JP2015078881A - 浸水量測定装置および浸水量測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】非接触式の浸水点検方法において、作業員の高い安全性を確保しつつ、電子機器の外箱の板厚の影響を抑制することで測定精度を高めること目的とする。【解決手段】本発明にかかる浸水量測定装置の構成は、外箱100aの底面100bの下方において底面から所定間隔離間して配置され、非接触で外箱内に超音波202を入射する超音波発振部240と、外箱の底面の下方において底面および超音波発振部から所定間隔離間して配置され、超音波が該外箱内に浸水した水の水面で反射した水面反射波204a、および超音波が外箱の底面を伝播した底面ガイド波204bを含む反射波204を受信する反射波受信部250と、反射波受信部において受信した水面反射波および底面ガイド波の受信タイミングの時間差に基づいて外箱内の浸水量を算出する浸水量算出部222と、を備えることを特徴とする。【選択図】図2
Description
本発明は、電気機器の内部への浸水量を外箱の外から測定する浸水量測定装置および浸水量測定方法に関する。
電気事業者の配電設備から供給される電力は、配電系統を通じて需要家に送電される。配電系統には、変圧器や自動電圧調整器などの配電用変電設備等や、短絡や地絡といった事故時に高圧配電線による送電を停止(停電)するための開閉器や遮断器等、多数の設備が接続されている。以下、本願では上記の設備を総称して電気機器と称する。
上記の電気機器のうち、例えば開閉器として、電柱上に設置される柱上気中開閉器(以下、単に開閉器と称する。)を例示すると、かかる開閉器に纏わる配電線事故の原因は、その外箱の内部への浸水が最も多い。この浸水の原因としては、経年によるパッキンの劣化や外箱の腐食等による、外箱の内部への雨水等の浸入が挙げられ、浸水を放置すると、動作不良や絶縁性能の低下により停電等の配電線事故が発生するおそれがある。
そこで、配電線事故を未然に防ぐべく、従来から開閉器(電気機器)の内部への浸水の有無の点検が行われていた。しかしながら、開閉器は遮蔽構造であるため、内部に浸水が生じているか否かを外部から確認することは困難である。そこで、開閉器の点検方法としては、例えば特許文献1に記載されているように、容器内(外箱内)に超音波を送信し、その反射波を受信して容器内の液体を検出していた。特に、特許文献1では、トランスデューサを容器の底面に接触させて超音波の送信および反射波の受信を行い、反射波の振幅方向の変動から容器内における液体の存在(有無)を検出している。
しかしながら、特許文献1のように、点検装置であるトランスデューサを開閉器(電気機器)の底面に直接接触させる方法であると、仮に外箱の内部に浸水があった場合に、点検時の振動によってその水面が揺れてしまい外箱内部に収容されている機器に水が接触し、開閉器の内部短絡が起こるおそれがあった。そして、開閉器の外箱と点検装置とが接触しているため、万が一内部短絡が起きてしまった場合において、点検装置が故障するだけではなく、点検員の人身災害が発生することが危惧されていた。故に、特許文献1のような従来の点検方法では、熟練した点検員が極めて慎重に点検を行う必要があり、点検作業効率および安全性の向上が要請されていた。
そこで、近年では非接触式の点検方法の検討が行われている。非接触式の点検方法としては、点検対象である電気機器から所定間隔離した位置に超音波発振器およびレシーバを配置し、かかる超音波発振器から電気機器内に超音波を入射し、その反射波をレシーバにおいて受信することにより、電子機器内への浸水の有無を確認する方法が検討されている。しかしながら、このような方法は、接触式の点検方法に比して高い安全性を確保することが可能であるものの、電子機器の外箱の板厚や材質および状態によって十分な測定精度が得られないことがあった。特に電子機器の外箱の板厚が厚い場合、入射された超音波が外箱の板を伝播することによりガイド波が発生し、そのガイド波がノイズとなってしまうことがあった。
本発明は、このような課題に鑑み、非接触式の浸水点検方法において、作業員の高い安全性を確保しつつ、電子機器の外箱の板厚の影響を抑制することで測定精度を高めることが可能な浸水量測定装置および浸水量測定方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかる浸水量測定装置の代表的な構成は、電気機器の内部への浸水量を外箱の外から測定する浸水量測定装置であって、外箱の底面の下方において底面から所定間隔離間して配置され、非接触で外箱内に超音波を入射する超音波発振部と、外箱の底面の下方において底面および超音波発振部から所定間隔離間して配置され、超音波が該外箱内に浸水した水の水面で反射した水面反射波、および超音波が外箱の底面を伝播した底面ガイド波を含む反射波を受信する反射波受信部と、反射波受信部において受信した水面反射波および底面ガイド波の受信タイミングの時間差に基づいて外箱内の浸水量を算出する浸水量算出部と、を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、超音波発振部および反射波受信部は、電気機器の外箱においてその底面から所定間隔離間して配置される。故に、点検作業時における電気機器の振動が生じることがなく、仮に外箱の内部に浸水があった場合であっても、その水面の揺れが抑制され、内部短絡を防止することが可能となる。また超音波発振部および反射波受信部が外箱の底面から離間して配置される、すなわちそれらは外箱の底面とは接触してないため、点検装置の故障や感電による点検員の人身災害が発生を防ぐことができる。したがって、熟練した点検員でなくとも効率的に点検作業を行うことができ、且つ点検作業時の安全性の大幅な向上を図ることが可能である。
また上記構成では、水面反射波および底面ガイド波との受信タイミングの時間差を求め、かかる時間差によって外箱内の浸水量を算出する。このように従来ノイズとされていた底面ガイド波を浸水量の算出データとして用いることにより、電子機器の外箱の板厚が厚い場合であっても好適に浸水量の測定を行うことができ、ノイズの影響が排除された高い測定精度を得ることが可能となる。
上記外箱の底面の下方において底面から所定間隔離間し、超音波発振部から第2所定間隔離間した位置に配置される第2反射波受信部を更に備え、浸水量算出部は、反射波受信部および第2反射波受信部が受信した反射波の最初のピークの長さを比較することにより、外箱内への浸水の有無を判断するとよい。かかる構成によれば、外箱内の浸水量が少なく水位が低い、すなわち水面が外箱の底面に近接していることにより、水面反射波と底面ガイド波との受信タイミングの時間差が小さく、水面反射波の波形と底面ガイド波の波形とが干渉した場合においても浸水の有無を判断することが可能となる。
上記電気機器は、電柱の上方に設置され通電された柱上電気機器であるとよい。上述したように本発明にかかる浸水量測定装置は、電気機器の外箱の底面から所定間隔離間した位置に超音波発振部および反射波受信部を配置する。したがって、柱上に設置される電気機器、すなわち外箱の底面の下方にそれらを配置する空間を有する電気機器の浸水量測定に好適に用いることができる。また浸水量測定装置が外箱に非接触であるため、通電状態の電気機器であっても感電等の人身災害が起きるおそれがなく、高い安全性が得られる。
上記課題を解決するために、本発明にかかる浸水量測定方法の代表的な構成は、電気機器の内部への浸水量を外箱の外から測定する浸水量測定方法であって、非接触で外箱内に超音波を入射する超音波発振部を、外箱の底面の下方において底面から所定間隔離間した位置に配置し、超音波が外箱内に浸水した水の水面で反射した水面反射波、および超音波が外箱の底面を伝播した底面ガイド波を含む反射波を受信する反射波受信部を、外箱の底面の下方において外箱の底面から所定間隔離間した位置に配置し、超音波発振部によって外箱内に超音波を入射し、反射波受信部によって反射波を受信し、反射波受信部において受信した水面反射波および底面ガイド波の受信タイミングの時間差に基づいて外箱内の浸水量を算出することを特徴とする。
また上記浸水量測定方法では、反射波受信部を超音波発振部に対する距離が変わるようにスイープさせながら反射波の受信を複数回行い、複数回受信した反射波の最初のピークの長さを比較することにより、外箱内への浸水の有無を判断するとよい。上述した浸水量測定装置の技術的思想に基づく構成要素やその説明は、当該浸水量測定方法にも適用可能である。
本発明によれば、非接触式の浸水点検方法において、作業員の高い安全性を確保しつつ、電子機器の外箱の板厚の影響を抑制することで測定精度を高めることが可能な浸水量測定装置および浸水量測定方法を提供することが可能となる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(電気機器(AS100))
図1は、本実施形態にかかる浸水量測定方法を適用する電気機器を示す図である。配電系統には、開閉器、自動電圧調整器(SVR、LVR)、変圧器等の多数の電気機器が接続されている。図1では、かかる電気機器の例として、柱上気中開閉器(AS:Air Switch以下、AS100と称する)を例示している。AS100は、柱上開閉器の一種であり、短絡や地絡といった事故時に高圧配電線による送電を停止(停電)する。図1に示すように、AS100は、電柱102の上方に設置(装柱)され、腕金104に引留装柱された電源側の高圧配電線106aと負荷側の高圧配電線106bが接続されている。本実施形態にかかる浸水量測定装置および浸水量測定方法では、このAS100の外箱100a内への浸水の有無および浸水量を測定する。
図1は、本実施形態にかかる浸水量測定方法を適用する電気機器を示す図である。配電系統には、開閉器、自動電圧調整器(SVR、LVR)、変圧器等の多数の電気機器が接続されている。図1では、かかる電気機器の例として、柱上気中開閉器(AS:Air Switch以下、AS100と称する)を例示している。AS100は、柱上開閉器の一種であり、短絡や地絡といった事故時に高圧配電線による送電を停止(停電)する。図1に示すように、AS100は、電柱102の上方に設置(装柱)され、腕金104に引留装柱された電源側の高圧配電線106aと負荷側の高圧配電線106bが接続されている。本実施形態にかかる浸水量測定装置および浸水量測定方法では、このAS100の外箱100a内への浸水の有無および浸水量を測定する。
(浸水量測定装置および浸水量測定方法)
図2は、本実施形態にかかる浸水量測定装置200の概略構成を示す図であり、図2(a)は浸水量測定装置200の概略図であり、図2(b)は浸水量測定装置200の機能構成を示すブロック図である。なお、理解を容易にするために、図2以降の図面では、図1に示したAS100は、その外箱100aのみを模式的に示している。また図2(a)では、外箱100a内に水100cが浸水している場合の水面100dを例示しているが、これはあくまでも例示に過ぎず、必ずしも外箱100a内に水100cが浸水しているとは限らない。
図2は、本実施形態にかかる浸水量測定装置200の概略構成を示す図であり、図2(a)は浸水量測定装置200の概略図であり、図2(b)は浸水量測定装置200の機能構成を示すブロック図である。なお、理解を容易にするために、図2以降の図面では、図1に示したAS100は、その外箱100aのみを模式的に示している。また図2(a)では、外箱100a内に水100cが浸水している場合の水面100dを例示しているが、これはあくまでも例示に過ぎず、必ずしも外箱100a内に水100cが浸水しているとは限らない。
図2に示す浸水量測定装置(以下、測定装置200)は、電気機器であるAS100の外箱100aの内部への浸水の有無および浸水量を外箱100aの外から測定する。図2(a)に示すように、本実施形態にかかる測定装置200は、主に、測定端末210と、探触子である超音波発振部240および反射波受信部250とから構成される。測定端末210と、超音波発振部240および反射波受信部250とは、各々ケーブル240a・250aを介して有線で接続されている。
図2(a)に示す測定端末210は、図2(b)に示す各部を含んで構成され、後述する超音波発振部240による超音波202の入力を制御し、且つ反射波受信部250により受信された反射波204を計算処理する。以下、測定端末210が含む(機能する)各部について説明する。
制御部212は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により測定装置200全体を管理および制御する。また本実施形態では、制御部212は、パルサー214、レシーバ216、A/D変換部218、浸水量算出部222としても機能する。
パルサー214は、ケーブル240aを介して超音波発振部240に超音波202の波形に応じた電気信号(電流)を送信する。電気信号は超音波発振部240を駆動させるための所定の周波数および間隔で送信される。レシーバ216は、反射波受信部250が超音波202の反射波204を受けて生じたアナログ信号を増幅する。A/D変換部218は、レシーバ216によって増幅されたアナログ信号としての反射波204をデジタル信号に変換する。
記憶部224は、ROM、RAM、EEPROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成され、制御部212で処理されるプログラムを記憶する。表示部226は、液晶ディスプレイ、EL(Electro Luminescence)、PDP(Plasma Display Panel)等で構成され、記憶部224に記憶されたアプリケーションのGUI(Graphical User Interface)を表示することができる。入力部228は、キーボード、十字キー、ジョイスティック等の複数のキー(スイッチ)やマウス等から構成され、ユーザの操作入力を受け付ける。
超音波発振部240は外箱100a内に超音波202を入射する。反射波受信部250は、超音波発振部240によって入射された超音波202が、外箱100a内に浸水した水100cの水面100dで反射した水面反射波204a、および超音波202が外箱100aの底面100bを伝播した底面ガイド波204bを含む反射波204を受信する。
本実施形態では、超音波発振部240および反射波受信部250は、外箱100aの底面100bの下方において、かかる底面100bから所定間隔d離間し且つ底面100bに対して所定角θ1を有して配置される(図2(a)参照)。すなわち、超音波発振部240は、外箱100aに接触することなく(非接触で)、かかる外箱100a内に入射角θ1の超音波202を入射し、反射波受信部250も外箱100aに非接触で反射波204を受信する。このように、超音波発振部240および反射波受信部250が外箱100aに非接触であることにより、点検作業時におけるAS100の振動が生じることがない。したがって、仮に図2(a)に示すように外箱100aの内部に浸水があった場合であっても、その水面100dの揺れが抑制されるため、内部短絡が防がれ、熟練した点検員でなくとも効率的に点検作業を行うことができる。
また超音波発振部240および反射波受信部250が非接触であることにより、通電状態のAS100であっても感電等の人身災害が起きるおそれがない。故に、点検作業時の安全性の大幅な向上を図ることが可能である。
図3は、本実施形態にかかる浸水量算出部222による浸水量の算出原理を説明する図である。本実施形態では、制御部212は浸水量算出部222として機能し、反射波受信部250において受信した水面反射波204aおよび底面ガイド波204bの受信タイミングの時間差に基づいて外箱100a内の浸水量を算出する。図3(a)では、超音波202の入射角をi、屈折角をr、水中音速Vw、浸水深さ(外箱100aの底面100bから水面100dまでの距離)をD、水面反射波204aが出現するまでの距離をL1とする。また空中音速をVaとする。
上記のように仮定したとき、スネルの法則を適用すると、Va/sin(i)=Vw/sin(r)、tw1=Pw1/Vwと表すことができる。また水中伝搬距離は、Pw1=2D/cos(r)、L1/2D=tan(r)と表すことができる。このとき、底面ガイド波204bの伝搬時間は、ta+tg1+Δtg+tbであり、1回目の水面反射波204aと底面ガイド波204bの伝搬時間は、ta+tw1+Δtg+tbであることから、1回目の水面反射波204aと底面ガイド波204bとの受信タイミングの時間差Δtは、tw1−tg1と表すことができる。ここで、浸水深さDと受信タイミングの時間差Δtには線形性があるため、D=αΔtと表すことができ、超音波202の周波数ごとの時間差深さ換算定数αは、図3(b)に示すとおりとなる。
図4は、本実施形態にかかる浸水量算出部222による浸水量の計算値と実測値について説明する図である。図4では、超音波の周波数を800kHzとし、超音波発振部240と反射波受信部250との間隔(プローブ間間隔)を100mmとした場合の測定結果を例示している。10mmから10mm間隔ごとに50mmまでの浸水量において超音波202の入射および反射波204の受信を行い、受信した反射波204における水面反射波204aおよび底面ガイド波204bの受信タイミングの時間差Δtを上記の式(D=αΔt)に代入することにより、図4(a)に示すように浸水量の計算値(浸水量計算値)が算出される。
図4(b)に示すように、水面反射波204aおよび底面ガイド波204bの受信タイミングの時間差Δtに基づいて算出された浸水量計算値は、浸水量実測値とほぼ一致する。また図4(a)に示すように、浸水量(浸水量実測値)が10mmのときは、約10%の誤差が生じるものの、浸水量が20mm以上の場合には、極めて高い精度で浸水量を算出可能である。このことから、浸水量が20mm以上の場合には、本実施形態の浸水量測定方法が特に有効であることが理解できる。
図5、図6および図7は、反射波受信部250において受信した反射波204の波形を例示する図である。図5は、浸水量が0mmのときの反射波204の波形を例示していて、図6は、浸水量が10mmのときの反射波204の波形を例示していて、図7は、浸水量が20mmのときの反射波204の波形を例示している。なお、図5(a)、図6(a)および図7(a)は、反射波受信部250が受信した反射波204のスコープ画像であり、図5(b)、図6(b)および図7(b)は、図5(a)、図6(a)および図7(a)の時間波形表示である。
図5(a)に示すように、浸水量が0mmの場合、幅が狭いシャープな底面ガイド波204bが受信される。図5(b)は図5(a)に示すスコープ画像のプローブ間距離130mmのとき(A−A)の時間波形表示であり、図5(b)に示すように、浸水量が0mmの場合、底面ガイド波204bのみが受信されている。
図6(a)に示すように、浸水量が10mmの場合、幅が広がった底面ガイド波204bが受信される。図6(b)は図6(a)に示すスコープ画像のプローブ間距離130mmのとき(B−B)の時間波形表示であり、図6(b)に示すように浸水量が10mmの場合、底面ガイド波204bに近接した位置に水面反射波204aが観察される。すなわち、図6(a)の幅が広がった底面ガイド波204bは、図5(a)のように幅が狭い底面ガイド波204bに水面反射波204aが干渉したものと理解することができる。
図7(a)に示すように、浸水量が20mmの場合においても、幅が広がった底面ガイド波204bが受信される。図7(b)は図7(a)に示すスコープ画像のプローブ間距離100mmのときの(C−C)の時間波形表示であり、図7(b)に示すように浸水量が20mmの場合、底面ガイド波204bに近接した位置に水面反射波204aが観察されるが、水面反射波204aの強度が強いため、底面ガイド波204bと水面反射波204aとを分離することができる。このことから、上記説明したように浸水量が20mm以上の場合に高い測定精度が得られることが理解できる。
ここで、図6に示したように浸水量が少ない場合、ピークを分離することが難しい(ピークが近すぎるため、明確に2つのピークを検知することが難しい)。このため浸水量を測定するためには不十分であるが、最初のピークの長さ(底面ガイド波204bと水面反射波204aが連続していると考えられるピークの長さ)が、底面ガイド波204bのみの波形より長くなる。そこで浸水がないことがわかっている電気機器AS100(例えば設置前の機器)を用いて底面ガイド波204bのサンプルを取得しておき、サンプルと測定値とを比較することにより、浸水の有無を判定することができる。
またサンプルを使用する代わりに、上述した測定方法において、反射波受信部250を超音波発振部240に対する距離が変わるようにスイープさせながら反射波204の受信を複数回行い、その複数回受信した反射波204の最初のピークの長さを比較することにより、外箱100a内への浸水の有無を判断するとよい。
図8は浸水量が少ない場合にスイープによって受信した反射波204の受信波形を例示する図である。図8(a)は、プローブ間距離(超音波発振部240と反射波受信部250との間の距離)が近いときの反射波204の受信波形を例示していて、図8(b)は、反射波受信部250をスイープさせることによりプローブ間距離(超音波発振部240と反射波受信部250との間の距離)が遠くなったときの反射波204の受信波形を例示している。
プローブ間距離が近いと、水面反射波204aおよび底面ガイド波204bが反射波受信部250に到達するまでの経路長の差が小さいため、図8(a)に示すように、反射波受信部250においてそれらが受信されるタイミング(受信タイミング)が近くなる。このため、反射波204の受信波形の最初のピークは、水面反射波204aと底面ガイド波204bが干渉したものとなる。これに対し、プローブ間距離が遠いと、水面反射波204aおよび底面ガイド波204bが反射波受信部250に到達するまでの経路長の差が大きくなるため、図8(b)に示すように、反射波受信部250においてそれらが受信される受信タイミングにおいても差が生じる。なお、外箱100aの鉄の方が水100cよりも音速が速いため、プローブ間距離の違いによる受信タイミングの差は顕著に影響する。このため、反射波204の受信波形の最初のピークの長さは、図8(a)に示すピークの長さよりも長くなる。
上述したように、外箱100a内に浸水が生じている場合は、プローブ間距離に応じて反射波204の受信波形の最初のピークの長さに変化が生じる。これに対し、外箱100a内に浸水が生じていない場合は、スイープによってプローブ間距離を変化させても、受信される反射波204は底面ガイド波204bのみであるため、受信波形に変化が生じず、いずれのプローブ間距離においても受信波形の最初のピークの長さは同じとなる。
すなわちスイープによってプローブ間距離を変化させて反射波204を複数回受信すれば、水面反射波204aの波形と底面ガイド波204bの波形とが干渉した場合においても、複数回受信した反射波204の最初のピークの長さが異なっていた場合(プローブ間距離が遠いほどピークが長い場合)には浸水があると判断することができる。したがって、外箱100a内の水位が低い、すなわち浸水量が少ない場合においても、浸水の有無を正確に判断することが可能となる。
図9は、本実施形態の浸水量測定装置200の他の例を示す図である。図9に示す例では、外箱100aの底面100bの下方において、底面100bから所定間隔d離間した位置、且つ超音波発振部240から第2所定間隔離間した位置に、2つめの反射波受信部である第2反射波受信部260を更に配置している。かかる第2反射波受信部260においても、ケーブル260aを介して測定端末210と有線接続されている。
上記構成によれば、反射波204を、反射波受信部250および第2反射波受信部260の2箇所において受信することができる。すなわち複数の箇所において反射波204を受信可能となるため、反射波受信部250をスイープさせた場合と同様に、反射波受信部250および第2反射波受信部260すなわち複数箇所においてそれぞれ反射波204を受信することができる。すると、2つの反射波204の最初のピークの長さを比較することにより、外箱100a内への浸水の有無を判断することが可能となる。この場合、反射波受信部250が2つ必要になるものの、反射波受信部250を移動させる必要がなくなるため、反射波受信部250を移動させるための機構が不要となると共に、測定に必要な所要時間を短縮することができる。
上記説明したように、本実施形態にかかる測定装置200および測定方法によれば、超音波発振部240および反射波受信部250は、AS100(電気機器)の外箱100aの底面100bから所定間隔離間して配置されるため、点検作業時におけるAS100の振動、ひいてはそれによる水面の揺れが抑制される。したがって、内部短絡を防止することができ、高い安全性が得られる。また超音波発振部240および反射波受信部250が外箱100aの底面100bとは接触してないため、感電による点検員の人身災害が発生を防ぐことができ、点検作業の効率および点検作業時の安全性の大幅な向上を図ることが可能である。
また本実施形態にかかる測定装置200および測定方法では、水面反射波204aおよび底面ガイド波204bとの受信タイミングの時間差を求め、かかる時間差によって外箱100a内の浸水量を算出することで、従来ノイズとされていた底面ガイド波204bが浸水量の算出データとして用いられる。したがって、電子機器の外箱100aの板厚が厚い場合であっても好適に浸水量の測定を行うことができ、ノイズの影響が排除された高い測定精度を得ることが可能となる。
なお、本実施形態にかかる浸水量測定装置および浸水量測定方法は、図1に示したAS100のように、電柱102の上方に設置され通電された柱上電気機器に特に好適に適用することができる。これは、電柱102上に設置される柱上電気機器(AS100)では、外箱100aの底面の下方に開放空間を有するため、その外箱100aの底面100bから所定間隔d離間した位置に超音波発振部240および反射波受信部250を好適に配置可能だからである。また本実施形態においては、浸水量の測定対象となる電気機器として、AS100を例示したが、かかる例に限定するものではなく、本実施形態にかかる浸水量測定装置および浸水量測定方法は、AS100以外の他の電気機器に対しても適用可能である。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、電気機器の内部への浸水量を外箱の外から測定する浸水量測定装置および浸水量測定方法に利用することができる。
100…AS、100a…外箱、100b…底面、100c…水、100d…水面、102…電柱、104…腕金、106a…高圧配電線、106b…高圧配電線、200…測定装置、202…超音波、204…反射波、204a…水面反射波、204b…底面ガイド波、210…測定端末、212…制御部、214…パルサー、216…レシーバ、218…A/D変換部、222…浸水量算出部、224…記憶部、226…表示部、228…入力部、240…超音波発振部、240a…ケーブル、250…反射波受信部、250a…ケーブル、260…第2反射波受信部、260a…ケーブル
Claims (4)
- 電気機器の内部への浸水量を外箱の外から測定する浸水量測定装置であって、
前記外箱の底面の下方において該底面から所定間隔離間して配置され、非接触で該外箱内に超音波を入射する超音波発振部と、
前記外箱の底面の下方において該底面および前記超音波発振部から所定間隔離間して配置され、前記超音波が該外箱内に浸水した水の水面で反射した水面反射波、および該超音波が該外箱の底面を伝播した底面ガイド波を含む反射波を受信する反射波受信部と、
前記反射波受信部において受信した水面反射波および底面ガイド波の受信タイミングの時間差に基づいて前記外箱内の浸水量を算出する浸水量算出部と、
を備えることを特徴とする浸水量測定装置。 - 前記外箱の底面の下方において該底面から所定間隔離間し、前記超音波発振部から第2所定間隔離間した位置に配置される第2反射波受信部を更に備え、
前記浸水量算出部は、前記反射波受信部および前記第2反射波受信部が受信した反射波の最初のピークの長さを比較することにより、前記外箱内への浸水の有無を判断することを特徴とする請求項1に記載の浸水量測定装置。 - 電気機器の内部への浸水量を外箱の外から測定する浸水量測定方法であって、
非接触で前記外箱内に超音波を入射する超音波発振部を、該外箱の底面の下方において該底面から所定間隔離間した位置に配置し、
前記超音波が前記外箱内に浸水した水の水面で反射した水面反射波、および該超音波が該外箱の底面を伝播した底面ガイド波を含む反射波を受信する反射波受信部を、該外箱の底面の下方において該外箱の底面から所定間隔離間した位置に配置し、
前記超音波発振部によって前記外箱内に前記超音波を入射し、
前記反射波受信部によって前記反射波を受信し、
前記反射波受信部において受信した水面反射波および底面ガイド波の受信タイミングの時間差に基づいて前記外箱内の浸水量を算出することを特徴とする浸水量測定方法。 - 前記反射波受信部を前記超音波発振部に対する距離が変わるようにスイープさせながら前記反射波の受信を複数回行い、
前記複数回受信した反射波の最初のピークの長さを比較することにより、前記外箱内への浸水の有無を判断することを特徴とする請求項3に記載の浸水量測定方法。
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JP2020085789A (ja) * | 2018-11-29 | 2020-06-04 | 新日本無線株式会社 | 超音波センサ及び車両制御システム |
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2013
- 2013-10-16 JP JP2013215613A patent/JP2015078881A/ja active Pending
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JP7252742B2 (ja) | 2018-11-29 | 2023-04-05 | 日清紡マイクロデバイス株式会社 | 超音波センサ及び車両制御システム |
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