指して各種のスクリーニングを実施した結果、ホエーの限外ろ過パーミエイトから乳糖等の水溶性分子を除いた画分に、土壌細菌に対する高い静菌または抗菌活性があることを見出した。さらに、ホエーの限外ろ過パーミエイトを合成吸着剤樹脂(例えば、HP20)に吸着させた後、含水有機溶媒で溶出される画分に、植物病原性細菌や食中毒細菌などに対して静菌または抗菌活性があることを明らかにした。
本発明は、以下のような静菌または抗菌剤及びその製造方法を提供するものである。
〔1〕乳またはホエーより得られる成分を有効成分とする静菌または抗菌剤であって、前記乳またはホエーより得られる成分が以下の性質を有することを特徴とする静菌または抗菌剤。
(1)分画分子量20,000Da未満の限外ろ過膜を通過する性質
(2)乳糖含量が10%以下である
(3)脂肪含量が1%以下である
(4)遊離アミノ酸含量が1%以下である
(5)有機酸含量が1%以下である
〔2〕前記乳またはホエーより得られる成分がさらに以下の性質を有する〔1〕に記載の静菌または抗菌剤。
(6)合成吸着樹脂に吸着する性質
(7)吸着した前記合成吸着樹脂から含水有機溶媒で溶出される性質
〔3〕有機溶媒がエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリルまたはジメチルスルホキシドのいずれかである〔2〕に記載の静菌または抗菌剤。
〔4〕合成吸着樹脂がスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤である〔2〕または〔3〕のいずれかに記載の静菌または抗菌剤。
〔5〕前記静菌または抗菌の対象とする微生物が、Escherichia属、シュードモナス属のいずれかである〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の静菌または抗菌剤。
〔6〕前記静菌または抗菌の対象とする微生物が大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス フルオレッセンス(Pseudomonas fluoressence)のいずれかであることを特徴とする〔5〕に記載の静菌または抗菌剤。
〔7〕前記乳またはホエーより得られる成分が、乳またはホエーの限外ろ過パーミエートから乳糖を除去することにより得られるものである、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の静菌または抗菌剤。
〔8〕前記乳またはホエーより得られる成分が、以下の工程により得られるものである〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の静菌または抗菌剤。
(a)乳またはホエーより脂肪及びタンパク質成分を除去する工程と、
(b)前記(a)の工程により得られた溶液を合成吸着樹脂と接触させる工程と、
(c)前記(b)の工程により得られた合成吸着樹脂を含水有機溶媒で溶出し、有効成分を得る工程
〔9〕前記乳またはホエーより得られる成分が、pH3.5以下で加水分解工程を経ることなく得られるものである〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の静菌または抗菌剤。
〔10〕乳またはホエーより得られる成分を有効成分とする静菌または抗菌剤の製造方法であって、以下の工程を有する製造方法。
(a)乳またはホエーより脂肪及びタンパク質成分を除去する工程
(b)前記(a)の工程により得られた溶液を合成吸着樹脂と接触させる工程
(c)前記(b)の工程により得られた合成吸着樹脂を含水有機溶媒で溶出し、有効成分を得る工程
〔11〕前記の有機溶媒がエタノール、メタノール、プロパノール、イソオプロパノール、アセトン、アセトニトリルまたはジメチルスルホキシドのいずれかである〔10〕に記載の製造方法。
〔12〕合成吸着樹脂がスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤である〔10〕または〔11〕に記載の製造方法。
〔13〕前記(a)のタンパク工程は分画分子量20,000Da未満の限外ろ過膜を用いてタンパク質を除去する工程である〔10〕〜〔12〕のいずれかに記載の製造方法。
〔14〕タンパク質成分の加水分解工程を含まない〔10〕〜〔13〕のいずれかに記載の製造方法。
〔15〕〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の静菌または抗菌剤を含有することを特徴とする植物病原菌防除剤。
〔16〕〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の静菌または抗菌剤を含有することを特徴とする飲食品、栄養組成物または飼料。
本発明によれば、乳またはホエーより得られた低分子画分を有効成分とする静菌または抗菌剤を提供することができる。本発明により得られたホエーの低分子静菌または抗菌性物質は食品由来の天然物であり、ブロッコリーの花蕾等の農薬を散布できない野菜に対して用いることができるほか、土壌散布によっても植物病原菌を抑制することが可能である。さらには、ヒトや家畜動物等で問題となる病原性大腸菌等に対して効果が期待できるため、安全な腸内病原菌の抑制剤としても利用できる。
実施例1で得られた静菌または抗菌剤のシュードモナスに対する抗菌性試験の結果を示した図である(試験例1)。ペーパーディスク上の数値10、30、50は、それぞれ10%溶出画分(実施品1)、30%溶出画分(実施品2)、50%溶出画分(実施品3)を吸収させたディスクであることを示す。 実施例1で得られた静菌または抗菌剤を噴霧後、花蕾腐菌処理をしたブロッコリー花蕾部分を、37℃で24時間培養した後の病変の様子を示した図である(試験例2)。病変は、花蕾の先端がつぶれて溶けたようになり、そのため、写真では黒く映る。「病原菌接種」のブロッコリーの全体にわたって、また「病原菌+30%溶出画分」のブロッコリーの右半分が、病変により花蕾がつぶれ、写真では黒く写っている。(なお、「病原菌+50%溶出画分」については、中心部が黒く写っているように見えるが、光の写り具合によるものであり、花蕾は特につぶれていない。) 実施例2で得られた静菌または抗菌剤のシュードモナスに対する抗菌性試験の結果を示した図である(試験例4)。左上:AE画分、左下:NB画分、右上:AQ画分、右下:AB画分、をそれぞれ示す。 実施例2で得られた静菌または抗菌剤(AE画分)の大腸菌に対する抗菌性試験の結果を示した図である(試験例5)。
以下、本発明の静菌または抗菌剤及びその製造方法について説明する。
本発明の静菌または抗菌剤は、乳またはホエーより脂肪成分、タンパク質成分、乳糖成分を除去する工程により得ることができ、望ましくは、乳またはホエーより脂肪及びタンパク質成分を除去する工程と、前記脂肪及びタンパク質を除去した溶液を合成吸着剤樹脂に吸着させる工程と、前記合成吸着樹脂に吸着させた溶液を、含水有機溶媒で抽出することにより得ることができる。
本発明において使用する原料としては、生乳や脱脂乳等の乳又は、ホエー等を用いることができる。
乳は、牛乳、人乳、ヤギ乳、羊乳等の乳を用いることができる。また、該乳は、液状でもよいし、粉末化したものを還元して用いることもできる。
ホエーは、酸や乳酸菌で分離した酸ホエーでも良いし、レンネットを用いたチーズ製造時に二次的に生成するホエーであっても良く、液状でもよいし、粉末化したものを還元して用いることもできる。ところで、乳に含まれるラクトフェリンから抗菌ペプチドであるラクトフェリシンを製造する工程においては、ラクトフェリンが非常に安定なタンパク質であるため、ラクトフェリンを含む溶液をpH3.0以下の酸性下におき、ペプシンやキモシンなどの加水分解酵素と反応させるといった煩雑な工程が含まれる(非特許文献1)。本発明で用いるホエーとは、通常のチーズ製造時に産生する副産物でよく、pHが3.5以上の段階でカードと分離したホエーであれば、どのようなチーズのホエーでもかまわない。例えばゴーダチーズ、チェダーチーズ、モツアレラチーズなどから得られるホエーを使用する事が望ましい。なお、pHが3程度となっても、キモシンなどの加水分解酵素を含まずに製造されるホエーであれば、使用することが出来ることはいうまでもない。脱脂乳からミルクタンパク質コンセントレート(MPC)を製造する際に副産物として生成する限外ろ過パーミエイトを用いても良い。なお、副産物の有効利用という観点から、ホエーやその限外ろ過パーミエイト等を使用することが望ましい。
乳またはホエーより脂肪成分を除去する方法としては、例えば、クリームセパレーター等を用いて遠心分離により除去する方法を挙げることができるが、特に限定されず、脂肪成分を除く一般的な方法を用いることができる。
乳またはホエーよりタンパク質成分を除去する方法としては、限外ろ過膜を用いることもできるし、溶液中の塩濃度を高めて析出させる(塩析)方法も用いることができるが、特に限定されず、タンパク質を除去する一般的な方法を用いることができる。なお、限外ろ過膜としては、乳またはホエー中のタンパク質成分を除去できれば特に限定されないが、乳タンパク質の大きさを考慮すると、分画分子量が20,000Da未満のものが適当であり、15,000以下、10,000以下がさらに望ましい。20,000Da以上であると不要なタンパク質を十分に除去することができないためである。
一方、除去効率を考慮すると、膜の分画分子量は、2,000Da以上が望ましく、より多くの静菌または抗菌効果を有する低分子画分を捉えるためにさらに望ましくは3,000Da以上である。後述する実施例では、このような観点より分画分子量10,000Daの限外ろ過膜を用いて、静菌・抗菌効果の高い分画を多数得ている。
なお、本発明の製造方法では、乳またはホエーを加水分解等することなく、タンパク質成分を除去する工程を有していることから、本発明の有効成分には、ラクトフェリンの加水分解物が含まれることはない。
本発明の製造工程における乳またはホエーより脂肪及びタンパク質成分を除去する工程とは、脂肪成分を除去する工程とタンパク質成分を除去する工程がそれぞれ異なる手段で別々に行われる工程でもよく、同一工程で一度に除去される工程でもよい。
乳またはホエーより乳糖を除去する方法、あるいは乳またはホエーよりタンパク質を除去した溶液から乳糖を除去する方法としては、合成吸着樹脂を用いて、必要成分の方を吸着させ、その後溶出することにより必要成分を得る方法が挙げられる。
このように用いられる合成吸着樹脂としては、一定の疎水性度があり、乳糖やミネラルを吸着しにくいものであれば特に限定されないが、工業的規模の利用とした場合には、例えばスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤が挙げられ、市販されているものとしては、DIAION(登録商標、以下同じ)HP20(三菱化学製)等の吸着樹脂用いることができる。
これらの脂肪成分除去工程、タンパク質成分除去工程、乳糖除去工程の順番は、特に問わないが、脂肪成分とタンパク質成分の除去を先に行い、その後乳糖を除去することが効率の上から望ましい。
合成吸着樹脂に吸着させた溶液を溶出するために、含水有機溶媒を用いることができる。該溶媒としては、溶出力があるものであれば特に限定されずに用いることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリルまたはジメチルスルホキシド等を用いることができる。なお、樹脂に吸着した静菌または抗菌性成分は、水では溶出されにくいが、有機溶媒が含まれていれば溶出されるため、含水有機溶媒であれば濃度は特に限定されないが、溶出効率等を考慮すると、10%以上の濃度の有機溶媒を用いることが好ましい。
このようにして得られた分画成分は、所定の分画分子量の限外濾過膜を通過する性質、乳糖含量が0〜10%、脂肪およびアミノ酸および有機酸含量が1%以下の成分であり、各種の製品に添加する際に扱いやすい組成となっている。また、さらに望ましくは合成吸着樹脂に吸着する性質、吸着した前記合成吸着樹脂から含水有機溶媒で溶出される性質をも有している。
なお、このような組成の分画物は、上述のように、乳やホエーを原料として、脂肪成分除去工程、タンパク成分除去工程、乳糖成分除去工程をそれぞれ、あるいは同時に経て取得することもできるが、原料として中間物質や、廃棄物質を利用した場合には、それらの工程の一部を省略できることはいうまでもない。すなわち、ホエーより限外ろ過膜(前述の分画分子量の膜)を使用して、WPCやWPIを濃縮した場合のホエーの限外ろ過膜通過画分(限外ろ過パーミエイト)を利用した場合には、脂肪成分除去工程、タンパク成分除去工程が不要であり、乳糖成分除去工程により本発明の前記組成の分画成分を得ることができる。また、脱脂乳を利用する場合は、脂肪成分除去工程が不要であり、限外ろ過膜によるタンパク成分除去工程と乳糖除去工程があればよい。
本発明の静菌または抗菌剤は、そのまま静菌または抗菌剤として用いることもできるし、該剤に含まれる有効成分の精製度を上げるため、常法に従ってさらに溶媒抽出や結晶化等を行っても良い。例えば、酢酸エチル、塩酸、水飽和n−ブタノール等の有機溶媒を用いてさらに精製度を上げた画分を得ることができる。
噴霧乾燥や凍結乾燥におり粉末化しても、タブレット等の錠剤、顆粒剤、カプセル等の形態にしても用いることができるし、液状の状態のままでも用いることができる。
本発明の静菌または抗菌剤は、Escherichia属、シュードモナス属等に対して静菌または抗菌効果を有する。Escherichia属としては、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス属としては、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス フルオレッセンス(Pseudomonas fluoressence)等を挙げることができる。したがって、本発明の静菌または抗菌剤を、後述する植物病原菌防除剤として用いる場合は、Escherichia属、シュードモナス属に属する病原菌に対して防除効果を奏する。そのような病原菌としては、例えば、褐条病菌(Pseudomonas syringae)、籾枯病菌(Pseudomonas glumae)、葉鞘褐変病菌(Pseudomonas marginalis)、花蕾病菌(Pseudomonas putida)などを挙げることができる。
本発明の静菌または抗菌剤は、植物病原菌防除剤として用いることができるが、該用途として用いる場合、例えば液状の物質に溶解して単独で散布しても良いし、他の農薬等の散布時に薬剤と混和して同時に散布することもできる。例えば、粉末化した該剤を水や他の液剤に約0.1〜10%溶解して散布することにより、植物病原菌防除剤としての効果が期待できる。植物体表面への付着性を高めるため、農業上通常用いられる展着剤、界面活性剤を補助剤として添加することも可能である。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンポリマー、オキシプロピレンポリマー、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、第四級アンモニウム塩、オキシアルキルアミン、レシチン、サポニン等が挙げられる。また、必要に応じてゼラチン、カゼイン、デンプン、寒天、ポリビニルアルコール、アルギン酸ソーダなどを補助剤として用いることが出来る。また、土壌中の病原菌防除の目的では、粉末状で直接散布することもできるが、ゼオライト等の土壌改良資材に混和あるいは吸着させた後、土壌にすき込んで使用することも可能であるし、肥料に混和して用いることも可能である。
植物体への散布部位は、病原菌の発症、繁殖可能部位であればどこにでも用いることができ、花、茎、葉、根および種子などが挙げられる。
本発明の静菌または抗菌剤は、ヒトの感染症予防を目的として用いることができる。例えば、飲料や乳製品、健康食品類等の様々な飲食品に利用することができる。本発明の静菌または抗菌剤は、飲食品の製造工程中に原材料として添加することもできる。本発明の静菌または抗菌剤は、通常飲食品中に0.01〜99%配合することができる。
また、本発明の静菌または抗菌剤は、家畜・ペット等の感染症予防を目的として用いることができる。動物用途であれば、固形飼料・餌に混和することもできるし、飲料水に溶解して摂取させることもできる。また、粉末を飼料・餌に直接振りかけて与えることもできる。粉末化した本剤を豚または鶏用の固形飼料に0.1〜5%程度混和して給与することで、感染症予防効果が期待できる。
本発明の実施により、ホエーの限外ろ過パーミエイト等の乳副産物の付加価値を向上し、有効に活用することが可能となる。乳糖を除去する工程を経るため粉末化がしやすく、各種製品への添加が容易なうえ保存性も良いので汎用性が高い。また、乳糖を資化可能な細菌の増殖を抑制できるという効果を有する。
当該静菌または抗菌性物質は食品由来の天然物であるため、例えばブロッコリーの花蕾等、そのまま食するため農薬を散布できない野菜に対しても使用することができる。その結果、これらの野菜類の病害を抑え、安定的に農業生産を行うことができる。更に、本発明の静菌または抗菌性物質を土壌散布することで、植物病原菌の繁殖、感染などの抑制効果も期待できる。また、種子を本発明の静菌または抗菌性物質に浸漬しておいたり、発症前の植物体に散布しておくことで、植物病原菌の発症を予防することも期待できる。また、ヒトや家畜動物などで問題となる病原性大腸菌等に対しても効果が期待できるため、食品や家畜飼料として摂食することにより、安全に腸内病原菌を防除することもできる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例
に限定されるものではない。
(ホエーからの静菌または抗菌成分の分画)
ゴーダタイプチーズの製造工程で排出されたチーズホエー25Lを8,000g×30分間、4℃で遠心分離後、脂肪層を除いた上清を分画分子量が10,000Daの限外ろ過膜(3838 HFK-131、Koch Membrane Systems Inc.製)に供し、通過した画分をホエー限外ろ過パーミエイトとした(約20L)。合成吸着樹脂であるDIAION HP20(三菱化学製)をメタノールで膨潤後、蒸留水で洗浄し、オープンカラム(内径45mm×長さ550mm)に充填した。ホエー限外ろ過パーミエイトをこの樹脂に供し、蒸留水にて1回洗浄を行った後、10%、30%、50%のエタノール溶液各3Lで段階的に溶出して、溶出液をエバポレーターで濃縮し、濃縮液を凍結乾燥した。20Lのホエー限外ろ過パーミエイトより、それぞれ5.93g、4.41g及び4.49gの抽出画分を回収した。ぞれぞれ、以下10%溶出画分(実施品1)、30%溶出画分(実施品2)、50%溶出画分(実施品3)という。これらの画分について一般成分を分析した結果を表1に示す。脂肪はレーゼゴットリーブ法で、窒素量(窒素)はケルダール法で、遊離アミノ酸はトリクロロ酢酸にて除タンパクしたサンプル溶液を、日立高速アミノ酸分析計L-8800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて測定して算出した。乳糖はF−キット乳糖/D−ガラクトース(Roche Diagnostics GmbH製)で分析した。該抽出画分はそのまま本発明の静菌または抗菌剤として用いることができる。
(試験例1)
(ホエー溶出画分のシュードモナス属細菌の抑制効果)
北海道別海町の土壌を滅菌水に懸濁後、PDB培地(パールコア標準寒天培地、栄研化学製)に塗布し、27℃で1日培養した。生育したコロニーの一つを釣菌し、その16S rRNAの遺伝子配列を解読したところ、当株がPseudomonas sp.であることが確認された。この分離株を以降の抗菌性試験に用いた。
分離したシュードモナス属細菌(Pseudomonas sp.)をPDB培地(パールコア標準寒天培地、栄研化学製)に塗布し、27℃で1日培養した。生育した菌体を生理食塩水に懸濁し、その100μlを標準寒天培地に塗布した。前記実施例1で得られたホエーの溶出画分(実施品1〜3)を1%水溶液とし、滅菌した直径10mmのペーパーディスク(ADVANTEC製)に各々100μl吸収させ、寒天培地上に等間隔に並べた。寒天培地を30℃で2日間培養した後、ペーパーディクス周辺で菌の生育を阻害している範囲(阻止円)の大きさを測定した。その結果、実施品1〜3の全てで阻止円を形成した(図1、表2)。なお、蒸留水を滅菌したペーパーディスクに100μl吸収させたものを寒天培地上に置いて同様に培養したが(対照区)、阻止部分は形成されなかった(阻止円の大きさは10mm)。
以上の結果から、ホエー溶出画分には植物病原性菌の一つであるシュードモナス属細菌に対して静菌または抗菌効果があることが示された。
(試験例2)
(ホエー溶出画分のブロッコリー花蕾腐病の抑制効果)
北海道江別市のブロッコリー圃場で採取した花蕾腐病の発生部位を滅菌水に懸濁後、PDB培地(パールコア標準寒天培地、栄研化学製)に塗布し、27℃で1日培養した。生育したコロニーの一つを釣菌し、その16S rRNAの遺伝子配列を解読したところ、Pseudomonas putidaであると同定した。この菌株はPDB培地で37℃で1日培養した。培養液を生理食塩水で希釈して病原菌液として以下の試験に用いた。
市販のブロッコリーを花茎の部分を切り戻し、蒸留水の入ったビーカーに茎をつけ保持した。実施例1により得られた実施品1〜3を蒸留水で250倍希釈し、さらに展着剤アプローチBI((株)花王製)を0.1%添加したものを各々花蕾部分に霧吹きで数回噴霧した。対照区としては蒸留水に展着剤のみを添加した液を噴霧した。蛍光灯下、室温にて1日静置することによって噴霧した処理液を乾燥した。その後、前記病原菌液を花蕾部分に霧吹きで数回噴霧して病原菌を接種した。湿度100%、37℃にて24時間培養した後、花蕾部分を上面から撮影し(図2参照)、病原菌の繁殖により変色した部分(病変部位)の全体に対する割合(面積比率)を画像解析ソフトImageJ(http://rsb.info.nih.gov/ij/)にて数値化した(表3参照)。その結果、病原菌を接種した対照区のブロッコリーでは、花蕾部分の51.1%が腐敗・変色していたのに対し、10%、50%エタノール溶出画分(実施品1、3)で処理した処理区のブロッコリーでは変色部分が全く見られなかった。また、30%エタノール溶出画分(実施品2)で処理したブロッコリーでは花蕾部分の26.9%が腐敗・変色していたが、対照区よりも抑制効果が見られた。
以上の結果から、ホエー由来溶出画分にはPseudomonas putidaへの高い静菌または抗菌効果があることが示された。
(ホエーからの静菌または抗菌成分の粗精製)
ゴーダタイプチーズの製造工程で排出されたチーズホエー20Lを9,000g×30分、4℃で遠心分離後、脂肪層を除いた上清を分画分子量が10,000Daの限外ろ過膜(3838 HFK-131、Koch Membrane Systems Inc.)に供し、通過した画分をホエー限外ろ過パーミエイトとして18L得た。合成吸着樹脂(DIAION HP20、三菱化学製)をエタノールで膨潤後、蒸留水で洗浄し、オープンカラム(内径45mm×長さ550mm)に充填した。前記ホエー限外ろ過パーミエイトを該樹脂に供し、蒸留水にて1回洗浄を行った後、50%のエタノール溶液で溶出して、溶出液をエバポレーターで乾固した。500mlの蒸留水に溶解した後、各種溶媒による段階的な抽出を行った。
まず、水酸化ナトリウム(和光純薬製)にてpHを8.0に調製した後、酢酸エチル(和光純薬製)500mlで3回溶媒抽出を行った。水相を回収し、塩酸(和光純薬製)にてpHを2.5に調製した後、酢酸エチル500mlで3回の溶媒抽出を行った。回収した酢酸エチル相は無水硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターで乾固後、蒸留水20mlに溶解し、AE画分とした。水相は水酸化ナトリウムにてpHを8.0に調製した後、水飽和n−ブタノール(和光純薬)500mlで3回の溶媒抽出を行った。回収したn−ブタノール相をエバポレーターで乾固後、蒸留水20mlに溶解し、NB画分とした。水相は塩酸にてpHを2.5に調製した後、水飽和n−ブタノール500mlで3回の溶媒抽出を行った。回収したn−ブタノール相をエバポレーターで乾固後、蒸留水20mlに溶解し、AB画分とした。最終的な水相は、含まれる塩類を除くため、先に用いたDIAION HP20樹脂に一度吸着させた後、蒸留水にて1回洗浄を行なった。50%のエタノールで溶出した溶液をエバポレーターで乾固し、蒸留水20mlに溶解してAQ画分とした。該抽出画分はそのまま本発明の静菌または抗菌剤として用いることができる。
以上のように分画された粗精製画分は最終的に10mlとなるように含水エタノールで溶解し、以下の抗菌試験を実施した。
(試験例3)
(ホエー抽出画分の土壌微生物の抑制効果)
北海道・別海町の土壌サンプルを生理食塩水で100倍に希釈した後、標準寒天培地(パールコア標準寒天培地、栄研化学製)に該土壌希釈液100μlを塗布した。滅菌した直径8mmのペーパーディスク(ADVANTEC製)に実施例2で得られた抽出画分AE画分、NB画分、AB画分、AQ画分(実施品4〜7)を各々50μl吸収させ、該寒天培地上に等間隔に並べた。ペーパーディスクを並べた培地を30℃で2日間培養した後、ペーパーディクス周辺で菌の生育を阻害している範囲(阻止円)の大きさを測定した。なお、蒸留水を滅菌したペーパーディスクに50μl吸収させたものを対照区とした。
その結果、AE画分、NB画分、AB画分、AQ画分で阻止円を形成したことから(表4)、ホエー抽出画分には土壌微生物に対しても高い静菌または抗菌効果があり、多数の成分に静菌または抗菌効果があることが示された。
(試験例4)
(ホエー抽出画分のシュードモナスの抑制効果)
土壌より分離したシュードモナス属細菌(Pseudomonas sp)を標準寒天培地(パールコア標準寒天培地、栄研化学製)に塗布し、30℃で1日培養した。生育した菌体を生理食塩水に懸濁し、その100μlを標準寒天培地に塗布した。滅菌した直径8mmのペーパーディスク(ADVANTEC製)に実施例2で得られた抽出画分、AE画分、NB画分、AB画分、AQ画分(実施品4〜7)を各々50μl吸収させ、寒天培地上に等間隔に並べた。ペーパーディスクを並べた培地を30℃で1日間培養した後、ペーパーディクス周辺で菌の生育を阻害している範囲(阻止円)の大きさを測定した。
その結果、AE画分、NB画分、AB画分、AQ画分で阻止円を形成した(図3、表5)。なお、蒸留水を滅菌したペーパーディスクに50μl吸収させたものを寒天培地上に置いて同様に培養したが(対照区)、阻止部分は形成されなかった(阻止円の大きさは8mm)。
以上の結果から、抽出画分には植物病原性菌の一つであるシュードモナス属細菌に対しても高い静菌または抗菌効果があることが判明し、静菌または抗菌効果のある多数の成分を含んでいることが明らかとなった。
(試験例5)
(ホエー抽出画分の大腸菌の抑制効果)
子牛の糞便より分離した大腸菌(Escherichia coli)を標準寒天培地(パールコア標準寒天培地、栄研化学製)に塗布し、37℃で1日培養した。生育した菌体を生理食塩水に懸濁し、その100μlを標準寒天培地に塗布した。滅菌した直径10mmのペーパーディスク(ADVANTEC製)に実施例2で得られたAE画分を50μl吸収させ、寒天培地上に置いた。ペーパーディスクを置いた培地を37℃で1日間培養した後、ペーパーディクス周辺で菌の生育を阻害している範囲(阻止円)の大きさを測定した。
その結果、22.0mmの阻止円を形成しており(図4)、以上の結果から、抽出画分には動物の感染症原因菌である大腸菌に対しても高い静菌または抗菌効果があることが判明した。なお、ヒトの糞便より分離した大腸菌(Escherichia coli)についても同様の静菌または抗菌効果が認められた。なお、蒸留水を滅菌したペーパーディスクに50μl吸収させたものを寒天培地上に置いて同様に培養したが(対照区)、阻止部分は形成されなかった(阻止円の大きさは10mm)。
(脱脂乳からの静菌または静菌または抗菌成分の分画)
12Lの10%還元脱脂乳を8000gで30分間、4℃で遠心分離し、その上清を分画分子量が10,000Daの限外ろ過膜(3838 HFK-131、Koch Membrane Systems Inc.製)に供した。通過した画分を乳限外ろ過パーミエイト(10L)とした。合成吸着樹脂(DIAION HP20、三菱化学製)をエタノールで膨潤後、蒸留水で洗浄し、オープンカラムに充填した。乳限外ろ過パーミエイトをこの樹脂に供し、蒸留水にて1回洗浄を行った後、50%のエタノール溶液で溶出した。10Lの乳限外ろ過パーミエイトより5.3gの抽出画分が得ることができた。該抽出画分はそのまま本発明の静菌または抗菌剤として用いることができる。
(植物病原菌防除剤)
上記実施例2で得られた静菌または抗菌剤(実施品6)10gをポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸アンモニウム190g、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル60g、リン酸トリエチル280g、リン酸トリブチル470gと均一に混和し、乳剤を調製し、植物病原菌防除剤を製造した。
(家畜用感染症予防飼料)
上記実施例2で得られた静菌または抗菌剤(実施品6)200gを99.8kgの脱イオン水に溶解し、50℃まで加熱後、TKホモミクサー(MARK II 160型;特殊機化工業社製)にて、3600rpmで40分間撹拌混合した。この混合溶液に大豆粕12kg、脱脂粉乳14kg、大豆油4kg、コーン油2kg、パーム油23.2kg、トウモロコシ澱粉14kg、小麦粉9kg、ふすま2kg、ビタミン混合物5kg、セルロース2.8kg、ミネラル混合物2kgを配合し、120℃、4分間殺菌して、本発明の家畜用感染症予防飼料100kgを製造した。
(ヒト用感染症予防剤)
上記実施例1で得られた静菌または抗菌剤(実施品1)10g、ラクトース140g、シュガーエステル8g、セルロース2gを混合し、圧縮錠剤機により圧縮して、本発明品のヒト用感染症予防剤を製造した。
本発明は、乳またはホエー等から静菌または抗菌成分含有画分を抽出する製造方法、当該静菌または抗菌成分を含む植物病原菌防除剤、感染症予防剤に関する。本発明は、食品分野、医薬分野のみならず、酪農畜産分野、農業分野への利用が可能である。特に、農薬を使用できない野菜の病原菌防除や、抗生物質の使用を控えたい家畜の感染症予防、合成保存料を使用できない食品の保存性向上に大きく貢献することが期待できる。

Claims (16)

  1. 乳またはホエーより得られる成分を有効成分とする静菌または抗菌剤であって、前記乳またはホエーより得られる成分が以下の性質を有することを特徴とする静菌または抗菌剤。
    (1)分画分子量20,000Da未満の限外ろ過膜を通過する性質
    (2)乳糖含量が10%以下である
    (3)脂肪含量が1%以下である
    (4)遊離アミノ酸含量が1%以下である
    (5)有機酸含量が1%以下である
  2. 前記乳またはホエーより得られる成分がさらに以下の性質を有する請求項1に記載の静菌または抗菌剤。
    (6)合成吸着樹脂に吸着する性質
    (7)吸着した前記合成吸着樹脂から含水有機溶媒で溶出される性質
  3. 有機溶媒がエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリルまたはジメチルスルホキシドのいずれかである請求項2に記載の静菌または抗菌剤。
  4. 合成吸着樹脂がスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤である請求項2または3のいずれかに記載の静菌または抗菌剤。
  5. 前記静菌または抗菌の対象とする微生物が、Escherichia属、シュードモナス属のいずれかである請求項1〜4のいずれかに記載の静菌または抗菌剤。
  6. 前記静菌または抗菌の対象とする微生物が大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス フルオレッセンス(Pseudomonas fluoressence)のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の静菌または抗菌剤。
  7. 前記乳またはホエーより得られる成分が、乳またはホエーの限外ろ過パーミエートから乳糖を除去することにより得られるものである、請求項1〜6のいずれかに記載の静菌または抗菌剤。
  8. 前記乳またはホエーより得られる成分が、以下の工程により得られるものである請求項1〜6のいずれかに記載の静菌または抗菌剤。
    (a)乳またはホエーより脂肪及びタンパク質成分を除去する工程と、
    (b)前記(a)の工程により得られた溶液を合成吸着樹脂と接触させる工程と、
    (c)前記(b)の工程により得られた合成吸着樹脂を含水有機溶媒で溶出し、有効成分を得る工程
  9. 前記乳またはホエーより得られる成分が、pH3.5以下で加水分解工程を経ることなく得られるものである請求項1〜8のいずれかに記載の静菌または抗菌剤。
  10. 乳またはホエーより得られる成分を有効成分とする静菌または抗菌剤の製造方法であって、以下の工程を有する製造方法。
    (a)乳またはホエーより脂肪及びタンパク質成分を除去する工程
    (b)前記(a)の工程により得られた溶液を合成吸着樹脂と接触させる工程
    (c)前記(b)の工程により得られた合成吸着樹脂を含水有機溶媒で溶出し、有効成分を得る工程
  11. 前記の有機溶媒がエタノール、メタノール、プロパノール、イソオプロパノール、アセトン、アセトニトリルまたはジメチルスルホキシドのいずれかである請求項10に記載の製造方法。
  12. 合成吸着樹脂がスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤である請求項10または11に記載の製造方法。
  13. 前記(a)のタンパク工程は分画分子量20,000Da以下の限外ろ過膜を用いてタンパク質を除去する工程である請求項10〜12のいずれかに記載の製造方法。
  14. タンパク質成分の加水分解工程を含まない請求項10〜13のいずれかに記載の製造方法。
  15. 請求項1〜9のいずれかに記載の静菌または抗菌剤を含有することを特徴とする植物病原菌防除剤。
  16. 請求項1〜9のいずれかに記載の静菌または抗菌剤を含有することを特徴とする飲食品、栄養組成物または飼料。
JP2013236175A 2013-11-14 2013-11-14 静菌または抗菌剤及びその製造方法 Active JP6282446B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013236175A JP6282446B2 (ja) 2013-11-14 2013-11-14 静菌または抗菌剤及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013236175A JP6282446B2 (ja) 2013-11-14 2013-11-14 静菌または抗菌剤及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015093866A true JP2015093866A (ja) 2015-05-18
JP6282446B2 JP6282446B2 (ja) 2018-02-21

Family

ID=53196513

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013236175A Active JP6282446B2 (ja) 2013-11-14 2013-11-14 静菌または抗菌剤及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6282446B2 (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH04193353A (ja) * 1990-11-28 1992-07-13 Snow Brand Milk Prod Co Ltd イオン交換樹脂内蔵回転型カラムイオン交換器およびそれを用いたイオン交換処理方法
JP2005320275A (ja) * 2004-05-07 2005-11-17 Snow Brand Milk Prod Co Ltd 口腔内細菌叢改善剤、抗菌剤及び生育促進剤。
JP2008214241A (ja) * 2007-03-02 2008-09-18 Snow Brand Milk Prod Co Ltd 免疫調節剤

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH04193353A (ja) * 1990-11-28 1992-07-13 Snow Brand Milk Prod Co Ltd イオン交換樹脂内蔵回転型カラムイオン交換器およびそれを用いたイオン交換処理方法
JP2005320275A (ja) * 2004-05-07 2005-11-17 Snow Brand Milk Prod Co Ltd 口腔内細菌叢改善剤、抗菌剤及び生育促進剤。
JP2008214241A (ja) * 2007-03-02 2008-09-18 Snow Brand Milk Prod Co Ltd 免疫調節剤

Also Published As

Publication number Publication date
JP6282446B2 (ja) 2018-02-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Sarma et al. Aflatoxins: implications on health
CN108603161B (zh) 具有有益活性的芽孢杆菌菌株及制剂
CN106432419B (zh) 一种乳酸片球菌来源的抗菌六肽及其制备方法
CN105246339A (zh) 用于制备具有增加的萝卜硫素含量的青花菜的方法以及由其制备的青花菜的用途
Singh et al. Antimicrobial activity of bioactive peptides derived from fermentation of soy milk by Lactobacillus plantarum C2 against common foodborne pathogens
KR20090086796A (ko) 김치유래 락토바실러스 플란타룸 bls41 및 그 용도
KR101959730B1 (ko) 항균 활성을 갖는 스타필로코커스 갈리나럼 균주 및 이의 항균 용도
JP2012180329A (ja) 抗微生物物質産生・分泌促進剤
KR101865461B1 (ko) 항균 활성을 가지는 펩타이드 및 이를 유효성분으로 함유하는 항균 조성물
KR101374696B1 (ko) 스타필로코코스 파스트리 rsp―1 및 이의 용도
KR102178350B1 (ko) 항균 활성을 갖는 바실러스 사펜시스 균주 및 이의 항균 용도
KR20180004533A (ko) 슈도모나스 아조토포만스 균주 kacc 92125p 및 이를 포함하는 조성물
JP6282446B2 (ja) 静菌または抗菌剤及びその製造方法
KR20180131948A (ko) 슈도모나스 익스트리모리엔탈리스 균주 kacc 81047bp 및 이를 포함하는 조성물
KR20100114606A (ko) 황색포도상구균 유래 질병의 예방 또는 치료용 조성물
Abd Elhamid et al. Influence of bee pollen on the bioactive behavior, sensory and physicochemical properties of white cheese made from camel and cow milk mixture
Laloučková et al. In vitro antimicrobial effect of palm oils rich in medium-chain fatty acids against mastitis-causing= Gram-positive bacteria.
JP6162579B2 (ja) 新規な静菌または抗菌剤
KR101491775B1 (ko) 항생제저항성 유해균의 생장 억제용 조성물
KR101478110B1 (ko) 돼지 호흡기 복합감염증 원인 세균에 대해 항균활성을 나타내는 우르솔산 및 이의 용도
KR102542359B1 (ko) 면역화된 갈색거저리 유충 추출물을 포함하는 항균 조성물 및 이의 제조방법
KR20110125108A (ko) 신규한 화합물 및 이의 용도
KR101959729B1 (ko) 항균 활성을 갖는 바실러스 퍼밀러스 균주 및 이의 항균 용도
JP6381284B2 (ja) 記憶障害の予防及び/又は治療のための組成物
KR102572181B1 (ko) 말벌 추출물을 유효성분으로 함유하는 항균 조성물

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160920

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170303

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170315

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170512

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20170816

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171116

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171124

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20171215

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180110

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180124

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6282446

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250