この発明に係る眼底観察装置の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
この発明に係る眼底観察装置は、光コヒーレンストモグラフィを用いて眼底の断層像を形成する。この眼底観察装置には、フーリエドメインタイプやスウェプトソースタイプなど、信号光の走査を伴う任意のタイプの光コヒーレンストモグラフィを適用することが可能である。なお、光コヒーレンストモグラフィによって取得される画像をOCT画像と呼ぶことがある。また、OCT画像を形成するための計測動作をOCT計測と呼ぶことがある。
以下の実施形態では、フーリエドメインタイプを適用した構成について詳しく説明する。特に、この実施形態では、特許文献5に開示された装置と同様に、眼底の断層像及び撮影画像の双方を取得可能な眼底観察装置を取り上げる。
<第1の実施形態>
[構成]
図1及び図2に示すように、眼底観察装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100及び演算制御ユニット200を含んで構成される。眼底カメラユニット2は、従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系を有する。OCTユニット100には、眼底のOCT画像を取得するための光学系が設けられている。演算制御ユニット200は、各種の演算処理や制御処理等を実行するコンピュータを具備している。
〔眼底カメラユニット〕
図1に示す眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efの表面形態を表す2次元画像(眼底像)を形成するための光学系が設けられている。眼底像には、観察画像や撮影画像などが含まれる。観察画像は、たとえば、近赤外光を用いて所定のフレームレートで形成されるモノクロの動画像である。撮影画像は、たとえば、可視光をフラッシュ発光して得られるカラー画像である。なお、眼底カメラユニット2は、これら以外の画像、たとえばフルオレセイン蛍光画像やインドシアニングリーン蛍光画像を取得可能に構成されていてもよい。
眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラと同様に、被検者の顔が動かないように支えるための顎受けや額当てが設けられている。更に、眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラと同様に、照明光学系10と撮影光学系30が設けられている。照明光学系10は眼底Efに照明光を照射する。撮影光学系30は、この照明光の眼底反射光を撮像装置(CCDイメージセンサ35、38)に導く。また、撮影光学系30は、OCTユニット100からの信号光LSを眼底Efに導くとともに、眼底Efを経由した信号光LSをOCTユニット100に導く。
照明光学系10の観察光源11は、たとえばハロゲンランプにより構成される。観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、18、絞り19、及びリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、対物レンズ22を経由して眼底Efを照明する。
観察照明光の眼底反射光は、対物レンズ22により屈折され、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を経由し、ダイクロイックミラー32により反射される。更に、この眼底反射光は、ハーフミラー40を透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に結像される。CCDイメージセンサ35は、たとえば所定のフレームレートで眼底反射光を検出する。表示装置3には、CCDイメージセンサ35により検出された眼底反射光に基づく画像(観察画像)Kが表示される。
撮影光源15は、たとえばキセノンランプにより構成される。撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。撮影照明光の眼底反射光は、観察照明光のそれと同様の経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりCCDイメージセンサ38の受光面に結像される。表示装置3には、CCDイメージセンサ38により検出された眼底反射光に基づく画像(撮影画像)Hが表示される。なお、観察画像Kを表示する表示装置3と撮影画像Hを表示する表示装置3は、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
LCD(Liquid Crystal Display)39は、固視標や視力測定用視標を表示する。固視標は、被検眼Eを固視させるための視標であり、眼底撮影時や断層像形成時などに使用される。視力測定用視標は、たとえばランドルト環のように、被検眼Eの視力値を測定するために用いられる視標である。なお、視力測定用視標を単に視標と称することがある。
LCD39から出力された光は、その一部がハーフミラー40にて反射され、ダイクロイックミラー32に反射され、合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
LCD39の画面上における固視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更することが可能である。被検眼Eの固視位置としては、たとえば従来の眼底カメラと同様に、眼底Efの黄斑部を中心とする画像を取得するための位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための位置や、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための位置などがある。
更に、眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラと同様に、アライメント光学系50とフォーカス光学系60が設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)を行うための視標(アライメント視標)を生成する。フォーカス光学系60は、眼底Efに対してフォーカス(ピント)を合わせるための視標(スプリット視標)を生成する。
アライメント光学系50のLED(Light Emitting Diode)51から出力された光(アライメント光)は、絞り52、53及びリレーレンズ54を経由してダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、対物レンズ22により被検眼Eの角膜に投影される。
アライメント光の角膜反射光は、対物レンズ22及び上記孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を通過し、ダイクロイックミラー32により反射され、ハーフミラー40を透過し、ダイクロイックミラー33に反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に投影される。CCDイメージセンサ35による受光像(アライメント視標)は、観察画像Kとともに表示装置3に表示される。ユーザは、従来の眼底カメラと同様の操作を行ってアライメントを実施する。また、演算制御ユニット200がアライメント視標の位置を解析して光学系を移動させることによりアライメントを行ってもよい。
フォーカス調整を行う際には、照明光学系10の光路上に反射棒67の反射面が斜設される。フォーカス光学系60のLED61から出力された光(フォーカス光)は、リレーレンズ62を通過し、スプリット視標板63により二つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65に反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、対物レンズ22により眼底Efに結像される。
フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の角膜反射光と同様の経路を通ってCCDイメージセンサ35により検出される。CCDイメージセンサ35による受光像(スプリット視標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。演算制御ユニット200は、従来と同様に、スプリット視標の位置を解析して合焦レンズ31及びフォーカス光学系60を移動させてピント合わせを行う。また、スプリット視標を視認しつつ手動でピント合わせを行ってもよい。
ダイクロイックミラー32の後方には、ミラー41、コリメータレンズ42、及びガルバノミラー43、44を含む光路が設けられている。この光路はOCTユニット100につながっている。
ガルバノミラー44は、OCTユニット100からの信号光LSをx方向に走査する。ガルバノミラー43は、信号光LSをy方向に走査する。これら二つのガルバノミラー43、44により、信号光LSをxy平面上の任意の方向に走査することができる。
〔OCTユニット〕
図2に示すOCTユニット100には、眼底Efの断層像を取得するための光学系が設けられている。この光学系は、従来のフーリエドメインタイプのOCT装置と同様の構成を有する。すなわち、この光学系は、低コヒーレンス光を参照光と信号光に分割し、眼底を経由した信号光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル成分を検出するようになっている。この検出結果(検出信号)は演算制御ユニット200に送られる。
光源ユニット101は低コヒーレンス光L0を出力する。低コヒーレンス光L0は、たとえば、人眼には検出できない波長からなる光(不可視光)である。更に、低コヒーレンス光L0は、たとえば1050〜1060nm程度の中心波長を有する近赤外光である。光源ユニット101は、スーパールミネセントダイオード(Super Luminescent Diode:SLD)や、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)等の光出力デバイスを含んで構成される。
光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0は、光ファイバ102によりファイバカプラ103に導かれて信号光LSと参照光LRに分割される。なお、ファイバカプラ103は、光を分割する手段(スプリッタ;splitter)、及び、光を合成する手段(カプラ;coupler)の双方の作用を有するが、ここでは慣用的に「ファイバカプラ」と称する。
信号光LSは、光ファイバ104により導光され、コリメータレンズユニット105により平行光束となる。更に、信号光LSは、各ガルバノミラー44、43により反射され、コリメータレンズ42により集光され、ミラー41により反射され、ダイクロイックミラー32を透過し、LCD39からの光と同じ経路を通って眼底Efに照射される。信号光LSは、眼底Efにおいて散乱、反射される。この散乱光及び反射光をまとめて信号光LSの眼底反射光と称することがある。信号光LSの眼底反射光は、同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ103に導かれる。
参照光LRは、光ファイバ106により導光され、コリメータレンズユニット107により平行光束となる。更に、参照光LRは、ミラー108、109、110により反射され、ND(Neutral Density)フィルタ111により減光され、ミラー112に反射され、コリメータレンズ113により参照ミラー114の反射面に結像される。参照ミラー114に反射された参照光LRは、同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ103に導かれる。なお、分散補償用の光学素子(ペアプリズム等)や、偏光補正用の光学素子(波長板等)を、参照光LRの光路(参照光路)に設けてもよい。
ファイバカプラ103は、信号光LSの眼底反射光と、参照ミラー114に反射された参照光LRとを合波する。これにより生成された干渉光LCは、光ファイバ115により導光されて出射端116から出射される。更に、干渉光LCは、コリメータレンズ117により平行光束とされ、回折格子118により分光(スペクトル分解)され、集光レンズ57により集光されてCCDイメージセンサ120の受光面に投影される。
CCDイメージセンサ120は、たとえばラインセンサであり、分光された干渉光LCの各スペクトル成分を検出して電荷に変換する。CCDイメージセンサ120は、この電荷を蓄積して検出信号を生成する。更に、CCDイメージセンサ120は、この検出信号を演算制御ユニット200に送る。
なお、この実施形態ではマイケルソン型の干渉計を採用しているが、たとえばマッハツェンダー型など任意のタイプの干渉計を適宜に採用することが可能である。また、CCDイメージセンサに代えて、他の形態のイメージセンサ、たとえばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを用いることが可能である。
〔演算制御ユニット〕
演算制御ユニット200の構成について説明する。演算制御ユニット200は、CCDイメージセンサ120から入力される検出信号を解析して眼底EfのOCT画像を形成する。そのための演算処理は、従来のフーリエドメインタイプのOCT装置と同様である。
また、演算制御ユニット200は、眼底カメラユニット2、表示装置3及びOCTユニット100の各部を制御する。
眼底カメラユニット2の制御として、演算制御ユニット200は、観察光源11、撮影光源15及びLED51、61の動作制御、LCD39の動作制御、合焦レンズ31の移動制御、反射棒67の移動制御、フォーカス光学系60の移動制御、各ガルバノミラー43、44の動作制御などを行う。
また、OCTユニット100の制御として、演算制御ユニット200は、光源ユニット101の動作制御、参照ミラー114及びコリメータレンズ113の移動制御、CCDイメージセンサ120の動作制御などを行う。
演算制御ユニット200は、たとえば、従来のコンピュータと同様に、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、眼底観察装置1を制御するためのコンピュータプログラムが記憶されている。演算制御ユニット200は、CCDイメージセンサ120からの検出信号に基づいてOCT画像を形成する専用の回路基板を備えていてもよい。また、演算制御ユニット200は、キーボードやマウス等の操作デバイス(入力デバイス)や、LCD等の表示デバイスを備えていてもよい。
眼底カメラユニット2、表示装置3、OCTユニット100及び演算制御ユニット200は、一体的に(つまり単一の筺体内に)構成されていてもよいし、それぞれ別体として構成されていてもよい。
〔制御系〕
眼底観察装置1の制御系の構成について図3を参照しつつ説明する。
(制御部)
眼底観察装置1の制御系は、演算制御ユニット200の制御部210を中心に構成される。制御部210は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイス等を含んで構成される。
制御部210には、主制御部211と記憶部212が設けられている。主制御部211は、前述の各種制御を行う。特に、主制御部211は、眼底カメラユニット2の走査駆動部70及び合焦駆動部80、更にOCTユニット100の参照駆動部130を制御する。
走査駆動部70は、たとえばサーボモータを含んで構成され、ガルバノミラー43、44の向きを各々独立に変更する。走査駆動部70は、ガルバノミラー43、44とともに、この発明の「走査手段」の一例を構成する。
合焦駆動部80は、たとえばパルスモータを含んで構成され、合焦レンズ31を光軸方向に移動させる。それにより、眼底Efに向かう光の合焦位置が変更される。
参照駆動部130は、たとえばパルスモータを含んで構成され、参照光LRの進行方向に沿って、コリメータレンズ113及び参照ミラー114を一体的に移動させる。
また、主制御部211は、記憶部212にデータを書き込む処理や、記憶部212からデータを読み出す処理を行う。
記憶部212は、各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、たとえば、OCT画像の画像データ、眼底像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。
(画像形成部)
画像形成部220は、CCDイメージセンサ120からの検出信号に基づいて、眼底Efの断層像の画像データを形成する。この処理には、従来のフーリエドメインタイプの光コヒーレンストモグラフィと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。
画像形成部220は、たとえば、前述の回路基板や通信インターフェイス等を含んで構成される。なお、この明細書では、「画像データ」と、それに基づいて呈示される「画像」とを同一視することがある。
(画像処理部)
画像処理部230は、画像形成部220により形成された画像に対して各種の画像処理や解析処理を施す。たとえば、画像処理部230は、画像の輝度補正や分散補正等の各種補正処理を実行する。
また、画像処理部230は、画像形成部220により形成された断層像の間の画素を補間する補間処理を実行するなどして、眼底Efの3次元画像の画像データを形成する。
なお、3次元画像の画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元画像の画像データとしては、3次元的に配列されたボクセルからなる画像データがある。この画像データは、ボリュームデータ或いはボクセルデータなどと呼ばれる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、画像処理部230は、このボリュームデータに対してレンダリング処理(ボリュームレンダリングやMIP(Maximum Intensity Projection:最大値投影)など)を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像の画像データを形成する。表示部240等の表示デバイスには、この擬似的な3次元画像が表示される。
また、3次元画像の画像データとして、複数の断層像のスタックデータを形成することも可能である。スタックデータは、複数の走査線に沿って得られた複数の断層像を、走査線の位置関係に基づいて3次元的に配列させることで得られる画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断層像を、一つの3次元座標系により表現する(つまり一つの3次元空間に埋め込む)ことにより得られる画像データである。
画像処理部230は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、回路基板等を含んで構成される。
画像処理部230には、x補正部231、y補正部232及びz補正部233が設けられている。x補正部231、y補正部232及びz補正部233は、それぞれ、3次元画像のx方向(水平方向)、y方向(垂直方向)及びz方向(深度方向)における位置補正を行う。x方向及びy方向は、眼底Efの表面に沿った方向(眼底表面方向)である。また、z方向は、眼底Efの深さ方向に沿った方向(眼底深度方向)である。これら補正部231〜233は、この発明の「補正手段」の一例である。以下、これら補正部231〜233が実行する処理について説明する。
x補正部231は、下記の3次元スキャンによって得られた複数の断層像のx方向における位置を補正することにより、これら断層像に基づく3次元画像のx方向の位置補正を行う。3次元スキャンでは、y方向に並ぶ複数の走査線に沿って信号光LSを走査する。各走査線には、x方向に沿って直線状に配置された複数の走査点が含まれる。3次元スキャンを行う際には、眼底Efの観察画像K(動画像)が同時に取得される。観察画像Kを取得する際には、各走査線に沿った走査に対応する静止画像(フレーム)が得られるようにフレームレートが設定される。それにより、各走査線(各断層像)に静止画像を対応付けることができる。
3次元スキャンには数秒程度の時間が掛かるので、スキャン中に被検眼Eが移動してしまったり(固視ズレ等)、瞬きをしてしまったりするおそれがある。
このような不具合がOCT計測中に生じたときに得られる複数の断層像Gi(i=m)の配列状態の例を図4に示す。図4は、眼底観察装置1側から眼底Efを見たときの断層像Giの配置を表している。なお、不具合が生じない状態では、x方向(各走査線Riに沿う方向)へのズレもなく、かつ、走査領域R内に等間隔で配列された断層像Giが得られる。
前述のように、3次元スキャンを行う際には、眼底Efの観察画像Kが同時に取得され、各走査線Ri(各断層像Gi)に対応する静止画像(フレーム)が得られる。x補正部231は、各静止画像の画素値(輝度値)を解析し、当該静止画像における眼底Efの特徴部位の画像領域を特定する。この特徴部位としては、たとえば視神経乳頭、黄斑、血管、血管の分岐部、病変部などがある。
次に、x補正部231は、これら静止画像における上記画像領域の位置ズレ量を算出する。この処理は、たとえば、最初の眼底像G1に対応する静止画像(基準静止画像)における上記画像領域に対する、他の各断層像G2〜Gmに対応する静止画像における上記画像領域の変位を演算するものである。ここで演算される変位は、x方向の変位及びy方向の変位である。
続いて、x補正部231は、算出された位置ズレ量(変位)を打ち消すように、複数の断層像Giのx方向における相対位置を補正する。それにより、複数の断層像Giに基づく3次元画像のx方向における位置が補正される。
更に、x補正部231は、走査領域Rの端部領域Ra、Rbに含まれる各断層像Giの一部(端部領域)を削除する。それにより、走査領域Rの中央部分(画像領域)Rcの3次元画像が得られることとなる。
y補正部232は、x補正部231と同様に、静止画像に基づいて算出された上記の位置ズレ量(変位)を打ち消すように、複数の断層像Giのy方向における相対位置を補正する。それにより、複数の断層像Giに基づく3次元画像のy方向における位置が補正される。なお、位置ズレ量の算出処理をy補正部232が行ってもよい。
また、y補正部232は、上記のようにして相対位置が補正された後の複数の断層像Giの間隔を調整する。この処理には、断層像が疎である部分を埋め合わせる(補完する)処理(補完処理)と、断層像が密である部分を間引く処理(間引き処理)とがある。
補完処理は、たとえば次のようにして行う。まず、y補正部232は、隣接する断層像Gi、G(i+1)(i=1〜m−1)の間隔を演算する。このとき、走査領域R内の所定サイズの部分領域に含まれる断層像Gの本数を数えて断層像Giの密度を求めるようにしてもよい。
次に、y補正部232は、算出された間隔が所定値以上であるか判断する。この所定値は、たとえば、走査領域Rのサイズと走査線Riの本数とに基づいて設定される。なお、断層像Giの密度を求める場合には、密度が所定値以下であるか判断することになる。
間隔が所定値以上であると判断された場合、制御部210は、走査駆動部70を制御して、所定値以上の間隔の2つの断層像に挟まれた領域内に位置する走査線に沿うように信号光LSを再度走査させる。
画像形成部220は、再度走査された信号光LSと参照光LRとの干渉光の検出結果に基づいて新たな断層像を形成し、画像処理部230は、これら新たな断層像に基づいて、上記領域に対応する3次元画像を形成する。
また、y補正部232は、次のような処理を行うこともできる。まず、y補正部232は、複数の静止画像に基づいて算出された各位置ズレ量が所定値以上であるか判断する。
位置ズレ量が所定値以上であると判断された場合、制御部210は、走査駆動部70を制御して、位置ズレ量が所定値以上と判断された静止画像に対応する断層像の走査線の近傍領域に位置する走査線に沿うように信号光LSを再度走査させる。
画像形成部220は、再度走査された信号光LSと参照光LRとの干渉光の検出結果に基づいて、再度走査された走査線に沿った新たな断層像を形成する。そして、画像処理部230は、これら新たな断層像に基づいて、上記近傍領域に対応する3次元画像を形成する。また、画像処理部230は、位置ズレ量が所定値未満と判断された静止画像に対応する断層像と、新たな断層像とに基づいて3次元画像を形成することも可能である。
更に、y補正部232は、次のような処理を行うこともできる。まず、y補正部232は、複数の走査線のそれぞれについて、複数の静止画像に基づいて算出された位置ズレ量に基づいて、複数の断層像Giのうち当該走査線の本来の位置に最も近い断層像を選択する。走査線の本来の位置は、走査領域R内に設定された走査線の座標値によって表現される。この座標値(特にy座標値)は、走査領域Rのサイズと走査線の本数とに基づいて容易に得られる。y補正部232は、この座標位置の最も近くに位置する断層像を選択する。
画像処理部230は、選択された断層像のみに基づいて3次元画像を形成する。
また、y補正部232は、次のような処理を行うこともできる。複数の断層像Giの相対位置が補正された後に、y補正部232は、これら断層像Giの間隔を算出する。画像処理部230は、算出された間隔及びこれら断層像Giに基づいて、等間隔に並ぶ複数の断層像を形成する。この処理は、たとえば、y方向に並ぶ走査点における画素値(輝度値)に基づく線形補間処理を行って、y方向に等間隔に並ぶ位置における画素値を演算する。そして、演算された画素値を用いて画像を形成することにより、等間隔に並ぶ複数の断層像が得られる。更に、画像処理部230は、これら等間隔に並ぶ断層像に基づいて3次元画像を形成する。
観察画像K(複数の静止画像)から特徴部位の画像領域が特定されないおそれがある。そうすると、上記で説明した補正処理を行えなくなってしまう。その場合、次のような処理を行うことができる。
特徴部位の画像領域が特定されない静止画像があった場合、y補正部232は、この静止画像に対応する断層像の走査線を特定する。静止画像と断層像とは前述のように対応付けられており、断層像と走査線とは一対一に対応するので、当該処理は容易に行える。
続いて、制御部210は、走査駆動部70を制御し、特定された走査線に沿うように信号光LSを再度走査させる。このとき、観察画像Kも取得される。
画像形成部220は、再度走査された信号光LSと参照光LRとの干渉光の検出結果に基づいて、特定された走査線に沿った新たな断層像を形成する。x補正部231やy補正部232は、この新たな断層像と観察画像Kに基づいて、上記の補正処理を行うことが可能である。更に、画像処理部230は、新たな断層像に基づいて、特定された走査線に対応する領域の3次元画像を形成することができる。
z補正部233は、前述のように、3次元画像(複数の断層像Gi)のz方向における位置を補正する。そのために、3次元スキャンとは別にスキャンを行う(別途の走査)。この別途の走査は、複数の走査線Riに交差する方向の走査である。この実施形態では、別途の走査として、複数の走査線Riに直交する所定数の走査線(補正用走査線)のそれぞれに沿うように信号光LSを走査させる。
画像形成部220は、この別途の走査によって得られた干渉光LCの検出結果に基づいて、各補正用走査線に対応する断層像(補正用断層像)を形成する。
z補正部233は、形成された所定数の補正用断層像における眼底Efの特徴層の画像領域を特定する。この特徴層としては、たとえば高輝度で明瞭に描写される部位(組織)のように、断層像において特定が容易な部位が選択されることが望ましい。
続いて、z補正部233は、補正用断層像における当該画像領域と各断層像Giにおける当該特徴層の画像領域との深度位置(z座標値)を合わせるように、各断層像Giを眼底深度方向(z方向)に移動させる。それにより、3次元画像の眼底深度方向における位置補正が可能となる。
画像形成部220及び画像処理部230(特に3次元画像を形成する部分)は、この発明の「画像形成手段」の一例である。
(表示部、操作部)
表示部240は、前述した演算制御ユニット200の表示デバイスを含んで構成される。操作部250は、前述した演算制御ユニット200の操作デバイスを含んで構成される。また、操作部250には、眼底観察装置1の筐体や外部に設けられた各種のボタンやキーが含まれていてもよい。たとえば眼底カメラユニット2が従来の眼底カメラと同様の筺体を有する場合、この筺体に設けられたジョイスティックや操作パネル等が操作部250に含まれていてもよい。また、表示部240は、眼底カメラユニット2の筺体に設けられたタッチパネルモニタなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。
なお、表示部240と操作部250は、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。たとえばタッチパネルモニタのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。
〔信号光の走査及びOCT画像について〕
ここで、信号光LSの走査及びOCT画像について説明しておく。
眼底観察装置1による信号光LSの走査態様としては、たとえば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋(渦巻)スキャンなどがある。これらの走査態様は、眼底の観察部位、解析対象(網膜厚など)、走査に要する時間、走査の精密さなどを考慮して適宜に選択的に使用される。
水平スキャンは、信号光LSを水平方向(x方向)に走査させるものである。水平スキャンには、垂直方向(y方向)に配列された複数の水平方向に延びる走査線に沿って信号光LSを走査させる態様も含まれる。この態様においては、走査線の間隔を任意に設定することが可能である。また、隣接する走査線の間隔を十分に狭くすることにより、前述の3次元画像を形成することができる(3次元スキャン)。垂直スキャンについても同様である。
十字スキャンは、互いに直交する2本の直線状の軌跡(直線軌跡)からなる十字型の軌跡に沿って信号光LSを走査するものである。放射スキャンは、所定の角度を介して配列された複数の直線軌跡からなる放射状の軌跡に沿って信号光LSを走査するものである。なお、十字スキャンは放射スキャンの一例である。
円スキャンは、円形状の軌跡に沿って信号光LSを走査させるものである。同心円スキャンは、所定の中心位置の周りに同心円状に配列された複数の円形状の軌跡に沿って信号光LSを走査させるものである。円スキャンは同心円スキャンの特殊例と考えられる。螺旋スキャンは、回転半径を次第に小さく(又は大きく)させながら螺旋状(渦巻状)の軌跡に沿って信号光LSを走査するものである。
走査ユニット141は、前述のような構成により、信号光LSをx方向及びy方向にそれぞれ独立に走査できるので、xy面上の任意の軌跡に沿って信号光LSを走査することが可能である。それにより、上記のような各種の走査態様を実現できる。
上記のような態様で信号光LSを走査することにより、走査線(走査軌跡)に沿った深度方向(x方向)の断層像を形成することができる。また、特に走査線の間隔が狭い場合には、前述の3次元画像を形成することができる。
上記のような信号光LSの走査対象となる眼底Ef上の領域を、前述のように走査領域と呼ぶ。たとえば3次元スキャンにおける走査領域は、複数の水平スキャンが配列された矩形の領域である(図4の走査領域Rを参照)。また、同心円スキャンにおける走査領域は、最大径の円スキャンの軌跡により囲まれる円盤状の領域である。また、放射スキャンにおける走査領域は、各スキャンラインの両端位置を結んだ円盤状(或いは多角形状)の領域である。
[作用・効果]
以上のような眼底観察装置1の作用及び効果について説明する。
眼底観察装置1によれば、図4に示すような断層像Giが得られたとしても、観察画像Kに基づいて、断層像Gi(3次元画像)のx方向及びy方向における位置を補正することができる。
また、眼底観察装置1によれば、断層像Gi(走査線Ri)が疎な領域について、再度スキャンを行って断層像を補完することができる。それにより、図5に示すように、疎な領域Rdにおける走査線Rkに沿った新たな断層像Jkが取得され、これら断層像Jkに基づいて疎な領域Rdの3次元画像を形成できる。
更に、眼底観察装置1によれば、断層像Giが密な部分について、断層像Giを間引きすることができる。
このような補完や間引きを行うことにより、好適な間隔で配置された複数の断層像を取得でき、好適な3次元画像が得られる。
また、眼底観察装置1によれば、図6に示すように、走査領域Rの端部領域Ra、Rbに含まれる各断層像Giの一部(端部領域)を削除することができるので、走査領域Rの中央部分(画像領域)Rcの3次元画像が得られる。
また、眼底観察装置1によれば、3次元スキャンとは別途に走査された信号光LSと参照光LRとの干渉光LCの検出結果に基づく断層像(補正用断層像)に基づいて、3次元画像の眼底深度方向における位置を補正することができる。
また、眼底観察装置1によれば、相対位置が補正された後の複数の断層像Giの間隔を算出し、算出された間隔及び複数の断層像Giに基づいて、等間隔に並ぶ複数の断層像を形成し、これら等間隔の断層像に基づいて3次元画像を形成することができる。
また、眼底観察装置1によれば、観察画像Kを構成する各静止画像における眼底Efの特徴部位の画像領域を特定し、これら画像領域の位置ズレ量を算出し、位置ズレ量が所定値以上であると判断された場合には、位置ズレ量が所定値以上と判断された静止画像に対応する断層像の走査線の近傍領域に位置する走査線に沿うように信号光LSを再度走査して新たな断層像を形成し、この新たな断層像に基づいて上記近傍領域に対応する3次元画像を形成することができる。
また、眼底観察装置1によれば、各走査線Riについて、上記で算出された位置ズレ量に基づき、複数の断層像Giのうち当該走査線Riの本来の位置に最も近い断層像を選択し、選択された断層像に基づいて3次元画像を形成することができる。
また、眼底観察装置1によれば、特徴部位の画像領域が特定されない静止画像があったときに、この静止画像に対応する断層像の走査線を特定し、特定された走査線に沿うように信号光LSを再度走査して新たな断層像を形成し、この新たな断層像に基づいて当該走査線に対応する領域の3次元画像を形成することができる。
このように作用する眼底観察装置1によれば、信号光LSのスキャン中に被検眼Eの移動や瞬きが発生した場合であっても高確度な3次元画像を取得することが可能である。
<第2の実施形態>
第1の実施形態では断層像毎に位置ズレを補正する技術を説明した。前述のように、各走査線は複数の走査点により構成されている。第2の実施形態では、一つ以上の走査点を単位として位置ズレ量を求める技術を説明する。求められた位置ズレ量は、第1の実施形態と同様に位置ズレの補正に用いることもできるし、他の目的に用いることもできる。他の目的の一例として、第2の実施形態では、眼底の同一部位を走査して得られた二以上の画像を重ね合わせて高精度の画像を形成する技術への応用を説明する。
この実施形態の眼底観察装置は、第1の実施形態と同様の計測を実行して、各走査点において眼底の深度方向に延びる1次元画像を形成する。この1次元画像をAスキャン像と呼ぶことにする。断層像は、複数の走査点の配列に応じて当該複数のAスキャン像を配列させることにより形成される。
更に、この眼底観察装置は、信号光が走査されているときに、所定の時間間隔で眼底の位置を検出し、検出された眼底の位置の時間変化に基づいて眼底表面方向(xy方向)における複数のAスキャン像の位置ズレ量を算出する。
ここで、Aスキャン像の位置ズレについて図7を参照しつつ説明する。図7(A)は、複数の走査点Rij(i=1〜m、j=1〜n)の配列の一例を表している。信号光LSは各走査点Rijに向けて照射される。しかし、計測中に被検眼Eが移動すると、図7(B)に示すように、信号光LSの実際の照射位置Tijが本来の走査点Rijの位置からずれてしまう。
そうすると、走査点Rijに対応する眼底Efの位置を描写するべきAスキャン像の位置がずれてしまう(つまり、実際の照射位置Tijに対応する眼底Efの位置を描写するAスキャン像が得られてしまう)。これが、Aスキャン像の位置ズレである。この実施形態では、このようなAスキャン像の位置ズレの量(位置ズレ量)を求める。
このとき、各Aスキャン像の位置ズレ量を求めるようにしてもよいし、連続する所定数のAスキャン像の位置ズレ量をまとめて求めるようにしてもよい。なお、第1の実施形態は、各走査線Ri上のn個のAスキャン像の位置ズレ量をまとめて求めるものであり、後者の処理の一例である。
Aスキャン像の位置ズレ量はベクトル量である。つまり、この位置ズレ量には、走査点Rijに対する実際の照射位置Tijの変位方向を表す情報(ズレ方向情報)と変位量を表す情報(ズレ量情報)とが含まれる。
[構成]
上記のような処理を実現するために、この実施形態に係る眼底観察装置は次のような構成を有する。まず、この眼底観察装置は、第1の実施形態と同様のハードウェア構成を有する。つまり、この眼底観察装置は、図1及び図2に示した構成を有する。以下、これら図面を適宜に参照して説明する。
〔制御系〕
この眼底観察装置の制御系の構成について説明する。この眼底観察装置の制御系は、第1の実施形態のそれ(図3を参照)と一部が共通である。この眼底観察装置の制御系の構成の一例を図8に示す。なお、図8に示す構成要素において、第1の実施形態と共通のものには同じ符号が付してある。
画像処理部230以外の構成は第1の実施形態と同様である。画像処理部230には、特徴部位特定部261、演算部262、走査点特定部265及び補正部266が設けられている。以下、眼底表面方向における位置ズレ量の演算処理と、眼底Efの深度方向における位置ズレ量の演算処理とに分けて説明する。
特徴部位特定部261について説明する。この眼底観察装置は、観察光源11やCCDイメージセンサ35を用いて眼底Efの観察画像K(動画像)を形成する。観察画像Kは、所定のフレームレートで眼底Efを撮影することにより得られる。このフレームレートの逆数は、この発明の「所定の時間間隔」に相当する。
特に、この眼底観察装置は、信号光LSが走査されているときの眼底Efを撮影して観察画像Kを形成する。観察画像Kを形成するための構成(照明光学系10や撮影光学系30)は、この発明の「撮影手段」の一例である。
特徴部位特定部261は、観察画像Kを形成する各静止画像を解析して、眼底Efの特徴部位に画像領域を特定する。この処理については第1の実施形態で説明した。特徴部位特定部261は、この発明の「画像領域特定手段」の一例である。
更に、特徴部位特定部261は、各静止画像における特徴部位の画像領域の位置を眼底Efの位置として求める。つまり、各静止画像には2次元座標系が予め定義されており、特徴部位特定部261は、この2次元座標系における当該画像領域の座標値を眼底Efの位置とする。ここで、当該画像領域の座標値としては、たとえば、当該画像領域内の特徴点(中心点、重心点等)の座標値を用いることができる。なお、各静止画像は眼底表面方向(xy平面方向)に広がる画像であるから、この2次元座標系とxy座標系とは互いに座標変換可能に対応付けられている。特に、この2次元座標系としてxy座標系自体を用いることも可能である。
このような撮影手段及び画像領域特定手段は、この発明の「検出手段」の一例を構成する。
次に、演算部262について説明する。演算部262は、特徴部位特定部261により求められた眼底Efの位置の時間変化に基づいて、眼底表面方向における複数のAスキャン像の位置ズレ量を算出する。演算部262は、補正部266とともに、この発明の「演算手段」の一例を構成する。上記処理を実行するために、演算部262には位置特定部263と位置ズレ量算出部264が設けられている。
ここで、眼底Efの位置検出を行う時間間隔(位置検出間隔)と、信号光LSの走査時間間隔との関係について説明する。走査時間間隔とは、一の走査点Rijに信号光LSが照射されてからその次の走査点Ri(j+1)に信号光LSが照射されるまでの時間間隔を意味する。
なお、一の走査線Riの最後の走査点Rinに信号光LSが照射されてから、次の走査線R(i+1)の最初の走査点R(i+1)1に信号光LSが照射されるまでの時間間隔(走査線替え時間間隔)は、上記走査時間間隔と等しくてもよいし異なってもよい。異なる場合、走査線替え時間間隔に合わせて位置検出間隔を制御してもよい。また、位置検出間隔を制御する代わりに、走査線替え時間間隔を走査時間間隔の整数倍の値にすればよい。
この実施形態では、位置検出間隔は、走査時間間隔の整数(Q≧1)倍に設定される。つまり、この眼底観察装置は、複数の走査点Rijに順次に信号光LSを照射しつつ、Q個の走査点を走査する度毎に眼底Efの位置を検出する。
具体例として、Q=1の場合、この眼底観察装置は、各走査点Rijに信号光LSが照射される度に眼底Efの位置を検出する。また、Q=2の場合、この眼底観察装置は、2個の走査点が走査される度に(つまり走査点1つおきに)眼底Efの位置を検出する。また、Q=n(一の走査線Ri上の走査点の個数)の場合が第1の実施形態に相当する。
一般に、この眼底観察装置は、走査点Q個おきに眼底Efの位置を検出する。このような動作は、CCDイメージセンサ35の蓄積時間の制御と、走査駆動部70の制御とを同期させることにより実現される。
このような制御が実行されているときに、演算部262は、順次に形成される複数のAスキャン像をQ個毎のAスキャン像群に分割する。この「分割」とは、複数のAスキャン像をQ個毎に実際に分ける(たとえば各Aスキャン像群を別々に記憶する)ものであってもよいし、識別情報を付すなどして各Aスキャン像群を識別可能にするものであってもよい。いずれにしても、以降の処理において個々のAスキャン像群に対して処理を実行できるものであれば十分である。よって、位置検出間隔と走査時間間隔との比率(Q)を記憶しておき、以降の処理において複数のAスキャン像をQ個毎に処理するような場合なども「分割」に包含される。以上の処理により、Q個のAスキャン像群と、Q個の走査点群と、一つの眼底Efの位置の検出結果とが対応付けられる。
位置特定部263は、各Aスキャン像群に対応するQ個の走査点が走査されていたときの眼底Efの位置の検出結果に基づいて各1次元画像群の位置を特定する。この処理についてより詳しく説明する。つまり、前述のように、Aスキャン像群には走査点群と眼底Efの位置の検出結果とが対応付けられているので、位置特定部263は、この対応付けを参照して、各Aスキャン像群に対応する眼底Efの位置の検出結果を特定して当該Aスキャン像群の位置とする。この処理は、図7(B)に示す実際の照射位置Tijを特定することに相当する。
位置ズレ量算出部264は、位置特定部263により特定された各Aスキャン像群の位置に基づいて位置ズレ量を算出する。この位置ズレ量は、図7(B)に示す走査点Rijと実際の照射位置Tijとの変位に相当する。なお、Q=1の場合には各Aスキャン像について正確に位置ズレ量が求められるが、Q≧2の場合には、Aスキャン像群に含まれる或るAスキャン像(つまり眼底Efの位置が検出された瞬間に走査された走査点に対応するAスキャン像)については正確に位置ズレ量が求められるが、これ以外のAスキャン像については一般に多少の誤差が介在することになる。
位置ズレ量を算出する処理についてより詳細に説明する。位置ズレ量算出部264は、事前に設定された走査態様に応じた各走査点Rijの位置情報(走査点位置情報)を記憶している。
走査点位置情報は、たとえば前述のxy座標系により定義される座標値で表される。別の例として、走査点位置情報は、複数の走査点Rijのうちのいずれか(たとえば最初の走査点R11)を原点とする2次元座標系により定義される座標値で表現されていてもよい。また、走査点位置情報として、複数の走査点Rijのうちのいずれか(たとえば最初の走査点R11)のxy座標値と、隣接する走査点の間隔(x方向の間隔、y方向の間隔)とを記憶してもよい。更に、走査点の間隔の代わりに、各走査線の長さ、隣接する走査線の間隔、各走査線上の走査点の個数を記憶するようにしてもよい。いずれにしても、走査点位置情報は、各走査点の位置を一意的に定義するものであれば、その形態は任意である。
位置ズレ量算出部264は、まず、各Aスキャン像群について、これに対応する各走査点Rijの位置(つまり各Aスキャン像の本来の位置)を走査点位置情報から取得する。次に、位置ズレ量算出部264は、各Aスキャン像群について、取得された走査点Rijの位置と、位置特定部263により特定された実際の照射位置Tijとを、各走査点Rij毎に比較する。それにより、走査点Rijの位置に対する照射位置Tijの位置ズレ量が得られる。
次に、補正部266について説明する。補正部266は、位置ズレ量算出部264により算出された位置ズレ量に基づいて、眼底表面方向におけるAスキャン像の位置を補正する。補正部266は、この発明の「第1補正手段」の一例である。
Aスキャン像の位置を補正する処理についてより詳細に説明する。前述のように、位置ズレ量算出部264により求められた眼底表面方向における位置ズレ量は、走査点Rijの位置に対する照射位置Tijの位置ズレ量に相当する。補正部266は、各Aスキャン像について、これに対応する位置ズレ量を打ち消すように、つまり実際の照射位置Tijを本来の走査点Rijの位置に移動させるように、当該Aスキャン像の位置を補正する。それにより、実際に取得されたAスキャン像を本来の位置(走査点Rijの位置)に配置させることができる。以上で、眼底表面方向における位置ズレ量の演算処理に関する説明を終了する。
続いて、眼底Efの深度方向における位置ズレ量の演算処理について説明する。この演算処理は、第1の実施形態と同様にして実行される。つまり、演算部262は、上記の走査(複数のAスキャン像を取得するための走査:本走査と呼ぶことにする)とは別途に走査された信号光LSと参照光LRとからなる干渉光LCの検出結果に基づく1次元画像群(別途のAスキャン像群)に基づいて、深度方向における複数のAスキャン像の位置ズレ量を算出する。
別途のAスキャン像群は、上記別途の走査の方向に配列された所定数のAスキャン像からなる。この別途の走査の方向は本走査と異なる方向を向いている。つまり、別途の走査における所定数の走査点を結んだ走査線は、本走査における各走査線と交差しているものとする。
眼底深度方向における位置ズレ量の演算処理の前提として、この眼底観察装置は、上記した別途の走査を実行して別途のAスキャン像群を形成し、更に、これら別途のAスキャン像群に基づいて、別途の走査における走査線に対応する断層像(基準断層像)を形成する。
演算部262は、第1の実施形態と同様にして、基準断層像における眼底Efの特徴層の画像領域を特定するとともに、本走査で得られた断層像における当該特徴層の画像領域を特定する。
続いて、演算部262(位置ズレ量算出部264)は、第1の実施形態と同様にして、基準断層像から特定された画像領域と、本走査の断層像から特定された画像領域との、深度方向における変位を算出する。更に、演算部262(位置ズレ量算出部264)は、算出された変位に基づき、第1の実施形態と同様にして、本走査で得られたAスキャン像の深度方向における位置ズレ量を算出する。
補正部266は、演算部262により算出された深度方向における位置ズレ量に基づいて、本走査で得られたAスキャン像の深度方向における位置を補正する。この処理は、本走査で得られたAスキャン像の深度方向における位置を、位置ズレ量を打ち消すように深度方向に移動させるようにして実行される。補正部266は、この発明の「第2補正手段」の一例である。以上で、深度方向における位置ズレ量の演算処理の説明を終了する。
次に、走査点特定部265について説明する。走査点特定部265は、特徴部位特定部261により目的の画像領域が特定されない静止画像(観察画像Kのフレーム)があったときに動作する。走査点特定部265は、画像領域が特定されない各静止画像について、この静止画像に対応するAスキャン像の走査点を特定する。この処理は、前述したAスキャン像群と走査点群と眼底Efの位置の検出結果との対応付けと、眼底Efの位置の検出結果と静止画像との対応付け(位置検出は静止画像に基づき実行されたことに注意)とに基づいて容易に実行できる。走査点特定部265は、この発明の「走査点特定手段」の一例である。
走査点特定部265により走査点が特定されると、主制御部211は、走査駆動部70を制御して、この特定された走査点に対応する位置にガルバノミラー43、44を配置させる。更に、主制御部211は、観察光源11を点灯させて観察画像Kを取得させるとともに、光源ユニット101を制御して低コヒーレンス光L0を出力させる。それにより、特定された走査点に信号光LSが照射される。なお、特定された走査点が複数存在する場合には、これら走査点を信号光LSで順次に走査する。
画像形成部220は、この信号光LSと参照光LRとからなる干渉光LCの検出結果をCCDイメージセンサ120から受け、当該走査点に対応する新たなAスキャン像を形成する。
画像処理部230は、この新たなAスキャン像と、これに対応する静止画像(観察画像Kのフレーム)に対して、前述した処理を実行する。更に、画像形成部220は、新たなAスキャン像と、既に取得されている他の走査点とに基づいて、眼底Efの断層像を形成することができる。
[作用・効果]
以上のような眼底観察装置の作用及び効果について説明する。
この眼底観察装置によれば、複数の走査点Rijに対して信号光LSが走査されているときに所定の時間間隔で眼底Efの位置を検出し、検出された眼底Efの位置の時間変化に基づいて、眼底表面方向における複数のAスキャン像の位置ズレ量を算出することができる。更に、この眼底観察装置によれば、算出された位置ズレ量に基づいて複数のAスキャン像の位置を補正することが可能である。
それにより、信号光LSのスキャン中に被検眼Eの移動や瞬きが発生した場合であっても高確度なOCT画像を取得することができる。特に、所定個数(1個以上)のAスキャン像群毎に位置を補正できるので、断層像単位で補正を行う第1の実施形態よりも高い精度での補正が可能である。
また、この眼底観察装置によれば、或るAスキャン像の位置ズレ量を取得するための特徴部位の画像領域が特定されないときに、このAスキャン像に対応する走査点を特定し、この走査点の計測を再度実行して新たなAスキャン像を形成することができる。それにより、位置ズレ量の取得に失敗したとしても、再度の取得を自動で行うことができるので、高い確度のOCT画像を取得することが可能である。特に、位置ズレ量の取得に失敗したAスキャン像に対応する走査点のみを再計測するので、検査時間の短縮や患者への負担軽減も図られる。
また、この眼底観察装置によれば、別途に走査された信号光LSと参照光LRとの干渉光LCの検出結果に基づく別途のAスキャン像群に基づいて、眼底Efの深度方向における複数のAスキャン像の位置ズレ量を算出することができる。更に、この眼底観察装置によれば、この位置ズレ量に基づいて、深度方向における複数のAスキャン像の位置を補正することができる。
それにより、信号光LSのスキャン中に被検眼Eの移動や瞬きが発生した場合であっても高確度なOCT画像を取得することができる。特に、所定個数のAスキャン像群毎に深度方向における位置を補正できるので、断層像単位で補正を行う第1の実施形態よりも高い精度での補正が可能である。
[変形例]
この実施形態に係る各種の変形例について説明する。
(変形例1)
位置検出間隔が走査時間間隔の2倍以上である場合(Q≧2)、上記の実施形態ではQ個のAスキャン像群に対して一つの位置ズレ量を求めていた。この変形例では、Q個のAスキャン像群に対して複数(Q以下)の位置ズレ量を求める処理について説明する。
位置ズレ量算出部264は、第1のAスキャン像群に対応するQ個の走査点が走査されていたときの眼底の位置の検出結果と、その次の第2のAスキャン像群に対応するQ個の走査点が走査されていたときの眼底Efの位置の検出結果とを取得する。そして、位置ズレ量算出部264は、これら二つの検出結果に基づいて、第1のAスキャン像群及び/又は第2のAスキャン像群に含まれる各Aスキャン像の位置ズレ量を推定する。
この推定処理の具体例について図9を参照しつつ説明する。この具体例ではQ=3とする。第1のAスキャン像群に対応する第1の走査点群U1には3つの走査点Ri1〜Ri3が含まれ、第2のAスキャン像群に対応する第2の走査点群U2には3つの走査点Ri4〜Ri6が含まれている。
各走査点群U1、U2において、最初の走査点Ri1、Ri4が走査されているときに眼底Efの位置を検出するものとする。つまり、画像処理部230は、各走査点群U1、U2における最初の走査点Ri1、Ri4が走査されているときに撮影された静止画像(観察画像Kのフレーム)に基づいて、各走査点群U1、U2に対応する位置ズレ量を求める。この処理については前述した。
第1の走査点群U1に対応する位置ズレ量を(Δx1、Δy1)とし、第2の走査点群U2に対応する位置ズレ量を(Δx2、Δy2)とする。位置ズレ量算出部264は、最初の走査点Ri1、Ri4の位置ズレ量をそれぞれ(Δx1、Δy1)、(Δx2、Δy2)とする。
更に、位置ズレ量算出部264は、これら位置ズレ量(Δx1、Δy1)、(Δx2、Δy2)に基づいて、2つの走査点Ri1、Ri4に挟まれた各走査点Ri2、Ri3の位置ズレ量を次のようにして推定する。
走査時間間隔は極めて短時間であるので、走査点Ri1を走査したときから走査点Ri4を走査したときまでの眼底Efの移動速度は等速度と仮定できる。更に、推定対象となる各走査点Ri2、Ri3は、走査点Ri1、Ri4を結んだ線分を、それぞれ1:2、2:1に内分する点に位置する。
上記条件の下、位置ズレ量算出部264は、((Δx2−Δx1)/3、(Δy2−Δy1)/3)を算出し、これを走査点Ri2に対応する位置ズレ量とする。同様に、位置ズレ量算出部264は、(2×(Δx2−Δx1)/3、2×(Δy2−Δy1)/3)を算出し、これを走査点Ri3に対応する位置ズレ量とする。それにより、4つの走査点Ri1〜Ri4のそれぞれに対応する位置ズレ量が得られる。
なお、各走査点Ri5、Ri6に対応する位置ズレ量は、第2の走査点群U2の次の走査点群に対応する位置ズレ量を参照して同様に求められる。位置ズレ量算出部264は、このようにして各走査点Rijに対応する位置ズレ量を順次に求めていく。
以上では、各走査点群U1、U2の最初の走査点Ri1、Ri4を基準として、これらに挟まれた走査点Ri2、Ri3に対応する位置ズレ量を推定したが、他の走査点を基準にした場合であっても、基準となる2つの走査点に挟まれた各走査点に対応する位置ズレ量を同様にして推定できる。たとえば、中間の走査点Ri2、Ri5を基準とする場合、第1の走査点群U1中の走査点Ri3と、第2の走査点群U2中の走査点Ri4のそれぞれに対応する位置ズレ量が推定される。また、最後の走査点Ri3、Ri6を基準とする場合、第2の走査点群U2中の走査点Ri4、Ri5のそれぞれに対応する位置ズレ量が推定される。
補正部266は、求められた位置ズレ量に基づいて、複数のAスキャン像のそれぞれの位置を補正することができる。
この変形例によれば、眼底Efの位置の検出を走査点Q個毎に取得しつつも、位置ズレ量を各Aスキャン像について求めることができる。したがって、眼底Efの位置の検出間隔に制限がある場合でも、各Aスキャン像の位置ズレ量を求めることが可能である。また、走査時間間隔を短く設定できるという利点もある。
(変形例2)
上記の実施形態では、Aスキャン像の位置ズレ量に基づいて、既に形成されたAスキャン像の位置を補正している。一方、この変形例では、Aスキャン像の位置ズレ量に基づいて信号光LSの走査をリアルタイムで制御する発明について説明する。
信号光LSが走査されているときに、画像処理部230は、所定の時間間隔で順次に検出される眼底Efの位置に基づいて位置ズレ量を順次に算出する。眼底Efの位置の検出は、上記実施形態と同様にして実行できる。また、各位置ズレ量を算出する処理についても上記実施形態と同様に実行される。
主制御部211は、順次に算出される位置ズレ量に基づいて走査駆動部70を制御し、眼底Efに対する信号光LSの照射位置を補正する。主制御部211は、この発明の「制御手段」の一例である。
信号光LSの照射位置の補正処理についてより詳しく説明する。各走査点Rijに対するガルバノミラー43、44の位置(ミラー位置)は、実行される走査態様に基づいて予め設定されている。主制御部211は、走査駆動部70を制御して、走査点Rijの走査順序にしたがって各ミラー位置に順次にガルバノミラー43、44を移動させる。
しかし、計測中に被検眼Eが移動すると、本来の走査点Rijの位置、つまり本来の計測位置から外れた場所に信号光LSが照射されてしまう。上記の実施形態では、このようにして生じた位置ズレを、既に取得されたAスキャン像の位置を補正することによって修正していた。
一方、この変形例では、算出された位置ズレ量に応じて信号光LSの照射位置を補正する。つまり、主制御部211は、次の走査点Rijの本来の位置から当該位置ズレ量だけ変位した位置に信号光LSを照射させるように、走査駆動部70を制御する。
この処理を順次に実行することで、被検眼E(眼底Ef)の動きに信号光LSの照射位置をリアルタイムで追従させることができ、それにより、信号光LSのスキャン中に被検眼Eが移動した場合であっても高確度なOCT画像を取得することが可能となる。
(変形例3)
この変形例では、位置ズレが大きかった場合に再計測を行う発明について、図10を参照しつつ説明する。
演算部262には画像特定部267が設けられている。画像特定部267は、位置ズレ量算出部264により算出された各位置ズレ量を所定値と比較する。そして、画像特定部267は、位置ズレ量が所定値以上であるAスキャン像を特定する。画像特定部267は、この発明の「画像特定手段」の一例である。
主制御部211は、光源ユニット101と走査駆動部70を制御し、特定されたAスキャン像に対応する走査点に向けて信号光LSを再度照射させる。二つ以上のAスキャン像が特定された場合、主制御部211は、これらに対応する二つ以上の走査点に向けて順次に信号光LSを再度照射させる。
画像形成部220は、再度照射された信号光LSと参照光LRとの干渉光LCの検出結果に基づいて、この走査点における新たなAスキャン像を形成する。画像形成部220は、この新たなAスキャン像と他の走査点に対応するAスキャン像とに基づいて断層像を形成することができる。
この変形例によれば、位置ズレが大きなAスキャン像に対応する走査点の計測を自動的に再度実行することができるので、計測中に被検眼Eが大きく動いた場合であっても、再計測を自動的に行って高確度なOCT画像を取得することが可能である。また、計測中に被検眼Eが瞬きした場合でも、位置ズレ量の算出が不可能となり(このとき位置ズレ量が所定値以上と判断される)、再度スキャンが実行されるので、高確度のOCT画像が得られる。
(変形例4)
この変形例では、走査点の位置に応じてAスキャン像を選択的に配列させる発明について、図11を参照しつつ説明する。
演算部262には画像選択部268が設けられている。画像選択部268は、位置ズレ量算出部264により算出された位置ズレ量に基づき、各走査点Rijについて、取得された複数のAスキャン像のうち、この走査点Rijの本来の位置に最も近いAスキャン像を選択する。
この処理についてより詳しく説明する。前述のように各走査点Rijの本来の位置は予め設定されている。一方、各Aスキャン像の位置は、対応する走査点Rijの位置と、算出された位置ズレ量とに基づいて求められる。つまり、画像選択部268は、走査点Rijの位置を位置ズレ量だけ変位させた位置を、当該Aスキャン像の位置とする。
更に、画像選択部268は、各走査点Rijについて、その本来の位置に最も近い位置のAスキャン像を選択する。なお、位置ズレ量が十分に小さい場合には当該走査線Rijに対応するAスキャン像が選択されることになるが、位置ズレ量が大きい場合にはそれ以外のAスキャン像が選択されることもある。画像選択部268は、この発明の「画像選択手段」の一例である。
画像形成部220は、各走査点Rijに対して選択されたAスキャン像を、複数の走査点の配列に応じて並べることにより断層像を形成する。
この変形例によれば、各走査点Rijに最も近いAスキャン像を選択して断層像を形成することができるので、再度スキャンを行わなくても高確度なOCT画像を取得することが可能である。
(変形例5)
Aスキャン像の位置ズレ量には、Aスキャン像の位置補正以外の利用方法もある。この変形例では、位置補正以外の利用方法の一例を説明する。
この変形例では、同じ走査線に沿って実施された複数回の走査に基づく複数の断層像を重ね合わせる処理において位置ズレ量を利用する。この重ね合わせ処理は高画質化を図るためのものである。
この変形例では、前述のように所定の走査線に沿って信号光LSを走査する。このときの走査態様としては、たとえば放射スキャンや円スキャンが適用される。この眼底観察装置は、所定の走査線に沿って信号光LSを反復走査する。画像形成部220は、この反復走査に応じて、当該走査線上の複数の走査点に対応する複数のAスキャン像を反復形成する。それにより、各走査毎の断層像が得られる。位置ズレ量算出部264は、反復して形成されるAスキャン像の位置ズレ量を反復して算出する。
図12に示すように、演算部262には、位置ズレ量判断部269と画像重畳部270が設けられている。位置ズレ量判断部269は、位置ズレ量算出部264により反復して算出される各位置ズレ量が所定の許容範囲に含まれるか判断する。この許容範囲としては、位置ズレ量が所定値よりも小さい範囲が予め設定されている。位置ズレ量判断部269は、この発明の「判断手段」の一例である。
画像重畳部270は、位置ズレ量が所定の許容範囲に含まれると判断されたAスキャン像の組を重ね合わせる。このとき、画像重畳部270は、各走査点Rijに対応するAスキャン像の組を形成し、各組のAスキャン像を重ね合わせる。画像重畳部270は、この発明の「画像重畳手段」の一例である。
画像形成部220は、この重ね合わせ処理により形成された新たな複数のAスキャン像を、複数の走査点Rijの配列に応じて並べる。それにより、所定の走査線に沿う断層像が形成される。
この変形例によれば、位置ズレ量が許容範囲内に収まるAスキャン像のみを重畳することができるので、高画質の画像を容易に取得することが可能である。なお、重畳されるAスキャン像の個数が足りない場合には、3次元スキャンと同じように再スキャンを行うことができる。
(その他の変形例)
上記の実施形態では、観察画像Kに基づいて眼底Efの位置を検出しているが、この発明の検出手段はこれに限定されるものではない。検出手段は、信号光LSが走査されているときに、所定の時間間隔で眼底Efの位置を検出できるものであれば、任意の構成を適用することが可能である。
たとえば次の文献に記載された手法を用いることが可能である:「Image stabilization for scanning laser ophthalmoscopy」,Daniel X.Hammer 外3名,30 December 2002/Vol.10,No.26/OPTICS EXPRESS 1542。
この文献に記載された構成は、共焦点トラッキングリフレクトメータ(confocal tracking reflectometer)と、ディザスキャナ(dither scanner)と、トラッキングガルバノメータ(tracking galvanometers)を含む。
トラッキング用のビームは眼底の特徴点を追従する。共焦点トラッキングリフレクトメータは、眼底に照射されたビームの反射光により被検眼の動きを決定できるように用いられる。ビームは、所定の共鳴周波数(8kHz)で、かつx,yスキャナ間に90度の位相差を付与し、ビームが円を描くようにディザスキャナを駆動する。ビームが特徴点に照射されたとき、その検出信号は上記共鳴周波数の信号を含み、その位相はビームとターゲットとの距離に比例する。ロックインアンプを用いた位相感度の検出はエラー信号を生成し、このエラー信号はDSPフィードバック制御ループに印加される。この制御ループは、被検眼の動きに対して画像がロックされるように、処理されたエラー信号に応じてトラッキングガルバノメータに指示を出す。
この構成により実現される眼底トラッキングで得られる眼底の動きの検出結果を用いて、上記の実施形態や変形例を実現することが可能である。
上記の実施形態においては、参照ミラー114の位置を変更して信号光LSの光路と参照光LRの光路との光路長差を変更しているが、光路長差を変更する手法はこれに限定されるものではない。たとえば、被検眼Eに対して眼底カメラユニット2やOCTユニット100を移動させて信号光LSの光路長を変更することにより光路長差を変更することができる。また、特に被測定物体が生体部位でない場合などには、被測定物体を深度方向(z方向)に移動させることにより光路長差を変更することも有効である。
上記の実施形態におけるコンピュータプログラムを、コンピュータのドライブ装置によって読み取り可能な任意の記録媒体に記憶させることができる。この記録媒体としては、たとえば、光ディスク、光磁気ディスク(CD−ROM/DVD−RAM/DVD−ROM/MO等)、磁気記憶媒体(ハードディスク/フロッピー(登録商標)ディスク/ZIP等)などを用いることが可能である。また、ハードディスクドライブやメモリ等の記憶装置に記憶させることも可能である。更に、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのプログラムを送受信することも可能である。
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形を適宜に施すことが可能であることは言うまでもない。