JP2015086780A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関にトルクの変動を生じさせることなく、ストイキ燃焼からリーン燃焼へ燃焼モードを切り替える。【解決手段】ストイキ燃焼からリーン燃焼へ燃焼モードを切り替える条件が満たされた場合、気筒内に吸入される空気量を増大させるように内燃機関を制御するとともに、リーン燃焼を行う気筒数を所定数増やすことで内燃機関で得られるトルクの予測値を計算し、計算した予測値が目標トルクに達してからリーン燃焼を行う気筒数を実際に所定数だけ増加させることによって、リーン燃焼を行う気筒数を全気筒まで所定数ずつ順々に増加させていく。【選択図】図2
Description
本発明は、リーン燃焼とストイキ燃焼との間で燃焼モードを切り替え可能な内燃機関の制御装置に関する。
リーン燃焼とストイキ燃焼との間で燃焼モードを切り替え可能な内燃機関における空燃比の切り替えの方法として、トルク段差が発生しないように空燃比を徐々に変化させる方法が知られている。例えば、特開平09−060543号公報には、リーン燃焼による運転中に負荷が所定値を超えたとき、負荷の増大に応じて空燃比を徐々に理論空燃比に近づけていく方法が開示されている。
空燃比を徐々に変化させる方法では、空燃比を変化させている最中でも適正な燃焼状態を維持するように空燃比を設定する必要があり、そのための適合工数は大きなものとなる。しかし、適合が不十分である場合には、適正な燃焼を維持できずにトルク変動を生じさせてしまう。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、適合に大きな工数をかけずとも、内燃機関にトルクの変動を生じさせることなくストイキ燃焼からリーン燃焼へ燃焼モードを切り替えることのできる制御装置を提供することを目的とする。
上記の課題を達成するため、第1の発明に係る制御装置は、リーン燃焼とストイキ燃焼との間で燃焼モードを切り替え可能な内燃機関の制御装置であって、ストイキ燃焼からリーン燃焼へ燃焼モードを切り替える条件が満たされた場合に、気筒内に吸入される空気量を増大させるように前記内燃機関を制御する第1の手段と、前記条件が満たされた場合に、リーン燃焼を行う気筒数を所定数増やすことで前記内燃機関で得られるトルクの予測値を計算し、前記予測値が目標トルクに達してからリーン燃焼を行う気筒数を実際に前記所定数だけ増加させることによって、リーン燃焼を行う気筒数を全気筒まで前記所定数ずつ順々に増加させていく第2の手段と、を備えることを特徴とする。
第2の発明に係る制御装置は、第1の発明に係る制御装置において、前記条件が満たされた場合に、目標トルクを維持できなくなるまでは点火時期の遅角を併用することによってストイキ燃焼を全気筒で行い、ストイキ燃焼では前記目標トルクを維持できなくなってから一部の気筒をリーン燃焼に切り替える第3の手段をさらに備え、前記第2の手段は、前記第3の手段によって前記一部の気筒がストイキ燃焼からリーン燃焼へ切り替えられた後、リーン燃焼を行う気筒数を全気筒まで前記所定数ずつ順々に増加させていくように構成されていることを特徴とする。
第1の発明に係る制御装置によれば、ストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えを気筒別に行い、リーン燃焼を行う気筒数を全気筒まで所定数ずつ順々に増加させていくことにより、目標トルクを維持しながら燃焼モードをストイキ燃焼からリーン燃焼へ切り替えることができる。これによれば、連続的に空燃比を切り替える場合のような適合は不要であるので、適合が不十分なことでトルク変動が生じる事態を防ぐことができる。
第2の発明に係る制御装置によれば、第1の発明に係る制御装置で得られる効果に加え、点火時期の遅角の併用によって目標トルクを維持できる限りはストイキ燃焼が継続されるので、全気筒でリーン燃焼が行われるようになるまでに実行されるストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えの回数を減らすことができるという効果も得られる。
[実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態1について図を参照して説明する。
以下、本発明の実施の形態1について図を参照して説明する。
本実施の形態において制御対象とされる内燃機関(以下、エンジン)は、火花点火式の多気筒4サイクルレシプロエンジンである。また、このエンジンは、いわゆるリーンバーンエンジンであり、エンジンの燃焼モードとして、理論空燃比による燃焼を行うストイキモードと、理論空燃比よりもリーンな空燃比による燃焼を行うリーンモードとを選択可能に構成されている。
車両に搭載されているECU(Electrical control Unit)は、エンジンに備えられる各種のアクチュエータを操作することでエンジンの運転を制御する。ECUにより操作されるアクチュエータには、空気量を変化させるスロットルと可変バルブタイミング機構(以下、VVT)、筒内に燃料を供給するインジェクタ、筒内の混合気に点火する点火装置が含まれる。VVTは吸気バルブに対して設けられ、インジェクタは吸気ポートに設けられている。ECUはこれらのアクチュエータを操作してエンジンの運転を制御する。ECUによるエンジンの制御には、ストイキモードからリーンモードへ、或いは、リーンモードからストイキモードへの運転モードの切り替えが含まれている。
図1には、本実施の形態に係るECUのロジックがブロック図で示されている。ECUは、エンジンコントローラ100とパワートレインマネージャ200を含む。エンジンコントローラ100は、エンジンを直接制御する制御装置であって、本発明に係る制御装置に相当する。パワートレインマネージャ200は、エンジンや電子制御式自動変速機、さらにはVSCやTRC等の車両制御デバイスを含む駆動系全体を統合制御する制御装置である。エンジンコントローラ100は、パワートレインマネージャ200から受け取った信号に基づいてエンジンの運転を制御するように構成されている。エンジンコントローラ100とパワートレインマネージャ200は、いずれもソフトウェアによって実現される。詳しくは、メモリに記憶されたプログラムを読み出し、それをプロセッサによって実行することによって、エンジンコントローラ100とパワートレインマネージャ200のそれぞれの機能がECUにおいて実現される。
パワートレインマネージャ200は、将来トルクを計算してエンジンコントローラ100に送信する。将来トルクは、パワートレインマネージャ200がエンジンに対して要求するトルクのうち、エンジンに求められる応答性が高くなく、今直ぐでなくとも近い将来に実現されればよい種類のトルクである。パワートレインマネージャ200は、アクセルペダルの開度に基づいて要求トルクを計算する。
また、パワートレインマネージャ200は、直近トルクを計算してエンジンコントローラ100に送信する。直近トルクは、パワートレインマネージャ200がエンジンに対して要求するトルクのうち、将来トルクよりも緊急性或いは優先度が高くエンジンに高い応答性が求められる種類のトルク、すなわち、今直ぐに実現することが求められる種類のトルクである。直近トルクには、電子制御式自動変速機の変速制御のために要求されるトルク、トラクション制御のために要求されるトルク、横滑り防止制御のために要求されるトルク等、車両制御システムから要求されるトルクが含まれている。パワートレインマネージャ200は、実際にそのようなトルクが必要となるイベントが発生した場合のみ、実現したいトルクの大きさに応じた有効値を出力し、そのようなイベントが発生していない間は無効値、つまり、エンジンが出力しうる最大軸トルクよりも大きい値を出力する。
次に、エンジンコントローラ100の構成について説明する。エンジンコントローラ100は、大きく分けて機能部120、調停部140、実現部160から構成されている。
機能部120は、エンジンに対する種々の制御用パラメータを計算して出力する。制御用パラメータには、パワートレインマネージャ200から送信された要求値に基づいて計算されるものと、エンジンの運転状態に関する情報に基づいて機能部120の内部で計算されるものとが含まれる。具体的には、制御用パラメータとして、将来トルク、将来空燃比(将来A/F)、要求効率、第1直近トルク、第2直近トルク、リーン気筒数、及び要求空燃比(要求A/F)が算出される。このうち、将来トルクには、パワートレインマネージャ200から送信された将来トルクがそのまま用いられ、第2直近トルクには、パワートレインマネージャ200から送信された直近トルクがそのまま用いられる。要求効率は、点火時期効率の要求値であって、目標空気量の計算に使用される制御用パラメータである。MBTによる高効率の運転を要求する場合には要求効率は最大値の1にされ、触媒の暖機のための低効率の運転を要求する場合には要求効率は1より小さい値にされる。将来空燃比、第1直近トルク、リーン気筒数、及び要求空燃比は、機能部120に含まれる燃焼切替要求部122にて計算される。
燃焼切替要求部122は、第1燃焼切替判断部124と第2燃焼切替判断部130とを含んでいる。第1燃焼切替判断部124は、燃焼モードの切替えを将来トルクとエンジン回転数とに基づいて判断し、その判断結果に応じて空気量と点火時期のそれぞれに関係する制御用パラメータを計算する。空気量に関係する制御用パラメータは将来空燃比であり、点火時期に関係する制御用パラメータは第1直近トルクである。将来空燃比は、トルクの空気量への変換効率を与えるパラメータであって、目標空気量の計算に使用される。燃焼モードをストイキ燃焼からリーン燃焼へ切り替える条件が満たされた場合には、後述する要求空燃比に先行して将来空燃比が理論空燃比からリーン空燃比に切り替えられるようになっている。第1直近トルクは、燃焼モードの切り替えのための直近トルクの目標値であって、燃焼モードの切り替え時において点火時期効率の計算の切り替えに用いられる。第1直近トルクは、通常は無効値であるが、燃焼モードの切り替えの条件が満たされた場合には将来トルクと同値とされる。
第2燃焼切替判断部130は、燃焼モードの切替えを将来トルクと将来空燃比とに基づいて判断し、その判断結果に応じて燃料噴射に関係する制御用パラメータを計算する。リーン気筒数及び要求空燃比は、燃料噴射に関係する制御用パラメータである。第2燃焼切替判断部130は、リーントルク算出部132と要求空燃比算出部134とを含んでいる。リーントルク算出部132は、全N気筒のうちのn気筒でリーン燃焼を行い、残りの気筒でストイキ燃焼を行ったときのトルクを次の式にしたがって計算する。なお、次式において、n気筒リーンMBTトルクは、n気筒でリーン燃焼を行い点火時期をMBTとした場合に得られるトルクを意味し、全気筒ストイキMBTトルクは、全気筒でストイキ燃焼を行い点火時期をMBTとした場合に得られるトルクを意味し、全気筒リーンMBTトルクは、全気筒でリーン燃焼を行い点火時期をMBTとした場合に得られるトルクを意味する。リーントルク算出部132は、1気筒からN気筒(制御対象が直列4気筒エンジンである場合、N=4)まで、1気筒ずつn気筒リーンMBTトルクを計算する。
n気筒リーンMBTトルク=(N−n)÷N×全気筒ストイキMBTトルク
+n÷N×全気筒リーンMBTトルク
+n÷N×全気筒リーンMBTトルク
なお、リーン燃焼時は燃焼を維持することは容易ではなく、燃焼を維持できる点火時期は一意に決定する。よって、ほとんどの場合、MBTや遅角時のトルクを実現することは難しく、リーン燃焼時に維持できるトルクは1つであることから、リーンMBTトルクはリーントルクと置き換えることができる。
要求空燃比算出部134は、将来トルク、将来空燃比、及びリーントルク算出部132で算出された1気筒からN気筒までのn気筒リーンMBTトルクに基づいて、リーン気筒数及び要求空燃比を計算する。リーン気筒数は、リーン燃焼を行う気筒数であり、1気筒からN気筒まで1気筒ずつ設定することができる。要求空燃比は、エンジンで燃焼に供される混合気の空燃比に対する要求値であって、気筒ごとの燃料噴射量の計算に使用される。要求空燃比には、ストイキ燃焼のための理論空燃比とリーン燃焼のためのリーン空燃比とが含まれ、それら2つの空燃比の間で要求空燃比の切り替えが行われる。要求空燃比の切り替えは気筒ごとに行われる。
要求空燃比算出部134で行われる処理の内容と燃焼モードの切り替えとの関係について図2及び図3を用いて詳しく説明する。図2は、要求空燃比算出部134により実行されるリーン気筒数判定処理のルーチンを示すフローチャートである。このルーチンの最初のステップであるステップS101では、要求空燃比算出部134は、将来空燃比が理論空燃比からリーン空燃比に切り替えられたかどうか判定する。この切り替えが行われた場合、ステップS102の処理を行う。ステップS102では、ストイキモードからリーンモードへの切り替え中であることを示すモード切替中フラグをオフからオンに切り替える。ステップS103では、モード切替中フラグがオンかどうか判定する。モード切替中フラグがオンになっていないのであれば、その後のステップをスキップして本ルーチンを終了する。一方、モード切替中フラグがオンになっているのであれば、次のステップの処理を実行する。
モード切替中フラグがオンになっている場合、要求空燃比算出部134は、ステップS104のリーン気筒数算出処理を実行する。図3は、要求空燃比算出部134により実行されるリーン気筒数算出処理のルーチンを示すフローチャートである。このルーチンの最初のステップであるステップS201では、要求空燃比算出部134は、リーントルク算出部132で算出されたn気筒リーンMBTトルク(n=1〜4)のうち、1気筒リーンMBTトルクが目標トルクに達したかどうか判定する。なお、ここでは、後述するように目標トルクは将来トルクと同値であるとする。ステップS201の判定結果が否定的である場合、要求空燃比算出部134は、リーン燃焼による運転を行う気筒数はゼロのままとし、全気筒に対する要求空燃比をストイキ空燃比に維持する。
ステップS201の判定結果が肯定的である場合、要求空燃比算出部134は、ステップS202の処理を実行する。ステップS202では、リーントルク算出部132で算出された2気筒リーンMBTトルクが目標トルクに達したかどうか判定する。ステップS202の判定結果が否定的である場合、要求空燃比算出部134は、ステップS205の処理を実行する。ステップS205では、リーン燃焼による運転を行う気筒数を1に設定する指示(1気筒リーン指示)を出すとともに、所定の1気筒に対する要求空燃比をストイキ空燃比からリーン空燃比に切り替える。
ステップS202の判定結果が肯定的である場合、要求空燃比算出部134は、ステップS203の処理を実行する。ステップS203では、リーントルク算出部132で算出された3気筒リーンMBTトルクが目標トルクに達したかどうか判定する。ステップS203の判定結果が否定的である場合、要求空燃比算出部134は、ステップS206の処理を実行する。ステップS206では、リーン燃焼による運転を行う気筒数を2に設定する指示(2気筒リーン指示)を出すとともに、所定の2気筒に対する要求空燃比をストイキ空燃比からリーン空燃比に切り替える。
ステップS203の判定結果が肯定的である場合、要求空燃比算出部134は、ステップS204の処理を実行する。ステップS204では、リーントルク算出部132で算出された全気筒リーンMBTトルクが目標トルクに達したかどうか判定する。ステップS203の判定結果が否定的である場合、要求空燃比算出部134は、ステップS207の処理を実行する。ステップS207では、リーン燃焼による運転を行う気筒数を3に設定する指示(3気筒リーン指示)を出すとともに、所定の3気筒に対する要求空燃比をストイキ空燃比からリーン空燃比に切り替える。
ステップS204の判定結果が肯定的である場合、要求空燃比算出部134は、ステップS208の処理を実行する。ステップS208では、リーン燃焼による運転を行う気筒数を4に設定する指示(全気筒リーン指示)を出すとともに、全気筒に対する要求空燃比をストイキ空燃比からリーン空燃比に切り替える。
なお、以上のルーチンでは、モードの切り替え中は1気筒ずつストイキ燃焼からリーン燃焼へ切り替えているが、2気筒ずつ切り替えるようにしてもよい。
再び図2に戻ってリーン気筒数判定処理に関する説明を続ける。ステップS105では、要求空燃比算出部134は、全気筒リーン指示を出したかどうか判定する。全気筒リーン指示を出したのであれば、ステップS106の処理を行う。ステップS106では、モード切替中フラグをオンからオフに切り替える。全気筒リーン指示を出していないのであれば、モード切替中フラグをオンに維持して本ルーチンを終了する。
再び図1に戻ってエンジンコントローラ100の構成に関する説明を続ける。上記構成を有する機能部120から出力された制御用パラメータは、調停部140に入力される。調停部140は、詳しくは、将来トルク調停部142、効率調停部144、及び直近トルク調停部146を含んでいる。将来トルク調停部142は、機能部120から入力された将来トルクとそれと同じカテゴリのその他のトルクとを調停し、調停されたトルクをエンジンに対する目標トルクとして出力する。基本的には、目標トルクは将来トルクと同値である。将来トルク調停部142における調停方法としては最小値選択が用いられる。
効率調停部144は、機能部120から入力された要求効率トルクとそれと同じカテゴリのその他の効率とを調停し、調停された効率をエンジンに対する最終的な要求効率として出力する。効率調停部144における調停方法としては最小値選択が用いられる。燃費性能の観点からは、点火時期効率は最大値である1になっていることが好ましい。このため、効率調停部144から出される要求効率の値は、基本的には1であり、暖機要求等の何らかのイベントが発生した場合のみ1よりも小さい値が選択される。
直近トルク調停部146は、機能部120から入力された第1直近トルクと第2直近トルクとを調停し、調停された直近トルクをエンジンに対する最終的な直近トルクとして出力する。直近トルク調停部146における調停方法としては最小値選択が用いられる。第1直近トルクと第2直近トルクとは、どちらも基本的には無効値であり、特定のイベントが発生した場合のみ実現したいトルクの大きさを示す有効値に切り替えられる。したがって、直近トルク調停部146から出力される直近トルクも基本的には無効値であり、何らかのイベントが発生した場合のみ有効値が選択される。燃焼モードの切り替えの条件が満たされた場合には、第1直近トルクが無効値から将来トルクに切り替えられることで、直近トルク調停部146から出力される直近トルクは将来トルクと同値となる。
以上のように構成される調停部140からは、調停された目標トルク、要求効率、及び直近トルクが出力される。また、機能部120から調停部140に入力された将来空燃比、リーン気筒数、及び要求空燃比がそのまま調停部140から出力される。
実現部160は、エンジンの逆モデルに相当し、マップや関数で表された複数のモデルで構成されている。協調操作のための各アクチュエータ2、4、6、8の操作量は、実現部160で算出される。実現部160は、複数の演算ユニット162、164、166、168、170、172、174から構成される。これらの演算ユニットのうち空気量制御に関係するものは演算ユニット162、164、166、168であり、点火時期制御に関係するものは演算ユニット170、172であり、燃料噴射量制御に関係するものは演算ユニット174である。以下、空気量制御に関係する演算ユニットから順に、各演算ユニットの機能について説明する。
演算ユニット162には、目標トルクと要求効率と将来空燃比とが入力される。演算ユニット162は、要求効率と将来空燃比とを用いて、目標トルクを達成するための目標空気量を目標トルクから逆算する。この計算では、要求効率及び将来空燃比は空気量のトルクへの変換効率を与えるパラメータとして用いられる。演算ユニット162は、まず、目標トルクを要求効率で除算することによって空気量制御用目標トルクを算出する。演算ユニット162は、次に、トルク−空気量変換マップを用いて空気量制御用目標トルクを目標空気量に変換する。トルク−空気量変換マップの検索にはエンジン状態量の実際値や目標値が用いられる。空燃比に関しては将来空燃比がマップ検索に用いられる。したがって、演算ユニット162では、将来空燃比のもとで空気量制御用目標トルクの実現に必要な空気量が目標空気量(目標KL)として算出される。
演算ユニット164は、目標空気量から吸気管圧の目標値である目標吸気管圧(目標Pm)を逆算する。目標吸気管圧の計算では、吸気バルブを通って筒内に取り込まれる空気量と吸気管圧との関係を記述したマップが用いられる。空気量と吸気管圧との関係はバルブタイミングによって変化するため、目標吸気管圧の計算では現在のバルブタイミングから上記マップのパラメータ値が決定される。
演算ユニット166は、目標吸気管圧に基づいてスロットル開度の目標値である目標スロットル開度(TA)を算出する。目標スロットル開度の計算では、エアモデルの逆モデルが用いられる。エアモデルはスロットル2の動作に対する吸気管圧の応答特性をモデル化した物理モデルであるので、その逆モデルを用いることで目標吸気管圧を達成するための目標スロットル開度を目標吸気管圧から逆算することができる。演算ユニット166で計算された目標スロットル開度は、スロットル2を駆動する信号に変換されてスロットル2へ送信される。
演算ユニット168は、目標空気量に基づいてバルブタイミングの目標値である目標バルブタイミング(VT)を算出する。目標バルブタイミングの計算には、空気量とバルブタイミングとをエンジン回転数を引数にして関連付けられたマップが用いられる。演算ユニット168で計算された目標バルブタイミングは、VVT8を駆動する信号に変換されてVVT8へ送信される。
次に、点火時期制御に関係する演算ユニットの機能について説明する。演算ユニット170は、点火時期効率を算出する。演算ユニット170には、直近トルクと全気筒ストイキMBTトルクと全気筒リーントルク(全気筒リーンMBTトルク)とリーン気筒数とが入力される。直近トルクが無効値である場合、演算ユニット170は点火時期効率を最大値である1に固定し、直近トルクが有効値、すなわち、将来トルクである場合、演算ユニット170は、次の式にしたがって点火時期効率を算出する。
点火時期効率=N÷(N−n)×(将来トルク−n÷N×全気筒リーントルク)
÷全気筒ストイキMBTトルク
÷全気筒ストイキMBTトルク
演算ユニット172は、点火時期効率から点火時期を算出する。詳しくは、エンジン回転数、目標トルク、空燃比等のエンジン状態量に基づいてMBTを算出するとともに、点火時期効率からMBTに対する遅角量を算出する。ただし、点火時期を遅角するのはストイキ燃焼を行う気筒のみであり、リーン燃焼を行う気筒は点火時期を遅角しない。点火時期効率が1であれば遅角量をゼロとし、点火時期効率が1よりも小さいほど遅角量を大きくする。そして、MBTに遅角量を足しあわせたものを最終的な点火時期として算出する。ただし、最終的な点火時期は、失火限界ガードによって制限されている。失火限界とは、失火が発生しないことが保証される最も遅角された点火時期であり、失火限界ガードは、点火時期が失火限界を超えて遅角されないように最終的な点火時期をガードしている。演算ユニット172で計算された点火時期は、点火装置6を駆動する信号に変換されて点火装置6へ送信される。
次に、燃料噴射量制御に関係する演算ユニットの機能について説明する。演算ユニット176は、要求空燃比と推定空気量とに基づき要求空燃比の達成に必要な燃料噴射量、すなわち、燃料供給量を気筒ごとに計算する。推定空気量は吸気バルブが閉じるタイミングで予測される空気量であり、前述のエアモデルの順モデルを用いてスロットル開度及びバルブタイミングに基づき算出される。演算ユニット176で計算された気筒ごとの燃料噴射量は、インジェクタ4を駆動する信号に変換されて各気筒のインジェクタ4へ送信される。
以上が本実施の形態に係るECUのロジックである。次に、上述のロジックにしたがってエンジン制御を実行した場合の制御結果について図を用いて説明する。
図4は、本実施の形態によるストイキ燃焼からリーン燃焼への燃焼モードの切り替え制御の制御結果のイメージを示すタイムチャートである。図4において、1段目のチャートはトルクの時間変化を示している。このチャートには、目標トルク、実トルク、全気筒ストイキMBTトルク、及びn気筒リーンMBTトルク(n=1〜4)が描かれている。全気筒ストイキMBTトルクとn気筒リーンMBTトルクとは、モード切替中にのみ計算される。2段目のチャートは空気量の時間変化を示している。このチャートには、目標空気量と実空気量とが描かれている。3段目のチャートは点火時期効率の時間変化を示している。ただし、ここで示す点火時期効率はリーン気筒以外の気筒の点火時期効率である。このチャートには、点火時期の失火限界に対応する点火時期効率が併せて描かれている。4段目のチャートは将来空燃比の時間変化を示している。そして、5〜8段目のチャートは第1から第4までの各気筒に対する要求空燃比の時間変化を示している。
このタイムチャートによれば、燃焼モードの切替条件が満たされてモードの切り替えが始まると同時に、将来空燃比が離散的に増大させられる。エンジンを減速させるように低下を続けていた目標空燃比は、将来空燃比が増大することによって離散的に増大し、それに伴って実空気量は連続的に増大していく。そして、実空気量の増大に合わせてn気筒リーンMBTトルクもそれぞれ連続的に増大していく。
やがて、1気筒リーンMBTトルクが目標トルクよりも大きくなる。1気筒リーンMBTトルクが目標トルクに達するまでは全気筒についてストイキ燃焼による運転が継続されるが、1気筒リーンMBTトルクが目標トルクに達したら第1気筒の要求空燃比がストイキ空燃比からリーン空燃比に切り替えられる。それまでの間、目標トルクと全気筒ストイキMBTトルクとの差を補償するべく、点火時期効率が1よりも小さい値に設定されて点火時期の遅角が行われる。点火時期の遅角によって実トルクは目標トルクに維持される。
やがて、2気筒リーンMBTトルクが目標トルクに達したら第2気筒の要求空燃比がストイキ空燃比からリーン空燃比に切り替えられる。それまでの間、目標トルクと1気筒ストイキMBTトルクとの差を補償するように点火時期効率が設定され、点火時期の遅角によって実トルクは目標トルクに維持される。さらに、3気筒リーンMBTトルクが目標トルクに達したら第3気筒の要求空燃比がストイキ空燃比からリーン空燃比に切り替えられる。それまでの間、目標トルクと2気筒ストイキMBTトルクとの差を補償するように点火時期効率が設定され、点火時期の遅角によって実トルクは目標トルクに維持される。そして、全気筒リーンMBTトルクが目標トルクに達したら第4気筒の要求空燃比がストイキ空燃比からリーン空燃比に切り替えられる。それまでの間、目標トルクと3気筒ストイキMBTトルクとの差を補償するように点火時期効率が設定され、点火時期の遅角によって実トルクは目標トルクに維持される。これにより、ストイキモードからリーンモードへの燃焼モードの切り替えが完了し、これ以降は全ての気筒でリーン燃焼による運転が行われる。
以上のように、本実施の形態で採用されたロジックによれば、エンジンにトルクの変動を生じさせることなくドライバの減速要求に見合ったトルクの滑らかな減少を達成しつつ、ストイキ燃焼からリーン燃焼へ燃焼モードを切り替えることができる。
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について図を参照して説明する。
次に、本発明の実施の形態2について図を参照して説明する。
実施の形態2と実施の形態1とは要求空燃比算出部134のロジックに違いがある。ECUの全体のロジックは実施の形態1と共通であり、本実施の形態に係るECUのロジックも図1にて表すことができる。
本実施の形態では、ストイキ燃焼からリーン燃焼へ燃焼モードを切り替える条件が満たされた場合に、目標トルクを維持できなくなるまでは点火時期の遅角を併用することによってストイキ燃焼を全気筒で行う。そして、ストイキ燃焼では目標トルクを維持できなくなってから、一部の気筒をリーン燃焼に切り替えることによって目標トルクを維持する。要求空燃比算出部134は、点火時期が失火限界に達した時点において次の2つの式を満たす整数“i”をリーン燃焼に切り替える気筒数として決定する。
i気筒MBTトルク>目標トルク、且つ、(i+1)気筒MBTトルク<目標トルク
上記式に従って一部の気筒をストイキ燃焼からリーン燃焼へ切り替えた後、要求空燃比算出部134は、リーン燃焼を行う気筒数を全気筒まで所定数(1気筒或いは2気筒)ずつ順々に増加させていく。その方法は実施の形態1で説明した通りであるので説明は省略する。
次に、上述のロジックにしたがってエンジン制御を実行した場合の制御結果について図を用いて説明する。
図5は、本実施の形態によるストイキ燃焼からリーン燃焼への燃焼モードの切り替え制御の制御結果のイメージを示すタイムチャートである。図5において、1〜4段目のチャートに描かれている項目は図4と共通する。5段目のチャートは第1及び第2気筒に対する要求空燃比の時間変化を示し、6段目のチャートは第3及び第4気筒に対する要求空燃比の時間変化を示している。
このタイムチャートによれば、モード切替の開始によって将来空燃比が離散的に増大させられた後、全気筒についてストイキ燃焼による運転が継続される。この間、目標トルクと全気筒ストイキMBTトルクとの差を補償するように点火時期効率が調整され、点火時期の遅角によって実トルクは目標トルクに維持される。そして、点火時期効率が失火限界に対応する値に低下した時点(つまり、点火時期が失火限界まで遅角された時点)で、上述の式にしたがってストイキ燃焼からリーン燃焼に切り替える気筒数が決定される。ここでは、2気筒リーンMBTトルクは目標トルクよりも大きいが、3気筒リーンMBTトルクは目標トルクよりも小さい。よって、リーン燃焼へ切り替えられる気筒数は2気筒であり、第1気筒及び第2気筒の要求空燃比がストイキ空燃比からリーン空燃比に切り替えられる。
このタイムチャートの例では、2気筒ずつストイキ空燃比からリーン空燃比へ切り替えるものとする。よって、全気筒リーンMBTトルクが目標トルクに達するまでは、リーン燃焼を行う気筒数は2気筒に維持される。そして、全気筒リーンMBTトルクが目標トルクに達したら第3気筒及び第4気筒の要求空燃比がストイキ空燃比からリーン空燃比に切り替えられる。それまでの間、目標トルクと2気筒ストイキMBTトルクとの差を補償するように点火時期効率が設定され、点火時期の遅角によって実トルクは目標トルクに維持される。これにより、ストイキモードからリーンモードへの燃焼モードの切り替えが完了し、これ以降は全ての気筒でリーン燃焼による運転が行われる。
以上のように、本実施の形態で採用されたロジックによれば、実施の形態1のロジックに比較して燃焼モードの切り替え回数を少なくすることができる。
2 スロットル
4 インジェクタ
6 点火装置
8 可変バルブタイミング機構
100 エンジンコントローラ
200 パワートレインマネージャ
4 インジェクタ
6 点火装置
8 可変バルブタイミング機構
100 エンジンコントローラ
200 パワートレインマネージャ
Claims (2)
- リーン燃焼とストイキ燃焼との間で燃焼モードを切り替え可能な内燃機関の制御装置であって、
ストイキ燃焼からリーン燃焼へ燃焼モードを切り替える条件が満たされた場合に、気筒内に吸入される空気量を増大させるように前記内燃機関を制御する第1の手段と、
前記条件が満たされた場合に、リーン燃焼を行う気筒数を所定数増やすことで前記内燃機関で得られるトルクの予測値を計算し、前記予測値が目標トルクに達してからリーン燃焼を行う気筒数を実際に前記所定数だけ増加させることによって、リーン燃焼を行う気筒数を全気筒まで前記所定数ずつ順々に増加させていく第2の手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 前記条件が満たされた場合に、目標トルクを維持できなくなるまでは点火時期の遅角を併用することによってストイキ燃焼を全気筒で行い、ストイキ燃焼では前記目標トルクを維持できなくなってから一部の気筒をリーン燃焼に切り替える第3の手段をさらに備え、
前記第2の手段は、前記第3の手段によって前記一部の気筒がストイキ燃焼からリーン燃焼へ切り替えられた後、リーン燃焼を行う気筒数を全気筒まで前記所定数ずつ順々に増加させていくように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013225647A JP2015086780A (ja) | 2013-10-30 | 2013-10-30 | 内燃機関の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013225647A JP2015086780A (ja) | 2013-10-30 | 2013-10-30 | 内燃機関の制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2015086780A true JP2015086780A (ja) | 2015-05-07 |
Family
ID=53049829
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2013225647A Pending JP2015086780A (ja) | 2013-10-30 | 2013-10-30 | 内燃機関の制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2015086780A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023007531A1 (ja) * | 2021-07-26 | 2023-02-02 | 日産自動車株式会社 | 車両の制御方法及び車両の制御装置 |
-
2013
- 2013-10-30 JP JP2013225647A patent/JP2015086780A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2023007531A1 (ja) * | 2021-07-26 | 2023-02-02 | 日産自動車株式会社 | 車両の制御方法及び車両の制御装置 |
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