JP2015092101A - 熱スイッチ - Google Patents

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豊 田崎
甲斐 康朗
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康朗 甲斐
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Yuji Noguchi
雄司 野口
柴田 格
Itaru Shibata
格 柴田
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Abstract

【課題】むやみに電気的エネルギー等を消費することなく、効率良く熱の伝達を制御できる熱スイッチを提供する。【解決手段】熱スイッチ10aは、伝熱媒体14と、誘電体16と、第1電極17と、制御部19とを有する。伝熱媒体14は、対向する二つの物体11、12の間隙13において挿脱可能に設けられる。誘電体16は、二つの物体11、12の界面または当該界面を含む平曲面の少なくとも一方に設けられる。第1電極17は、当該誘電体16に沿って設けられる。制御部19は、第1電極17および誘電体16への電圧の印加を制御する。誘電体16は、第1電極17および伝熱媒体14を絶縁する。制御部19は、第1電極17および誘電体16に電圧を印加することによって、エレクトロウェッティング現象を発生させて、伝熱媒体14の挿脱を制御し、二つの物体11、12間の伝熱または断熱を切り替える。【選択図】図1

Description

本発明は、熱スイッチに関する。
複数の物体間において、熱の伝達を制御する熱スイッチの技術が知られている(たとえば、特許文献1)。特許文献1記載の技術によれば、二つの物体間に配置された液体金属に磁気を印加した上で電流を流すことにより、液体金属にローレンツ力を加え、液体金属を変形させる。変形した液体金属が、二つの物体の両方に当接することにより、二つの物体間は伝熱状態となり、片方の物体のみに当接することにより、二つの物体間は断熱状態となる。したがって、特許文献1記載の技術によれば、ローレンツ力により熱の伝達を制御できる。また、特許文献1には、ローレンツ力の替わりに磁力を用いて熱の伝達を制御することも記載されている。この技術によれば、永久磁石等により磁性流体に磁気を印加することにより、磁性流体に磁力を加え、磁性流体を変形させる。これにより、上記と同様に二つの物体間での熱の伝達を制御できる。
特開2009−278972号公報
しかしながら、上記の技術においては、液体金属を変形させるために電気的エネルギー等のエネルギーを消費してしまうという問題がある。具体的には、ローレンツ力によって液体金属変形させるためには、液体金属に磁気を印加した上で電流を流す必要があり、電気的エネルギーを消費する。また、磁力によって磁性流体を変形させるためには、モーター等の駆動力により永久磁石を移動させたり、コイルに電流を流して電磁石を磁化させたりする必要がある。したがって、ローレンツ力または磁力を用いるいずれの方法においても、熱の伝達を制御するために、電気的エネルギー等のエネルギーを消費してしまう。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、むやみに電気的エネルギー等を消費することなく、効率良く熱の伝達を制御できる熱スイッチを提供することを目的とする。
上記目的は、下記の手段によって達成される。
熱スイッチは、伝熱媒体と、誘電体と、第1電極と、制御部とを有する。伝熱媒体は、対向する二つの物体の間隙において挿脱可能に設けられる。誘電体は、二つの物体の界面または当該界面を含む平曲面の少なくとも一方に設けられる。第1電極は、当該誘電体に沿って設けられる。制御部は、第1電極および誘電体への電圧の印加を制御する。誘電体は、第1電極および伝熱媒体を絶縁する。制御部は、第1電極および誘電体に電圧を印加することによって、エレクトロウェッティング現象を発生させて、伝熱媒体の挿脱を制御し、二つの物体間の伝熱または断熱を切り替える。
本発明の熱スイッチによれば、第1電極および誘電体に電圧を印加することによって、エレクトロウェッティング現象を発生させて、伝熱媒体の挿脱を制御し、二つの物体間の伝熱または断熱を切り替える。したがって、むやみに電気的エネルギー等を消費することなく、効率よく熱の伝達を制御できる。
第1実施形態に係る熱スイッチの概略構成を示す図である。 熱スイッチにおける誘電体の表面の概略構成を拡大して示す図である。 エレクトロウェッティングの原理を説明するための図である。 間隙における伝熱媒体の移動を説明するための図である。 第1実施形態に係る熱スイッチの動作を説明するための図である。 第2実施形態に係る熱スイッチの概略構成を示す図である。 第2実施形態に係る熱スイッチの動作を説明するための図である。 第2実施形態に係る熱スイッチの動作を説明するための図である。 第3実施形態に係る熱スイッチの概略構成を示す図である。 第4実施形態に係る熱スイッチの概略構成を示す図である。 第5実施形態に係る熱スイッチの概略構成を示す図である。 第6実施形態に係る熱スイッチの概略構成を示す図である。 熱スイッチをバッテリー装置に適用した様子を示す図である。 誘電体表面の構成パターンを示す図である。 第8実施形態に係る熱スイッチの概略構成を示す図である。 図15に示す熱スイッチにおいて伝熱媒体が挿入された様子を示す図である。 第8実施形態に係る熱スイッチの動作概要を説明するための図である。 第8実施形態に係る熱スイッチの制御条件の一例を示す図である。 第8実施形態に係る熱スイッチの制御処理の一例を示すフローチャートである。 第8実施形態に係る熱スイッチの使用態様例を示す図である。 第8実施形態に係る熱スイッチの他の使用態様例を示す図である。 第8実施形態に係る熱スイッチのさらに他の使用態様例を示す図である。 第9実施形態に係る熱スイッチを説明するための図である。 図23のIII−III線に沿った部分断面図である。 図23のIV−IV線に沿った部分断面図である。 第9実施形態に係る熱スイッチの制御条件の一例を示す図である。 第9実施形態に係る熱スイッチの制御処理の一例を示すフローチャートである。 第10実施形態に係る熱スイッチを説明するための図である。 第10実施形態の変形例に係る熱スイッチを説明するための図である。
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る熱スイッチの概略構成を示す図である。
図1に示すように、熱スイッチ10aは、熱の伝達の対象である第1物体11および第2物体12の間の間隙13に挿脱される伝熱媒体14を有する。熱スイッチ10aは、伝熱媒体14が間隙13に挿入された状態では、対向する第1物体11および第2物体12間において熱を伝達させ、伝熱媒体14が間隙13に挿入されていない状態では、第1物体11および第2物体12間において熱の伝達を遮断する。
熱スイッチ10aは、さらに、媒体収容部15、誘電体16、第1電極17、第2電極18、電圧スイッチ19および電源Vを有する。媒体収容部15は、間隙13の一端に設けられ、伝熱媒体14を収容する。誘電体16は、第1物体11と間隙13との界面に設けられる。第1電極17は、誘電体16と第1物体11との間に設けられる。第2電極18は、媒体収容部15に収容された伝熱媒体14と電気的に導通可能に、媒体収容部15に設けられる。電源Vは、第1電極17および第2電極18に接続され、それぞれに電圧を印加する。電圧スイッチ19は、制御部として、電源Vの電圧の印加を制御する。
ここで、第1電極17は、誘電体16および第1物体11等により、伝熱媒体14とは電気的に絶縁されている。一方、第2電極18は、伝熱媒体14と電気的に導通している。したがって、電圧スイッチ19を制御して、第1電極17および第2電極18に電圧を印加した場合、第1電極17と、第2電極18と導通する伝熱媒体14とは、その間にある誘電体16を介してキャパシターを形成する。
以下、熱スイッチ10aの各構成について詳細に説明する。
第1物体11および第2物体12は、熱を蓄積および放出する物体であればいかなる物体でもよい。第1電極17は、第2電極18および第2電極18と導通する伝熱媒体14とは絶縁させる必要がある。したがって、第1物体11が導体である場合には、第1電極17と、第2電極18および伝熱媒体14とが導通しないように、絶縁部材等を適宜配置する。
間隙13は、伝熱媒体14を挿脱可能に設けられる狭隘な通路である。間隙13の幅は、たとえば、1〜100μm程度である。
伝熱媒体14は、たとえば、液体金属(導電性流体とも称する)であり、少なくとも本熱スイッチを使用する温度範囲において、間隙13に挿脱可能な程度の流動性を有する。伝熱媒体14としては、たとえば、ガリウム、インジウム、スズの共晶合金であるガリンスタンを用いることができる。ガリンスタンは、常温で液体の金属であり、ガリウム、インジウムスズの組成によって融点が異なる。たとえば、ガリウム68.5%、インジウム21.5%、スズ10%のガリンスタンは、融点−19℃、沸点1300℃以上、比重6.44g/cm、粘度0.0024Pa・s(at20℃)、熱伝導率16.5W/(m・K)である。その他にも、周知の様々な液体金属を伝熱媒体14として用いてもよく、熱伝導率が高いものが好ましい。
媒体収容部15は、第1電極17および第2電極18に電圧が印加されておらず伝熱媒体14が間隙13に挿入されていない状態において、伝熱媒体14を収容する。媒体収容部15は、たとえば、絶縁性を有する材料であるエポキシ基板、フェノール基板、ABS樹脂基板等を用いて形成する。媒体収容部15は、伝熱媒体14を収容しやすいように、内壁面に、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属膜(不図示)を形成して親液性を持たせてもよい。また、媒体収容部15に形成した金属膜を、第2電極18と導通するようにしてもよい。
誘電体16は、たとえば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等、誘電体であればよく、材料は特に限定されない。誘電体16は、第1物体11と間隙13との界面に設けられる。ただし、誘電体16は、間隙13に露出している必要はなく、表面に薄膜等が形成されてもよい。誘電体16は、間隙13側の表面が撥液性となるように、表面に撥液構造を有している。誘電体16の間隙13側の表面が撥液性となっているため、伝熱媒体14は、電圧を印加していない状態では、媒体収容部15内に容易に収容される。誘電体16の表面構造(撥液構造)の詳細については、後述する。
第1電極17および第2電極18は、たとえば、銅、アルミニウム等であり、導電性のものであれば、特に限定されない。第1電極17の形状は、誘電体16の形状と同様であり、少なくとも伝熱媒体14の挿脱を行う範囲において、誘電体16に沿って設けられる。第2電極18の形状は、媒体収容部15内から伝熱媒体14が流出して間隙13に挿入された場合でも、伝熱媒体14に電圧を印加できる形状であればよい。
(誘電体16の表面構造)
図2は、熱スイッチにおける誘電体の表面の概略構成を拡大して示す図である。
図2に示すように、誘電体16は、間隙13側の表面に、表面エネルギーが低く形成された低表面エネルギー化処理層20を有する。低表面エネルギー化処理層20は、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)[テフロン(登録商標)]等の撥液性を有する材料により形成する。また、低表面エネルギー化処理層20は、撥液性に加えて導電性を有してもよい。たとえば、低表面エネルギー化処理層20は、導電性酸化膜(たとえばLaSrTiO系)、導電性ガラス材(たとえばV−Fe−Ba−O系)、導電性セラミックス(たとえばSiC系)、グラフェン等により形成してもよい。
次に、このように構成された熱スイッチ10aの作用を説明する。
(エレクトロウェッティングの原理)
熱スイッチ10aにおいては、伝熱媒体14を、間隙13と媒体収容部15との間を行き来させる、すなわち、伝熱媒体14を間隙13に挿脱させることによって、第1物体11および第2物体12間の伝熱および断熱を実現している。熱スイッチ10aは、伝熱媒体14を間隙13に挿脱させるために、エレクトロウェッティング現象を利用している。エレクトロウェッティング現象による液体金属の移動自体は公知であり、たとえば、特開2007−103363号公報等に開示されている。したがって、ここでは本実施形態の理解のために必要な原理について説明する。
図3は、エレクトロウェッティングの原理を説明するための説明図である。図3において、(A)は電圧を印加した場合の様子を示し、(B)は電圧を印加していない場合の様子を示す。
エレクトロウェッティングの技術では、たとえば、電極板500上に設けられた誘電体510の表面に、液体金属520を乗せ、電極板500および液体金属520に電圧を印加することにより、誘電体510の表面における液体金属520の濡れ性を制御できる。
電極板500と液体金属520との間には、誘電体510を介してキャパシターが形成されている。図3(A)に示すように、電極板500と液体金属520との間に電圧を印加すると、このキャパシターの静電エネルギーが増加して、それに相当する液体金属520の表面エネルギーが減少し、液体金属520の表面張力が低下する。これにより液体金属520の誘電体510の表面に対する接触角度θが変化する。ここで接触角度θとは、液体金属520が乗っている誘電体510の表面と液体金属520の表面とのなす角をいう。この接触角度θは、液体金属520の表面張力に応じて0°〜180°の範囲で変化する。
ここで、図3(A)に示すように、電圧を印加した場合、接触角度θが0°から90°までの範囲となり、液体金属520に対する誘電体510の表面の濡れ性が良い状態、すなわち親液性のある状態となる。一方、図3(B)に示すように、電圧を印加しない場合、接触角度θが90°を超えて180°以下となり、液体金属520に対する誘電体510の表面の濡れ性が悪い状態、すなわち撥液性のある状態となる。このように誘電体510の表面に置かれた液体金属520の接触角度θ、すなわち液体金属520に対する誘電体510の表面の濡れ性を、電圧の印加によって変更させることがエレクトロウェッティングである。
図4は、間隙における伝熱媒体の移動を説明するための図である。図4において、(A)は電圧を印加した場合の様子を示し、(B)は電圧を印加していない場合の様子を示す。
本実施形態において、伝熱媒体14が挿脱される間隙13を形成する第1物体11の表面は、誘電体16に設けられた低表面エネルギー化処理層20である。第1電極17および第2電極18に電圧を印加した場合、低表面エネルギー化処理層20は、伝熱媒体14に対する親液性を有する。このため、図4(A)に示すように、伝熱媒体14と、低表面エネルギー化処理層20の表面との接触角度θは、0°から90°までの範囲となる。したがって、伝熱媒体14の表面は、間隙13の幅方向における中央部分が凹んだ形状となり、低表面エネルギー化処理層20との接触部分は、中央部分よりも突出した凸形状となる。この場合、伝熱媒体14には、低表面エネルギー化処理層20を伝って進む力が働く。したがって、伝熱媒体14は、毛細管現象によって、間隙13の内部、すなわち図中右側を進む。
低表面エネルギー化処理層20は、上述のとおり、伝熱媒体14に対する撥液性を有する。このため、第1電極17および第2電極18に電圧を印加しない場合、図4(B)に示すように、伝熱媒体14と、低表面エネルギー化処理層20の表面との接触角度θは90°を超える。したがって、伝熱媒体14の表面において、間隙13の幅方向における中央部分は、突出した形状となる。一方、伝熱媒体14の表面と低表面エネルギー化処理層20との接触部分は、中央部分よりも凹んだ形状となる。この場合、伝熱媒体14には、低表面エネルギー化処理層20を伝って進む力が働かなくなる。したがって、伝熱媒体14は、毛細管現象によって、間隙13の内部、すなわち図中右側を進むことはない。
図5は、第1実施形態に係る熱スイッチの動作を説明するための図である。
まず、図1に示すように、電圧スイッチ19がOFFの場合、伝熱媒体14は、間隙13には挿入されず、媒体収容部15に収容される。このとき、間隙13は、空気により満たされる。間隙13が空気で満たされることによって、第1物体11と第2物体12との間は断熱状態となる。
続いて、図1に示す状態から、電圧スイッチ19をONにすると、図5に示すように、電源Vにより、第1電極17および第2電極18には、異なる電圧が印加される。ここで、第2電極18は伝熱媒体14と導通しているため、伝熱媒体14には、第2電極18と同じ電圧が印加される。その結果、第1電極17および伝熱媒体14には異なる電圧が印加され、第1電極17と伝熱媒体14との間にある誘電体16は分極し、誘電体16の静電エネルギーが増加する。すなわち、誘電体16を介して第1電極17と伝熱媒体14とがキャパシターを形成する。これは、図3において、エレクトロウェッティングの原理を説明するために示したものと同様の構造である。
第1電極17および第2電極18に、異なる電圧を印加したことにより、伝熱媒体14の表面エネルギーが減少し、それに伴い低表面エネルギー化処理層20の表面における伝熱媒体14の表面張力が低下し、濡れ性が良くなる。このため、伝熱媒体14と低表面エネルギー化処理層20の表面との接触角度θは、90°以下となる。これにより、伝熱媒体14自体の表面張力は低下するものの、毛細管現象により、伝熱媒体14には、間隙13内を媒体収容部15から離れる方向へ進む張力が働き、伝熱媒体14は、媒体収容部15から間隙13に流出する。その結果、図5に示すように、間隙13は、伝熱媒体14により満たされる。間隙13が伝熱媒体14で満たされることによって、第1物体11と第2物体12との間は伝熱状態となる。
このように、第1実施形態の熱スイッチ10aは、エレクトロウェッティングにより伝熱媒体14が間隙13に挿入された伝熱状態と、伝熱媒体14が間隙13から取り出された断熱状態とを、電圧スイッチ19の制御により電気的に切り替えられる。
以上のように、第1実施形態の熱スイッチ10aによれば、第1電極17および第2電極18に電圧を印加することによってエレクトロウェッティング現象を発生させて、伝熱媒体14の間隙13への挿脱を制御し、二つの物体間の伝熱または断熱を切り替える。したがって、むやみに電気的エネルギー等を消費することなく、効率よく熱の伝達を制御できる。
また、熱スイッチ10aは、伝熱媒体14を往復移動させることにより伝熱媒体14の挿脱を行う。したがって、コンパクトな設計が可能となり、狭いスペースにも熱スイッチを導入できる。
また、熱スイッチ10aの誘電体16は、電圧が印加されていない状態において伝熱媒体14よりも表面エネルギーが低くなるように、低表面エネルギー化処理層20が設けられている。したがって、電圧が印加されていない状態において、伝熱媒体14は、誘電体16が設けられた間隙13から容易に取り出される。その結果、間隙13には伝熱媒体14の替わりに空気等が充填され、容易に断熱を行うことができる。
また、熱スイッチ10aは、エレクトロウェッティング現象により、伝熱媒体14を狭隘な通路である間隙13に挿入するため、伝熱媒体14が、間隙13内の全体に容易に充填される。これにより、間隙13に挿入された伝熱媒体14は、間隙13を形成する第1物体11および第2物体12の界面全体に接する。その結果、熱スイッチ10aは、ローレンツ力や磁力によって伝熱媒体を変形させる従来の熱スイッチに比べて、熱スイッチの伝熱状態における熱抵抗を小さくできる。さらに、熱スイッチ10aは、間隙13の幅を狭くできるので、熱スイッチの伝熱状態における熱抵抗をより小さくできる。
また、熱スイッチ10aは、間隙13を形成する第1物体11の界面に誘電体16と第1電極17とを設け、第1電極17および伝熱媒体14に電圧を印加するだけで実現できる。したがって、熱スイッチ10aは、ローレンツ力や磁力によって伝熱媒体を変形させる従来の熱スイッチにおいて必要となる磁場や電流を発生させる装置が不要であり、コンパクトな装置を実現できる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の熱スイッチについて説明する。なお、第1実施形態の熱スイッチと同様の構成については、同じ参照番号を付し、その説明を省略する。
第1実施形態では、第1物体11と間隙13との界面に誘電体16を設け、電圧を印加したときに、媒体収容部15に収容された伝熱媒体14を間隙13に挿入する。しかし、誘電体16を間隙13の外部に設け、電圧を印加したときに、間隙13から伝熱媒体14を取り出すようにしてもよい。第2実施形態では、誘電体16を第1物体11と間隙13との界面を含む平曲面に設ける場合について説明する。
図6は、第2実施形態に係る熱スイッチの概略構成を示す図である。図6において、(A)は第2実施形態に係る熱スイッチの概略構成を示し、(B)は(A)に示す熱スイッチの伝熱媒体と接する面における表面エネルギーレベルを示す。
図6(A)に示すように、熱スイッチ10bは、熱の伝達の対象である第1物体11および第2物体12の間の間隙13に挿脱される液体金属等の伝熱媒体14を有する。熱スイッチ10bは、伝熱媒体14が間隙13に挿入された状態では、対向する第1物体11および第2物体12間において熱を伝達させ、伝熱媒体14が間隙13に挿入されていない状態では、第1物体11および第2物体12間において熱の伝達を遮断する。
熱スイッチ10bは、さらに、流路13a、13b、誘電体16a、16b、第1電極17a、17b、第2電極18a、18b、電圧スイッチ19a、19bおよび電源Va、Vbを有する。流路13a、13bは、それぞれ間隙13の両端に連続し、間隙13と第1物体11および第2物体12との界面に連続する平曲面を形成する。流路13aおよび13bは、それぞれの壁面に、誘電体16aおよび16bを有する。誘電体16aおよび16bは、流路13aおよび13bの壁面を形成する面の反対側に、第1電極17aおよび17bを有する。第2電極18aおよび18bは、伝熱媒体14と電気的に導通可能に設けられる。電源Vaは、第1電極17aおよび第2電極18aに電圧を印加し、電源Vbは、第1電極17bおよび第2電極18bに電圧を印加する。電圧スイッチ19aおよび19bは、制御部として、それぞれ電源VaおよびVbの電圧の印加を制御する。
ここで、第1電極17a、17bは、誘電体16a、16bにより、伝熱媒体14とは電気的に絶縁されている。一方、第2電極18a、18bは、伝熱媒体14と電気的に導通している。したがって、たとえば、電圧スイッチ19aをONにして、第1電極17aおよび第2電極18aに電圧を印加した場合、第1電極17aと、第2電極18aと導通する伝熱媒体14とは、その間にある誘電体16aを介してキャパシターを形成する。一方、電圧スイッチ19bをONにして、第1電極17bおよび第2電極18bに電圧を印加した場合、第1電極17bと、第2電極18bと導通する伝熱媒体14とは、その間にある誘電体16bを介してキャパシターを形成する。
間隙13は、第1電極17aおよび第2電極18a、または、第1電極17bおよび第2電極18bのいずれにも電圧が印加されていない状態において、伝熱媒体14を収容する。
第1物体11および第2物体12と間隙13との界面は、たとえば、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属膜(不図示)を形成することにより、親液性となっている。一方、誘電体16a、16bは、第1実施形態の誘電体16と同様に、表面が撥液性となっている。これにより、伝熱媒体14は、電圧を印加していない状態では、間隙13に容易に収容される。
次に、このように構成された熱スイッチ10bの作用を説明する。
図7および図8は、第2実施形態に係る熱スイッチの動作を説明するための図である。図7および図8において、(A)は、第2実施形態に係る熱スイッチが動作する様子を示し、(B)は(A)に示す熱スイッチの伝熱媒体と接する面における表面エネルギーレベルを示す。
まず、図6(A)に示すように、電圧スイッチ19aおよび19bがOFFの場合、伝熱媒体14は、流路13aおよび13bには移動せず、間隙13に収容される。この伝熱媒体14で満たされた間隙13によって、第1物体11と第2物体12との間は伝熱状態となる。
このとき、図6(B)に示すように、第1物体11および第2物体12の間隙13との界面における表面エネルギーは、流路13aおよび13bの壁面を形成する誘電体16aおよび16bの表面における表面エネルギーよりも高くなっている。
続いて、図6(A)に示す状態から、電圧スイッチ19aをONにすると、図7(A)に示すように、電源Vにより、第1電極17aおよび第2電極18aには、異なる電圧が印加される。ここで、第2電極18aは伝熱媒体14と導通しているため、伝熱媒体14には、第2電極18aと同じ電圧が印加される。その結果、第1電極17aおよび伝熱媒体14には異なる電圧が印加され、第1電極17aと伝熱媒体14との間にある誘電体16aは分極し、誘電体16aの静電エネルギーが増加する。すなわち、誘電体16aを介して第1電極17aと伝熱媒体14とがキャパシターを形成する。これにより、第1実施形態における伝熱媒体14の動作と同様に、エレクトロウェッティング現象により、伝熱媒体14は、間隙13から流路13aに移動する。その結果、図7(A)に示すように、流路13aは、伝熱媒体14により満たされ、間隙13は、空気により満たされる。間隙13が空気で満たされることによって、第1物体11と第2物体12との間は断熱状態となる。
このとき、図7(B)に示すように、流路13aの壁面を形成する誘電体16aの表面における表面エネルギーは、第1物体11および第2物体12の間隙13との界面における表面エネルギーよりも高くなっている。
続いて、図7(A)に示す状態から、電圧スイッチ19aをOFFにすると、誘電体16aの表面は、伝熱媒体14に対して撥液性となる。その結果、伝熱媒体14は、流路13aから間隙13に移動し、図6(A)に示す状態に戻る。
一方、図6(A)に示す状態から、電圧スイッチ19bをONにすると、図8(A)に示すように、電源Vbにより、第1電極17bおよび第2電極18bには、異なる電圧が印加される。その結果、上記と同様に、エレクトロウェッティング現象により、伝熱媒体14は、間隙13から流路13bに移動する。その結果、図8(A)に示すように、流路13bは、伝熱媒体14により満たされ、間隙13は、空気により満たされる。間隙13が空気で満たされることによって、第1物体11と第2物体12との間は断熱状態となる。
このとき、図8(B)に示すように、流路13bの壁面を形成する誘電体16bの表面における表面エネルギーは、第1物体11および第2物体12の間隙13との界面における表面エネルギーよりも高くなっている。
続いて、図8(A)に示す状態から、電圧スイッチ19bをOFFにすると、誘電体16bの表面は、伝熱媒体14に対して撥液性となる。その結果、伝熱媒体14は、流路13bから間隙13に移動し、図6(A)に示す状態に戻る。
このように、第2実施形態の熱スイッチ10bは、エレクトロウェッティングにより伝熱媒体14が間隙13に挿入された伝熱状態と、伝熱媒体14が間隙13から取り出された断熱状態とを、電圧スイッチ19aおよび19bの制御により電気的に切り替えられる。
以上のように、第2実施形態の熱スイッチ10bによれば、第1電極17a、17bおよび第2電極18a、18bに交互に電圧を印加することによって、伝熱媒体14の間隙13への挿脱を制御し、二つの物体間の伝熱または断熱を切り替える。したがって、伝熱媒体14が二つの物体間の間隙を通過するため、伝熱媒体の移動方向において均一に二物体間の断熱および伝熱を行うことができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の熱スイッチについて説明する。なお、第1または第2実施形態の熱スイッチと同様の構成については、同じ参照番号を付し、その説明を省略する。
第1実施形態では、伝熱媒体14を収容する媒体収容部15を設け、伝熱媒体14を、間隙13と媒体収容部15との間で往復させる。しかし、媒体収容部15を設けず、伝熱媒体14が常に間隙13内に位置するようにしてもよい。第2実施形態では、伝熱媒体14を収容する媒体収容部15を設けず、伝熱媒体14を間隙13内において一方向に移動させる場合について説明する。
図9は、第3実施形態に係る熱スイッチの概略構成を示す図である。図9において、(A)〜(C)は、それぞれ異なる電圧スイッチをONにした状態を示す。
図9(A)に示すように、熱スイッチ10cは、熱の伝達の対象である第1物体11および第2物体12の間の間隙13内を移動する液体金属等の伝熱媒体14を有する。熱スイッチ10cは、伝熱媒体14が位置する部分では、対向する第1物体11および第2物体12間において熱を伝達させ、伝熱媒体14が位置しない部分では、第1物体11および第2物体12間において熱の伝達を遮断する。
熱スイッチ10cは、さらに、誘電体16c、16d、16e、16f、第1電極17c、17d、17e、17f、第2電極18c、18d、18e、18f、電源Vc、Vd、Ve、Vfおよび電圧スイッチ19c、19d、19e、19fを有する。誘電体16c、16d、16e、16fは、第1物体11と間隙13との界面に、間欠的に設けられる。第1電極17c、17d、17e、17fは、それぞれ誘電体16c、16d、16e、16fと第1物体11との間に設けられる。第2電極18c、18d、18e、18fは、それぞれ第1電極17c、17d、17e、17fに対応して、間隙13内の伝熱媒体14と電気的に導通可能に設けられる。第1電極17c〜17fと第2電極18c〜18fとは、交互に並ぶように配置し、第1電極17c〜17fと第2電極18c〜18fとがそれぞれ対をなすように接続する。また、電源Vc、Vd、Ve、Vfは、第1電極17c〜17fおよび第2電極18c〜18fにそれぞれ電圧を印加する。電圧スイッチ19c、19d、19e、19fは、制御部として、それぞれ電源Vc、Vd、Ve、Vfによる電圧の印加を制御する。
ここで、第1電極17c〜17fは、誘電体16c〜16fおよび第1物体11等により、伝熱媒体14とは電気的に絶縁されている。一方、第2電極18c〜18fは、伝熱媒体14が、間隙13内において第2電極18c〜18f上に位置するときは、伝熱媒体14と電気的に導通可能である。
次に、このように構成された熱スイッチ10cの作用を説明する。
まず、図9(A)に示すように、伝熱媒体14が誘電体16dおよび第2電極18d上に位置する場合を考える。ここで、電圧スイッチ19dがONになっているため、第1電極17dと、第2電極18dと導通する伝熱媒体14とは、その間にある誘電体16dを介してキャパシターを形成する。したがって、伝熱媒体14は、誘電体16dの表面におけるエレクトロウェッティング現象により、間隙13内を図中の矢印方向へ移動する。
続いて、伝熱媒体14は、図9(B)に示すように、誘電体16eおよび第2電極18e上まで移動する。ここで、電圧スイッチ19eがONになっているため、第1電極17eと、第2電極18eと導通する伝熱媒体14とは、その間にある誘電体16eを介してキャパシターを形成する。したがって、伝熱媒体14は、誘電体16eの表面におけるエレクトロウェッティング現象により、間隙13内を図中の矢印方向へさらに移動する。
続いて、伝熱媒体14は、図9(C)に示すように、誘電体16fおよび第2電極18f上まで移動する。ここで、電圧スイッチ19fがONであるため、第1電極17fと、第2電極18fと導通する伝熱媒体14とは、その間にある誘電体16fを介してキャパシターを形成する。したがって、伝熱媒体14は、誘電体16fの表面におけるエレクトロウェッティング現象により、間隙13内を図中の矢印方向へさらに移動する。
このように、第3実施形態の熱スイッチ10cは、エレクトロウェッティングにより伝熱媒体14を間隙13内において一方向に移動させる。
以上のように、第3実施形態の熱スイッチ10cによれば、電圧スイッチ19c〜19fを順次制御することによって、伝熱媒体14を間隙13内において一方向に移動させる。したがって、伝熱媒体14をより小さい駆動力によって移動させることができる。たとえば、間隙13を円周状等の閉路とすることにより、伝熱媒体14を連続的にスムーズに移動させることができる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の熱スイッチについて説明する。なお、第1〜第3実施形態の熱スイッチと同様の構成については、同じ参照番号を付し、その説明を省略する。
第3実施形態では、複数の第1電極と複数の第2電極とを交互に並ぶように配置し、第1電極と第2電極とをそれぞれ対となるように接続する。しかし、第1電極および第2電極の配置パターンはこれに限定されない。第4実施形態では、二つの第1電極を、当該二つの第1電極の間に設けられた一つの第2電極に接続する場合について説明する。
図10は、第4実施形態に係る熱スイッチの概略構成を示す図である。
図10に示すように、熱スイッチ10dは、熱の伝達の対象である第1物体11および第2物体12の間の間隙13内を移動する液体金属等の伝熱媒体14を有する。熱スイッチ10dは、伝熱媒体14が位置する部分では、対向する第1物体11および第2物体12間において熱を伝達させ、伝熱媒体14が位置しない部分では、第1物体11および第2物体12間において熱の伝達を遮断する。
熱スイッチ10dは、さらに、誘電体16g、16h、第1電極17g、17h、第2電極18g、電源Vg、Vhおよび電圧スイッチ19g、19hを有する。誘電体16gおよび16hは、それぞれ第1物体11と間隙13との界面に設けられる。第1電極17gおよび17hは、それぞれ誘電体16gおよび16hと第1物体11との間に設けられる。第2電極18gは、第1電極17gおよび17hの間に配置され、間隙13内の伝熱媒体14と電気的に導通可能に設けられる。第2電極18gは、第1電極17gおよび17hと電気的に接続される。電源Vgは、第1電極17gおよび第2電極18gに電圧を印加する。電源Vhは、第1電極17hおよび第2電極18gに電圧を印加する。電圧スイッチ19gおよび19hは、制御部として、それぞれ電源VgおよびVhの電圧の印加を制御する。
ここで、第1電極17g、17hは、誘電体16g、16hおよび第1物体11等により、伝熱媒体14とは電気的に絶縁されている。一方、第2電極18gは、伝熱媒体14が、間隙13内において第2電極18g上に位置するときは、伝熱媒体14と電気的に導通可能である。
次に、このように構成された熱スイッチ10dの作用を説明する。
図10に示すように、伝熱媒体14は、誘電体16hおよび第2電極18g上に位置している。ここで、電圧スイッチ19hがONになっているため、第1電極17hと、第2電極18gと導通する伝熱媒体14とは、その間にある誘電体16hを介してキャパシターを形成する。したがって、伝熱媒体14は、誘電体16hの表面におけるエレクトロウェッティング現象により、間隙13内を図中の矢印方向へ移動する。図10に示す状態で、たとえば、電圧スイッチ19hをOFFにして、電圧スイッチ19gをONにすると、第1電極17gと、伝熱媒体14とが誘電体16gを介してキャパシターを形成する。したがって、伝熱媒体14は、誘電体16gの表面におけるエレクトロウェッティング現象により、間隙13内を図中の矢印とは反対の方向に移動する。
このように、第4実施形態の熱スイッチ10dによれば、エレクトロウェッティングにより、伝熱媒体14を間隙13内において任意の方向に移動できる。したがって、二つの物体間の任意の箇所において伝熱および断熱を制御できる。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態の熱スイッチについて説明する。なお、第1〜第4実施形態の熱スイッチと同様の構成については、同じ参照番号を付し、その説明を省略する。
第4実施形態では、第1物体11と間隙13との界面に、誘電体16gおよび16hを設けている。しかし、誘電体を間隙13の両側に設けてもよい。第5実施形態では、第4実施形態と同様の構成に加え、第1物体11と間隙13との界面にも誘電体を設ける場合について説明する。
図11は、第5実施形態に係る熱スイッチの概略構成を示す図である。
図11に示すように、熱スイッチ10eは、熱の伝達の対象である第1物体11および第2物体12の間の間隙13内を移動する液体金属等の伝熱媒体14を有する。熱スイッチ10eは、伝熱媒体14が位置する部分では、対向する第1物体11および第2物体12間において熱を伝達させ、伝熱媒体14が位置しない部分では、第1物体11および第2物体12間において熱の伝達を遮断する。
熱スイッチ10eは、第4実施形態の熱スイッチ10dと同様の構成に加えて、さらに、誘電体16i、16j、第1電極17i、17j、第2電極18i、電源Vi、Vj、および電圧スイッチ19i、19jを有する。誘電体16iおよび16jは、第2物体12と間隙13との界面に設けられる。第1電極17iおよび17jは、それぞれ誘電体16iおよび16jと第2物体12との間に設けられる。第2電極18iは、第1電極17iおよび17jの間に配置され、間隙13内の伝熱媒体14と電気的に導通可能に設けられる。第2電極18iは、第1電極17iおよび17jと電気的に接続される。電源Viは、第1電極17iおよび第2電極18iに電圧を印加する。電源Vjは、第1電極17jおよび第2電極18iに電圧を印加する。電圧スイッチ19iおよび19jは、制御部として、それぞれ電源ViおよびVjの電圧の印加を制御する。
ここで、第1電極17i、17jは、誘電体16i、16jおよび第1物体12等により、伝熱媒体14とは電気的に絶縁されている。一方、第2電極18iは、伝熱媒体14が、間隙13内において第2電極18i上に位置するときは、伝熱媒体14と電気的に導通可能である。
次に、このように構成された熱スイッチ10eの作用を説明する。
図11に示すように、伝熱媒体14は、誘電体16hおよび第2電極18g上、かつ、誘電体16jおよび第2電極18i上に位置している。ここで、電圧スイッチ19hがONになっているため、第4実施形態と同様に、第1電極17hと、第2電極18gと導通する伝熱媒体14とは、その間にある誘電体16hを介してキャパシターを形成する。また、電圧スイッチ19jがONになっているため、第1電極17jと、第2電極18iと導通する伝熱媒体14とは、その間にある誘電体16jを介してキャパシターを形成する。したがって、伝熱媒体14は、誘電体16hおよび誘電体16jの両方の表面におけるエレクトロウェッティング現象により、間隙13内を図中の矢印方向へ移動する。
このように、第6実施形態の熱スイッチ10eによれば、間隙13の両側に誘電体を設けることにより、伝熱媒体14を、間隙13内においてよりスムーズに移動させることができる。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態の熱スイッチについて説明する。なお、第1〜第5実施形態の熱スイッチと同様の構成については、同じ参照番号を付し、その説明を省略する。
第1〜第5実施形態では、第1電極は誘電体に電圧を印加し、第2電極は伝熱媒体に電圧を印加し、伝熱媒体を介して誘電体に電圧を印加する。しかし、伝熱媒体に電圧を印加せず、誘電体に異なる電圧を印加することにより、伝熱媒体に対する誘電体の表面エネルギーを制御してもよい。第6実施形態では、第1電極および第2電極を誘電体の異なる位置に接続し、異なる電圧を印加する場合について説明する。
図12は、第6実施形態に係る熱スイッチの概略構成を示す図である。
図12に示すように、熱スイッチ10fは、熱の伝達の対象である第1物体11および第2物体12の間の間隙13内を移動する液体金属等の伝熱媒体14を有する。熱スイッチ10fは、伝熱媒体14が位置する部分では、対向する第1物体11および第2物体12間において熱を伝達させ、伝熱媒体14が位置しない部分では、第1物体11および第2物体12間において熱の伝達を遮断する。
熱スイッチ10fは、さらに、誘電体16k、第1電極17k、電源Vkおよび電圧スイッチ19kを有する。誘電体16kは、第1物体11と間隙13との界面に設けられる。第1電極17kおよび第2電極18kは、それぞれ誘電体16kと第1物体11との間の異なる位置に設けられる。電源Vkは、第1電極17kおよび第2電極18kに電圧を印加する。電圧スイッチ19kは、制御部として、電源Vkの電圧の印加を制御する。
ここで、第1電極17kおよび第2電極18kは、誘電体16k等により、伝熱媒体14とは電気的に絶縁されている。また、第1電極17kと第2電極18kとは、電気的に絶縁されている。
次に、このように構成された熱スイッチ10fの作用を説明する。
図12に示すように、伝熱媒体14は、誘電体16k上に位置している。ここで、電圧スイッチ19kがONになっているため、第1電極17kおよび第2電極18kには、それぞれ異なる電圧が印加されている。したがって、誘電体16kにおいて、第1電極17kに当接する部分と第2電極18kに当接する部分とに異なる電圧が印加され、誘電体16kは分極し、誘電体16kの表面において表面エネルギーに勾配が生じる。これにより、誘電体16kの表面においてエレクトロウェッティング現象が発生し、伝熱媒体14は、間隙13内を図中の矢印方向へ移動する。
このように、第6実施形態の熱スイッチ10fによれば、伝熱媒体14に電圧を印加することなく、第1電極17kおよび第2電極18kを介して誘電体16に電圧を印加することにより、伝熱媒体14を間隙13内において移動できる。したがって、より少ない部材および簡単な構成により熱スイッチを実現できる。
(第7実施形態)
次に、第7実施形態の熱スイッチについて説明する。第7実施形態では、第1〜第6実施形態で示した熱スイッチをバッテリー装置に適用する場合について説明する。上述した熱スイッチを、自動車や電車等の車両のバッテリー装置に適用することにより、バッテリー装置の蓄熱および放熱を制御できる。
図13は、熱スイッチをバッテリー装置に適用した様子を示す図である。
図13に示すように、バッテリー装置100は、電池110と、熱交換器120と、電池110および熱交換器120の間の熱スイッチ10とを有する。電池110は、第1〜第6実施形態における第1物体11に相当する。電池110は、たとえば、リチウムイオン二次電池等の電池モジュールを複数積層した組電池である。熱交換器120は、第1〜第6実施形態における第2物体12に相当する。熱交換器120は、たとえば、ヒートシンクやラジエーター等である。熱スイッチ10は、第1〜第6実施形態のいずれかの熱スイッチであり、対向する電池110と熱交換機120との間の間隙13に挿脱される伝熱媒体14を有する。熱スイッチ10の誘電体、第1電極、第2電極、電源および電圧スイッチ等の他の構成は、各実施形態の熱スイッチと同様であり、図示は省略する。
熱スイッチ10を制御して伝熱状態にした場合、電池110が保持する熱は、熱スイッチ10を介して熱交換器120に伝達される。これにより、熱スイッチ10は、電池110の温度を下げたり、温度の上昇を抑止したりすることができる。一方、熱スイッチ10を制御して断熱状態にした場合、電池110が保持する熱は、熱スイッチ10によって、熱交換器120へ伝達されなくなる。これにより、熱スイッチ10は、電池110の温度を上昇させたり、温度の低下を抑止したりすることができる。
(誘電体の表面構造)
上記の第1〜第7実施形態においては、誘電体の表面には低表面エネルギー化処理層20を形成するものとして説明したが、これに限定されない。誘電体の表面は他の方法により形成されてもよい。以下では、誘電体の表面構造の変形例について説明する。
図14は、誘電体表面の構成パターンを示す図である。図14において、(A)は多孔質構造を有する誘電体を用いるパターンを示し、(B)は潤滑物質を含有する多孔質構造を有する誘電体を用いるパターンを示す。
図14(A)に示すパターンにおいて、誘電体16は、間隙13側の表面に多孔質構造を有している。これにより、誘電体16の表面は、電圧を印加していない状態で、伝熱媒体14に対して撥液性を有する。誘電体16の材料としては、伝熱媒体14との親和性がないものであれば特に限定されないが、たとえば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)多孔質膜であるポアフロンメンブレン(商標:住友電工ファインポリマー株式会社)が好ましい。
このように、誘電体16が多孔質構造を有することにより、低表面エネルギー化処理層20を設けなくても誘電体16の表面が撥液性を有する。したがって、より簡単な構成により熱スイッチを実現でき、製造工程も削減できる。
図14(B)に示すパターンにおいて、誘電体16は、間隙13側の表面に潤滑物質21を含有する多孔質構造(SLIPS:Slippery Liquid−Infused Porous Surfaces))を有している。これにより、誘電体16の表面は、電圧を印加していない状態で、伝熱媒体14に対してより強い撥液性を有する。誘電体16の材料としては、伝熱媒体14との親和性がないものであれば特に限定されないが、たとえば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)多孔質膜であるポアフロンメンブレン(住友電工ファインポリマー株式会社製)が好ましい。また、潤滑物質21の材料としては、伝熱媒体14との親和性がないものであれば特に限定されないが、たとえば、オプツールシリーズ(ダイキン工業株式会社製)が好ましい。
このように、誘電体16が潤滑物質21を含有する多孔質構造を有することにより、誘電体16の表面は伝熱媒体14に対してより強い撥液性を有する。これにより、伝熱媒体14の移動をよりスムーズに行うことができ、熱スイッチの応答性能を高めることができる。
なお、上記の実施形態において、誘電体16の表面は撥液性を有するものとして説明した。しかし、伝熱媒体14は液体に限定されない。伝熱媒体14は、たとえば、ゲル状の材料により形成されてもよい。この場合、誘電体16の表面は、ゲル状の伝熱媒体14とは親和性のない材料により形成される。
(第8実施形態)
第1〜第7実施形態に係る熱スイッチは、物体間において伝熱するか、あるいは断熱するかの二つの状態を切り替える。したがって、第1〜第7実施形態の熱スイッチにおいては、伝熱または断熱する際の熱伝導率を任意に変更することはできない。しかし、熱スイッチは、熱伝導率を任意に変更できるようにしてもよい。第8実施形態では、熱スイッチにおいて伝熱媒体を連続して挿脱する際に、挿脱のデューティ比を変更することによって、二つの物体間の伝熱または断熱における熱伝導率を制御する場合について説明する。
図15は、第8実施形態に係る熱スイッチの概略構成を示す図である。図15において、(A)は熱スイッチの概略断面図を示し、(B)は(A)のI−I線に沿った概略断面図を示す。図16は、図15に示す熱スイッチにおいて伝熱媒体が挿入された様子を示す図である。図16において、(A)は熱スイッチの概略断面図を示し、(B)は(A)のII−II線に沿った概略断面図を示す。図17は、第8実施形態に係る熱スイッチの動作概要を説明するための図である。図17において、(A)は伝熱媒体を挿脱する際のデューティ比を変更する例を示し、(B)は伝熱媒体を挿脱する際のデューティ比と熱伝導率との関係を示す。
図15に示すように、第8実施形態の熱スイッチ10gは、第1〜第7実施形態のいずれかの熱スイッチと同様の構成を有し、対向する物体Aおよび物体B間の間隙13に挿脱される伝熱媒体14を有する。物体Aは、第1〜第7実施形態における第1物体11または電池110に相当する。物体Bは、第1〜第7実施形態における第2物体12または熱交換器120に相当する。熱スイッチ10gの誘電体、第1電極、第2電極、電源および電圧スイッチ等の他の構成は、各実施形態の熱スイッチと同様であり、図示は省略する。また、熱スイッチ10gは、制御部として、電圧スイッチ等の熱スイッチの各部の動作を制御するCPU(不図示)と、制御するためのプログラムや各種データを記憶する記憶部(不図示)とを有する。たとえば、制御部が電圧スイッチをONにするように制御し、誘電体に電圧が印加されると、図16に示すように、伝熱媒体14が間隙13に挿入される。本制御処理例の熱スイッチ10gにおいては、制御部による電圧スイッチの制御により、伝熱媒体14が連続的に挿脱される。したがって、熱スイッチ10gにおいては、図15に示す状態と、図16に示す状態とが、周期的に繰り返される。
図17(A)に示すように、熱スイッチ10gは、伝熱媒体14を連続して挿脱する際のデューティ比を変更する。図17(A)の(a)〜(d)において、「OFF」は、図15に示すように、熱スイッチ10gの間隙13に伝熱媒体14が挿入されていない状態を示す。「ON」は、図16に示すように、熱スイッチ10gの間隙13に伝熱媒体14が挿入されている状態を示す。「T」は、伝熱媒体14を連続して挿脱する際の挿脱動作の時間的な周期を示す。「τ」は、周期Tのうち、熱スイッチ10gを「ON」の状態にする期間を示す。伝熱媒体14を連続して挿脱する際のデューティ比Dは、τ/Tにより算出される。
図17(A)において、(a)は、伝熱媒体14の挿入が行われない状態を示す。このとき、期間τ=0であり、デューティ比D=0である。図17(A)の(b)および(c)は、周期Tのうち期間τの間、熱スイッチ10gが「ON」になることを示す。このとき、デューティ比D=τ/Tである。ここで、(b)よりも(c)の方が、期間τの値が大きいため、デューティ比Dの値についても、(b)よりも(c)の方が大きくなる。図17(A)の(d)は、伝熱媒体14が常に挿入されている状態を示す。このとき、期間τ=周期Tであり、デューティ比D=1である。このように、熱スイッチ10gは、周期Tに対する期間τの割合を変更することにより、デューティ比Dの値を任意に変更できる。
図17(B)において、グラフ中の点(a)〜(d)は、それぞれ図17(A)の(a)〜(d)と対応している。図17(B)に示すように、デューティ比Dの値と、熱スイッチ10gの熱伝導率λの値は相関関係にある。したがって、熱スイッチ10gは、デューティ比Dの値を変更することにより、熱伝導率λの値を変更できる。すなわち、熱スイッチ10gは、伝熱媒体14を連続的に挿脱する際の周期Tと、周期Tのうち伝熱媒体14を挿入する期間τとの比率を変更することにより、熱伝導率λを変更できる。
次に、このように構成された熱スイッチ10gの制御処理について説明する。
図18は、第8実施形態に係る熱スイッチの制御条件の一例を示す図である。図18において、(A)は熱スイッチ10gの制御処理の概要を示し、(B)は各制御パラメータの制御条件を示す。(C)は要求熱伝導率λから要求デューティ比Dを求める様子を示す。図19は、第8実施形態に係る熱スイッチの制御処理の一例を示すフローチャートである。本フローチャートに示される処理は、熱スイッチ10gの制御部が各部を制御して実行する。
まず、熱スイッチ10gの制御条件について説明する。
図18(A)に示すように、熱スイッチ10gは、物体Aと物体Bとの間に設けられている。物体Aと熱スイッチ10gとの界面における温度はTであり、物体Bと熱スイッチ10gとの界面における温度はTである。物体Aから熱スイッチ10gを介して物体Bに通過する熱流束はqである。熱スイッチ10gの熱伝導率はλであり、熱スイッチ10gの伝熱方向における厚さはtである。
図18(B)に示すように、熱流束qおよび温度Tは、外部環境等により変化する値である。熱伝導率λは、熱スイッチ10gの制御により変更可能な値である。本制御処理例において、熱スイッチ10gは、熱流束qや温度Tが変化した場合に、温度Tを一定に保つように、熱伝導率λの値を制御する。
図18(C)に示すように、熱スイッチ10gの熱伝導率λと、伝熱媒体14を間隙13に連続的に挿脱する際のデューティ比Dとは相関関係にある。熱伝導率λとデューティ比Dとの関係は、熱スイッチ10gの記憶部に、予め記憶されている。
続いて、熱スイッチ10gの制御処理の詳細について説明する。
図19に示すように、熱スイッチ10gは、目標温度TA0を取得する(ステップS101)。目標温度TA0は、温度Tを制御する際の目標値であり、熱スイッチ10gは、温度Tを目標温度TA0に近づけるように熱伝導率λを制御する。目標温度TA0は、たとえば、制御部がユーザーからの指定を事前に受け付けて、記憶部に格納する。
続いて、熱スイッチ10gは、温度Tおよび温度Tを計測する(ステップS102)。具体的には、熱スイッチ10gは、物体Aと熱スイッチ10gとの界面、および、物体B側と熱スイッチ10gとの界面に設けた温度センサー等(不図示)により、温度Tおよび温度Tを計測する。熱スイッチ10gは、計測した温度Tおよび温度Tの値を記憶部に格納する。
続いて、熱スイッチ10gは、熱流束qを計測する(ステップS103)。具体的には、熱スイッチ10gは、物体Aとの界面等に熱流計(不図示)を設けて、熱スイッチ10gを通過する熱流束qを計測する。熱スイッチ10gは、計測した熱流束qの値を記憶部に格納する。
続いて、熱スイッチ10gは、ΔT=0とするために必要となる熱伝導率である要求熱伝導率λの値を算出する(ステップS104)。ΔTは、目標温度TA0と実際の温度Tとの差分である。したがって、ΔT=0となることは、温度Tが目標温度TA0と等しくなることを意味する。したがって、熱スイッチ10gは、下記の数式1により要求熱伝導率λを算出する。
λ=qt/(TA0−T) ・・・(数式1)
続いて、熱スイッチ10gは、算出した要求熱伝導率λの値に基づいて、要求熱伝導率λを実現するために必要となるデューティ比である要求デューティ比Dの値を算出する(ステップS105)。具体的には、熱スイッチ10gは、ステップS104において算出した要求熱伝導率λの値と、予め記憶部に格納された熱伝導率λとデューティ比Dとの関係から、図18(C)に示すように、要求デューティ比Dの値を算出する。熱スイッチ10gは、算出した要求デューティ比Dの値を記憶部に格納する。
続いて、熱スイッチ10gは、ΔTの絶対値が、所定の閾値aよりも小さいか否かを判断する(ステップS106)。所定の閾値aは、熱スイッチ10gが使用される環境において、温度Tを一定に制御する際に必要とされる精度に応じて適宜設定される。
ΔTの絶対値が、所定の閾値a以上である場合(ステップS106:NO)、熱スイッチ10gは、温度Tを目標温度TA0にさらに近づけるように制御する必要があると判断し、熱伝導率λを要求熱伝導率λに変更する(ステップS107)。具体的には、熱スイッチ10gは、デューティ比Dを要求デューティ比Dに変更することにより、熱伝導率λを要求熱伝導率λに変更する。熱スイッチ10gは、再びステップS102に戻り、ステップS102〜ステップS106の処理を実行する。
ΔTの絶対値が、所定の閾値aより小さい場合(ステップS106:YES)、熱スイッチ10gは、温度Tが十分に目標温度TA0に近づいたと判断し、処理を終了する。
以上のように、第8実施形態の熱スイッチ10gによれば、伝熱媒体14を連続して挿脱する際のデューティ比Dを変更することによって、二つの物体間の伝熱または断熱における熱伝導率λを制御する。これにより、各種条件に応じて熱伝導率λを任意の値に変更できるため、熱スイッチを幅広い用途に柔軟に適用できる。
また、熱スイッチ10gは、物体Aの界面における温度Tが一定になるように、熱伝導率λを制御する。したがって、熱スイッチ10gは、物体Aとして配置された部材の熱スイッチとの界面における温度を一定に維持できる。これにより、熱スイッチ10gは、隣接する物体の温度変化を抑制しつつ、熱を移動させることができる。
また、熱スイッチ10gは、物体Bの界面における温度Tおよび熱流束qの少なくとも一方が変化した場合でも、温度Tが一定になるように、熱伝導率λを制御する。これにより、熱スイッチに接する一方の物体の界面における温度および熱スイッチを通過する熱流束の両方が変化する不安定な環境においても、他方の物体の界面における温度を一定に維持できる。
図19に示す処理では、物体Aの界面Tの温度が目標温度TA0に十分近づくと、処理を終了している。しかし、図19に示す処理を繰り返すことによって、熱スイッチ10gの一方の界面の温度を一定としつつ、継続的な伝熱を達成できる。
なお、本実施形態においては、物体Aの界面における温度Tが一定となるように制御したが、これに限定されない。たとえば、物体Bの界面における温度Tが一定となるように制御してもよい。
(熱スイッチの使用態様例1)
上記第8実施形態の熱スイッチ10gの制御処理例においては、熱流束qおよび温度Tの二つのパラメータが変化する環境において熱スイッチ10gが使用される例を説明したが、熱スイッチ10gが使用される環境はこれに限定されない。熱スイッチ10gは、適用される環境に応じて、様々な態様において使用される。以下では、使用態様例1として、熱流束qが変化し、温度Tが一定である場合について説明する。
図20は、第8実施形態に係る熱スイッチの使用態様例を示す図である。図20において、(A)は各制御パラメータの制御条件を示し、(B)は(A)の制御条件において制御が行われる様子を示す。
本使用態様例における熱スイッチ10gは、図20(A)に示すように、熱流束qが変化し、温度Tが一定に保たれるという使用条件下で、制御対象である温度Tを一定に保つように、制御要素である熱伝導率λを制御する。
本使用態様例においては、図20(B)の(a)〜(c)に示すように、熱流束qが、外部環境等により変化し、たとえば、q、q、qといった値をとりうる。ここで、q、q、qは、q<q<qの関係が成立する値である。一方、温度Tは一定である。熱スイッチ10gの熱伝導率λは、熱流束qの値に応じて、温度Tを一定に保つように、λ、λ、λの各値に制御される。λ、λ、λは、それぞれ下記の数式2〜4により算出される。
λ=qt/(T−T) ・・・(数式2)
λ=qt/(T−T) ・・・(数式3)
λ=qt/(T−T) ・・・(数式4)
本使用態様例は、たとえば、物体Aとしてバッテリーや電装部品、空調熱冷源等が配置されており、物体Bとしてヒートシンクや熱容量が大きい部材等が配置されている場合に相当する。つまり、物体Bは、物体Aからの熱流束qの熱エネルギーの変動に関わらず、温度Tが変動しない前提である。ここで、本使用態様例の熱スイッチ10gは、図19に示す制御処理により熱伝導率λの値を適切に制御することにより、熱流束qが変化する場合でも、温度Tを一定に保ちつつ、熱流束qを物体A側から物体B側へ輸送できる。これにより、熱スイッチ10gは、物体Aとして配置されたバッテリーや電装部品、空調熱冷源等の温度を一定に保つことができる。
(熱スイッチの使用態様例2)
上記の使用態様例1においては、温度Tが一定であり、熱流束qが変化する場合の例について説明した。しかし、熱スイッチ10gの使用態様例はこれに限定されない。以下では、使用態様例2として、熱流束qが一定であり、温度Tが変化する場合について説明する。
図21は、第8実施形態に係る熱スイッチの他の使用態様例を示す図である。図21において、(A)は各制御パラメータの制御条件を示し、(B)は(A)の制御条件において制御が行われる様子を示す。
図21(A)に示すように、本使用態様例における熱スイッチ10gは、熱流束qが一定であり、温度Tが変化するという使用条件下で、制御対象である温度Tを一定に保つように、制御要素である熱伝導率λを制御する。
図21(B)に示すように、本使用態様例においては、温度Tが、外部環境等により変化し、たとえば、TBa、TBb、TBcといった値に変化する。一方、熱流束qは一定である。熱スイッチ10gの熱伝導率λは、温度Tの値に応じて、温度Tを一定に保つように、λ、λ、λの各値に制御される。λ、λ、λは、それぞれ下記の数式5〜7により算出される。
λ=qt/(T−TBa) ・・・(数式5)
λ=qt/(T−TBb) ・・・(数式6)
λ=qt/(T−TBc) ・・・(数式7)
本使用態様例は、たとえば、物体Aとして配置された部材が一定の熱流束qを発生し、物体Bとして配置された部材がヒートシンク等の部材ではなく、温度が変動する場合に相当する。本使用態様例の熱スイッチ10gは、図19に示す制御処理により熱伝導率λの値を適切に制御することにより、温度Tが変化する場合でも、温度Tを一定に保ちつつ、熱流束qを物体A側から物体B側へ輸送できる。これにより、熱スイッチ10gは、物体Aとして配置された部材の温度を一定に維持できる。
(熱スイッチの使用態様例3)
上記の使用態様例1および2においては、熱スイッチ10gと物体Aとの界面における温度Tを制御対象として、熱スイッチ10g内における熱伝導を考慮して熱スイッチ10gを制御する例について説明した。しかし熱スイッチ10gの使用態様例はこれに限定されない。以下では、使用態様例3として、熱スイッチ10gの両側に流体が存在し、流体の温度を制御対象とする場合について説明する。すなわち、熱スイッチ10g内における熱伝導に加え、熱スイッチ10gとその両側に存在する流体との熱伝達も考慮して熱スイッチ10gを制御する場合について説明する。
図22は、第8実施形態に係る熱スイッチのさらに他の使用態様例を示す図である。
図22に示すように、本使用態様例における熱スイッチ10gは、その両側に、物体Aおよび物体Bのかわりに、流体FAおよび流体FBが存在している。流体FAの熱スイッチ10gとの界面における温度はTAfであり、流体FBの熱スイッチ10gとの界面における温度はTBfである。流体FAと熱スイッチ10gとの熱伝達率はhであり、流体FBと熱スイッチ10gとの熱伝達率はhである。本使用態様例における熱スイッチ10gは、制御対象を温度TAfとし、温度TAfを一定に保つように、制御要素である熱伝導率λを制御する。
本使用態様例においても、図19に示す制御処理と同様の方法により、熱伝導率λの値を適切に制御することにより、温度TAfを一定に保ちつつ、熱流束qを輸送できる。以下、本使用態様例において、図19に示す制御処理と異なる部分について説明する。
本使用態様例の熱スイッチ10gは、図19のステップS101の処理において、目標温度TAf0を取得する。また、熱スイッチ10gは、ステップS102の処理において、温度TAfおよびTBfを計測する。さらに、熱スイッチ10gは、ステップS104の処理において、要求熱伝導率λの算出式を下記の数式8に置き換える。
λ=qt/((TAf0−TBf)−q/h−q/h) ・・・(数式8)
数式8は、熱スイッチ10gの熱伝導を考慮して要求熱伝導率λを算出する数式1に、熱スイッチ10gと流体FAおよび流体FB間での熱伝達を考慮するための算出式を加えたものである。数式8において、「q/h」の部分は、流体FAおよび熱スイッチ10g間の温度差、すなわち、TAf0−Tを示している。同様に、「q/h」の部分は、熱スイッチ10gおよび流体FB間の温度差、すなわち、T−TBfを示している。hおよびhの値は、たとえば、流体FAおよび流体FBの流速の計測値と、予め記憶部に記憶されたマップまたは近似式とに基づき算出される。熱スイッチ10gは、ステップS104の処理において数式8を用いることにより、熱スイッチ10g内の熱伝導に加えて熱スイッチ10gと流体FAおよび流体FBとの熱伝達も考慮して、要求熱伝導率λを算出できる。
続いて、熱スイッチ10gは、図19に示すステップS105以降の処理を行う。これにより、熱スイッチ10gは、熱伝導に加えて熱伝達を考慮して熱伝導率λの値を適切に制御し、温度TAf0を一定に維持できる。
本使用態様例は、たとえば、熱スイッチ10gの両側にラジエーター等の冷却用の液体が流れている場合や、熱スイッチ10gの両側に隙間があり空気等の流体が存在している場合等に適用できる。
(第9実施形態)
第8実施形態では、伝熱媒体14を挿脱するデューティ比Dを変更することによって熱伝導率λを制御する場合について説明した。しかし、熱伝導率λを制御する方法はこれに限定されない。熱スイッチは、伝熱媒体14を挿脱する領域の大きさを変更することによって熱伝導率λを制御してもよい。第9実施形態では、熱スイッチの間隙において伝熱媒体14が挿入される領域が占める割合を変更することによって、二つの物体間の伝熱における熱伝導率λを制御する場合について説明する。
図23は、第9実施形態に係る熱スイッチを説明するための図である。図23において、(A)は熱スイッチの概略構成および伝熱媒体を挿入する領域が占める割合を変更する例を示し、(B)は伝熱媒体を挿入する領域が占める割合Fと熱伝導率λとの関係を示す。図24は、図23のIII−III線に沿った部分断面図である。図25は、図23のIV−IV線に沿った部分断面図である。
図23(A)の(a)〜(d)に示すように、第9実施形態の熱スイッチ10hは、幅の狭い熱スイッチである熱スイッチ要素10rを幅方向に複数並べて構成される。複数の熱スイッチ要素10rのそれぞれは、第1〜第6実施形態のいずれかの熱スイッチと同様の構成を有する。各熱スイッチ要素10rの誘電体、第1電極、第2電極、電源および電圧スイッチ等の他の構成は、各実施形態の熱スイッチと同様であり、図示は省略する。
また、図24および図25に示すように、各熱スイッチ要素10rの間には、隔壁Pが設けられている。隔壁Pは、たとえば熱伝導率が低いセラミック等の材料から構成される。熱スイッチ10hは、制御部として、複数の熱スイッチ要素10rそれぞれの動作を制御するCPU(不図示)と、制御するためのプログラムや各種データを記憶する記憶部(不図示)とを有する。複数の熱スイッチ要素10rは、熱スイッチ10hの制御部により、それぞれ独立して制御される。
図23(A)の(a)〜(d)に示すように、熱スイッチ10hは、複数の熱スイッチ要素10rのうち、間隙13に伝熱媒体14が挿入される熱スイッチ要素10rの個数が占める割合を変更する。図23(A)の(a)は、全ての熱スイッチ要素10rにおいて伝熱媒体14が挿入されていないことを示す。このとき、伝熱媒体が挿入される領域が占める割合Fはゼロである。図12(A)の(b)は、複数の熱スイッチ要素10rにおいて、三つに一つの割合で伝熱媒体14が挿入されることを示す。このとき、伝熱媒体が挿入される領域が占める割合Fは1/3である。図12(A)の(c)は、複数の熱スイッチ要素10rにおいて、三つに二つの割合で伝熱媒体14が挿入されることを示す。このとき、伝熱媒体が挿入される領域が占める割合Fは2/3である。図23(A)の(d)は、全ての熱スイッチ要素10rにおいて伝熱媒体14が挿入されることを示す。このとき、伝熱媒体が挿入される領域が占める割合Fは1である。このように、熱スイッチ10hは、複数の熱スイッチ要素10rのうち、間隙13に伝熱媒体14が挿入される熱スイッチ要素10rの個数が占める割合を変更することにより、伝熱媒体が挿入される領域が占める割合Fを任意に変更できる。
図23(B)において、グラフ中の点(a)〜(d)は、それぞれ図23(A)の(a)〜(d)と対応している。図23(B)に示すように、伝熱媒体が挿入される領域が占める割合Fと、熱スイッチ10hの熱伝導率λの値は相関関係にある。したがって、熱スイッチ10hは、伝熱媒体が挿入される領域が占める割合Fの値を変更することにより、熱伝導率λの値を変更できる。すなわち、熱スイッチ10hは、複数の熱スイッチ要素10rのうち、間隙13に伝熱媒体14が挿入される熱スイッチ要素10rの個数が占める割合を変更することにより、熱伝導率λを変更できる。
次に、このように構成される熱スイッチ10hの制御処理について説明する。
図26は、第9実施形態に係る熱スイッチの制御条件の一例を示す図である。図26において、(A)は熱スイッチ10hの制御処理の概要を示し、(B)は各制御パラメータの制御条件を示す。(C)は要求熱伝導率λから要求割合Fを求める様子を示す。図27は、第9実施形態に係る熱スイッチの制御処理の一例を示すフローチャートである。本フローチャートに示される処理は、熱スイッチ10hの制御部が各部を制御して実行する。
まず、熱スイッチ10hの制御条件について説明する。
図26(A)に示す熱スイッチ10hの制御処理の概要は、図18(A)に示す熱スイッチ10gの制御処理の概要と同様であるため、その説明を省略する。
図26(B)に示す熱スイッチ10hの各制御パラメータの制御条件は、図18(B)に示す各制御パラメータの制御条件と同様であるため、その説明を省略する。
図26(C)に示すように、熱スイッチ10hの熱伝導率λと、熱スイッチ10hの間隙において伝熱媒体14が挿入される領域が占める割合Fとは相関関係にある。熱伝導率λと伝熱媒体14が挿入される領域が占める割合Fとの関係は、熱スイッチ10hの記憶部に、予め記憶されている。
続いて、熱スイッチ10hの制御処理の詳細について説明する。なお、図27のステップS205およびステップS207以外の処理は、図19に示す処理と同様であるため、適宜その説明を省略する。
図27は、第9実施形態に係る熱スイッチの制御処理の一例を示すフローチャートである。本フローチャートに示される処理は、熱スイッチ10hの制御部が各部を制御して実行する。なお、図27のステップS205およびステップS207以外の処理は、図19に示される処理と同様であるため、適宜その説明を省略する。
図27に示すように、熱スイッチ10hは、目標温度TA0を取得する(ステップS201)。
続いて、熱スイッチ10hは、温度Tおよび温度Tを計測する(ステップS202)。
続いて、熱スイッチ10hは、熱流束qを計測する(ステップS203)。
続いて、熱スイッチ10hは、ΔT=0とするために必要となる熱伝導率である要求熱伝導率λの値を、数式λ=qt/(TA0−T)に基づいて算出する(ステップS204)。
続いて、熱スイッチ10hは、算出した要求熱伝導率λの値に基づいて、要求熱伝導率λを実現するために必要となる、伝熱媒体が挿入される領域が占める割合である要求割合Fの値を算出する(ステップS205)。具体的には、熱スイッチ10hは、ステップS204において算出した要求熱伝導率λの値と、予め記憶部に格納された熱伝導率λと伝熱媒体が挿入される領域が占める割合Fとの関係から、要求割合Fの値を算出する。熱スイッチ10hは、算出した要求割合Fの値を記憶部に格納する。
続いて、熱スイッチ10hは、ΔTの絶対値が、所定の閾値aよりも小さいか否かを判断する(ステップS206)。
ΔTの絶対値が、所定の閾値a以上である場合(ステップS206:NO)、熱スイッチ10hは、温度Tを目標温度TA0にさらに近づけるように制御する必要があると判断し、熱伝導率λを要求熱伝導率λに変更する(ステップS207)。具体的には、熱スイッチ10hは、伝熱媒体が挿入される領域が占める割合Fを要求割合Fに変更することにより、熱伝導率λを要求熱伝導率λに変更する。熱スイッチ10hは、再びステップS202に戻り、ステップS202〜ステップS206の処理を実行する。
ΔTの絶対値が、所定の閾値aより小さい場合(ステップS206:YES)、熱スイッチ10hは、温度Tが十分に目標温度TA0に近づいたと判断し、処理を終了する。
以上のように、第9実施形態の熱スイッチ10hによれば、間隙13において伝熱媒体14が挿入される領域が占める割合を変更することによって、二つの物体間の伝熱または断熱における熱伝導率λを制御する。これにより、各種条件に応じて熱伝導率λを任意の値に変更できるため、熱スイッチを幅広い用途に柔軟に適用できる。また、複数の熱スイッチ要素を並べるという簡単な構成により熱伝導率λの制御を実現でき、熱スイッチの活用が容易となる。
なお、第9実施形態においても、第8実施形態の使用態様例1〜3と同様に熱スイッチ10hを使用できる。
また、第9実施形態の熱スイッチ10hにおいて、第8実施形態の熱スイッチ10gのように各熱スイッチ要素10rの伝熱媒体を連続して挿脱するように構成し、挿脱のデューティ比を変更してもよい。これにより、熱スイッチの熱伝導率をより細かく制御でき、熱スイッチの制御性能を高めることができる。
(第10実施形態)
第9実施形態では、幅の狭い複数の熱スイッチ要素10rを一方向に沿って並べることにより、伝熱媒体を挿脱する領域の大きさを変更する場合について説明した。しかし、伝熱媒体を挿脱する領域の大きさを変更する方法はこれに限定されない。伝熱媒体を挿脱する領域の大きさを変更する方法としては、幅の狭い複数の熱スイッチを、互いに交差する二つ方向に沿って並べてもよい。第10実施形態では、幅の狭い複数の熱スイッチを、互いに交差する二つ方向に沿って並べて制御することにより、伝熱媒体を挿脱する領域の大きさを変更する場合について説明する。
図28は、第10実施形態に係る熱スイッチを説明するための図である。図28において、(A)は熱スイッチの概略構成および伝熱媒体を挿入する領域が占める割合を変更する例を示し、(B)は伝熱媒体を挿入する領域が占める割合Fと熱伝導率λとの関係を示す。なお、第9実施形態の熱スイッチ10hと同様の構成については、その説明を省略する。
図28(A)の(a)〜(d)に示すように、第10実施形態の熱スイッチ10iは、幅の狭い熱スイッチである熱スイッチ要素10sを、互いに交差する二つの方向に沿って複数並べて構成される。複数の熱スイッチ要素10sのそれぞれは、第1〜第6実施形態のいずれかの熱スイッチと同様の構成を有する。各熱スイッチ要素10sの誘電体、第1電極、第2電極、電源および電圧スイッチ等の他の構成は、各実施形態の熱スイッチと同様であり、図示は省略する。
図28(A)の(a)〜(d)に示すように、熱スイッチ10iは、複数の熱スイッチ要素10sのうち、間隙13に伝熱媒体14が挿入される熱スイッチ要素10sの個数が占める割合を変更する。これにより、熱スイッチ10iは、伝熱媒体が挿入される領域が占める割合Fを任意に変更できる。
図28(B)において、グラフ中の点(a)〜(d)は、それぞれ図28(A)の(a)〜(d)と対応している。図28(B)に示すように、伝熱媒体が挿入される領域が占める割合Fと、熱スイッチ10iの熱伝導率λの値は相関関係にある。したがって、熱スイッチ10iは、伝熱媒体が挿入される領域が占める割合Fの値を変更することにより、熱伝導率λの値を変更できる。すなわち、熱スイッチ10iは、複数の熱スイッチ要素10sのうち、間隙13に伝熱媒体14が挿入される熱スイッチ要素10sの個数が占める割合を変更することにより、熱伝導率λを変更できる。
第9実施形態の熱スイッチ10iの制御処理については、第8実施形態の熱スイッチ10hの制御処理と同様であるため、その説明を省略する。
なお、第10実施形態においても、第8実施形態の使用態様例1〜3と同様に熱スイッチ10iを使用できる。
また、第10実施形態の熱スイッチ10iにおいて、第8実施形態の熱スイッチ10gのように、各熱スイッチ要素10sの伝熱媒体を連続して挿脱するように構成し、挿脱のデューティ比を変更してもよい。これにより、熱スイッチの熱伝導率をより細かく制御でき、熱スイッチの制御性能を高めることができる。
また、第10実施形態においては、伝熱媒体14が挿入される熱スイッチ要素10sが偏りなく均等に分散するように制御される。すなわち、熱スイッチの伝熱を行う面内の各位置において熱伝導率が均等になるように制御される。しかし、熱伝導率の制御方法はこれに限定されない。熱スイッチは、伝熱媒体14が挿入される熱スイッチ要素10sの分布に偏りをもたせるように制御してもよい。これにより、熱スイッチの伝熱を行う面内の各位置において熱伝導率が任意に制御され、所望の熱伝導率分布が実現される。以下では、伝熱媒体14が挿入される熱スイッチ要素10sの分布に偏りをもたせるように制御する変形例について説明する。
図29は、第10実施形態の変形例に係る熱スイッチを説明するための図である。図29において、(A)は伝熱媒体14が挿入される熱スイッチ要素10sの分布に偏りをもたせる例を示し、(B)は(A)の場合における熱伝導率の分布を示す。
図29(A)に示すように、熱スイッチ10iにおいては、伝熱媒体14が挿入される熱スイッチ要素10sの分布に偏りが生じるように、各熱スイッチ要素10sにおける伝熱媒体14の挿脱が制御されている。具体的には、熱スイッチ10iの端部では、伝熱媒体14が挿入されている熱スイッチ要素10sの割合は少なく、熱スイッチ10iの中心部では、伝熱媒体14が挿入されている熱スイッチ要素10sの割合は多くなっている。これにより、図29(B)に示すように、熱スイッチの伝熱を行う面内の位置によって熱伝導率の値は、λ、λ、λと異なっており、各値はλ<λ<λという関係が成立する。これは、図29の例において、熱スイッチ10iの端部は伝熱媒体14が挿入される熱スイッチ要素10sの割合が少なく、熱スイッチ10iの中心部は伝熱媒体14が挿入される熱スイッチ要素10sの割合が多いためである。
このように、伝熱媒体14が挿入される熱スイッチ要素10sの分布に偏りをもたせるように各熱スイッチ要素10sを制御することにより、熱スイッチ10iの伝熱を行う面内の各位置における熱伝導率を任意に制御できる。これにより、熱スイッチをより幅広い用途に柔軟に適用できる。
10、10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i 熱スイッチ、
10r、10s 熱スイッチ要素、
11 第1物体、
12 第2物体、
13 間隙、
13a、13b 流路、
14 伝熱媒体、
15 媒体収容部、
16、16a〜16k 誘電体、
17、17a〜17k 第1電極、
18、18a〜18k 第2電極、
19、19a〜19k 電圧スイッチ、
20 低表面エネルギー化処理層、
21 潤滑物質、
100 バッテリー装置、
110 電池、
120 熱交換器。

Claims (11)

  1. 対向する二つの物体の間隙に挿脱可能に設けられる伝熱媒体と、
    前記二つの物体の界面または当該界面を含む平曲面の少なくとも一方に設けられる誘電体と、
    当該誘電体に沿って設けられた第1電極と、
    前記第1電極および前記誘電体への電圧の印加を制御する制御部と、を有し、
    前記誘電体は、前記第1電極および前記伝熱媒体を絶縁し、
    前記制御部は、前記第1電極および前記誘電体に電圧を印加することによって、エレクトロウェッティング現象を発生させて、前記伝熱媒体の挿脱を制御し、前記二つの物体間の伝熱または断熱を切り替える熱スイッチ。
  2. 前記伝熱媒体に前記第1電極とは異なる電圧を印加する第2電極をさらに有し、
    前記制御部は、前記第1電極および前記第2電極による電圧の印加を制御し、前記第1電極および前記伝熱媒体を介して前記誘電体に電圧を印加することによってエレクトロウェッティング現象を発生させる請求項1に記載の熱スイッチ。
  3. 前記伝熱媒体の挿脱は、前記伝熱媒体を前記間隙において一方向に移動させることにより行う請求項1または請求項2に記載の熱スイッチ。
  4. 前記伝熱媒体の挿脱は、前記伝熱媒体を往復移動させることにより行う請求項1または請求項2に記載の熱スイッチ。
  5. 前記制御部は、前記二つの物体のいずれか一方の物体の界面における温度が一定になるように、前記二つの物体間の伝熱または断熱における熱伝導率を制御する請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱スイッチ。
  6. 前記制御部は、前記二つの物体の他方の物体の界面における温度および前記二つの物体間を移動する熱流束の少なくとも一方が変化した場合でも、前記一方の物体の界面における温度が一定になるように、前記二つの物体間の伝熱または断熱における熱伝導率を制御する請求項5に記載の熱スイッチ。
  7. 前記制御部は、前記伝熱媒体を連続して挿脱する際に、当該挿脱のデューティ比を変更することによって、前記二つの物体間の伝熱または断熱における熱伝導率を制御する請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱スイッチ。
  8. 前記制御部は、前記間隙において前記伝熱媒体が挿入される領域が占める割合を変更することによって、前記二つの物体間の伝熱または断熱における熱伝導率を制御する請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱スイッチ。
  9. 前記誘電体は、前記制御部により電圧が印加されていない状態において前記伝熱媒体よりも表面エネルギーが低くなるように表面処理が施された請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱スイッチ。
  10. 前記誘電体は、多孔質構造である請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱スイッチ。
  11. 前記誘電体は、潤滑物質を含有する多孔質構造である請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱スイッチ。
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