前記の様に、従前においては様々な生体電極が提案されており、また冷たい金属部分が身体に接すると被験者に不快感を与え、特に被検者が高齢の場合には検出した心電図に悪影響が生ずるという問題も提案されている。そして前記特許文献2では、接触部を弾性材で形成することで、生体表面に密着性よく冷たさを感じることなく装着することができるような工夫が提案されている。
しかしながら身体に接する部分が、金属ではなく樹脂からなる弾性部材であっても、金属程ではないものの、やはり被験者は冷たさを感じる。特に冬季など気温が低い環境下での測定や、装着する部位が、温度に敏感な胸部等の場合には、より一層、冷たさ(不快感)を感じるものとなっていた。そして、被験者が冷たさを感じた場合には、心拍動が上昇するなど心電図に悪影響を及ぼすことが考えられる。また低周波治療器においては電極の冷たさにより筋肉が硬直してしまい、最適な治療効果が得られないことも考えられる。
そこで本発明では、第1に、生体電極や低周波治療器用電極、或いは湿布等を被験者に装着した場合の温度差に起因する不都合を解消し、これらを不快感なく快適に装着できるようにした、生体に接する柔軟な樹脂部分の保温保湿器を提供すること、特にこれらを装着した時に、装着者に冷たいなどの不快な印象を与えることなく、正確な心電図などを得る事ができ、また治療効果を高めるようにした生体電極又は低周波治療器用電極、湿布などにおける、生体に接する柔軟な樹脂部分の保温保湿器を提供することを課題とする。
また多くの生体電極、低周波治療器用電極、或いは湿布においては、装着者に接する部分は生体表面との密着性を向上させるために柔らかい樹脂が使用されている事が多い。例えば生体電極や低周波治療器用電極、或いは湿布薬等ではゲル状又はゴム状の樹脂等が使用されている。特に吸盤で被験者に取り付けられる吸着電極でも、当該吸盤部分は、ゲル状またはゴム状の柔軟性を有する樹脂組成物が使用されている。そして、このような柔軟性を有する樹脂組成物は、長時間空気中に放置したり、高温で加熱した場合には溶媒成分が蒸発してしまって柔らかさが無くなり、硬化することも知られている。そして生体電極、低周波治療器用電極或いは湿布等において、装着者に接する部分が柔らかさを失った場合には、生体表面との密着性や吸着能力が失われ、また粘着剤として使用されている場合には粘着性能が低下することになる。
そこで本発明では、第2に、前記の様に生体に接する部分の温度を調整可能でありながらも、さらに当該樹脂が柔軟性を失うことがないようにした生体電極、低周波治療器用電極又は湿布などにおいて、生体に接する柔軟な樹脂部分の保温保湿器を提供することを課題とする。
更に、生体に接した状態で装着され、且つ一定の湿度を有するものとして、湿布等が存在する。かかる湿布も生体に貼付する際には、特に冬季などにおいては装着者に冷たいなどの不快感を与えてしまう事があった。また、かかる湿布なども、生体に接する部分には、ゲル状の柔軟な樹脂組成物が使用されていることから、単純に加熱しただけではゲル状の樹脂組成物の含水量が低下し、初期の効果を期待できないなどの問題があった。
そこで本発明では、第3に、生体電極に限ることなく、湿布などの様に、生体に接することのある柔軟な樹脂組成物からなる部分の保温保湿器を提供することを課題とする。
上記課題の少なくとも何れかを解決するべく、本発明では生体に当接する柔軟性を有する樹脂部分を湿潤状態で一定の温度に調整するための温度調整具を提供する。
即ち、本発明では前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、生体に接する柔軟な樹脂部分を一定に保つための保温保湿器であって、少なくとも生体に接する柔軟な樹脂部分が当接する設置面を有しており、当該設置面を湿潤な状態に保持する保湿手段と、当該設置面を一定の温度に保持する温度調整手段とを具備する、生体に接する柔軟な樹脂部分の保温保湿器を提供する。
上記本発明にかかる温度調整具は、利用者の表皮に接した時(即ち、装着した時)に冷たい又は熱いという不快感を無くすものであることから、生体電極、低周波治療器用電極、或いは湿布などにおいて、生体に接するゲル状又はゴム状の柔軟な樹脂部分を、乾燥させることなく、一定の温度に調整・保持するものである。よって、当該温度調整具は、生体電極、低周波治療器用電極、又は湿布などにおいて生体に接するゲル状、ゴム状の樹脂部分が当接する設置面を具備する。
かかる設置面は、保持する対象物(生体電極、低周波治療器用電極、又は湿布など)における生体に接する部分の形状、大きさ、及び重さ等に応じて、適宜最適な形状とすることができ、多くの場合は平面形状に形成する。例えば、保持する対象物が生体電極であり、特に吸盤に電極部を有する吸着電極(以下、「吸盤式の生体電極」とも言う)の場合には、前記設置面は、当該吸盤が接するような平面形状に形成することができる。また保持する生体電極が、クリップの先端側に電極部を有し、生体部位をクリップで挟んで固定する生体電極(以下、「クリップ式の生体電極」とも言う)の場合には、前記設置面は、当該クリップの先端で挟持できるような厚さの板状に形成することができる。特に当該設置面を平坦に形成することにより、生体電極、低周波治療器用電極、及び湿布など、様々な製品における生体に接する柔軟な樹脂部分について使用することができ、汎用性を高めることができる。
また保湿手段は、前記設置面を湿潤な状態に保持するための構成であり、例えば、当該設置面に対して水等の液体や蒸気を供給することのできる構成・構造によって実現することができる。特に、当該設置面に水等の液体を供給する場合には、毛細管現象やサイフォン原理などを利用する他、設置面に対して水などの液体を連続又は断続的に滴下したり、或いは湿った布帛を連続的に供給して設置面を加湿したりするようにしても良い。また当該設置面を加湿する手段として、当該設置面を、複数の小孔を有する材料、又はメッシュ状の材料を用いて形成し、当該小孔又はメッシュ孔から加熱した蒸気を噴出させても良い。
特に、毛細管現象により設置面に液体を供給する場合、当該保湿手段は、水その他の液体が充填される槽部材と、当該槽部材の上方に鉛直または傾斜して立ち上がっている平面部と、当該平面部に添設され、毛細管現象により槽部材内の液体を吸い上げる加湿シートとで構成することができる。かかる構成における保湿手段では、槽部材に充填された液体を、平面部に添設された加湿シートが毛細管現象により吸い上げる。その結果、当該平面部における加湿シートは湿った状態となり、生体電極において生体に接する部分や、湿布など生体に接するゲル状物の乾燥、特に加熱時における乾燥を阻止することができる。また、このように槽部材、平面部及び加湿シートにより保湿手段を構成すれば、電気や熱などのエネルギーを利用しなくとも、連続的に設置面を加湿することができる。なお、この態様において、平面部とこれに添接される加湿シートが前記設置面を構成することになる。
上記保湿手段を構成する槽部材は、少なくとも所定量の液体を入れておくことのできる容器として形成される。かかる槽部材は、毛細管現象により設置面に液体を供給する場合、後述する平面部に添設される加湿シートに液体を供給する為に、当該加湿シートの裾部(下方)が、当該槽部材内の液体に浸る為の開口部が形成される。特にこの槽部材は、その内に入れられた液体の蒸発を防止する為に、当該開口部以外の領域が覆われていることが望ましく、また液体の補給や交換を容易ならしめる為に、独立して着脱自在に形成することが望ましい。
かかる槽部材内に入れられる液体は、生体電極、低周波治療器用電極、及び湿布などにおいて生体に接する柔軟な樹脂部分の乾燥を防ぎ、且つこれらの変質を生じさせないものであれば良く、例えば水を使用することができる。更に、当該水には生体電極において生体に接する部分や、湿布など生体に接するゲル状物等の性質を変化させない限りにおいて消毒剤や殺菌剤などを添加しても良い。更に水に限らず、グリセリンなどのアルコールや、アロマオイル、シリコンオイルその他のオイルなどを槽部材内に入れることもできる。
上記保湿手段(及び設置面)を構成する平面部は、水、その他の液体が充填される槽部材の上方に、鉛直状または傾斜して立ち上がるように設けられる。当該平面部を鉛直状に設けることにより、例えばクリップ式の生体電極であっても、当該平面部を挟むように設置すれば、まっすぐ保持することができる。よって、当該平面部を鉛直状に形成した場合には、当該クリップ式の生体電極の着脱を円滑に行う事ができる。一方、前記平面部を傾斜状態で設けた場合には、毛細管現象で上昇可能な水の高さの範囲内において、当該平面部の傾斜方向の長さを最大限に大きくすることができる。したがって、例えば吸盤式の生体電極(吸着電極)や湿布などに対して使用する場合には、これらの設置面積を、より広くすることができる。
そして前記平面部には、槽部材内の液体を吸い上げる加湿シートが添接される。かかる加湿シートは織物、ニット、不織布などの繊維製品で形成する他、紙や加工紙で形成することもでき、更に金属、樹脂、セラミックス等各種からなる板又はシートに、貫通する孔、貫通しない穴、ローレット状の溝や開口、又は微細な凹凸を複数形成したものを使用することもできる。特に、この加湿シートが毛細管現象を利用して槽部材内の液体を上昇させるように構成されている場合には、生体に接する樹脂部分の湿潤性を確保する上では、濡れ性(水に濡れやすい性質)の高い材質・構造に形成することが望ましい。また、殺菌対策などの衛生面、及び使用耐久性などの観点から、布を用いて形成する場合には合成繊維が望ましく、更に金属などの他の材料であってもよい。
また、設置面を湿潤な状態に保持する保湿手段は、上記の他にも槽部材内の液体をポンプなどで揚水して、設置面に供給することもでき、更に槽部材を設置面の上方に設けて当該槽部材から設置面に向かって液体が流れ出る様に構成してもよい。
そして上記本発明にかかる温度調整具は、生体電極、低周波治療器用電極、又は湿布などにおいて、生体に接する部分(柔軟性を有する樹脂部分)が設置される設置面を一定の温度に保持する温度調整手段を備える。かかる温度調整手段は、多くの場合は、当該生体に接する部分を加熱するものであるが、専ら冷やすことを目的とする場合など用途に応じては冷却するものであってもよい。特に当該温度調整手段が加熱することを目的とする場合は、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子を利用したPTCヒーターや、ニクロム線、カンタル線、カーボン線などヒーターの材料を用いた各種の電熱線ヒーターを使用することができる。その他にもマイクロ波を利用した加熱手段等、各種の加熱手段を使用することができる。
また設置面が平面部と加湿シートとを含んで構成される場合、前記温度調整手段は、少なくとも前記加湿シートが添設される平面部を加熱する為の「パネル状またはシート状の加熱手段」として形成することができる。かかる加熱手段は、一定の温度以上には上昇しないように形成されている事が望ましい。よってニクロム線やカーボン繊維など、発熱体自体に温度監視機能を有しないヒーター材料を利用する場合には、サーモスタット等の温度センサーを使用して温度制御をするのが望ましい。一方、前記PTCヒーターは、温度が上がると半導体により電気抵抗値が増す特性(正温度係数の特性)を有することから、別途、温度センサーなどを設ける必要性は乏しい。よって、かかる温度調整手段としては、PTCヒーターを使用するのが望ましい。但し、かかるPTCヒーターを使用する場合であっても、ACアダプタによって電力が供給されている時に、不慮・不測の電圧印加などで過熱を防いで温度管理をより確実に行う為に、サーモスタットを使用するのが望ましい。
上記温度調整手段が、生体に接する部分(ゲル状またはゴム状の樹脂部分)を加温するための加熱手段である場合には、当該加熱手段は生体に接する部分を40℃以下、特に30℃以上40℃以下に調整することが望ましく、更に水分を含んだ加湿シートの表面温度を40℃以下、特に35℃以上40℃以下に調整するものであることが望ましい。但し、この加湿シートの表面温度は、外気の温度に応じて、適宜調整することが望ましい。そこで本発明にかかる保温保湿器において、当該温度調整手段は、任意に設定温度を調整できるように構成するのが望ましい。例えばヒーターに対して電気を供給する回路中に抵抗器を存在させ、当該抵抗器の抵抗値を変化できるように形成したり、スイッチによって抵抗器を通して電気を供給するか否かを切り替えるように形成することができる。
更に、当該温度調整手段として、槽部材内に入れられた液体を各種電気ヒーターやマイクロ波加熱装置などにより加熱して、この加熱した液体を平面部に添接させた加湿シートに供給する(毛細管現象により吸い上げる場合を含む)ように構成して、当該加熱した液体により前記設置面を加熱することもできる。
また、上記本発明にかかる保温保湿器が、特に、吸盤式の生体電極や低周波治療器用電極(吸着電極)に対して使用する場合には、前記設置面は、40°以上、50°以下の角度で上向きに傾斜している事が望ましい。吸着電極を安定して設置することができると共に、毛細管現象により槽部材内の液体を吸い上げる際に、液体の揚程範囲内において可能な限り、当該設置面の面積を広くすることができる為である。但し、吸着電極の形状に応じて、前記設置面の傾斜角度は任意に調整することができ、例えばより広い面積を確保したい場合には、当該傾斜角度を40°よりも小さくすることができる。
また、上記本発明にかかる保温保湿器では、生体に接する部分(柔軟な樹脂部分)が吸着電極における吸盤部分である場合、前記設置面に当接させた吸着電極を載せ置くための載置部を備える事が望ましい。かかる載置部を設けることにより、吸着電極を安定した姿勢で保持することができる。また、当該載置部と前記設置面とは、両者の交差角度を調整可能に形成することもできる。両者の交差角度を調整することにより、大きさや形状などが異なる様々な吸着電極に対して使用することができる。
上記本発明にかかる保温保湿器では、生体電極における生体に接する柔軟な樹脂部分が設置面に当接する。そしてこの設置面は、温度調整手段により一定の温度に保たれていることから、当該生体電極や、低周波治療器用電極或いは湿布などにおいて、生体に接する柔軟な樹脂部分を、その用途や効能、又は使用者の好みに応じて温めたり冷やしたりすることができる。さらに、この設置面は保湿手段によって湿潤な状態に保持されていることから、当該生体に接する柔軟な樹脂部分が乾燥し、変形又は変性してしまう事態を無くすことができる。
よって本発明かかる保温保湿器によれば、生体電極や低周波治療器用電極或いは湿布などにおける柔軟な樹脂部分が被験者に接した場合の温度差に起因する不快感や不都合を解消し、不快感なく快適に装着できるようにし、特に装着時における冷たいなどの不快な印象を与えることがなくなる。よって、生体電極などにおいては、正確な心電図などを得る事ができ、また低周波治療器用電極や湿布などにおいては、施療効果を高めることができる生体に接する柔軟な樹脂部分の保温保湿器を提供することができる。
また、本発明にかかる温度調節器具は、保湿手段により設置面を湿潤な状態に保持することができる。したがって、生体表面との密着性を向上させるために、ゴム状又はゲル状などの柔らかい樹脂材料で形成されている、生体電極における被験者との接触部を、長時間又は高温で加熱したとしても、柔らかい状態を維持し、硬化や変形の問題を阻止することができる。よって本発明によれば、生体に接する柔軟な樹脂部分の温度を調整可能でありながらも、さらに当該樹脂が柔軟性を喪失することがないようにし、生体表面との密着性の低下を阻止することのできる、生体に接する柔軟な樹脂部分の保温保湿器を提供することができる。
そして、上記構成にかかる本発明の保温保湿器では、設置面は加湿された状態で温度を調整できるのであるから、生体電極に限らず、湿布などの様なシート状物であっても使用することができる。その結果、冬季などにおいても、装着者に冷たいなどの不快感を与えることなく、湿布などのゲル状物を貼付することのできる生体電極又はゲル状物の保温保湿器を提供することができる。
以下、本実施の形態にかかる保温保湿器を、図面を参照しながら具体的に説明する。図1は第1の実施の形態にかかる保温保湿器の構成を示す分解図斜視図であり、図2は当該保温保湿器を示す斜視図であり、図3は当該保温保湿器を示す図2における、(A)X−X矢視端面分解図であり、(B)X−X矢視端面図であり、図4は当該実施の形態にかかる保温保湿器の使用状態を示す斜視図である。
この第一の実施の形態にかかる保温保湿器は、特に吸盤式の生体電極(吸着電極)について使用するものとして具体化しており、当該生体電極における生体に接する柔軟な樹脂部分を温める事ができるように構成されている。かかる保温保湿器は、全体の底面を構成する底部材11と、この底部材内に収容される槽部材12と、この槽部材12を覆うようにして前記底部材11と組み合わさる本体部材13とで構成されている。そして底部材11と本体部材13との組み合わせにより内部空間が区画され、この空間部内に槽部材12を収容するように形成されている。また底部材11と本体部材13とにより、筐体を形成している。
本実施の形態において、底部材11は上面が開いた箱体形状に形成されており、恰も所定の深さを有するトレー形状となっている。また、かかる底部材11は長尺状に形成されており、その長さ方向の一端側には、縁部を下方に切り下げた凹部111が形成されている。当該凹部111には、後述する槽部材12内に水などの液体を注入するための注入口122が受容されることになる。これにより、当該槽部材12の注入口122は、底部材と本体部材との組み合わせからなる筐体の側方から突出して存在することができる。また底部材の底面と壁面との間は湾曲して形成されており、これにより清掃などのメンテナンス容易性を高めている。
上記底部材11は、当該保温保湿器を、各種の医療機器、例えば心電図測定装置等の筐体や、当該心電図測定装置を載せ置いているラック等に固定するために使用できる。よって当該底部材11が保温保湿器を固定する目的を有する場合には、当該底部材11の長手方向に沿う面に、医療機器の筐体やラック等に固定する為のクランプ、磁石、紐等の固定手段を設ける事が望ましい。
そして上記した底部材11内には、当該底部材の内部よりも一回り小さく形成した槽部材12が設置される。本実施の形態において、当該槽部材12は、水などの液体を収容する槽状の空間121と、この槽状の空間121内に液体を注ぐ注入口122とを備えて構成されている。そして槽部材12も底面と壁面との間は緩やかなカーブを描いて湾曲しており、これにより清掃時などにおけるメンテナンス性を向上させている。かかる槽部材12は、後述する加湿シート133に対して、水などの液体を供給するものであり、当該機能を奏する限りにおいて様々な変更を行う事ができる。また、当該槽部材は、前記底部材に対して着脱自在に設けられており、これにより清掃などのメンテナンス性を向上させることができる。
上記のように槽部材12を収容した底部材11には、これに被さるようにして本体部材13を設ける。かかる本体部材13は、少なくとも生体電極における生体に接する部分が当接する設置面131を備えている。特に本実施の形態において、当該設置面131は、傾斜状に形成された平面部132と、当該平面部に添設される加湿シート133で構成されている。この平面部132は、約40〜50°の角度で傾斜し、且つその下方が当該本体部13の下方に存在する槽部材12に向かうように形成されている。本実施の形態において、この平面部132は本体部13内に一体形成されているが、傾斜角度を調整可能に設けることができる。この場合、当該平面部132を本体部13から独立した別部材として形成し、これを本体部13内に枢着することができる。
そして当該本体部材13には、上記平面部131と対向する位置に、当該平面部に接した状態で設けられる生体電極の他端側を支持する支持部134が設けられる。当該支持部は図3に示す様に、吸盤式の生体電極41(吸着電極)において球体に形成されているニップル部分を支持できるように、長手方向に交差する向きの曲面に形成されているのが望ましい。
図3(A)に示す様に、上記本体部材13における平面部132の裏面には、一定の温度を保持するヒーター135を設置する。このヒーター135としては、温度の上昇に応じて抵抗が増し、発熱温度を調整するPTCヒーターを使用することが望ましい。かかるPTCヒーターは、特に発熱温度を35℃〜45℃程度に保つものが使用される事が望ましく、その結果、当該設置面に当接した生体電極の生体に接する部分を、被験者の生体に設置した場合であっても、冷たいなどの不快感を無くすことができる。但し、本実施の形態において、当該PTCヒーターを使用しながらも、安全性を高める為にサーモスタットを設けるのが望ましい。また、当該PTCヒーターの発熱温度を40℃以下にするために、適宜電気抵抗を使用することもできる。
そして上記平面部には、布帛などからなる加湿シート133を添設する。かかる加湿シート133の裾部分は、図3(B)に示す様に、少なくとも前記槽部材12内に収容した液体に接するように設けられ、前記平面部132の全体を覆うように設ける事が望ましい。また、この加湿シート133は、任意に交換乃至は清掃できるように、当該平面部に対して着脱自在に設ける事が望ましい。但し、この加湿シート133は、生体電極を取り外す際に、前記平面部132から剥がれる事が無いように、前記平面部132に対して面で接した状態で取着されている事が望ましい。例えば前記平面部に小さな突起を複数形成し、当該布帛からなる加湿シート133の繊維を絡めて保持する構成(恰も面ファスナーのような構成)で形成することもできる。
上記加湿シート133は、少なくとも槽部材内の液体を、毛細管現象により吸い上げる事のできるような吸水率、目の大きさの物が使用される。かかる加湿シート133は布帛を用いて形成する他、繊維状に形成された樹脂シートや多孔状に形成した樹脂シートなどによっても形成することができる。
以上のように傾斜状の平面部132と、当該平面部に添設される加湿シート133とで設置面131を構成することにより、加湿シートを毛細管現象により湿潤な状態に保つことができる。よって、ポンプ等をした場合の様な揚水のための動力や構成を必要とせず、且つ槽部材12に液体が存在する限りにおいて、絶えず設置面131を湿潤な状態に保持することができる。
更に、以上の様にして湿潤な状態に保持される設置面131は、平面部132における裏面に設置されるヒーター135(PTCヒーター等)によって一定の温度に保持されている事から、毛細管現象により吸い上げた液体も一定の温度に加熱される。その結果、当該設置面131は、湿潤な状態で、且つ35℃〜40℃程度に保たれることになり、生体電極における生体に接する部分(当該設置面131に接する部分)を、乾燥させることなく且つ装着時に不快感を与えない温度に保持することができる。
このため、図4に示す様に、設置面に対して吸盤式の生体電極41の吸盤部分を当接させて置いておけば、被験者の体に触れる吸盤部分を温めておくことができ、これにより装着時の不快感(冷たさを感じる等)を解消することができる。
次に、図5〜8を参照しながら、他の実施の形態にかかる保温保湿器を説明する。
図5は、上記図1〜4に示した実施の形態に関連した第二の実施の形態にかかる保温保湿器を示す分解斜視図である。この図に示す保温保湿器は、特に槽部材12が注入口を有しないトレー形状に形成されており、これに伴って底部材11は、その一端側に当該注入口を受容する為の凹部は形成されておらず、単に上面が開いた箱体形状に形成されている。
また、生体電極における生体に接する柔軟な樹脂部分が当接する設置面131は、傾斜した平面部132と、加湿シート133とで構成されており、この内の平面部132は、本体部材における傾斜面136と、この傾斜面136に添設される金属プレート137とで形成されている。即ち、本体部分を形成する際に、金属プレート137を支持する傾斜面136を形成し、この傾斜面136に金属プレート137を設置して平面部を形成している。当該金属プレート137と本体部材の傾斜面136との間には、当該金属プレートを加温する為のPTCヒーター135が設けられている。また前記傾斜面136には、サーモスタット25(図6参照)を収容するための窪み51が形成されており、当該窪み51にはサーモスタットが収容される。このサーモスタット25は、温度を測定する面がPTCヒーターに接するよう設置される。当該サーモスタット25は前記平面部(特にPTCヒーター)の温度を監視し、前記PTCヒーター135が必要以上に高温になった場合には、当該PTCヒーターに供給する電気を遮断するように構成する。
この実施の形態において、設置面を一定の温度に保持する温度調整手段は、PTCヒータ135ーと、サーモスタット25とを用いて構成されており、更に電源スイッチ、及び温度切替スイッチを伴って構成することができる。図6は、かかる温度調整手段の構成を示す回路図である。この図6において図面に示すACアダプタ等の電源21から電気を取得し、電源スイッチ22により回路の開閉を行う。回路を閉じる事により、発光ダイオード23に電気が流れ、またコネクタ24を介してPTCヒーター135に電気が供給される。PTCヒーター135に供給される電気回路には、サーモスタット25が直列に接続され、当該サーモスタット25によっても回路を開閉することができ、PTCヒーター135への電気の供給を遮断することができる。また、回路中に組み込まれる温度切替スイッチ26は、PTCヒーター135に供給する電気が電気抵抗27を通るか否かを切り替えるスイッチとして形成することができる。この温度切替スイッチ26をONにして、電気抵抗27を通すことにより、PTCヒーター135にかかる電圧を低減して発熱温度を4℃〜5℃程度抑える事ができる。
また、かかる電気回路において、PTCヒーター135とサーモスタット25とを本体部材13に組み込み、一方でACアダプタとの接続端子(21)、電源スイッチ22、及び温度切替スイッチ26をスイッチパネル用モジュールとして、本体部材13の側面に形成された収納部130に着脱自在に設置することができる。この時、当該スイッチパネル用モジュールは、2ピンコネクタ等の接続部(コネクタ24)によって、PTCヒーター135とサーモスタット25とからなる構成部とを電気的に接続することができる。なお、前記電源21は、ACアダプタから取得する他にも乾電池などを使用することもできる。
本実施の形態において、上記本体部材13と底部材11との組み合わせは、両者に相補的に嵌合可能な構造部分を設け、当該構造部分によって一体化する他、両者の係合部分における何れか一方又は双方に磁石(望ましくはネオジム磁石)を設け、磁石と磁石、又は磁石と金属とを、磁力により結合一体化することもできる。
次に、図7は、第三の実施の形態にかかる保温保湿器を示す、長手方向に交差する向きの断面図であり、図8はこの第三の実施の形態にかかる保温保湿器における要部拡大分解図である。特にこの第三の実施の形態に示す保温保湿器は、底部材11を槽部材として使用した例であって、底部材11と本体部材13とにより筐体を形成することができる。またこの実施の形態において、本体部分における設置面131を構成する平面部132は、他の部分とは異なる部材で形成している。具体的には、本体部材13の背面などを樹脂によって一体形成すると共に、設置面131を構成する部分は開口状に形成している。そしてこの開口部には、正面側から金属製のプレート137を嵌め込み、そしてこの金属プレート137の裏面にはPTCヒータ135を添接している。
平面部132は、本体部材13の形成に際して樹脂などの一体形成により形成する事もできるが、本実施の形態の様に金属プレート137によって形成することが望ましい。何故ならば、当該平面部132における生体電極が接する面の裏側(裏面)には、ヒーターなどの加熱手段を設けることから、当該ヒーターの熱を効率的に伝える為に、当該平面部は金属だけで形成されている事が望ましい為である。特に、金属で形成する場合、当該平面部132は、これに添設される加湿シート133により湿潤な状態に保たれることから、特にステンレスなどのような腐食しにくい金属か耐熱性樹脂等で形成することが望ましい。
また、この実施の形態では、前記平面部132に張設される加湿シート133を押える留め部138も設けられている。当該留め部138は、本体部分の上端であって、設置面131を形成する平面部132との間の曲折部分に設けられている。特に本実施の形態では長尺なフランジ部材を用いて構成しており、当該フランジ部材は下向きに付勢されており、平面部132との間で加湿シート133の上部を挟むことができるように構成されている。なお、この留め部は、少なくとも加湿シート133を押えておくことのできるものであれば、他の形状・構成に形成することもできる。
図9は第四の実施の形態にかかる保温保湿器を示す長手方向に交差する向きの断面図である。この実施の形態では、設置面131を直接加熱するのではなく、設置面131に導かれる液体を加熱して、その結果当該設置面を一定の温度に保つようにした保温保湿器として具体化している。
即ち、この実施の形態にかかる保温保湿器は、設置面131の背面側にはPTCヒーターなどの加熱手段を設置していない。これに代えて、槽部材12内に、当該槽部材12内の液体を加熱するためのヒーター139を設置している。かかるヒーター139は、防水加工された水中設置型のヒーターであって、サーモスタットを伴うものを使用することができる。かかる水中設置型のヒーター139は、例えば観賞魚の水槽用に提供されているものを使用することもできる。
本実施の形態に示す保温保湿器のように槽体内の液体の温度を調整する場合、ヒーターの交換が容易であって、当該ヒーターの交換などのメンテナンス性を向上させることができる。また、この水中に設置されるヒーターは、前記PTCヒーターと共に使用することもできる。例えば気温が低く、槽部材内に収容する液体の温度も低い場合等には、両者を併用することにより、設置面を迅速に所望の温度にすることもできる。なお、この実施の形態において、PTCヒーターと水中設置型のヒーターとの違いの他は、前記図1に示した保温保湿器と同じ構成とすることができる事から、図面では同一の記号を付して詳細な説明を省略する。
図10は第五の実施の形態にかかる保温保湿器を示しており、(A)は当該保温保湿器の長手方向に交差する向きの断面図、(B)は本体部分の要部拡大斜視図、(C)は当該本端部分における設置面のY−Y矢視端面図である。
特にこの実施の形態にかかる保温保湿器は、設置面131に、高さ方向に延伸するローレット31を多数形成しており、これにより、前記加湿シートを用いることなく、当該設置面131を湿潤な状態に保つことができるように構成している。即ち、この実施の形態にかかる保温保湿器では、前記設置面131は、その下端が前記槽部材12内に充填された液体内に存在するように形成されている。そしてこの設置面131には、図10(B)及び(C)に示す様に、開口よりも底面を幅広くした台形状に凹んだ溝(ローレット)を、設置面の高さ方向に延伸するように設け、当該溝を設置面の幅方向に複数形成している。これにより、槽部材12内の液体は、当該溝内を毛細管現象により上昇し、これにより当該設置面に設置した生体電極などの乾燥を阻止することができる。
特に本実施の形態にかかる保温保湿器によれば、布帛などからなる加湿シートを用いることなく、設置面を湿潤な状態に保持することができ、部品点数を減じることができる。
そして図11は、第六の実施の形態にかかる保温保湿器を示す要部拡大斜視図である。特にこの図11は、当該保温保湿器を短手方向に切断した状態の斜視図であり、内部の構成を示している。
本実施の形態にかかる保温保湿器は、クランプ式の生体電極42などの生体接地部分の温度を一定に保つように構成されており、前記設置面131は鉛直方向に立ち上がるように構成されている。具体的には、箱状に形成した筐体の底面に、長手方向に沿う向きで且つ上方に立ち上がる平面部132を形成している。当該平面部132の内側は中空な空間部として形成されており、当該空間部には、前記PTCヒーター135を設置している。そして当該筐体内には水などの液体を充填し、前記平面部132には裾部分が当該液体内に存在するように加湿シート133を被せている。かかる構成の保温保湿器によれば、加湿シート133は、筐体内に充填される液体を毛細管現象により吸い上げ、常に湿った状態となる。そして、この加湿シート133が設けられる平面部122内には、前記PTCヒーター135設置されていることから、当該平面部132に加湿シート133を被せて形成した設置面131は、常に湿潤な状態で且つ一定の温度に保つことができる。
以上のように形成した保温保湿器によれば、設置面は鉛直状に立ち上がって形成されることから、例えばクランプ式の生体電極は、当該設置面を挟むように設ける事で、生体に接する部分を乾燥させることなく、一定の温度に保つことができる。なお、この図11に示した実施の形態では、筐体を複数の部品の組み合わせにより形成する事もできる。