JP2015071725A - 積層フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材層(X)/粘着層(Y)の少なくとも2層からなる積層フィルムにおいて、粘着層(Y)が下記(a1)〜(a3)を満たすプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)100〜20重量%と、スチレン系エラストマー(B)0〜80重量%からなることを特徴とする積層フィルム。
(A)プロピレン−エチレンブロック共重合体
(a1)メタロセン系触媒を用いてプロピレン単独重合体又はエチレン含有量が7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体(A1)を30〜95重量%と、メタロセン系触媒を用いて成分(A1)よりも多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体(A2)を70〜5重量%となるように調整することで得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体
(a2)固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度―損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する
(a3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる重量平均分子量5,000以下の成分量W(Mw≦5,000)が、全体の0.8重量%以下
【選択図】なし
Description
これら感圧接着フィルムには、保護対象物に容易に密着させることができ、保護対象物の加工時、運搬時又は貯蔵期間中に、簡単には剥離しないが、剥がす必要があるときには容易に剥離させることができ、かつ、糊残りなどの被着体への汚染が無いという特性が望まれている。
(A)プロピレン−エチレンブロック共重合体
(a1)メタロセン系触媒を用いてプロピレン単独重合体又はエチレン含有量が7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体(A1)を30〜95重量%と、メタロセン系触媒を用いて成分(A1)よりも多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体(A2)を70〜5重量%となるように調整することで得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体
(a2)固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度―損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する
(a3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる重量平均分子量5,000以下の成分量W(Mw≦5,000)が、全体の0.8重量%以下
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)が、さらに下記(a4)を満たすことを特徴とする積層フィルムが提供される。
(a4)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1〜30g/10min
また、第3の発明によれば、第1又は第2の発明において、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)が、さらに下記(a5)を満たすことを特徴とする積層フィルムが提供される。
(a5)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が、110〜150℃の範囲にあること
以下に詳細を説明する。
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、メタロセン系触媒を用いてプロピレン単独重合体又はエチレン含有量が7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体(A1)(以下、成分(A1)と略称することがある。)を30〜95重量%と、メタロセン系触媒を用いて成分(A1)よりも多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体(A2)(以下、成分(A2)と略称することがある。)を70〜5重量%となるように調整することで得られる。
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、後述する逐次重合法(重合ブレンド法)による混合物であっても、別々に製造された成分(A1)と成分(A2)とを、混合装置、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー(商品名)、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸又は二軸スクリュー押出機、コニーダー等を使用して溶融混練する方法(溶融ブレンド法)による混合物であってもよいが、経済的に逐次重合法で製造する方が好ましい。
なお、ここでいう逐次重合法による混合物とは、成分(A1)と成分(A2)を逐次重合することにより得られる、通称でのブロック共重合体であり、必ずしも成分(A1)と成分(A2)とが完全にブロック状に共重合されたものでなくともよい。
成分(A1)は、フィルムのべたつきを抑制し、耐熱性を発現するために、融点が比較的高く、結晶性を有するプロピレン単独重合体、又はプロピレン−エチレンランダム共重合体である必要がある。[E]A1は、好ましくはエチレン含有量([E]A1)が7重量%以下であり、より好ましくは6重量%以下、さらに好ましくは0.5〜6重量%、特に好ましくは1.5〜6重量%である。[E]A1が7重量%以下であると融点が最適となり、フィルムの耐熱性が良好となる。
なお、成分(A1)はプロピレン単独重合体でも改良された粘着性や透明性及び耐熱性を示すが、成分(A1)がプロピレン単独重合体の場合には透明性を維持しながら充分な粘着性を発揮させるために後述する成分(A2)の割合を極端に増加させる必要が生じ、これにより耐熱性及びベタツキやブロッキングなどの顕著な悪化を招くことが懸念される場合がある。
一方、成分(A1)をプロピレン−エチレンランダム共重合体とすると、成分(A1)自体の融点は低下することで耐熱性は悪化するように見えるが、充分な粘着性を発揮するために必要な成分(A2)の量を抑制できることで、ブロック共重合体全体としての耐熱性はむしろ向上し、かつ、ベタツキやブロッキングの悪化が小さいため好ましい。
さらに融点を低下させられることで、フィルム成形時の成形温度を低下させても充分な押出安定性等が得られることで臭気性などが極めて優れたフィルムを得ることができる。
これらの観点から、成分(A1)中のエチレン含有量の下限値は、好ましくは0.5重量%、より好ましくは1.5重量%である。
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の粘着性と耐衝撃性及び透明性を向上させるのに必要な成分である。
ここで、成分(A2)は上記効果を充分発揮するために特定範囲のエチレン含有量であることが必要である。すなわち、本発明に用いるブロック共重合体において、成分(A1)に対し成分(A2)の結晶性は低い方が、粘着性改良効果が大きく、結晶性はプロピレン−エチレンランダム共重合体中のエチレン含有量で制御されるため、成分(A2)中のエチレン含有量[E]A2は、成分(A1)中のエチレン含有量[E]A1よりも多いことが必要であり、3重量%以上多いことが好ましく、より好ましくは6重量%以上、更に好ましくは8重量%以上、成分(A1)よりも多くのエチレンを含有する。
ここで、成分(A1)と成分(A2)のエチレン含有量の差を[E]gap([E]A2−[E]A1)と定義すると、[E]gapは、3〜20重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは6〜15重量%、更に好ましくは8〜15重量%である。
[E]gapが、3重量%以上の場合、ゴム弾性が十分となり好ましい。また、20重量%以下であると成分(A1)と成分(A2)とのマトリクスとドメインに分かれた相分離構造を取り難く相溶性が良くなるため、透明性が向上する。これは元来、ポリプロピレンはポリエチレンとの相溶性が低く、プロピレン−エチレンランダム共重合体においても、エチレン含有量が異なるものの相互の相溶性は、エチレン含有量の違いが小さくなると向上するためである。
プロピレン−エチレンブロック共重合体を構成する成分(A1)の割合(W(A1))及び成分(A2)の割合(W(A2))の含有量割合は、W(A1)が30〜95重量%であり、W(A2)が70〜5重量%の範囲(両者の合計は100重量%)にある必要があり、好ましくは、W(A1)の割合が30〜85重量%、更に好ましくは50〜80重量%の範囲である。
W(A1)の割合が30重量%以上であると、フィルムのべたつきが抑制され発生、かつ耐熱性が向上する。他方、W(A1)の割合が95重量%以下であるとプロピレン−エチレンブロック共重合体の粘着性や柔軟性の改良効果を充分に発揮することができる。
成分(A2)の割合が70重量%以下であるとベタツキが減少しブロッキングが抑制され、耐熱性も向上する。一方、成分(A2)の割合が5重量%以上であると粘着性と柔軟性の改良効果が得られる。
[E]A1と[E]A2及びW(A1)とW(A2)の測定は、製造時の物質収支(マテリアルバランス)によって特定することも可能であるが、より正確にこれらを特定するためには、以下の分析を用いることが望ましい。
(i)温度昇温溶離分別(TREF)によるW(A1)とW(A2)の特定
プロピレン−エチレンランダム共重合体の結晶性分布をTREFにより評価する手法は、当該業者によく知られるものであり、例えば、次の文献などで詳細な測定法が示されている。
G.Glockner,J.Appl.Polym.Sci.:Appl.Polym.Symp.;45,1−24(1990)
L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)
J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polymer;36,8,1639−1654(1995)
また、TREF測定温度の下限は、本測定に用いた装置では−15℃であるが、成分(A2)の結晶性が非常に低い又は非晶性成分の場合には本測定方法において、測定温度範囲内にピークを示さない場合がある。(この場合には、測定温度下限(すなわち−15℃)において溶媒に溶解した成分(A2)の濃度は検出される。)
このとき、T(A2)は測定温度下限以下に存在するものと考えられるが、その値を測定することが出来ないため、このような場合にはT(A2)を測定温度下限である−15℃と定義する。
ここで、T(A3)までに溶出する成分の積算量をW(A2)重量%、T(A3)以上で溶出する部分の積算量をW(A1)重量%と定義すると、W(A2)は結晶性が低い又は非晶性の成分(A2)の量とほとんど対応しており、T(A3)以上で溶出する成分の積算量W(A1)は結晶性が比較的高い成分(A1)の量とほぼ対応している。TREFによって得られる溶出量曲線と、そこから求められる上記の各種の温度や量の算出の方法は図1に例示するように行う。
本発明においては、TREFの測定は具体的には以下のように測定を行う。
試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mL BHT入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後に8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒であるo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mL BHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ × 150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm 表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー製デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ 4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル 光路長1.5mm 窓形状2φ×4mm長丸 合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
[測定条件]
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速:1mL/分
(イ)成分(A1)と成分(A2)の分離
上述のTREF測定により求めたT(A3)を基に、分取型分別装置を用い昇温カラム分別法により、T(A3)における可溶成分(A2)とT(A3)における不溶成分(A1)とに分別し、NMRにより各成分のエチレン含有量を求める。
昇温カラム分別法とは、例えば、Macromolecules、21 314〜319(1988)に開示されたような測定方法をいう。具体的には、本発明において以下の方法を用いる。
(ロ)分別条件
直径50mm、高さ500mmの円筒状カラムにガラスビーズ担体(80〜100メッシュ)を充填し、140℃に保持する。次に、140℃で溶解したサンプルのo−ジクロロベンゼン溶液(10mg/mL)200mLを前記カラムに導入する。その後、該カラムの温度を0℃まで10℃/時間の降温速度で冷却する。0℃で1時間保持後、10℃/時間の昇温速度でカラム温度をT(A3)まで加熱し、1時間保持する。なお、一連の操作を通じてのカラムの温度制御精度は±1℃とする。
次いで、カラム温度をT(A3)に保持したまま、T(A3)のo−ジクロロベンゼンを20mL/分の流速で800mL流すことにより、カラム内に存在するT(A3)で可溶な成分を溶出させ回収する。
次いで10℃/分の昇温速度で当該カラム温度を140℃まで上げ、140℃で1時間静置後、140℃の溶媒(o−ジクロロベンゼン)を20mL/分の流速で800mL流すことにより、T(A3)で不溶な成分を溶出させ回収する。
分別によって得られたポリマーを含む溶液は、エバポレーターを用いて20mLまで濃縮された後、5倍量(体積比)のメタノール中に析出される。析出ポリマーをろ過して回収後、真空乾燥器により一晩乾燥する。
(ハ)13C−NMRによるエチレン含有量の測定
上記分別により得られた成分(A1)と(A2)それぞれについてのエチレン含有量は、プロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した13C−NMRスペクトルを解析することにより求める。
機種:日本電子(株)製 GSX−400又は、同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o−ジクロロベンゼン/重ベンゼン=4/1(体積比)
濃度:100mg/mL
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えばMacromolecules,17 1950(1984)等を参考に行えばよい。
上記条件により測定されたスペクトルの帰属は、下表1の通りである。表1中Sαα等の記号はCarmanら(Macromolecules,10 536(1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
[PPP]=k×I(Tββ) …(1)
[PPE]=k×I(Tβδ) …(2)
[EPE]=k×I(Tδδ) …(3)
[PEP]=k×I(Sββ) …(4)
[PEE]=k×I(Sβδ) …(5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} …(6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。従って、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1…(7)
である。
また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えばI(Tββ)は、Tββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
エチレン含有量のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行う
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここでXはモル%表示でのエチレン含有量である。
[E]W={[E]A1×W(A1)+[E]A2×W(A2)/100 (重量%)
本発明においては、フィルムの相溶性を良好に保つために、使用するプロピレン−エチレンブロック共重合体を構成する成分(A1)と成分(A2)とが相分離していないことが必要である。相分離の条件は、エチレン含有量のみならず、分子量や組成によっても影響を受けるため、上記のエチレン含有量に関する規定に加えて、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線のピークに関する規定が必要となる。
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)においては、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することが必要である。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)が相分離構造を取る場合には、成分(A1)に含まれる非晶部のガラス転移温度と成分(A2)に含まれる非晶部のガラス転移温度が各々異なるため、ピークは複数となる。この場合には、柔軟性が顕著に悪化するという問題が生じる。
相分離構造を取っているかどうかは、固体粘弾性測定におけるtanδ曲線において判別可能であり、成形品の透明性を左右する相分離構造の回避は、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することによりもたらされる。
本発明で使用されるプロピレン−エチレンブロック共重合体のゲルパーミエーション(GPC)法により測定される重量平均分子量の5,000以下の成分量W(Mw≦5,000)は、0.8重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以下である。本発明におけるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、低分子量成分が少ないことを付加的な特徴とし、低分子量成分、特に、その分子量が絡み合い点間分子量に満たない成分は、成形体の表面にブリードアウトし、ベタツキ性や粘着昂進などを悪化させると考えられる。
なお、ポリプロピレンの絡み合い点間分子量は、Journal of Polymer Science:Part B:Polyer Physics; 37 1023−1033(1999)に記載されるように、約5,000である。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mlとなるようにo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2ml注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する、粘度式の[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS : K=1.38×10−4 α=0.7
PE : K=3.92×10−4 α=0.733
PP : K=1.03×10−4 α=0.78
なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
装置:WATERS社製 GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製 MIRAN 1A IR検出器(測定波長 :3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本直列)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/min
注入量:0.2ml
試料の調製
試料はo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)を用いて1mg/mlの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
GPC測定により得られた重量平均分子量に対する溶出割合のプロットから、重量平均分子量5,000以下の成分量W(Mw≦5,000)も求めることができる。
本発明で使用されるプロピレン−エチレンブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)は、1〜30g/10分であることが好ましく、より好ましくは4〜15g/10分である。MFRが1g/10分以上であると、フィルムの表面にシャークスキンやメルトフラクチャと呼ばれる表面あれの発生が抑制され透明性や外観が良好となる。一方で、MFRが30g/10分以下であると成形時の安定性が良好となり、フィルムの幅や厚みが一定な製品を得ることができる。
ここで、MFRは、JIS K7210 A法 条件Mに準拠し、加熱温度230℃、荷重21.18Nで測定する値である。
本発明で使用されるプロピレン−エチレンブロック共重合体の示差走査熱量計(DSC)により測定された融解ピーク温度(Tm)は、110〜150℃の範囲にあることが好ましく、120〜140℃であるのがより好ましい。Tmが110℃以上であると、得られるフィルムの耐熱性が向上し、高温下での粘着昂進が抑制されるため好ましい。一方、150℃以下であると柔軟性が良好となるため好ましい。Tmを調整するには重合反応系へ供給するエチレンの量を制御することにより容易に調整することができる。
ここで、Tmの具体的測定は、示差走査熱量計(DSC)を用い、サンプル5mgを量り取り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、更に10℃/分の昇温速度で融解させたときに描かれる曲線のピーク位置を、融解ピーク温度Tm(℃)とする。
本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を製造する方法は、メタロセン系触媒の使用を必須とするものである
成分(x):下記一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
成分(y):下記(y−1)〜(y−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分
(y−1)有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体
(y−2)成分(x)と反応して成分(x)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物又はルイス酸が担持された微粒子状担体
(y−3)固体酸微粒子
(y−4)イオン交換性層状珪酸塩
成分(z):有機アルミニウム化合物
成分(x)としては、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物を使用することができる。
Q(C5H4−a−aR1)(C5H4−b−bR2)MeXY …(1)
[ここで、Qは、2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を示し、Meは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムから選ばれる金属原子を示し、X及びYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を示し、X及びYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。R1及びR2は、独立して、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基又はリン含有炭化水素基を示す。a及びbは各置換基の数である。]
X及びYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を示し、このうちで好ましいものとしては、水素、塩素、メチル、イソブチル、フェニル、ジメチルアミド、ジエチルアミド基などを例示することができる。X及びYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。
R1及びR2は、独立して、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基又はリン含有炭化水素基を表す。炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基、ブテニル基、ブタジエニル基などが例示される。また、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基又はリン含有炭化水素基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシリル基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピラゾリル基、インドリル基、ジメチルフォスフィノ基、ジフェニルフォスフィノ基、ジフェニルホウ素基、ジメトキシホウ素基などを典型的な例として例示できる。これらの中で、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることが特に好ましい。ところで、隣接したR1及びR2は、結合して環を形成してもよく、この環上に炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基又はリン含有炭化水素基からなる置換基を有していてもよい。
Meは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの中から選ばれる金属原子であり、好ましくはジルコニウム、ハフニウムである。
これらの具体例の化合物のシリレン基をゲルミレン基に、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も好適な化合物として例示される。なお、触媒成分は本発明の重要要素ではないので、煩雑な列記を避け、代表的な例示に限定しているが、これにより本発明の有効範囲が制限されることが無いのは自明のことである。
成分(y)としては、上述した成分(y−1)〜成分(y−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002−284808号公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報、特開2003−105015号公報などに詳細な例示がある。
ここで、成分(y−1)及び成分(y−2)に用いられる微粒子状担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、さらには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体を挙げることができる。
上記成分(y)の中で特に好ましいものは、成分(y−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
必要に応じて成分(z)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、下記一般式(2)で表される。
一般式:AlRaX3−a …(2)
(式中、Rは、炭素数1から20の炭化水素基、Xは、水素、ハロゲン、アルコキシ基、aは0<a≦3の数)で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム又はジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲン又はアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
(i)成分(x)と成分(y)を接触させる
(ii)成分(x)と成分(y)を接触させた後に成分(z)を添加する
(iii)成分(x)と成分(z)を接触させた後に成分(y)を添加する
(iv)成分(y)と成分(z)を接触させた後に成分(x)を添加する
(v)三成分を同時に接触させる
さらに、上記各成分の接触の際、又は接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
プロピレン−エチレンブロック共重合体が単にプロピレンにエチレンを共重合させたランダム共重合体のときには、エチレン含有量が少ない場合には柔軟性と耐衝撃性及び透明性が充分でなく、これらの物性を向上させるためにエチレン含有量を増加させると耐熱性が極めて悪化し製造が困難になるばかりでなく、要求される品質の全てを満たすことは困難である。
そこで、本発明においてプロピレン−エチレンブロック共重合体は、第1工程と第2工程でエチレン含有量が異なる成分を逐次重合したブロック共重合体であることが透明性と柔軟性及び耐熱性の全てをバランスさせるために好ましい。
また、本発明は成分(A2)として分子量が低く単独ではべたつきやすい共重合体を用いる場合があるので、反応器への付着などの問題を防止するために、成分(A1)を重合した後で成分(A2)を重合する方法を用いることが望ましい。
本発明に用いられる成分プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を製造実施するに際しては、結晶性プロピレン単独重合体又は結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)と低結晶性又は非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を逐次重合することが前述した理由により好ましい。
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。
バッチ法の場合には時間と共に重合条件を変化させることにより単一の反応器を用いて成分(A1)と成分(A2)を個別に重合することが可能である。本発明の効果を阻害しない限り、複数の反応器を並列に接続して用いてもよい。
連続法の場合には成分(A1)と成分(A2)を個別に重合する必要から2個以上の反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要があるが、本発明の効果を阻害しない限り成分(A1)、成分(A2)のそれぞれについて複数の反応器を直列及び/又は並列に接続して用いてもよい。
重合プロセス(重合方法)は、スラリー法、バルク法、気相法など任意の重合方法を用いることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。
低結晶性又は非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)は炭化水素などの有機溶媒や液化プロピレンに溶け易いため、成分(A2)の製造に際しては気相法を用いることが望ましい。
結晶性プロピレン単独重合体又は結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)の製造に対してはどのプロセスを用いても特に問題はないが、比較的結晶性の低い成分(A1)を製造する場合には、付着などの問題を避けるために気相法を用いることが望ましい。
したがって、連続法を用いて、まず結晶性プロピレン単独重合体又は結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)をバルク法又は気相法にて重合し、引き続き低結晶性又は非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体エラストマー成分(A2)を気相法にて重合することが最も望ましい。
重合温度は通常用いられている温度範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、より好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。重合圧力は選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0より大きく200MPaまで、より好ましくは0.1MPa〜50MPaの範囲を用いることができる。この際、窒素などの不活性ガスを共存させることもできる。
第一工程で成分(A1)、第二工程で成分(A2)の逐次重合を行う場合、第二工程にて系中に重合抑制剤を添加することが望ましい。プロピレン−エチレンブロック共重合体を製造する場合には、第二工程のエチレン−プロピレンランダム共重合を行う反応器に重合抑制剤を添加すると、得られるパウダーの粒子性状(流動性など)やゲルなどの製品品質を改良することができる。この手法については各種技術検討がなされており、一例として特公昭63−54296号、特開平7−25960号、特開2003−2939号などの各公報を例示することができる。本発明にも当該手法を適用することが望ましい。
結晶性プロピレン単独重合体又は結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)については、エチレン含有量([E]A1)とT(A1)を制御する必要がある。
本発明では、[E]A1を所定の範囲に制御するためには、第1工程における重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比を、適宜調整すればよい。供給比率と得られるプロピレン単独重合体又はプロピレン−エチレンランダム共重合体中のエチレン含有量の関係は、用いるメタロセン系触媒の種類によって異なるが、供給比率の調整により必要とするエチレン含有量[E]A1を有する成分(A1)を製造することができる。例えば、[E]A1を0〜7重量%に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0〜0.3の範囲、好ましくは0〜0.2の範囲とすればよい。
このとき、成分(A1)は結晶性分布が狭く、T(A1)は[E]A1の増加に伴い低下する。そこで、T(A1)が本発明の範囲を満たすようにするためには、[E]A1とこれらの関係を把握し、目標とする範囲を取るよう調整する。
低結晶性又は非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)については、エチレン含有量[E]A2とT(A2)とを制御する必要がある。
本発明では、[E]A2を所定の範囲に制御するためには、[E]A1と同様に、第二工程におけるプロピレンに対するエチレンの供給量比を制御すればよい。例えば、[E]A2を5〜20重量%に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0.01〜5の範囲、好ましくは0.05〜2の範囲とすればよい。このとき、成分(A2)もエチレン含有量の増加に伴い若干結晶性分布の増加が見られるものの、成分(A1)と同様に、T(A2)は[E]A2の増加に伴い低下する。
そこでT(A2)が本発明の範囲を満たすようにするためには、[E]A2とT(A2)との関係を把握し、[E]A2を所定の範囲になるように制御すればよい。
成分(A1)の量W(A1)と成分(A2)の量W(A2)は、成分(A1)を製造する第一工程の製造量と成分(A2)の製造量の比を変化させることにより制御することができる。例えば、W(A1)を増やしてW(A2)を減らすためには、第一工程の製造量を維持したまま第二工程の製造量を減らせばよく、それは、第二工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたり、重合抑制剤の量を増やしたりすることにより容易に制御することができる。その逆も又同様である。
実際に条件を設定する際には、活性減衰を考慮する必要がある。すなわち、本発明にて実施するエチレン含有量[E]A1及び[E]A2の範囲においては、一般にエチレン含有量を高くするためにプロピレンに対するエチレン供給量比を高くすると重合活性が高くなり、同時に活性減衰が大きくなる傾向にある。したがって、第二工程の活性を維持するために第一工程の重合活性を抑制する必要があり、具体的には、第一工程にて生産量W(A1)を下げ、必要に応じて、重合温度を下げる及び/又は重合時間(滞留時間)を短くする、又は第二工程にてエチレン含有量[E]A2を上げ、生産量W(A2)を上げ、必要に応じて、重合温度を上げる及び/又は重合時間(滞留時間)を長くするような方法で条件を設定すればよい。
本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)では、ガラス転移温度Tgは、単一のピークを持つ必要がある。Tgが単一のピークを持つためには、成分(A1)中のエチレン含有量[E]A1と成分(A2)中のエチレン含有量[E]A2の差の[E]gap、すなわち[E]A2−[E]A1を20重量%以下、好ましくは18重量%、より好ましくは15重量%以下にし、実際の測定においてTgが単一のピークとなる範囲まで[E]gapを小さくすればよい。
結晶性の単独重合体又は共重合体成分(A1)のエチレン含有量[E]A1に応じて、低結晶性又は非晶性の共重合体成分(A2)のエチレン含有量[E]A2を適正範囲に入るよう、成分(A2)の重合時のプロピレンに対するエチレンの供給重量比を設定することで、所定の[E]gapを有する重合体を得ることが可能である。
また、本発明のような相分離構造を取らないブロック共重合体のTgは、成分(A1)中のエチレン含有量[E]A1と成分(A2)中のエチレン含有量[E]A2、及び両成分の量比の影響を受ける。本発明においては、成分(A2)の量は5〜70重量%であるが、この範囲においてTgは成分(A2)中のエチレン含有量[E]A2の影響をより強く受ける。すなわち、Tgは非晶部のガラス転移を反映するものであるが、本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)において成分(A1)は結晶性を持ち比較的非晶部が少ないのに対し、成分(A2)は低結晶性又は非晶性であり、そのほとんどが非晶部であるためである。
したがって、Tgの値は、ほぼ[E]A2によって制御され、[E]A2の制御法は前述したとおりである。
一般的に、メタロセン系触媒を用いることによりチーグラー・ナッタ系触媒の場合より分子量分布の狭いポリマーを得ることができる。しかし、本発明のような逐次重合を行う系においては、分子量分布を狭くするためにはメタロセン系触媒を用いるだけでは必ずしも充分ではない。特に、低分子量成分の生成を防ぐためには、第一工程から第二工程へ移送する時間を短くしたり、移送工程に於いて第一工程に対応するモノマーガス混合物を窒素などの不活性ガスで完全に置換したりすることにより、重合条件とは独立に、W(Mw≦5,000)を小さく制御することができる。
本発明で用いられるスチレン系エラストマー(B)としては、スチレン系のものであれば特に限定されるものではない。
具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレン型、スチレン−イソプレン−スチレン型、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン型、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン型、及びポリスチレンとビニル−ポリイソプレンの結合型などのポリスチレンブロックとゴム中間ブロックを持つブロック共重合体であるスチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン−ブタジエンゴム、水添スチレン−ブタジエンゴム及びスチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン結晶ブロックコポリマー並びにこれらの任意の混合ゴムなどを挙げることができる。なお、このようなスチレン系エラストマー(B)は1種又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
スチレン系エラストマー(B)のMFRが0.1g/10分以上では、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)中でスチレン系エラストマー(B)が塊状に存在することが回避され、均質な分散が容易となるため、得られるフィルムの成形性の向上や、感圧接着性能の均一さをもたらし、好ましい。一方、スチレン系エラストマー(B)のMFRが50g/10分以下では、成形時に冷却ロールやガイドロールなどへの張り付きや、被着体への糊残りを回避するため、好ましい。
ここで、MFRは、JIS K7210 A法 条件Mに準拠し、加熱温度230℃、荷重21.18Nで測定する値である。
スチレン−イソプレン−スチレン型の例としては、「KRATON D」D−1113(クレイトン・パフォーマンス・ポリマーズ社:商品名)などを挙げることができる。
スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン型の例としては、「KRATON G」G1645M(クレイトン・パフォーマンス・ポリマーズ社:商品名)、「TUFTEC」H1041(旭化成(株)製:商品名)などを挙げることができる。
スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン型の例としては「SEPTON」KL2007(クラレ(株)製:商品名)、「KRATON G」GRP6621(クレイトン・パフォーマンス・ポリマーズ社:商品名)などを挙げることができる。
ポリスチレンとビニル−ポリイソプレンが結合したトリブロック共重合体型の例としては「HYBRAR」VS−1(クラレ(株)製:商品名)などを挙げることができる。
水添スチレン−ブタジエン型としては、「DYNARON」1320P(JSR(株)製:商品名)などを挙げることができる。
スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン結晶ブロックコポリマーの例としては、「DYNARON」4600P(JSR(株)製:商品名)などを挙げることができる。
本発明で用いられるプロピレン重合体(C)は、プロピレン単独重合体、又は、プロピレン単位を95〜99.9重量%の範囲で含む、プロピレン−エチレン共重合体(ただし、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を除く。)、若しくは、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとのプロピレン−α−オレフィン共重合体である。α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテンなどを例示でき、これらの1種又は2種以上を用いることができる。当該成分は市販品を使用することも可能であるが、公知の製造方法を用いて容易に得ることもできる。
(c1)メルトフローレート(MFR:230℃、21.18N荷重)が1〜30g/10分
(c2)示差熱走査熱量計(DSC)による融解ピーク温度(Tm)が110〜160℃
(c3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2〜4
粘着層(Y)中におけるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)とスチレン系エラストマー(B)の配合量は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)100〜20重量%、スチレン系エラストマー(B)0〜80重量%、好ましくはそれぞれが(A)95〜25重量%、(B)5〜75重量%、より好ましくはそれぞれが(A)90〜30重量%、(B)10〜70重量%である。ただし、両者の合計は100重量%である。
求められる積層フィルムの粘着力に応じてその割合は任意に調整することが可能であるが、プロピレン−エチレンブロック共重合体の含有量が20重量%以上であると、粘着層の剛性に対して粘着力が最適となり、被着体への糊残りが回避されるので好ましい。
本発明の好ましい形態である基材層(X)中におけるプロピレン−エチレンブロック共重合体とプロピレン共重合体の割合は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)100〜0重量%、プロピレン重合体(C)0〜100重量%であることが好ましく本発明の好ましい形態である、より好ましくはそれぞれが(A)90〜10重量%、(C)10〜90重量%、さらに好ましくはそれぞれが(A)80〜20重量%、(C)20〜80重量%である。ただし、両者の合計は100重量%である。求められる積層フィルムの剛性に応じてその割合は任意に調整することが可能であり、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の割合が大きくなるほど、積層フィルムの剛性は低くなり、柔軟性に優れる。
なお、共重合体(A)と重合体(C)との合計100重量%(この合計量を100重量部とする)に対して、必要に応じてスチレン系エラストマー(B)を1〜100重量部、好ましくは5〜95重量部の範囲で任意に配合してもよい。配合量がこの範囲内であれば、成形加工性に悪影響を及ぼすことなく、より柔軟な積層フィルムを得ることができる。
本発明の積層フィルムにおいては、本発明の効果を損なわない範囲内で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、臭気吸着剤、抗菌剤、架橋剤、粘着付与剤、充填剤、顔料、無機質及び有機質の充填剤、分散剤、並びに種々の合成樹脂などの公知の添加剤を必要に応じて随時添加することができる。
上記の各種添加剤の配合は、各層に用いる樹脂に直接添加し溶融混練して使用することも可能であるし、溶融混練中に添加してもよい。さらには溶融混練後に直接添加、又は、本発明の効果を著しく損なわない範囲においてマスターバッチとして添加することも可能である。また、これらの複合的な手法により添加してもよい。
一般的には、酸化防止剤や中和剤などの添加剤を配合して、混合、溶融、混練された後、製品に成形され使用される。成形時に本発明の効果を著しく損なわない範囲で他樹脂、又は、その他の付加的成分(マスターバッチを含む)を添加し使用することも可能である。
本発明の積層フィルムを作成するに当たっては、公知の積層フィルムの製造方法で製造することができる。
例えば、Tダイキャスト法、水冷インフレーション法、空冷インフレーション法等の公知の技術によって製造する。
なかでも、押出機で溶融混練された樹脂がTダイから押し出され、水等の冷媒を通したロールに接触させられることにより冷却されてフィルムを製造するTダイキャスト法が、一般に透明性が良く、厚み精度の良いフィルムを製造することができる。この様な方法はフィルムにとって好ましい製造方法である。
本発明では、粘着層を基材層と共にTダイよりフィルム状に共押出し形成する方法を採用すると、汚染性の問題、経済上の点で有利である。
剥離処理層を塗布により得る方法としては、基材層の片面に対し、トルエン溶液等の有機溶剤に溶かした剥離処理剤をロールコーター等により塗布後、乾燥して剥離処理剤を硬化させて剥離処理層を形成する方法を挙げることができる。その際、基材層と剥離処理層との親和力を向上させるため、基材層の片面(剥離処理層との接着面)に、従来公知のコロナ放電処理、プラズマ放電処理、プライマー処理などが施されていてもよい。
また、剥離処理層を積層により得る方法としては、押出機により、剥離処理層を加熱溶融させて、Tダイよりフィルム状に、基材層の片面に積層する方法、又は、押出機により、基材層及び剥離処理層を加熱溶融させて、基材層と共にTダイよりフィルム状に共押出しする方法などを挙げることができる。
本発明の樹脂組成物を用いて得られる積層用フィルムの用途としては、公知のあらゆる表面保護を必要とする製品が含まれ、分野別では、例えば、電子部品搬送用保護用フィルム、半導体ウエアのダイシングフィルム及びプリント基板用保護フィルム等のエレクトロニクス分野、窓ガラス保護用フィルム、焼付塗装用フィルム、自動車をユーザーにわたるまで保護するためのガードフィルム、表示用マーキングフィルム、装飾用マーキングフィルム及び緩衝・保護・断熱・防音用のスポンジフィルム等の自動車分野、絆創膏や経皮吸収貼付薬等の医療・衛生材料分野、並びに電気絶縁用、識別用、ダクト工事用、養生用、包装用、梱包用、事務用、家庭用、固定用、結束用及び、補修用の保護フィルム等の住宅・建設分野が挙げられる。
(1)MFR(メルトフローレート)
JIS K−7210−1995に準拠し、230℃、荷重21.18N(2.16kg荷重)で測定した。
(2)融解ピーク温度
示差走査型熱量計(セイコー社製DSC)を用い、サンプル量5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度(Tm)を測定した。
(3)分子量分布
前述の方法(GPC法)で得られた重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)から、算出した。
(4)各成分量の算出
前述の昇温溶離分別(TREF)法を用いて各成分量W(A1)とW(A2)を測定した。
(5)エチレン含有量の算出
前述の昇温溶離分別(TREF)法を用いて各成分に分別し、前述の13C−NMR法により各成分のエチレン含有量[E]A1と[E]A2を測定した。
(6)固体粘弾性測定
試料は、下記条件により射出成形した厚さ2mmのシートから、10mm幅×18mm長×2mm厚の短冊状に切り出したものを用いた。装置はレオメトリック・サイエンティフィック社製のARESを用いた。周波数は1Hzである。測定温度は−60℃から段階状に昇温し、試料が融解して測定不能になるまで測定を行った。歪みは0.1〜0.5%の範囲で行った。得られたtanδ曲線からピーク温度(ガラス転移温度Tg)の値を得た。
試験片の作成条件
規格番号:JIS−7152(ISO294−1)
成形機:東洋機械金属社製TU−15射出成形機
成形機設定温度:ホッパ下から 80、80、160、200、200、200(単位:℃)
金型温度:40℃
射出速度:200mm/秒(金型キャビティー内の速度)
射出圧力:800kgf/cm2
保持圧力:800kgf/cm2
保圧時間:40秒
金型形状:平板(厚さ2mm 幅30mm 長さ90mm)
(7)厚み
JIS B7503:2011に準拠し、厚み(μm)を評価した。
ISO527に準拠し、幅10mm、長さ150mmのフィルムサンプルを、チャック間距離100mm、引張速度1mm/minにてフィルムの流れ方向(MD)に引っ張り、引張弾性率を測定した。
(9)フィルムの変形回復率
幅10mm、長さ150mmのフィルムサンプルを、標線間100mm、チャック間距離100mm、引張速度100mm/minにてMDに100mm引っ張った。その状態で1分間保持した後に開放し、3分後の標線間距離を測定し、以下の式に従って変形回復率を求めた。
変形回復率(%)=(回復距離[200mm−変形後標線間距離(mm)]/変形前標線間距離(mm))×100
変形回復性を有することで、複雑な形状の被着体に対して積層フィルムを張り合わせる際に、フィルムを表面形状に追従させて張り合わせることができる。また、半導体ウエハのダイシングフィルム用途における、一時的に当該フィルムに張力を加えて伸ばすエキスパンドと呼ばれる工程では、エキスパンド後のフィルム復元の観点からこの変形回復性がある方が加工上好ましい。
(10)フィッシュアイ
フィルムを20cm×15cmのサイズに切り出し、目視にてフィッシュアイの個数を数えた。拡大率10倍のスケール付きルーペを用いてフィッシュアイの大きさを確認し、以下の基準に基づいて格付け評価を行った。
○:観察範囲に長辺0.1mm以上の大きさのフィッシュアイが2個以下
△:観察範囲に長辺0.1mm以上の大きさのフィッシュアイが3個以上5個以下
×:観察範囲に長辺0.1mm以上の大きさのフィッシュアイが6個以上
フィッシュアイが少ない方が、表面保護フィルムを被保護物に貼付けて段積み保管しても、被着体に凹みが転写することがないため好ましい。
(11)初期粘着強度
フィルムMDを長手方向として幅25mm、長さ200mmに切り出し、被着体をアクリル板(三菱レイヨン(株)製、商品名:『アクリライトL001』2mm厚)とし、JIS Z-0237−2009に準拠し、粘着面を被着体に貼りつけた。被着体に貼り付けた状態でフィルムを23℃/RH50%条件下にて24時間保管した後、引張速度300mm/min、引き剥がし角度180°にて25mm幅あたりの粘着強度を測定した。
数値が高いほど粘着強度が高くなり、一般的には0.01〜10N/25mmの範囲で使用されるが、粘着強度は被着体の種類やその用途により目標の強度は様々である。なお、粘着強度が低すぎると、被着体への貼りあわせができず、また、粘着強度が高すぎると被着体から容易に剥離することができない。
(12)粘着昂進率
前述の初期粘着性の測定方法に則って作成した被着体に貼り付けた状態のフィルムサンプルを、45℃/RH50%条件下にて7日間保管した。その後、引張速度300mm/min、引き剥がし角度180°にて25mm幅あたりの粘着強度を測定し、昂進後の粘着強度を得た。得られた数値を用い、以下の式に則って粘着昂進率を求めた。
粘着昂進率(%)=((昂進後の粘着強度−初期粘着強度)/初期粘着強度)×100
すなわち、粘着昂進率が100%となった場合は、45℃7日間保管後の粘着強度は23℃1日保管後の粘着強度に比べて2倍大きいことを意味する。粘着昂進率が大きくなるほど、張り合わせた後の経時による粘着強度が大きく変化することを意味し、長期保管などの際にはフィルムを剥がす際により大きな力を要することとなるので、好ましくない場合がある。
(13)汚染性
幅200mm、長さ50mのフィルムを用い、直径100mmの金属鏡面ロールが抱き角90°でフィルム粘着面に接した状態にて、5m/minの速度でフィルムを走行させた。その後、以下の基準に基づいて汚染性の格付けを行った。
○:鏡面ロール上に、フィルムの走行跡が確認できない。
×:鏡面ロール上に、フィルムの走行跡が確認できる。
鏡面ロール上に、フィルム走行跡が確認できる場合は、粘着層からブリードした成分が被着体へ移行し、被着体汚染の原因となり得るため好ましくない。
実施例及び比較例に使用したプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)としては、後記製造例1〜4で製造されたプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)〜(A−4)を使用した。得られた共重合体(A−1)〜(A−4)の樹脂物性を表3に示す。
B−1;
JSR社 DYNARON(登録商標)1320P
水添スチレン−ブタジエン型エラストマー
MFR=3.5
B−2;
クレイトン・パフォーマンス・ポリマーズ社 KRATON(登録商標)G1645M
スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン型エラストマー
MFR=3.3
C−1;
日本ポリプロ社 WINTEC(登録商標)WFX4
メタロセン触媒によるプロピレン−エチレンランダム共重合体
MFR=7、Tm=125℃、Mw/Mn=2.8
C−2;
日本ポリプロ社 NOVATEC(登録商標)FX4G
チーグラー・ナッタ触媒によるプロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体
MFR=7、Tm=128℃、Mw/Mn=4.5
(i)予備重合触媒の調製
(イ)珪酸塩の化学処理
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=25μm 粒度分布=10〜60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を超えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。
(ロ)珪酸塩の乾燥
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。仕様、乾燥条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状 内径50mm 加温帯550mm(電気炉) かき上げ翼付き回転数:2rpm 傾斜角:20/520 珪酸塩の供給速度:2.5g/分 ガス流速:窒素 96リットル/時間 向流乾燥温度:200℃(粉体温度)
(ハ)触媒の調製
撹拌及び温度制御装置を有する内容積16リットルのオートクレーブを窒素で充分置換した。ここに、乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1,160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で攪拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2,000mlに調整した。次に、先に調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。並行して、(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム2,180mg(0.3mM)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)33.1mlを加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して5,000mlに調整した。
(ニ)予備重合/洗浄
続いて、槽内温度を40℃に昇温し、温度が安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄みを2,400mlデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5,600ml添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5,600ml除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23mM、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M)のヘプタン溶液を170ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。触媒1g当たりポリプロピレンを2.0g含む予備重合触媒が得られた。
第一工程では、内容積0.4m3の攪拌装置付き液相重合槽を用いてプロピレン−エチレンランダム共重合を実施した。液化プロピレンと液化エチレン、トリイソブチルアルミニウムをそれぞれ90kg/時、4.2kg/時、21.2g/時で連続的に供給した。水素供給量は第一工程のMFRが目標の値となるように調節した。
さらに、上記の予備重合触媒を、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)、6.9g/時となるように供給した。また、重合温度が45℃となるように重合槽を冷却した。
第一工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合を分析したところ、BD(嵩密度)は0.46g/cm3、MFRは7.0g/10分、エチレン含有量は3.7重量%であった。
第二工程では、内容積0.5m3の攪拌式気相重合槽を用いてプロピレン−エチレンランダム共重合を実施した。第一工程の液相重合槽より重合体粒子を含んだスラリーを連続的に抜き出し、液化プロピレンをフラッシングした後、窒素で昇圧して気相重合槽へ連続的に供給した。
重合槽は温度が80℃、プロピレンとエチレンと水素の分圧の合計が1.5MPaとなるように制御した。その際にプロピレンとエチレンと水素の分圧の合計に占めるプロピレンとエチレン及び水素の濃度は、それぞれ66.97vol%、32.99vol%、400volppmとなるように制御した。
さらに、活性抑制剤としてエタノールを気相重合槽に供給した。エタノールの供給量は、気相重合槽に供給される重合体粒子に随伴して供給されるTIBA(トリイソブチルアルミニウム)中のアルミニウムに対して、0.3mol/molとなるようにした。
こうして得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体を分析したところ、活性は8.7kg/g−触媒、BDは0.41g/cm3、MFRは7.0g/10分、エチレン含有量は8.7重量%であった。
ブレンダーを用いて上記で得られたブロック共重合体パウダー100重量部に対して、下記のとおり酸化防止剤の所定量を添加し、充分に撹拌混合した後、溶融、混練して造粒を行った。
酸化防止剤:テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガノックス1010)0.05重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、イルガホス168)0.10重量部
添加剤を加えた共重合体パウダーをヘンシェルミキサー(商品名)により750rpmで1分間室温で高速混合した後、スクリュー口径30mmの池貝製作所製PCM二軸押出機にて、スクリュー回転数200rpm、吐出量10kg/hr、押出機温度190℃で溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を、冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径約2mm、長さ約3mmに切断することでプロピレン−エチレンブロック共重合体の原料ペレット(A−1)を得た。
(i)第一工程
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100リットル)を十分に乾燥し、内部を窒素ガスで十分に置換した。DSC測定により得られた融点が160℃、230℃で測定したMFRが8g/10minのポリプロピレン粉体床の存在下、回転数30rpmで攪拌しながら、反応器の上流部に製造例1と同様の方法で調製した予備重合触媒を(予備重合パウダーを除いた固体触媒量として)0.444g/hr、トリイソブチルアルミニウムを15.0mmol/hrで連続的に供給した。反応器の温度を65℃、圧力を2.00MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.058、水素濃度が150ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、定常状態になった際の重合体抜き出し量は10.0kg/hrであった。
第一工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合を分析したところ、BD(嵩密度)は0.47g/cm3、MFRは9.0g/10分、エチレン含有量は1.7重量%であった。
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100リットル)に、第一工程より抜き出したプロピレン−エチレン共重合体を連続的に供給した。回転数25rpmで攪拌しながら、反応器の温度を70℃、圧力を1.88MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.450、水素濃度が300ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、重合体抜き出し量が18.0kg/hrになるように活性抑制剤として酸素を供給し、第二工程での重合反応量を制御した。
得られた重合体パウダーから、製造例1と同様の添加剤配合、造粒条件により、(A−2)原料ペレットを得た。
製造例1の重合条件において、第一工程における触媒供給量を8.6g/時(予備重合ポリマーを除く)とし、液化プロピレンと液化エチレンの供給量をそれぞれ180kg/時、8.4kg/時とした以外は同様に重合を行った。
第一工程にて得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体のMFRは7.0g/10分、エチレン含有量は3.7重量%であり、最終的に得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体については、活性は1.7kg/g−触媒、MFRは7.0g/10分、エチレン含有量11.7重量%であった。
得られた重合体パウダーから、製造例1と同様の添加剤配合、造粒条件により、(A−3)原料ペレットを得た。
(i)固体触媒成分の調製
充分に窒素置換したフラスコに、脱水及び脱酸素したn−ヘプタン2,000ミリリットルを導入し、次いでMgCl2を2.6モル、Ti(O−n−C4H9)4を5.2モル導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を320ミリリットル導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを4,000ミリリットル導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で1.46モル導入した。次いでn−ヘプタン25ミリリットルにSiCl4 2.62モルを混合して30℃において30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでn−ヘプタン25ミリリットルにフタル酸クロライド0.15モルを混合して、70℃において30分間でフラスコへ導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでTiCl4 11.4molを導入して110℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄して固体成分を得た。この固体成分のチタン含有量は2.0重量%であった。
次いで、撹拌及び温度制御装置を有する内容積16リットルのオートクレーブを窒素で充分置換し、ここへ、上記と同様に精製したn−ヘプタンを5,000ミリリットル導入して上記で合成した固体成分を100グラム導入し、SiCl4 0.875molを導入して90℃で2時間反応させた。反応終了後、さらに(CH2=CH)Si(CH3)3 0.15mol、(t−C4H9)(CH3)Si(OCH3)2 0.075mol及びAl(C2H5)3 0.4molを順次導入して30℃で2時間接触させた。接触終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し、塩化マグネシウムを主体とする固体触媒成分を得た。このもののチタン含有量は、1.8重量%であった。
(ii)予備重合
撹拌及び温度制御装置を有する内容積16リットルのオートクレーブを窒素で充分置換した。ここへ、上記で調製した固体触媒成分のn−ヘプタンスラリーを固体触媒成分として100g導入し、更にn−ヘプタンを導入して液レベルを5,000ミリリットルに調整した。次に、槽内温度を15℃に調節し、トリエチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液(10重量%)をAl(C2H5)3として0.1mol添加した。その後、プロピレンを50g/時間の速度で2時間供給して予備重合を行った。予備重合終了後、残モノマーをパージし、固体触媒をn−ヘプタンで充分に洗浄した。洗浄終了後、減圧乾燥を行い、予備重合触媒を得た。この予備重合触媒中には、触媒1g当たり2.0gのポリプロピレンが含まれていた。
こうして得られた予備重合触媒を用い、かつ、トリイソブチルアルミニウムの代わりにトリエチルアルミニウムを10g/時で連続的に供給し、更に、製造例1の重合条件において、第一工程における触媒供給量を1.8g/時(予備重合ポリマーを除く)、重合温度が60℃、液化プロピレンと液化エチレンの供給量をそれぞれ90kg/時、1.2kg/時、また、第二工程においてプロピレンとエチレン及び水素の濃度を、それぞれ79.84vol%、19.96vol%、2,000volppmとなるように制御した以外は同様に重合を行った。
第一工程にて得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体のMFRは25.0g/10分、エチレン含有量は3.7重量%であり、最終的に得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体については、活性は17.0kg/g−触媒、MFRは7.1g/10分、エチレン含有量8.7重量%であった。
得られた重合体パウダーから、製造例1と同様の添加剤配合、造粒条件により、(A−4)原料ペレットを得た。
サテライト押出機20mmφ、メイン押出機35mmφを有する2層Tダイ(ダイ幅330mm、リップ開度0.8mm)を用いて、サテライトを基材層、メインを粘着層とし、230℃にて溶融押出しを行った。これを30℃に温調され10m/minで回転する#200梨地表面加工された冷却ロールにて冷却固化させて、総厚80μm(層比:1/3)の2種2層未延伸フィルムを得た。押出量については、メイン押出機6.6kg/時、サテライト押出機2.2kg/時を目安として、目的のフィルム厚みになるよう押出量を調整した。
実施例、比較例の各フィルム構成や、物性測定にて得られた結果を表4に掲載する。
表4における実施例1〜8から明らかなように、本発明による積層フィルムは、柔軟性に優れ、適度な粘着力を示すと同時に、粘着昂進が小さく、かつブリード成分を抑制可能で耐汚染性に優れる。なお、基材層(X)に配合するプロピレン重合体(C)としてチーグラー・ナッタ触媒によるものを用いた場合は、フィッシュアイが劣る(実施例7)。このため、フィッシュアイを抑制することが必要な場合には、メタロセン触媒によるものを用いる方が好ましい。
一方で、粘着層(Y)を構成するプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)中のプロピレン−エチレンランダム共重合体(A2)が、本発明の範囲よりも過多に存在する場合は、柔軟ではあるものの粘着昂進率が大きくなりすぎるために好ましくない(比較例1)。また、粘着層にメタロセン触媒以外で製造された樹脂を用いると、被着体への耐汚染性やフィッシュアイが劣る(比較例2)。なお、粘着層がフィルム厚みの40%以上を占める当該フィルムの構成において、粘着層(X)中のスチレン系エラストマー(B)が本発明の範囲よりも過多に存在する場合は、過剰な柔軟性と粘着性のバランスから、成形時に粘着面と接触する各ロールへの巻き付きが発生するため安定したフィルム成形が困難となる(比較例3)。
よって、各種のあらゆる表面保護を必要とする製品、例えば、電子部品搬送用保護用フィルムや半導体ウエハのダイシングフィルム、窓ガラスや各種建材や事務用品などの保護用フィルムなどに広く用いることができる。
Claims (7)
- 基材層(X)/粘着層(Y)の少なくとも2層からなる積層フィルムにおいて、粘着層(Y)が下記(a1)〜(a3)を満たすプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)100〜20重量%と、スチレン系エラストマー(B)0〜80重量%からなることを特徴とする積層フィルム。
(A)プロピレン−エチレンブロック共重合体
(a1)メタロセン系触媒を用いてプロピレン単独重合体又はエチレン含有量が7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体(A1)を30〜95重量%と、メタロセン系触媒を用いて成分(A1)よりも多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体(A2)を70〜5重量%となるように調整することで得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体
(a2)固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度―損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する
(a3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる重量平均分子量5,000以下の成分量W(Mw≦5,000)が、全体の0.8重量%以下 - プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)が、さらに下記(a4)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
(a4)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1〜30g/10min - プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)が、さらに下記(a5)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層フィルム。
(a5)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が、110〜150℃の範囲にあること - 基材層(X)が、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)100〜0重量%と、プロピレン重合体(C)0〜100重量%からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
- 積層フィルムの全体の厚みが、20〜200μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
- 積層フィルムの変形回復率が、30〜100%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルム。
- 積層フィルムにおいて、粘着層(Y)の占める割合が、総厚の40%以上を占めることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルム。
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