JP2015084814A - B型炭酸アパタイトおよびその微粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】B型炭酸アパタイトを高純度で得るための簡便で生産性の良好な製造方法、およびコーティング用途に好適なB型炭酸アパタイト微粒子の製造方法を与えること。【解決手段】リン酸水素カルシウム二水和物と、これに対して0.2モル比以上の炭酸塩もしくは0.4モル比以上の炭酸水素塩を水中に於いて混合し、反応させることで得られるB型炭酸アパタイトの製造方法。また、これより得られた炭酸アパタイトをメディアミルを使用して湿式分散処理を行う。【選択図】なし
Description
本発明はB型炭酸アパタイトを高純度で得るための簡便で生産性の良好な製造方法、およびコーティング用途に好適なB型炭酸アパタイト微粒子の製造方法に関する。
骨や歯などの生体硬組織を構成する成分としてヒドロキシアパタイトに関する研究やその医用材料としての利用についての技術開発が広範囲にかつ精力的に行われている。例えば骨の欠損部を補填し、骨の再生を促進する目的で、従来は患者自身の腸骨などから骨を採取して移植する自家骨移植が行われてきたが、近年では、人工的に合成された結晶性の高いヒドロキシアパタイトからなる成型材料を骨の代換えに使用することも広く行われている。しかしながら合成されたヒドロキシアパタイトは堅くて脆い性質を有し、力学的強度に劣ることから、移植部に過剰な負荷が掛かると破壊する問題や、生体内において炎症反応を惹起し易い問題、或いは高結晶性のヒドロキシアパタイトが破骨細胞によって吸収されず、骨の修復過程に於いて重要であるリモデリング過程に於いてむしろ不利に働く場合があることが知られている。この場合、改善策として生体内に於いてより溶解性、吸収性の高いβ−TCP(リン酸三カルシウム)を併用、もしくはこれを単独で用いることで骨の修復が促進されることが知られている。さらに、近年、ヒドロキシアパタイト中のリン酸基の一部が炭酸イオンに置き換わったB型炭酸アパタイトがより優れた生体内吸収性材料の候補として注目を集めている。即ち、生体骨ミネラル成分の組成により近い組成を有するB型炭酸アパタイトを利用することで、該アパタイトの結晶性が比較的低く、生体内において該アパタイトの溶解、吸収性が一段と向上し、このことから骨の修復治療に好適に利用することが出来ることが期待される。こうした利点のため、B型炭酸アパタイトを高純度で簡便に得ることを目的に、その製造方法について従来から様々な検討が行われている。
上記の様な、医用材料として好適に使用出来るB型炭酸アパタイトの製造方法の例として、例えば非特許文献1および非特許文献2に示されるように、無水リン酸水素カルシウム(モネタイト)に炭酸ナトリウムなどの炭酸塩を加えて加熱することでB型炭酸アパタイトを合成する方法が知られている。この方法では、反応条件として高温で数日間という極めて長時間の反応時間を必要とするため、工業的に効率よくB型炭酸アパタイトを得ることが出来ないという問題がある。また、生成物中には微量の炭酸カルシウムが副成して不純物として含まれ、これ以外にも相当量の結晶水が取り込まれており、乾燥時間を長くしても十分に脱水出来ず、こうしたことから純度の高いB型炭酸アパタイトを得ることが出来なかった。更には、上記の方法で得られたB型炭酸アパタイトは微粒子として得ることが極めて困難であり、粉砕して液中に分散させたコーティング液を作製して様々な基材表面にコーティングを行おうとしても、炭酸アパタイト粒子が凝集し、均一なコート面を得ることが出来ないことから、コーティング用途には用いることが出来ないと言う問題があった。
非特許文献3には、B型炭酸アパタイトの合成方法として、無水リン酸水素カルシウム(モネタイト)を炭酸カルシウム(カルサイト)と共に加熱することでB型炭酸アパタイトを合成する方法が示されている。この場合も高温で数日以上の極めて長い反応時間を必要とし、さらには生成物中に未反応の炭酸カルシウムが混在する場合があるため、高純度のB型炭酸アパタイトを効率よく製造する方法ではなかった。更には、こうした方法で得られたB型炭酸アパタイトは微粒子として得ることが極めて困難であり、また粒子の凝集に伴い均一なコート面を得ることが困難であった。
非特許文献4には、B型炭酸アパタイトの合成方法として、炭酸カルシウム(カルサイト)のブロックを形成し、これをリン酸水素ナトリウム水溶液中に長時間浸漬することでB型炭酸アパタイトのブロックを得る方法が示されているが、この場合に於いても生成したB型炭酸アパタイトのブロック中には、炭酸カルシウムが混在することがあるため、高純度のB型炭酸アパタイトを効率よく製造する方法ではなかった。更には、こうした方法で得られたB型炭酸アパタイトは微粒子として得ることが極めて困難であり、また粒子の凝集に伴い均一なコート面を得ることが困難であった。
非特許文献5には、B型炭酸アパタイトの合成方法として、硫酸カルシウム(ジプサム)に水酸化カルシウムを添加して長時間加熱する方法が示されているが、この方法で得られるB型炭酸アパタイトには、水酸化カルシウムや炭酸カルシウムが混在することがあるため、高純度のB型炭酸アパタイトを効率よく製造する方法ではなかった。更には、こうした方法で得られたB型炭酸アパタイトは微粒子として得ることが極めて困難であり、また均一なコート面を得ることも困難であった。
非特許文献6には、B型炭酸アパタイトの合成方法として、硫酸カルシウム(ジプサム)にリン酸水素アンモニウムを溶解した水溶液を加えて高温で長時間加熱する方法が示されている。この方法で得られたB型炭酸アパタイトには出発原料である硫酸カルシウムが含まれる場合があり、高純度のB型炭酸アパタイトを効率よく製造する方法ではなかった。更には、こうした方法で得られたB型炭酸アパタイトは微粒子として得ることが極めて困難であり、また均一なコート面を得ることも困難であった。
非特許文献7には、B型炭酸アパタイトの合成方法として、水酸化カルシウムの水懸濁液中に炭酸ガスを導入しながら、攪拌下にリン酸水溶液を徐々に添加してB型炭酸アパタイトを合成する方法が示されている。この場合、炭酸ガスの導入量やリン酸水溶液の添加速度および反応温度等の様々なパラメータの変化により、生成する炭酸アパタイトの性質が大きく異なる問題があり、炭酸アパタイト中に導入される炭酸イオンの割合を制御することが困難であり、更にはB型炭酸アパタイト以外に、水酸基が炭酸イオンに置換したA型炭酸アパタイトが副成する場合があり、高純度のB型炭酸アパタイトを効率よく製造する方法ではなかった。更には、こうした方法で得られたB型炭酸アパタイトは微粒子として得ることが極めて困難であり、また均一なコート面を得ることも困難であった。
特許文献1には、B型炭酸アパタイトの合成方法として、リン酸水素カルシウム二水和物(ブルシャイト)を炭酸カルシウム(カルサイト)と共に加熱することでB型炭酸アパタイトを合成する方法が示されている。この方法で得られる炭酸アパタイトは粒子径が10μm以上の大きさである粗大粒子として得られ、液中において均一な分散液を得ることが出来ないことから、コーティング用途には用いることが出来ないと言う問題があった。また、生成する炭酸アパタイト中に、原料である炭酸カルシウムが残存し易いという問題もあり、加えて、炭酸アパタイト中に導入される炭酸イオンの比率が比較的小さく、またその導入率も制御しがたい問題があった。
特許文献2には炭酸カルシウムにリン酸を加えて反応を行うことでB型炭酸アパタイトを合成する方法が開示されているが、この方法では生成物中に炭酸カルシウムが残存し、高純度のB型炭酸アパタイトを効率よく製造出来る方法ではなかった。更には、こうした方法で得られたB型炭酸アパタイトは微粒子として得ることが極めて困難であり、また均一なコート面を得ることが困難であった。
特許文献3には、酢酸カルシウム水溶液中に、炭酸アンモニウム塩とリン酸二水素アンモニウム塩を溶解した水溶液を、pH7.4±0.2、および温度60±1℃の条件で攪拌しながら添加することで、B型炭酸アパタイトを合成する方法が開示されている。しかしながら、こうした合成方法で得られる炭酸アパタイト中には、炭酸イオンの導入率が極めて低く、導入率を増加するため炭酸アンモニウム塩の添加量を増大すると炭酸カルシウムなどの副生成物が不純物として含まれる場合や、炭酸イオンの導入率を制御することも困難であることから、高純度のB型炭酸アパタイトを効率よく製造する方法ではなかった。更には、こうした方法で得られたB型炭酸アパタイトは微粒子として得ることが極めて困難であり、また均一なコート面を得ることが困難であった。
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本発明はB型炭酸アパタイトを高純度で得るための簡便で生産性の良好な製造方法、およびコーティング用途に好適なB型炭酸アパタイト微粒子の製造方法を与えることを課題とする。
本発明の課題は、下記の製造方法を用いることで基本的に解決される。
1.リン酸水素カルシウム二水和物と、これに対して0.2モル比以上の下記一般式(I)で表される炭酸塩、もしくは0.4モル比以上の下記一般式(II)で表される炭酸水素塩を水中に於いて混合し、反応させることで得られるB型炭酸アパタイトの製造方法。
2.上記1に記載のB型炭酸アパタイトの製造方法により得られたB型炭酸アパタイトを、メディアミルを使用して湿式分散処理を行うB型炭酸アパタイト微粒子の製造方法。
3.上記湿式分散処理を行う際に、ポリリン酸(塩)を加えて湿式分散処理を行う、上記2に記載のB型炭酸アパタイト微粒子の製造方法。
1.リン酸水素カルシウム二水和物と、これに対して0.2モル比以上の下記一般式(I)で表される炭酸塩、もしくは0.4モル比以上の下記一般式(II)で表される炭酸水素塩を水中に於いて混合し、反応させることで得られるB型炭酸アパタイトの製造方法。
2.上記1に記載のB型炭酸アパタイトの製造方法により得られたB型炭酸アパタイトを、メディアミルを使用して湿式分散処理を行うB型炭酸アパタイト微粒子の製造方法。
3.上記湿式分散処理を行う際に、ポリリン酸(塩)を加えて湿式分散処理を行う、上記2に記載のB型炭酸アパタイト微粒子の製造方法。
一般式(I)および(II)において、Mはアルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンを表す。
本発明により、B型炭酸アパタイトを高純度で得るための簡便で生産性の良好な製造方法、およびコーティング用途に好適なB型炭酸アパタイト微粒子の製造方法を与えることが出来る。
本発明を構成する要素として、リン酸水素カルシウム二水和物と、下記一般式(I)で表される炭酸塩、もしくは下記一般式(II)で表される炭酸水素塩を水中において混合することでB型炭酸アパタイト(以下、単に炭酸アパタイトとも記載)を選択的に得ることが基本である。以下に各々の構成要素について説明を行う。
一般式(I)および(II)において、Mはアルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンを表す。
本発明に於いてB型炭酸アパタイトの前駆体としてリン酸水素カルシウム二水和物(ブルシャイト)を用い、これに対して上記一般式(I)の炭酸塩、もしくは一般式(II)の炭酸水素塩を組み合わせて用いることが特徴である。先述したように、従来からの様々なB型炭酸アパタイトの製造方法において無水リン酸水素カルシウム(モネタイト)が盛んに利用されてきた。一方で、ヒドロキシアパタイトの製造方法として古くからチセリウスの方法として知られるリン酸水素カルシウム二水和物をアルカリで処理する方法が知られている。チセリウスの方法によりリン酸水素カルシウム二水和物を加熱しながらアルカリで処理を行った場合、生成するヒドロキシアパタイト粉体の形状は、元のリン酸水素カルシウム二水和物の特徴である平板状の形状を保持することが知られている。一方、リン酸水素カルシウム二水和物は水中で75℃以上の温度で加熱することで脱水し、無水リン酸水素カルシウムに脱水和相転位することが知られている。特開昭62−202808号公報には、リン酸水素カルシウム二水和物を水中で加熱することで無水リン酸水素カルシウムに変換し、その後これをさらにチセリウスの方法に従いアルカリで処理を行うことで特異な形状を有するヒドロキシアパタイト粉体を得る方法を開示している。従来から無水リン酸水素カルシウムを用いてこれをアルカリ処理することでヒドロキシアパタイトを合成すると、生成物は針状や微小な粒状の形態を有する結晶が得られることが知られている。このように、出発物質としてリン酸水素カルシウム二水和物を用いる場合とこれの無水物を用いる場合で、同一のアルカリ処理条件で処理を行っても、生成するヒドロキシアパタイトの形状が両者で大きく異なることが知られている。後述する実施例および比較例に於いて示すように、本発明に於いて、リン酸水素カルシウム二水和物からの炭酸アパタイトへの変換は、その途中で無水リン酸水素カルシウムを経由して生じるものではない。
リン酸水素カルシウム二水和物の結晶構造の特徴として、結晶水として存在する水分子が層状に配列してリン酸とカルシウムイオンを含む結晶格子の層と並列して存在することが挙げられる。本発明ではこの水分子の層を通してアルカリ等の水溶液中のイオンが結晶格子中に容易に拡散し、リン酸水素カルシウム二水和物の結晶中からリン酸イオンや水分子を放出することでヒドロキシアパタイトに容易に結晶転位することが特徴である。無水リン酸水素カルシウムを同様にアルカリで処理を行っても、水溶液中のアルカリイオンが結晶中に浸透しにくく、かつ結晶格子中に存在するリン酸イオン等が水中に拡散し難いためヒドロキシアパタイトへの転位は相対的に起こりにくくなることが知られている。本発明に於いて、リン酸水素カルシウム二水和物を用いて、これに前記一般式(I)の炭酸塩、もしくは一般式(II)の炭酸水素塩を加えて反応を行うことで極めて効率的に高純度のB型炭酸アパタイトが得られることを見出したものであり、無水リン酸水素カルシウムを使用した場合には、効率的に炭酸アパタイトへの変換が生じないため、高純度の炭酸アパタイトを効率的に得ることが出来ないことを後述する実施例および比較例の中で示した。
リン酸水素カルシウム二水和物のヒドロキシアパタイトへの結晶転位は中性付近のpHでも容易に進行することが知られている(H. Monma and T. Kamiya, J. Materials Science, 22, 4247-4258 (1987))。この結晶転位反応は、反応の過程で酸を発生することから、発生する酸を中和するようにアルカリ性化合物を添加して反応を進行させる必要があるため、有機、無機の各種アルカリ性化合物が反応に使用されてきた。本発明に於いては、アルカリ性化合物として前記一般式(I)の炭酸塩、もしくは一般式(II)の炭酸水素塩を用いることで、選択的にB型炭酸アパタイトが得られることを見出したものであり、しかも得られたB型炭酸アパタイトは後述するメディアミルを利用した湿式分散処理を施すことで、他の方法では得られなかったコーティング用途に用いることが可能な、B型炭酸アパタイト微粒子が得られる。
上記リン酸水素カルシウム二水和物を用いて、これと前記一般式(I)の炭酸塩、もしくは一般式(II)の炭酸水素塩を水中に於いて混合し、反応させることでB型炭酸アパタイトを高純度で得ることを見出したことが本発明の特徴である。この場合、水中にあらかじめリン酸水素カルシウム二水和物を懸濁させた状態で、これに前記した炭酸塩または炭酸水素塩を添加する方法を用いても良いし、或いは、前記した炭酸塩または炭酸水素塩を含む水溶液中にリン酸水素カルシウム二水和物を添加して反応を行っても良い。
本発明の製造方法で得られるB型炭酸アパタイトは結晶性を有し、後述する実施例に於いて示すように、本発明で得られるB型炭酸アパタイトの粉体は、各々の粉体がナノメートルオーダーの極めて微細な炭酸アパタイト微粒子の集合体から構成されることも特徴の一つである。本発明において前記一般式(I)の炭酸塩、もしくは一般式(II)の炭酸水素塩を加えて加熱を行うとは、水溶液中に於いてリン酸水素カルシウムと前記一般式(I)の炭酸塩、もしくは一般式(II)の炭酸水素塩を共存させて、室温以上の温度で反応を行うことであり、用いる前記一般式(I)の炭酸塩、もしくは一般式(II)の炭酸水素塩としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。さらに、反応の際の温度として、30℃以上である場合が好ましく、さらに40℃以上である場合が好ましい。反応温度が30℃より低い場合には、B型炭酸アパタイトへの変換が極めて長時間を要する場合があり、さらには生成物中に出発原料であるリン酸水素カルシウム二水和物が残存する場合がある。反応温度の上限としては100℃が好ましく、オートクレーブ等を使用してこれ以上の温度で反応を行った場合、生成物としてB型炭酸アパタイト以外に、ヒドロキシアパタイトに於いて水酸基の一部が炭酸イオンに置き換わった構造を有するA型炭酸アパタイトが副成する場合がある。
上記のリン酸水素カルシウム二水和物に対する炭酸塩または炭酸水素塩の比率に関して重要である点は、リン酸水素カルシウム二水和物に対して0.2モル比以上の一般式(I)で表される炭酸塩、もしくは0.4モル比以上の一般式(II)で表される炭酸水素塩を用いることが必要で、この場合両者を水中に於いて混合し、反応することで本発明の目的とする高純度なB型炭酸アパタイトを簡便に得ることが出来る。このことは、リン酸水素カルシウム二水和物が炭酸アパタイトに変換する際にリン酸を放出する過程が含まれるため、発生するリン酸を前記した炭酸塩或いは炭酸水素塩により中和することでこうした反応が進行することが考えられる。また、本発明に於いて水中とは、少なくとも水を50質量%以上、より好ましくは60質量%以上含む媒体中において上述した反応を行うことを意味し、必要に応じて水以外に、水に混和する各種有機溶剤や、或いは窒素、ヘリウム、炭酸ガス、その他の気体を導入した状態で反応を行っても良い。
リン酸水素カルシウム二水和物と前記した炭酸塩もしくは炭酸水素塩の混合方法に関しては様々な方法で行うことが出来る。例えば、リン酸水素カルシウム二水和物を水中に於いて懸濁した状態で攪拌しながら、これに炭酸塩または炭酸水素塩を固体もしくは溶液の状態で徐々に添加しながら反応を行う方法や、或いは両者を最初に全量混合して反応を行う方法、或いは、炭酸塩または炭酸水素塩を溶解した水溶液中にリン酸水素カルシウム二水和物を徐々に添加しながら反応を行う方法等、何れの方法を行っても良い。更には、水中にリン酸水素カルシウム二水和物と炭酸塩または炭酸水素塩を各々別々に添加しながら両者を混合し、加熱を行っても良い。この際最も重要な点は、リン酸水素カルシウム二水和物を完全に炭酸アパタイトに変換するためには、リン酸水素カルシウム二水和物に対する炭酸塩のモル比として最低限0.2、または炭酸水素塩のモル比として0.4以上が必要であり、これ以下のモル比で炭酸塩もしくは炭酸水素塩を用いた場合、生成物には未反応のリン酸水素カルシウム二水和物(もしくはこれの無水物)が残存して含まれることである。従って、上記で述べた両者の様々な混合方法において、反応系中に存在するリン酸水素カルシウム二水和物に対して0.2モル比以上の一般式(I)で表される炭酸塩、または0.4モル比以上の一般式(II)で表される炭酸水素塩が存在していることが必要である。
リン酸水素カルシウム二水和物に対する一般式(I)で表される炭酸塩のモル比が0.2以上、もしくは一般式(II)で表される炭酸水素塩のモル比が0.4以上である場合の各々の炭酸塩または炭酸水素塩のモル比の上限は特に定めない。例えば、リン酸水素カルシウム二水和物を水中に於いて懸濁した状態で攪拌しながら、これに上記の炭酸塩もしくは炭酸水素塩を固体もしくは溶液の状態で徐々に添加しながら反応を行う方法をとった場合、反応系中のリン酸水素カルシウム二水和物が全て炭酸アパタイトに変換した後も上記の炭酸塩もしくは炭酸水素塩を添加しても問題は生じない。即ち、過剰の一般式(I)で表される炭酸塩、または一般式(II)で表される炭酸水素塩は生成物を系中から分離して水洗することで生成物中から容易に除去出来るため、リン酸水素カルシウム二水和物に対して上記の炭酸塩または炭酸水素塩をモル比で1.0以上の大過剰に添加しても良い。
後述する実施例に於いて示すように、本発明の特徴として、上記のリン酸水素カルシウム二水和物に対する一般式(I)で表される炭酸塩、もしくは一般式(II)で表される炭酸水素塩の比率を種々変えることで、生成する炭酸アパタイト中に含まれる炭酸イオンの比率を制御出来ることが挙げられる。上記のような様々な方法に従ってリン酸水素カルシウム二水和物と上記の炭酸塩もしくは炭酸水素塩を混合して反応を行った場合、両者のモル比率に従って、生成する炭酸アパタイト中に含まれる炭酸イオンの比率が変化させることが出来る。炭酸アパタイトとして均一な組成の炭酸アパタイトを得るためには、両者のモル比が反応を通して一定であることが好ましい。そのためには、例えば両者を最初から全量一括混合して反応を行う方法や、或いは水中にリン酸水素カルシウム二水和物と炭酸塩または炭酸水素塩を各々別々に、両者のモル比を調節しながら添加し、両者を混合し、反応を行っても良い。最も簡便な方法は、前者の、全量一括混合して加熱を行う方法である。この場合、リン酸水素カルシウム二水和物に対する炭酸塩の比率を0.2モル比以上、または炭酸水素塩の比率を0.4モル比以上の割合で混合して加熱を行うと、後述する実施例において示すように、炭酸塩または炭酸水素塩のモル比に応じて、生成する炭酸アパタイト中の炭酸イオンの比率を制御出来る。しかしながら、上記の炭酸塩または炭酸水素塩を極端に大過剰に用いた場合、反応系の攪拌が不十分であるなどの場合に、炭酸アパタイト以外に炭酸カルシウムなどの不純物が副成して含まれ、高純度の炭酸アパタイトが得られない場合がある。こうした炭酸カルシウムなどの不純物の副成を防止するためには、リン酸水素カルシウム二水和物と上記の炭酸塩または炭酸水素塩を一括混合して加熱を行う場合には、リン酸水素カルシウム二水和物に対する一般式(I)で表される炭酸塩のモル比が0.2〜1.2の範囲内、または一般式(II)で表される炭酸水素塩のモル比が0.4〜2.4の範囲内の比率で全量を同時に混合して加熱を行うことが好ましい。
上記のリン酸水素カルシウム塩二水和物と一般式(I)で表される炭酸塩または一般式(II)で表される炭酸水素塩を混合して反応を行う際の系のpHについては特に制御する必要はなく、上記のリン酸水素カルシウム二水和物に対する上記の炭酸塩もしくは炭酸水素塩の好ましいモル比率の範囲内に於いて反応を行う場合には、反応系のpHは反応初期及び反応完結時の何れに於いてもpH=6〜10の範囲にあることから、この範囲で反応を行うことが好ましい。
従来技術では、炭酸アパタイトを製造する方法は先述したような様々な先行技術の中で述べられているが、これらは何れも炭酸アパタイト中に含まれる炭酸基の比率を制御することが困難であった。これに対して、本発明の製造方法によれば、後述する実施例に於いて示すように、上記のリン酸水素カルシウム二水和物に対する一般式(I)で表される炭酸塩または一般式(II)で表される炭酸水素塩の比率を種々変えることで、生成する炭酸アパタイト中に含まれる炭酸基の比率を制御出来ることが特徴の一つである。このことに加えて、さらに、炭酸アパタイト中に含まれる炭酸基の比率を増加させると、それに伴って、得られる炭酸アパタイトの結晶性が徐々に低下し、炭酸基の比率と結晶性の両方を制御した形でB型炭酸アパタイトを製造出来ることが本発明の特徴の一つである。このことを利用して、生体内における溶解性や吸収性を考慮した、最も有利な特性を示すB型炭酸アパタイトの設計と製造が可能となった。
上記の本発明の製造方法で得られる炭酸アパタイトは微粒状の粉体であるが、後述する実施例の中で示すように、それぞれの粉体を走査型電子顕微鏡で観察すると、ナノメートルサイズの微小な炭酸アパタイト微粒子が集合して粉体を形成しており、比表面積の極めて大きな表面多孔質の粉体であることが判明した。これらの炭酸アパタイト微粒子集合体は例えばクロマト用カラム用担体としての用途や、蛋白や様々なイオン性物質に対する吸着剤の用途に対して粉体として利用することも出来る。本発明では特にコーティング用途に好適である炭酸アパタイト微粒子の製造方法を見出すことを目的の一つとして検討を行い、本発明の製造方法で得られる炭酸アパタイトを用いて、これをメディアミルを使用して湿式分散処理を行うことで炭酸アパタイト微粒子を製造出来ることを見出した。このようにして得られた炭酸アパタイト微粒子は、これを媒体中で分散した分散物として用いることでコーティング用途に好ましく利用することが出来る。
上記の炭酸アパタイト微粒子の製造方法として特に好ましい方法は、上記した本発明の製造方法で得られる炭酸アパタイトの粉体を用いて、これに湿式分散処理を行うことである。このためには、従来から知られている様々な湿式分散処理方法を利用することが出来る。好ましい湿式分散方法としては、メディアミルを利用した湿式分散方式が特に好ましく、具体的には、炭酸アパタイトを導入した媒体中に於いて、通常ガラスビーズやアルミナビーズ、その他のセラミックビーズ等のメディアを加えて振盪や攪拌を行い、炭酸アパタイト粒子と該ビーズが機械的に衝突し、微粉砕されることで微粒化を行う処理方法を利用することが出来る。少量をバッチ方式で処理を行う場合には、メディアミルとしてペイントコンディショナーを使用して数時間に亘る振盪を行うことで湿式分散処理を行うことが出来る。また上記したメディアミルは、ダイノミルのような連続方式での湿式分散処理が可能である装置を用いて、これを複数台用いて直列に配置して1パスで湿式分散処理を行っても良く、或いは1台のメディアミルを用いて複数回処理を繰り返すことも好ましく行うことが出来る。このような湿式分散処理を行うことで、経時により沈降することや、沈殿物や凝集物が発生することが無く、また均一な厚みのコート層が得られるといったコーティング用途に好適な炭酸アパタイト微粒子を得ることが出来る。
炭酸アパタイトを分散するための媒体としては水が最も好ましいが、水に対して20質量%未満の添加量であれば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類や、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等の極性溶媒等、水と混和性のある種々の溶剤を添加して用いることも出来る。
上記したメディアを利用して炭酸アパタイトの湿式分散処理を行う場合に、使用するメディアはセラミックビーズを用いることが好ましい。特に炭酸アパタイトを分散する場合に、ビーズが研磨されるなどしてビーズ由来の不純物が得られる炭酸アパタイト微粒子の分散物に混入することを防止することが好ましい。こうした目的で利用できるセラミックビーズとして、具体的にはZrO、立方晶ジルコニア、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナなどのジルコニアを含有するセラミックビーズや合成ダイヤモンド、窒化珪素ビーズなどを最も好ましく用いることが出来る。また、メディアの平均直径は0.01〜10mmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1〜5mmである。こうしたメディアを使用したメディアミルを用いる湿式分散処理の条件は、通常行われる室温での処理であり、特に処理時間や温度等に関する制限は無い。また、パス回数については1回で十分である場合もあるが、2〜7回程度のパス回数で処理を行うことで、より粒子径分布が狭く、かつ分散安定性に優れた炭酸アパタイト微粒子の分散物が得られることから好ましく行うことが出来る。
上記の炭酸アパタイト微粒子の分散物を製造する際に、分散剤として、各種界面活性剤や無機化合物および各種水溶性ポリマーなどを添加して湿式分散処理を行い、得られる炭酸アパタイト微粒子の分散物における体積平均粒子径をより小さくすることが好ましい。
上記の分散剤として用いることの出来るアニオン性界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、オクチルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルアンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル塩類、アセチルアルコール硫酸エステルナトリウム等の脂肪族アルコール硫酸エステル塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、ラウリル燐酸ナトリウム、ステアリル燐酸ナトリウム等のアルキル燐酸エステル塩類、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸アンモニウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ラウリルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類等を挙げることができる。
前記の分散剤として用いることの出来るノニオン性界面活性剤としては、種々の鎖長のポリエチレンオキサイドに、アルキル基やフェニル基およびアルキル置換フェニル基が結合したポリエチレンオキサイドアルキルエーテル、ポリエチレンオキサイドアルキルフェニルエーテルが好ましく用いることが出来、これらの内でも、商品名TWEEN20、同40、同60および同80として知られるソルビタンモノアルキレート誘導体が最も好ましく用いることが出来る。
前記の分散剤として用いることの出来る水溶性ポリマーとしては、例えば、ゼラチン、ゼラチン誘導体(例えば、フタル化ゼラチン等)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、キサンタン、カチオン性ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、デンプン、各種変性デンプン(例えばリン酸変性デンプン等)等を挙げることが出来る。
前記の分散剤として用いることの出来る無機化合物として各種リン酸塩を挙げることが出来るが、特に好ましい例としてポリリン酸(塩)を挙げることが出来る。この場合、得られる炭酸アパタイト微粒子の分散物中に含まれる微粒子の大きさが体積平均粒子径にして30〜300nmの範囲にある微粒子に分散され、実質的に有機物を含まず、高純度で分散安定性に優れた炭酸アパタイト微粒子の分散物が得られることから、極めて好ましく用いることが出来る。本発明により得られる炭酸アパタイト微粒子の分散物をコーティング用途に使用して、例えば前記した生体インプラントへの適用を行った場合、炭酸アパタイト微粒子の分散物中に有機物が含まれている場合、生体に対する安全性が損なわれる場合がある。よって本発明の炭酸アパタイト微粒子の製造方法によって得られる分散物は、有機物を含有しないことが好ましい。尚、本発明において実質的に有機物を含まないとは、炭酸アパタイトに対して有機物が1質量%以下であることを意味する。より好ましくは0.1質量%以下である。
上記で用いることの出来るポリリン酸(塩)の例として、ピロリン酸(ナトリウム)、トリポリリン酸(ナトリウム)、テトラポリリン酸(ナトリウム)、直鎖状のポリリン酸(ナトリウム)のような直鎖状のポリリン酸(塩)及びこれらの水和物が挙げられ、或いは環状化合物であるヘキサメタリン酸(ナトリウム)などを含み、実際には高分子化合物であるメタリン酸(ナトリウム)や、或いは、直鎖状骨格のみならず、分岐構造を含むウルトラリン酸(ナトリウム)及びこれらの水和物などを挙げることが出来る。これらの種々のポリリン酸(塩)は複数の種類を任意の割合で混合して用いても良い。なおここでポリリン酸(塩)とは、ポリリン酸あるいはこれらの塩であることを意味する。
上記のような種々の分散剤を用いて炭酸アパタイト微粒子を製造する場合には、炭酸アパタイトに対する各種分散剤の比率についても好ましい範囲が存在する。炭酸アパタイト100質量部に対して、用いられる分散剤の量は、5〜100質量部とすることが最も好ましい。
以下に実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の百分率は断りのない限り質量基準である。
(実施例1〜4)(炭酸アパタイトの合成)
リン酸水素カルシウム二水和物(下記表中でDCPDと略す。和光純薬工業製試薬)を43グラム(0.25モル)秤量し、還流冷却管とこれに接続した気体のトラップ管を備えた500mLの三角フラスコへ移し、イオン交換水200グラムを加えて攪拌を行いながら、炭酸ナトリウムを表1に示すモル比(Na2CO3/DCPDモル比)で各々の実施例に於いて添加して攪拌を行った。この際の反応系のpHは反応を通して何れの実施例に於いても7〜9の範囲であった。これを水浴上で攪拌しながら反応系の温度を80℃に上昇し、この温度で2時間加熱攪拌を行った。反応中炭酸ガスが発生し、その様子はトラップ中にバブリングする炭酸ガスの様子を観察し、炭酸ガスの発生が停止した時点を反応の終点とした。その後室温まで反応系を冷却し、吸引濾過を行って生成物をグラスフィルター上に回収した。イオン交換水により生成物を十分に洗浄した後、80℃に調節した乾燥器内で1昼夜加熱乾燥を行うことで白色の粉体を得た。
リン酸水素カルシウム二水和物(下記表中でDCPDと略す。和光純薬工業製試薬)を43グラム(0.25モル)秤量し、還流冷却管とこれに接続した気体のトラップ管を備えた500mLの三角フラスコへ移し、イオン交換水200グラムを加えて攪拌を行いながら、炭酸ナトリウムを表1に示すモル比(Na2CO3/DCPDモル比)で各々の実施例に於いて添加して攪拌を行った。この際の反応系のpHは反応を通して何れの実施例に於いても7〜9の範囲であった。これを水浴上で攪拌しながら反応系の温度を80℃に上昇し、この温度で2時間加熱攪拌を行った。反応中炭酸ガスが発生し、その様子はトラップ中にバブリングする炭酸ガスの様子を観察し、炭酸ガスの発生が停止した時点を反応の終点とした。その後室温まで反応系を冷却し、吸引濾過を行って生成物をグラスフィルター上に回収した。イオン交換水により生成物を十分に洗浄した後、80℃に調節した乾燥器内で1昼夜加熱乾燥を行うことで白色の粉体を得た。
得られた粉体は広角X線回折により測定を行い図1〜4に示す回折パターンを得た。図1は実施例1で得られた炭酸アパタイトの広角X線回折パターンを示す。図2は実施例2で得られた炭酸アパタイトの広角X線回折パターンを示す。図3は実施例3で得られた炭酸アパタイトの広角X線回折パターンを示す。図4は実施例4で得られた炭酸アパタイトの広角X線回折パターンを示す。何れの場合も炭酸アパタイトとして予測されるピーク位置に回折ピークを示した。また、図1〜4に示す回折パターンより、炭酸アパタイト以外の不純物の存在は認められず、高純度で結晶性の良好な炭酸アパタイトが得られていることが明らかとなった。また、各々の図中に於いて矢印で示した位置の回折ピークは、(002)面からの回折ピークを示し、実施例1〜4で合成に用いた炭酸ナトリウムの比率が増大するに従い、このピークの強度が減少し、さらにピークの半値幅が0.32°(実施例1)から0.37°(実施例2)、0.41°(実施例3)および0.52°(実施例4)と徐々に増大することから、この順に結晶性が僅かずつ低下している様子が伺えた。
上記で得られた実施例1〜4の炭酸アパタイトはFT−IRを使用して更に詳細に構造解析を行った。図5には実施例1で得られた炭酸アパタイトのFT−IRスペクトルチャートを示す。図6には実施例2で得られた炭酸アパタイトのFT−IRスペクトルチャートを示す。図7には実施例3で得られた炭酸アパタイトのFT−IRスペクトルチャートを示す。図8には実施例4で得られた炭酸アパタイトのFT−IRスペクトルチャートを示す。これらの図中に於いて矢印で示した1460cm−1,1410cm−1および875cm−1付近の吸収は何れもB型炭酸アパタイトに含まれる炭酸イオンに特徴的な吸収であることから、生成物はB型炭酸アパタイトであると証明された。さらに、各々の炭酸アパタイトに含まれる炭酸イオンの比率(質量%)について、Feathersotone等の方法に従い(J.D.B. Featherstone, Caries Res., 18, 63-66 (1984))1010cm−1付近のリン酸イオンに基づく吸収ピーク強度に対する1410cm−1の炭酸イオンに基づく吸収ピーク強度の比率から定量を行った。結果を表2に示した。
上記の結果から実施例1〜4で合成に用いた炭酸ナトリウムの量が増大するに従い、生成した炭酸アパタイト中に含まれる炭酸イオンの比率が増大することが分かった。さらに、図9には、実施例1〜4に加えて、さらに様々な添加量で炭酸ナトリウムを加えて同様にして炭酸アパタイトを合成し、得られた炭酸アパタイト中に含まれる炭酸イオンの比率を、用いた炭酸ナトリウムのリン酸水素カルシウム二水和物に対するモル比に対してプロットした図を示した。図9より、リン酸水素カルシウム二水和物に対する炭酸ナトリウムのモル比を増大するに従い、ほぼ直線的に炭酸アパタイト中に導入される炭酸イオンの比率が増大することが分かった。ここで、炭酸アパタイトの化学構造式としてCa10(PO4)6−x(CO3)x(OH)2と仮定すると、リン酸基に対して置換する炭酸イオンの数xに対応して炭酸アパタイト中に含まれる炭酸イオンの質量%は次のように変化する。即ち、x=1で6.9%、x=2で12.8%、x=3で20.0%、x=4で27.8%、x=5で36.2%と計算される。従って先の表2および図9の結果より、本発明の製造方法により、炭酸アパタイト中に含まれる炭酸イオンの比率として、リン酸基2個に対して炭酸イオンが4個程度まで導入された構造を有するB型炭酸アパタイトが得られることが明らかとなった。
図10には、実施例4で得られた炭酸アパタイトの走査型電子顕微鏡による拡大図を示す。(a)1万倍、(b)10万倍。これによりナノメートルサイズの微細な炭酸アパタイト微粒子が集合して該粉体を形成していることが明確になった。
(分散剤を使用しない場合の炭酸アパタイト微粒子の製造方法と評価結果)
上記で得られた炭酸アパタイトを用いて以下のようにしてメディアミルを利用した湿式分散処理を行うことで、炭酸アパタイト微粒子を製造した。即ち、上記実施例4で得た炭酸アパタイト20グラムを0.2リットルのポリプロピレン容器に移し、さらにイオン交換水80グラムおよび粒径0.3mmのジルコニアビーズを160グラム加えて密閉し、ペイントコンディショナーを使用して6時間湿式分散処理を行った。その後、濾布を使用して分散物からジルコニアビーズを分離した。得られた分散物の固形分濃度は20質量%であった。これを用いて以下のように評価を行った。
上記で得られた炭酸アパタイトを用いて以下のようにしてメディアミルを利用した湿式分散処理を行うことで、炭酸アパタイト微粒子を製造した。即ち、上記実施例4で得た炭酸アパタイト20グラムを0.2リットルのポリプロピレン容器に移し、さらにイオン交換水80グラムおよび粒径0.3mmのジルコニアビーズを160グラム加えて密閉し、ペイントコンディショナーを使用して6時間湿式分散処理を行った。その後、濾布を使用して分散物からジルコニアビーズを分離した。得られた分散物の固形分濃度は20質量%であった。これを用いて以下のように評価を行った。
上記で得られた分散物を用いて、分散している炭酸アパタイト微粒子の大きさを測定するために、光散乱回折式粒度分布計(堀場製作所製粒度分布測定装置LA−920)を使用して測定した。結果を図11に示す。図11は、実施例4で得られた炭酸アパタイトを分散剤を使用せず湿式分散処理を行って得られた炭酸アパタイト微粒子分散物の粒子径分布曲線を表す。図11より求められた体積平均粒子径は、メジアン径で2.3μmであり、比較的粒子径分布の狭い微粒子であることが明らかとなった。また上記で得られた分散物に含まれる炭酸アパタイト微粒子の分散安定性を評価するために、分散物を透明ガラス製容器内に入れて1週間室温で静置しておき、静値後の分散物の様子を目視で観察したが、沈殿物や凝集物の発生もなく、安定に分散していることが確認された。尚、実施例1〜3で得られた炭酸アパタイトを用いて同様に湿式分散処理を行って得られた炭酸アパタイト微粒子についても上記と同様に体積平均粒子径を測定し、さらに分散安定性を評価したところ、体積平均粒子径は何れの場合も2.0〜2.5μmであり、分散安定性も良好である結果が得られた。
(ポリリン酸(塩)を用いた際の炭酸アパタイト微粒子の製造方法と評価結果)
上記実施例4で得た炭酸アパタイト20グラムを0.2リットルのポリプロピレン容器に移し、これにピロリン酸ナトリウム十水和物(和光純薬工業製試薬)を4グラム添加し、さらにイオン交換水76グラムおよび粒径0.3mmのジルコニアビーズを160グラム加えて密閉し、ペイントコンディショナーを使用して6時間湿式分散処理を行った。その後、濾布を使用して分散物からジルコニアビーズを分離した。得られた分散物のpHは7であり、固形分濃度は22質量%であった。得られた分散物を用いて、分散している炭酸アパタイト微粒子の大きさを先の場合と同様にして測定し、図12に示す結果を得た。図12は、実施例4で得られた炭酸アパタイトを分散剤としてピロリン酸ナトリウム十水和物を使用して湿式分散処理を行って得られた炭酸アパタイト微粒子の粒子径分布曲線を表す。求められた体積平均粒子径は、メジアン径で150nmであった。ポリリン酸(塩)として使用したピロリン酸ナトリウム十水和物の添加により、粒子径が大幅に低下したnmオーダーの微細な炭酸アパタイト微粒子が得られることが明らかとなった。上記で得られた炭酸アパタイト微粒子の分散安定性を評価するために、分散物を透明ガラス製容器内に入れて1週間室温で静置しておき、静値後の分散物の様子を目視で観察したが、沈殿物や凝集物の発生もなく、安定に分散していることが確認された。尚、実施例1〜3で得られた炭酸アパタイトを用いて上記と同様にピロリン酸ナトリウム十水和物を添加して同様に湿式分散処理を行い、得られた炭酸アパタイト微粒子についても上記と同様に体積平均粒子径を測定し、さらに分散安定性を評価したところ、体積平均粒子径は何れの場合も120〜170nmの範囲内であり、分散安定性も良好である結果が得られた。
上記実施例4で得た炭酸アパタイト20グラムを0.2リットルのポリプロピレン容器に移し、これにピロリン酸ナトリウム十水和物(和光純薬工業製試薬)を4グラム添加し、さらにイオン交換水76グラムおよび粒径0.3mmのジルコニアビーズを160グラム加えて密閉し、ペイントコンディショナーを使用して6時間湿式分散処理を行った。その後、濾布を使用して分散物からジルコニアビーズを分離した。得られた分散物のpHは7であり、固形分濃度は22質量%であった。得られた分散物を用いて、分散している炭酸アパタイト微粒子の大きさを先の場合と同様にして測定し、図12に示す結果を得た。図12は、実施例4で得られた炭酸アパタイトを分散剤としてピロリン酸ナトリウム十水和物を使用して湿式分散処理を行って得られた炭酸アパタイト微粒子の粒子径分布曲線を表す。求められた体積平均粒子径は、メジアン径で150nmであった。ポリリン酸(塩)として使用したピロリン酸ナトリウム十水和物の添加により、粒子径が大幅に低下したnmオーダーの微細な炭酸アパタイト微粒子が得られることが明らかとなった。上記で得られた炭酸アパタイト微粒子の分散安定性を評価するために、分散物を透明ガラス製容器内に入れて1週間室温で静置しておき、静値後の分散物の様子を目視で観察したが、沈殿物や凝集物の発生もなく、安定に分散していることが確認された。尚、実施例1〜3で得られた炭酸アパタイトを用いて上記と同様にピロリン酸ナトリウム十水和物を添加して同様に湿式分散処理を行い、得られた炭酸アパタイト微粒子についても上記と同様に体積平均粒子径を測定し、さらに分散安定性を評価したところ、体積平均粒子径は何れの場合も120〜170nmの範囲内であり、分散安定性も良好である結果が得られた。
(炭酸アパタイト微粒子のコーティング評価結果)
実施例4で得られた炭酸アパタイトにピロリン酸ナトリウム十水和物を添加して湿式分散処理後に得られた分散物を用いて、これをスライドガラス上に乾燥塗布膜厚が約2μmになるよう塗布を行った。乾燥後に塗膜を観察したところ、ほぼ完全に透明である均一な塗布膜が形成されていることが確認された。図13は、スライドガラス上にコートした実施例4で得られた炭酸アパタイト微粒子の走査型電子顕微鏡写真であり、倍率は10万倍である。これより炭酸アパタイト微粒子の大きさとして90〜200nm程度の一次粒子から成ることが判明し、先の粒子径分布測定結果と大凡良く一致する結果であった。尚、実施例1〜3で得られた炭酸アパタイトを用いて同様にスライドガラス上にコートした場合もほぼ完全に透明である均一な塗布膜を与え、更に塗布膜表面を走査型電子顕微鏡写真を用いて観察したところ同様に炭酸アパタイト微粒子の大きさとして90〜200nm程度の一次粒子から成ることが明らかとなった。
実施例4で得られた炭酸アパタイトにピロリン酸ナトリウム十水和物を添加して湿式分散処理後に得られた分散物を用いて、これをスライドガラス上に乾燥塗布膜厚が約2μmになるよう塗布を行った。乾燥後に塗膜を観察したところ、ほぼ完全に透明である均一な塗布膜が形成されていることが確認された。図13は、スライドガラス上にコートした実施例4で得られた炭酸アパタイト微粒子の走査型電子顕微鏡写真であり、倍率は10万倍である。これより炭酸アパタイト微粒子の大きさとして90〜200nm程度の一次粒子から成ることが判明し、先の粒子径分布測定結果と大凡良く一致する結果であった。尚、実施例1〜3で得られた炭酸アパタイトを用いて同様にスライドガラス上にコートした場合もほぼ完全に透明である均一な塗布膜を与え、更に塗布膜表面を走査型電子顕微鏡写真を用いて観察したところ同様に炭酸アパタイト微粒子の大きさとして90〜200nm程度の一次粒子から成ることが明らかとなった。
(実施例5〜8)(炭酸水素塩を用いた炭酸アパタイトの合成)
上記実施例1〜4の炭酸アパタイトの合成において、これらに使用した炭酸ナトリウムに換えて、実施例5〜8として、炭酸水素ナトリウムを表3に示すモル比(Na2CO3/DCPDモル比)で用いた以外は実施例1〜4と同様にして反応を行った。
上記実施例1〜4の炭酸アパタイトの合成において、これらに使用した炭酸ナトリウムに換えて、実施例5〜8として、炭酸水素ナトリウムを表3に示すモル比(Na2CO3/DCPDモル比)で用いた以外は実施例1〜4と同様にして反応を行った。
得られた生成物は先の実施例と同様にして水洗、乾燥を行った後、広角X線回折およびFT−IRを用いて解析を行ったところ、何れの実施例でもB型炭酸アパタイトが生成していることが確認され、これ以外の不純物が含まれない高純度で結晶性を有するB型炭酸アパタイトが得られていることを確認した。先の実施例と同様にしてFT−IRスペクトルを解析し、1010cm−1付近のリン酸イオンに基づく吸収ピーク強度に対する1410cm−1の炭酸イオンに基づく吸収ピーク強度の比率から炭酸アパタイト中に含まれる炭酸イオンの比率(質量%)について定量を行った。得られた結果を表4に纏めた。これより、用いた炭酸水素ナトリウムの比率が増大するに従い、生成した炭酸アパタイト中に含まれる炭酸イオンの比率が増大することが分かった。
図14には、実施例5〜8で得られた炭酸アパタイト中に含まれる炭酸イオンの比率を、用いた炭酸水素ナトリウムのリン酸水素カルシウム二水和物に対するモル比に対してプロットした図を示した。図14より、リン酸水素カルシウム二水和物に対する炭酸水素ナトリウムの添加量を増大するに従い、ほぼ直線的に炭酸アパタイト中に導入される炭酸イオンの比率が増大することが分かった。また、ここで得られた結果は先の図9で得られた結果とほぼ一致しており、本発明の炭酸塩として炭酸水素塩を用いた場合にも同様な結果が得られることが確認された。
さらに、実施例5〜8で得られた炭酸アパタイトを用いて、先の実施例1〜4と同様にしてピロリン酸ナトリウム十水和物を添加して湿式分散処理を行った結果、分散安定性が良好でコーティングした塗膜も均一で透明である炭酸アパタイト微粒子が得られることが確認された。
(比較例1)
比較例1として、炭酸塩を用いず、リン酸水素カルシウム二水和物を水中に於いて加熱する実験を行った。即ち、リン酸水素カルシウム二水和物(和光純薬工業製試薬)を43グラム(0.25モル)秤量し、還流冷却管とこれに接続した気体のトラップ管を備えた500mLの三角フラスコへ移し、イオン交換水200グラムを加えて攪拌を行いながら温度を80℃に上昇し、この温度で2時間加熱攪拌を行った。反応中炭酸ガスの発生は認められなかった。その後室温まで反応系を冷却し、吸引濾過を行って生成物をグラスフィルター上に回収した。イオン交換水により生成物を十分に洗浄した後、40℃に調節した乾燥器内で1昼夜加熱乾燥を行うことで白色の粉体を得た。得られた粉体は広角X線回折により解析を行い図15に示す回折パターンを得た。図15は比較例1で得られた生成物の広角X線回折パターンを示す。図15より、生成物はほぼ完全に無水リン酸カルシウムに変換しており、原料であるリン酸水素カルシウム二水和物が残存して含まれていないことが判明した。即ち、炭酸塩を添加しない状態でリン酸水素二水和物を水中に於いて加熱を行った場合、炭酸アパタイトは生成せず、無水リン酸カルシウムを生成することが明らかとなった。
比較例1として、炭酸塩を用いず、リン酸水素カルシウム二水和物を水中に於いて加熱する実験を行った。即ち、リン酸水素カルシウム二水和物(和光純薬工業製試薬)を43グラム(0.25モル)秤量し、還流冷却管とこれに接続した気体のトラップ管を備えた500mLの三角フラスコへ移し、イオン交換水200グラムを加えて攪拌を行いながら温度を80℃に上昇し、この温度で2時間加熱攪拌を行った。反応中炭酸ガスの発生は認められなかった。その後室温まで反応系を冷却し、吸引濾過を行って生成物をグラスフィルター上に回収した。イオン交換水により生成物を十分に洗浄した後、40℃に調節した乾燥器内で1昼夜加熱乾燥を行うことで白色の粉体を得た。得られた粉体は広角X線回折により解析を行い図15に示す回折パターンを得た。図15は比較例1で得られた生成物の広角X線回折パターンを示す。図15より、生成物はほぼ完全に無水リン酸カルシウムに変換しており、原料であるリン酸水素カルシウム二水和物が残存して含まれていないことが判明した。即ち、炭酸塩を添加しない状態でリン酸水素二水和物を水中に於いて加熱を行った場合、炭酸アパタイトは生成せず、無水リン酸カルシウムを生成することが明らかとなった。
(比較例2)
比較例2として、実施例4において、リン酸水素カルシウム二水和物に換えて無水リン酸水素カルシウムを同一モル数加えて同様に加熱攪拌を行うことで反応を行った。水洗および乾燥後得られた白色の粉体を広角X線回折により解析を行い図16に示す回折パターンを得た。図16は比較例2で得られた生成物の広角X線回折パターンを示す。図16より、生成物は大部分が炭酸アパタイトであるが、図中に矢印で示す位置に無水リン酸カルシウムに由来する回折ピークが認められ、生成物には原料である無水リン酸水素カルシウムが残存して含まれていることが判明した。また、生成物を走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、図10で観察された平板状の粒子形状とは異なり、数マイクロメートルの直方体状の粒状物であることが判明した。さらに、先の実施例と同様にして湿式分散処理を行ったが、凝集物が生成し、流動性の無い沈殿物であり、コーティングに使用可能である炭酸アパタイト微粒子を得ることが出来なかった。
比較例2として、実施例4において、リン酸水素カルシウム二水和物に換えて無水リン酸水素カルシウムを同一モル数加えて同様に加熱攪拌を行うことで反応を行った。水洗および乾燥後得られた白色の粉体を広角X線回折により解析を行い図16に示す回折パターンを得た。図16は比較例2で得られた生成物の広角X線回折パターンを示す。図16より、生成物は大部分が炭酸アパタイトであるが、図中に矢印で示す位置に無水リン酸カルシウムに由来する回折ピークが認められ、生成物には原料である無水リン酸水素カルシウムが残存して含まれていることが判明した。また、生成物を走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、図10で観察された平板状の粒子形状とは異なり、数マイクロメートルの直方体状の粒状物であることが判明した。さらに、先の実施例と同様にして湿式分散処理を行ったが、凝集物が生成し、流動性の無い沈殿物であり、コーティングに使用可能である炭酸アパタイト微粒子を得ることが出来なかった。
(比較例3)
実施例1において用いた炭酸ナトリウムの添加量を4.5グラムに減少し、リン酸水素カルシウム二水和物に対するモル比を0.17の条件で同様に反応を行い、生成物を広角X線回折により解析したところ、炭酸アパタイト以外に、出発原料のリン酸水素カルシウム二水和物が主に含まれている混合物であることが判明した。
実施例1において用いた炭酸ナトリウムの添加量を4.5グラムに減少し、リン酸水素カルシウム二水和物に対するモル比を0.17の条件で同様に反応を行い、生成物を広角X線回折により解析したところ、炭酸アパタイト以外に、出発原料のリン酸水素カルシウム二水和物が主に含まれている混合物であることが判明した。
(比較例4)
実施例5において用いた炭酸水素ナトリウムの添加量を7グラムに減少し、リン酸水素カルシウム二水和物に対するモル比を0.33の条件で同様に反応を行い、生成物を広角X線回折により解析したところ、炭酸アパタイト以外に、出発原料のリン酸水素カルシウム二水和物が主に含まれている混合物であることが判明した。
実施例5において用いた炭酸水素ナトリウムの添加量を7グラムに減少し、リン酸水素カルシウム二水和物に対するモル比を0.33の条件で同様に反応を行い、生成物を広角X線回折により解析したところ、炭酸アパタイト以外に、出発原料のリン酸水素カルシウム二水和物が主に含まれている混合物であることが判明した。
(実施例9)
実施例4において用いた炭酸ナトリウムの添加量を35グラムに増加し、リン酸水素カルシウム二水和物に対するモル比を1.3の条件で同様に反応を行い、生成物を広角X線回折により解析したところ、炭酸アパタイト以外に炭酸カルシウム(カルサイト)が僅かに含まれていることが判明したが、その割合は1質量%以下であり本発明で想定する用途に対しては問題なく用いることの出来る純度の炭酸アパタイトであった。
実施例4において用いた炭酸ナトリウムの添加量を35グラムに増加し、リン酸水素カルシウム二水和物に対するモル比を1.3の条件で同様に反応を行い、生成物を広角X線回折により解析したところ、炭酸アパタイト以外に炭酸カルシウム(カルサイト)が僅かに含まれていることが判明したが、その割合は1質量%以下であり本発明で想定する用途に対しては問題なく用いることの出来る純度の炭酸アパタイトであった。
本発明の製造方法により得られる炭酸アパタイトは、クロマトグラフィー用カラム用担体や各種吸着剤として利用可能である。或いは、各種生体活性インプラントとしての利用も可能である。更には、フィルムや繊維への表面処理を行うことで生体に親和性を有する各種親水性材料を提供することが可能である。
Claims (3)
- リン酸水素カルシウム二水和物と、これに対して0.2モル比以上の下記一般式(I)で表される炭酸塩、もしくは0.4モル比以上の下記一般式(II)で表される炭酸水素塩を水中に於いて混合し、反応させることで得られるB型炭酸アパタイトの製造方法。
- 前記請求項1に記載のB型炭酸アパタイトの製造方法により得られたB型炭酸アパタイトを、メディアミルを使用して湿式分散処理を行うB型炭酸アパタイト微粒子の製造方法。
- 前記湿式分散処理を行う際に、ポリリン酸(塩)を加えて湿式分散処理を行う、前記請求項2に記載のB型炭酸アパタイト微粒子の製造方法。
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-
2013
- 2013-10-28 JP JP2013223572A patent/JP2015084814A/ja active Pending
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US11577216B2 (en) | 2019-01-09 | 2023-02-14 | Japan Atomic Energy Agency | Carbonate apatite with high carbonate content |
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